「そんなに私の裸が見たいんか!」叫ぶおばあちゃんも――クレイジーでおもろい獄中者

 毎日暑いですね。今はムショもだいぶ建て替えられていて、室温の管理も昔ほどひどくはないようです。でも、やっぱりキンキンにエアコンが効いているわけではないので、体調管理は大変です。それに、暑いとか寒いとかだけではなく、もともと閉鎖された空間にいるので、言動がおかしくなる人も多いです。こんな状態で「罪を反省しろ」と言われてもムリですから、再犯者がいなくならないのだと思います。

■電柱がおまわりさんに見えたり、虫に襲われたり

 獄中でおかしくなる原因は、拘禁障害というノイローゼの一種か、シャバにいた頃のドラッグの後遺症なのか、判断は難しいですね。 急に大声を出したり、バッグの中の荷物から出し入れを繰り返したりする人は珍しくありませんでした。

 たとえばドラッグの後遺症でありがちなのは、「なんでも『人』に見える」とか「たくさんの虫が這ってくるように見える」、あとは「モノがしゃべる」とかいうのですね。私は塀の中では大丈夫でしたが、シャブをやってた頃は、電柱がおまわりさんに見えて外に出られなかったり、タバコを吸う時にマッチ棒が立ち上がって話しかけてきたりしてました。もちろん今はないですよ(笑)。

 ほかにも、一日中、鳩時計の時報をマネして「ぽっぽー、ぽっぽー」と言わはる人、鉛筆でもペンでも注射器に見えるらしく、血が出るまで腕に刺す人なんかもいてはりました。それから、ムショの食事は遅くても10分で食べなくてはならないのに、「味噌汁に虫がいる」と、器をじーっと見る人もいてました。本来ならヘタしたら懲罰ですが、頭が壊れてるのがわかってるので、誰も何も言いません。

 脳が壊れてるエピソードでいちばん印象に残っているのは、和歌山刑務所で一緒だった在日のKさんです。私が収監されていた当時ですでに70代だったと思いますが、とにかくエロに執着してはりました。刑務所を出たり入ったりで、最近獄死されたと聞いています。

 Kさんは、常に騒いでいる印象で、男性の先生(刑務官をこう呼びます)には「また私をそんな目で見たな! 抱きたいんやろ!?」と怒鳴り、女性の先生には「オメ○したいんやろ!?」と叫び、同房の若いコには「ブス!」「腐れオメ○!」と罵倒します。

 いま思えば、ごっつ体力ありますよね。そういえばよくストレッチや腹筋運動もしたはりました。そして、夏は「そんなに私の水着姿が見たいんか!? ほなら見せたるわ!」と、誰も頼んでへんのにパンツ一丁になり、庭の溜池に飛び込んでました。

 さらに、夏場の工場作業用の制服のスカートを、ウエストの部分を折り込んでいるのか、膝上15センチくらいまで上げていました。ボールペンでアイラインを引いたりもしたはりましたね。もうおばあちゃんですし、先生たちも苦笑するだけで怒りません。私がやったら、間違いなく懲罰ですけどね。

 ヘタな芸人よりよっぽどおもろいので、私たちはよく笑って見ていました。Kさんとはもう会えないのですが、久しぶりに当時の仲間とKさんについて語りたくなりました。

nakanorumi15中野瑠美(なかの・るみ
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

便器に歯ブラシ浸けたり、化粧水ボトルにオシッコ入れたり……ムショのコワ~い「イジメ」の話

 覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■誰でもイジメのターゲットにされる

 なんで世の中に「イジメ」ってあるんでしょうね。毎日のようにニュースで問題になってますし、イジメが原因で自殺しはる人もいてるのに。特に塀の中のイジメは、本当に厳しかったです。あのイジメに耐えられれば、多少のことではへこたれません。ホンマ心の底からそう思います。

 今思い出しても、ムショのイジメはごつかったですねー。シャバでも同じですが、塀の中でイジメを受ける理由も、それぞれです。告げ口や自慢話をするコはまず狙われますし、ちょっとしたことでもイジメのターゲットにされてしまいます。「いじめっこ」がどの房にも何人かいて、そのコたちに目をつけられたらアウトって感じです。

 ちょっとかわいいとか、先輩に生意気な口を利いたとか、面会にいつもダーリンが来てるとか、手紙や差し入れが多いとか、だいたいは嫉妬からですが、どれもがホンマにちょっとしたことで、面倒くさい話なんです。「ガテ」(「手紙」のもじり)といって、小さい紙に「○房の○ちゃんがこんなひどいことをした」などと告げ口を書かれ、あちこちに回されてしまうこともあります。たいていはデッチアゲですけど、読んだコたちは真に受けてイジワルをしてくるわけです。

