サンドウィッチマンのほとばしる愛! W杯開幕前に見ておきたい、初心者向けコンテンツ

 日本開催のラグビーW杯開幕日(9月20日)まであと4カ月。盛り上がり始めたような、まだまだのような微妙な空気感がある。

 まあ、これまでのサッカーやオリンピックよろしく、“始まれば結局盛り上がる”国民性こそ、我らがニッポン。その意味で心配する必要はないのかもしれないが、もう少し事前情報やラグビーの知識を蓄えておきたいなと思っても“ちょうどいい情報”に出逢えない、という人は多いのではないだろうか。

 専門誌やスポーツ誌のインタビュー記事はちょっと難しいし、NHKとともに中継を牽引する日本テレビはというと、さまざまなバラエティでラグビー日本代表の面々を起用はするものの、ラガーマンは何トンの乗り物までスクラムで押せるのか? といった「いや、知りたいのはそういうことじゃないです」という場合が多い。

……と愚痴をこぼしても仕方がないので、本稿では「今からでも追いかけられるラグビービギナー向けコンテンツ」をいくつか紹介したい。

TBSラジオ『サンドウィッチマンのWe Love Rugby』

 高校ラグビー部出身の“ラグビー大好き芸人”サンドウィッチマンの2人がラグビー話で盛り上がる『サンドウィッチマンのWe Love Rugby』。もともとは『たまむすび』木曜日の5分コーナーとして始まった企画がパワーアップして帯番組に成長。現在は火~金、17時50分から毎日10分間、さまざまなゲストを招いてラグビートークに花を咲かせている。

 毎週、楽しみなのがゲストの人選だ。五郎丸歩といった元日本代表が来たかと思えば、先週は同じ“ラグビー大好き芸人”スリムクラブを招いてのにぎやかトーク。そして今週は、W杯の試合会場のひとつ、釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムの建設に尽力した元ラガーマンが登場……と、実に硬軟織り交ぜた構成が魅力的なのだ。

 いま最も売れている芸人ともいえるサンドウィッチマンからほとばしるラグビー愛を堪能するだけでも、贅沢な10分間といえる。

NHK サンデースポーツ2020『メイっぱいラグビー』

 NHKの副島萌生(そえじま・めい)キャスターを前面に押し出し、4月末から始まった新企画が「メイっぱいラグビー」。毎回、ラグビーのポジションひとつに焦点を当て、日本代表選手(もしくは元代表)にインタビュー。それぞれの役割の違い、特性、魅力を紹介していく。

 秀逸なのが、ポジションごとの特性を動物にたとえて紹介している点だ。初回の「プロップ」であれば、スクラムを組む上でチームの土台になる、として“象”。19日放送の「スクラムハーム」であれば、小柄な選手が華麗な身のこなしでパスをさばくから“猿”といった具合だ。

 よく聞くラグビーへの不満に「ルールが難しい」「ポジションごとの役割がわからない」といったものがあるが、これを解消できる企画といえる。

 ちなみに、プロップ紹介の回では元日本代表プロップで、11・15年のW杯に出場した畠山健介が登場。スクラムの極意として「プロップの選手は押すんじゃなくて耐えている」と解説してくれて、へぇ、とうなった次第。前述した日本テレビのスクラム企画で「乗り物を押す」としていたように、スクラムといえば押す描写ばかり。だが、実際には押す役割の選手がいて耐える役割の選手もいる、と知ることができるだけで、今後のスクラムの見方が変わるというもの。

 こういう、「そうだったのか!」を知りたいわけです。

 毎週火曜から土曜まで、web上で更新される日刊スポーツの連載コラムが「ラグビーW杯がやってくる」。代表の最新情報からラグビー界の多様な取り組み、裏方の悲哀、道具のうんちくまで、幅広い視点で“ラグビー界の今”を取り上げてくれる。

 たとえば今月なら、「なぜ、日本テレビが低視聴率でもラグビー中継にこだわるのか」という中継秘話を3回にわたって掲載。さながら、『プロジェクトX』や『プロフェッショナル 仕事の流儀』のようで非常に読み応えがあった。

 また、コラムではないが、20日掲載分では「畠山健介、ラグビー人気復活へ3要素の重要性訴える」と題して、前日に都内で行われたラグビーW杯機運の醸成を図るイベントの様子をレポート。またまた畠山が登場し、「日本ラグビーが強くなって、これでラグビー界が『変わる』と思ったけど…。代表が勝つ=競技普及や文化定着でないことを学んだ」と、前回W杯の熱が一過性のブームに終わってしまったことの課題を述べている点がとても興味深い。畠山さん、いい仕事してます。

J SPORTS『新古今HAKA集』

 最後にひとつ変わり種を。W杯が実際に始まったなら、試合内容や選手以外で話題になりそうなことがある。キックオフ前に行われる伝統儀式「ハカ」だ。

 チームを鼓舞しつつ、相手を威嚇するハカ・ダンスの圧倒的なパワーは、ラグビーがまったくわからなくても見る人を魅了するはず。全チームがこの「ハカ・ダンス」を踊るわけではないが、時には「ハカ・バトル」として大盛り上がりを見せることもある。

 そんな「ハカ」の魅力を紹介してくれるのが、J SPORTS『新古今HAKA集』。2017年の放送以来、不定期で再放送を繰り返していた人気企画が、気がつけばYouTubeでもアップされていた。10分弱のコンパクトサイズなので、ちょっと元気を出したいときにもオススメしたい。

(文=オグマナオト)

時代をまたいで傍若無人! プチブレーク中の長嶋一茂がスポーツ界の”新ご意見番”に?

 この1年ほど芸能ニュースで取り上げられることの多い、長嶋一茂のプチブレーク。「2018年の出演本数は、帯番組がないのに250本超え」「元プロ野球選手とは知らない世代からも人気」「“2世コンビ”石原良純との番組が絶好調」……と話題には事欠かない。

 平成から令和にかけてのテレビ界隈でも、“歯に衣着せぬ一茂発言”は絶好調だった。その中での収穫は、彼の“本拠地”はやっぱりスポーツなんだな、と再認識できたこと。一茂目線の政治経済トークもお坊ちゃんあるあるも面白いのは間違いないが、深みが一段違うのだ。

 28日放送の関西テレビ『マルコポロリ!』では、1994年5月18日の広島戦で巨人・槙原寛己投手が達成した“平成唯一の完全試合”について衝撃告白。「実は自分の送球ミスで広島側にセーフとなるプレーがあった。アウトに見せた(一塁手)落合(博満)さんがすごい」と、平成スポーツの金字塔に今さらながらのオチをつけていた。

