ラグビー、侍ジャパン、バレー……2019年のスポーツコンテンツに”リスペクト”はあった?

 あまり浸透していないが、2019~21年の3年間は、スポーツ界において「ゴールデン・スポーツイヤーズ」と呼ばれている。

 19年はラグビーW杯。20年はもちろん、東京オリンピック・パラリンピック。そして21年には関西ワールドマスターズゲームズと、3年連続で世界的な一大スポーツイベントが控えているからだ。

 その大事な3年間の初年度。スポーツを“伝える側”はどうだったか? 今年の総括的な意味も含めて振り返ってみたい。

 一言でまとめるならば、キーワードは「そこにリスペクトはあるのか?」。

 わかりやすい例として、今月8日、DAZNで中継された「Jリーグアウォーズ2019」を挙げたい。Jリーグ1年間の総決算として、MVPやベストイレブンなどの年間表彰を行う晴れの舞台にもかかわらず、今年のアウォーズはかつてないほど炎上してしまった。

 炎上理由はいくつもあるのだが、一番の要点は、かみまくる司会者&選手に寄り添わないプレゼンター役の芸能人、というキャスティングと演出面だ。いまだに芸能人を呼んでにぎやかしをしようという発想が、そもそも貧弱すぎる。

 仮にこれが地上波中継案件ならば、サッカーファン以外にも興味を持ってもらえるように、ということではまだわかる(もちろん、大反対だが)。でも、DAZNは有料視聴。明らかにサッカーファン、もしくはスポーツファンしか見にこない。なんなら、もっとサッカーファン向けのマニアックな企画、マニアックなゲスト人選をしたっていいはずだ。

 これ、サッカーファンでも試合じゃない表彰式は見てくれないのでは? という敬意を欠いた発想があったとしか思えないのだ。サッカーに、Jリーグに、サポーターにリスペクトがあれば、まず間違いなく選ばない演出方法といえる。

 そんな炎上案件において、数少ない救い、と思えたのは、炎上したひとりでもあるホストで実業家のローランド(ROLAND)が、アウォーズ当日、という異例の早さで謝罪コメントを発表したこと。そこにはこんな記述があった。

《フットボールに対してのリスペクト、選手・監督へのリスペクト、そしてガチ勢と呼ばれる三度の飯より、睡眠時間より、時には恋人よりもフットボール…(勿論自分もその1人だ)と言った方々へのリスペクトも今一度見直そうと思う》

 このローランドの反省の弁が、今年のJリーグアウォーズを企画立案した人、中継演出を担った人々にも届きますように、と願うばかり(そもそも、ローランドよりも謝罪すべき人はいるはずなのだが……)。

 Jリーグアウォーズのがっかり具合で思い出したのは、ラグビー日本代表に対するW杯前の扱いについてだ。

 結果的にラグビーW杯は沸きに沸き、日本代表が掲げた「ONE TEAM」は流行語大賞まで受賞。19年のスポーツ界で象徴的な存在となったラグビー。ただ、大会前は「本当に盛り上がるのか?」と、いぶかしがる層が多かったのは間違いない。

 そんな不安があったからか、NHKとともに地上波中継局の責務を担った日本テレビでは、W杯前に日本代表選手を取り上げる際、バラエティで(もしくはバラエティ的なノリで)扱う場面が多かった。

 でも、そんな小手先の企画や演出よりも、選手たちの死力を尽くした試合そのものの力があればちゃんと盛り上がる、ということが今回、如実になったはず。選手にリスペクトを欠いたバラエティ的なノリでは決してないのだ。

 むしろ、事前の盛り上げ役という意味で一翼を担っていたと思うのは、ラグビーの素晴らしさ、ラガーマンたちの猛々しさを端的に表現していた数々のラグビーCMであり(中でも傑作は、三井住友銀行の「ラグビー日本代表 挑戦と継承」篇/参照記事1)、W杯開幕直前まで放送していたTBSドラマ『ノーサイドゲーム』(参照記事2)だ。

 特に『ノーサイドゲーム』の熱量はすさまじかった。あれほどスポーツ描写に、スポーツそのものにリスペクトのあるドラマを私は知らない。この作品で「ジャッカル」というラグビー用語を覚え、W杯で「あ、ドラマで見たやつだ」となった人もきっと多いはず。日本テレビの宣伝になってしまう……という矮小な考え方にはならず、日本ラグビーを盛り上げようとこの企画を徹底した制作陣には、ただただ敬意を評したい。