 また、「運動時間」のような限られた自由な時間にアチコチで「シャー」(舎、仲よしグループ)を組んでいろんな話をしてるコたちもいて、これらもホンマにタチ悪いです。ケンカの時など「シャー組んでモノ言っとったらあかんどワレっ」などと言います。「一人じゃ何もできないくせに、つるんでグズグズ言ってるんじゃねえ!」ということです。まあ「おヤンチャ」な隠語ですね。もし誰かがいじめられていても、助けることはできません。そしたら次は自分がターゲットにされるから。これもシャバと同じですね。ムショはシャバの縮図なんやなーとあらためて思います。

■イジメから大ゲンカに発展したことも

 イジメの方法もいろいろで、本人の目の前でやる場合と、いない時にやる場合に大きく分かれます。

 目の前でやるのは、まずはシカトですね。とにかく無視します。あとは面と向かって「ヨゴレ!」とか「糞メンタ(女)!」とか悪口を言うのもしょっちゅうです。口だけならまだしも、すれ違った時に舌打ちされたり、自分からぶつかってきて、「当たってきた!」と言いがかりをつけたりを、いいトシしてやってくるんです。

 たまーにですが、そんなことがきっかけになって、みんなで取っ組み合いになることもあります。そんな時はもちろん私も腹くくって大暴れですよ(笑)。どっちみち懲罰なんで、「やるだけのことはやらなきゃ損」ですからね。

 いつだったかは暴れてミシンを倒し、刑務官に取り押さえられて「黙っとけオバハン」と絶対に言っちゃダメな“本当のこと”を口に出して大暴れしたあげく、「担当抗弁」という刑務官にタテつく罪もプラスされて懲罰を受けたこともあります。

 面と向かってやるイジメがいいとは言いませんけど、いない時にやるイジメは陰湿で、さらにイヤでしたね。

 たとえば入浴時のイヤガラセですね。お風呂は普通、同房ごとに行くのですが、生理の時は「M浴」といって、最後に入ります。ちなみにMって「メンス」の略らしいです。今どきメンスって言いませんけどね(笑)。で、イジメのターゲットがM浴に行ってる間に、そのコの歯ブラシを便器に浸けたり、化粧水のボトルにオシッコを入れたり、靴下などのモノ(官物)をトイレに流したりしてました。汚いのもイヤだけど、モノをなくすと懲罰ですから、けっこう大変です。

 あとは、モノを別の人のバッグに入れて、「モノのやりとりをした!」と「冤罪」をつくり上げる例もありました。ムショでは、たとえいらないモノでも誰かにあげたら懲罰なのです。ひどいもんですが、ターゲットにされたら、ひたすら耐えるしかありません。私も耐えてきました。なので、ムショでイジメを耐え抜いた人は、どこでも通用すると思います。根性が違いますからね。

 私は、少年院や刑務所を出てきたコたちの社会復帰を支援する日本財団の「職親プロジェクト」にも参加させていただいています。だからということもありますが、これから社員の募集・採用を考えていらっしゃる企業の方は、「ネンショー(少年刑務所)上がり」や「ムショ帰り」はむしろ「根性がある」と思って、採用を考えていただきたいです。ムショの工場は厳しいので、仕事熱心になりますし、懲役で鍛えられたハートと、焼き付けられた職業意識は、シャバの人には絶対に負けへんと思いますよ!

nakanorumi15中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

「福田和子」も被害者? 元女囚が明かす、刑務所で起こったレイプ事件

 覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■刑務官が懲役の手先に

 今回は、刑務所を長く取材している記者さんにも驚かれた「とっておきの獄中恋愛」のお話です。

 男子刑務所には、女性の職員は1人もいません。あまりにも危険ですからね。ちょっと前に法務省の「特別矯正監」をされている杉サマこと杉良太郎さんが「男子刑務所に女性職員を増やしたい」とおっしゃってましたけど、絶対ムリですね。「レイプしてくれ」って言ってるようなもんです。実は、以前は刑務所でレイプ事件が本当にあったと聞きました。今はどうですかねえ。めくれて(発覚して)ないだけですかね。

 1966年と半世紀も前の話ですけど、松山刑務所(ちなみに所在地は、愛媛県松山市でなく東温市内)では、男性の受刑者や看守による女性受刑者へのレイプ事件がありました。

 本当に映画みたいな話で、ヤクザの受刑者が看守を脅して鍵を取り上げ、所内でバクチや飲酒・喫煙、そしてレイプまで行っていたのだそうです。「松山刑務所強姦事件」でググると少し出てきますよ。当時の国会でも問題になりましたが、関係者の自殺などもあって、法務省がもみ消したそうです。

