ファストファッションとアパレル業界の闇――消費者が考えるべき労働環境のこれから

 短いサイクルでの大量生産・販売によって、流行の商品を低価格で販売するファストファッション。私たちの生活にすっかり定着し、誰しもクローゼットに1着はあるのではないだろうか。前編では、ファストファッションを製造する工場の実態について、『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(光文社新書)を共同執筆した朝日新聞社の仲村和代記者にうかがったが、今回は消費者が購入時に意識すべき点について聞いてみた。

前編:ファストファッションの功罪――「安くておしゃれな服」を支える過酷な労働環境と大量廃棄

新品の服が10億点も焼却される現実

――私たちの「安く買いたい」というエゴが、こうした状況を生み出しているように感じました。ファストファッションの流行が、日本のアパレル業界にもたらした影響などはありますか。

仲村和代さん(以下、仲村) ファストファッションのおかげで、昔と比べるとはるかに安い値段で、おしゃれを楽しむことができるようになりました。質は多少落ちるかも知れませんが、それでも短い期間で買い替えるものであれば、消費者も特に問題には感じません。むしろ、流行の服を安く買って、どんどん買い替えるような風潮を、消費者自身も歓迎したところがあると思います。体形や好み、流行は変わりますからね。

 服を「1~2年で買い替える」のが当たり前になり、安い価格に慣れた消費者にとって、ファストファッションの2~3倍の価格で販売される百貨店やセレクトショップに置かれているようなブランドは高額に感じるでしょう。一方、こうしたブランドのメーカーも、コストを抑えるためにたくさん発注し、大量の洋服を作る傾向が出てきました。30年前と比べると、消費・購入量はさほど変わっていませんが、生産量は倍くらいに増えています。その結果、服の大量廃棄の問題が発生。コスト削減のため、必要とされる以上の大量の服が作られるようになり余ってしまうからです。

――大量に余った洋服はどのように扱われるのでしょうか。

仲村 一部は在庫処分業者がタグなどを外し、海外に輸出したり、国内で販売したりすることもありますが、かなりの割合が捨てられています。日本国内では、燃えるゴミと同じように、自治体の焼却場などで燃やされているものが多いそうです。また、リサイクルといいつつ、固形燃料として結局燃やされているものも。国が統計を取っていないので、正確な数字は不明ですが、ざっくりいうと年に約40億点の衣料品が作られ、消費量は約20億点なので、その分を引いた20億点が余る計算になります。一度も売れず、場合によっては店頭にすら並んでいない新品の洋服が、年に10億点以上、捨てられているとみられ、つまり新品の服の4枚に1枚は、そのまま捨てられているんです。

――大量に服が廃棄される一方、最近はいろいろな女性誌で、「サステナブル」(持続可能な社会を目指す取り組み)や「SDGs(エスディージーズ)」(注)という言葉を目にします。

注 SDGs:「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で、全ての国連加盟国のリーダーによって決められた、国際社会の共通目標。アパレル業界でも、「SDGs」を目標に掲げ、「衣服のリサイクル」「環境に配慮した工場」「生産量の適正化」という取り組みを行っている企業が出てきている。

仲村 この1年くらいで、ものすごく目にするようになりましたね。「この服はどう作られているのか」「環境汚染はしていないか」を考えようという流れは、すごくいいことだと思います。いろんなファストファッションブランドが出てきて、「安かろう悪かろう」は通用しなくなり、分岐点を迎えているのでは。最近は、「エコ」や「サステナブル」を意識したファストファッションのブランドもあるので、消費者が、「安い」という理由だけで服を買う時代は終わり、“選ぶ”“吟味”する時代になりつつあるのだと思います。

 ただ、SDGsを掲げている企業もいろいろ。理念についてあまり理解せずに、とりあえずアピール材料に使っている企業も少なくありません。消費者は企業の何を信用すればいいのか、ますます悩むと思いますが、「企業が発信することは真実なのか」と常に疑うクセをつけた方がいいと思います。

――生産者の労働環境やエコを意識したブランドなどを、教えていただけますか。

仲村 全ての現場を確かめたわけではないので、具体的なブランド名を私の口からお伝えすることは避けたいと思います。目安にするとしたら、例えば、「どこで作られているのか」「回収した古着をどのように使っているのか」といった情報を企業が開示しているかどうか。より具体的であれば、信頼度も高いと考えていいと思います。最近は、実際に作っている生産現場の人との交流の場などを設けているブランドもあるんですよ。「この人が勧めたから」「こう書いてあったから」という理由でどこかのブランドを買うことより、消費者一人ひとりが、自ら一つひとつ知ろうとする動きこそが、大切なのではないかと思っています。そうやって調べながら、「自分なりに納得のいくブランド」を探す、そして企業に対しても声を届けていく、ということを目指してみてはどうでしょうか。

――もし、企業側が出すデータがウソだったとしても、消費者はわからないですよね。

仲村 確かに、判断は難しいですね。私自身も、すごく悩みます。最近は、正しい情報を開示しているかどうかを判断するシステムを作ろうという動きもあります。また、消費者から「情報を知りたい」「そういった仕組みが必要」という声が大きくなれば、国や機関が動く可能性もあるはずです。企業に直接問い合わせるのも有効な手段ですが、ハードルが高いという人は、まずネットで検索するだけでもいいのでは。その検索ワードの数が集合知となって、企業側に「この世代は、服を買う時に環境問題も気にしているんだな」と伝わるかもしれません。「常に、100%正解」を目指すのは正直、難しいと思う。でも、そういう積み重ねが大事なんじゃないかと思います。

――不況と言われる昨今、収入が増えないなどの悩みを持つ消費者は多いため、今後もファストファッションに一定の需要は見込まれると思います。自分たちができることはなんでしょうか。

仲村 私自身は、ファストファッションブランドがいけないとか、購入してはいけないとか、そういうことは全然思っていません。中には、持続可能性に目を向け、とても力を入れているところもありますし、大事に着て、うまくおしゃれを楽しんでいる人はとても素敵だな、と思います。ただ、とりあえず安いから買って、着なくなったら捨てればいい、という風潮は、そろそろ変わってほしいですね。「エシカル」を打ち出しているようなブランドは高くて買えない、という声も聞きますが、無理をして買う必要はないと思います。消費者の側も、「無理なく続けられる」、つまり持続可能であることが大切だと思います。

 考え方として、目の前の値段ではなく、最終的に何回くらい着られるのか、いわゆる「コスパ」を考えると、買い方は変わるのではないでしょうか。例えば、千円のものを5回着て捨てるよりは、1万円のものを100回着る方が、「安上がり」です。長く着る、という観点で、それに見合った品質かどうかを基準にすれば、意外と「高くない」と感じるかもしれません。そもそも、先ほど大量に服が処分されていると話しましたが、焼却するにも費用が掛かりますし、そのコストが販売価格に上乗せされていると考えると、安いように見えて、結構、消費者は損していると思うんです。アパレル業界は、「新商品を販売するサイクルが短すぎる」とよく言われていますが、みなさんが1着を大切に扱うようになれば、いずれ業界を変えることができるかもしれません。

――1着を大切にすることが当たり前になると、アパレル企業は成り立たなくなる気もしますが……。

仲村 確かにそういう声は多く聞こえてきますね。ただ、アパレル企業に限らず、長年日本企業が続けてきた薄利多売のビジネスモデルは、もう限界に来ているのではないでしょうか。まだ物がなく、人口も増えていく時代であれば、生産量を増やすことがそのまま利益にもつながった。ところが、長い不況が続いてデフレ傾向になり、生産コストや人件費を削り、長時間店を開けることで何とか利益を確保しようとして、企業も、働く人たちも疲弊しています。

 目指す方向のヒントになりそうな話を先日、とあるアパレル関係の方からうかがいました。そこは「長く使える」ことを売りにしているメーカーなのですが、新しくお店を始める時に、「セールはしない」「廃棄を出さない」ことを目標にしたそうです。このため、カラーや柄など種類は絞る一方で、セールをしなくても買ってもらえるような商品づくりに力を入れました。品薄になっても補充はせず、なんとお店を休みにしてしまったそう。おかげで、従業員はしっかり休め、年間を通して考えると、利益も確保できたそうです。売り上げよりも利益(売り上げからコストを引いたもの)に着目すると、商売のあり方も少し変わるのでは。

