『監獄のお姫さま』の小泉今日子は暗すぎる! “ダンナ殺し”の受刑者は生き生きしてる?

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■小泉今日子が暗すぎ……

 女囚が主人公の刑務所ドラマ、人気があるんですね。以前も『女囚セブン』(テレビ朝日系)が話題でしたが、この秋からは『監獄のお姫さま』(TBS系)が始まりました。なんと、しまむらとコラボして、ドラマのゆるキャラ、その名も「ぜんかもん」くんグッズを販売してるんですね。

 『女囚セブン』と同様に、今回も出演者がキョンキョンとか菅野美穂さんとか、皆さんフツーに美人すぎますよね。とはいえ、やっぱりドラマですから、きれいな人が出てこないと見る人もつまんないでしょうし。

 でも、「夫に対する殺人未遂で逮捕された設定」のキョンキョンのキャラクターは暗すぎますね。これは改善の余地ありと思いました。当事者でないとわからへんのですが、ムショでは、ダンナを殺した人は暗くないんですよ。むしろ生き生きとしています。

 私は12年の懲役の間に、いろんなコと同じ房になりましたが、「ダンナを殺して暗くなってるコ」というのは、まずいてませんでしたね。学校の先生とか、おカタい職業でダンナさんを殺したコもけっこういてたけど、みんな普通でした。

 「はじめまして」の時に、自分から罪名を言わはるんは、まあ人によりますけど、「夫を殺しました」と言うコがわりと多いです。それで「やっと死んでくれた」とか、「包丁で20回刺したくらいで死にやがった。おかげで私は人殺しや。ホンマあほやで(笑)」とか。さらには、どうやって殺したか、詳しく話してくれるコもいます。

 最近、ご主人の死をひたすら願うSNSサイト『だんなデスノート』が本(宝島社)になって注目されてるそうですが、夫殺しの受刑者はまさに、そこへ書き込む人たちと同じような感じでした。いろんな事情(主に貧困)で離婚もできず、ガマンにガマンを重ねてついに……ということなのでしょうね。

 ちなみに私の家庭は円満なんで、無関係ですよ。編集者さんが「キョンキョンが暗いのは未遂だからじゃないですか? ちゃんと殺ってたら、笑ってるかも」と鋭いことを言っていました。これに対して、子どもを殺して入って来たコは、まず自分からは言いません。そして口数が少なく、暗い表情をしています。それでも、みんなは彼女の罪名を知っています。刑務官が言いふらすからです。

 「あのコは殺(や)ってんねん」みたいなことを、聞いてもいないのに教えてくれるんです。公務員やから守秘義務があるので、それもどないやねんと思いますが、すぐにウワサは所内に広まってしまいます。そして原因は、ほとんど貧困か「新しい男」ですね。貧乏で不憫になって、とか、新しい男と暮らしたいからとか。たいていはその男もダメなのにね。

■事件そのものよりスゴい「裏話」

 男子刑務所と違って、女子刑務所は数が少ないこともあって、長期刑とか罪名で分けられません。初犯と累犯の区別があるくらいです。なので人殺しから万引きの常習犯までみんな一緒です。そやから、打ち解けてくると、けっこういろんなことをお互いにしゃべります。

 たとえば2人の小さな子を殺して「鬼母」と報道されたAちゃんは、貧困でどうにもならず、子どもたちを殺して自分も首を吊ったのに、死にきれなかったと泣いていました。シングルマザーで誰も相談する相手がいなかったんだとか。家庭の事情などでちゃんと育ってないコは、問題を解決できる力がなく、甘え方も知りません。Aちゃんもそうだったんですね。

 また、福田和子さんとか女性の事件の裏には、ほぼ「男」がいてますから、こういう話もおもろいです。事件を起こすのはもちろんアカンけど、悪いのは女性だけと違うんだということもよくわかりますよ。もし私が映画やドラマを作るなら、こういう事件の裏側を回想場面で再現したいと思いますが、いかがでしょうか。

nakanorumi_portrait中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

ムショにも「2世」はゴロゴロいる――“親子で懲役”も珍しくない塀の中

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■清水良太郎は刑務所より病院へ

 急に寒くなりましたね。ムショはめっちゃ寒かったなあとか思い出す、今日この頃です。

 さて、またまた2世タレントが覚醒剤使用(覚せい剤取締法違反)の疑いで逮捕されました。清水アキラさんのイケメン息子・良太郎さんです。違法カジノ出入り問題に続いての不祥事ですが、まあ覚醒剤の使用自体は初犯なので、執行猶予でしょうね。

 でも、「ホテルで(良太郎さんから)薬物を飲まされた」って女性に通報されるって、それはアカンですわね。もうキメセクでしかイケなくなってるんだとしたら、やっぱり刑務所より病院ですよ。

 最近では、橋爪功さんの息子さんとか、C・W・ニコルさんのお嬢さんとかが覚醒剤で逮捕されていますね。こういうことは、親に全く責任がないとはいいませんが、本人の問題です。本人が気づかなければ一生治りません。