 そして、そのレイプの被害者の1人に、あの「福田和子」がいてたそうなんですよ。松山ホステス殺害事件より前に起こした別の強盗事件で服役していて、法務省からレイプの被害届けを取り下げさせられたそうです。それからだいぶたって、和歌山刑務所で「和ちゃん」と呼ばれてた福田さんと私が出会うわけですが(笑)、これもご縁ですかね。

 なんでこんなことが起こるかっていうと、懲役(受刑者)が看守を手なずけるんですね。まずは、わざと困らせます。とにかくちょっとしたことで看守を呼び出すボタンを押すんです。呼出音が鳴るたびに看守は急行しなくてはなりませんから、そのうち「ええかげんにしてくれや」ってなります。そしたら「じゃあ、おとなしくするから切手を1枚ちょうだい」とか簡単な要求をします。これに応じたら、看守はもう「負け」なんですね。「懲役にモノを渡したな。規則違反じゃねえか。上司にバラすぞ」と脅かして、要求をエスカレートさせていくんです。

 これはわりとポピュラーな手口で、若い看守はけっこうやられてますよ。さすがにレイプを要求するような懲役はもういてないでしょうけど。

 女子刑務所では、さすがにこんな大事件はないし、男性職員も多数いてます。所長なんかほとんど男性ですし、もともと女性の刑務官は多くないですからね。

 そこでナニが起こるかというと、やっぱり「不適切な関係」なんですね。私ら懲役は男と接触できない生活ですし、警察官や刑務官は職業柄か女との出会いが少ないので、懲役と職員はすっかり「恋人気分」です。

 もう時効ですけど、私もありましたよ。私の場合は警察署の留置場の担当で、警察官でしたね。夜間の見回りの時に、房の前に来てくれるんですが、「起きてるか?」って聞かれるのがうれしくて、わざと寝たふりをしてました。

 チューとか普通にしてましたし、ドアについている食器口(食器を出し入れするための小さい扉)は自由に開けられるので、そこから手を出して、話しながら手をつないだり。さすがに「挿入」はなかったですけど(笑)、けっこうラブラブでした。お菓子をもらうとか、外に連れ出してもらうとかもないですけど、真顔で「俺、お前好っきゃねん……」とか「ここから逃がしてやりたい」とも言われましたよ。「ホンマ逃がしてほしいわ……」と思いましたけど、逃げなくてよかったです。罪が増えるだけですからね。

 そんなわけで、ムショにも楽しい思い出がいくつかあります。塀の中みたいな特殊な空間の「色恋沙汰」は楽しかったですよ。もう一度、あの看守さんに会いたいけど……。こんなこと書いちゃって、もし読んでたら、ヒヤヒヤしてるだろうな、大好きなYくん。素敵な刑事さんになっててほしいですね。え? 本気で会いたいかって? ほんじゃムショに戻らなきゃダメやないですかー。嫌ですわ。もちろん戻りたくはないです。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

あの「バブルの女帝」を獄中で介護してました――老人ホーム化する刑務所事情

 覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■行き場がなく、ムショで年を重ねていく人は多い

 最近は「障害」ではなく「障碍」と書く傾向もあるのだと、初めて知った瑠美です。

 私には、かわいいかわいい息子たちがいてますが、最近はホンマ子どもが減りましたね。私は子どもがたくさんいて、お年寄りが元気に長生きできる社会がいいと思うのですが、これからどうなっちゃうんですかねえ。もちろん、ムショの少子高齢化も例外ではありません。若い刑務官が不足する一方で、お年寄りの収容者はどんどん増えていて、ムショはすでに老人ホーム化しているのです。

 ちょっと前ですが、生活保護をもらえなくて、下関駅に火をつけて有罪判決を受けたおじいさんが84歳で出所されました。なんと放火の前科が10件だそうです。知的障碍があって、「行くところがなくて火をつける→ムショ」の繰り返しで、人生の半分以上を獄中で過ごされたとか。今は牧師さんが面倒を見ておられるそうで、よかったですね。

 このおじいさんの例は極端としても、行き場がなくてムショに入って年を重ねていく人は多いです。障碍があって働けないとなると、もう懲役しかないというのもあります。

 私が務めた和歌山や岩国の刑務所では、体が不自由な方も一緒に作業していました。こういう人たちは障碍が軽めなんでしょうが、夜は独居房でしたね。起床時の布団上げから洗濯や掃除、食器洗いなどはスピードが勝負の「戦場」モードですから、障碍があると「足手まとい」とされて、イジメに遭ってしまうからです。

■ホリエモンもムネオさんも高齢者を介護

 「懲役」とは、「所定の作業」を行わせる刑罰で、皆さんのイメージは工場でいろんなもの(刑務作業品ですね)を作ったりする感じかと思いますが、ほかにも施設内の清掃、受刑者や刑務官の食事の用意、差し入れされてくる図書の整理なんかも「作業」となります。そして、障碍者や高齢の受刑者の介護というのもあります。これは誰にでもできるわけではなくて、受刑者の作業としては格上なんですよ。ホリエモンこと堀江貴文さんや鈴木宗男さんもムショでは介護をしたはったそうです。元国会議員の山本譲司さんが書かれた本『獄窓記』(新潮社)には、刑務所内での介護の体験をシモの世話のことまで生々しく描かれていると編集者さんから聞きました。