 大量生産、大量廃棄は、環境への負荷も大きい。目先の業績だけでなく、長い目で見て社会全体の利益を考える姿勢が、企業にも求められる時代になっていると思います。物や人を使い捨てることなく、従業員や環境・社会全体の“幸せ”を追求することが当たり前になるといいですね。

仲村和代(なかむら・かずよ) 
朝日新聞社会部記者。1979年、広島県生まれ。沖縄ルーツの転勤族で、これまで暮らした都市は10以上。2002年、朝日新聞社入社。長崎総局、西部報道センターなどを経て10年から東京本社社会部。著書に『ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から』、取材班の出版物に『孤族の国』(ともに朝日新聞出版)、共著に『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(光文社新書)がある。
Twitter: @coccodesho

ファストファッションの功罪――「安くておしゃれな服」を支える過酷な労働環境と大量廃棄

 短いサイクルでの大量生産・販売によって、流行の商品を低価格で販売するファストファッション。私たちの生活にすっかり定着し、誰しもクローゼットに1着はあるのではないだろうか。そんな中、2019年10月末をもってForever 21が日本市場から撤退するなど、ファストファッション離れとも言えるニュースが飛び込んできたが、背景には、ターゲット層だった若い世代の意識が変化し、長く着られるアイテムを選ぶ傾向になったという一面があると言われている。そこで今回、ファストファッションの製造工場の実態を『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(光文社新書)を共同執筆した朝日新聞社の仲村和代記者にうかがった。

ファストファッションを支えるバングラデシュ女性の苦悩

――なぜファストファッションブランドは、洋服を低価格で販売できるのでしょうか。

仲村和代さん(以下、仲村) 原料を大量に仕入れ、大量生産・販売することで、洋服1枚当たりのコストを抑えているからです。もう一つのカギは人件費。洋服作りの工程は機械化されていない部分が多く、また効率化したいからといってどこかの工程を省くというわけにもいきません。このため、人件費の安い開発途上国の工場で生産することによって、コストカットしています。以前はアパレルの生産拠点といえば中国でしたが、最近はバングラデシュがさらに安い人件費を「武器」に大手企業の誘致を進め、「世界の縫製工場」と呼ばれるようになりました。

 明治時代の日本をイメージしてもらうとわかりやすいと思うんですが、繊維産業は工業が発展する最初の段階で興るもの。アジアの最貧国といわれたバングラデシュで、発展を目指して国を挙げて力を入れたのがアパレル産業でした。そこで強調されたのが、その労働コストの安さ、つまりは賃金が安いこと。それが、安く服を作りたいと考えていた先進国のアパレル企業のニーズと一致したのです。

 バングラデシュの工場では、経験の浅い人でもすぐに働けるように作業が細分化されています。例えば、「ひたすら右の袖のボタン付けだけを行う」という担当の人がいる。このため、1枚の洋服を作るために働く人の数が多くなり、一つの工場へのロットが大きくなります。1人の職人が全ての工程を担うような日本の工場だと、1桁単位の発注も可能ですが、バングラデシュとなると、数千単位での発注が求められる。それでも、日本で何着か作るより、バングラデシュで数千単位で作ってもらう方が、かえって安い、なんてことになるわけです。

 働く側から考えると、さまざまな工程を経験できる機会が得られず、ずっと同じ作業だけ担うため、スキルアップができず、賃金アップにもつながらない、という側面があります。

――13年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場が入った商業ビル「ラナプラザ」が崩落し、死者1,100人、負傷者2,500人以上を出す最悪の事故が起こりました。この縫製工場が手掛けていた洋服は、欧米諸国をはじめ、日本人もよく購入するファストファッションブランドのものも含まれていたとか。日本でもこの事故が報道され、話題になりました。

仲村 多くの人が、アパレル業界の裏側を考えるきっかけになったと思います。事故前日、ビルに亀裂が発見され、使用を中止するよう警告が出ていたのにもかかわらず操業し続けたことを考えると、これは“人災”ですよね。工場の責任者を責めるのは簡単ですが、彼らもまたグローバル企業の下請けや孫請け。発注している側のことを見過ごしてはいけません。一度「できない」と断ったり、納期が遅れたりすれば、他社に仕事が流れ、結局、労働者の給料が払えなくなる。安全性に問題があっても操業を続けざるを得ない状況を生み出している企業の側や、それを知らないとはいえ、企業を支持してきた私たち消費者自身のことも、考えなければならないと思います。

――人件費がかなり安いということですが、労働環境はどうでしょう。また、どのような人が働いているんですか。

仲村 80%以上が女性で、時給換算して数十円で長時間働かされ、病気になったらクビになってしまう。農村から子連れで出稼ぎに来ている女性たちもいますが、子どもを預ける場所がないため、3~4歳の子どもを1人で留守番させていることもあります。子どもを地元に残し、1年に一度しか子どもに会えないということもあるそうです。こういった現状を、多くの日本人が知らないのでは。

――そもそも、アパレル業界について深く考えずに、洋服を購入している人が多いのかもしれませんね。なぜ、女性たちは、過酷な労働環境を選ばざるを得ないのでしょうか。

仲村 バングラデシュでは女性の地位が低く、女性が働ける場は家政婦など限られた場所だけでした。縫製工場ができたことで、働く場所ができ、女性の社会進出を進めたというプラスの面があることも事実です。女性たちからすれば、劣悪な環境とはいえ仕事がなくなるよりはマシ、という思いもあるのでしょう。職を失えば、生活が立ち行かなくなり、子どもは学校に行けず、教育も受けられなくなる。「働かざるを得ない」状況なんです。

 ただ、工場内ではセクハラや暴力、給与未払い、劣悪な労働環境など、さまざまな問題が起きていて、彼女たちがそのような問題を訴えることすらできない状況があります。事故後、アパレルメーカーが縫製工場を調査する監視機関を設置するなど、いろいろなムーブメントが起こったものの、現地の方に聞くと、残念ながら現在もあまり状況は変わっていないようです。私たちは彼女たちの存在を忘れてはいけないと思います。こうした実態については、現地で詳しい調査をした茨城大学の長田華子准教授に詳しく教えていただきました。中高生向けにわかりやすく書いた著作もあるので、ぜひ読んでみてください。

――過酷な労働環境といえば、19年6月、NHKのドキュメンタリー番組『ノーナレ』が、愛媛県今治地域の縫製工場で働くベトナム人技能実習生たちの過酷な労働実態を取り上げました。1カ月の残業が180時間を超えるという内容でしたが、バングラデシュでの問題と同様の事案が日本でも起こっているのでしょうか。

仲村 同じような状況は、私たちの身近なところでも起きています。アパレル企業が人件費の安い国に発注するようになり、日本国内の縫製工場はどんどん衰退していった。工賃が非常に安くなり、働いている人たちに十分な給料を支払えません。中には、「技能実習生」という名目で受け入れた外国人を、国が定めた最低賃金を下回る不当な賃金で働かせている工場があり、問題になってきました。残念ながら、セクハラや性的嫌がらせ、給料の未払いなどの問題がある場合も少なくありません。本来、外国人技能実習制度は日本で技術を学び、母国で生かすことを目的としていますが、ひたすら同じ作業をさせられ、技術も身につかない状態で、ただただ安い賃金で長時間労働させているところがある。また、外部との接触を禁止され、日本語もままならないので、自分の置かれた状態が違法であることすら知らなかったり、おかしいと思ってもどこに訴えるのかもわからなかったりします。こうした実情が支援団体などを通じて少しずつ伝えられるようになり、国もようやく、そのような受け入れ団体への監視強化などを盛り込んだ法律を制定するなど、改善に向けて動くようになりました。

