《飽食から美食に変わったニッポングルメ。ラーメンだってカレーだってスイーツだって、おいしくて当然の時代! でも、目でも楽しめたらもっとおいしくない!? そんな変なグルメ、おもしろグルメを探訪する! B級グルメなんて恐れ多い。珍級グルメ、いただきま~す!!》
アイスクリームのからあげって食べた事ある? 筆者は以前からずっと、アイスの天ぷらやからあげを食べてみたかった。
思えば、「アイスクリーム」はグルメものにはしばしば登場するが、“変わり種グルメ”ではあまり見かけない希少な食材である。このコーナーでも、筆者の記憶にあるのは、北千住にあった「菊や」(惜しまれつつ閉店)のアイスクリームラーメンくらいではないか。
そんな、憧れの「アイスのからあげ」が食べられる店が藤沢にあると聞き、静岡にハンバーグを食べに行った帰りに寄ってみることにした。

藤沢駅から2駅、小田急線善行(ぜんぎょう)駅を降りると、その店は駅前ロータリーの入り口の角に、黄色いのぼりをはためかせ、燦然と輝いていた。
駅出口から徒歩1分。店が近づくにつれて店の全貌が見えてくる。表に丸いテーブルがひとつ出ているので、外でも食べられるようになっている。
そして、店の前に到着した時、“外でも”が“外で”だということに気づかされた。つまり、お持ち帰りがメインで、すぐに食べたい人は、店前のテーブルで食べることができるようだ。

店前には、からあげにトンカツ、エビフライ、たこ焼きなど、美味しそうなおかずや弁当のメニューが、写真付きや写真なしでたくさん貼り出されている。雰囲気は、少し派手なお弁当屋さんである。腹ペコでここに立ったなら、途端に腹の虫の大合唱が始まるだろう。
が、果たして「アイスのからあげ」は本当にあるのか? 張り紙を端から目を走らせて目的のメニューを探してみるのだが……ない。
「こ、これは、ガセネタだったか!?」

そうも思ったが、そんな変わったメニューがあってもおかしくない雰囲気の店ではある。直接店員に聞こうと、店の奥に声をかけると、「ハ~イ」という声とともに、親切そうな丸いメガネのおっちゃんが登場した。
「アイスのからあげってあるんですか?」
願いを込めて聞いてみた。すると、
「ありますよ。雪見だいふくとモナカ、どっちがいいですか?」
あった! 本当に。しかも2種類!! 漠然と、おしゃれなアイス屋さんで出される、丸くすくったアイスの唐揚げを想像していたが、市販のアイスだったか、そう来たか……。

筆者が選んだのは、雪見だいふくの方。しかし、季節は冬。これだけあるメニューの中で、いきなり「じゃあ、雪見だいふくのほうで」というのも違和感しかない。まずは様子見で、鶏皮の素揚げを頼んでみると、これが、パリッパリのサックサクで、超~うまい! なんでカルビーは鶏皮チップスを出さないのかという、まさに“爆誕”レベルなのだ。ホットなシーズンならビールは必須だろう。

その鶏皮をカリカリつまみながら、次は何にしようか考えあぐねた末に頼んだのが、イカゲソの唐揚げだった。これもまた、「サク・コリ・プッルン!」という三重奏の食感と、海の香りが楽しめる逸品。こんな店がウチの近くにあったら、毎晩でも通いてーゼ……。
そして、いよいよ、その時はきた。
「すみませーん、あと、アイスの唐揚げ。雪見だいふくの方で」
おっちゃんに、そうお願いした。

約3分後、「ハイ、お待たせ……」と、受け取ったのは、コロッケのような、小さなカレーパンのような、小さくて丸い物体だった。上に生クリームがちょこんと乗っかっている。
「……ワイルドに食べてね」
おっちゃんに言われたとおり、かぶりついてみた。
「なんだこれわわわ!?」

歯を立てた瞬間の、生クリームの甘さと衣のサクサクした食感は、人生の中でも未知の領域だった。
「あ~、イカフライでやめときゃよかった……」
後悔したが、間に合わない。そのまま噛み下ろすと、甘さのあとに一瞬だけ、皮である求肥の柔らかさを感じ、それから固めのアイスの食感と冷たい甘味が伝わってきた。
「う、う~ん?」
今までクリームの甘さと揚げ衣というコンビネーションを体験したことがなかったのでチト気になる味ではあるが、まずくはない。まさに、「珍級(ツウ好み笑)」な味なのだった。

店主に聞くと、店を始めて40年。変わり揚げを始めたのは30年前だという。当時は、昼間は子ども、夜は会社帰りのサラリーマンで賑わい、夜は酒も出した。しかし、飲酒運転で帰る客がいて酒の提供はやめ、駅前にマックができると子どもたちも遠ざかったという。
なぜかファンタジーで、宮崎駿のアニメに出てきそうな、駄菓子屋みたいな揚げ物屋。次はモナカのほう、いってみっか……。
善行 ビーバー「あげアイス ユキミ」200円
SNS映え ???
味 ☆☆
珍級度 ☆☆☆!!
(写真・文=よしよし)