 また、30日夜のテレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー夜の特大版 今夜決定!平成ニッポンのヒーロー総選挙』では、平成初期のサッカーブームに関して、「野球選手としては、サッカーの台頭は本当に恐ろしかった」「ドーハの悲劇、本当に『負けろ負けろ』とずっと思っていた。あれで勝ってもらっちゃ、野球の人気が負けちゃう」と、当時の心境を吐露していた。

 特に後者の「ドーハで負けろと思っていた」発言は、昔からの一茂ウォッチャーからしてみても、なかなか味わい深いもの。というのも、「世間とはズレても本人の中ではブレない男」が売りの長嶋一茂であるにもかかわらず、サッカーに関してのスタンスだけは、ここ数年でブレがあったからだ。

 そもそも論でいえば、「ドーハで負けろと思っていた」発言は、別に今回初めて明かした話ではなく、昔からずっと言ってきたこと。昭和気質を残す野球人・一茂としては、サッカーは敵対スポーツという立ち位置だったわけだ。それは平成後期になっても変わらず、2011年のなでしこブームの際にも、朝の情報番組『モーニングバード』(テレビ朝日系 ※現『モーニングショー』の前身番組)で司会の羽鳥アナからサッカーの話題を振られても、「もうその話はいいじゃないですか」と語ろうとすらしなかった。

 それが3年後の14年、何かのニュースで羽鳥アナからサッカーを振られた際、「サッカーですか? 大好きです!」と何食わぬ顔で回答。朝食で飲んでいた牛乳を吹きそうになるくらい驚いたことをよく覚えている。この頃から、すでに一部で「朝ワイドの一茂コメントは面白い」と話題になっていただけに、「さしもの一茂でも、人気者になると過去の問題発言もオブラートに包むんだな」と思ったものだった。

 でも、一茂はやっぱり一茂だったと再認識させてくれた平成最後の日。ここ最近の“プチブレーク”によって磨かれたトークスキルによるものなのか、しっかり勉強を重ねたのか、サッカーについての知識も備えつつ、「野球人・一茂」から見てどんな位置付けだったのか、という、以前のただ嫌っていた視点からもう一段深いトークになっていた。いずれにせよ、自分の過去の発言に縛られることなく、そのとき思った「正しいこと」「面白いと思うこと」に正直なだけなのだ。そこにこそ、長嶋一茂の魅力があるのだと思う。

 そんな「変化する一茂」を見せつつも、この日は、元日本代表・武田修宏の過去の栄光に関して、「あのたけちんが? それはちゃんと調べ直してよ。今、見る影もないよ(笑)」と発言して笑いを誘う傍若無人ぶりも健在。松岡修造に対して、「修造、お前がさっき言ったのってなんだっけ? わかんないよ」と先輩風を吹かせるなど、スポーツ界の新ご意見番たる風格を感じさせる一幕も。最近はバラエティか情報番組ばかりの出演だが、今の長嶋一茂にこそスポーツ番組を任せてみたい、と妄想してしまう。

 中でも期待したいのは、空手のスポークスマンとしての働きだ。今年1月に放送されたTBS系『新春!炎の体育会TV』では、昨年11月に52歳にして極真空手の公式大会「全関東空手道選手権大会」に挑戦し、「50歳以上+80キロ以上の部」で優勝を果たした様子が描かれていた。

 空手といえば、来年に迫った東京オリンピックの新種目(編註:「寸止め」ルールを採用)。ただ、日本にはメダル候補がいるにもかかわらず、今ひとつ話題になりにくい競技でもある。そんな空手の魅力について、20年以上の競技経験者である長嶋一茂ならどう表現してくれるのか? まだまだテレビでは空手について語る場面が少ないだけに、大いに期待したい。

(文=オグマナオト)

「平成スポーツ振り返り企画」アスリートひな壇芸人化に一石を投じた、NHK BSの骨太企画

 平成も、いよいよ大詰め。昨年末から各局・各番組で怒涛のように続く「平成スポーツ振り返り企画」も最終局面を迎えた印象がある。

 20日深夜の『S☆1』(TBS系)では、「野村克也が選ぶ“平成の最強ベストナイン”」を放送。先発投手部門で選ばれたダルビッシュ有が「朝起きて見て本当に涙出ましたよ^^; 野村監督ありがとうございます! 自信にします!」とTwitterで反応し、そこに田中将大が「羨ましい……」と反応するや、今度はダルが「これは人間からの選定やから。神の子は対象外」と、かつて野村監督が発した平成名言「マー君、神の子、不思議な子」を連想させる返信をするなど、その後も仲むつまじいツイートの応酬が続いて野球ファンを楽しませている。

 こういったレギュラー番組におけるミニ企画が盛況な一方で、フジテレビは3月27日に『フジテレビ開局60周年記念企画 コレ知らんかった~! 新発見!村上信五の平成スポーツ命場面SP』を放送。TBSでは4月7日に「平成スポーツ総まとめ4時間半合体SP」と題して、バナナマンMCによる『消えた天才超特大SP』、サンドウィッチマンMCによる『平成あったなぁ大賞』を一挙放送と、スポーツ特番もめじろ押しだった。

 ただ、こうした特番における、アスリート(元選手含む)をひな壇芸人のように並べて展開するスタイルは、何かスポーツの本質からズレているように感じてしまう。そんな中、これぞスポーツの醍醐味! とうならされたのが、NHK BS1で放送が続く『もう一度見たい!平成のスポーツ中継』だ。

 4月14日放送の第1回では「夏のオリンピック」。21日放送の第2回では「冬のオリンピック」と題して、平成スポーツ名場面の数々を当時の中継映像で振り返る、超骨太な企画を展開している。

 タレントは一切起用せず、中継映像以外で登場するのは司会役のスポーツアナとレジェンドアスリートだけ。このスポーツアナのキャスティングが絶妙なのだ。平成16(2004)年アテネ五輪の体操男子団体の中継を取り上げた「夏のオリンピック」では、「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ」という、平成で最も有名な実況中継を生み出した刈屋富士雄アナ(現在は解説委員)を起用。

 続く「冬のオリンピック」回では、平成10(1998)年長野五輪スキージャンプ団体における原田雅彦の大飛行に「立て、立て、立ってくれぇ」と叫んだ工藤三郎アナが司会を務め、ゲストにその原田雅彦本人が登場。「実況で私、『立て、立て、立ってくれぇ』と言いましたけど、合ってました?」「(リレハンメル五輪での失敗ジャンプのエピソードを交えつつ)『因縁の2回目』という言葉を使いました」といった具合に、名場面を生み出したアスリートと実況アナによる、「あの場面、実際どうだった?」という答え合わせが実現。実況アナファン(は少数だろうが)垂涎の瞬間であり、スポーツファンのツボを的確に捉えるやりとりが交わされていた。