 そして、もちろん私も担当しましたよ、介護(ちょっと自慢)。若い人はご存じないでしょうが、大阪・ミナミにあった料亭「恵川」のおかみさんだった尾上縫(おのうえ・ぬい)さんの介護を長く担当していました。

 80年代不動産バブルも今は昔となりましたが、当時の尾上さんは料亭や雀荘の経営の傍ら株で稼ぎ、「北浜の天才相場師」と言われてました。占いで株の値動きを予想して、「NTT株が上がるぞよー!」というとホンマに上がったとかで、銀行関係者など「信者」もたくさんおられたそうです。

 もちろんバブル崩壊で大損されるわけですが、銀行を騙したとして、まさかの「巨額詐欺事件」に発展します。銀行からの借り入れは約2兆8000億円だったそうですが、フツー料亭のおかみさんに、そんなに貸しますかねえ。縫さんもよくはないけど、やっぱり銀行が悪いと思いますよ。

 ネット情報によりますと、獄中で破産手続きをされた時は、負債総額4300億円で、個人としては史上最高額だそうです。そして、「懲役12年」の判決が確定したのは21世紀になってからで、2003年4月でした。いかんせん被害額がハンパないので、調べることもようけあったからでしょうが、1930年生まれですから、当時もう73歳ですよ。そこから12年て、ため息が出ますよね。私がお世話をさせていただいた頃は、もうお一人では何もできない状態でした。ずっと一緒だったこともあり、私は縫さんが好きでしたね。「養女においで」とも言われました。

 縫さんは、元気な時には毎晩拝んでおられました。そして、私の肩をたたいて「ミーサンが降りてきはったで。ちゃんと守ってもらうように言うたから、安心しいや」と言ってくれました。ミーサンとは「巳さん」で、蛇の神様ですね。「三輪そうめん」で有名な奈良の大神(おおみわ)神社などにおまつりされています。関西ではメジャーだと思うんですが、ご存じでしょうか。

 初犯ですから仮釈放もあったようで、ひっそりと出所されて14年頃に亡くならはったそうです。思い出して、また会いたくなりました。合掌。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

あの「バブルの女帝」を獄中で介護してました――老人ホーム化する刑務所事情

 覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■行き場がなく、ムショで年を重ねていく人は多い

 最近は「障害」ではなく「障碍」と書く傾向もあるのだと、初めて知った瑠美です。

 私には、かわいいかわいい息子たちがいてますが、最近はホンマ子どもが減りましたね。私は子どもがたくさんいて、お年寄りが元気に長生きできる社会がいいと思うのですが、これからどうなっちゃうんですかねえ。もちろん、ムショの少子高齢化も例外ではありません。若い刑務官が不足する一方で、お年寄りの収容者はどんどん増えていて、ムショはすでに老人ホーム化しているのです。

 ちょっと前ですが、生活保護をもらえなくて、下関駅に火をつけて有罪判決を受けたおじいさんが84歳で出所されました。なんと放火の前科が10件だそうです。知的障碍があって、「行くところがなくて火をつける→ムショ」の繰り返しで、人生の半分以上を獄中で過ごされたとか。今は牧師さんが面倒を見ておられるそうで、よかったですね。

 このおじいさんの例は極端としても、行き場がなくてムショに入って年を重ねていく人は多いです。障碍があって働けないとなると、もう懲役しかないというのもあります。

 私が務めた和歌山や岩国の刑務所では、体が不自由な方も一緒に作業していました。こういう人たちは障碍が軽めなんでしょうが、夜は独居房でしたね。起床時の布団上げから洗濯や掃除、食器洗いなどはスピードが勝負の「戦場」モードですから、障碍があると「足手まとい」とされて、イジメに遭ってしまうからです。

■ホリエモンもムネオさんも高齢者を介護

 「懲役」とは、「所定の作業」を行わせる刑罰で、皆さんのイメージは工場でいろんなもの(刑務作業品ですね)を作ったりする感じかと思いますが、ほかにも施設内の清掃、受刑者や刑務官の食事の用意、差し入れされてくる図書の整理なんかも「作業」となります。そして、障碍者や高齢の受刑者の介護というのもあります。これは誰にでもできるわけではなくて、受刑者の作業としては格上なんですよ。ホリエモンこと堀江貴文さんや鈴木宗男さんもムショでは介護をしたはったそうです。元国会議員の山本譲司さんが書かれた本『獄窓記』(新潮社)には、刑務所内での介護の体験をシモの世話のことまで生々しく描かれていると編集者さんから聞きました。