後編は3月5日午後9時公開

仲村和代(なかむら・かずよ) 
朝日新聞社会部記者。1979年、広島県生まれ。沖縄ルーツの転勤族で、これまで暮らした都市は10以上。2002年、朝日新聞社入社。長崎総局、西部報道センターなどを経て10年から東京本社社会部。著書に『ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から』、取材班の出版物に『孤族の国』(ともに朝日新聞出版)、共著に『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(光文社新書)がある。
Twitter: @coccodesho

「たたりちゃんは私だった」犬木加奈子が回顧する“少女ホラー全盛期”と“いじめの実態”【『サバイバー』インタビュー前編】

 80年代~90年代、全国の子どもたちのハートをわしづかみにしたホラー漫画家・犬木加奈子さん。『不思議のたたりちゃん』や『不気田くん』をはじめとする、一度見たら忘れられない恐怖心煽るタッチで描かれる、哀しく優しいドラマが展開される作品はどれも、大人になった今でも胸を打つ。そんな犬木さんは現在、児童虐待をテーマにした『サバイバー~破壊される子供たち~』(まんが王国)を連載中だ。かつてはたたりちゃんと同じ小学生、そして現在は最新作の加虐親と同世代となったいちファンが、ホラー全盛期から現在の活動までを、ファン目線で聞いた。

過去の自分に向けた「たたりちゃん」

――『不思議のたたりちゃん』には、小学生の頃たいへんお世話になりました! たたりちゃんの、哀しくも優しいあのキャラクターは、どうやって生み出されたんでしょうか?

犬木加奈子さん(以下、犬木) 「ヒット作を出さないと」と焦っていた頃、それまではなかったいじめ自殺に関する報道を頻繁に目にしたことが、着想のきっかけでしたね。

――1986年に起きた、担任までいじめに加担し生徒が自殺した「中野富士見中学いじめ自殺事件」でしょうか。

犬木 同時に、知り合いの漫画家から、「わたしなんか、給食の鍋を頭からかぶせられたことがあったよ」なんて聞いて、そういういじめって、物語のなかの話だと思っていたので「実態はもっと凄惨なのか」とびっくりしたんです。

犬木 わたし自身も学生時代は、自ら積極的に話しかけて友達の輪に入っていけるような、社交的なタイプではありませんでした。だからおのずと、1人でいることが多かったんです。そのときの、“教室にひとりでいる”あの感覚って、いたたまれないんですよねえ。「2人組をつくってください」と言われたときに、ポツンと1人になってしまうのも同じ感覚です。いじめられていたわけではないから、親や先生に言えないですし。

 ちょうど学校の図書館や教室の棚に、漫画が置かれ始めていた頃だったので、「教室で、いじめられている子やわたしのように馴染めない子が、読んでくれるといいな」「現実にはおとなしくて言い返すことさえできない子たちの心が、少しでも晴れるといいな」と思ったことが、『たたりちゃん』を描くきっかけになりました。

 特に休み時間ってつらいじゃないですか。だからその時間だけでも、「たたりちゃん=わたし」が、友達代わりになれればいいなと思ったんです。過去の自分に向けて描き始めたような思いもありましたね。

――友達代わり……だからたたりちゃんって、寄り添うような優しさがあったんですね。いじめられて「たたり~!」と言いスカッと勧善懲悪かと思いきや、いじめる側に対する優しさもあって、単純な“スカッと”ではないところが、大人になった今読んでも面白く読める一因です。

犬木 見え透いている、いかにも作り物のような世界に、昔から不信感を抱いていましたからねえ。「めでたし、めでたし」ではない物語が好きだったんです。だからデビュー当時は、「犬木の漫画は後味が悪い」とはよく言われましたね。

 たたりちゃんは、「たたり~!」をやったあと、反省するんです。それはまさに、当時描きながら悶々としていた自分の姿だと思います。読者の方たちに「仕返しが正義だ」と、物事を短絡的に見てほしくないなと思っていましたから。「仕返しなんて本当はいけないことだよね。わかってる、わかってるんだけどさ……」というたたりちゃんのやるせなさが、読者に響いたのかもしれませんね。

――読者からはどんな反響がありましたか?

犬木 連載で回を重ねるごとに、子どもたちからのファンレターが段ボールで届くようになりました。漫画に対する感想のほかには、「わたしは隣の席のみきちゃんとけんかをしてしまって」など、事細かに自分の悩み事が5、6枚にわたって綴られている手紙も多くて、「子どもたちは話を聞いてくれるお姉さん的存在を求めているのかな」と気づいたんです。それからは、“お姉さん”を貫くために年齢不詳にしました。実際には彼女らの母親と同世代でしたが、それだと子どもたちは、説教を食らっていると感じてしまうかもしれないから、ね。

――連載雑誌は王道の少女漫画誌『少女フレンド』(講談社)ですが、『たたりちゃん』は異彩を放っていました。

犬木 だからわたし、コンプレックスが強いんですよねえ。清く明るい“お少女漫画”のほうが、普通にイメージがいいですからね。『たたりちゃん』のネーム持ち込みも、「講談社で連載は無理だろうな」と思い、最初はほかの出版社に持ち込んだんです。でも軒並み「これはちょっと」と敬遠気味でした。当時のわたしは、『サスペンス&ホラー』(講談社)の連載陣であり89年の創刊時から表紙を描いていて、他社からも毎日のように仕事の依頼がある状況で、なにがなんだかわからないほど忙しくて、「このわたしが描いてあげるのに、どうして断られるの!?」と、思い上がっていたんです(笑)。

 当時のわたし、すごかったんですよ(笑)。担当編集さんから、「講談社の本の中で、5本の指に入る売り上げ」だと言われたこともありました。『サスホラ』の創刊号なんて、実売率が99%だったそうです。

――99%!? 何万部くらい売れていたんでしょうか?

犬木 創刊号が20万部で、そこから積み上げていったようですね。最終的には、当初は「ホラー誌では描きたくない」と言っていた少女フレンドの作家陣たちも、「サスホラで描きたい」と言うようになったそうです。その後、各出版社こぞってホラー誌を作っていましたよね。

犬木 そんな背景もあり、『少女フレンド』で『たたりちゃん』の企画が通ったんですよね。なにより、企画を通してくれた担当編集さんのおかげですね。

――当時、なぜそんなにホラー誌が売れたんでしょうか?

犬木 1955年、ホラー漫画が一斉に消えた時代がありました。悪書追放運動として一斉に漫画がバッシングされ、水木しげる先生でさえ仕事に困っていた時代です。今でいう“コンプライアンス”ですね。そうしたなか、『サスホラ』創刊の80年代後半あたりから、ようやく大手出版社でホラー漫画が解禁になり始めました。それで、子どもたちが一斉に飛びついたんですね。子どもって好奇心の塊だから、怖い話が大好きなんですよ。それでホラー漫画ブームが来たのかなと思います。

――当時、犬木先生の元に、「これはけしからん!」という声は届きましたか?

犬木 なかったですね。そうそう、最近インタビューをしていただく機会があるんですが、必ずインタビュアーの方に「コンプライアンス的な締め付けはありませんでしたか?」って聞かれるんですよ。

――最新作『サバイバー』を連載中ですが、それに関するインタビューですね。児童虐待をテーマにした作品で、子どもへの暴力やネグレクトの末の凍傷での足指欠損など、リアリティのある描写が満載です。こちらはどういったきっかけで描くことになったんですか?

犬木 数年前まで漫画家としての活動を10年以上休養していましたが、その間、図書館で興味を引く本を読みまくっていました。すると児童虐待に関する本に行き着き、読み漁り、平和で淡々とした日常を送るわたしたちには想像を絶する“異常な空間”があるのだと、衝撃を受けたんです。

 そんなときに連載のお話をいただきました。それで担当編集さん(※インタビュー同席)に、「いま児童虐待に関する本を読んでいて、これをテーマにしたい」と相談し、前向きに考えてくださったんです。でも、企画が通るまでに時間がかかりましたよね? しかも、ネームを1、2本描き終えた頃、千葉県の児童虐待死事件が起きたんです。

 これまで、「虐待は経済的に恵まれない家庭で起こりそう」という思い込みがあったかと思いますが、『サバイバー』で虐待をするのは歯医者を営む父親にしました。「知的水準が高く裕福な家でこそ起こっている問題だ」ということを、世の中の人に知ってほしかったという思いがあったから。そんななか、千葉の事件の父親が、まさにそれで。「わたしの漫画ともろかぶっている」と思いながら、過激表現のレギュレーションに引っかかるのではないかとビクビクしながら描いていました。

担当編集 連載相談をしたのが2018年10月で、決定が19年のはじめですね。その直後、1月25日に野田小4女児虐待事件が報道されて。でも『サバイバー』はまったく引っかかりませんでした。

犬木 そうだったんだ!

