「電撃小説大賞出身者が直木賞」から見える、ラノベの未来と“広がる夢”

『宝島』(講談社)で、第160回直木三十五賞に輝いた小説家・真藤順丈氏。数々の受賞歴を持つ真藤氏だが、2008年には『東京ヴァンパイア・ファイナンス』(電撃文庫)で電撃小説大賞銀賞を受賞した経歴もある。このことに、注目しているのはラノベ読者。そして、ラノベ作家を目指している人々。一時ほど揶揄されることも少なくなったが「ワナビ(註:ラノベ作家になりたい人を悪し様にいう言葉)」の間では夢が広がっているようだ。

 もはや、無数の作家と作品が次々とリリースされるラノベの世界において、別のジャンル……一般文芸へと巣立っていく人は珍しくない。直木賞受賞者に限っても桜庭一樹氏、桐野夏生氏、村山由佳氏など、ラノベやジュニア出身者は多い。その対象を一応「無名あるいは新人作家」としていることもあってか、いまだ芥川賞受賞に至ったラノベ出身者はいないが、いずれはそうした人も出てくるのではないかと思われている。

 ここ数年の間、ラノベの世界では「なろう系」を中心として、文章がガタガタでひたすら説明的な地の文と会話だけで成立するような作品が氾濫してきた。

 それらの作品は、一つの文章のスタイルとしては面白いのだが、何年もそうしたスタイルの作品が読み継がれていくかといえば疑問だ。既に、ラノベ読者の年齢は上は50代から60代へと突入しようとしている。結局は、ちゃんと「文章で読ませる」作品の需要が高まっていくことは間違いない。

 ラノベ出身者で直木賞受賞といったニュースに刺激を受けて、今後はどんな作品が生まれていくのだろうか。
(文=是枝了以)

西加奈子受賞、直木賞は“前代未聞の出来レース”!? 「候補作が足りない」ドタバタ舞台裏

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『サラバ!』(小学館)

 1月15日発表の第152回直木賞は、西加奈子の『サラバ!』(昨年10月発売、小学館)が受賞を射止めた。昨年下半期に出版された作品から選ばれる賞だが、今回のその舞台裏では、「候補作が足りない!」と直木賞主催の文藝春秋の担当者たちが頭を抱えていたのだという。

「2014年下半期は、書籍の売れ行きの落ち込み具合が全体に大きく、話題になる作品がありませんでした。直木賞向けの良作ももちろん少なく、候補作を選ぶ担当者たちは各出版社に『いい作品はないか』と聞き込みまでしていたのです」(文芸編集者)

柚木麻子、直木賞発表をめぐってブチ切れ!? 文藝春秋が犯した“前代未聞”の大失態とは

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『本屋さんのダイアナ』(新潮社)

 8月に発表された第151回直木賞に、『本屋さんのダイアナ』(新潮社)でノミネートされた柚木麻子。08年に『終点のあの子』(文藝春秋)でデビューしてから『ランチのアッコちゃん』(扶桑社)、『伊藤くんAtoZ』(幻冬舎)など次々ヒット作を生む人気作家だが、直木賞発表を巡って柚木が激怒する事件が発生していた。

 賞の発表当日、候補者は候補作の版元の編集者をはじめ、各社の担当編集者らとともに、喫茶店などで“待ち会”を開くという。これは、文藝春秋の直木賞運営局からかかってくる当落の電話を、その名の通り“待つ”会で、柚木も当日、都内某所でスタンバイしていたというのだが……