TBS『ノーサイド・ゲーム』の盛り上がりとラグビーW杯の扱いから見える「テレビ局の論理」

「ラグビーW杯、盛り上がってほしいのに、なんだかこう突き抜けられないよねぇ。なんでかなぁ」

 先日、80年代のラグビー人気を象徴する存在ともいえる伝説のドラマ『スクール☆ウォーズ』のある出演者にインタビューした際、こんなやりとりがあった。確かに、オリンピック、サッカーW杯に続く世界三大スポーツ大会の開幕まであと1週間、にしては世間の熱気がまだまだ物足りない。これが嵐の前の静けさならいいのだけど。

 静かな立ち上がりを見せそうなW杯とは一転、最終回に向け、がぜん盛り上がりを見せているのがTBSドラマ『ノーサイド・ゲーム』だ。さすがは『スクール☆ウォーズ』を生んだTBS、その血脈は受け継がれていたんだなぁとうれしくなる。

 実はこの、「なぜラグビーW杯がなかなか盛り上がらないのか?」と、「『ノーサイド・ゲーム』に、なぜ熱中してしまうのか?」という2つの話、突き詰めると表裏一体のテーマでもあることに気づく。鍵となるのは「放送局の論理と、それを打ち破る大義」だ。

 まず、「なぜラグビーW杯がなかなか盛り上がらないのか?」問題について。

 もちろんこれから一気にヒートアップするとは期待しているのだが、事前段階でのメディアの情報量に関していえば物足りないと感じるのは事実。そしてその理由は、オリンピックやサッカーと異なり、地上波中継局がNHKと日本テレビに限られている、という点が大きな理由だ。

 放送局が限定された結果、この2局以外ではスポーツ番組でもなかなかラグビーニュースが扱われない、という事態に。ある放送局では、トップダウンで「日テレの宣伝になるから、ラグビーネタは極力扱うな」というお達しも出ていると聞く。

 ならば日テレが頑張ってくれればいいわけだが、どうも日テレは「ラグビーは難しい」と考えすぎているように思う。だから、せっかく代表選手や元有名選手たちを独占的にキャスティングできるのに、バラエティ番組でお茶を濁して終わり、というものばかりが目立つのだ。もっと素直にラグビーの魅力を伝えてくれればいいのに。

 一方、この「ラグビーの魅力」を素直に描写できているのが『ノーサイド・ゲーム』なのだ。ドラマ成功の背景には、池井戸潤作品特有の勧善懲悪感、毎話最後は未来志向になる構成、サラリーマンの琴線をくすぐる企業内闘争などもあるだろうが、真摯にラグビーと向き合っているから、という点も大きい。ドラマ以上に、ラグビー描写が濃いのだ。

 ではなぜ、他局ではスポーツ番組ですらラグビーを扱うことに躊躇しているこのご時世に、TBSのこのドラマでは、ここまでど直球にラグビーを描くことができているのだろうか?

 ここで重要になるのが、番組のトップとTBSのトップに共通するラグビー愛であり、「日本ラグビーが盛り上がるのなら、局の論理なんて気にするな」という気概だ。

 まずは番組トップ。総監督的な立場にいる演出の福澤克雄は慶應大学ラグビー部出身。だからこそ、ラグビー描写に妥協がないし、キャスティングにもラグビー経験者ばかりを揃えるこだわりがある。

 チームのキャプテン岸和田徹を演じる高橋光臣は大阪の強豪校・啓光学園ラグビー部出身。ドラマ初挑戦とは思えない存在感を放つ浜畑譲役の廣瀬俊朗は元日本代表キャプテン。そのほかにも、主要キャストはほぼ全員がラグビー経験者であるため、スポーツドラマでありがちな“スポーツ描写でのがっかり感”が見当たらないのだ。

 8日放送回ではあまりにもさりげなく濱田岳がゲスト出演していたが、濱田もまた元ラグビー少年。「こんなにも熱いドラマにラガーマンとして少しでも役に立てるなら協力したい」と、自ら番組側に逆オファーしたという。

 これほどまでの「ラグビーど直球」、おそらくTBS局内でも「日テレの宣伝になる」と眉をひそめる人物はいるだろう。そんな声を押しのけ、ラグビーを前面に押し出した企画を突き通せたのは、局のトップであるTBS社長の佐々木卓もまた早稲田大学ラグビー部出身、ということも大きな要因のはずだ。

 佐々木社長は、ラグビーと経営をテーマにしたインタビューで、こんなコメントを残している。

《負けることよりも怖いのは、アンフェアだという烙印を押されることです。1回や2回の負けはやり直しが利いても、アンフェアだという烙印は一生付いて回る》(「週刊ダイヤモンド」8月31日号より)

 この言葉から、佐々木社長には、目の前の視聴率競争以上に、放送局としての大義、そしてラグビーを愛する者としての矜持があるように思えてならない。

 ここから先、実際にW杯の試合が始まれば、日テレ以外の局であっても、日本戦の試合結果や活躍した選手を取り上げてくれるはず。つまりは、日本代表の結果次第では、まだまだ盛り上がる可能性は大きい。もし、それでもW杯の扱いがおざなりなスポーツ番組があったとしたら、その番組の良心とスポーツ愛を疑ったほうがいいと思う。

『ノーサイド・ゲーム』の中では、主演の大泉洋がラグビー部の廃部を主張する上司に対して、こんなセリフで対抗するシーンがあった。

《日本のラグビーは必ず変わります。きっと強くなります。お願いします。ラグビーの未来を、必死に戦っている選手たちの将来を閉ざさないでください》

 なんだかこれ、日本のメディアに向けて言われたような気がしたのは、筆者だけだろうか。

(文=オグマナオト)

張本勲、実は「球数制限」容認派だった! 『伊集院光とらじおと』で明かした本音

 101回目の夏もしっかり盛り上がりを見せた高校野球。その熱と比例するように、球児の「球光数制限」の是非についての議論も例年以上にヒートアップした。

 時節柄、そして科学的にも、「球数制限」論者に一定の理があるのはごもっとも。一方、球界年長者ほど、球数制限には異を唱えがち。そこで世代間ギャップが起きる。象徴的だったのが張本勲とダルビッシュの(一方通行な)舌戦だろう。

 まずは、7月28日放送のTBS系『サンデーモーニング』で、球界のご意見番・張本氏が大船渡高(岩手)の160キロ右腕、佐々木朗希投手が県大会決勝戦で出場しないまま敗れたニュースについて「最近のスポーツ界でこれが一番残念」「投げさせるべき」とコメント。これに対してダルビッシュは「シェンロンが一つ願いこと叶えてあげるって言ってきたら迷いなくこのコーナーを消してくださいと言う」(原文ママ)とつぶやくと、「いいね」の数は一気に10万超え。