 こんなにもラグビーへの愛とリスペクトに満ちたコンテンツがあったことがもはや遠い過去のように、W杯後はまたバラエティ&ワイドショー的な取り上げ方ばかりになっているのがとても心配。ライト層への継続した訴求は必要なこととはいえ、これでは飽きられるのも早いのではないか、と危惧してしまう。

 このほかにも、今年、拙コーナーで取り上げる上で意識してきたのは「伝える側にリスペクトがあるかどうか」。侍ジャパンの面々に意味不明で不可思議なニックネームをつけた日刊スポーツについてもそう(参照記事3)。相も変わらず競技とは関係のないところでの盛り上げに躍起になるバレーボールもそう(参照記事4)。どうしても、目先の集客、ネットでの“あえてのプチ炎上”を目的に、選手に、ファンに、そしてスポーツそのものにリスペクトが足りないものはまだまだ多い、という印象を受けた1年だった。

 そんななかでも、もちろんリスペクトに満ちたコンテンツもあった。その一例が上述したラグビードラマやCMであり、見事に完走したNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』もそうだ(参照記事5)。

 大河ドラマ史上初の平均視聴率1桁台(全47話で8.2%)という視聴率ばかりが話題になった『いだてん』。だが、そんな目先の数字にとらわれることなく、見事に日本スポーツの始まりから東京オリンピック1964までを描いてみせた。間違いなく、スポーツドラマ史に残る傑作だった。

 そんな『いだてん』で貫かれたのは、先人たちに対するリスペクトだ。日本スポーツ黎明期の知られざる偉人たちに光を当て、膨大な歴史的資料や選手たちの日記、そして記録を総ざらいした本作は、ドラマとしてはもちろん、スポーツ文化史的に見ても稀有な作品だった。ニュースになるほどの低視聴率のなか、スポーツへの敬意をブレずに貫けたのは、NHKだからこそ、というべきなのだろうか。

 そんなNHKは先日、来る東京オリンピック・パラリンピックに向けて、自局のキャッチフレーズを発表した。その言葉は「挑戦に、リスペクトを。」……NHKはやっぱりわかっているなぁと、年の瀬にホッと一息ついた次第。

 いよいよオリンピック本番を迎える2020年。来年も、そして来年こそ、スポーツを伝える視線にリスペクトが徹底されんことを。

(文=オグマナオト)

NHK-BS1『球辞苑』徳井義実不在のピンチをチャンスに変えた、ナイツ塙と岡田圭右

 今年もまた、プロ野球ファンがオフを乗り切るために欠かせない番組が帰ってきた。12月1日深夜、「初の生放送&2時間特番」という形でスタートしたNHK-BS1『球辞苑~プロ野球が100倍楽しくなるキーワードたち~』だ。

 プロ野球シーズンオフの恒例番組も、もう6年目。究極の野球辞典『球辞苑』の編さんを目的に、野球界で話題となったキーワードを、選手・研究者のVTR証言を基にスタジオトークで研究していく、というこの番組。過去5年で、すでに47ものキーワードを扱ってきた。

 実は本コーナーにおいて、3年前にも『球辞苑』について紹介したことがある(参照記事)。そのときに記した番組の特徴説明が我ながらわかりやすいと思うので、もう一度記しておきたい。

《ランチビュッフのように、企画もタレントもとにかく数を並べようとする多くのスポーツ特番と違い、『球辞苑』の魅力は「一品」勝負であること。そしてその「一品」が、本来であればメニューの裏面に小さく載っているようなキーワードばかりなのがたまらない。(中略)自ら重箱の隅を突いていくようなこの「狭さ」こそが『球辞苑』の肝だ。狭い分、とにかく深く深く掘り下げていく》

 この魅力はそのままに、今回、見事に「ピンチをチャンスに」変えて、また新たなパワーを得たように思う。

 ピンチとはもちろん、MC(編集長)を務めてきたチュートリアル・徳井義実の、税の申告漏れ騒動による活動自粛だ。番組に出られない徳井編集長に代わって、これまで「記者」として番組レギュラーだったナイツ・塙宣之が「編集長代行」に就任。そして、ますだおかだ・岡田圭右が新たに「記者」として番組に加わった。