 そして、もちろん私も担当しましたよ、介護(ちょっと自慢)。若い人はご存じないでしょうが、大阪・ミナミにあった料亭「恵川」のおかみさんだった尾上縫(おのうえ・ぬい)さんの介護を長く担当していました。

 80年代不動産バブルも今は昔となりましたが、当時の尾上さんは料亭や雀荘の経営の傍ら株で稼ぎ、「北浜の天才相場師」と言われてました。占いで株の値動きを予想して、「NTT株が上がるぞよー!」というとホンマに上がったとかで、銀行関係者など「信者」もたくさんおられたそうです。

 もちろんバブル崩壊で大損されるわけですが、銀行を騙したとして、まさかの「巨額詐欺事件」に発展します。銀行からの借り入れは約2兆8000億円だったそうですが、フツー料亭のおかみさんに、そんなに貸しますかねえ。縫さんもよくはないけど、やっぱり銀行が悪いと思いますよ。

 ネット情報によりますと、獄中で破産手続きをされた時は、負債総額4300億円で、個人としては史上最高額だそうです。そして、「懲役12年」の判決が確定したのは21世紀になってからで、2003年4月でした。いかんせん被害額がハンパないので、調べることもようけあったからでしょうが、1930年生まれですから、当時もう73歳ですよ。そこから12年て、ため息が出ますよね。私がお世話をさせていただいた頃は、もうお一人では何もできない状態でした。ずっと一緒だったこともあり、私は縫さんが好きでしたね。「養女においで」とも言われました。

 縫さんは、元気な時には毎晩拝んでおられました。そして、私の肩をたたいて「ミーサンが降りてきはったで。ちゃんと守ってもらうように言うたから、安心しいや」と言ってくれました。ミーサンとは「巳さん」で、蛇の神様ですね。「三輪そうめん」で有名な奈良の大神(おおみわ)神社などにおまつりされています。関西ではメジャーだと思うんですが、ご存じでしょうか。

 初犯ですから仮釈放もあったようで、ひっそりと出所されて14年頃に亡くならはったそうです。思い出して、また会いたくなりました。合掌。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

角田美代子から三浦和義まで、ムショの自殺はなぜ起こる?

 覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■私もムショで死にたくなりました……

 連休明け早々、府中刑務所で男性受刑者(府中に女子はいませんが)が自殺していたことがニュースになっていました。府中は昨年も自殺騒ぎがあったそうで、これは警備の問題というよりは「人数が多いから」やと思います。国内最大の刑務所で、2000人くらい収容されてますからね。

 ちなみに地元の大阪刑務所は「西日本最大」なのですが、つい最近まで私は大阪の方が人数は多いと思ってました。

 以前から書かせてもらってますが、刑務所や拘置所において、自殺と脱走は「絶対にあってはならないもの」です。もちろん「受刑者の人権」や「施設の近くの住民の皆さんへの迷惑」なんかを考えているわけではなく、幹部連中の「事故を起こしたら出世できない」という出世欲と、“事なかれ主義”だけやと思いますけどね。

 そして、ホンマに死んでしまうことはあまりないのですが、自殺未遂騒動はけっこうあります。だいたいは首吊りですね。施設側も、自殺防止のためにタオルの使用は入浴時だけとか(房内ではハンカチサイズ)、警察に逮捕された時点で私服のパーカーやジャージのヒモ、ネクタイ、ベルトなどは没収とか、いろいろと規制しているのですが、それでも靴下やトレーナーの袖を首に巻いたり、ティッシュをのどに詰めたりと、いろいろ工夫(?)したはります。

 私が中にいた時は、工場から針を持ち出して飲み込んだ人がいてました。工場では針やハサミなどの備品がなくなると、見つかるまで探し続けなくてはならず、普通なら持ち出せるはずがありません。一体、どうやって持ってきたのでしょうか? スゴいなあと思いました。

 あとは、処方される薬を飲まずにためておいて一気に飲む方法や、便器に顔を突っ込むとかもありますが、どれもラクには死ねない方法ばっかりですね。

 「なんでそこまでして……」と思われるでしょうが、塀の中には「人権」がまったくないんです。刑務官からも同房者からもいじめられて、すべてがイヤになります。それに、刑務作業のほかは食事とか入浴とかだけですから、とにかくヒマなんです。シャバなら、すぐに話し合って解決できるような問題も、相手が別の房にいる場合などは、何人も人を介していくうちに全然違う話になってしまいます。それで「そんなこと、聞いてへんわ」となって、またまたモメてしまうんですね。

