子育て中に生じる“焦り”の正体とは? 古泉智浩&しまおまほが語る「親」という存在

 里子を6歳未満で自分の籍に入れ、法的に実子と同じ扱いとする、特別養子縁組をした漫画家の古泉智浩さん。前編では、同じく子育て中のエッセイスト、しまおまほさんと、実子と里子や養子の育て方の違いについて思うことを語ってもらいました。後編ではさらに、育児に関する社会問題も含め、お互いの育児エピソードに踏み込んでいきます。

(前編はこちら)

■所構わず子連れで行くのは気が引ける

――お2人は、お子さんを今年から保育園に入れたんですよね。それによって、生活はどう変わりましたか?

古泉智浩(以下、古泉)・しまおまほ(以下、しまお) めっちゃ楽になりました!

――先日、熊本の市議会議員が預け先に困って議場に乳児を連れてきたことが、賛否両論を呼びました。保育園の時間外など、どうしても預け先が見つからないときもありますよね。

しまお そのニュース、あまり見ていないのですが、私自身はできる限り仕事場に子連れでは行きません。仕事柄、寛容な現場もあるのですが、決して子どもが好きな人ばかりではないでしょうし。とりあえず「可愛い」って言わないといけないような雰囲気にするのも、心苦しいと思ってしまっていて。息子が保育園に入る前は、家族や親しい友人に面倒を見てもらったり、託児所を利用したりしていました。

古泉 僕は、子どもを連れてきている人がいたら、うれしくて抱っこしちゃいますけどね(笑)。でも、そういう人ばかりではないですよね。

しまお 時と場合によりますね。勝手知ったる現場だったら、連れていくこともあるかな。でも、子どもって、基本的におとなしくはしていないので……。

――託児所は、「今日どうしても預け先がないから預けよう」と、いきなり行っていいのではなく、事前の登録が必要なんですよね?

しまお そうなんです。私がたまに利用しているところは、1階が託児所で2階がシェアオフィスになっていて、保育園入園前は助かりました。とてもきれいな場所で、来ているママたちもオシャレ。そんな中、テキトーな格好で机で昼寝したり、お菓子を食べながら原稿を書いている私は、完全に浮いていましたね(笑)。

古泉 アハハ! 利用料金はどれくらいなの?

しまお 保育園よりは高いですね。

古泉 でも、どこにも預け先がないときは助かるよね。

――ほかに、利用してよかった育児支援施設はありますか?

古泉 僕が住んでいる地域の役場の隣にある施設は、遊び道具があったり、「みんなで歌を歌いましょう」という時間があったりして、よかったです。預けるというより、保護者も一緒なのですが、保育園以外の時間で、家にずっといるのに飽きたときに利用していました。

しまお 私は演劇を鑑賞した際、劇場についている託児施設を使ったことがあります。

古泉 それは無料なの?

しまお 2,500円くらいかかりました。演劇のチケットにプラス2,500円と考えると結構な出費ですが、一緒に劇場まで行けるのはよかったです。利用者はずいぶん少なかったですけど。調べると、チケットサイトが運営している無料の託児サービスもあるようですね。

 行政の施設でいうと、区のベビーマッサージ講習に行ったことがあります。しかし実際は、講習は15分だけで、残りの1時間半は「みんなでおしゃべりをしましょう」という感じでした。住んでいる地域ごとに席が決められていて、「あそこのスーパーいいよね」といった、共通の話題を出しやすくされていました。孤立する母親をつくらないよう手厚く取り組んでいるんだな、と思いました。私は途中から参加したので、すでにできあがっている20代のママたちの輪に入れず焦りました(笑)。

古泉 うちも役所から保健師さんが来ましたよ。でも、当時は里親初心者だったから、虐待をしていないか監視されているのかなと疑心暗鬼になってた(笑)。

しまお でも、みんなスタートは一緒ですからね。私も子育て素人だったし、オムツ替えを練習しても、実践すると全然違ったりする。

古泉 女性は10カ月かけてお母さんになるけど、僕ら夫婦は(「里子を預かってくれませんか?」と連絡があってから)1週間で親にならなければなりませんでした。

しまお う〜ん、でも全然自覚はありませんでした。ただおなかが膨れていって……という感じで。そして、産んだ直後に「あ、これからずっと一緒なんだ、終わりがないんだ」と思ったら、ちょっと怖くなりました。産むのがゴールかと思っていたら、違った。

古泉 重荷みたいに感じたんですか?