担当編集 レディコミのように「エンタメとして面白く見せる」という意図ではなく、社会派ヒューマンドラマとして「リアルを見せる」ものだったので。

――“下世話”な切り口ではない、ということですね。

犬木 好奇心そそるグロテスクな面だけを見せると“不謹慎”になるけど、そうではないですからね。

担当編集 先生は、過去の実在事件を細かに調べていて、虐待を受けた子どもの“その後”を受け入れる施設が少ないことを問題視していました。生き残った子がその後どうなるのかって、報道もされませんしね。それが今回の『サバイバー』のひとつのテーマでもあります。非現実的要素を入れず、リアル視点で描いていただいているので、問題はありませんでした。配信前は、会社のほうからはかなり言われましたけどね。

犬木 ごめんなさい!

担当編集 「東証一部に上場している会社が、こういったテーマって、どうなの?」みたいな……。

――どういうことでしょう?

担当編集 電子書籍の販促のカギはバナー広告です。「虐待をテーマにすると、広告出稿先のレギュレーションに引っかかるのではないか?」という懸念があったようなんですよ。実はそれで一度、連載会議でボツになったんです。でも、自分が責任を持つ形で半ば強制的に企画を通したという経緯があります。

犬木 わたしっていつもそうなんです! こんなわたしに作品を描かせてくださって! だからいつも担当さんには頭が上がらないのよねえ。

――先生の漫画は、世に出す意義がありますもん! 

(後編は3月5日公開)

「たたりちゃんは私だった」犬木加奈子が回顧する“少女ホラー全盛期”と“いじめの実態”【『サバイバー』インタビュー前編】

 80年代~90年代、全国の子どもたちのハートをわしづかみにしたホラー漫画家・犬木加奈子さん。『不思議のたたりちゃん』や『不気田くん』をはじめとする、一度見たら忘れられない恐怖心煽るタッチで描かれる、哀しく優しいドラマが展開される作品はどれも、大人になった今でも胸を打つ。そんな犬木さんは現在、児童虐待をテーマにした『サバイバー~破壊される子供たち~』(まんが王国)を連載中だ。かつてはたたりちゃんと同じ小学生、そして現在は最新作の加虐親と同世代となったいちファンが、ホラー全盛期から現在の活動までを、ファン目線で聞いた。

過去の自分に向けた「たたりちゃん」

――『不思議のたたりちゃん』には、小学生の頃たいへんお世話になりました! たたりちゃんの、哀しくも優しいあのキャラクターは、どうやって生み出されたんでしょうか?

犬木加奈子さん(以下、犬木) 「ヒット作を出さないと」と焦っていた頃、それまではなかったいじめ自殺に関する報道を頻繁に目にしたことが、着想のきっかけでしたね。

――1986年に起きた、担任までいじめに加担し生徒が自殺した「中野富士見中学いじめ自殺事件」でしょうか。

犬木 同時に、知り合いの漫画家から、「わたしなんか、給食の鍋を頭からかぶせられたことがあったよ」なんて聞いて、そういういじめって、物語のなかの話だと思っていたので「実態はもっと凄惨なのか」とびっくりしたんです。

犬木 わたし自身も学生時代は、自ら積極的に話しかけて友達の輪に入っていけるような、社交的なタイプではありませんでした。だからおのずと、1人でいることが多かったんです。そのときの、“教室にひとりでいる”あの感覚って、いたたまれないんですよねえ。「2人組をつくってください」と言われたときに、ポツンと1人になってしまうのも同じ感覚です。いじめられていたわけではないから、親や先生に言えないですし。

 ちょうど学校の図書館や教室の棚に、漫画が置かれ始めていた頃だったので、「教室で、いじめられている子やわたしのように馴染めない子が、読んでくれるといいな」「現実にはおとなしくて言い返すことさえできない子たちの心が、少しでも晴れるといいな」と思ったことが、『たたりちゃん』を描くきっかけになりました。

 特に休み時間ってつらいじゃないですか。だからその時間だけでも、「たたりちゃん=わたし」が、友達代わりになれればいいなと思ったんです。過去の自分に向けて描き始めたような思いもありましたね。

――友達代わり……だからたたりちゃんって、寄り添うような優しさがあったんですね。いじめられて「たたり~!」と言いスカッと勧善懲悪かと思いきや、いじめる側に対する優しさもあって、単純な“スカッと”ではないところが、大人になった今読んでも面白く読める一因です。

犬木 見え透いている、いかにも作り物のような世界に、昔から不信感を抱いていましたからねえ。「めでたし、めでたし」ではない物語が好きだったんです。だからデビュー当時は、「犬木の漫画は後味が悪い」とはよく言われましたね。

 たたりちゃんは、「たたり~!」をやったあと、反省するんです。それはまさに、当時描きながら悶々としていた自分の姿だと思います。読者の方たちに「仕返しが正義だ」と、物事を短絡的に見てほしくないなと思っていましたから。「仕返しなんて本当はいけないことだよね。わかってる、わかってるんだけどさ……」というたたりちゃんのやるせなさが、読者に響いたのかもしれませんね。

――読者からはどんな反響がありましたか?

犬木 連載で回を重ねるごとに、子どもたちからのファンレターが段ボールで届くようになりました。漫画に対する感想のほかには、「わたしは隣の席のみきちゃんとけんかをしてしまって」など、事細かに自分の悩み事が5、6枚にわたって綴られている手紙も多くて、「子どもたちは話を聞いてくれるお姉さん的存在を求めているのかな」と気づいたんです。それからは、“お姉さん”を貫くために年齢不詳にしました。実際には彼女らの母親と同世代でしたが、それだと子どもたちは、説教を食らっていると感じてしまうかもしれないから、ね。

――連載雑誌は王道の少女漫画誌『少女フレンド』(講談社)ですが、『たたりちゃん』は異彩を放っていました。

犬木 だからわたし、コンプレックスが強いんですよねえ。清く明るい“お少女漫画”のほうが、普通にイメージがいいですからね。『たたりちゃん』のネーム持ち込みも、「講談社で連載は無理だろうな」と思い、最初はほかの出版社に持ち込んだんです。でも軒並み「これはちょっと」と敬遠気味でした。当時のわたしは、『サスペンス&ホラー』(講談社)の連載陣であり89年の創刊時から表紙を描いていて、他社からも毎日のように仕事の依頼がある状況で、なにがなんだかわからないほど忙しくて、「このわたしが描いてあげるのに、どうして断られるの!?」と、思い上がっていたんです(笑)。

 当時のわたし、すごかったんですよ(笑)。担当編集さんから、「講談社の本の中で、5本の指に入る売り上げ」だと言われたこともありました。『サスホラ』の創刊号なんて、実売率が99%だったそうです。

――99%!? 何万部くらい売れていたんでしょうか?

犬木 創刊号が20万部で、そこから積み上げていったようですね。最終的には、当初は「ホラー誌では描きたくない」と言っていた少女フレンドの作家陣たちも、「サスホラで描きたい」と言うようになったそうです。その後、各出版社こぞってホラー誌を作っていましたよね。

犬木 そんな背景もあり、『少女フレンド』で『たたりちゃん』の企画が通ったんですよね。なにより、企画を通してくれた担当編集さんのおかげですね。

――当時、なぜそんなにホラー誌が売れたんでしょうか?