 そして、もうひとつうなったのがVTR構成だ。「冬のオリンピック」回では、「長野五輪スキージャンプ団体・日本金メダル」の中継映像を流したあと、「平成18(2006)年トリノ五輪女子フィギュアスケート・荒川静香金メダル」と「平成30(2018)年平昌五輪男子フィギュア・羽生結弦2大会連続金メダル」の中継映像を連続して放送。名場面をノーカットで堪能できるだけでも贅沢な時間なわけだが、ここではこの3つを選んだ意図も深読みしてみたい。

 長野五輪で金メダルを取ったスキー団体。その栄光の陰に隠れるように、同じ長野で味わった苦い経験を糧に、8年後、トリノ五輪で花開き、イナバウアーで一世を風靡した荒川静香。そんな荒川と同じ仙台市のリンクでフィギュアスケートに出会った羽生結弦は、演技後半、あえてイナバウアーを組み込んで快挙を達成した……一見バラバラの3つの大会の点と点が結びつき、スポーツは歴史的背景という縦軸を知ることでより深みが増す、と再認識させてくれる。

 今後、第3回(27日放送)「ラグビーW杯2015 日本×南アフリカ」、第4回(28日放送)「イチロー シーズン最多安打達成試合」、第5回(29日放送)「なでしこジャパンW杯優勝」、第6回(30日)「サッカー男子“ジョホールバルの歓喜”」と、平成最後の日まで豪華ラインナップが続く。

 スポーツファンとしてこれ以上なく贅沢な10連休の幕開けであり、そして、平成の締めくくりを迎えられるのではないだろうか。

(文=オグマナオト)

ナイツ&三四郎の「Jリーグ漫才」に、判定検証……Jリーグの動画コンテンツが攻めてる!?

 スポーツを楽しむ上で、審判の判定についてあれこれと議論することも重要な要素のひとつだ。そんな判定をめぐる問題で非常に考えさせられる記事が先日、「サッカーダイジェストW eb」に掲載された。

『あの番組ができたのはかなり大きい』山形vs.琉球戦で起きたPKジャッジ問題とGKコーチの切なる想い

 記事で考察されているのは、3月24日に行われたJ2リーグ5節・モンテディオ山形対FC琉球でのPKの場面。山形のGKが一度は見事に止めたにもかかわらず「PKやり直し」の判定になったことをめぐって、各プレーヤーやコーチの意見、そしてこの問題のシーンを扱ったJリーグ公式チャンネル「Jリーグジャッジリプレイ」の内容について掘り下げている。

 この記事を読んで、そして言及されている「Jリーグジャッジリプレイ」を見て思ったことは、「こりゃ、確かに判定に問題がある」ということ以上に、「サッカー界の映像施策は本当に素晴らしいな、それにつけても野球界は……」ということだった。

 記憶に新しいセンバツ甲子園での「サイン盗み騒動」しかり。開幕したばかりのプロ野球でも毎日のように繰り返される「リクエスト制度」(判定に異議がある際に、監督が映像による検証を要求できる)しかり。審判の判定・判断をめぐる話題には事欠かない野球界ではあるが、高野連やNPBが映像を使って「どんな意図で、このような判定を下したのか? 判定に整合性はあったのか?」といったことを解説したり、検証したりすることはない。

 一方のサッカー界はといえば、レフェリングに関する疑問やルールをわかりやすく解説し、審判についての理解・関心を深めてもらうことを目的として、オフィシャルで「Jリーグジャッジリプレイ」を制作。しかも、出演するのがJリーグ副理事長である原博実氏。組織トップ2の男が率先して“物議を醸した場面”を選び、「いろいろ議論するきっかけになれば……」と紹介する。昨年は不定期掲載だったが、好評だったためか、今では毎週掲載に切り替わっている。

 この積み重ねがファンのサッカーIQや観戦力を高め、長い目で見ていけばファンの固定化はもちろんのこと、審判レベルの向上、さらにいえば日本サッカーのレベルアップにだってつながっていくのではないだろうか。

 さて、本稿でさらに取り上げたいのは、「Jリーグジャッジリプレイ」だけにとどまらない、サッカー界における映像施策の充実っぷりだ。Jリーグ公式YouTubeチャンネルではさまざまな企画がめじろ押しで、もちろん、無料で楽しむことができる。

 Jリーグの公式映像企画といえば、5年前に話題になった「Jリーグ×キャプテン翼」を覚えている人は多いかもしれない。日本代表クラスの選手たちが、キャプ翼の必殺シュートを画像加工なしで本気で再現する映像は実に見応えがあった。

 この企画ほどバズってはいないが、ほかにもサッカーのライト層に向けた施策を次々に打ち続けている。今年でいえば、開幕直前に三四郎とナイツの2組を起用して「Jリーグ漫才」を4本アップ。Jリーグに関しての基本的な情報を紹介する――という要素が強いために少し説明的すぎるとはいえ、ナイツなんて本来、野球界で大切に扱わなければならない人材のはず。野球漫才でおなじみのナイツが、サッカー語れるの? という興味とともに思わず見てしまう。

 ほかにも、またまた登場、原副理事長がお届けするJリーグをもっと好きになる情報番組「JリーグTV」では、原さんがYouTuberとなって、ファンから届いた情報をもとにスタジアムグルメを楽しんだり、原さんの裁量で突如プレゼント企画が始まったりと、いい意味での雑さ・緩さのなかで、ピックアップマッチを解説していく。

 もちろん、純粋にサッカーのプレーを楽しみたい人に向けて、毎回違った視点でスーパープレーを紹介する「J.LEAGE Top10」や試合のハイライト動画も充実。民放での各サッカー番組も顔負けのラインナップだ。ファン目線に立った施策、という意味において、日本のスポーツ界ではサッカーが一歩も二歩も先んじていることは間違いない。

 第一生命保険の調査によれば、平成30年間における「大人になったらなりたいもの」で、男の子の1位は常に野球かサッカー。結果は野球の15勝13敗2分けだったという。

 もっとも、サッカー界がここまでファン施策を打ち続ける一方で野球界が変わらないのだとしたら、令和の時代、もうサッカーが不動の1位になってしまっても不思議ではない。

 プロ野球12球団が危機感を抱いてファン施策を展開しているのは、もちろん知っている。ただ、野球界の本気を示すためには、NPBが率先して面白みのある企画、ファン目線に沿った施策を打つことが必要なのではないだろうか?

(文=オグマナオト)

 

「イチロー引退」から1週間、メディアはどう伝えた?