しまお 重いと思いました(笑)。生まれたからには、死ぬってことじゃないですか。その重みが怖いというか……。友達の中には、「生まれた子どもの顔を見たら『大好き! 可愛い!』って幸せオーラしか出ないよ」と言っている人もいましたが、私は全然。「ゲッ、ヤバイ!」って思いました(笑)。

古泉 真面目なのかな。

しまお 真面目なのかもしれない。育児についてはサボったりもできるけど、責任をサボることはできない、と思ってしまって。

――入れる保育園を探す「保活」に取り組んでいる方も多いですが、お2人は、保活には苦労されなかったんですか?

古泉 僕が住んでいる地域は待機児童1人なので、特には。

しまお 周りではいましたね。私、病院も、産む1カ月くらい前になったら適当に探せばいいかと思っていたのですが、着床した段階で、大きい病院に連絡して予約する人もいるらしいです。妊娠してあまり間もない時期なのに、「産む病院をまだ決めてない」って言ったら「ヤバイよ」と言われてしまって……。

古泉 もし、決めてなかったら、怪しげな病院に回されるんですかね?

しまお どうなんでしょう。36歳で一応、高齢出産だったから、何かあったときのためにとりあえず大きい病院を選んだのですが、いま考えたら、近所の病院でよかったんじゃないかなと思います。

――都会では、ベビーカーを電車に乗せると、白い目で見られることもあります。どうすれば、もっと子育てしやすい社会になると思いますか?

しまお 東京のラッシュは本当にひどいですよね。私はほとんどベビーカーを使わなかったです。ずっと抱っこしていました。

古泉 うちの子も、ベビーカーに乗せると「降りるー! 抱っこしろー!」って言って全然おとなしく乗ってくれないので、ほとんど使い物にならなかったです。

しまお うちもベビーカーは1歳過ぎてから買ったんです。でも、エスカレーターに乗れないので、いちいちエレベーターを探すのが面倒に感じ、結局抱っこしていました。車があればベビーカーも楽なのかもしれないけど、ベビーカーがあるほうが、結構手間がかかるような気もします。

 「ベビーカーを買わなきゃいけない」わけじゃないのに、勝手に「買わなきゃ」って思い込んでいました。出産や育児ってなった時、急にレールに乗っているんですよね。病院を選ぶ、妊娠線予防のクリームを買う、ベビーカーを選ぶ、電動自転車を買う……みたいなラインに。

――焦ってしまうということですか?

しまお そうですね。情報が過多に入ってくる。でも、そんなの本当は、まったくと言っていいほど必要なかったりする。

古泉 ぼんやりしていると、取り残されてしまう感。

しまお ネットとかで育児グッズの情報を見るより、自分の子どもを見て、自分の子どもに合わせた取捨選択をしないと、逆に窮屈なんじゃないかと思います。ベビーカーや抱っこひもも、焦って買わなくていいんじゃないかな。

古泉 僕は、講師をしている漫画教室のママ友さんに、お古のアイテムをもらいましたよ。

しまお 結構みんなくれますよね。

古泉 チャイルドシートも、中古品を5,000円くらいで買いました。全然お金をかけていません。

しまお 私も服は、ほぼ友達のお古です。周りよりちょっと出産が遅れると、お古をたくさんもらえるんですよね。お古の服だから、全然インスタ映えしない子どもですけど(笑)。

(姫野ケイ)

