鋭い映画評論が映画ファンの間で頼りにされている宇多丸だが、彼の本業はラッパー。ヒップホップグループ「RHYMESTER」のメンバーである。業界外にいる彼だからこそ歯に衣着せぬ批評ができ、愛好家に寄り添うコメントが放てる側面もあるように思う。
別の例でいえば、デーモン閣下の本業を本気で相撲評論家だと捉えている若者も多いらしい(Yahoo!知恵袋には「相撲評論家のデーモン小暮は、なぜいつもごてごてと厚化粧をしているのですか?」という質問が存在する)。
ファンが高じて独自の理論ができ上がり、ついには専門家に勝るとも劣らぬ批評性と言葉を持ち合わせた彼ら。好きこそものの上手なれではないが、ジャンルならびに自己と向き合う形でしがらみなく作り上げた審美眼が脚光を浴びるのは当然という気もする。
■貴闘力の分析力を里崎智也が絶賛
4月29日放送『EXD44』(テレビ朝日系)にて行われたのは「貴闘力がプロ野球開幕3連戦を勝敗予想」なる、スレスレの企画。
貴闘力といえば、野球賭博に関与したとして相撲界から永久追放された過去がある。そんな彼を、ピュアな“野球好き”と呼ぶのに躊躇がないわけではない。しかし、番組は「ギャンブルに手を出してしまうほど大好きな野球。その分析能力はプロの解説者に及ぶほどの腕前なのではないか?」と、貴闘力をあくまで“野球好き”として扱った。
確かに、貴闘力は野球が大好き。野球賭博事件から8年たったというのに、なんと現在のプロ野球情報がバッチリ頭に入っていたのだ。何しろ彼、各球団が発表したことを知らなかったものの、その状態で12球団中10球団(ヤクルトと日ハム以外)の予告先発投手を予想し、ズバリ的中させている。
もちろん、現在の貴闘力は野球賭博に手を染めてない。
「張ってないのにね。本当にやってないからね!」(貴闘力)
ではさっそく、開幕戦(3月30日)の勝敗予想を行ってもらおう。すると、一瞬にして真剣な眼差しになる貴闘力。まさしく、勝負師の目だ。
結果、彼は「○広島-中日●」「●DeNA-ヤクルト○」「○巨人-阪神●」「○ソフトバンク-オリックス●」「●ロッテ-楽天○」「●日本ハム-西武○」と勝敗を付けている。これには、2つの根拠がある。
・ホームチームは強い
・雰囲気
まずは、ホームゲームの法則について。
「開幕ホームなんていったら、みんなやる気満々だから」(貴闘力)
付け加えて、今年メジャーから戻った青木宣親加入による層の厚みを考慮してヤクルトに、昨年15勝をあげた絶対的エース則本昂大が先発という要素を考慮して楽天に、大谷翔平離脱による日ハムの大幅な戦力ダウンを考慮して西武に、それぞれ○を付けている。
貴闘力の付けた開幕戦6試合の勝敗予想、実はプロ野球解説者・里崎智也と全く同じだった。
「結構、イイ線突いてると思いますね。(勝敗予想は)僕と全く一緒ですね。全部一緒です」
「(貴闘力は)よくわかってるなと思いますね。新聞読んで、いろんな状況をよく知ってるなと思います」(里崎)
続いて、「雰囲気」について。貴闘力は、特に「○巨人-阪神●」の予想に強い自信を持っていた。その理由だが「(巨人軍は)雰囲気いいじゃない。データよりも、その時の流れと雰囲気ってあるんで。匂いだ、匂い!」とのこと。この姿勢も、里崎は評価する。
「雰囲気、大事だと思いますよ。それを察知できる感性があるかどうかですよ」(里崎)
開幕戦、貴闘力の予想結果は5勝1敗に終わった。巨人-阪神戦以外は的中! それにしても、巨人軍の黒星が決定するや、露骨なほどにうなだれる貴闘力はなぜなのか。何も賭けてないはずなのに、このリアクションはいかに……?
兎にも角にも、すごい的中率と分析能力である。
■現役力士時代の経験から導き出される「ホーム絶対有利」の法則
開幕3戦目、貴闘力は6試合全てでホームチームに白星を付けた。これは力士時代の経験から導き出された、彼の絶対の法則ゆえだ。担当ディレクターから「応援は力になるものですか?」と問われた貴闘力は、即答した。
「(頷きながら)なるなる。それは、絶対。応援された方はパワーもらえるから」(貴闘力)
現役時代、温かい声援に力をもらって横綱相手に何度も金星を掴んだ貴闘力。「ホームの選手も、きっと盛大な声援を受けて勝利を収めるに違いない」と、自身の経験則から分析するのだ。
一方、専門家の見解は以下。
「お客さんがいっぱい入ってるからって勝ったり負けたりしないですよ。ホームチームの勝率はほぼ5割なんですよね。長期的に見たら関係あるかも知れないですけど、開幕3戦くらいじゃ関係ないと思います」(里崎)
しかし、プロ野球解説者と差異があるのが逆にいい。貴闘力による、独特の読み。相撲道とギャンブル道を経て培った分析力だ。専門家とは異なる角度からの推察は、それはそれで面白い。
というか貴闘力、開幕3戦を通じて12試合の勝敗を的中させている。なんと、18分の12! 十分、及第点をあげられる数字ではないだろうか。
地上波キー局では、きっと無理な話だ。しかし、ネット配信やCS、雑誌連載など、なんらかのメディアで貴闘力の野球解説を見ることはできないだろうか? 彼の解説からは、好事家を喜ばす独特の匂いが立ち上ってくる。
もちろん、賭けちゃいけない。的中させても特別報酬を与えてはいけない。純粋な解説者としての仕事の話を、今はしている。ニーズはあると思うのだが。
(文=寺西ジャジューカ)