 まずは、さすがの塙だ。番組冒頭から「我がジャイアンツも状況として“深刻”な……あ! “しんこく”という言葉を使ってしまいました」「今日は緊張して“ぜいぜい”言ってしまいそう……あ! “ぜい”という言葉を使ってしまいました」「今日は“もれなく”生放送……あ! “もれなく”という言葉を使ってしまいました」という“言い訳”とともに何度も謝罪。さらに、ニュースを挟んだ後半戦冒頭にも「よしみー、見てるかー」と挨拶。「こらこら、“よしみ”って誰よ」という岡田のツッコミに対し、「え? 中日の吉見一起投手ですけど、何か?」とボケて見せ、徳井の例の騒動をしっかり笑いに変えてくれた。

 これをちゃんとシーズン初回の番組冒頭でやってくれたことが視聴者に対しての一番の「誠意」だと思う。隠せばいいってものじゃない。なかったことにするのも、これまでずっと見てきた視聴者を置き去りにする行為。その意味で、“最高の立ち上がり”と言っていいのではないか。

 くしくもこの日のテーマは「初回」。野球の試合において初回の入り方がいかに難しいか。最初に何を投げるべきか。バッターは最初に何を待つべきか……といった細かすぎる議題を掘り下げていったのだが、結局、「初回の入り方」に最も気を使っていたのが塙だった、というわけだ。

 そして、見事なキャスティングだと思ったのが岡田圭右だ。この日だけのゲストだったのか、今後もレギュラーとして出演し続けるのかは不明だが、岡田の存在はこの番組をしっかり引き締め、そして深みを持たせていた。

 まずは、番組を“回す力”に長けていること。そもそも、MC役になった塙は、本来であればボケ担当であり、番組に緩急をもたらす役のはず。実際、この日の初回放送では、“仕切り”という部分では機能していない場面もあった。

 その点、ボケ役のようでいて、もともとツッコミ担当の岡田。塙にツッコみ、ゲストの解説者や現役選手にも“敬意のこもったツッコミ”で場を和ませ、塙に代わって的確に番組を進行させる場面もあった。

 編集長的な役割として塙の存在は不可欠だが、MCという視点で見れば、岡田抜きにこの日の放送はあり得なかったと思う。

 岡田の存在に安心感があるのは、仕切りの力以上に、野球の知識、野球史への造詣も深いから。大ファンを公言するオリックスの話題はもちろんのこと、VTRで流れる昔の映像に一瞬だけ映ったシーンについて、「あ、サブマリン山田久志」といった具合にとっさに選手名やエピソードが出てくるのは、しっかりとした知識と野球観がなければできないこと。生放送だったことで、こうした岡田のとっさのつぶやきが味わい深かった。

 結局、徳井は“降板”ではなく、塙の立場はあくまでも編集長“代行”。だから、いつの日か『球辞苑』の編さん作業に徳井も戻ってくるのかもしれない。なんなら1年後、テーマ「契約更改」みたいな話題で戻っていそうだ。懐の深いこの番組なら、そのくらいのことはもう考えていそうな気がする。

(文=オグマナオト)

侍ジャパン10年ぶりの世界一奪還の裏に、野村克也のID采配?

 スポーツ系の情報番組やスポーツニュースは、時に番組や局を横断して視聴することで見えてくる深みがある。

 野球やサッカー、今年でいえばラグビーW杯のような注目競技の場合、各番組で解説者が「考察」や「論」を示してくれる。ただ、元選手や名将といっても、すべてを的確に解説できるわけではない。時には“推論”で語り、それが外れている場合がある。

 ダルビッシュ有など「モノ言う選手」の場合、自らのSNSなどを使って「(○○が)あんなこと言ってましたけど、全然そんなことないですよ」といったアンサーを示してくれて、その「答え合わせ」が楽しくもある。

 そして、選手自身が発信しなくても、時にこの「答え合わせ」を偶然、他局のニュースがしてくれることがあるのだ。そんな象徴的なシーンが、侍ジャパンをめぐるニュースであったので記しておきたい。

 事の発端は、『S★1』(TBS系)でのノムさんこと野村克也氏の解説から。16日に行われた世界野球プレミア12、スーパーラウンド第4戦の日本対韓国戦でのこと。この試合では日本の先発、岸孝之(楽天)が6失点。結果的には10対8の乱打戦を制して侍ジャパンが勝利したわけだが、翌日に連夜の韓国戦(決勝戦)を控え、「こんなに打たれて、日本の投手陣は大丈夫?」と思ったファンも多かったはずだ。