 私もそうでしたが、ほかに考えることもないので、工場で作業する時も含めて一日中このモメ事のことばかり考えてしまいます。こんなことでは、更生なんて程遠いですよね。モメ事についてでも考えられるうちはまだマシなのですが、しょうもない規則ばっかりですし、とにかく屈辱的なことばかりなので、マジで死にたくなりますよ。

 私も最初に収監された時は、死にたいと思いました。いじめや処遇だけではなくて、自分自身について「家族や友達に迷惑をかけてしまった」とか、「これからどうしよう?」とか、いろいろ考えてしまうのです。ホンマにムショは行くところやないですねえ。

 私も経験者として「死にたくなる人」の気持ちがわからないでもないですが、中には自殺かどうかわからんという人もいてますよね。

 たとえば尼崎事件の角田美代子(2012年、兵庫県警本部の留置場で首つり自殺とされる)はどうでしょうか? 留置場の3人部屋で寝ていて、ほかの2人が気づかないはずはないと思います。だって長袖Tシャツの袖を自分で首に巻いたら、かなり苦しいですよ。でも、2人はまったく気づかず、刑務官が発見した時にはもう遅かったそうです。まあ角田は以前から「死にたい」とか言って、睡眠導入剤がないと眠れなかったそうですけどね。

 あとはアメリカで亡くなった「ロス疑惑」の三浦和義(08年、ロス市警本部の留置場で首つり自殺とされる)も他殺説がありました。ネットで見てみると、暴行の跡もあったというウワサで、自殺か他殺か、その理由も諸説あるようですが、ご遺族や支援者は納得できないでしょうね。生前の三浦を取材していた知り合いのライターさんによると、「とにかく明るくて、自殺するようなタイプではない」そうですしね。

 ちなみに三浦は和歌山カレー事件の林眞須美の支援もしていましたが、その林も、拘置所で釘や針金を飲み込む騒動(00年)を起こしています。これは死ぬつもりではなく、騒動を起こして房を替えてほしいかっただけのようですが。

 中にいるといろいろ不安定になりますから、そういうこともあるかなとは思いますが、刑務官は生きた心地がしなかったでしょうね。いずれにしろ、イヤな事件ばかりです。

 南無阿弥陀仏――。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

元女囚が斬る! ドラマ『女囚セブン』、受刑者が全員美人以上に“ありえへん”こととは?

 覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■獄中で人気のテレビ番組は、「月9」やサスペンス系のドラマ

 なんとこの春は、女子刑務所が舞台の『女囚セブン』(テレビ朝日系)のほか、実在の脱走犯がモデルのドラマスペシャル『破獄』(テレビ東京系)もあってんですね。ムショ、注目されてるやん(笑)って、どっちも見てませんが(汗)。

 これまでの女子刑務所モノは、泉ピン子さんかポルノくらいで、ほとんどは男子刑務所が舞台ですよね。やっぱりリアルにおもろくするのって難しいんでしょう。私に相談してくれはったらええのに。

 皆さんは、テレビ見てますか? 私は、今は経営しているラウンジの仕事が忙しくなってしまい、夜にテレビドラマを楽しむ時間がありません。でも、ムショでは、夕食後や刑務作業のない「免業日」(土日祝・年末年始)、お正月の朝から夜などにテレビを見ることは、数少ない楽しみのひとつでした。ドラマやバラエティも、けっこう見られましたよ。

 人気があったのは、やはり「月9」やサスペンス系のドラマでした。リアルタイムで見られるのは、NHKニュースと『のど自慢』と『大相撲』と『紅白歌合戦』くらいで、あとは録画なんですけど、大人気でしたね。それに旅番組も好きでした。自分の地元が出ると、テンションがハンパないです。みんな大はしゃぎでした。大阪の西成が映ったりすると、私や同じ大阪出身者たちは皆、知り合いが映ってないか、探したりしてました(笑)。

 私は、もともとお笑いが好きなので、ダウンタウンさんやナインティナインさん、吉本新喜劇の番組、それから『のど自慢』も大好きでよく見ていました。今思えば、つらい現実から逃げたかったのかな?(笑) あとはなぜか「警察24時」のシリーズも、みんな大好きでした。警察官に長時間密着してクスリの売人や女子高生の援助交際、交通違反者なんかを逮捕するアレですね。自分たちはパクられる側なのにおかしいんですけど、ポン中や酔っ払いのおっさんが保護されているところとかを大笑いしながら見ていました。

 さて本題です。予告編を見ましたが、『女囚セブン』は、現実のムショではありえないと思います。隠蔽体質や冤罪、房内のイジメと、「刑務所的に」イヤなお話が多そうですね。それに受刑者が美人ぞろい。あれはないやろ(笑)。しかも、1回目の放送はいきなり「脱走」で、しかも脱走犯を「新入り」(の懲役)が連れ戻しているようですから、これはもう絶対ムリです。脱走と自殺は、ムショが最も恐れることなんです。

