給料・手当の目減り止まらず、若手社員20人が退社……マスコミ地盤沈下で“勝ち組”共同通信社にも不穏な動き 

 新聞業界に大逆風が吹いている。その象徴が、全国紙の一角を占める産経新聞の苦境だ。

「部数減に歯止めがかからず、広告収入は減少の一途をたどっている。2月には、社員の約1割に当たる180人のリストラを断行。それでも経営の先行きには不透明感が漂っており、中堅・若手社員が次々と社を去っている状況です」(同社関係者)

 なにより関係者に衝撃を与えたのが、業界団体「日本新聞協会」が公表した、来年の新卒採用者の数である。

「ほかの全国紙が数十人規模の新卒社員を確保する中、産経はわずか2人。しかも、そのうちの1人は入社を辞退し、内定式には1人しか顔を見せなかったという話です。社内では『来年以降、会社が存続するのか』と不安の声が渦巻いています」(同)

 ただ、崖っぷちに立たされているのは、産経だけではない。インターネットの隆盛に押され、新聞は業界全体が総崩れしているのが実情だ。新聞協会の調査によると、2000年に約5,370万部あった新聞発行部数は、昨年には約3,990万部に。1,000万部以上の部数減は、最大手の読売の発行部数を超える数字である。

 さらに、この地盤沈下の流れは、新聞のみならず、通信社にまで広がっている。

「日本には時事と共同、2つの通信社があります。もともと時事は経営基盤が弱く、数年前から資産の切り売りや社員数の抑制、経費削減など経営のスリム化に動いていました。一方の共同は、時事と比べて加盟社が圧倒的に多く、安定経営を続けてきましたが、最近、雲行きが怪しいようです」(広告代理店関係者)

 株式会社である時事と違い、加盟社が資本を出し合う社団法人として運営されている共同は、社員の待遇もよく、マスコミの中でも「勝ち組」に分類されてきた。しかし、ここにきて、業界全体に見られる退潮のあおりを受ける場面が見られるようになってきたのだという。

「これまで支給されていた手当が次々と廃止になり、給料も徐々に目減りするようになってきたそうです。それに、この1年で若手社員が20人ほど辞めました。社内にも将来を悲観視するムードが漂っているといいます」(同)

 業界内では、東京五輪後に新聞業界のガリバーである読売が時事を吸収合併し、通信社の事業に乗り出すというウワサも、まことしやかにささやかれている。

「読売が通信社を兼ねるようになれば、価格競争が始まる。そうなると、共同は一気に経営は苦しくなり、現在のような取材体制を保つのは難しくなります。経営陣は、かなり危機感を持って状況を注視しているはずです」(先の代理店関係者)

 水面下で広がる不穏な動きは、マスコミが大再編時代に突入しようとする前兆なのか――。

産経新聞、今春入社の新卒はたったの2人! “アベ友メディア”の急先鋒が崖っぷち

 メディア再編の引き金になるのか?

 全国紙の一角を占める産経新聞が、崖っぷちに立たされている。広告代理店関係者がこう明かす。

「産経の危機的な経営状況については、すでに昨年から一部メディアが報じ、業界内で話題になり始めていました。決定的だったのは、先月公表された、ある数字です」

 関係者の間に衝撃を走らせたのは、業界団体の「日本新聞協会」が発表した今春入社の新卒採用者数だ。

 朝日、毎日、読売、日経の全国紙各社はじめ、北海道や中日などの大手ブロック紙は毎年、数十人単位で新人を採用。

 今年も朝日72人、読売80人、毎日61人といった具合で、各社の採用計画に大きな変化は見られない。そんななかにあって、産経だけがわずか2人の採用にとどまったのだ。

「しかもそのうち、記者採用はたったの1人。一部では『会社整理の前段階として、採用を抑制したのではないか』との臆測まで広がっています」(前出の代理店関係者)

 産経は今春、社員の約1割に当たる規模の早期退職を実施。一部の支局を閉鎖するなどしており、一部メディアでは「全国紙の看板を下ろす」とも報じられている。そんななかで伝えられた一報で、同社の苦境はより鮮明になった格好だ。

 産経といえば、一部幹部が安倍晋三首相と極めて近しい関係にあり、安倍政権に好意的な右派メディアの中でもその存在感は突出している。政権とのパイプを生かして、数々のスクープも飛ばし、右派界隈では熱狂的な読者も獲得していたが、新聞離れが加速する世の流れには抗えなかったようだ。「アベ友メディア」の急先鋒として生き残りを図ってきた産経の窮状があらわになったことで、安倍政権を取り巻く空気も一変しそうな気配が漂っている。