 さらに8月20日、朝日新聞デジタル版で球数制限に異論を唱えた野球評論家・江本孟紀氏に対し、「だれかこの記事プリントアウトして江本さん、張本さんに渡してください」と、少年野球の投手にケガが多いという記事をツイートで紹介したことも話題を呼んだ。

 ブレないダルの姿勢には変わらぬ称賛の声が集まる一方、「シーズン中に何やってんだよ」「球界の年長者にもう少し敬意を」「ましてや張本さん、ファイターズOBなのに……」と危惧する野球ファンも少なくない。もっとお互い歩み寄れる部分はあるはず、と。だからこそ、ダルビッシュにはこう伝えたい。

《だれか8月26日のTBSラジオ『伊集院光とらじおと』の張本さん出演コーナーの音源ダルビッシュに渡してください。もしくはradikoのURL》

 というのも、球数制限否定派だと誰もが思っていた張本氏、なんと球数制限容認派であることを、この日のトークで明かしたから。『伊集院光とらじおと』での張本氏の言葉は、まとめるとこうだ。

「球数制限について、条件をつけて決めてもいい。投手を大事にするのはいいこと。でも、大事にするのと甘やかすのは違う。大投手は必死に歯を食いしばって投げ込んで、成長するわけだから」

 さらに、イマドキ世代の若者たちへの指導はどうすべきか? という伊集院の質問に対して、張本はこうも返している。

「私らの年代から、今の年代に降りないと。私らの論理を押し付けたら、笑われますよ」

「(甲子園で準優勝した星稜のエース)奥川(恭伸)君は(甲子園で)512球放っている。去年の(準優勝した金足農業の)吉田輝星は881球。球数をたくさん投げたから壊れる、というのは違うと思う。そこは指導者が考えないといけない。投げさせて投げさせて、よくなる投手もいる。だから、指導者は難しいんです」

 張本氏のこうした言葉を受け、「これを聞いたら、ダルビッシュとの論争にはならないんじゃないか」とコメントしたのは番組MCの伊集院光。誰よりもファイターズを愛する男は、ファイターズOB同士の場外乱闘を、ずっと歯がゆい思いで見ていたのではないだろうか。

 伊集院が張本氏を紹介する際、「僕が子どもの頃は『炎の打者』って呼ばれていたけど、今は『炎の解説者』だからね」と発したように、すっかり炎上解説者としておなじみになってしまった張本氏。ただ、この日のラジオでの内容を踏まえると、『サンデーモーニング』における張本氏の言動は、多少“演じている”部分がある、と思ったほうがいいのではないだろうか(もちろん、素のままの暴言のほうが多いとは思うのだが)。

 実際、筆者はある野球解説者から「張本さんも大変だよね。ああいう役回りで。本当は、球場でご挨拶しても、僕らみたいな後輩にもちゃんと挨拶してくれる優しい人なのに」という言葉を聞いたことがある。

 結局、『サンデーモーニンング』で問題なのは、過剰に「喝!」を迫る関口宏だ。直近25日の放送でも、守備妨害でアウトになった西武・源田壮亮のニュースに対して「あれはしょうがない」とコメントした張本に、執拗に「喝じゃないの? 喝でしょ」と迫る場面があった。そして、こんなことは日常茶飯事。喝さえ言わせておけば数字は伸びる、といった態度には、アスリートへの敬意も、スポーツに対する愛情も感じられない。

 その「スポーツへの敬意」という部分で明らかに勝っていたのが伊集院。敬意をもって接するからこそ、張本の本音が聞き出せたのだ。

 ちなみに、『伊集院光とらじおと』で、「最後にこれからの夢を」とマイクを振られた張本氏は、次のようなコメントを残していた。これもまた、ダルビッシュに届いてほしいと思う、野球界全体を見据えた建設的なものだった。

「野球のルールを変えてもらいたい。日本人に合う、日本の青少年、日本のファンが喜ぶような。アメリカのルールをそのまま持ってこないで、ちゃんと吟味して、日本人にいいルールを作ってもらいたいね。このままじゃ、野球界がダメになりますよ」

(文=オグマナオト)

NHK『どすこい!夢の大相撲』紺野美沙子の熱すぎる相撲愛と「AI夢の対決」の可能性

 まさに夏の夜の夢。9日放送の『どすこい!夢の大相撲 ~令和元年 AI場所~』(NHK総合)は、NHKの進取の精神を感じさせてくれる良企画だった。

 大相撲史に名を刻む横綱同士が対戦したら、いったい勝つのは誰なのか? という妄想は相撲ファンなら誰もが一度は通る道。そんな夢の企画を、NHKが誇るアーカイブを十二分に生かし、日本IBMの技術協力のもと、筑波大学の体育系准教授までもが監修にあたり、日本相撲協会の生き字引ともいうべき親方の考察とともに再現していく。

 具体的には、映像記録がしっかりと残る第44代横綱・栃錦以降の29人の横綱の中から、チームごとにドラフト形式で3人を選出。先鋒・中堅・大将に分かれ、それぞれの現役時代のデータをもとにAIによって勝敗を決していく内容だ。

 歓声や行司の声などがもっとあれば、臨場感を足せるのでは? と思わないでもなかったが、AI相撲自体は思いのほか見応え十分。土俵際の逆転劇では思わず「おぉ!」と声が漏れてしまう場面もあった。

 ネット上での評価を散見すると、「勝敗の結果に納得がいかない」と憤る声も少なくないが、この手の企画では避けようのない議論。本稿ではもっと別な点から、今回の企画の意義深い点を振り返っておきたい。とにもかくにも良かったのは人選。それは選ばれた「9人の横綱たち」ではなく、その横綱を選ぶ演者たちのこと。

「博識部屋」は、相撲ファン歴約半世紀の2人、紺野美沙子とやくみつる。

「小町部屋」は、若手&スー女代表格ともいえる市川紗椰と山根千佳。

「爆笑部屋」は、相撲ネタでの露出も多い芸人枠、キンボシ西田淳裕とはなわ。

 そして、解説役であり、ナビゲーター役を務めたのが江戸時代からの相撲を見続けてきたであろうデーモン閣下(実際に閣下は、今回の番組企画では扱いきれない「映像がない時代の横綱」を解説するコーナーも任されていた。さすがNHK、使い方をわかってる)。

 いずれも相撲雑誌で連載を持っていたり、大相撲中継にゲストで呼ばれることも多い、芸能界を代表する好角家ばかり。また、上記3つの部屋がどの横綱を選ぶのか、という「横綱ドラフト」でアナウンスを務めたのは、TBSが毎年中継する『プロ野球ドラフト会議』でアナウンスを務める関野浩之。この配役も素晴らしかった。

 民放がこの手の企画に手を出したのならば必ずブッキングされたであろう、ジャニーズ枠も旬な芸人枠も一切ゼロ。好角家しかいないのだから、あとはその愛と熱量を楽しめばいいだけ。むしろその「異様な熱」こそがおかしみを生むのだ。