古泉智浩(こいずみ・ともひろ)
1969年生まれ。ヤングマガジンちばてつや賞大賞受賞。代表作『ジンバルロック』(青林工藝舎)、『ワイルド・ナイツ』(双葉社)のほか、映画化された原作漫画に『青春☆金属バット』(秋田書店)、『ライフ・イズ・デッド』(双葉社)、『死んだ目をした少年』『チェリーボーイズ』(青林工藝舎/2018年2月公開予定)がある。DVD『渚のマーメイド』原作・脚本担当。子育てエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』(イースト・プレス)が話題を呼ぶ。Vコミで『漫画 うちの子になりなよ』連載中。
・ブログ:古泉智浩の『オレは童貞じゃねぇ!!』

しまおまほ(しまお・まほ)
1978年10月東京・御茶ノ水生まれ。多摩美術大学芸術学科卒業。97年、『女子高生ゴリコ』(扶桑社)でデビュー。ファッション誌やカルチャー誌に漫画やエッセイを発表。著書に『ガールフレンド』(スペースシャワーネットワーク)、『ぼんやり小町』(ソニー・マガジンズ)、『しまおまほのひとりオリーブ調査隊』(プチグラパブリッシング)、『まほちゃんの家』(WAVE出版)、『漫画真帆ちゃん』(KKベストセラーズ)など。

子育て中に生じる“焦り”の正体とは? 古泉智浩&しまおまほが語る「親」という存在

 里子を6歳未満で自分の籍に入れ、法的に実子と同じ扱いとする、特別養子縁組をした漫画家の古泉智浩さん。前編では、同じく子育て中のエッセイスト、しまおまほさんと、実子と里子や養子の育て方の違いについて思うことを語ってもらいました。後編ではさらに、育児に関する社会問題も含め、お互いの育児エピソードに踏み込んでいきます。

(前編はこちら)

■所構わず子連れで行くのは気が引ける

――お2人は、お子さんを今年から保育園に入れたんですよね。それによって、生活はどう変わりましたか?

古泉智浩(以下、古泉)・しまおまほ(以下、しまお) めっちゃ楽になりました!

――先日、熊本の市議会議員が預け先に困って議場に乳児を連れてきたことが、賛否両論を呼びました。保育園の時間外など、どうしても預け先が見つからないときもありますよね。

しまお そのニュース、あまり見ていないのですが、私自身はできる限り仕事場に子連れでは行きません。仕事柄、寛容な現場もあるのですが、決して子どもが好きな人ばかりではないでしょうし。とりあえず「可愛い」って言わないといけないような雰囲気にするのも、心苦しいと思ってしまっていて。息子が保育園に入る前は、家族や親しい友人に面倒を見てもらったり、託児所を利用したりしていました。

古泉 僕は、子どもを連れてきている人がいたら、うれしくて抱っこしちゃいますけどね(笑)。でも、そういう人ばかりではないですよね。

しまお 時と場合によりますね。勝手知ったる現場だったら、連れていくこともあるかな。でも、子どもって、基本的におとなしくはしていないので……。

――託児所は、「今日どうしても預け先がないから預けよう」と、いきなり行っていいのではなく、事前の登録が必要なんですよね?

しまお そうなんです。私がたまに利用しているところは、1階が託児所で2階がシェアオフィスになっていて、保育園入園前は助かりました。とてもきれいな場所で、来ているママたちもオシャレ。そんな中、テキトーな格好で机で昼寝したり、お菓子を食べながら原稿を書いている私は、完全に浮いていましたね(笑)。

古泉 アハハ! 利用料金はどれくらいなの?

しまお 保育園よりは高いですね。

古泉 でも、どこにも預け先がないときは助かるよね。

――ほかに、利用してよかった育児支援施設はありますか?

古泉 僕が住んでいる地域の役場の隣にある施設は、遊び道具があったり、「みんなで歌を歌いましょう」という時間があったりして、よかったです。預けるというより、保護者も一緒なのですが、保育園以外の時間で、家にずっといるのに飽きたときに利用していました。

しまお 私は演劇を鑑賞した際、劇場についている託児施設を使ったことがあります。

古泉 それは無料なの?