犬木 1955年、ホラー漫画が一斉に消えた時代がありました。悪書追放運動として一斉に漫画がバッシングされ、水木しげる先生でさえ仕事に困っていた時代です。今でいう“コンプライアンス”ですね。そうしたなか、『サスホラ』創刊の80年代後半あたりから、ようやく大手出版社でホラー漫画が解禁になり始めました。それで、子どもたちが一斉に飛びついたんですね。子どもって好奇心の塊だから、怖い話が大好きなんですよ。それでホラー漫画ブームが来たのかなと思います。

――当時、犬木先生の元に、「これはけしからん!」という声は届きましたか?

犬木 なかったですね。そうそう、最近インタビューをしていただく機会があるんですが、必ずインタビュアーの方に「コンプライアンス的な締め付けはありませんでしたか?」って聞かれるんですよ。

――最新作『サバイバー』を連載中ですが、それに関するインタビューですね。児童虐待をテーマにした作品で、子どもへの暴力やネグレクトの末の凍傷での足指欠損など、リアリティのある描写が満載です。こちらはどういったきっかけで描くことになったんですか?

犬木 数年前まで漫画家としての活動を10年以上休養していましたが、その間、図書館で興味を引く本を読みまくっていました。すると児童虐待に関する本に行き着き、読み漁り、平和で淡々とした日常を送るわたしたちには想像を絶する“異常な空間”があるのだと、衝撃を受けたんです。

 そんなときに連載のお話をいただきました。それで担当編集さん(※インタビュー同席)に、「いま児童虐待に関する本を読んでいて、これをテーマにしたい」と相談し、前向きに考えてくださったんです。でも、企画が通るまでに時間がかかりましたよね? しかも、ネームを1、2本描き終えた頃、千葉県の児童虐待死事件が起きたんです。

 これまで、「虐待は経済的に恵まれない家庭で起こりそう」という思い込みがあったかと思いますが、『サバイバー』で虐待をするのは歯医者を営む父親にしました。「知的水準が高く裕福な家でこそ起こっている問題だ」ということを、世の中の人に知ってほしかったという思いがあったから。そんななか、千葉の事件の父親が、まさにそれで。「わたしの漫画ともろかぶっている」と思いながら、過激表現のレギュレーションに引っかかるのではないかとビクビクしながら描いていました。

担当編集 連載相談をしたのが2018年10月で、決定が19年のはじめですね。その直後、1月25日に野田小4女児虐待事件が報道されて。でも『サバイバー』はまったく引っかかりませんでした。

犬木 そうだったんだ!

担当編集 レディコミのように「エンタメとして面白く見せる」という意図ではなく、社会派ヒューマンドラマとして「リアルを見せる」ものだったので。

――“下世話”な切り口ではない、ということですね。

犬木 好奇心そそるグロテスクな面だけを見せると“不謹慎”になるけど、そうではないですからね。

担当編集 先生は、過去の実在事件を細かに調べていて、虐待を受けた子どもの“その後”を受け入れる施設が少ないことを問題視していました。生き残った子がその後どうなるのかって、報道もされませんしね。それが今回の『サバイバー』のひとつのテーマでもあります。非現実的要素を入れず、リアル視点で描いていただいているので、問題はありませんでした。配信前は、会社のほうからはかなり言われましたけどね。

犬木 ごめんなさい!

担当編集 「東証一部に上場している会社が、こういったテーマって、どうなの?」みたいな……。

――どういうことでしょう?

担当編集 電子書籍の販促のカギはバナー広告です。「虐待をテーマにすると、広告出稿先のレギュレーションに引っかかるのではないか?」という懸念があったようなんですよ。実はそれで一度、連載会議でボツになったんです。でも、自分が責任を持つ形で半ば強制的に企画を通したという経緯があります。

犬木 わたしっていつもそうなんです! こんなわたしに作品を描かせてくださって! だからいつも担当さんには頭が上がらないのよねえ。

――先生の漫画は、世に出す意義がありますもん! 

(後編は3月5日公開)

メルカリが無法地帯!? コロナパニックで「エタノール」「スピリタス」転売の違法性を、弁護士解説

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、先ごろからマスクが品薄状態となり、「メルカリ」などのフリマアプリや「ヤフオク!」などのオークションサイトで、高額転売される事態になっている。そんな中、感染予防に「消毒」が重要視されていることから、消毒用エタノールにもマスクと同様の問題が浮上。さらには、アルコール度数96度というウォッカ「スピリタス」を消毒液の代替品にする流れもあり、こちらも転売が散見されるようになっているのだ。

 新型コロナウイルスに対する恐怖心につけ込む高額転売には、ネット上で批判の声が続出しているが、中には「違法性があるのでは?」といった疑問の声も出ている。というのも、消毒用エタノールは「医薬品」というイメージがあるため、「それを転売するのは問題ないのか?」と言われているのだ。また、酒類の転売も違法性が疑われる中、今回その実際を、山岸純法律事務所の山岸純弁護士に聞いた。

 まず、「医薬品」と一口に言っても「医療用医薬品」「要指導医薬品」「一般用医薬品(第一類、第二類、第三類)」があると山岸氏。これらは、「薬機法第24条によって、許可がない限り『転売』もできません」とズバリ指摘する。

「許可がないのに、医薬品を転売した場合、薬機法第84条により、3年以下の懲役や300万円以下の罰金という重い罪が科せられます」

 しかし、「医薬部外品」とされているものは、このような許可がなくても「転売可能」。エタノールには製品によって、「医薬品」のものと「医薬部外品」のものがあり、現状メルカリに「エタノール」として出品されているものには、その判別がつかないものも少なくないが、一歩間違うと、出品者は罪に問われることになるようだ。

 一方で、消毒液の代替品として、アルコール度数の高い酒が転売されている件についてはどうだろう。山岸氏いわく、「自分で飲むつもりで購入した酒類を、たまたま転売するような場合は違法ではありません」というが……。

「インターネットなどで、繰り返し繰り返し転売しているような場合は、アルコールの転売を『業』として行っていると考えられます。そのため本来、税務署に申請し、審査を受けて、『酒類販売業』の免許を取得しなければなりません」

 免許がないのに酒類を転売した場合、酒税法56条により、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます」というだけに、新型コロナウイルス感染拡大のパニックに乗じ、こうした酒類を何度も転売していると、法に触れる可能性が出てくるだろう。

 また「メルカリ」や「ヤフオク!」でこういった製品を購入する側も、注意が必要と山岸氏。

「『エタノール』に似たものとして、毒性のある『メタノール』があります。高額転売している輩は、免許もない素人でしょうから、間違って『メタノール』を販売してしまっている……そんな危険性も否定できないでしょう。やはりプロがいる薬局で買うに越したことはありません」

 何よりもまず、マスクも含め、消毒用エタノールの品薄状態が解消されること、新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かうことを祈りたい。
(解説 山岸純弁護士/取材・文 サイゾーウーマン編集部)

虐待を受けた子どもの苦しみを理解する重要性――NHK『クロ現』「虐待後」を生きる~癒えない心の傷~

2月26日に放送されたNHK『クローズアップ現代+』、「『虐待後』を生きる ~癒えない“心の傷”~」が大きな反響を呼んでいる。その番組内容について、都内の児童相談所に心理の専門家として19年間勤務し、『告発 児童相談所が子供を殺す』(文藝春秋)などの著書がある山脇由貴子氏が考察する。

 2月26日、NHK『クローズアップ現代』で、虐待されて育った若者たちが紹介された。人との関わりが持てず、生活保護を受けながら一人暮らしをする若者。半グレ集団に所属し、違法薬物所持で実刑判決を受けた若者。自立援助ホームで生活しながら、複数の男性と性的関係を持ってしまい、妊娠して、中絶した17歳の女の子。番組には虐待を受けた子どもたちの生きる苦しさやつらさが映し出されていた。

私も、児童相談所に勤務している間、親から虐待を受け、施設で生活をしなければならなくなった子どもをたくさん見てきた。そういった子どもの心の傷は本当に深く、短期間で癒やされるものではない。

 しかし、児童相談所も、子どもを親から離し、安全な場所である施設に入れることがゴールと考えがちだ。その後の子どもたちの心のケア、自立に向けての支援は決して十分ではない。国も、児童相談所強化プランを打ち出しているが、保護後のケアについての方針は何も出していない。虐待を受けた子どもの苦しみが理解されていないからだ。