 そんな視聴者の声を代弁したのか、この日の『S★1』名物「ノムさんぼやき解説」では、バッテリーへの苦言が目立つ形に。実際、投手の配球について、こんなコメントがあった。

「このキャッチャー、インコース好きだね。インコースを攻めるのが強気、とキャッチャーは勘違いしちゃいかん」

 翌17日の決勝戦。先発の山口俊(巨人)は初回に打ち込まれてマウンドを降りたものの、その後を受けた救援陣が見事な継投。侍ジャパンが10年ぶりに世界一を奪還した。

 興味深かったのが、優勝から一夜明けた18日の『報道ステーション』(テレビ朝日系)スポーツコーナーでの一幕だ。この日は侍ジャパンの稲葉篤紀監督が生出演し、今大会での戦いぶりや采配の裏側について、稲葉監督自らが“名将解説”。その中で、ノムさんがぼやいた「岸のインコース攻め」が話題になった。

「岸投手から、インコースをどんどん攻めたほうがいいですか? と提案があったんです」と明かした稲葉監督。つまり、ある意味で消化試合になってしまった16日の韓国戦で相手打線を抑えることよりも、翌日の決勝戦を見据えて「韓国にインコースを意識させる」という、あえての配球だったわけだ。

「自分の投球よりも、チームのために自分が犠牲になって、布石を打ってくれたんです」という稲葉監督の言葉に、「ノムさん、聞いてますか」と言いたくなった次第。侍ジャパンの監督に就任するまで、解説者として籍を置いていた古巣の『報道ステーション』だからこそ、稲葉監督もここまで明かしたのかもしれない。

 でも、よくよく考えれば、ノムさんならば「あえてのインコース攻め」なんて当然わかっていそうなもの。思い出すのは1995年の日本シリーズ、ヤクルト対オリックスでの野村ID采配だ。

 ヤクルトを率いていた当時の野村監督は、オリックスのイチローを封じるため、シリーズが始まる前からメディアを使っての情報戦を展開。「イチローを封じるには、内角を攻めずしてありえない。内角を攻める。内角を生かす。内角を意識させる」と公言(※「スポーツ報知」より)することで、あえてイチローにインコースを意識させ、天才バッターの調子を崩して日本一を手にした。

 あの日本シリーズを、ヤクルトの選手として直々に学んだ稲葉監督。その率いるチームが「あえてのインコース攻めを実践した」という点も、なかなかに味わい深い。

(文=オグマナオト)

ラップ調、ニックネーム……日刊スポーツ「侍ジャパン記事」がスベリまくり!

 4年に一度のラグビーW杯の次は、4年に一度の野球最強国決定戦「世界野球プレミア12」。開幕戦での薄氷を踏むような勝利に、思わず「大丈夫!?」と不安になった侍ジャパンだが、2戦目は危なげなく完勝。無事、2次ラウンド進出を決めた。

 その裏で、「本当に大丈夫?」と心配が止まらない野球の話題があった。侍ジャパンの初戦が行われた5日、日刊スポーツがちょっと(というかだいぶ)おかしい記事を2本立て続けにアップしたのだ。

▼「侍開幕投手の山口俊、Free Styleでかます」
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201911050000007.html

 大事な大事な開幕戦に挑もうという日本の背番号18・山口俊の話題について、「独断と偏見で、勝手にラップ調で、ぶちかましてみました。行くぜ、東京、つかむぜ、頂上」と、まさかのラップ調で記事に仕立てたのが問題作その1。

 直前の強化試合において、投手陣で唯一打ち込まれたのが山口。だからこそ、ファンからすれば「調子はどうだ?」「調整はうまくいっているのか?」と不安になるところ。だが、そんな「選手の最新情報」を伝えようという気概も感じない記事構成に愕然とするばかり。

 しかも、オチで用意されていた文言は、「防ぐぜ、インベーダー。You Know? 俺が日の丸ディフェンダーだ」……いやいや、野球で「ディフェンダー」は使わないでしょ!とツッコまずにはいられなかった。

 この記事、何が問題かといえば、山口の情報が伝わらないばかりか、山口自身がスベっているように感じてしまうこと。取材を受けた結果がこんな文章だったとして、次にまたメディアの取材を受けようと思ってくれるだろうか?