■ムショには「親子で懲役」も“あるある”

 いつも思いますけど、覚醒剤に限らず、いろんな事件で「有名人の子ども」として取り上げられるのは、ホンマお気の毒ですね。悪いことは悪いことですし、目立ってしまうのはわかりますが、同じことをしても記者会見しない一般人のほうが大半ですからね。そもそも有名人のお子さんでもがんばってる方は多いですし。

 それに、もう成人してて、いいトシなのに、親が記者会見までやって謝るのもかわいそうですね。そこまで、さらし者にする必要があるんかなあと思ってしまいます。

 そんなことを言っていたら、編集者さんから「ムショで2世を見かけたことありますか?」と聞かれました。芸能人ではないけど、「ヤクザの2世」とか「シャブ屋の2世」とかはゴロゴロいましたね(笑)。「あのコのおとうちゃん、○○やねん」と、有名なヤクザの名前を聞くことはけっこうあります。

 また、母娘や姉妹で入ってるコも珍しくありませんでした。廊下なんかで「おかあちゃん、がんばってえ」とか言っているコに、私たちは「いや、むしろ、お前ががんばれ」とか言っていましたよ。

 私も経験ありますけど、なんでシャブなんかに手を出すんでしょうかね。私の場合はズバリ失恋でした。もうショックで何も手につかなくて、生きているのがイヤになりました。

 私の地元は、大阪でも不良の多い街なんで、ツテを頼れないこともないから、入手もできたんです。で、ちょっと薬物に逃げちゃおうかなと。今思えば、本当にバカでした。

 でも、そういう愚かさは誰にでもあると思うんです。有名人の2世が薬物に走りたくなる気持ちもわからないではないんですよ。だって、親がめっちゃ有名だとプレッシャーはハンパないですよね。あと普段から、親が家にいなくて、ちゃんと育ててもらえなかった寂しさとかもあると思います。

 2世でなくても、芸能人の中には売れなくなってくると薬物に手を出すとか、売れてるのにプレッシャーに負けて……とかあるんだと思います。庇うわけではありませんが、罪を罪と認めて向き合っている人は応援したいですよね。人間とは弱いものです。

 ムショにやってくるのは、半分近くは覚醒剤事案でした。前も書きましたけど、やっぱりシャブやってるとすぐわかりますね。落ち着きがないとか、唇をしょっちゅう舐めてるとか。何かと挙動不審です(笑)。ちなみに私はすっかり立ち直っているので、ぜんぜんキョドってないですよ。ウソだと思ったらお店に来てください(と営業してみる)。

 そういえば大物議員2世の覚醒剤事案の逮捕って、どうなってるんでしたっけ? 一時は大阪でも話題でしたけどね。

nakanorumi_portrait中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

つけまつげから靴、家具、お神輿まで、刑務所の中で作っているモノ

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■けっこう役に立ってる「ムショの資格」

 もうすっかり秋ですね。秋祭りや文化祭の季節でもあり、各地の刑務所で「矯正展」が開催されます。お祭り大好きな私はワクワクです。我が母校(?)の和歌山刑務所と岩国刑務所も毎年開催しています。

 受刑者の作った「刑務作業品」を売ったり、「ムショ飯」を再現したりするんですが、なかなかの人気です。懐かしいですね。全国の刑務所から担当者が来るので、和歌山で函館のグッズも買えるんです。私の担当編集者さんもグッズを密かにいっぱい持っているそうです。

 何回か書かせていただいていますが、「懲役」というのは、ムショや拘置所などで「所定の作業」を行う刑罰です。この「所定の作業」には、工場で何かを作ったりするほか、施設内の掃除や洗濯、炊事、差し入れされた本の整理、高齢や障碍のある収容者の介助なんかもあります。

 うんとざっくり分けると、工場で何かを作るのは「一般工場」、それ以外は「計算(経理というところもあります)工場」といいます。別に計算するわけでもないんですが、そういう呼び方なんですね。それがさらに「縫製工場」とか「洗濯工場」とかとかに分けられます。ちなみに作業をしないのは「禁固刑」で、悠々自適といわれていますが、そういう人はムショではなく拘置所に収容されます。

 受刑者は、こういう作業をしながら資格を取ることもできます。施設によって違いますが、女子刑務所ではネイリストのコースもあります。あとはホームヘルパー、ボイラー技士、危険物取扱者などの資格も取れるんですよ。ちなみに私はフォークリフト運転の資格が取れて、免許証は今も保管しています。宅建の講習も受けました。

 今も役に立っているのは縫製です。縫製工場にいた時に、ミシン作業はめっちゃ上達しましたよ。シャバに戻ってからも、地元の「だんじり祭り」の法被(はっぴ)や息子たちのズボンなどを縫っています。

 思えば、ムショもいろいろやってますね。もちろん、もう戻りたくないですけどね(笑)。

 矯正展では、全国の一般工場で作ったパンやバッグ、文具、靴、家具、お神輿(あるんですよ)などが売られています。最低賃金法が適用されない受刑者の時給で10円くらい、人件費はほぼかからないので、かなりお安く買うことができます。