 児童相談所が子どもに関われるのは18歳まで。児童養護施設も原則高校卒業で退所となる。奨学金をもらいながら進学する子もいるが、虐待を受けた子どもたちには頼れる親はいない。だから、必然的に高校を卒業した後は自立を強いられる。

 虐待など受けず、健康に育った子どもでも18歳で自立するのは難しい。それなのに、心に傷を負ったままの子どもたちは、18歳でいきなり生活場所を失い、面倒をみてくれる人もいなくなり、相談できる人もいない中で、自立しなくてはならないのだ。

 番組内で紹介された若者と同様、虐待を受けた子どもは人との関わりを持つのが難しい。自分を否定され続けて育ったために、叱責を受け止める力がなく、叱責にも弱い。暴力を振るった親を思い出す、といったフラッシュバックを起こすからだ。加えて、人に対する安心感がなく、人を信頼できないからだ。本来なら自分にとって最も安心できる存在であり、守ってくれるべき親が自分を脅かす存在だったのだから、誰に対しても安心できず、信頼できないのは当然のことだ。

 だから仕事を続けるのが難しくなる。また、うつ状態になってしまい、外に出られなくなる。人の視線が怖い、常に悪口を言われているような気がする、という症状によって、人との関わりが難しくなるのだ。

 番組に登場した半グレ集団に所属していた若者は、所属する場所がない孤独感によって、グループから言われることを何でも受け入れてしまった、と語った。「断ることができない」というのも、虐待を受けて育った子どもの特徴だ。嫌われたくない、不機嫌になってほしくない、そして失いたくない。その気持ちから、頼まれたことは何でも引き受けてしまうのだ。頼まれると断れないため、女の子たちは性被害に遭いやすくなる。

 10代から複数の男性と性的関係を持ってしまうのも、虐待を受けて育った女の子には珍しくない。強い孤独感を解消したいからだ。そして、愛してほしいからだ。彼女たちは「優しくしてくれるなら誰でもいい」と言うし、「抱きしめてくれるだけでうれしい」と言う。高校生の女の子が、ネットで知り合った40代のおじさんから抱きしめてもらって「うれしい」と感じるのだ。それが瞬間的であっても。「自分を大事にしなさい」と周りの大人からどれだけ言われても、彼女たちには通じない。大事にされたことがないから、大事にする、ということがどういうことかわからないのだ。

 自傷行為を繰り返す子どもも少なくない。大人になっても続く場合が多い。リストカットや太ももを傷つける、大量服薬、過食嘔吐。全ては愛情を注いでもらえなかったことにより、毎日生きているのが苦しいからであり、自分が生きている意味を見出せないからであり、将来に希望が持てないから。そして、頼れる人、相談できる人がいないからだ。

 私のオフィスにも、児童相談所時代に関わった、たくさんの子どもが大人になった今も苦しみを抱え、通って来ている。中には、30歳を過ぎている女性もいる。皆、いまだに心の傷が癒えておらず、時に死にたくなったり、涙が止まらなくなったり、親の事を思い出して苦しくなるからだ。

 虐待を乗り越えたとして番組に出てきた41歳の男性は、今は妻と子ども2人と生活している。虐待を乗り越えたきっかけは、市民セミナーで自分史を作り、皆の前で虐待経験を語り、それが受け入れられたことだった。自分の生い立ちを整理するのは、虐待を乗り越えるために重要だ。思い出すのがつらくても、親にどんなことをされたのか。それが今の自分をどんなふうに苦しめ、生きづらくさせているのか。そして自分はまったく悪くなかったことを、誰かに認めてもらうことが重要なのだ。

 虐待を受けて育った子どもへのケアはもっと手厚くすべきだ。彼らの抱える心の傷を考えると、生活場所の保証はもちろんのこと、就職先にも抱えている問題を理解してもらうこと、生活費の援助も国は検討すべきだと私は思う。

 番組の最後には、京都の新しい取り組みが紹介された。地域で支える、という発想だ。地域の中小企業グループが虐待を受けた子どもを引き受け、転職もよしとする。そして地域の人たちが、子どもの親代わりとして関わる。親がいない子どもたちにとっては心強いことだろう。国が子どもたちへのケアを手厚くする、と並行し、地域で支える、ということも、進めてゆくべきではないだろうか。

元依存者がギャンブル業界の“矛盾”解説――IR、厚労省「ギャンブル依存症対策」の“まやかし”

 カジノを含む統合型リゾート(IR)の設置を受け、厚生労働省はギャンブル依存症の治療を4月から公的医療保険の対象とする方針を示し、賛否両論が起きている。この方針の問題点とは何なのか? 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表で、『祖父・父・夫がギャンブル依存症!三代目ギャン妻の物語』(高文研)の著書があり、自身も同依存症を抱えていた田中紀子氏に聞いた。

今回の厚労省の発表のポイント

――IRと関連し、ギャンブル依存症の治療について公的医療保険の適用対象とする、という方針が発表され、波紋を呼んでいます。

田中紀子氏(以下、田中) マスコミの書き方で誤解されている方も多いと思うのですが、「ギャンブル依存の診断、治療に対する公的医療保険」はすでに適用済みなんです。今回の厚労省の発表のポイントは、グループ療法が新たに保険適用されるという点です。

 私自身は自助グループにも通っていますが、(医療機関による)グループ療法を保険の対象にする、という今回の方針は問題があると思います。

※自助グループ:同じ困難や課題を抱える個人や家族など当事者同士が結びついた集団。問題の専門家はグループに不在で、あくまで当事者による集団であることが特徴。
※グループ療法:同じ困難を抱える患者と、その領域の治療者がひとつのグループとなり、治療を行う心理療法。

――医療機関によるグループ療法は、どういった点が問題なのでしょうか?

田中 まず1つ目は、医療機関等の抱え込みによって、自助グループが衰退してしまうこと。ギャンブル依存症はアルコールや薬物に比べて圧倒的に自助グループが少なく、アルコールの10分の1以下しかありません。ギャンブル依存症から回復し、ギャンブルをやめ続けるには自助グループが必要です。「同じ問題を抱えたほかの誰かを助ける」という役割を果たすことで、自分自身がやめ続けられるという、つまり「助けるものが助かる」という好循環が自助グループにはあります。金銭面からみても、税金はもちろんお金がほとんどかからない最良の依存症の受け皿です。まず、自助グループを育てることこそが日本の課題なのです。

 私自身、30代の若い10年をギャンブル依存に費やし、数千万円を使いました。後悔とか罪悪感で心が押しつぶされそうになるわけです。でも、ギャンブル依存症の人を助けるという使命ができた時に、そのつらい経験が初めて生かされる。見ないでおきたい、忘れたいと思っていた体験が、すごく価値のあるものに変わるわけです。それが、「あのときのことなんて二度と考えたくない」となってしまうと結局ギャンブルでそれを解消するしかないわけです。過去の経験に意義や、役割、使命ができた時に、回復につながるんです。

 2つ目の問題点は、今回の(医療機関による)グループ療法には医療保険が適用される期限が設けられていないこと。これにより、病院の中には「卒業」させず、ずっと患者でいてくれた方が儲かるからと、自助グループと連携しようとしないところがでてきます。自分たちのところで囲い込んでしまおうということです。

――医療費削減は国家的な課題であるはずですが、逆行しているように見えます。

田中 自助グループは、国などの補助も受けず、自立した活動を行っています。私たちもギャンブル依存対策について、「できるだけ社会負担費を増やすな」というスタンスをとっています。まずギャンブル業界がギャンブル依存対策に対する努力を最大限に払ってから、医療費といった社会負担費を増やすべきだと思っています。ギャンブル産業側が義務を果たさないうちから、国民が真っ先に負担するのはおかしいですよ。

 トヨタ自動車が交通事故を削減できるような車を開発するように、自社の産業の負の側面に、もう少し責任を持たせる必要がありますよね。依存症者を大量に生み出すだけの今のギャンブル産業の在り方は間違っていると思います。

――なんで厚労省発表は、今すでにある自助グループの仕組みを活かさなかったんでしょうか?