 そしてこのラップ記事以上に問題作が次の記事だ。

▼「侍28人/ニッカンがニックネーム付けてみました」
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201911050000098.html

 大規模なスポーツイベントの際、メディアが選手に「ニックネーム」「キャッチフレーズ」をつけるのは常套手段。一方で、メディア側の“勝手につける行為”自体を嫌う層も少なくない。

 筆者自身もどちらかといえば好きではないが、「ニックネーム」「キャッチフレーズ」の必要性はわかっているつもりだ。たとえば、TBSが中継する『世界陸上』の場合、海外選手にキャッチフレーズがあったおかげで目線付けができた、というケースも確かにある。

 ただ、今回の日刊スポーツのニックネーム、これはさすがにあり得ない。全選手「コレジャナイ感」満載で、とにもかくにもダサすぎるのだ。これはもう、実際にファンの間で広めていこう、とか、今後の記事でも使っていこう、という考えもなく、ただただ炎上狙いでやったとしか思えない悪質さが垣間見える。

 文字にするのも恥ずかしいのだが……、外崎修汰(西武)につけた「場所を選ばず奏でるリンゴスター」を例に見ていこう。

 愛称なのに長すぎる、という減点要素は一旦、置いていこう。プレースタイルが連想しにくい、という減点要素もあるがひとまず忘れよう。それ以上にこのニックネームが問題なのは、外崎であれば「アップルパンチ」というすでに市民権を得ている愛称があるにもかかわらず、それを無視していること。ファンが親しみを込めて使う呼び名をないがしろにするって、一体なんなのだろう?

 前述した『世界陸上』のニックネームをどのようにつけているのか、以前、陸上中継に携わるTBS局員に話を聞いたことがある。パッとすぐ思いつくものもあれば、なかなかしっくりくるものがなく、何度も企画会議にかけ、実際にその呼び名を叫ぶことになるアナウンサーとも協議を重ねながら、ようやくひとつのニックネームが生まれることも……といった“生みの苦しみ”について語ってくれた。

 一方のニッカンはどうだろう? これ、明らかに野球をよくわかっていない記者に「オフシーズンだからちょっとやってみろ」と書かせたようにしか思えないのだ。仮に野球取材歴の長い記者だとしたら、その審美眼を疑わざるを得ない。と同時に、 “世界野球”と銘打った大会への報道姿勢として、あまりにも失礼ではないだろうか。

 先日閉幕したラグビーW杯があれほど盛り上がったのは、世界最高の技とパフォーマンス、本気のぶつかり合いという「ラグビー最高峰の面白さ、素晴らしさ」をそのまま味わうことができたからだ。

 超一流アスリートの本気のパフォーマンスは、ヘタな脚色も味付けも一切不要。最高の食材はそのまま味わうのが一番うまい、という日本料理を堪能するような喜びがあった。

 そんなスポーツ本来の楽しみ方を知った直後に、この記事ですか……。世間とのズレこそが、一番の問題点なのかもしれない。

(文=オグマナオト)

ラップ調、ニックネーム……日刊スポーツ「侍ジャパン記事」がスベリまくり!

 4年に一度のラグビーW杯の次は、4年に一度の野球最強国決定戦「世界野球プレミア12」。開幕戦での薄氷を踏むような勝利に、思わず「大丈夫!?」と不安になった侍ジャパンだが、2戦目は危なげなく完勝。無事、2次ラウンド進出を決めた。

 その裏で、「本当に大丈夫?」と心配が止まらない野球の話題があった。侍ジャパンの初戦が行われた5日、日刊スポーツがちょっと(というかだいぶ)おかしい記事を2本立て続けにアップしたのだ。

▼「侍開幕投手の山口俊、Free Styleでかます」
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201911050000007.html

 大事な大事な開幕戦に挑もうという日本の背番号18・山口俊の話題について、「独断と偏見で、勝手にラップ調で、ぶちかましてみました。行くぜ、東京、つかむぜ、頂上」と、まさかのラップ調で記事に仕立てたのが問題作その1。

 直前の強化試合において、投手陣で唯一打ち込まれたのが山口。だからこそ、ファンからすれば「調子はどうだ?」「調整はうまくいっているのか?」と不安になるところ。だが、そんな「選手の最新情報」を伝えようという気概も感じない記事構成に愕然とするばかり。

 しかも、オチで用意されていた文言は、「防ぐぜ、インベーダー。You Know? 俺が日の丸ディフェンダーだ」……いやいや、野球で「ディフェンダー」は使わないでしょ!とツッコまずにはいられなかった。

 この記事、何が問題かといえば、山口の情報が伝わらないばかりか、山口自身がスベっているように感じてしまうこと。取材を受けた結果がこんな文章だったとして、次にまたメディアの取材を受けようと思ってくれるだろうか?