 象徴的だったのが紺野美沙子の存在感だった。というのも、番組冒頭からひとりで勝手に泣きだす始末。「どうしたの?」と心配するほかの出演者たちに「だって、この力士が(AIででも)復活したら泣いちゃう!」と切り返して、出足のよさを見せつけていた。

 それ以外にも、唐突に「大鵬ぉー!」と掛け声をかけたかと思えば、「大鵬が2番続けて負けるなんて。もう、(投げる)座布団1枚も残ってないですよ」と粋なコメントで憤って見せたりと、紺野の独り舞台ならぬ独り相撲状態。喜怒哀楽が激しすぎて、それが妙な色気に感じてしまう場面もあった。

 紺野といえば「元祖スー女」とも称される人物であり、今年6月に開催された「大相撲の継承発展を考える有識者会議」にも出席していた、まさに“本物”。スー女の代名詞といえば、今回共演した市川紗椰や山根千佳なわけだが、紺野と比べてしまうと横綱と関脇ぐらいの差があったように思う。

 そういえば、2年ほど前の『アウト×デラックス』(フジテレビ系)に「相撲の未来が心配な女優」として出演していた紺野。おっとりとした笑顔と口調とは裏腹に「ご新規さんのスー女のマナーがいただけない」とバッサリ切っていたのを思い出した。

 そんな紺野の魅力以外にも、今回の企画で得た気づき、そして新たな可能性は多い。

今回が初開催となった「AI場所」だが、今後も年1場所くらいは実施できるのではないだろうか。デーモン閣下自身が「いろんなアイデアがここから湧く」と番組最後で語っていたように、選出する横綱を変えるだけでも楽しいし、取組の番手を変えたり、団体戦の形式を変えるなど、いかようにも楽しみ方はあるだろう。

 そしてもうひとつは、「AIでの夢の対決」は、他競技にも応用が利用できそうだ、という点。すぐに思い浮かぶのはプロ野球だ。歴史が長く、豊富な映像資料が残っている競技であればあるほど、時空を超えた夢の対決への期待値は大きい。

 また、大谷翔平が160キロを投げるたびに「ワシは170出しとった」と吠える金田正一しかり、メジャーリーグのすごい打撃を見ても「私らのほうが技術は上でした」とこぼす張本御大しかり。実績はわかるんだけども、格段に技術革新が進んでいる現代の競技レベルで競わせたら実際どうなの? というレジェンドも多いだけに、いくらでも「ifの対決」は描けるはずだ。

 いずれにせよ、近いうちに開催されるはずの次回AI場所でも、NHKのゲスト人選には大いに期待したい。ほかを変えるにしても、紺野は固定でお願いします。

(文=オグマナオト)

千鳥が東京五輪に触手? BSパラリンピック番組の伸びシロに期待大‼?

 いま、テレビ界隈で最も勢いがあるといわれる千鳥。今春始まったテレビ朝日での初冠番組『テレビ千鳥』では、東京オリンピック開催まであと1年を切ろうかという7月22日深夜、「スポーツ千鳥」なる企画が放送された。

 企画意図は、千鳥の2人が東京オリンピック・パラリンピックで何かしらの役割を得るため、俺たちだってスポーツできます! とアピールすること。

 その内容はさておき、あながち「東京オリンピック・パラリンピックを狙う」という千鳥の意気込みは、冗談とは言い切れないんじゃないか……そんなことを感じさせるのは、『テレビ千鳥』同様、今春からNHKで始まった千鳥の新番組『パラ×ドキッ!』(NHK-BS1、再放送は総合でも)の存在があるからだ。

<見たら必ずハマるパラスポーツの驚きのスゴ技やスピード勝負、金メダル期待の日本の超人アスリートの面白キャラクターや波乱万丈の物語をたっぷりご紹介するバラエティー番組>

 番組公式サイトにあるこの文言通り、この番組は「スポーツ番組」というよりも「バラエティー」の側面が強い。

 だからこそ、重視されるのは「面白さ」。ゲストのパラアスリートがどんな障害を負っているのか――についての情報は少なく、障害者スポーツから連想しがちな悲壮感や大変さ、といった印象はゼロ。アスリートの特徴や特技を紹介する際にも、「ただやるだけじゃつまらないので」と、ドッキリ企画を挟んだり、レポーター役の芸人がいちいちボケてみせるシーンが続く。

 個人的な好き嫌いはさておき、ひとつの狙いとしてはアリなのかな、と思う。パラ競技や障害者スポーツといえば、どこぞのチャリティ番組よろしく、「感動の物語」「とんでもない苦労エピソード」で十把一絡げにしがち。だが、実際のパラアスリートたちに話を聞くと、「もっとスポーツとして見てほしい」「アスリートとして認識してほしい」という声が聞こえてくる。

 健常者のスポーツ競技において、すでにアスリートのバラエティータレント化が目立つ昨今。ならば、パラスポーツ番組でもバラエティ路線を目指すことは必然ともいえるのだ。

 ただ、今のところ、番組構成も進行も空回りしている印象は否めない。一番の原因は、ロケ職人・千鳥がロケには行かず、後輩芸人たちのロケ取材の様子をスタジオで見守っている点だ。比較するのは悪いとは思いつつ、画面に千鳥が映っているからこそ、「これ、千鳥のロケだったら、もっと面白かったんだろうな」と思わずにはいられないし、それを仕切る千鳥のMC ぶりも不慣れなせいかグダグになりがちで、すべっていることが多いのだ(実際、この番組で一番多いツッコミワードは「すべってるがな」だと思う)。

 まあ、面白い・面白くないは個人的な感想にもなってしまうので、いったん置いておこう。この番組を見ていて違和感を抱くのには、もうひとつ理由がある。それは、あまりにも「吉本推し」が強いから。MC千鳥はもちろんのこと、脇を固める女性タレントも渡辺直美か横澤夏子。ロケ取材する若手芸人も吉本の後輩。そして、ナレーションもケンドーコバヤシの回が多い。NHKアナウンサーも出ているし、番組を締めるコメンテータ―役にパラ競技に精通したカメラマンを配置したりはしているのだが、今どきここまで吉本タレントだらけのバラエティ、って逆に珍しいのではないか。

 振り返れば、NHK総合で相葉雅紀MCの『グッと!スポーツ』が始まり、「ついにNHKスポーツもジャニーズに頼る時代かぁ」と少々寂しく思ったのが3年前。今度はNHKさん、パラスポーツで吉本に頼るのかぁ……というこの胸のモヤモヤは、昨今の吉本問題があるからこそ感じてしまうものなのか。

 この番組でパラ陸上の女王・中西麻耶選手を取り上げた際、イギリスでパラスポーツが盛んな理由として、メディアが主体的に「パラ競技のスーパースター」を生み出そうとしていたことを紹介していた。