 なので、100円ショップで売られている物も、ティッシュケースとかツケマとか、けっこう刑務作業品があるんですよ。クリップなどの中国製品を箱詰めする作業もあります。私は1日に2,000個パチパチ詰めて、加算給30%(世間で言う「ボーナス」)を毎月もらいました(笑)。何かトラブルをやらかして独居の時は、ヒマなんで、朝から夕方までひたすらやるしかないですしね。

 矯正展では、全国の工場での作業品を売るほか、施設独自の工夫もあって面白いです。旭川刑務所などは、駅から護送車の送迎があります。護送車といっても、外見は普通のワゴン車で、中からは開けられません。それと、東京拘置所では、刑場を公開した年もあったそうです。あんまり見たくないですけどね。

 特に人気なのは「ムショ飯」で、それを再現した麦飯入りの「プリズン弁当」は、施設ごとに違っておいしいそうです。私の地元・大阪刑務所のパンも大人気で、ドライフルーツ入りのコッペパンはなかなかの代物です。府中刑務所のコッペパンも2時間待ちくらいの行列ができるそうですよ。また、収容者の性格や適性を診断する「性格検査」の体験コーナーが「当たってる!」と評判なので、ぜひやってみてください。

 受刑者も一生懸命作ったものが売れるのは、励みになります。一度ぜひ、いらしてください。

nakanorumi_portrait中野瑠美(なかの・るみ
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

ASKAもアソコに隠せばバレなかった? 絶対に見つからない「覚醒剤の置き場所」

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■覚醒剤で「被害者」が出ることも

 8月に起こった新宿・歌舞伎町のひき逃げ事件で、逮捕された自営業者が覚醒剤を使っていたことも報道されてましたね。被害者を20メートルくらい引きずったそうですが、シャブやってると、こういう時に正常な判断ができなくなるんです。

 覚醒剤は「被害者なき犯罪」といわれますが、実際には、こういう形で被害者が出ることもあるので、やっぱりシャブは「ダメ、絶対」ですね。とはいえやめるのは難しいもの。私はおかげさまでやめられたので、苦しんでいる方の力になってあげたいですね。

■ヤクザ事務所にはシャブもチャカもない

 覚醒剤に関するニュースで印象に残ったのは、盗んだバイクに覚醒剤(シャブ)や拳銃(チャカ)が隠されていたケースを、テレビ局が「意外な隠し場所」と報道していたことです。

 これは、意外でも何でもないんですよ。だって、組事務所の場所は警察にバレバレで、そんなところにシャブやチャカを誰が置くもんですか。

 話はそれますが、ヤクザの事務所は、ほんと減りましたね。暴力団排除条例で賃貸契約ができず、いくつかの組織でシェアしている例もあるそうです。いいか悪いかは別にして、戦後の貧しい時代の組事務所は、不良たちが集まって、ごはんを食べたり、チンチロリンなどの博奕をやって仲よく過ごす「場」みたいな意味もありました。「行き場のない人たち」が集まれたんですよ。悪いこともするけど(笑)。

 だから、抗争事件が多かった頃も、武器やシャブがゴッソリ……ということはなかったと思いますよ。親分衆はみんなアジトみたいなところを持っていて、シャブやチャカはそこから随時持って行くんです。

 そういえば「抗争で死ぬかもしれんし、長い懲役に行くかもしれんから」と、アジトに彫師さんを呼んで、全身ウン百万円の刺青を仕上げさせた親分もいましたね。本当に素敵すぎます……。

 シャブやチャカの隠し場所として、家族名義のリゾートマンションの駐車場なんて、王道中の王道ですが、駅のコインロッカーを使うこともあります。「シャブ保管庫」や「武器庫」としてギョーカイで有名なロッカーもありました。

 私の場合は、クルマの車体下につけるような強力マグネットのケースも使ってました。郵便受けとかにもつけられるんで、運んだり隠したりするのには重宝でした。ずっと置いておくのには向いていないですが、一回も落としたり、なくしたりしたことはないですね。

 ムショでは、「シャブをどこに隠していたか」というような自慢めいた話もよくしていましたが、やっぱりマグネットで車体の下に入れる人はいましたね。昔はおおらかで、けっこう自宅に置いている人もいて、「夫が勝手に私のシャブを食ってたからケンカになった」とか、そんな話も聞きました。

 あとは子どもが使わなくなった通園バッグの再利用とか、食べ終わったクッキーの缶とか、すぐバレそうなところばっかりです。ASKAさんも、書斎の引き出しに入れてはったと報道されていましたね。もしかすると、バレて、パクられて、ラクになりたかったのかも?