 ドラマですから、多少はリアルでないところがあってもいいかとは思うのですが、脱走は「受刑者がみんな美人」という以上にありえへんです。そもそも日本の刑務所は、ほとんど脱走はないですよね。和歌山刑務所で前に炊場さん(受刑者の食事を作る工場で働く受刑者)が逃亡して、マンホールの中に隠れていたところを見つかるって事件がありましたけど、そのくらいです。「塀の外」に出るのは、到底無理なんだと思います。

 まあ自殺はけっこうあるんですが(苦笑)、日本は世界でも脱走が少ないことで有名です。脱走の名人で『破獄』のモデルの白鳥由栄は昭和前半の人ですが、そのくらいしかいてませんよね。

■大震災でも懲役が脱走しない理由

 日本人は、DNA的に「神妙にお縄をちょうだいする」タイプが多いと聞いていますが、ホンマかどうかはさておき、過去の脱走騒ぎも外国人が目立ちます。広島刑務所(2012年)は中国人、東京拘置所(1996年)はイラン人でした。この時はイラン人7人が逃げて、最後の1人が捕まるまで9カ月くらいかかっていますが、あとはすぐ捕まったとネットに出てました。

 女性は男性よりも計算高いので、リスクを冒してまで脱走は考えないのだと思います。まあ本当に計算高ければ、ムショに行くようなことはしないハズですけどね。

 とはいえ私も「脱走したいな」って思ったことはありますよ。「あと何年ここにいなきゃダメなんかなあ」って案じだしたら、アレコレと考えましたよ、トンズラする方法を(笑)。でも、脱走してからのことを想像したら「さっさと務めて帰るほうががラクだな」と思ったので、犯行(笑)には及びませんでしたけど。仮に逃亡できたとしても、それからずっと警察の追跡におびえながら暮らさなくてはならないですからね。一生を堂々と生きられないくらいなら、ロングな懲役もきちんと務め上げて、「晴れて堂々と生きる前科者」でいるほうが賢いとバカなりに考えた結果なのです。

 ちなみに東日本大震災の時には、騒ぎに乗じて少年刑務所で脱走があったようです。着替えもできずに、すぐに戻ってきたそうですが。福島の女子刑務所も含めて、東北の刑務所の建物は、ほとんど無事だったと聞いていますが、仙台にある宮城刑務所から5キロも離れていない海岸には、たくさんの遺体がうち上げられたとニュースで見ました。お気の毒ですね。

 そういえば、東北の某刑務所長は、慰問にやって来た噺家さんに「ウチの懲役はみんないい人ですから、脱走はありませんでした」と言ったとか(笑)。意味わからんですが、おもろいですね。個人的には、脱走なんかしないでおとなしく務めて、早くシャバに復帰することをオススメします。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

手紙に描かれた彼氏の手形に手のひらを合わせて……元女囚が考える、ムショに足りないものとは?

 覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■刑務所は「悪者を閉じ込めて懲らしめるため」にあるのではない

「ムショって、タイヘンなんやねえ。病気になってもなかなか医者に診てもらえへんし、懲役だけじゃなくて刑務官同士もイジメがあるなんて。ホンマ行きたないわー」

 この連載を読んでくれた悪友の感想です。はいはい、その通りです。でもね、それだけでもないんです。まあ思えばバトルっぽいことを続けて書いてしまいましたので、「ムショのささやかな楽しみ編」に挑戦してみます。

 そもそも刑務所とは、何のためにあるのでしょうか?

 実は、「悪者を閉じ込めて懲らしめるため」ではないんですよ。もちろん実際はそうなんですけども、法律では、「改善更生の意欲の喚起」と「社会生活に適応する能力の育成」が処遇の原則とされています(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第30条)。難しいですけど、要するに、ムショとは反省してやり直すことと、そのための能力を育てるのがタテマエなんですね。

 「あんな環境で、反省なんかできるかいな!」というのが私を含めてムショに行った人たちの正直な感想なわけですが、それでも「このままじゃあかんなあ」と冷静に思わせるようにはなっているんですね。

 まず、塀の中に入ると、周囲の「危険物」がぐっと減ります。酒やタバコ、クスリ、クスリの売人やヤクザ、暴力を振るう夫や恋人、などなどですね。そして、その代わりに待っているのが、分刻みの規則正しい生活(とイジメ)なんです。

 裁判が確定するまで過ごす拘置所は刑務所ほどではないですが、やっぱりかなり制限された生活です。最初は慣れるだけでタイヘンですが、そのうちに冷静になってきます。「アタシ、何やってんだろう」的な。寂しくても、つらくても、そこにいるしかないんです。それがわかってくると、またつらいんですね。