 昭和の大スター・長嶋茂雄と王貞治の現役時代を見ていない。生まれていなかったのだから仕方がないとは思いつつ、野球ファンとしてはやるせなく感じるときがある。

 後年、イチローの現役時代を見たかどうかについても、きっと野球ファンの間で話題になるんだろうな……そんなことをあらためて考えさせられる、「イチロー引退」後の1週間だった。

 この間、スポーツ番組やニュース番組はもちろん、情報番組もイチロー一色。引退会見から一夜明けた22日の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)は、番組構成がなんと「イチロー」と「天気」の2つだけ。きっとクレームもあっただろうが、この決断には恐れ入った。

 ここまで極端ではないにせよ、各局・各番組、いかにほかとは違った視点でイチローの引退(もしくはイチローの偉業)を伝えるか、知恵を絞っていてとても興味深かった。いくつかの番組をピックアップして、それぞれの腐心のさまを振り返ってみたい。

『スポーツ酒場『語り亭』』(NHK BS1)

 ミッツ・マングローブがMCを務める不定期放送のこの番組。もともと22日に「メジャー開幕!45歳イチロー伝説」と題して番組が組まれており、前日までの開幕戦の模様と、45歳のシーズンがどうなるかを語り尽くす50分になるはずだった。それが引退の報を受け、急きょ「現役引退!45歳イチロー伝説」とテーマを変えての生放送に。この瞬発力と臨機応変さは、さすが“皆様のNHK”だ。

 秀逸だったのはゲストの顔ぶれ。元メジャーリーガーと並んで、マナカナの三倉茉奈&イチローモノマネの第一人者・ニッチロー’がいたこと。初めから「引退特番」を作ろうとしたのならば呼ばれなかったであろうこの2人がいたことで、番組にいい緩急が生まれていた。

 三倉茉奈といえば、子役時代にCMで共演して以来、イチローとは懇意の間柄。「実は初恋の人だったんじゃないの?」とミッツから問われて、「あ、それはないです」と即答したのは素晴らしかった。

 緩急の「緩」を務めたのが茉奈&ニッチロー’なら、「急」を担ったのがMLB解説でおなじみのAKI猪瀬だ。「MVPを獲得した2007年MLBオールスターでのランニングホームランにイチローの技術が集約されている」として、次のコメントを残していた。

「イチロー選手のすごさって、小さなことを積んでいく継続力。イチロー選手の数々のギネス記録の中で、唯一、継続的ではないカテゴリーがこの1本。刹那的な輝き。非常に、イチロー選手の中でユニーク。唯一無二の1本です」

 今回の引退発表後、数え切れないほどこのランニングホームランの映像を見たが、この視点を投げかけていたのはAKI猪瀬だけだったと思う。

 また、いつもアスリートに寄り添うミッツのまとめ方も素晴らしかった。

「最後の打席。空気を読めよ、という方も多いですけど、あれがセーフになっていたら、よりイチローさんの引退を受け入れられなかったと思う。まだ全然できるじゃん、と。あれくらいわかりやすい、ピリオド的なシーンを見ないと、納得できなかったと思う」

「アスリートという言葉だって、平成の時代になってから使われた言葉。野球界でアスリートという言葉が似合う選手なんていなかった。(中略)新しい時代の価値観を先導したのもイチローさんの功績だと思う」

 緊急生放送とあって、情報の間違いなどNHKらしからぬミスも出てミッツが声を荒らげる場面もあったが、それもご愛嬌。実に見応えのある50分だった。

 23日と24日、それぞれ違った視点でイチロー振り返り企画を展開した『Going!』。23日の放送で印象的だったのは「イチローの強肩ぶり」についてのインサート映像だった。

 元同僚にして元メジャーリーガー、長谷川滋利と田口壮がイチローの守備のすごさについて語っていくのだが、その際に流れた映像は、まずはオリックス時代の強肩ぶり。その後、コーナー後半では18日に行われた、マリナーズ対巨人のエキシビションマッチでの遠投映像を何度も何度も(それこそ10回近く)流していた。

 番組側の狙いとしては、「45歳でもまだ肩は衰えていない」と伝えたかったはず。なのに、その直前まで20代前半のイチローの姿を映していたがために、結果的にはイチローの衰えが露呈してしまった。あれは意図的だったのか、たまたまだったのか……。

 ちなみに、他局で「イチローの強肩ぶり」を示す際、当然のようにメジャー1年目の開幕直後、代名詞となった「レーザービーム」送球を流すのがお約束。だが、日テレでこの映像が流れることはない。

 これは、巨人戦を重視する日テレゆえ、長年にわたってMLBとの映像契約を結んでいないからだ(それゆえ、大谷翔平の活躍ぶりを伝える際も、写真を使った紙芝居形式がほとんどだ)。そんな日テレだが、今回、中継を担当したMLB日本開幕シリーズだけは別。むしろ、試合中の映像に関しては日テレ独占素材なのだ。普段、MLBに熱心でない局がイチロー引退の基幹局的な位置付けとなったのは、なんとも不思議な構図だった。

 一方、24日の『Going!』では、「秘蔵映像で振り返るイチロー」と題して、オリックス時代のイチローのオフショットを中心に展開。これまた、メジャ―映像が使えない日テレだからこその逆転の発想だ。

 その中で秀逸だったのは、94年、日本人初のシーズン200本安打を達成した際の単独インタビューで「今の気持ち」について質問した際、イチローが「おなかが減ってご飯を食べたいです」とコメントしていたこと。

 ご存じの通り、「おなか減ってきた……」は、今回の引退会見を切り上げる際にイチローが発した言葉。見事に20歳のイチローと45歳のイチローがリンクしたのだ。過去の膨大な素材からこの言葉を見つけた瞬間の担当ディレクターの喜んだ姿がまじまじと浮かぶ。資料探し、お疲れさまでした。

『S☆1』(TBS系)

 24日深夜放送の『S☆1』は、「ありがとうイチローSP! 未来に残すべきイチローの野球とは?」と題して、イチローの過去の言葉から、その偉業を振り返る企画だった。

 ここ数年、民放でイチローに最も密着していたのは、TBS系スポーツ番組。その“独占インタビュー”は『NEWS 23』や『S☆1』におけるキラーコンテンツだった。

 今回の『S☆1』は、その貴重な資産をしっかり生かした好企画であり、「現役最後の会見、すべての言葉が、名言だった」という始まりのナレーションから期待を抱かせるものに。中でも感慨深かったのは、次の言葉だ。

「野球界の中で、間違った言い伝えが存在している。野球はパワーだ、みたいな。明らかに僕は間違っていると思うし、何によってパワーが生まれるのかが大事であって、パワーが先に来てはいけない(中略)そこの部分では、退化しているんです、野球界は」