 そしてこのラップ記事以上に問題作が次の記事だ。

▼「侍28人/ニッカンがニックネーム付けてみました」
https://www.nikkansports.com/baseball/news/201911050000098.html

 大規模なスポーツイベントの際、メディアが選手に「ニックネーム」「キャッチフレーズ」をつけるのは常套手段。一方で、メディア側の“勝手につける行為”自体を嫌う層も少なくない。

 筆者自身もどちらかといえば好きではないが、「ニックネーム」「キャッチフレーズ」の必要性はわかっているつもりだ。たとえば、TBSが中継する『世界陸上』の場合、海外選手にキャッチフレーズがあったおかげで目線付けができた、というケースも確かにある。

 ただ、今回の日刊スポーツのニックネーム、これはさすがにあり得ない。全選手「コレジャナイ感」満載で、とにもかくにもダサすぎるのだ。これはもう、実際にファンの間で広めていこう、とか、今後の記事でも使っていこう、という考えもなく、ただただ炎上狙いでやったとしか思えない悪質さが垣間見える。

 文字にするのも恥ずかしいのだが……、外崎修汰(西武)につけた「場所を選ばず奏でるリンゴスター」を例に見ていこう。

 愛称なのに長すぎる、という減点要素は一旦、置いていこう。プレースタイルが連想しにくい、という減点要素もあるがひとまず忘れよう。それ以上にこのニックネームが問題なのは、外崎であれば「アップルパンチ」というすでに市民権を得ている愛称があるにもかかわらず、それを無視していること。ファンが親しみを込めて使う呼び名をないがしろにするって、一体なんなのだろう?

 前述した『世界陸上』のニックネームをどのようにつけているのか、以前、陸上中継に携わるTBS局員に話を聞いたことがある。パッとすぐ思いつくものもあれば、なかなかしっくりくるものがなく、何度も企画会議にかけ、実際にその呼び名を叫ぶことになるアナウンサーとも協議を重ねながら、ようやくひとつのニックネームが生まれることも……といった“生みの苦しみ”について語ってくれた。

 一方のニッカンはどうだろう? これ、明らかに野球をよくわかっていない記者に「オフシーズンだからちょっとやってみろ」と書かせたようにしか思えないのだ。仮に野球取材歴の長い記者だとしたら、その審美眼を疑わざるを得ない。と同時に、 “世界野球”と銘打った大会への報道姿勢として、あまりにも失礼ではないだろうか。

 先日閉幕したラグビーW杯があれほど盛り上がったのは、世界最高の技とパフォーマンス、本気のぶつかり合いという「ラグビー最高峰の面白さ、素晴らしさ」をそのまま味わうことができたからだ。

 超一流アスリートの本気のパフォーマンスは、ヘタな脚色も味付けも一切不要。最高の食材はそのまま味わうのが一番うまい、という日本料理を堪能するような喜びがあった。

 そんなスポーツ本来の楽しみ方を知った直後に、この記事ですか……。世間とのズレこそが、一番の問題点なのかもしれない。

(文=オグマナオト)

ラグビーW杯、見るべきはスポーツ番組よりCM? 三井住友銀行ラグビーCMが素晴らしすぎ!

 まだまだラグビーW杯は続くのに、日本の敗戦とともに「W杯終わっちゃったなぁ」とう声を耳にする。まあ、その気持ちもわからないではない。それほど、世界の超人たちと真っ向勝負を挑む日本代表の戦いぶりには心を動かされるものがあった。

 代表選手たちの勇姿をまた見たい! と思っても、トップリーグの開幕は来年1月。「ラグビー代表ロス」になる人もいるのではないか。

 そんなときにオススメしたいのが、歴史を知ることだ。今回、躍進した日本代表の強さの秘密として、2015年W杯からの「継続と変革」について紹介されることは多い。だが、そのもっと原点の部分、連綿と続いてきた「遥かなる挑戦史」まで知ることができれば、今の「強くなった日本ラグビー」の意義深さだって味わい深くなるはず。