しまお 2,500円くらいかかりました。演劇のチケットにプラス2,500円と考えると結構な出費ですが、一緒に劇場まで行けるのはよかったです。利用者はずいぶん少なかったですけど。調べると、チケットサイトが運営している無料の託児サービスもあるようですね。

 行政の施設でいうと、区のベビーマッサージ講習に行ったことがあります。しかし実際は、講習は15分だけで、残りの1時間半は「みんなでおしゃべりをしましょう」という感じでした。住んでいる地域ごとに席が決められていて、「あそこのスーパーいいよね」といった、共通の話題を出しやすくされていました。孤立する母親をつくらないよう手厚く取り組んでいるんだな、と思いました。私は途中から参加したので、すでにできあがっている20代のママたちの輪に入れず焦りました(笑)。

古泉 うちも役所から保健師さんが来ましたよ。でも、当時は里親初心者だったから、虐待をしていないか監視されているのかなと疑心暗鬼になってた(笑)。

しまお でも、みんなスタートは一緒ですからね。私も子育て素人だったし、オムツ替えを練習しても、実践すると全然違ったりする。

古泉 女性は10カ月かけてお母さんになるけど、僕ら夫婦は(「里子を預かってくれませんか?」と連絡があってから)1週間で親にならなければなりませんでした。

しまお う〜ん、でも全然自覚はありませんでした。ただおなかが膨れていって……という感じで。そして、産んだ直後に「あ、これからずっと一緒なんだ、終わりがないんだ」と思ったら、ちょっと怖くなりました。産むのがゴールかと思っていたら、違った。

古泉 重荷みたいに感じたんですか?

しまお 重いと思いました(笑)。生まれたからには、死ぬってことじゃないですか。その重みが怖いというか……。友達の中には、「生まれた子どもの顔を見たら『大好き! 可愛い!』って幸せオーラしか出ないよ」と言っている人もいましたが、私は全然。「ゲッ、ヤバイ!」って思いました(笑)。

古泉 真面目なのかな。

しまお 真面目なのかもしれない。育児についてはサボったりもできるけど、責任をサボることはできない、と思ってしまって。

――入れる保育園を探す「保活」に取り組んでいる方も多いですが、お2人は、保活には苦労されなかったんですか?

古泉 僕が住んでいる地域は待機児童1人なので、特には。

しまお 周りではいましたね。私、病院も、産む1カ月くらい前になったら適当に探せばいいかと思っていたのですが、着床した段階で、大きい病院に連絡して予約する人もいるらしいです。妊娠してあまり間もない時期なのに、「産む病院をまだ決めてない」って言ったら「ヤバイよ」と言われてしまって……。

古泉 もし、決めてなかったら、怪しげな病院に回されるんですかね?

しまお どうなんでしょう。36歳で一応、高齢出産だったから、何かあったときのためにとりあえず大きい病院を選んだのですが、いま考えたら、近所の病院でよかったんじゃないかなと思います。

――都会では、ベビーカーを電車に乗せると、白い目で見られることもあります。どうすれば、もっと子育てしやすい社会になると思いますか?

しまお 東京のラッシュは本当にひどいですよね。私はほとんどベビーカーを使わなかったです。ずっと抱っこしていました。

古泉 うちの子も、ベビーカーに乗せると「降りるー! 抱っこしろー!」って言って全然おとなしく乗ってくれないので、ほとんど使い物にならなかったです。

しまお うちもベビーカーは1歳過ぎてから買ったんです。でも、エスカレーターに乗れないので、いちいちエレベーターを探すのが面倒に感じ、結局抱っこしていました。車があればベビーカーも楽なのかもしれないけど、ベビーカーがあるほうが、結構手間がかかるような気もします。

 「ベビーカーを買わなきゃいけない」わけじゃないのに、勝手に「買わなきゃ」って思い込んでいました。出産や育児ってなった時、急にレールに乗っているんですよね。病院を選ぶ、妊娠線予防のクリームを買う、ベビーカーを選ぶ、電動自転車を買う……みたいなラインに。

――焦ってしまうということですか?