 その紹介VTRを見て、「『パラ×ドキッ!』はすごく大事なことをしているよ」とつぶやいたのは千鳥の大悟本人。その言葉の通り、今後日本がパラスポーツ大国になっていくために、そして東京パラリンピックが成功するために、この番組はどのようにアスリートを照らしていくのか。そこにはすごく大事な意義があるはずだ。

 だからこそ引き続きこの番組には注目したいし、まさかNHKがひとつの芸能事務所に忖度した番組づくりなんてしないよね、と信じたい。

(文=オグマナオト)

日刊スポーツ「ジャニーさんは甲子園人気低迷を救った」記事への疑問

「ジャニー喜多川氏、死去」のニュースから1週間。美談記事ばかりがあふれ返る中、ここにきて《元「SMAP」の出演で圧力か ジャニーズ事務所に注意、公取委》という驚きのニュースが飛び込んできた。

 やはり、何かのタガが外れたのだろうか。これを機に、メディアの「事務所寄り」な報道姿勢も少しは冷静になってほしいと思う次第。というのも、スポーツファンとしては見過ごせない“ジャニーズとスポーツに関する事実誤認”を日刊スポーツが報じていたからだ。

「~カリスマ死す~ ジャニーズ王国の未来」と題した連載企画の5回目。「ジャニーさん甲子園人気低迷を救った野球愛」(https://www.nikkansports.com/entertainment/news/201907140000439.html)という記事がそれ。

 この記事では、野球を愛したジャニー喜多川氏が、《「エンターテインメントの代表」と考える野球という競技に重きを置き、危機が訪れると、率先してアクションを起こしてきた》と解説。その具体例として挙げたのが1998年夏の甲子園開会式についてだった。

《98年(平10)の第80回全国高校野球選手権の開会式で、滝沢秀明(当時16)率いるジャニーズJr.総勢80人が異例のミニライブを行ったことがあった》と紹介。その背景について、観客動員が6年連続で減少していたこと。参加校が戦後初めて減少したこと。93年に開幕したJリーグの影響などについても触れつつ、こう続けている。

《80回という記念大会に“秘策”が必要だった。それがジャニーズJr.だった。女性ファンが多数駆けつけ、開会式では9年ぶりの5万人を突破。松坂大輔(現中日)を擁する横浜の春夏連覇で大会は盛り上がり、総入場者数は89万5000人に達した。ただ高校野球の聖地にアイドルが登場することに、苦言が予測されていた。滝沢自身も後に「僕らにとってはアウェーでした」と話した。ジャニーさんはそれでも高校野球のために引き受けた》

 いやいや、ちょっと待ってほしい。98年の夏の甲子園といえば、松坂大輔を筆頭に「松坂世代」が数々の伝説を成し遂げ、まさに「野球の面白さ」で爆発的な人気を呼んだ大会だ。

 その事実を忘れて《甲子園人気低迷を救った野球愛》というタイトルをスポーツ新聞がつけるなど、狂気の沙汰としか思えない。「芸能班が書いたことですから」という言い訳が聞こえてきそうだが、記事の見出しは整理部がチェックをするはず。そこにスポーツ紙としての矜持はないのだろうか?

 この件、Wikipediaの「第80回全国高等学校野球選手権大会」の項目を見ても、当時、ジャニーズ起用の是非について議論が起きたことが書かれている。まあ、ウィキを根拠にしたって説得力がないので、高校野球専門誌から当時の批判ぶりを引用したい。

《甲子園が黄色い悲鳴と絶叫に包まれた。開会式のプレ・イベントとしてジャニーズJr.のミニコンサートが行われ、徹夜組2500人を含む多くの女子中、高校生が球児の聖地につめかけた。(中略)リーダーの滝沢秀明(16)は「夢の甲子園で思いっきり歌い踊れて、とても気持ちよかったです」と感激の様子。ただ5万人の大観衆はJr.のイベント終了とともにゾロゾロと席を立ち、第1試合の観衆は3万1千人。「野球とはまったく関係ない盛り上がりで、活性化にはつながったとは思えない」という関係者の声も多かった》(「報知高校野球」98年9月号 )

 思えばこの頃から、ジャニーズ事務所とスポーツイベントの癒着ぶりは年々、顕著になった。代表例はバレーボールの国際大会だろう。V6、嵐、NEWS、Hey! Say! JUMP、Sexy Zoneと、彼らがバレーボール国際大会を“グループお披露目の場”とし、スペシャルサポーターとして試合中継をジャックするのは、いつの間にか当たり前になっていた。

 もちろん、彼らのおかげでバレーに興味を持った層だっているだろう。そもそも、彼らのタイアップなしには「視聴率が見込めない」と、試合中継されなかったかもしれない。先に紹介した「報知高校野球」でも、編集長コラムでは「お堅い、古いといわれる主催者、高野連が、新しいものに目を向けたことに意味がある」と記している。

 それでも、スポーツそのものの魅力とは、まったくの別軸。短期的な集客に意味はあっても、長期的な視点での競技振興、文化的発展という視点が欠けている。むしろ、芸能人の都合によって試合開始時間や試合会場が左右され、選手が待たされるなど、明確な「害」があることも見過ごすわけにはいかない。

 そのことを、「スポーツ新聞」を名乗るメディアには見誤ってほしくはない。いや、スポーツ新聞もジャニーズとベッタリ、ということは知ってはいるのだけれども……。

 ちなみに、「ジャニー喜多川と野球」についてのスポーツ紙記事であれば、中日スポーツの「ジャニーズは野球愛から始まった」(https://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2019071402000184.html)がオススメ。事実関係だけを押さえ、それでいて父親のこと、交友関係、事務所の原点がわかる内容になっている。きちんとした仕事をしているスポーツ紙があることも記しておきたい。

(文=オグマナオト)

苦戦続きのNHK大河『いだてん』が第2部から面白くなる2つの理由

 どうしてこれほど“内容”と“数字”がかみ合わないのか? 万全の準備とトレーニングを積んでも結果が伴うとは限らない、スポーツの有り様 そのものにも感じてしまう。

 お題はNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』について。20週連続視聴率1桁台という大苦戦が続いているが、その内容に関しては確実に上昇傾向。特に、関東大震災を描いた第1部最終盤以降は、クドカン節も拍車がかかっている状態だ。

 いよいよ始まった第2部も、新主人公、阿部サダヲ演じる田畑政治の「口の韋駄天」ぶりが痛快極まりない。いきなり第1部主人公・金栗四三(中村勘九郎)を「おっさん」呼ばわりし、嘉納治五郎(役所広司)を「老害」と斬って捨てる自己批判ぶりは、ここまで見守ってきた視聴者すら切り離しにかかるのか宮藤官九郎、と見ていて心配になるほど。

