同人誌を手に取ってもらう場合、「同人誌即売会で頒布する」以外に「通販」がある。通販は、同人誌の販社を利用する方法もあるが、自家通販(自宅から同人誌を自分で発送する)を行う人もいる。しかし自家通販の場合、作風によっては「このドスケベな同人誌を書いたのはどこそこに住む誰それ、すなわち私です」と、個人情報の厳守管理がやかましいほどのこの時代に、ガバガバと言えるほどのノーガード戦法を強いられることになる。「素性を知られず自家通販」するための手法をpixivが提供しているというので、試してみた。
■前世紀末、人々は同人誌の奥付に自分の本名と住所をしたためていた
いにしえの彼方、20世紀末期のころは、同人誌の奥付に「自分の住所と本名」を書くのが紳士淑女のたしなみとされていた。当時流行していた耽美系のペンネームと本名のギャップにぐっときていたのも懐かしい。しかし今は、多くの同人誌の奥付の個人情報は「自分のペンネームとメールアドレス」だけとなった。
情報化社会の21世紀において、昭和の作法に則り、奥付に本名と住所を記していたらどうなるだろう。もし、悪意とスマホを持った人が一人でもいれば「あなたが書いている非常に趣味性の高い同人誌(時としてR-18)」に「あなたの本名と住所」がそっとあしらわれた状態で世界中に公開されてしまうのだ。
私は2年半ほどオフラインの同人活動を行い、5冊の同人誌を出しているが、すべて販社を利用し通販していた。自家通販では本名と住所がわかってしまうことに抵抗があったからだ。
「本名・住所知られたくない問題」を解消する画期的手法を長年待っていたが、いつの間にか機は熟していた。それを後押ししてくれたのは意外にもメルカリだった。同人誌の市場規模も大きいだろうが、メルカリなどネットフリマの市場規模の拡大は計り知れない。それに伴う多くの人の「名前を知らせずにブツを送りたい」というニーズを受け、画期的な手法は知らぬ間に世に出ていたのだ。
それはpixivが提供している通販サービスBOOTH内の「あんしんBOOTHパック」だ。ヤマト運輸とpixivが提携し、自家通販で発送する人も、受け取る人も自分の個人情報を出さずにブツを送り渡せるというサービスになる。なお、ヤマト運輸では、メルカリや楽天オークションとも同様のサービス提携を行っている。
■ファミマからでも同人誌を送れるドキドキ感
あんしんBOOTHパックを使ってみるべく、ちょうど私が以前同人誌の販社に預けていた最初に発行した同人誌Aの在庫が家に戻ってきたため、それをBOOTH上で登録した。
それからおそらく数か月。いつ登録したかも忘れたくらい時がたったころ、突然、2件、連続して注文が入った。私はオフラインの同人イベントでここのところの頒布数は「10冊はいくが20冊はいかない」程度であるため、2冊はゴールドラッシュと言っていい。
その後、行ったことは以下の通りになる。
※事前に、支払方法はあんしんBOOTHパックのみ、と指定しておく。
(1)同人誌をビニールで梱包し、さらにプチプチの緩衝材がついた封筒に入れる(どちらも100円ショップで購入できる)。宛名は何一つ書かない。先方の住所も名前もわからないので、書きようがない。
(2)BOOTHのサイトからQRコードを発行し、スマホに表示させる。
(3)スマホと封筒を持って、ヤマト運輸の営業所、もしくはファミリーマート、サークルKサンクスへ行く。
(4)コンビニの端末もしくはヤマトの営業所でQRコードを見せれば、送り状は向こうで出してくれる。
(5)終了
やること自体はいたって簡単だ。なお、あんしんBOOTHパックでの送料は、私の場合は310円だった(A5の薄い同人誌の場合であり、送るものの大きさによって送料は増す)。なお、別途BOOTH側への決済手数料として、決済金額の3.6%がかかる。
梱包も100円ショップの「プチプチ付き封筒」があるので楽だ。以前から100円ショップには愛しさと心強さを感じていたが、同人活動をはじめて設営や通販グッズの9割近くを100円ショップで賄う今となっては、もう「ダイソーさん」であり「セリアさん」だ。
大量の冊数を頒布するサークルや、発行している同人誌の種類がすでに多種あるサークルなら手続きが煩雑になるので販社を利用した方がいいだろう。だが、自分の規模や頒布頻度なら販社を使わず最初からBOOTHもありだと感じた。
■旧ジャンルが頒布できるうれしさ~前ジャンルこそ、通販だ!~
最後に、前回記事(2017年10月)からの同人誌頒布冊数の推移を報告したい。この間は同人誌即売会には参加しておらず、通販のみになる。
【状況】
・同人誌A~Eを制作。全て二次創作。「A」「B~D」「E」は原作が異なる
・書いているのは漫画でなく小説
・ソロ活動(「同担」との交流はほぼない)
・オンラインはpixivのみ利用(個人サイトもなし。twitterもROMのみで利用)
・A~Cは50部、Dは40部、Eは30部刷る(印刷所がくれる余部は含めずカウント)
・AはBOOTHで、B~Eは同人誌の販社を通じ通販している
【2017年10月の頒布冊数】
A 17冊
B 50冊(完売)
C 38冊
D 22冊
E 11冊
合計 136冊/220冊
【2018年2月の頒布冊数】
A 19冊(+2)
B 50冊(完売)
C 40冊(+2)
D 24冊(+2)
E 18冊(+7)
合計 149冊/220冊
二次創作においては原作ジャンルを変えると、同人誌即売会での頒布場所が大きく変わる。コミックマーケットをはじめ複数日開催の大型同人イベントだと、開催日が違うことすらある。そのため即売会ではなかなか前のジャンルの同人誌は手にとってもらいにくくなるのだ。
なので、今回処女作であるところの同人誌Aをしぶとく自家通販し、こうして二人の人に手に取ってもらえる機会ができたのは本当にうれしい。前ジャンルほど、通販だ。
同人ライフの近況だが、昨年秋にイベントに出て新刊を発表して以来、オンライン、オフラインでも新しい話を出していない。毎日寝る前に妄想はがっつりしているために自分としては毎日ひとり楽しく絶賛同人活動中なのだが、やはり形にすると新しい発見も多い。またビッグサイト→大井町の居酒屋でひとり打ち上げのパラダイスコースを決めるべく、まずは新刊だ。
(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])
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