しまお そうですね。情報が過多に入ってくる。でも、そんなの本当は、まったくと言っていいほど必要なかったりする。

古泉 ぼんやりしていると、取り残されてしまう感。

しまお ネットとかで育児グッズの情報を見るより、自分の子どもを見て、自分の子どもに合わせた取捨選択をしないと、逆に窮屈なんじゃないかと思います。ベビーカーや抱っこひもも、焦って買わなくていいんじゃないかな。

古泉 僕は、講師をしている漫画教室のママ友さんに、お古のアイテムをもらいましたよ。

しまお 結構みんなくれますよね。

古泉 チャイルドシートも、中古品を5,000円くらいで買いました。全然お金をかけていません。

しまお 私も服は、ほぼ友達のお古です。周りよりちょっと出産が遅れると、お古をたくさんもらえるんですよね。お古の服だから、全然インスタ映えしない子どもですけど(笑)。

(姫野ケイ)

古泉智浩(こいずみ・ともひろ)
1969年生まれ。ヤングマガジンちばてつや賞大賞受賞。代表作『ジンバルロック』(青林工藝舎)、『ワイルド・ナイツ』(双葉社)のほか、映画化された原作漫画に『青春☆金属バット』(秋田書店)、『ライフ・イズ・デッド』(双葉社)、『死んだ目をした少年』『チェリーボーイズ』(青林工藝舎/2018年2月公開予定)がある。DVD『渚のマーメイド』原作・脚本担当。子育てエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門』(イースト・プレス)が話題を呼ぶ。Vコミで『漫画 うちの子になりなよ』連載中。
・ブログ:古泉智浩の『オレは童貞じゃねぇ!!』

しまおまほ(しまお・まほ)
1978年10月東京・御茶ノ水生まれ。多摩美術大学芸術学科卒業。97年、『女子高生ゴリコ』(扶桑社)でデビュー。ファッション誌やカルチャー誌に漫画やエッセイを発表。著書に『ガールフレンド』(スペースシャワーネットワーク)、『ぼんやり小町』(ソニー・マガジンズ)、『しまおまほのひとりオリーブ調査隊』(プチグラパブリッシング)、『まほちゃんの家』(WAVE出版)、『漫画真帆ちゃん』(KKベストセラーズ)など。

「最後の不妊治療が失敗してよかった」漫画家・古泉智浩が語る、養子を育てる親のホンネ

 血縁関係のない子を6歳未満で自分の籍に入れ、法的に実子と同じ扱いとする「特別養子縁組」。不妊治療を続けたものの、失敗を重ねた末に治療をやめた漫画家の古泉智浩さんは、里子の男児「うーちゃん」に特別養子縁組の手続きを行った模様を自身のコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』(イースト・プレス)に綴っています。今回は、古泉さんと交友があり、現在2歳である実子の男児を育児中のエッセイスト・しまおまほさんとの対談を企画。里子と実子では育て方が違うのか、不妊治療への考え、里子や養子縁組の制度について、お互いの子育てをもとに語ってもらいました。

■最初は里子に抵抗があったが、子どもがいないことに耐えられなくなった

――今まで身近に、里子を育てた方はいましたか?

古泉智浩さん(以下、古泉) 僕は、『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』にも登場しているAさん。15年くらい前からの付き合いです。5歳の時にAさんが引き取ったので、お子さんは今年成人しました。

しまおまほさん(以下、しまお) 私の周りには里子を受け入れたり養子縁組をした人はいませんが、親戚や友達で不妊治療をしていた人はいます。それで、授かった人も授からなかった人もいます。

――古泉さんは、血のつながっていない子どもを育てることに、抵抗はありませんでしたか?