「安倍政権下では、財務省による公文書改ざんや、厚生労働省の統計不正問題など、一発で政権が吹っ飛ぶほどのありえない不祥事が頻発してきた。それでも産経をはじめとする一部の右派メディアがかたくなに政権擁護の姿勢を崩さなかったのは、一強体制を築く安倍政権に追従することで経営上のメリットを得られるからという計算はあったはず。でも、産経の経営難が明らかになったことで、いくら政権に尻尾を振っても、なんの利益も生み出さないことが明らかになってしまった。今後、急速な“安倍離れ”が進む可能性はありますね」(同)

 関係者によると、産経社内では、もともと政治部が主導する露骨な政権寄りの紙面作りへの拒否感も根強くあったという。

 前出の代理店関係者は「産経では、体制への不満を抱える若手や中堅記者の離脱も相次いでいる。彼らが辞めた後、社内で見聞きした一部幹部と政権との癒着を暴露することも考えられる」と声を潜める。

「アベ友メディア」の凋落は、安倍政権の終わりの始まりになるのか――。

産経「高齢者相手に違法勧誘」だけじゃない! ヤクザにも見放された新聞業界の断末魔

 もはや「新聞離れ」という言葉さえ死語になりつつある“死に体”の新聞業界。その窮状を象徴するかのようなニュースが報じられた。

 全国紙の一角を占める産経新聞の販売店が、高額な景品で長期契約の勧誘を行っていたことが発覚。景品表示法に違反する疑いがあるとして、大阪府消費生活センターが大阪の本社を立ち入り検査していたという。

「大阪府内の販売店が、数十万円相当のドラム式洗濯機と引き換えに、1人暮らしの高齢者らに長期の新聞購読契約を勧誘。その後、解約を申し出たところ、『高額な解約金を求められた』として、自治体に苦情が寄せられていたのです。景品表示法は、商品に見合わない高額景品を用いた勧誘を禁じています。自治体側はこれまで再三にわたって指導していましたが、改善が見られないため、今回の措置に踏み切ったようです」(事情を知る関係者)

 浮き彫りになったのは、景品という餌で釣るしか消費者をつなぎ留められなくなった新聞の苦境だ。

 今回、問題が発覚した産経は経営危機がささやかれて久しく、こうしたニュースが報じられても「さもありなん」と納得してしまうのが正直なところ。とはいえ、ほかの新聞社も事情は同じだ。新聞の発行部数を公式に示す「ABC部数」(2018年7月度)によると、朝日、読売、毎日、日経、産経の5大紙は、この1年間でいずれも大きく部数を減らし、合計約129万部減を記録したという。

 退潮著しい新聞業界だが、そもそもこれまで大部数を維持してこられたのは、紙面のクオリティーうんぬん以前に、販売店側の営業力による部分も大きい。

 新聞販売店による強引な販売手法をたとえる言葉として、「インテリが書いてヤクザが売る」というたとえ話があるが、実はこのフレーズ、あながち誇張された表現ともいえない面があるという。

「実際、新聞の拡張はシノギのひとつにしていた」と明かすのは、関東に本拠を持つ、さる暴力団幹部だ。

「今から20年ぐらい前、新聞の販売部数がまだ右肩上がりを続けていた時代は、おいしいシノギだったよ。といっても、もちろんオレが直接勧誘するわけじゃない。息のかかった拡張員を雇って、そいつらにやらせていた」

 力が物を言うヤクザ社会。新聞の拡張をめぐる、組織同士でのシノギの奪い合いもあったという。

「優秀な拡張員を囲っていると当然、実入りもよくなる。だから、販売店同士での拡張員の引き抜きが、しょっちゅうあったんだ。それでトラブルになったら、俺たちの出番だよ。北関東は特に販売競争が熾烈で、よくトラブル処理のために出張っていったもんだよ。あ、それにマッチポンプもやったな。子飼いの拡張員に架空の発注を取ってこさせて、販売実績を水増しする。それで、よその販売店が引き抜きにきたら、『うちの販売員にちょっかい出したな』と、こう出るわけよ。で、解決金として、そいつの販売実績に応じた金を相手からふんだくる。もちろん、その実績ってのは架空のもんだから、こっちは丸もうけってわけさ」

 新聞業界がメディアの雄として君臨した時代。その裏側では、知られざる“仁義なき戦い”が繰り広げられていたのだ。

 冒頭で紹介した産経の違法勧誘の一件は、ヤクザからも見放された新聞業界の、最後の悪あがきといえるかもしれない。