田中 医療機関に関わらせることで、利権を得る人が政権に近いからではないでしょうか? 私たちのような民間団体や自助グループは政治的な力もないし、政治家にとってもうまみがないですから。私たちの声はヒアリングすら行ってもらえていません。

――ギャンブルだけでなく、依存症に対するマスメディアの取り上げ方に思うことはありますか?

田中 依存症に対するネガティブなスティグマ(烙印)をメディアが植え付けすぎていますね。回復した、立ち直って社会に復帰していく姿を映さないで、問題を起こした時のスキャンダラスなところしか映さない。だから、こんな人たちと一緒だと思われたくないと自助グループや医療機関に行くことに抵抗ができてしまう。

 また、そもそもメディアに取り上げられる依存は「違法薬物依存」が多いですよね。ギャンブルは巨大産業ですから、スポンサーでもある産業に忖度して負の側面である依存症にはあまり触れられないわけです。一方、違法薬物は「産業」ではないから叩きやすい。

――酒もギャンブルも、ゲームや動画などネットのさまざまなコンテンツも、民放メディアにおいて重要なスポンサーですね。

田中 だから違法薬物がスケープゴート的に叩かれているところもあるんです。処方薬や市販薬の依存の方がよっぽど違法薬物の依存より多いんですが、そこは叩かれないんです。製薬産業ですから。

――そうした産業の発展を追い求める一方で、依存に陥った人のフォローに関しては野放し。そういう意味では依存って、個人の問題ではなく、社会の問題ですね。

田中 だから本当にものすごく依存症って、大変なんですよ。
(解説:田中紀子 取材・文:石徹白未亜)

コクミンドラッグ「マスクと高額商品」抱き合わせ商法は「違法」か? 弁護士が「ゲス」と一刀両断

 新型コロナウイルスの感染拡大により、全国的に「マスク不足」が叫ばれる中、2月20日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が、薬局チェーン大手「コクミンドラッグ」の悪質な“抱き合わせ販売”について報じた。

 同誌によると、2月上旬から、中国人客の多い店舗で、「500円程度のマスクを強壮剤や化粧品などとあわせて9000円前後で販売」していたとのこと。しかし、日本人客にも誤って抱き合わせ販売をしてしまい、クレーム騒動になり、取りやめになったと伝えている。

 運営会社のコクミンは、公式サイト上で、この報道に対し、「2020年2月、当社の運営するコクミンドラッグのお客様からのご指摘により、一部店舗において、マスクを購入されるお客様に対して誤解を招く恐れのある販売方法を行っていたことが確認されました。当該事案が発覚後、すみやかにこのような販売方法の中止を店舗に通達しております」と謝罪文を発表した。

 コクミンドラッグのマスク需要の高さを利用した抱き合わせ販売に対して、ネット上には「こんな企業あり得ない」「モラルがない」「ひどすぎる」といった怒りの声が噴出。中には、「これって違法じゃないの?」と販売方法に疑問を抱くコメントも散見される。そこで今回、山岸純法律事務所の山岸純弁護士に見解をお聞きした。

コクミンドラッグの販売方法は「ゲスと言っていい」

 一般的に「抱き合わせ販売」とは、ある商品を販売する際、ほかの商品もセットで購入させる商法を指し、「これ自体は販売手法としてよくある話」と山岸氏。

 しかし、コクミンドラッグの抱き合わせ販売に関しては、「ゲスと言っていいレベル」と率直な感想を述べる。「マンガやドラマの世界に出てくるような悪徳業者のやり方。法律違反どうのこうの前に、まず世論によって完膚なきまでに批判されるべきでしょう」という。

「独占禁止法では『相手方に対し、不当に商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引をするように強制すること』を『不公正な取引方法』としており、このような場合、違法となります」

 不当かどうかについては、「1.業者の本来的な競争が阻害されるかどうか」「2.価格や品質やサービス力で勝負するのではなく、抱き合わせる商品で、買い手の購買意欲を引きつけているかどうか」「3.買い手が自由に、買うか買わないかを自主的に判断できるような状況かどうか」を検討することになるそうだ。

「今回の場合、マスクという、現状多くの人が求めてやまない商品に対し、そんなに売れないような高額商品を抱き合わせており、その業者側の意図も明らかですから、『不当』となることでしょう。この場合、罰則や課徴金の対象にはなりませんが、業者名が公表されたり、商売の改善を命ずる排除措置命令という厳しい行政処分が出ることも考えられます」

 今回、「中国人客を対象」にしていたというのも、悪質度が高いと見る向きがあるが、「国籍は関係ありません。ただし今、特に中国の方に、新型コロナウイルスの被害が広まっていることを考えると、業者側には『中国人にマスクのニーズが高い』という抱き合わせ販売の動機があったわけです。これにより違法性は高まることでしょう」という。

 なお、抱き合わせ販売の話で、よくネット上で話題に上るのが、「アイドルの握手券付きCD」だ。

「このような握手券は、市場に出ているものではなく、あくまで『おまけ』として考えられている……要するに握手券だけを購入するということがあり得ないので、違法ではないとされています。これに対し、マイクロソフト社がexcelやwordを最初から搭載したパソコンを販売するよう、パソコンメーカーに要請したことについては、マイクロソフト社の『シェア率アップ』という意図が明らかだったので違法とされました」

 新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの人が混乱に陥る最中に起こった今回の騒動。山岸氏は、フリマアプリ「メルカリ」などで、マスクが高額転売されていることも懸念しており、「物価統制令という、物価高騰(インフレ)を政策的に回避するような法律がありますが、適用されることはなかなかないのです。残念ですが、高額転売する者に刑罰などの不利益が課される可能性は極めて低いと考えざるを得ません。こういうときこそ、メルカリなどの運営者側がしっかり対応すべきです」と心中を語った。

 マスクをめぐる騒動がこれ以上勃発しないよう、一日も早いマスク不足の解消、そしてそれ以上に新型コロナウイルス感染が長期化しないことが望まれる。

コクミンドラッグ「マスクと高額商品」抱き合わせ商法は「違法」か? 弁護士が「ゲス」と一刀両断

 新型コロナウイルスの感染拡大により、全国的に「マスク不足」が叫ばれる中、2月20日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が、薬局チェーン大手「コクミンドラッグ」の悪質な“抱き合わせ販売”について報じた。

 同誌によると、2月上旬から、中国人客の多い店舗で、「500円程度のマスクを強壮剤や化粧品などとあわせて9000円前後で販売」していたとのこと。しかし、日本人客にも誤って抱き合わせ販売をしてしまい、クレーム騒動になり、取りやめになったと伝えている。

 運営会社のコクミンは、公式サイト上で、この報道に対し、「2020年2月、当社の運営するコクミンドラッグのお客様からのご指摘により、一部店舗において、マスクを購入されるお客様に対して誤解を招く恐れのある販売方法を行っていたことが確認されました。当該事案が発覚後、すみやかにこのような販売方法の中止を店舗に通達しております」と謝罪文を発表した。

 コクミンドラッグのマスク需要の高さを利用した抱き合わせ販売に対して、ネット上には「こんな企業あり得ない」「モラルがない」「ひどすぎる」といった怒りの声が噴出。中には、「これって違法じゃないの?」と販売方法に疑問を抱くコメントも散見される。そこで今回、山岸純法律事務所の山岸純弁護士に見解をお聞きした。

コクミンドラッグの販売方法は「ゲスと言っていい」

 一般的に「抱き合わせ販売」とは、ある商品を販売する際、ほかの商品もセットで購入させる商法を指し、「これ自体は販売手法としてよくある話」と山岸氏。

 しかし、コクミンドラッグの抱き合わせ販売に関しては、「ゲスと言っていいレベル」と率直な感想を述べる。「マンガやドラマの世界に出てくるような悪徳業者のやり方。法律違反どうのこうの前に、まず世論によって完膚なきまでに批判されるべきでしょう」という。