古泉 最初は抵抗があったのですが、なかなか子どもができないのに耐えられなくなってしまって……。

しまお 古泉さん、ずっと、いろんな人に「(奥さんの代わりに)産んでくれ」っておっしゃってましたもんね。そう言われて産む人はいないと思うけど(笑)。

古泉 そう、「(子どもを)産んでくれるなら誰でもいい!」って。でも、そんなことを言って妻を悲しませてしまったので、今はそれをとても反省しています……。

――古泉さんもしまおさんも、お子さんはやんちゃな時期ですよね。

古泉 そうですね。言うことを聞かないときは、「おばけが来るよ」とか「カミナリ様が、おへそを取りに来るよ」と言ったりします。特に、カミナリ様が来ると言うと、何があってもおへそから手を離さない(笑)。うーちゃんは怖がりなので。

しまお えーっ、素直ですね。うちの子は最初から見抜いててダメです。お化けとか通じないんですよね。現実主義なのかな? でも、なかなか寝てくれない夜、外からトランクをガラガラ引く音がしたとき、「あれは言うことを聞かない子をトランクに詰めて連れて行っている音だよ」と言ったら、すごく怖がってました。でも、そう言った私自身も怖くなってしまいました(笑)。

古泉 僕もそれ、パトカーバージョンで使います。「食べ物を粗末にするような悪い子は、おまわりさんがパトカーで連れて行くよ」って。しまおさんは、お子さんが悪いことしたとき、叱ります?

しまお 叱るけど、無視もします。泣いても無視。

古泉 えっ、無視!? かわいそうじゃないですかー! 僕は絶対無理。

しまお だって、こちらの反応をうかがいながら泣いたりするんだもん。

古泉 あー、あるある。

しまお 泣いたら優しくしてくれると期待しているから、そうなったらシカトを決め込むしかないですよ。

古泉 いや〜、僕なら、いくらでも抱っこしてあげますよ。

しまお クセになると、抱っこはこっちの体が持たなくなっちゃう。

古泉 僕の妻も、ぎっくり腰になっていましたね。

しまお 私も、はりに通ってますよ。

――実子と里子で、育て方の違いはあると思いますか?

古泉 僕は元婚約者との間に実子がいるのですが、育てたことはないのでわからないです。

しまお 私も、わからないです。

古泉 ただ、しまおさんが泣かせっぱなしにできるのは実子だからじゃないかなと、聞いていて思いました。やっぱり、僕は血縁関係がないから、もし関係が壊れたら、修復できなくなってしまうのではないかというおびえがあるんですよね。養子縁組をしたので、籍は入れていますけど。

しまお そうなのかな。私は自分に子どもができてみて、実子とそうでない子どもの区別ってなんだろうと考えるようになりました。

 今まで、子どもが嫌いでもなかったけど、すごく好きというわけでもなかったんです。「子どもはいたらいいな」くらいに思っていた感じで、みんなが「子ども可愛い〜」って言っているのもわからなかった。だけど、自分の子どもができたら、こういう行動はうちの子と同じだな〜と思えることが増えて、実子も他人の子も関係なく、本当に子どもっていとおしいものなんだな、と思えたんです。だから、逆に今のほうが血のつながりに固執していないかも。ただ、それはあくまで私の意見ですね。

 子どもに対して遠慮がなくなったので、保育園でほかの子の鼻水を拭いたり、乱暴をしている子がいたら普通に怒って、「出すぎたことをしたかな」と反省することもあります。古泉さんは実子でないことについて、普段から考えたりしますか?

古泉 いつも全然考えていないです。今年、最後に一度だけ不妊治療をしてみたのですが、失敗したのでもうやめようと決めました。635万円も使ってしまったので、これ以上はもったいないと。でも、今にして思うと、失敗してよかったなと思っています。もし、実子で弟か妹がいたら、うーちゃんが大人になったとき、自分だけ仲間外れというのはかわいそうだなと思ったんです。だから、次も里子か養子がいいなと思っています。

――里子や養子縁組の制度があることについては、どう思いますか?