 第1部で描いてきたのは、日本初のオリンピアン・金栗四三というアスリート視点からの明治・大正期のスポーツ事情。そこから一転、第2部でいよいよ昭和が始まり、幻の東京オリンピックと1964年 東京オリンピックの実現へ……。日本スポーツ史における新たなる偉人たちがここから先、どう新時代を切り開いていくのか。確実に面白くなりそうな予感しかしない。

 大河らしくないとか、おっさんしか出てこないとか、場面転換が早すぎるとか、ナレーションが聞き取りにくいとか(それは確かにそうだけど)、散見するマイナス要素に引っ張られて見逃してしまうのはあまりにももったいない。

 第2部がスタートしたばかりの今なら途中参加の好機だし、これまでのマイナス(と言われがちな)要素が一気に変換しそうな気配なのだ。そこで、大きく2つの点から、『いだてん第2部』の楽しみな点を整理してみたい。

女性アスリートのパイオニアたちが続々登場

 よく言われる“大河らしさ”といえば、女性キャストたちの存在感を抜きには語れない。まさにこの点こそ、『いだてん』第1部に少なかったもの。天狗倶楽部を筆頭に汗ばむ男たちが占拠し、ほぼほぼ「おっさんたち」の物語だった。「スポーツは男性のもの」という時代背景だったとはいえ、あまりにも画面が暑苦しかったのも事実だ。

 だが、第1部後半で描かれ始めた女性スポーツの萌芽がいよいよ花開くのが第2部であり、次の7日放送回こそ、その最初のクライマックスともいえる日本人女性第1号オリンピアン、人見絹枝の物語だ。演じるのはダンサーとしても知られる菅原小春なだけに、スポーツドラマにありがちな「スポーツシーンがぎこちない」といったギャップもないと期待していい。

 制作サイドとしてもここが肝と捉えているようで、演出には『モテキ』などでおなじみの大根仁を起用する熱の入れよう。大根は第1部でも一度演出を担当しているが、NHKの人間以外が大河の演出を務めるのは大根が第1号だという。第1号には第1号で、ということだろう。

 ちなみに大根、自身のTwitterで「はっきり言って自信作です。自己評価は10年に一本作れるか作れないかレベルです」と断言。また、音楽担当の大友良英も自身のTwitterで「来週のいだてん『人見絹枝物語』本当に本当に大好きな回なんです。いつも見てない人も、 ぜひぜひこの回だけでも見てやってください。前後を知らなくても充分伝わる内容だと思います」とつづる。ここまで言い切るその自信のほどを確かめずにはいられない。

 大河ドラマ好きには、たとえば戦国武将たちの知略ぶり、いわゆる“政(まつりごと)”を楽しみにしている人も多いはず。この点は『いだてん』第1部には皆無だったといえる。

 むしろ明治・大正期のスポーツは、そのほとんどが“個人”的なもの。だからこそ、日本初参加のオリンピックには自費渡航しなければならなかったし、周囲のサポートも心細く、そもそもスポーツに興じることへの理解度が少なかった。嘉納治五郎が何度も大臣と面会を試みようとするも、 門前払いを食うシーンばかりが描かれ、政治家は登場しなかった(第1部最後に東京市長が出てきたくらいだ)。

 だが、現状のスポーツ界はどうだろう? 「スポーツ庁」なる省庁までできてしまったことからも自明なように、「スポーツと政治」は、もはや切っても切れない関係性だ。だからこそ、オリンピックなんていう巨大箱物が成り立つわけで。その是非もあるだろうが、政治とスポーツが関わり合いを持つ端境期こそ、昭和初期のスポーツ界だったといえる。

 それを象徴するかのように、第2部冒頭では当時の大蔵大臣・高橋是清が登場。“しゃべりの韋駄天”田畑政治が高橋から助成金をいかにせしめていくかが、次回放送分で描かれるはず。ちなみに、高橋を演じるのは、今年3月に亡くなったショーケンこと萩原健一。『いだてん』が遺作となったわけだが、とても死期が迫っていたとは思えない眼光の鋭さ、存在感を醸し出している。この「最後のショーケン」を見るだけでも『いだてん』視聴の価値はあると思う。

 また、田畑とライバル関係で描かれている朝日新聞の同僚・河野一郎(桐谷健太)も、後に政治家に転身し(現・外務大臣の河野太郎のおじいちゃんだ)、1964年の東京オリンピック担当大臣を務める人物。今後、東京オリンピック開催に向けて、政治家たちと“しゃべりの韋駄天”がどのような交渉を重ね、利害関係を結んでいくのか? まさに、オリンピックという祭り事と政が交差していくさまは、今から楽しみでならない。

 このほかにも、ここから描かれるのは日本スポーツ躍進の過程と、オリンピック実現という苦難の道。そこにはとっぴなアイデアの数々があったことは想像に難くない。それら“史実”をクドカンがどう料理してくれるのか? 第1部でも、「さすがに盛りすぎ」と感じるほど史実だった、ということが多かっただけに非常に楽しみだ。

 また、『あまちゃん』で東日本大震災を描き、『いだてん』第1部で関東大震災における生と死の有り様を見事に描いてみ せたクドカンが、『いだてん』第2部では太平洋戦争をどのように描くのか?  視聴率という数字にめげることなく、ゴールテープを切る最後まで、いまのテンションが保たれることを願うばかりだ。

(文=オグマナオト)

苦戦続きのNHK大河『いだてん』が第2部から面白くなる2つの理由

 どうしてこれほど“内容”と“数字”がかみ合わないのか? 万全の準備とトレーニングを積んでも結果が伴うとは限らない、スポーツの有り様 そのものにも感じてしまう。

 お題はNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』について。20週連続視聴率1桁台という大苦戦が続いているが、その内容に関しては確実に上昇傾向。特に、関東大震災を描いた第1部最終盤以降は、クドカン節も拍車がかかっている状態だ。

 いよいよ始まった第2部も、新主人公、阿部サダヲ演じる田畑政治の「口の韋駄天」ぶりが痛快極まりない。いきなり第1部主人公・金栗四三(中村勘九郎)を「おっさん」呼ばわりし、嘉納治五郎(役所広司)を「老害」と斬って捨てる自己批判ぶりは、ここまで見守ってきた視聴者すら切り離しにかかるのか宮藤官九郎、と見ていて心配になるほど。

 第1部で描いてきたのは、日本初のオリンピアン・金栗四三というアスリート視点からの明治・大正期のスポーツ事情。そこから一転、第2部でいよいよ昭和が始まり、幻の東京オリンピックと1964年 東京オリンピックの実現へ……。日本スポーツ史における新たなる偉人たちがここから先、どう新時代を切り開いていくのか。確実に面白くなりそうな予感しかしない。