 それと、たまに外国人がコンドームに入れた薬物をアソコに入れてて、空港でパクられたりしてますが、さすがに日本人はそういうのはないですね。ちなみに昔はヤクザもお金があったので、ヨットやクルーザーなんかにもよく置いてました。でも、あんまりリゾート感あふれるところは遠いので、取りに行くのがタイヘンです。要するに、隠さなあかんもんは邪魔臭いので、持たないほうがええということです。

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1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

ASKAもアソコに隠せばバレなかった? 絶対に見つからない「覚醒剤の置き場所」

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■覚醒剤で「被害者」が出ることも

 8月に起こった新宿・歌舞伎町のひき逃げ事件で、逮捕された自営業者が覚醒剤を使っていたことも報道されてましたね。被害者を20メートルくらい引きずったそうですが、シャブやってると、こういう時に正常な判断ができなくなるんです。

 覚醒剤は「被害者なき犯罪」といわれますが、実際には、こういう形で被害者が出ることもあるので、やっぱりシャブは「ダメ、絶対」ですね。とはいえやめるのは難しいもの。私はおかげさまでやめられたので、苦しんでいる方の力になってあげたいですね。

■ヤクザ事務所にはシャブもチャカもない

 覚醒剤に関するニュースで印象に残ったのは、盗んだバイクに覚醒剤(シャブ)や拳銃(チャカ)が隠されていたケースを、テレビ局が「意外な隠し場所」と報道していたことです。

 これは、意外でも何でもないんですよ。だって、組事務所の場所は警察にバレバレで、そんなところにシャブやチャカを誰が置くもんですか。

 話はそれますが、ヤクザの事務所は、ほんと減りましたね。暴力団排除条例で賃貸契約ができず、いくつかの組織でシェアしている例もあるそうです。いいか悪いかは別にして、戦後の貧しい時代の組事務所は、不良たちが集まって、ごはんを食べたり、チンチロリンなどの博奕をやって仲よく過ごす「場」みたいな意味もありました。「行き場のない人たち」が集まれたんですよ。悪いこともするけど(笑)。

 だから、抗争事件が多かった頃も、武器やシャブがゴッソリ……ということはなかったと思いますよ。親分衆はみんなアジトみたいなところを持っていて、シャブやチャカはそこから随時持って行くんです。

 そういえば「抗争で死ぬかもしれんし、長い懲役に行くかもしれんから」と、アジトに彫師さんを呼んで、全身ウン百万円の刺青を仕上げさせた親分もいましたね。本当に素敵すぎます……。

 シャブやチャカの隠し場所として、家族名義のリゾートマンションの駐車場なんて、王道中の王道ですが、駅のコインロッカーを使うこともあります。「シャブ保管庫」や「武器庫」としてギョーカイで有名なロッカーもありました。

 私の場合は、クルマの車体下につけるような強力マグネットのケースも使ってました。郵便受けとかにもつけられるんで、運んだり隠したりするのには重宝でした。ずっと置いておくのには向いていないですが、一回も落としたり、なくしたりしたことはないですね。

 ムショでは、「シャブをどこに隠していたか」というような自慢めいた話もよくしていましたが、やっぱりマグネットで車体の下に入れる人はいましたね。昔はおおらかで、けっこう自宅に置いている人もいて、「夫が勝手に私のシャブを食ってたからケンカになった」とか、そんな話も聞きました。

 あとは子どもが使わなくなった通園バッグの再利用とか、食べ終わったクッキーの缶とか、すぐバレそうなところばっかりです。ASKAさんも、書斎の引き出しに入れてはったと報道されていましたね。もしかすると、バレて、パクられて、ラクになりたかったのかも?

 それと、たまに外国人がコンドームに入れた薬物をアソコに入れてて、空港でパクられたりしてますが、さすがに日本人はそういうのはないですね。ちなみに昔はヤクザもお金があったので、ヨットやクルーザーなんかにもよく置いてました。でも、あんまりリゾート感あふれるところは遠いので、取りに行くのがタイヘンです。要するに、隠さなあかんもんは邪魔臭いので、持たないほうがええということです。

nakanorumi_portrait中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

「手錠をはめたまま」分娩、生まれてすぐ離れ離れ――厳しいムショの出産事情

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■刑務所での出産は自己負担ナシ

 シャブで逮捕(パク)られる人、相変わらず多いですねー。って、私もその1人だったわけですが(苦笑)。

 報道で知った作家のC・W・ニコルさんのお嬢さんの例は、今年の2月にパクられた時、シャブが陽性の上、妊娠されていたとのことで、心配ですね。お母さんの勝手で子どもが傷つくのは、一番ダメですよ……。もう出産されたようですが、いい子に育ってほしいです。

 というわけで、今回はムショでの出産についてです。大前提として、刑が確定していない時(拘置所)は自費ですが、確定したら(刑務所)税金から出るので自己負担はナシ。出産のタイミングによって、負担に大きな違いが出ますね。

 妊娠3カ月くらいでパクられると、拘置所で中絶するのはお金がかかるので、おろすにおろせず、ムショで出産というのが多いです。そんな時は、たいてい男とも別れてますから、好きでもない男の子どもを産んで、すぐ手放すことになります。

