80年代~90年代、『不思議のたたりちゃん』や『不気田くん』を筆頭に、名作ホラー漫画を多数生み出した犬木加奈子さん。そんな犬木さんは現在、児童虐待をテーマにした『サバイバー~破壊される子供たち~』(まんが王国)を連載中だ。かつてはたたりちゃんと同じ小学生、そして現在は最新作の加虐親と同世代となったいちファンが、ホラー全盛期から現在の活動までをファン目線で聞いた。
――『サバイバー』の反響はどうでしょうか?
犬木加奈子さん(以下、犬木) わたしは大学で漫画の講義をしていますが、その教え子から、「お母さんが『この漫画に出てくるような、ご飯を詰め込んで吐いてしまう子どもを見たことがある。様子がおかしかったから、あの子はもしかしたら虐待を受けていたのかもしれない』と言っていた」と聞きました。それ以外では、わたしのところには感想などは届きませんねえ。言葉にするのが憚られるというか、ヘタなことを言えないのかもしれないですね。
担当編集 サイト上のコメント欄(まんがレポ)には読者からコメントを書いていただいていますが、「面白かった」という表現が使いづらいのかもしれませんね。外部でのインタビュー記事には、おのおのの考えを綴った多くのコメントがついていたので、問題提起的に反響はあったのかなと思いました。
犬木 一番最初にインタビューを受けたとき、「この漫画は、『面白い』と言っていいのか、難しいですよね」と言われて、「ん?」と思ったんですよ。わたしは一応漫画家なので、漫画は本来、「面白くなければいけない」というのが大前提にあるんです。だから、漫画として面白いと思ってもらわなければいけないし、学生たちにも「『ははは』と笑うだけが“面白い”じゃないからね」と教えています。でも、現実をテーマにして、実際に事件が立て続いていて、良識のある人は「面白い」と言うには口が重くなっちゃいますよね。
――主なターゲット層は、「親になったかつての読者」でしょうか?
犬木 そうですね。10年以上描いていなかったから、わたしのことを覚えてくださっているのはかつてのファンの方々だと思うんです。そんな彼女たちはちょうど子育て世代に入っているのかなと、そこに向けようと思いました。
――かく言うわたしも「子育て中のかつてのファン」です。実際に、『サバイバー』を読み自分の育児を顧みるいい機会になりました。実は今朝も、4歳の子どもが「おなかが痛い」と言ってご飯を食べなくて、たまに嘘をつくので今回もそれじゃないかと思って怒って食べさせようとしていたんですよね。そうしたら、さっき保育園から「遊んでいるときに吐いた。胃腸炎の疑いがある」というお迎え要請電話がありまして……すごく反省しています。
犬木 具合が悪かったのね。でもそれはしょうがない! 深く考えすぎて、傷つかないほうがいいですよ。「いい経験をしたな」と思って、ね。親って、そうやって子どもに育てられていくんですよね。わたしも子どもがいるからわかりますが、たいがいの子どもは好きで嘘はつかないですよ。本当に体調が悪いときもあるし、何かしらの原因がある。大人のように、「人を欺いてやろう」って感覚でつく嘘ではないと思います。だんだん小ずるくはなってきますけどね。
――もっと信じないといけませんね……。先生のお子さんは、先生の漫画を読まれるんでしょうか?
犬木 子どもは今35歳なのですが、幼稚園くらいのときに『たたりちゃん』を描いていました。でも「お母さんの漫画は怖いからイヤだ!」と言って、読んでくれなかったですね(笑)。普通に「りぼん」(集英社)や『美少女戦士セーラームーン』(講談社)とかばかり読んでいました。
――一方でお母さんは、わたしをはじめ全国の子どもから愛されていたと(笑)。昔からのファンとしては、今も『たたりちゃん』の頃から、先生はテーマが一貫しているなと思いました。どちらも“いじめ”が共通しています。
犬木 人間の最高の喜びや達成感って、「人間が人間を支配するとき」だと思うんです。そのときの心地よさって、すごいんだと思います。いじめは子どもに限らず、全世代に共通してありますよね。子どもに「いじめはよくない」と言いながら、お母さんたちは“ママ友いじめ”をしているでしょう?
わたし、町内会の組長さんなんですが、あっ、組長さんっていうのは町内会長の下で、ゴミ集積場に看板をかけたりいろいろやるんですが、もう……びっくりするの! いろんな人がいるんだってことがわかって! わたしが庭掃除をしていると、ご近所のうわさをブワ――ッ! って言いにくる一部奥様がいて。だからわたしがこういう漫画を描いていることが知れ渡ったら、何を言われるか……。
――そういった日常も漫画のネタになりそうです。
犬木 よく「ご近所のことを描いているんでしょう?」なんて聞かれますが、漫画に反映したことはないんですよ。でも、いつか使えるかもしれませんね(笑)。
――ファンとしては、先生のリアルな日常を知ることができてうれしいです! ところで、『サバイバー』の気になるラストはどうなるのでしょうか。現実をベースにしていますし、『たたりちゃん』のように仕返しして……とはならないかと思いますが。
犬木 リアルを追求している漫画ですが、せめて物語の中だけはスカッとするものがほしいですよねえ。
――主人公に救いがあるのでしょうか?
犬木 『サバイバー』のラストは、本当に悩みました。最終的に、救いもあり、読者に対して投げかける要素もあり……という感じで描きましたが、できていましたか?
担当編集 はい! 最終巻の配信日は3月15日です。
――心待ちにしています!
(有山千春)