古泉 僕はこの制度がなかったら、今もずっと暗い気持ちのままで発狂していたかもしれない(笑)。当初は民間の養子縁組業者にお世話になろうと思っていたのですが、年齢制限が46歳だったり、申し込むには行政の里親登録をしなければいけなかったりと、いろいろな条件がありました。それで、最初から行政の方にお願いすることにしました。

 行政の児童相談所って“お役所仕事”だろうと思っていたので、そんなに期待せずに登録だけして、民間の養子縁組委託業者に申し込もうと思っていたのですが、里親としての研修を受けた直後に「里子を預かってくれませんか?」と連絡が来たので、ものすごくびっくりしました。

しまお 古泉さんの漫画に登場する行政の方はみんな優しくて、親身になってくれていますね。

古泉 すごく親身に熱心に接してくれて、頼りになります。想像していたようなお役所仕事ではなくて、申し訳ない気持ちになりました(笑)。
(姫野ケイ)

(後編へつづく)

「最後の不妊治療が失敗してよかった」漫画家・古泉智浩が語る、養子を育てる親のホンネ

 血縁関係のない子を6歳未満で自分の籍に入れ、法的に実子と同じ扱いとする「特別養子縁組」。不妊治療を続けたものの、失敗を重ねた末に治療をやめた漫画家の古泉智浩さんは、里子の男児「うーちゃん」に特別養子縁組の手続きを行った模様を自身のコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』(イースト・プレス)に綴っています。今回は、古泉さんと交友があり、現在2歳である実子の男児を育児中のエッセイスト・しまおまほさんとの対談を企画。里子と実子では育て方が違うのか、不妊治療への考え、里子や養子縁組の制度について、お互いの子育てをもとに語ってもらいました。

■最初は里子に抵抗があったが、子どもがいないことに耐えられなくなった

――今まで身近に、里子を育てた方はいましたか?

古泉智浩さん(以下、古泉) 僕は、『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』にも登場しているAさん。15年くらい前からの付き合いです。5歳の時にAさんが引き取ったので、お子さんは今年成人しました。

しまおまほさん(以下、しまお) 私の周りには里子を受け入れたり養子縁組をした人はいませんが、親戚や友達で不妊治療をしていた人はいます。それで、授かった人も授からなかった人もいます。

――古泉さんは、血のつながっていない子どもを育てることに、抵抗はありませんでしたか?

古泉 最初は抵抗があったのですが、なかなか子どもができないのに耐えられなくなってしまって……。

しまお 古泉さん、ずっと、いろんな人に「(奥さんの代わりに)産んでくれ」っておっしゃってましたもんね。そう言われて産む人はいないと思うけど(笑)。

古泉 そう、「(子どもを)産んでくれるなら誰でもいい!」って。でも、そんなことを言って妻を悲しませてしまったので、今はそれをとても反省しています……。

――古泉さんもしまおさんも、お子さんはやんちゃな時期ですよね。

古泉 そうですね。言うことを聞かないときは、「おばけが来るよ」とか「カミナリ様が、おへそを取りに来るよ」と言ったりします。特に、カミナリ様が来ると言うと、何があってもおへそから手を離さない(笑)。うーちゃんは怖がりなので。

しまお えーっ、素直ですね。うちの子は最初から見抜いててダメです。お化けとか通じないんですよね。現実主義なのかな? でも、なかなか寝てくれない夜、外からトランクをガラガラ引く音がしたとき、「あれは言うことを聞かない子をトランクに詰めて連れて行っている音だよ」と言ったら、すごく怖がってました。でも、そう言った私自身も怖くなってしまいました(笑)。

古泉 僕もそれ、パトカーバージョンで使います。「食べ物を粗末にするような悪い子は、おまわりさんがパトカーで連れて行くよ」って。しまおさんは、お子さんが悪いことしたとき、叱ります?