■1歳半まで獄中育児OKはタテマエ

 法務省の統計だと、毎年20人以上の子どもが獄中で生まれているそうです。私もムショでおなかの大きいコは何人も見ましたよ。お風呂とかでも「うわっ、おなか大きなったねえ」「もうすぐやねー」などと、みんなでそれなりになごんだ会話をしてました。食事もみんなよりごはんが多めで、牛乳などの乳製品がついてましたね。

 一応、法律では1歳半までムショで育てられるそうですが、そんな人はいてません。所内の保育室には保母さんもいてないし、昼間は刑務作業で工場に行きますから、その間、赤ちゃんは放置されて、せいぜいおむつを替えてもらう程度。もちろんお友達もいてません。せやから、生まれてすぐに親族が引き取るか、設備の整った乳児院へ入れるかのどちらかになります。産んで1週間くらいは一緒にいて、あとは離れ離れがほとんどですね。おっぱいが張るたびに赤ちゃんのことを思い出すんやろうなーと思うと、切ないですね。

 乳児院に預けられた赤ちゃんは、職員が面会に連れてきてくれることもありますが、ほとんど会えないままのようです。私の友達は、すぐに妹さんが引き取ってましたが、当時はなんと手錠をはめたままの出産でした。メディアが騒いで問題になって、2015年から廃止になってますが、ついこの間までは「逃亡の恐れがある」という理由で手錠付きやったんですよ。これから出産ちゅう時に、逃亡なんか考えますかねえ。

 あと、出産の時には、当たり前でしょうが、刑務官も立ち会います。法務省の「刑務官募集」のページには、もちろん「時には受刑者の出産に立ち会います」とか「死刑執行もします」とかは書いてないんで、若い刑務官は立ち会い時に「聞いてないよ!」的な感じのようです。刑務官の離職率が高いのは、こういうのが原因と違いますかね。女性の刑務官は、3年以内に4割が辞めはるそうですよ。

■甘え方を知らない乳児院出身の子どもたち

 刑務官も気の毒ですが、そんな環境で生まれ育つ子どもはホンマかわいそうです。

 乳児院で育った子たちは愛情を知らないので、対人関係には苦労すると聞いています。「自分のことは自分で」と厳しくしつけられているので甘えられない、いつも他人の顔色をうかがっておどおどしている、大きい音とかに異常にビクビクするとか、そういう感じですね。

 私も、知り合いの乳児院出身のコに「もっと甘えてええんよ?」と言ったら、「甘え方がわかりません」と言われたことがあります。私は愛情いっぱいで育ったので、そういうのはホンマに気の毒やと思います。やっぱり、ムショは行くもんやないですね。

nakanorumi16中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

ポン中だって“白馬の王子”に夢中! 女囚たちの愛読書は「ハーレクイン・ロマンス」

nakanorumi19 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■獄中はヒマなので、本も読みます

 今年の夏は、7月は暑かったけど、8月の朝晩は寒いくらいの時もありましたね。ホンマお天気だけは、どうしようもないですね。

ムショや拘置所といえば「夏は暑くて冬は寒い」場所の典型で、とにかく夏は暑かった記憶しかありません。布団敷いて寝てるのに、朝には布団の下の畳が汗で濡れてしまうという始末……。毎夏に貸与されるうちわでパタパタとあおぎ、暑い空気をかき回していたものです。それでも女子刑務所はマシなんですよ。男子刑務所は、よく死人が出ないなあという感じです。

 そして、涼しくなってくると、「読書の秋」がやってきます。シャバでは本どころか文字が読めないようなレベルのコたちが、ムショでは必死に字を覚えることも珍しくありません。まあ塀の中は「とにかくヒマ」だからなんですけどね。

 本は、基本的に親族などからの差し入れに頼ります。届いた本は、本来「規律違反」なんですが、同じ房のコたちにも貸してあげて、みんなで読んでいました。施設内には「官本」(かんぼん)といって、備え付けの本もあります。これがまた昭和時代の本ばっかりで、めちゃめちゃ古くて汚かったですね。

■「実話ドキュメント」は、みんな読んでたのに……

 今年はついに「実ドキュ」こと「月刊実話ドキュメント」(マイウェイ出版)の休刊が発表されました。ヤクザを扱う雑誌を作っている会社には銀行がお金を貸してくれないのだそうで、それも失礼な話ですけどね。

 女子刑務所では、「実話時報」(竹書房/こちらもとっくに廃刊)や「実話時代」(三和出版/こちらは健在)などよりも「実ドキュ」のほうが人気でした。企画も組織(暴力団)の人事は少なめで、結構、読者目線だったんです。

 特に、「拘置所通信 塀の中からの真実の叫び」はみんな読んでいて、私も投稿して掲載されたことがあります。接見禁止処分を受けている時などは、弁護士に頼んで投稿してもらえることも人気の秘密でした。まあ内容は結構しょうもないんですが、それでもうれしかったです。

 あとは、「出すに出せない一通の手紙 塀の中のあの人へ…」も好きでしたね。当時の彼からの励ましの手紙が掲載されていたことがあって、「いつまでも待ってる」とか書かれて、もう泣いちゃいましたね。