「独占禁止法では『相手方に対し、不当に商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引をするように強制すること』を『不公正な取引方法』としており、このような場合、違法となります」

 不当かどうかについては、「1.業者の本来的な競争が阻害されるかどうか」「2.価格や品質やサービス力で勝負するのではなく、抱き合わせる商品で、買い手の購買意欲を引きつけているかどうか」「3.買い手が自由に、買うか買わないかを自主的に判断できるような状況かどうか」を検討することになるそうだ。

「今回の場合、マスクという、現状多くの人が求めてやまない商品に対し、そんなに売れないような高額商品を抱き合わせており、その業者側の意図も明らかですから、『不当』となることでしょう。この場合、罰則や課徴金の対象にはなりませんが、業者名が公表されたり、商売の改善を命ずる排除措置命令という厳しい行政処分が出ることも考えられます」

 今回、「中国人客を対象」にしていたというのも、悪質度が高いと見る向きがあるが、「国籍は関係ありません。ただし今、特に中国の方に、新型コロナウイルスの被害が広まっていることを考えると、業者側には『中国人にマスクのニーズが高い』という抱き合わせ販売の動機があったわけです。これにより違法性は高まることでしょう」という。

 なお、抱き合わせ販売の話で、よくネット上で話題に上るのが、「アイドルの握手券付きCD」だ。

「このような握手券は、市場に出ているものではなく、あくまで『おまけ』として考えられている……要するに握手券だけを購入するということがあり得ないので、違法ではないとされています。これに対し、マイクロソフト社がexcelやwordを最初から搭載したパソコンを販売するよう、パソコンメーカーに要請したことについては、マイクロソフト社の『シェア率アップ』という意図が明らかだったので違法とされました」

 新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの人が混乱に陥る最中に起こった今回の騒動。山岸氏は、フリマアプリ「メルカリ」などで、マスクが高額転売されていることも懸念しており、「物価統制令という、物価高騰(インフレ)を政策的に回避するような法律がありますが、適用されることはなかなかないのです。残念ですが、高額転売する者に刑罰などの不利益が課される可能性は極めて低いと考えざるを得ません。こういうときこそ、メルカリなどの運営者側がしっかり対応すべきです」と心中を語った。

 マスクをめぐる騒動がこれ以上勃発しないよう、一日も早いマスク不足の解消、そしてそれ以上に新型コロナウイルス感染が長期化しないことが望まれる。

眞子さま、結婚問題に関する発表をスルー? 小室圭さんの現状は? 皇室ウォッチャーが考察

 宮内庁が、眞子さまと小室圭さんの結婚に関し、「2020年までの延期」を発表してから、2月6日で丸2年が経過した。昨年11月、秋篠宮さまがお誕生日会見において「(結婚に関して)何らかのことは発表する必要があると私は思っております」と発言していたことから、丸2年を迎えるタイミングで、眞子さまからお気持ちの発表があるのではないかと目されていたものの、現段階では何のアクションもみられない。眞子さまは秋篠宮さまの要請に無言を貫くのか、一方で小室さんは現在どのような状況にあるのか。皇室ウォッチャーX氏に見解をお聞きした。

――2月6日頃に、眞子さまから結婚に関する何らかの発表があると言われてきましたが、いまのところ何も音沙汰がありません。

皇室ウォッチャーX氏(以下、X) 確かに、2月6日を過ぎても、宮内庁を通じて眞子さまの結婚問題に関する発表はありませんが、さすがにスルーすることはないでしょう。そもそも、2年前の延期発表の際には、お代替わりの重要行事が終わった20年に、あらためて結婚儀式に関するスケジュールを発表すると言っていましたし、「結婚」「延期」「破談」のいずれの結果になろうとも、年内には必ず何らかの発表はあるはずです。もし、それがなかった場合、秋篠宮ご夫妻と眞子さまの話し合いが難航していて、発表内容が確定できない状況だと言えると思います。

――昨秋、眞子さまが大学院を休学されていると報じられました。現状にさぞご傷心なのではと思ってしまいます。

X 大学院の休学に関しては、結婚問題の影響による体調不良と、ご公務の増加による多忙さが影響しているのでしょう。小室家が抱える借金トラブルが公になった際、眞子さまはその事実をまったく知らなかったそうで、一時期は食欲減退、発熱などにより、宮内庁病院で診察を受けられるほどでした。それに加え、お代替わりで秋篠宮家が皇嗣家となったことで、現在の両陛下が皇太子ご夫妻時代に担われていた公務を引き継がれ、それに応じて、眞子さまや佳子さまが担当する公務も増加したのです。世間では、小室さん問題に端を発する秋篠宮家へのバッシングが止まりませんし、真面目で責任感が強いと言われる眞子さまは、精神的に相当参っているとは想像できます。

――眞子さまは今も変わらず小室さんをお慕いしているのでしょうか。1月の歌会始で、眞子さまが「望月に月の兎が棲まふかと思ふ心を持ちつぎゆかな」という和歌を詠まれ、「小室さんのことを詠んでいるのでは?」との指摘もありました。

X はい。みなさん言っているように、この和歌は小室さんを意識して作られたものと見て間違いないと思います。17年9月3日に行われた婚約内定会見で、小室さんは「宮様は私を月のように静かに見守ってくださる存在でございます」と発言しました。一部では「皇族を『月』に喩えるのはいかがなものか」といった批判も起こりましたが、眞子さまはこれを “愛のことば”受け取り、心に強く残っておられるのだと思います。今年の和歌のテーマが「月」であれば特段何も感じないものの、「望」というお題で、月を前面に押し出した歌を詠まれた背景には、世間からの批判を「否定したい」という気持ちがあったのではないかと思います。

――眞子さまのご動向が盛んに報じられる一方で、現在、 留学中の小室さんはどのような状況にあるのでしょうか。

X 現在も小室さんは、米ニューヨークのフォーダム大学で、変わらず勉強に勤しんでいるようです。1年目の「LLMコース」では、外国人留学生が多かったのに対し、今のクラスの「JDコース」では、ほとんどが現地学生で、よりネイティブな英語によって授業が行われるご様子。留学生には、かなり難易度が高くなっているそうなのです。このように小室さんは現在、国際弁護士資格取得の勉強で手一杯。ゆえに、眞子さまとの結婚問題への対応がおろそかになっていると感じます。

 一方の眞子さまは日本にいらっしゃるので、公務や勤務先への外出など、その一挙手一投足をメディアから注目されてしまう状況。相当な精神的なプレッシャーを感じていらっしゃるのではないでしょうか。ただ、眞子さまは、小室さんと「いずれ結婚する」と信じているようですので、小室さんに対し「日本での出来事は私に任せて、勉強に集中してほしい」と、健気な思いを抱えていらっしゃると、勝手に想像しています。

―― 一部メディアでは「結婚の再延期説」がささやかれています。もし現実になった場合、「事実上の破談」ではないかと推測する声も聞こえてきますが……。

X 再延期が発表されるというのは、秋篠宮さまが以前からおっしゃっているような「国民からの理解と祝福を得られる」状況になっていないことを意味します。眞子さまと小室さんが結婚したいのであれば、その状況に近づけるために、小室家が抱える金銭トラブルを解決し、相手側に納得してもらうことがマストでしょう。その後、できれば小室さんか、もしくはお二人で記者会見を開いてトラブル解決の報告と、結婚の強い意志を国民に表明することが最善策だと思います。理想を言えば、このことに加え、結婚して皇室から離れる際に支払われる約1億5000万円の一時金を辞退したほうがいいと思います。これらのことをきちんと行えば、流れが変わって国民もお二人のご結婚に納得するのではないでしょうか。

 一方で、「事実上の破談」と報じたメディアも確かにあります。これは、小室家に「金銭トラブルを解決しようとする動きがまったくない」状況で、再延期が発表されるとなると、先述した「国民からの理解と祝福」を得られず、事実上の破談状態になる可能性も十分ある……といったニュアンスだと思います。いずれにせよ、まずは小室家がトラブル解決に向け、真摯かつ全力で動かないと、いつまでたっても結婚へ動き出すことはないのではないでしょうか。