 今回の引退会見においてもイチローが言及した話題であり、若干、消化不良だったところをしっかりと補ってくれる良編集だった。

 この1週間、主にラジオ番組において、タレントや芸能人がイチローに言及する機会は多かった。

 たとえば、

「『何かおかしなこと言ってますか?』って、『ずーっとおかしいですよ』って言いたかった」「なんか女子アナが質問したら、『アナウンサーみたいなこと聞かないでよ』って、お前のカミさんはアナウンサーだろ!」

 といった感じで、引退会見での一言一句に突っ込んでいたのがTBSラジオ『JUNK爆笑問題カーボーイ』における太田光。隣には芸能界随一の野球好き、田中裕二が座っていたわけだが、その田中を抑えて太田がイチローについてしゃべりたくてしょうがない、となっていたところに、イチローの「ジャンルを超えたスター感」が表出していた。

 一方、「イチローは我々の原点です」と語ったのは『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』(同)でのナイツの2人。というのも、ナイツの鉄板ネタ「ヤホーで調べてきました」の最初のネタがイチローだったというのだ。

「日本で一番有名な人を言い間違えよう、ということで、最初がイチロー。そのあとがSMAPかな」と、ネタ作りの原点を明かしてくれた。その二大スターが表舞台から姿を消してしまったという事実が、あらためて「平成の終わり」を感じさせてくれた。

***

 といった感じで、この1週間におけるイチロー企画を振り返ってみたが、これでも筆者が遭遇できた一部分にしかすぎず、もっともっと多くの番組で、そして芸能人がイチローを話題にしていたのは明らかだ。

 今後も、真打ちとも言いたくなる『NHKスペシャル イチロー 最後の闘い』が31日に放送される予定。イチロー引退狂騒曲は、平成の終わりを越え、次の元号に変わった後も続いていくのではないだろうか? くりぃむしちゅー・上田晋也がそんな状況を的確に表現していたので最後に記したい。

「この20数年間、イチローさんに憧れて野球を始めた人がどれだけ多いか。そしてまた、その中からプロ野球に入り、メジャーに行き、と、歴史がずっと続いていく気がします」

(文=オグマナオト)

NHK VS.フジテレビ、日曜夜の「平成スポーツ振り返り」勝負がアツい!

「人間の心身の能力がぶつかり合うスポーツは時代を映す鏡だと思う」

 以前、スポーツジャーナリストの増田明美がつづった一文だ。ならば、まもなく幕を下ろす平成という時代を振り返る上でも、スポーツの視点は重要なはず。

 その意味でも非常に意義深く、良質な企画がある。NHK『サンデースポーツ2020』(日曜21時50分~)における「スポーツ平成史」と、フジテレビ『S-PARK』(日曜23時15分~)における「平成スポーツ史 時代が生んだ名勝負」だ。日曜夜はスポーツを歴史的な視点から振り返ることができる至福の時間が続く。

 同じ日曜の夜、立て続けの放送になっても食傷気味にならないのは、『サンデースポーツ』なら「競技史」、『S-PARK』なら「アスリート視点」と、それぞれ切り口が違うから。それゆえ、浮かび上がる平成スポーツの風景が、少し違ったものになってくる。

『サンデースポーツ』の企画は、2月6日スタート。初回で「平成のオリンピック」を取り上げたあとは、「サッカー」「大相撲」「野球」……といった具合に毎回、ひとつの競技に絞って平成30年史を振り返り、その象徴としてレジェンドアスリートがスタジオにゲスト出演する。

 中でも出色だったのが、初回放送の「平成のオリンピック」だ。まさにこの回こそ、増田明美の言葉を借りれば、“時代を映す鏡”としてのスポーツの変遷が描かれていた。

 たとえば、「アスリート」という言葉がいかに平成で浸透したのか、という考察だ。昭和63年のNHKのニュースでは「アスリート」という言葉は一度も使われず、どこまでも「選手」と表現していたこと。また、ある調査によれば、昭和から平成で「アスリート」という単語のメディアでの使用頻度は50倍にも増えていたという。

 ここで番組では、

「選手=選ばれた人たち=国を背負って戦っていた」

「アスリート=自分自身を磨く人=自己実現としてのスポーツ」

という図式を提示する。

 この日のスタジオゲストは、アトランタ五輪での銅メダル獲得の際、「自分で自分を褒めたい」という流行語を生み出したマラソンの有森裕子。まさに、自己実現達成の瞬間だったわけだ。番組では、その後のプロ宣言も含め、有森の存在を「競技を自分の生き方のひとつにしていく、個人事業主としての自立化の象徴だった」と分析する。

 また、同じくこの日のゲストだった“キング・オブ・スキー”ノルディック複合の荻原健司の生きざまからは「アスリートが社会との接点を見いだし始め、社会の中でアスリートは何ができるか、深く考えながら競技する時代になった」と、平成時代を振り返っていた。

 企画の初回でこの視点を投げかけてくれたことで、その後の「サッカー」「大相撲」「野球」といった競技別の振り返りでも、社会とのつながり・変遷とともに楽しむことができるのだ。

 一方の『S-PARK』「平成スポーツ史 時代が生んだ名勝負」は、“アスリートから見た平成スポーツ名場面”がテーマだ。昨年末に企画がスタートして以降、ここまですでに10回放送。鈴井大地、松井秀喜、田村亮子、福原愛、荻原健司、川淵三郎、葛西紀明、田臥勇太、内村航平、三浦知良という、まさに時代の顔がずらり。このラインナップを見るだけで、番組側の本気度がうかがえる。

 興味深いのは、各アスリートが選ぶ名場面において、自分の競技以外からも「平成の名場面」を語ることがあるという点。

 体操・内村航平は、アテネ五輪での「栄光への架け橋だ」実況でおなじみの体操団体金メダル達成の瞬間とともに、「同じ採点競技の求道者として、信じられない世界だった」と平昌五輪・フィギュアスケートでの羽生結弦の演技を挙げていた。

 くしくも同じ時期に、同じ足のケガを負っていた内村と羽生。だからこそ、事の重大さを理解していたはずの内村だったが、羽生の演技を見て愕然。「ありえない」「マンガの世界じゃないですか」「まとってらっしゃいました。何かを」「金メダルを獲るためのオーラをまとってきました、という演技だったんです。すさまじかったですね」と次々に言葉を重ねていく姿が印象的だった。

『サンデースポーツ』における「スポーツ平成史」の場合、歴史的振り返りとスタジオトークに重点を置くあまり、「もっとあの選手のことが見たい」「あのスーパープレーを振り返りたい」と思うこともあるのだが、その物足りなさを『S-PARK』の「平成スポーツ史」が補うことがあったりと、不思議な補完関係も出来上がっている。