 当事者にしかわからへんように「○○の□□ちゃんへ」みたいに書くんです。それと、巻末の「逮捕者一覧」に知り合いが出ているかどうかも、いつもチェックしてました。「うわー。○さん、殺人教唆ってアカンやん」みたいな(笑)。こういう実話系の雑誌は、広告もおもしろいのが特徴でしたね。ハゲやED(勃起不全)の薬とか、スタンガンとか防弾ベストとか催涙ガスとかが普通に並んでるんです。

 身内にヤクザが関係していない懲役は、よくも悪くも、もっと「女子らしい」本を読んでます。人気があるのは、やはり「女性セブン」(小学館)や「週刊女性」(主婦と生活社)「女性自身」(光文社)といった女性週刊誌やレディスコミックなどですね。私も獄中で初めてレディコミを読みましたが、エロくてエロくて、おかしな気分になりそうだったので、控えめにしてました。あとは嫁と姑のバトル、実話の怪談「ほんとにあった怖い話」(朝日新聞出版)なんかもみんな好きでした。

 そして、特に人気があったのは、王道ラブロマンスの「ハーレクイン・ロマンス」(ハーパーコリンズ・ジャパン)のシリーズです。『御曹司のプロポーズ』とか『億万長者の花嫁』とか、そういうタイトルの小説で、最近は漫画化もされているようです。

 最初は私も「ポン中のくせに、白馬の王子に憧れるんか!」「そんなもん、私たちは護送車がお迎えやん。腰縄と手錠付きで!」とかバカにしてましたけど、読んでみたら、わりとおもろかったです。さすがロングセラーですよね。興味がある方はお試しください。

 まあ私の場合は『血と骨』(梁石日/幻冬舎)とか『新宿鮫』シリーズ(大沢在昌/光文社)とか『不夜城』(馳星周/KADOKAWA)とかのハードな感じが好きでしたけどね。現実も非現実的な生活のときも、常に気持ちはハードボイルド!! ってことです。

 出所後もちゃんと読書を続けたら、もっと違う人生を歩めたかもしれませんが、もちろん出たら全然読みません。

 せっかくの読書習慣を捨て去るのは、ちょっともったいないですかね。もう少し涼しくなったら、久々に読んでみようかな? ちなみに中で読んだ本で「もういっぺん読みたい本」は、『仁義なき戦い』の著者でもある飯干晃一さんの『天女を背負った極道』です。実際にあった山口組の三代目襲撃事件をモデルにしていて、いい話ではないですが、心にしみました。今は『天女の極道』(祥伝社)に改題されていて、電子書籍でも買えるようです。

中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

元女囚が教える「ポン中」の見分け方――半永久的に続く覚醒剤の害

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■「あの人は、まだクスリをやってはる」って、すぐにわかりますよ

 最近、周囲におかしい人、いてないですか? ちょっと前ですが、友達の友達から、「最近付き合い始めたカレが、どうもおかしい」という相談を受け、会ってきました。

 現れたカレは、めっちゃイケメンで、ITの仕事でけっこう稼いでいるとのこと。うらやましい……と思ったのもつかの間、「めっちゃおかしいやん!」と驚きました。

 冷房の効いた喫茶店で、いつまでも汗をかき、ずっと唇をなめています。しかも、何かとリアクションがオーバーで、お冷やの入ったグラスを何度も口に運ぶなど、とにかく落ち着きがありません。これは、かなりの確率で覚醒剤中毒者ですよ。

 この時は何も言わずにお開きにして、その日の夜、彼女に電話しました。

「なんか、ヤバいクスリやってるんと違うかなあ」

「やっぱり……。いくら稼ぎがよくても、アカンですよね」

 彼女はがっかりしてましたが、「その道のプロ」だった私に言われて、あきらめもついたようでした。

 覚醒剤を使ったら、どのくらいカラダにとどまると思いますか? おしっこは1週間程度ですが、髪の毛や爪は、使い始めてから伸びた分を切るまで残るそうです。私の場合は、警察で、おしっこはもちろん、髪を100本近く切られ、爪も切られました。さらには、自宅に落ちていた髪も拾われています。一緒に使った人がいるか、見るためでしょうね。

 捜査いうより、ほとんどイヤガラセです。おしっこを採る時は、なんと男性警官もいてました。「なんでオトコがおんねん! SMか!」と抵抗しましたが、ダメでしたね。ひどいもんですが、まあ私も悪いことをしたので、しょうがない面もあります。

 そして、髪や爪以上に残るのが、「脳内」です。幻覚などの妄想は、半永久的に続くといわれています。使用をやめていたとしても、ちょっとしたストレスやお酒など、小さなきっかけで「フラッシュバック」が起こってしまうこともあるんです。

 覚醒剤は、使い始めて2~3カ月ほどで、幻覚や幻聴、被害妄想などの症状が出るといわれています。この時すぐに治療すれば治るそうですが、逮捕(パク)られるとわかっているのに、医者に行く人なんかいてませんよね。せやから、どんどんひどくなっていくんです。