 そんな“日本ラグビーの歴史の入り口”としてオススメしたいコンテンツがある。三井住友銀行のラグビー日本代表応援CM「ラグビー日本代表 挑戦と継承」篇(30秒)だ。日本テレビのラグビー中継ではいつも流れていたので、目にした方も多いはず。でも、その練り込まれた作り、深読みしたくなるポイントも知ってほしい作品なのだ。

 このCMの見どころは、ラグビー日本代表の「歴代レジェンド」たちが実際のプレーシーンとともに登場すること。ひとつのボールをパスでつなぎながら砂煙を模した巨大な敵に立ち向かい、一歩ずつ未来へと前進する日本ラグビーの歴史そのものを描いている。

「日本ラグビーは、宿澤のパスを継承する」から始まるメッセージが、まず秀逸。“宿澤”とは、早稲田大学での現役時代、身長162センチながら「小さな大選手」と称された名選手・宿澤広朗のこと。卒業後は住友銀行に入行し、のちに三井住友銀行で役員にまで上り詰めるなど、ビジネスマンとしても名をはせた男……つまりCM主である三井住友銀行のOBでもあるのだ。これほど有意義なOB活用術ってあるだろうか。

 その宿澤のパスが時空を超えて、日本ラグビーフットボール 協会現会長の森重隆へ。さらに、“北の鉄人V7”の松尾雄治へ。続いて、“ミスターラグビー”故・平尾誠二、“世界の翼”大畑大介、代表キャップ数歴代1位の大野均がつなぎ、最後は現・代表である福岡堅樹へ。そして、現在の日本代表選手らを先頭に、歴代の選手全員がトライへと向かっていく。

 冒頭シーンに関して、「なんで宿澤さんから? もっと先人はいるのに」と思った方もいるかもしれない。もちろん、出発点が宿澤なのは三井住友OBだから。でも、それ以外にも理由があると思うのだ。

 というのも、日本代表が初めて世界の強豪から金星を挙げた試合、1989年5月のスコットランド戦で代表監督を務めていたのが宿澤であり、主将を任されたのが平尾誠二だった。この金星で自信をつかんだ日本代表と2人のリーダーによって、2年後の91年W杯で“日本代表W杯初勝利”の快挙も達成。まさに「世界の強豪への挑戦史」の一歩目にいたのが宿澤だったのだ。

 だからこそ、決勝トーナメント進出を決めた13日のスコットランド戦でこのCMが流れた際には、思わず武者震いした。「スコットランド戦」で「宿澤」の名前に触れられるなんて、と。

 ちなみに、ラグビー日本代表といえば「桜のエンブレム」が象徴だ。そして、三井住友銀行といえば、01年、宿澤のいた住友銀行とさくら銀行とが合併してできた銀行である。つまり、銀行は銀行で「さくらの物語」を継承して今がある。そんな思いをラグビー日本代表に託したい……そんな見方だってできそうだ(きっとこれは深読みしすぎだと思うが)。

 このCMの意義深いところは、「語りたくなる」こと。私の周囲のラグビーファンにこのCMを見せたところ、「なぜ吉田義人がいない?」といった声を何人も上げていた。確かに「レジェンド」という意味では、“オールブラックスからトライを決めた男”吉田も外せないひとり。単にCM尺の問題だと思うのだが、「あ、あなたはそっち派なのね」「あの映像って、あの試合のプレーだよね」といったさまざまな会話を通して、「やっぱりみんな、ラグビー大好きじゃん」という再確認ができる。

 そして、最後のメッセージがまた素晴らしい。

「世界の壁は高く、一人の前進は小さい。しかし、その挑戦を重ねない限り、たどり着けない未来がある」

 ラグビーという競技、日本代表という歴史を、これほど端的に教えてくれるコピーはないのではないか。制作陣に脱帽である。

 今回のW杯では、この三井住友銀行のCM以外でも、ラグビーをテーマにしたCMで秀作が多かった。なんなら、ヘタなスポーツ番組よりも、よっぽどラグビーの魅力、伝えるべきポイントを押さえているなぁ、とうなることばかりだった。

 選手たちが今回のW杯で「ラグビーを文化として定着させたい」という重い使命を抱きながらプレーしていたのと同様、「ラグビーの魅力をしっかり伝えたい」と思う人たちが大勢いた証し、といえる。日本代表の勇姿とともに、後世に語り継ぎたい名作CM群にも敬意を表したい。

(文=オグマナオト)

ラグビーW杯、見るべきはスポーツ番組よりCM? 三井住友銀行ラグビーCMが素晴らしすぎ!