しまお 叱るけど、無視もします。泣いても無視。

古泉 えっ、無視!? かわいそうじゃないですかー! 僕は絶対無理。

しまお だって、こちらの反応をうかがいながら泣いたりするんだもん。

古泉 あー、あるある。

しまお 泣いたら優しくしてくれると期待しているから、そうなったらシカトを決め込むしかないですよ。

古泉 いや〜、僕なら、いくらでも抱っこしてあげますよ。

しまお クセになると、抱っこはこっちの体が持たなくなっちゃう。

古泉 僕の妻も、ぎっくり腰になっていましたね。

しまお 私も、はりに通ってますよ。

――実子と里子で、育て方の違いはあると思いますか?

古泉 僕は元婚約者との間に実子がいるのですが、育てたことはないのでわからないです。

しまお 私も、わからないです。

古泉 ただ、しまおさんが泣かせっぱなしにできるのは実子だからじゃないかなと、聞いていて思いました。やっぱり、僕は血縁関係がないから、もし関係が壊れたら、修復できなくなってしまうのではないかというおびえがあるんですよね。養子縁組をしたので、籍は入れていますけど。

しまお そうなのかな。私は自分に子どもができてみて、実子とそうでない子どもの区別ってなんだろうと考えるようになりました。

 今まで、子どもが嫌いでもなかったけど、すごく好きというわけでもなかったんです。「子どもはいたらいいな」くらいに思っていた感じで、みんなが「子ども可愛い〜」って言っているのもわからなかった。だけど、自分の子どもができたら、こういう行動はうちの子と同じだな〜と思えることが増えて、実子も他人の子も関係なく、本当に子どもっていとおしいものなんだな、と思えたんです。だから、逆に今のほうが血のつながりに固執していないかも。ただ、それはあくまで私の意見ですね。

 子どもに対して遠慮がなくなったので、保育園でほかの子の鼻水を拭いたり、乱暴をしている子がいたら普通に怒って、「出すぎたことをしたかな」と反省することもあります。古泉さんは実子でないことについて、普段から考えたりしますか?

古泉 いつも全然考えていないです。今年、最後に一度だけ不妊治療をしてみたのですが、失敗したのでもうやめようと決めました。635万円も使ってしまったので、これ以上はもったいないと。でも、今にして思うと、失敗してよかったなと思っています。もし、実子で弟か妹がいたら、うーちゃんが大人になったとき、自分だけ仲間外れというのはかわいそうだなと思ったんです。だから、次も里子か養子がいいなと思っています。

――里子や養子縁組の制度があることについては、どう思いますか?

古泉 僕はこの制度がなかったら、今もずっと暗い気持ちのままで発狂していたかもしれない(笑)。当初は民間の養子縁組業者にお世話になろうと思っていたのですが、年齢制限が46歳だったり、申し込むには行政の里親登録をしなければいけなかったりと、いろいろな条件がありました。それで、最初から行政の方にお願いすることにしました。

 行政の児童相談所って“お役所仕事”だろうと思っていたので、そんなに期待せずに登録だけして、民間の養子縁組委託業者に申し込もうと思っていたのですが、里親としての研修を受けた直後に「里子を預かってくれませんか?」と連絡が来たので、ものすごくびっくりしました。

しまお 古泉さんの漫画に登場する行政の方はみんな優しくて、親身になってくれていますね。

古泉 すごく親身に熱心に接してくれて、頼りになります。想像していたようなお役所仕事ではなくて、申し訳ない気持ちになりました(笑)。
(姫野ケイ)

(後編へつづく)

「特別養子縁組」が日本で広がらない理由 支援団体代表が語る、アメリカとの子育て意識の違い

<p> 1988年に施行された「特別養子縁組」制度。生みの親との戸籍上の関係が消滅し、親族ではない夫婦の子どもとして縁組みができるという制度だ。日本では6歳未満の子どもを対象に、25歳以上の夫婦が共同で養育するという原則のもと、全国で年間300件から500件ほどの縁組が成立している。</p>