 覚醒剤事件の場合、初犯だとまず執行猶予がつきますから、ここでも治療の機会はなくなります。つまり、シャブでムショにやってくるのは、2回以上の逮捕で、「シャブで妄想の症状がかなり進んだ」状態のコたちなんですよ。

 おかげさまで私はなんとか大丈夫なのですが、今でも覚醒剤をやってる人は、すぐにわかります。ムショに入ってくる新人ちゃんたちの4割は覚醒剤がらみ(※)で、「自分、ナニやって来たん?」「シャブの使用です」とか会話する前に「あ、このコはシャブやな」と、すぐにわかります。

 パクられて、判決が確定するまで、短くても何カ月か掛かるもんですが、そんな程度では抜けないほどの量を使っているんですね。そして、落ち着きがないくせに、ヘンな集中力はあるのも特徴です。手紙を書く時なんか、肩や顔にめっちゃ力が入って、唇がヨコにいってたり、足の指がぐーっと開いてたりします。あまりにも「ヘン顔」なんで、「唇、ヨコにいってるよ……」と教えたろかと思ったこともあります。あまりにも集中してて、声をかけるのが申し訳ないので、言うたことはないですけど。

 でも、そのくらいならまだいいです。ネットニュースで、歌手のASKAさんが収容先の病院で「お菓子のサブレを洗濯物のように干していた」と報道された時は、「これは、相当イッてるなあ」と思いました。その後も、ヘンなブログを書いてはったりしてますよね。

 同じポン中でも、10人に1人くらいの、いわば「選び抜かれた人」なのだと思いました。ここまで進んでしまうと、完全に治すのは難しいでしょうが、ファンも多いし、がんばってほしいですね。ただ、ASKAさんがパクられた時は、合成麻薬のMDMAも持っていたそうで、これはシャブよりも脳への影響はひどいといわれています。でも曲作りとかの才能には、きっと影響ないですよ。

※法務省『犯罪白書』によると、収容者の罪名はほぼ毎年同じ割合で、覚醒剤と窃盗(ほとんど万引)が4割ずつ、あとは詐欺が5%、殺人が2%くらいです。そのほかは暴行傷害とか、脅迫とか放火とか横領とかですね。バクチもありますが、やっぱり女性は少ないです。

nakanorumi16中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

幽霊が出やすいのは「刑場」! ムショの怪談話で一番怖いのは……?

 覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

■刑場の幽霊はみんなが体験?

 毎日暑いんで、今回はコワいお話にしようかなと思います。

 読者の皆さんの中にも霊が見える方って、いらっしゃいますよね? 私は見えないのですが、ある霊媒師さんから「アンタには生き霊が憑いてる」と言われました(爆死)。まあ「ポン中でムショ帰りのくせに」テレビに出たり、サイゾーウーマンでエッセイを書かせてもらったりしてるから、妬まれているようです。そう言われてもねえ。でも、どうしようもないので、ほったらかしてます。そもそも私には見えてませんしね。

 せやからムショでも、これといった霊体験はしていないのですが、いろんな話は聞いてきました。ちゅうか、ガチで見てしまったら、怖くて懲役(受刑者)や刑務官なんか務まりませんよ。

 で有名なのは、死刑を執行する「刑場」のある施設の幽霊話です。みんな言ったはるから、実話と思います。ウチのラウンジのお客さんに刑務官さんもいてはるんですが、「夜は怖いわ」とおっしゃってます(笑)。やっぱり怖いんですね。

 全国で刑場があるのは、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7つの拘置所で、札幌と仙台は刑務所内の拘置支所です。なんで刑務所ではなく拘置所かというと、死刑は執行されるまで「未決囚」やからだそうです。吊るされて初めて「既決」になるんですね。

 死ぬまで未決やから舎房着(いわゆる囚人服)ではなく私服で、髪形も自由です。女子はもともと未決も既決も髪形はわりと自由なんですが、男子は刑が確定したら丸刈りにされます。死刑囚は伸ばしていてもいいんです。そういえば、刑務官も死刑囚にはちょっと優しい気がします。

 刑場はたまに報道陣にも公開されてるそうで、見に行った知り合いの記者さんは、「霊感ない人でも、めっちゃヤバい」とおびえていました。照明もちゃんとあるのに、「何か暗くて怖い」のだそうです。記者さんは「足を踏み入れたら、無数の視線を感じた」そうです。コワー。「知らない人(メディア関係者)がたくさん来たから偵察に来たのかも」と。ウワサによると、死刑囚だけやなくて獄死した人や被害者さんの霊もいてるみたいですよ。霊が霊を呼んでしまうんですかね。

 あと刑場はなくても、全国の施設には獄死した人のための霊安室があります。これもいろんな話がありますね。服役中に病気や事故で死ぬなんて、無念だろうなとは思います。冤罪やったら化けますよね。せやから霊安室周辺の幽霊騒動は絶えません。だいたい地下にあって普段は通れないのですが、「そっちは霊安室しかないし」という廊下を白い人影が歩いてるとか、近くを通りかかったらすすり泣きが聞こえるとか、そんな話が多いです。あと誰も動かしてないのに、霊安室のある階でエレベーターが停まってるとかも言ってはりましたよ。