 平成の終わりまであと1カ月半。ここから両番組が平成のどんな場面を選び、どの選手を切り取ってくれるのか楽しみでしかない。

……と思っていたら、フジテレビでは27日のゴールデン帯でMCに村上信五を起用し、「平成スポーツ」を題した特番『コレ知らんかった~!新発見!村上信五の平成スポーツ命場面SP』を放送予定だ。タイトルから察するに、不安しかない。

(文=オグマナオト)

「スポーツ通」石橋貴明はホンモノ! 伊集院光との”掛け算トーク”で『たいむとんねる』が神回に

 平成という時代がスポーツに、与えた影響――。それは、アスリートやスポーツの話題がTVバラエティで扱われるようになったことだ。

 その代表格こそ、とんねるずであり、石橋貴明ではないだろうか。学生時代、「帝京野球部の秘密兵器」と呼ばれた運動神経と話術を生かし、アスリートとの交友関係も幅広い。『とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』(テレビ朝日系)は、もはや盆と正月に欠かせない風物詩だ。

 そんな石橋が司会を務める『石橋貴明のたいむとんねる』(フジテレビ系)では、18日・25日放送回で2週にわたって「平成スポーツ30年史」がテーマだった。題して「石橋貴明が独断と偏見で選んだ平成スポーツ名場面」。さすがは石橋、わかってるなぁ、というのが2週分見ての素直な感想だった。

 一番の理由は、ランキングにウソがないことだ。「独断と偏見」で選んでいるのだからウソをつきようがないと思われるかもしれないが、この手の名場面ランキングでは「なぜそれが1位?」「いやいや、その選手がその順位はおかしいよ」と言いたくなることが往々にしてある。

 その理由をひもといていくと、局の中継物件だったり、後日インタビュー企画が用意されていたり、という“忖度”がどうしても見え隠れするのだ。また、視聴者投票であっても(仮にランキングに調整がなかったとして)、最近見た試合や選手の話題が上位に来てしまいがち。それではスポーツの歴史的な価値、意義を見失ってしまう。

 だが、今回のランキングでは、そうした局の忖度は感じられなかった。F1やボクシング、競馬、野球、テニス、陸上、サッカー、オリンピック……と競技や大会、時代がばらけていたことも好印象。さらにいえば、オリンピック映像は使用金額が高いからやめよう、といった裏事情もほぼ感じられず、映像使用が(金額的に、権利的に)難しい場合はスポーツ新聞の過去記事を見せるなど、制作者側の工夫や配慮がしっかりと見て取れた。

 TVer配信や録画してこれから視聴する人もいると思うので、本稿ではあえて石橋ランキングは記さないでおきたい。が、1位で選んだ選手に関して「うわぁこんなシーンを、こんな世界を見せてくれるんだ、と扉を開いてくれた」と感謝の言葉を残していた点が何よりも印象的だった。

 もちろん、「独断と偏見」なのだから、多少の偏りはあった。ただ、その偏りが「そうじゃないだろ」ではなく、「あぁ、そっちを選ぶのか」という思いになったのは、石橋のスポーツへの造詣の深さがあってこそ。「スポーツ通」を名乗る芸能人は多いが、その中でも石橋のスポーツ知識は図抜けている。

 以前、『石橋貴明のスポーツ伝説…光と影』(TBS系)の取材で、石橋に、じかに話を聞く機会があった。その際、番組で扱っていないアスリートや試合について話題が及んでも、まさに立て板に水。あの試合のあの場面で、あの選手の……と話が止まらなかった。神田にあるスポーツ専門古書店を、プライベートでふらっと訪ねることもあるという。スポーツとアスリートへの知識量が尋常ではなく、敬意があるからこそ、その熱がトークににじみ出てくるのだ。だからこそ、合間に挟む小ネタや裏話がまた面白い。

 そして今回の『石橋貴明のたいむとんねる』は、ゲスト人選がよかった。芸能界きっての野球通であり、スポーツ全般にも明るい伊集院光。そのため、互いのトークが掛け算となって展開していく。野茂英雄がまだアマチュアだった頃に会っていた石橋。サッカー・ドーハの悲劇直後にラジオの生放送で日本代表のラモス瑠偉に絡めたギャグを言ったところ、苦情の電話が鳴りやまなかった伊集院……。といった具合に、脱線トークもまた「スポーツと時代背景」を感じることができるものばかり。そして、世紀の瞬間のはずなのに、お互いが「俺、この場にいたんだ」と自慢し合い、うらやましがる構図もまた、純粋にスポーツの価値をわかっている2人だからこそだった。

 ちなみに、もうひとりのMCであるミッツ・マングローブも、NHKで『スポーツ酒場「語り亭」』のレギュラーを務め、フィギュアスケートなどについて、雑誌にコラムを書くこともある人物。そのため、合いの手の内容も間も、まさに的を射ていた。

 世のスポーツバラエティ制作陣に、声を大にして言いたい。にぎやかしの若手タレントもアイドルも、いらないんです。欲しいのはスポーツへの敬意と情熱である、ということを改めて感じさせてくれる2週連続企画だった。

(文=オグマナオト)

◆「熱血!”文化系”スポーツ部」過去記事はこちらから

「スポーツ通」石橋貴明はホンモノ! 伊集院光との”掛け算トーク”で『たいむとんねる』が神回に

 平成という時代がスポーツに、与えた影響――。それは、アスリートやスポーツの話題がTVバラエティで扱われるようになったことだ。

 その代表格こそ、とんねるずであり、石橋貴明ではないだろうか。学生時代、「帝京野球部の秘密兵器」と呼ばれた運動神経と話術を生かし、アスリートとの交友関係も幅広い。『とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』(テレビ朝日系)は、もはや盆と正月に欠かせない風物詩だ。

 そんな石橋が司会を務める『石橋貴明のたいむとんねる』(フジテレビ系)では、18日・25日放送回で2週にわたって「平成スポーツ30年史」がテーマだった。題して「石橋貴明が独断と偏見で選んだ平成スポーツ名場面」。さすがは石橋、わかってるなぁ、というのが2週分見ての素直な感想だった。

 一番の理由は、ランキングにウソがないことだ。「独断と偏見」で選んでいるのだからウソをつきようがないと思われるかもしれないが、この手の名場面ランキングでは「なぜそれが1位?」「いやいや、その選手がその順位はおかしいよ」と言いたくなることが往々にしてある。