 外の世界との連絡は、月に数回の手紙と面会だけです。懲役(受刑者)には「第1類」から「第5類」までの「ランク」があって、問題を起こさなければランクを上げてもらえます。たとえば最高ランクである「第1類」の懲役の面会は「毎月7回以上で施設が定める回数」、手紙を書けるのは「毎月10通以上で施設が定める回数」となってますが、そんな人は見たことないですね。無期懲役の人が1人か2人くらい第1類にいたかもですが、たいていは第5類で多くても月4回、4通程度だと思います。外から手紙をもらうのは、何通でも大丈夫なんですが。

 逮捕されるまでは24時間いつでも電話したりメールしたりしていた生活から、一気に「月に何回かの手書き」ですから、めっちゃ不便で寂しいです。シャバでは字を書くことなんかほとんどないから、まず漢字が思い出せないし、日本語もヘンになったりで、それでも一生懸命に便箋に向かっていました。

 そして、書いた内容は細かくチェックされます。犯罪や脱走の連絡をしていないかとか、トラブルの元になりそうなことは書いていないかとかですね。昔は食事に出たミカンの汁搾って、読まれてはまずいことを書いていた人が本当にいてました。「あぶり出し」にして読むんですよ。今はどうかなあ。

 私の場合は、便箋にイラストをたくさん描きましたね。私が中にいた頃は、まだ子どもたちが小さかったので、好きなキャラクターのぬりえを買って便箋に写して、色鉛筆でキレイに色を塗ったりしていました。「よくこのキャラクターの絵本やビデオ見てたなあ」って子どもたちのことを思い出しながら、土曜日と日曜日はイラスト描くのに没頭していましたね。誕生日や入学式・卒業式にも、何も買ってあげられない、何もしてあげられない……そんな気持ちからでした。同囚も同じことしてましたよ。刑務所に行くまで自分を止められなかったことが一番悪いのはわかってるけど、やっぱり母親なんですよ、私も同囚のみんなもね。

 でも、描くのは一苦労でも、返事をもらえると、本当にうれしかったです。みんな待っていましたし、怖い姐さんがハナをすすりながら、子どもからの手紙を読んでいるなんていうのもしょっちゅうでした。

 一方で、手紙を書いてくれる人がいない同囚は、とても気の毒でした。私もその中の1人でしたが(笑)。もちろん、当時の彼氏からはもらってましたけどね。でも、シャバの人たちだって、今どき手紙なんか書きませんやんか。メールやLINEでOKなんですから。書く内容にも気を使いますしね。彼氏からの手紙は、本当に本当に楽しみでした。

「待ってるから……」

 そのただ一言で、嫌なことも何もかも吹っ飛びましたね。手をつなげないからか、触れないからなのか……彼氏はいつも便箋に手のひらをつけて、ボールペンで形をかたどって描いてきてくれました。その手形に私も自分の手のひらを合わせて、「早く会いたいな……。がんばろう」と、よく思ったものです。紙なのでぬくもりはないけれど、「ここに彼氏が手のひらを置いていた」という事実があるから、時間差で同じ場所に手を当てているだけで勇気が出ましたね。我ながらセンチメンタルでした。のろけちゃってごめんなさい。

 ちなみにムショで使用が許可されている便箋と封筒はめちゃくちゃ地味なので、シャバから送られてくるキャラクターの便箋や、きれいな記念切手も楽しみでした。懲役のお友達がいてはる方は、ぜひ送ってあげてください(笑)。

■一番食べたかったものは……

 手紙以上に楽しみだったのは、お菓子でした。年末年始とか慰問とか、行事の時にしか食べられないんです。何かやらかすと、もらえないこともありますしね。そんな時は、悔しくて涙が出ます。「コアラのマー○」や「アルフォー○」がどんだけおいしいか、シャバにいたらわかりませんよ。夢にまで見ちゃいますからね。私は、フカフカのパンケーキに生クリームてんこ盛りにしたのが食べたかったですね。

 行事の時にもらえるお菓子は、昔は大袋にたくさん入っていたのですが、最近は経費の問題からか、かなりせこくなっていると聞いています。もちろん、もらったところで、ゆっくりは食べられません。30分で完食しなくてはならず、みんなとにかく急いで、すべて口に入れていました。おせんべいやかりんとうなんかは、口の中がマジで切れますよ。

 本当にシャバでは考えられないことばかりでしたね。せめてたまのお菓子くらいは、ちゃんと食べさせてあげてほしいです。「刑務所のコワい話あるある」で、本がいくらでも書けそうです。

 外界との接触や楽しみを極端に制限することで、反省させようということなんでしょうが、ムリな気もしますね。エリートが力で抑えつけて「反省しろ」って言っても、懲役には伝わりません。私が経験者として講演しますよ。「刑務所卒業!」タイトルは、これに決まりやね。ご連絡お待ちしてます。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)