 リアル怪談のほかに、でっち上げの話もけっこうありました。新しく入って来たコに、「○○のトイレには入ったらあかんよ」みたいな話をして脅かすんですね。洗面台の鏡に知らない人が映ったはるとか。それと、確かに誰も入ってへんのに「使用中」を示すランプがつくトイレはありました。「あれ、誰もいてへんのになんやろねー?」とみんなでネタにしていましたが、こういうのって、もしマジの幽霊としても実害はないから、怖くはないんですよ。

 むしろ怖いのは、懲罰対象になる不正がバレた時のほうですね。隠していたお菓子や密告を書いたガテ(手紙)を見つけられた時は、観念しつつも刑務官に「祟(たた)ったる!」と毒を吐いていました。

 あと怖いのはゴキブリですかね。あれもホンマにイヤですね。前にも書きましたけど、夫を殺してバラバラにしてチン○とかを冷蔵庫に入れていたSちゃんは、ゴキブリやハエをめちゃくちゃ怖がっていました。アンタの方が怖いわ! とみんなが思ってますけどね。

 普段はやさしいSちゃんのような人が殺してしまう時というのは、何か違う「スイッチ」が入ってしまうようです。ちなみに同じ夫殺しのAちゃんは、当時の報道では「何十カ所も刺した」ことになっていましたが、ブスブス刺した記憶はないのだそうです。夢中だったんでしょうか。ちなみに本人は「あんな程度で死ぬなや」と言ってました。

 やっぱり霊よりも人のほうが怖いですよ、絶対。……どうですか? 少しは涼しくなりました?

nakanorumi15中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

「そんなに私の裸が見たいんか!」叫ぶおばあちゃんも――クレイジーでおもろい獄中者

 毎日暑いですね。今はムショもだいぶ建て替えられていて、室温の管理も昔ほどひどくはないようです。でも、やっぱりキンキンにエアコンが効いているわけではないので、体調管理は大変です。それに、暑いとか寒いとかだけではなく、もともと閉鎖された空間にいるので、言動がおかしくなる人も多いです。こんな状態で「罪を反省しろ」と言われてもムリですから、再犯者がいなくならないのだと思います。

■電柱がおまわりさんに見えたり、虫に襲われたり

 獄中でおかしくなる原因は、拘禁障害というノイローゼの一種か、シャバにいた頃のドラッグの後遺症なのか、判断は難しいですね。 急に大声を出したり、バッグの中の荷物から出し入れを繰り返したりする人は珍しくありませんでした。

 たとえばドラッグの後遺症でありがちなのは、「なんでも『人』に見える」とか「たくさんの虫が這ってくるように見える」、あとは「モノがしゃべる」とかいうのですね。私は塀の中では大丈夫でしたが、シャブをやってた頃は、電柱がおまわりさんに見えて外に出られなかったり、タバコを吸う時にマッチ棒が立ち上がって話しかけてきたりしてました。もちろん今はないですよ(笑)。

 ほかにも、一日中、鳩時計の時報をマネして「ぽっぽー、ぽっぽー」と言わはる人、鉛筆でもペンでも注射器に見えるらしく、血が出るまで腕に刺す人なんかもいてはりました。それから、ムショの食事は遅くても10分で食べなくてはならないのに、「味噌汁に虫がいる」と、器をじーっと見る人もいてました。本来ならヘタしたら懲罰ですが、頭が壊れてるのがわかってるので、誰も何も言いません。

 脳が壊れてるエピソードでいちばん印象に残っているのは、和歌山刑務所で一緒だった在日のKさんです。私が収監されていた当時ですでに70代だったと思いますが、とにかくエロに執着してはりました。刑務所を出たり入ったりで、最近獄死されたと聞いています。

 Kさんは、常に騒いでいる印象で、男性の先生(刑務官をこう呼びます)には「また私をそんな目で見たな! 抱きたいんやろ!?」と怒鳴り、女性の先生には「オメ○したいんやろ!?」と叫び、同房の若いコには「ブス!」「腐れオメ○!」と罵倒します。

 いま思えば、ごっつ体力ありますよね。そういえばよくストレッチや腹筋運動もしたはりました。そして、夏は「そんなに私の水着姿が見たいんか!? ほなら見せたるわ!」と、誰も頼んでへんのにパンツ一丁になり、庭の溜池に飛び込んでました。

 さらに、夏場の工場作業用の制服のスカートを、ウエストの部分を折り込んでいるのか、膝上15センチくらいまで上げていました。ボールペンでアイラインを引いたりもしたはりましたね。もうおばあちゃんですし、先生たちも苦笑するだけで怒りません。私がやったら、間違いなく懲罰ですけどね。

 ヘタな芸人よりよっぽどおもろいので、私たちはよく笑って見ていました。Kさんとはもう会えないのですが、久しぶりに当時の仲間とKさんについて語りたくなりました。

nakanorumi15中野瑠美(なかの・るみ
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)