 大河らしくないとか、おっさんしか出てこないとか、場面転換が早すぎるとか、ナレーションが聞き取りにくいとか(それは確かにそうだけど)、散見するマイナス要素に引っ張られて見逃してしまうのはあまりにももったいない。

 第2部がスタートしたばかりの今なら途中参加の好機だし、これまでのマイナス(と言われがちな)要素が一気に変換しそうな気配なのだ。そこで、大きく2つの点から、『いだてん第2部』の楽しみな点を整理してみたい。

女性アスリートのパイオニアたちが続々登場

 よく言われる“大河らしさ”といえば、女性キャストたちの存在感を抜きには語れない。まさにこの点こそ、『いだてん』第1部に少なかったもの。天狗倶楽部を筆頭に汗ばむ男たちが占拠し、ほぼほぼ「おっさんたち」の物語だった。「スポーツは男性のもの」という時代背景だったとはいえ、あまりにも画面が暑苦しかったのも事実だ。

 だが、第1部後半で描かれ始めた女性スポーツの萌芽がいよいよ花開くのが第2部であり、次の7日放送回こそ、その最初のクライマックスともいえる日本人女性第1号オリンピアン、人見絹枝の物語だ。演じるのはダンサーとしても知られる菅原小春なだけに、スポーツドラマにありがちな「スポーツシーンがぎこちない」といったギャップもないと期待していい。

 制作サイドとしてもここが肝と捉えているようで、演出には『モテキ』などでおなじみの大根仁を起用する熱の入れよう。大根は第1部でも一度演出を担当しているが、NHKの人間以外が大河の演出を務めるのは大根が第1号だという。第1号には第1号で、ということだろう。

 ちなみに大根、自身のTwitterで「はっきり言って自信作です。自己評価は10年に一本作れるか作れないかレベルです」と断言。また、音楽担当の大友良英も自身のTwitterで「来週のいだてん『人見絹枝物語』本当に本当に大好きな回なんです。いつも見てない人も、 ぜひぜひこの回だけでも見てやってください。前後を知らなくても充分伝わる内容だと思います」とつづる。ここまで言い切るその自信のほどを確かめずにはいられない。

 大河ドラマ好きには、たとえば戦国武将たちの知略ぶり、いわゆる“政(まつりごと)”を楽しみにしている人も多いはず。この点は『いだてん』第1部には皆無だったといえる。

 むしろ明治・大正期のスポーツは、そのほとんどが“個人”的なもの。だからこそ、日本初参加のオリンピックには自費渡航しなければならなかったし、周囲のサポートも心細く、そもそもスポーツに興じることへの理解度が少なかった。嘉納治五郎が何度も大臣と面会を試みようとするも、 門前払いを食うシーンばかりが描かれ、政治家は登場しなかった(第1部最後に東京市長が出てきたくらいだ)。

 だが、現状のスポーツ界はどうだろう? 「スポーツ庁」なる省庁までできてしまったことからも自明なように、「スポーツと政治」は、もはや切っても切れない関係性だ。だからこそ、オリンピックなんていう巨大箱物が成り立つわけで。その是非もあるだろうが、政治とスポーツが関わり合いを持つ端境期こそ、昭和初期のスポーツ界だったといえる。

 それを象徴するかのように、第2部冒頭では当時の大蔵大臣・高橋是清が登場。“しゃべりの韋駄天”田畑政治が高橋から助成金をいかにせしめていくかが、次回放送分で描かれるはず。ちなみに、高橋を演じるのは、今年3月に亡くなったショーケンこと萩原健一。『いだてん』が遺作となったわけだが、とても死期が迫っていたとは思えない眼光の鋭さ、存在感を醸し出している。この「最後のショーケン」を見るだけでも『いだてん』視聴の価値はあると思う。

 また、田畑とライバル関係で描かれている朝日新聞の同僚・河野一郎(桐谷健太)も、後に政治家に転身し(現・外務大臣の河野太郎のおじいちゃんだ)、1964年の東京オリンピック担当大臣を務める人物。今後、東京オリンピック開催に向けて、政治家たちと“しゃべりの韋駄天”がどのような交渉を重ね、利害関係を結んでいくのか? まさに、オリンピックという祭り事と政が交差していくさまは、今から楽しみでならない。

 このほかにも、ここから描かれるのは日本スポーツ躍進の過程と、オリンピック実現という苦難の道。そこにはとっぴなアイデアの数々があったことは想像に難くない。それら“史実”をクドカンがどう料理してくれるのか? 第1部でも、「さすがに盛りすぎ」と感じるほど史実だった、ということが多かっただけに非常に楽しみだ。

 また、『あまちゃん』で東日本大震災を描き、『いだてん』第1部で関東大震災における生と死の有り様を見事に描いてみ せたクドカンが、『いだてん』第2部では太平洋戦争をどのように描くのか?  視聴率という数字にめげることなく、ゴールテープを切る最後まで、いまのテンションが保たれることを願うばかりだ。

(文=オグマナオト)

”狂犬”加藤浩次の意外な一面がポロリ……長寿番組『スーパーサッカー』が今またアツい!

「なぜ、ビートたけしがサッカーを語るのか? あなたずっと“野球ファン代表”でしたよね?」

 そんな疑問を抱きながら見ていた番組草創期の『スーパーサッカー』(TBS系)がなんだか懐かしいが、1993年のJ開幕とともに産声を上げたこの番組も、今年で27年目。もう立派な長寿番組だ。

 この間、メインMCは生島ヒロシから徳永英明へ。その徳永が病に倒れ、加藤浩次が緊急登板してから数えても、もう18年。コーナー企画だけでなく、放送時間や曜日も含め紆余曲折、流浪の旅を続けてきたこの番組が、今また面白い状況になっている。

 今の『スーパーサッカー』の魅力について語る前におさらいしておきたいのは、今の時代におけるスポーツ番組の立ち位置の難しさについてだ。

 開催中のコパ・アメリカもそうだし、普段のJリーグも含め、いまやスポーツコンテンツの多くは「ダ・ゾーン」をはじめ、ウェブ媒体を中心に楽しむ時代。リアルタイムで見られなくても、あとからでもフルタイム視聴ができる上に、ダイジェストもご丁寧にまとめてくれる状況だ。プロ野球に至っては、一球ごとの結果がネット速報でわかってしまう時代に、後追いのスポーツ番組ができることはあるのか? 意義はあるのか? 