 その理由をひもといていくと、局の中継物件だったり、後日インタビュー企画が用意されていたり、という“忖度”がどうしても見え隠れするのだ。また、視聴者投票であっても(仮にランキングに調整がなかったとして)、最近見た試合や選手の話題が上位に来てしまいがち。それではスポーツの歴史的な価値、意義を見失ってしまう。

 だが、今回のランキングでは、そうした局の忖度は感じられなかった。F1やボクシング、競馬、野球、テニス、陸上、サッカー、オリンピック……と競技や大会、時代がばらけていたことも好印象。さらにいえば、オリンピック映像は使用金額が高いからやめよう、といった裏事情もほぼ感じられず、映像使用が(金額的に、権利的に)難しい場合はスポーツ新聞の過去記事を見せるなど、制作者側の工夫や配慮がしっかりと見て取れた。

 TVer配信や録画してこれから視聴する人もいると思うので、本稿ではあえて石橋ランキングは記さないでおきたい。が、1位で選んだ選手に関して「うわぁこんなシーンを、こんな世界を見せてくれるんだ、と扉を開いてくれた」と感謝の言葉を残していた点が何よりも印象的だった。

 もちろん、「独断と偏見」なのだから、多少の偏りはあった。ただ、その偏りが「そうじゃないだろ」ではなく、「あぁ、そっちを選ぶのか」という思いになったのは、石橋のスポーツへの造詣の深さがあってこそ。「スポーツ通」を名乗る芸能人は多いが、その中でも石橋のスポーツ知識は図抜けている。

 以前、『石橋貴明のスポーツ伝説…光と影』(TBS系)の取材で、石橋に、じかに話を聞く機会があった。その際、番組で扱っていないアスリートや試合について話題が及んでも、まさに立て板に水。あの試合のあの場面で、あの選手の……と話が止まらなかった。神田にあるスポーツ専門古書店を、プライベートでふらっと訪ねることもあるという。スポーツとアスリートへの知識量が尋常ではなく、敬意があるからこそ、その熱がトークににじみ出てくるのだ。だからこそ、合間に挟む小ネタや裏話がまた面白い。

 そして今回の『石橋貴明のたいむとんねる』は、ゲスト人選がよかった。芸能界きっての野球通であり、スポーツ全般にも明るい伊集院光。そのため、互いのトークが掛け算となって展開していく。野茂英雄がまだアマチュアだった頃に会っていた石橋。サッカー・ドーハの悲劇直後にラジオの生放送で日本代表のラモス瑠偉に絡めたギャグを言ったところ、苦情の電話が鳴りやまなかった伊集院……。といった具合に、脱線トークもまた「スポーツと時代背景」を感じることができるものばかり。そして、世紀の瞬間のはずなのに、お互いが「俺、この場にいたんだ」と自慢し合い、うらやましがる構図もまた、純粋にスポーツの価値をわかっている2人だからこそだった。

 ちなみに、もうひとりのMCであるミッツ・マングローブも、NHKで『スポーツ酒場「語り亭」』のレギュラーを務め、フィギュアスケートなどについて、雑誌にコラムを書くこともある人物。そのため、合いの手の内容も間も、まさに的を射ていた。

 世のスポーツバラエティ制作陣に、声を大にして言いたい。にぎやかしの若手タレントもアイドルも、いらないんです。欲しいのはスポーツへの敬意と情熱である、ということを改めて感じさせてくれる2週連続企画だった。

(文=オグマナオト)

◆「熱血!”文化系”スポーツ部」過去記事はこちらから

有働由美子アナとアスリートの無駄遣い……日テレスポーツ特番が残念だった件

 平成の終わりまであと2カ月半。各種メディア、そしてジャンルにおいて「平成振り返り企画」がにぎやかだ。スポーツ系番組でも、各局でさまざまな特集が組まれている。

 たとえば、フジテレビ土日深夜の『S-PARK』では昨年末から「平成スポーツ史 時代が生んだ名勝負」と題して、各競技のレジェンドアスリートを取材。NHK日曜夜の『サンデースポーツ2020』でも、2月10日から「シリーズ平成史」がスタート。この2番組はいずれも見応え十分なうえ、発見も多い。いずれじっくり紹介したいのだが、今回は別の話。2月11日に放送された4時間大型特番『今だから話します~平成最後にアスリート初告白SP!〜 』についてだ。

 番宣では「三浦知良W杯落選の本音を初告白、荒川静香金メダルの裏側…平成スポーツ名場面の真実」と記していたので、てっきりこの番組も平成スポーツをそれこそ4時間じっくり掘り下げてくれるのかと思いきや、さにあらず。タイトルにある「平成」は、単に「この時期だから入れてみました」以外のなにものでもなかった。

 確かに、「へぇ」と言いたくなるエピソードも、あるにはあった。卓球・張本智和の体育の成績が5段階中3であるとか、1998年フランスW杯での三浦知良・北沢豪まさかの代表落選直後、帰国前に立ち寄ったミラノの高級ホテル代20万円の請求書をサッカー協会に送ったら払ってくれた……といった話題などは私自身知らなかった。が、それらは番組全体としてもあくまで箸休め的なエピソード。肝心な「今だから話します!」についてはどこかで聞いたことがある話が多かった。

 明石家さんま、上田晋也、有働由美子、水卜麻美アナの4MC という時点で半ば想像通りでもあったのだが、これでは単にスポーツを題材にしたトークバラエティにすぎず、さらにいえば「船頭多くして……」の典型だった。ちなみに、この日はスタジオゲストとしてアスリート(とその家族)が16名出演していたが、前半・後半での入れ替え制だったとはいえ、正直いって渋滞気味。しかも、後半ゲストへはヌルッと入って紹介すらなかった。

 その上、小島瑠璃子、関根勤、土屋太鳳、ハリセンボン、松嶋尚美といった芸能人枠もしっかり確保。さんま師匠がいる以上、脇を固める芸能人枠が不可欠なのはわかるが、その分、アスリートがおざなりになっていた感は否めない。アスリートをゲストに呼んでいるのだから、アスリートにしっかりしゃべってほしいのだ。

 そして、もうひとつこの手の番組で疑問なのが再現VTRだ。スポーツものの再現VTRは、最近ではTBS『消えた天才』もそうだが、過剰な演技になりがち。競技シーンのない練習風景などでの再現VTRなら、まだわかる。しかし、この日の放送では荒川静香のイナバウアー演技の前後に、なぜか水卜アナのイナバウアー再現VTRが挿入されていた。

 荒川から羽生結弦へ。金メダリスト同士のイナバウアーのバトン……という大事な場面で、本当にそのVTRいる? 水卜アナは必死に「1カ月半練習したんです」と訴えていたが、いやいや、ならば4年かけて練習したアスリートの技こそしっかり見せてよ、と言いたい。