 そんな置かれた状況をしっかり理解した上で打ち出しているであろう、『スーパーサッカー』の独自企画がどれも魅力的。「ここでしか見られません」という企画が多く、久しぶりに「今週もスパサカ楽しみだな」という回が続いているのだ。

 そのひとつが、月1企画「MV−1」。番組自ら、「中継映像には映らない、スパサカ独自カメラ(その名も「俯瞰でスパサカメラ」)で、最もサッカーの面白さが伝わる映像に月イチで注目 」とコーナー趣旨を説明するところに、「今の時代、こうやってサッカーの魅力を伝えてやる!」という気概が感じられる。

 16日深夜放送回では、コパ・アメリカにも出場する売り出し中のFW前田大然の魅力である「スピード」について、番組独自映像で紹介。中継映像ではボールを奪う直前の動きしかわからないが、俯瞰カメラだからこその“動き出しの一歩目からの速さ”がよくわかる仕掛けになっていた。これはまさにスタジアムで観ていなければ発見できない(というか、観ていてもなかなか気づけない)視点。マニアックでありつつ、サッカーの奥深さ、前田の異能なスピード感が一目瞭然になる好企画だったと思う。

 この「俯瞰でスパサカメラ」以外にも、試合結果を伝える際には、随所に配置する「サポーターマークカメラ」「監督マークカメラ」、ときには「ジーコマークカメラ」といったオリジナル映像を差し込むとこで、スポーツニュースでは訴求しきれない臨場感を演出している。

 そして、もうひとつの目玉企画が「ぜんぶ見る大作戦」。初回の「歴代アシストKING」から始まり、「歴代ヘディングKING」「歴代PKストップKING」「歴代ボレーKING」と、これまでに4回放送。Jリーグ27年の歴史から“公式記録には残りにくい記録と名場面”を振り返り、過去に番組で取り上げてきた膨大な映像を再編集することで、それぞれの部門KINGを発掘していこう、という企画だ。

 四半世紀以上続く番組の過去素材から映像を集める、というのはなかなかの作業量のはず。こうした“スタッフの汗”を感じられるところは、とても好印象だ。また、「KING」といえば、番組初期の人気企画「水沼貴史のKINGは俺だ!!」を連想させる。こうした過去資産を生かすことも、ぽっと出のダ・ゾーンにはマネのできないことであり、老舗ならではの味わいだと思う。

 また、番組公式サイトでは放送に収まりきらなかった加藤と解説陣のやりとりを紹介する「アディショナルタイム」を随時アップ。権利関係上、ランキングで紹介した映像は使えないわけだが、それ抜きにしても「次も見たい」と思わせるやりとりがたっぷり堪能できる。

 たとえば、初回「歴代アシストKING」の「アディショナルタイム」では、解説の“元・得点王”福田正博の意外に多いアシスト数について取り上げ、福田が「俺の(数字) 、合ってんの? もうひとつ多ければ100位以内なんだけど。操作してよ! 忖度して!」とスタッフに詰め寄る場面が見ていておかしい。

 かと思えば、加藤はパスという“裏方的職人芸”の魅力について、「人生と一緒ですよ。派手な人生じゃなくても、そういう人、いっぱいいるんですよ。僕はそういう人、最近、目の当たりにしてるんですよ。地味でもいい人、いるんですよねぇ。そういう人から、いろんなことを学ばなきゃいけない」と、しみじみ語ってみせた。

 加藤といえば、『スッキリ』(日本テレビ系)での過激発言ばかりが注目を集めがち。でも、本当に好きなものだからこそにじみ出てくる言葉に、真の意味での魅力が詰まっているはず。そこには当然、ビートたけし時代に感じた違和感はない。そんな加藤の言葉とともに、老舗が提供する味わい深さを改めて堪能してはどうだろうか?

(文=オグマナオト)

日テレ『有吉×巨人』アンチ巨人・有吉弘行目線で見る、“巨人ファン”という生き物

「今はもう死語になりつつある『アンチ巨人』を作りたいんです。今、言われないですよね。それは絶対に復活させたい」

 これは、今月からプロ野球・読売巨人軍の新社長に就任した今村司氏の就任インタビューでのもの(※スポーツ報知より)。今村氏は元日本テレビの敏腕制作マンで、『ザ!鉄腕!DASH!!』の「DASH村」や『家政婦のミタ』などのヒット企画を連発した人物だという。

 そんな新社長の就任を見越してのことなのか、はたまた偶然か、今春から古巣の日本テレビでは、まさに「アンチ巨人」をテーマにした番組がスタートしている。その名も『有吉×巨人』だ。

 芸能界でも指折りの広島カープファン・有吉弘行を番組MCに起用し、「アンチ巨人による、巨人ファンのためのジャイアンツ応援番組」としてプロ野球開幕直前の3月29日に放送開始。以降、深夜1時35分からの隔週ペース、というなかなか認知されにくい放送枠でありながら、さすがの有吉というべきか、すでに強烈なインパクトを残している。

 見どころは、アンチ巨人の有吉を巨人ファンに導くため、あの手この手で巨人の魅力をプレゼンしていく芸能界巨人ファンたちの人選にある。

 初回と第2回は、巨人ファン歴44年のレッド吉田が登場。どんなに懸命に巨人の魅力をアピールしても、そのすべてを痛烈なセンター返しのように切り返していく有吉、という構図は、さながら連打が止まらないカープ打線のようで安心感があった。

 第3回と第4回は、原辰徳監督に扮した神奈月と、スペシャルゲストとしてX JAPANのギタリストPATAがサプライズ出演。「ひとりでバラエティに出るのは初めて」と当初は緊張していたPATAだったが、いざ巨人の話題となれば、その舌は軽やか。「本業は巨人ファン。副業のX JAPANで稼いだお金でグッズを買ったり、球場に行ったり……」と語り、本番中にもかかわらずビールをあおる自由人っぷり。

 そして、5月24日に放送された最新第5回では、巨人ファン筆頭格ともいえるナイツの塙宣之が登場し、助っ人として兄のはなわを招集。まさかのはなわ兄弟共演が無駄に豪華だ。滑りっぱなしだったレッド吉田とは打って変わって、太田プロと揉める山田邦子ネタで有吉を慌てさせたりと、塙らしい話術でいい勝負を演じていた。

 もちろん、NHK『球辞苑』レギュラーを務める塙だからこそ、野球に関するマニアックトークも充実。たとえば、原監督の代名詞「グータッチ」が今年は封印されている謎について、「原監督は球界のジャニー喜多川。演出家だからこそ、グータッチしないのには何か意図があるはず」と推察し、「おそらく、阿部慎之助が400号を打ったら解禁するんじゃないか」という塙予言を展開した。

 果たして、この予言が放送された1週間後の6月1日、阿部が通算400号を達成した試合でグータッチは見事に解禁、という的中ぶり。ただの居酒屋トークではない、深い洞察力も堪能できた。

 そして、大本営・日本テレビだけあって、他局ではまず見られない巨人レギュラー陣のインタビューも充実。選手の魅力紹介についても、ときには技術論、ときにはキャラクター紹介と、ストライクゾーンが幅広い。お笑い好きも野球好きも、その両方を納得させる作りになっているのは見事だ。

この番組を通して改めて気づかされるのは、巨人ファンという存在の捉えどころのなさ。母体が大きく、それでいて「巨人ファンらしさ」を定義しにくいことが、結果的に有吉視点ではツッコミどころにもなっている。