 といった感じで全体的に食傷気味で企画の趣旨も散漫だったこの番組で、ひとつだけ意図が明確だったことがある。それは「有働キャスターと水卜アナのコンビ」の売り出しだ。この2人に関しては昨年末、こちらも4時間特番『キャスター&記者1000人が選んだ!平成ニッポンの瞬間映像30』でもコンビを組んでいただけに、その“スポーツ版”をやりたかったのだろうなと推察できる。

さらにいえば、有働キャスターを『news zero』に抜擢した日テレとしては、2020年東京オリンピック・パラリンピック関係でも有働キャスターにバリバリ働いてほしい。そのためにも「日テレのスポーツ=明石家さんま&上田晋也」だったところに「有働由美子」のピースを早めにはめ込み、イメージ付けをしておきたかったのではないだろうか。

 であるならば、有働キャスターの使い方が違うはず。これまでNHKのスポーツキャスターとして、何度もオリンピック取材を重ねてきた彼女だ。アスリートの「面白・おかしい一面」よりも、出したくても出せない本音や素の表情こそを伝えてほしい。なんなら、有働キャスター単独 で、今回の番組をやったっていいはずだ。視聴率的にそれでは厳しい、という声が聞こえてきそうだが、ならば、「さんま×有働×水卜」か「上田×有働×水卜」でよかった。

 結局、これまで日テレのスポーツ番組を担当してきたさんま師匠は外せない。上田さんも外せない、というキャスティングだったのでは? でもそれって、どこを向いて番組を作っているのだろうか。アスリート? 視聴者? まさか芸能人のほうしか向いてません、ということはないとは思いますが。

(文=オグマナオト)

百獣の王から”スポーツエンタメ王”へ 武井壮からほとばしる「卓球愛」が止まらない!

 2019年、スポーツ・エンタメ界の顔は、もうこの男で決まりではないか? そんな印象すら覚えるのが武井壮だ。以前から『戦え!スポーツ内閣』(MBS)など、スポーツバラエティでのMCを任されていた武井だが、昨年から今年にかけて、その露出がさらにすさまじい。

『武井壮のパラスポーツ真剣勝負』(NHK)は特番からレギュラーへと昇格し、昨年10月からはラジオのレギュラー番組『ATHLETE HIGH』(J-WAVE)がスタート。年が明けてみれば、大河ドラマ『いだてん』(NHK)で日本最初のスポーツ同好会「天狗倶楽部」の創設者、押川春浪を熱演。天狗ダンスとともに話題をかっさらった。

 活躍の場はキー局だけにとどまらず、静岡第一テレビのスポーツ情報番組では『武井壮のDynamicトーク』を今年から担当。東海テレビ『壮だったのか!たけい荘G』は同局開局60周年記念として新年早々にゴールデンで放送された。

 百獣の王は、今やスポーツ・エンタメの王になったのだ。

 そんな数ある番組の中でも、武井の“らしさ”が端的に発揮されていると感じるのが、卓球の魅力をとことん掘り下げる『卓球ジャパン!』(BSテレ東)だ。ここでいう“らしさ”とは、スポーツに対してどこまでも真摯であること。とにかくこの番組、卓球にとことん真面目で、愛情が深すぎるのだ。

 毎週1試合、世界の卓球界で行われた注目マッチを、武井と卓球解説者・平野早矢香の副音声風ディープ解説で徹底検証。スポーツニュースでじっくりと扱っても2分もあれば長尺、と感じるこのご時世に、30分以上の尺を積んでワンプレーごとの狙い、技術的・身体的背景を掘り下げていく。こんなストロングスタイルな競技検証企画なんて、他競技であってもまずお目にかかれない。

 同番組の制作陣、そして武井から感じるのは「卓球の魅力をそのまま伝えよう」という気概だ。この手の企画の場合、タレントに求められるのは「にぎやかし」であり、過剰な「頑張れニッポン」感だと思うのだが、武井はその真逆を行く。

 ラリーの応酬では不要な言葉を排し、プレーが終わった瞬間に「なんか黙って見ちゃいますね」とつぶやくのみ。その合間を縫って解説の平野がプレーの意図だけでなく、大会の意義、規模、位置付けをわかりやすく説明する。また、たとえ日本人選手が劣勢に立たされても、「日本人とか中国人とか関係ないな、俺。いいプレーはいいプレー」と武井は拍手を惜しまない。

 そして、武井の本領が発揮されるのは、試合でのプレーを通して、選手ひとりひとりの魅力を掘り下げていくこと。この点こそ、2020年の東京五輪に向けて人気競技の座を勝ち取っていこうという卓球界が、最も欲している部分だ。

 以前、武井は自身のラジオ番組『武井壮のガッとしてビターン!』(文化放送)で、こんなことを語っていた。

「日本のスポーツ文化って、競技を楽しむ以前に、人を見るもの。人を応援して、そのゲームを見ていくのがすごく多い。水泳だって、インターハイを見に行ったって、誰も知らないと全然面白くない。でも、ひとり知り合いがいればすごく楽しい。たとえ勝っても負けても。本当にその競技をメジャーにしたいなら、アスリートもタレントにならないといけないと思う」

 かつて、陸上十種競技で日本一になったことがある武井壮。だが、翌日の新聞でそのことに触れた記事はたったの3行だけ。「あれだけ頑張ってもリターンが全然なかった」ことに愕然として、やがて活躍の場を芸能界へと移したエピソードは有名だ。

 そんな男と、かつて日陰の競技と揶揄された時代もある卓球とは、実はとても親和性が高いのだ。競技をより広め、人気を高めていくためには何が必要なのか? そのことを理解している武井だからこそ、ここからさらに卓球人気の向上に一役買ってくれるのではないだろうか。

 ちなみに、今年に入ってから新コーナー、45歳の武井が基礎から卓球を学ぶ「武井壮の卓球道」がスタート。「なんでスタッフは俺に卓球をやらせないんだ! 卓球(のこと)がしゃべれるだけ、なんて一番ダセェ」と、一アスリートとして卓球に取り組むことを宣言した。

 この新企画でも「この番組らしい」と感じたのは、2週かけてまだ「ラケット選び」しかやっていないこと。ラケットの重さ、素材で打球がどう違うのかをじっくり地道に掘り下げていくところは相変わらずだ。

「平野早矢香をコーチに迎え、いつの日か全日本出場。これを目指したい」と、新年早々に高すぎる目標を掲げた武井。今までは帰宅後にビリヤードの特訓に励むさまをSNSに日々アップしていたが、これからは、そこに卓球が加わるのだろうか? 眠らない男、武井壮の忙しさにますます拍車がかかりそうな2019年である。

(文=オグマナオト)