 昨年出版された、巨人ファンをテーマにした野球本『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(菊地高弘・著/イースト・プレス)でもこの巨人ファンの捉えどころのなさ、実態の希薄さについて言及されているのだが、この本では「巨人ファンの隠れキリシタン化」と評していたことを思い出した。

 ナベツネ元オーナーの傍若無人ぶりのせいか、はたまた球界バランスを崩しかねない巨大戦力のせいか、巨人ファンの中には大手を振って「自分は巨人ファンである」と宣言できない(しない)人が意外に多い。それと対比するかのように、番組内で有吉は自身のカープファン度について「自分は改宗しない」「敬虔なカープファンである」と、これまた宗教的に語っているのが興味深い。

 交流戦が始まり、普段よりも少しだけ他球団のファンを意識することが増えるこの時期。「野球ファンとは何か」を考える上でも、『有吉×巨人』はなかなか示唆に富む番組ではないだろうか。

 いずれにせよ、有吉が巨人ファンに寝返ることは100%ないだろうし、この番組で巨人ファンが増えることもあまり期待できないが、アンチ巨人の顕在化には一役買うかもしれない。でも、それこそがまさに、巨人の球団新社長が望んでいること。野球人気活性化にもつながることを大いに期待したい。

(文=オグマナオト)

サンドウィッチマンのほとばしる愛! W杯開幕前に見ておきたい、初心者向けコンテンツ

 日本開催のラグビーW杯開幕日(9月20日)まであと4カ月。盛り上がり始めたような、まだまだのような微妙な空気感がある。

 まあ、これまでのサッカーやオリンピックよろしく、“始まれば結局盛り上がる”国民性こそ、我らがニッポン。その意味で心配する必要はないのかもしれないが、もう少し事前情報やラグビーの知識を蓄えておきたいなと思っても“ちょうどいい情報”に出逢えない、という人は多いのではないだろうか。

 専門誌やスポーツ誌のインタビュー記事はちょっと難しいし、NHKとともに中継を牽引する日本テレビはというと、さまざまなバラエティでラグビー日本代表の面々を起用はするものの、ラガーマンは何トンの乗り物までスクラムで押せるのか? といった「いや、知りたいのはそういうことじゃないです」という場合が多い。

……と愚痴をこぼしても仕方がないので、本稿では「今からでも追いかけられるラグビービギナー向けコンテンツ」をいくつか紹介したい。

TBSラジオ『サンドウィッチマンのWe Love Rugby』

 高校ラグビー部出身の“ラグビー大好き芸人”サンドウィッチマンの2人がラグビー話で盛り上がる『サンドウィッチマンのWe Love Rugby』。もともとは『たまむすび』木曜日の5分コーナーとして始まった企画がパワーアップして帯番組に成長。現在は火~金、17時50分から毎日10分間、さまざまなゲストを招いてラグビートークに花を咲かせている。

 毎週、楽しみなのがゲストの人選だ。五郎丸歩といった元日本代表が来たかと思えば、先週は同じ“ラグビー大好き芸人”スリムクラブを招いてのにぎやかトーク。そして今週は、W杯の試合会場のひとつ、釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムの建設に尽力した元ラガーマンが登場……と、実に硬軟織り交ぜた構成が魅力的なのだ。

 いま最も売れている芸人ともいえるサンドウィッチマンからほとばしるラグビー愛を堪能するだけでも、贅沢な10分間といえる。

NHK サンデースポーツ2020『メイっぱいラグビー』

 NHKの副島萌生(そえじま・めい)キャスターを前面に押し出し、4月末から始まった新企画が「メイっぱいラグビー」。毎回、ラグビーのポジションひとつに焦点を当て、日本代表選手(もしくは元代表)にインタビュー。それぞれの役割の違い、特性、魅力を紹介していく。

 秀逸なのが、ポジションごとの特性を動物にたとえて紹介している点だ。初回の「プロップ」であれば、スクラムを組む上でチームの土台になる、として“象”。19日放送の「スクラムハーム」であれば、小柄な選手が華麗な身のこなしでパスをさばくから“猿”といった具合だ。

 よく聞くラグビーへの不満に「ルールが難しい」「ポジションごとの役割がわからない」といったものがあるが、これを解消できる企画といえる。

 ちなみに、プロップ紹介の回では元日本代表プロップで、11・15年のW杯に出場した畠山健介が登場。スクラムの極意として「プロップの選手は押すんじゃなくて耐えている」と解説してくれて、へぇ、とうなった次第。前述した日本テレビのスクラム企画で「乗り物を押す」としていたように、スクラムといえば押す描写ばかり。だが、実際には押す役割の選手がいて耐える役割の選手もいる、と知ることができるだけで、今後のスクラムの見方が変わるというもの。

 こういう、「そうだったのか!」を知りたいわけです。

 毎週火曜から土曜まで、web上で更新される日刊スポーツの連載コラムが「ラグビーW杯がやってくる」。代表の最新情報からラグビー界の多様な取り組み、裏方の悲哀、道具のうんちくまで、幅広い視点で“ラグビー界の今”を取り上げてくれる。

 たとえば今月なら、「なぜ、日本テレビが低視聴率でもラグビー中継にこだわるのか」という中継秘話を3回にわたって掲載。さながら、『プロジェクトX』や『プロフェッショナル 仕事の流儀』のようで非常に読み応えがあった。

 また、コラムではないが、20日掲載分では「畠山健介、ラグビー人気復活へ3要素の重要性訴える」と題して、前日に都内で行われたラグビーW杯機運の醸成を図るイベントの様子をレポート。またまた畠山が登場し、「日本ラグビーが強くなって、これでラグビー界が『変わる』と思ったけど…。代表が勝つ=競技普及や文化定着でないことを学んだ」と、前回W杯の熱が一過性のブームに終わってしまったことの課題を述べている点がとても興味深い。畠山さん、いい仕事してます。

J SPORTS『新古今HAKA集』

 最後にひとつ変わり種を。W杯が実際に始まったなら、試合内容や選手以外で話題になりそうなことがある。キックオフ前に行われる伝統儀式「ハカ」だ。

 チームを鼓舞しつつ、相手を威嚇するハカ・ダンスの圧倒的なパワーは、ラグビーがまったくわからなくても見る人を魅了するはず。全チームがこの「ハカ・ダンス」を踊るわけではないが、時には「ハカ・バトル」として大盛り上がりを見せることもある。

 そんな「ハカ」の魅力を紹介してくれるのが、J SPORTS『新古今HAKA集』。2017年の放送以来、不定期で再放送を繰り返していた人気企画が、気がつけばYouTubeでもアップされていた。10分弱のコンパクトサイズなので、ちょっと元気を出したいときにもオススメしたい。

(文=オグマナオト)