 まだまだラグビーW杯は続くのに、日本の敗戦とともに「W杯終わっちゃったなぁ」とう声を耳にする。まあ、その気持ちもわからないではない。それほど、世界の超人たちと真っ向勝負を挑む日本代表の戦いぶりには心を動かされるものがあった。

 代表選手たちの勇姿をまた見たい! と思っても、トップリーグの開幕は来年1月。「ラグビー代表ロス」になる人もいるのではないか。

 そんなときにオススメしたいのが、歴史を知ることだ。今回、躍進した日本代表の強さの秘密として、2015年W杯からの「継続と変革」について紹介されることは多い。だが、そのもっと原点の部分、連綿と続いてきた「遥かなる挑戦史」まで知ることができれば、今の「強くなった日本ラグビー」の意義深さだって味わい深くなるはず。

 そんな“日本ラグビーの歴史の入り口”としてオススメしたいコンテンツがある。三井住友銀行のラグビー日本代表応援CM「ラグビー日本代表 挑戦と継承」篇(30秒)だ。日本テレビのラグビー中継ではいつも流れていたので、目にした方も多いはず。でも、その練り込まれた作り、深読みしたくなるポイントも知ってほしい作品なのだ。

 このCMの見どころは、ラグビー日本代表の「歴代レジェンド」たちが実際のプレーシーンとともに登場すること。ひとつのボールをパスでつなぎながら砂煙を模した巨大な敵に立ち向かい、一歩ずつ未来へと前進する日本ラグビーの歴史そのものを描いている。

「日本ラグビーは、宿澤のパスを継承する」から始まるメッセージが、まず秀逸。“宿澤”とは、早稲田大学での現役時代、身長162センチながら「小さな大選手」と称された名選手・宿澤広朗のこと。卒業後は住友銀行に入行し、のちに三井住友銀行で役員にまで上り詰めるなど、ビジネスマンとしても名をはせた男……つまりCM主である三井住友銀行のOBでもあるのだ。これほど有意義なOB活用術ってあるだろうか。

 その宿澤のパスが時空を超えて、日本ラグビーフットボール 協会現会長の森重隆へ。さらに、“北の鉄人V7”の松尾雄治へ。続いて、“ミスターラグビー”故・平尾誠二、“世界の翼”大畑大介、代表キャップ数歴代1位の大野均がつなぎ、最後は現・代表である福岡堅樹へ。そして、現在の日本代表選手らを先頭に、歴代の選手全員がトライへと向かっていく。

 冒頭シーンに関して、「なんで宿澤さんから? もっと先人はいるのに」と思った方もいるかもしれない。もちろん、出発点が宿澤なのは三井住友OBだから。でも、それ以外にも理由があると思うのだ。

 というのも、日本代表が初めて世界の強豪から金星を挙げた試合、1989年5月のスコットランド戦で代表監督を務めていたのが宿澤であり、主将を任されたのが平尾誠二だった。この金星で自信をつかんだ日本代表と2人のリーダーによって、2年後の91年W杯で“日本代表W杯初勝利”の快挙も達成。まさに「世界の強豪への挑戦史」の一歩目にいたのが宿澤だったのだ。

 だからこそ、決勝トーナメント進出を決めた13日のスコットランド戦でこのCMが流れた際には、思わず武者震いした。「スコットランド戦」で「宿澤」の名前に触れられるなんて、と。

 ちなみに、ラグビー日本代表といえば「桜のエンブレム」が象徴だ。そして、三井住友銀行といえば、01年、宿澤のいた住友銀行とさくら銀行とが合併してできた銀行である。つまり、銀行は銀行で「さくらの物語」を継承して今がある。そんな思いをラグビー日本代表に託したい……そんな見方だってできそうだ(きっとこれは深読みしすぎだと思うが)。

 このCMの意義深いところは、「語りたくなる」こと。私の周囲のラグビーファンにこのCMを見せたところ、「なぜ吉田義人がいない?」といった声を何人も上げていた。確かに「レジェンド」という意味では、“オールブラックスからトライを決めた男”吉田も外せないひとり。単にCM尺の問題だと思うのだが、「あ、あなたはそっち派なのね」「あの映像って、あの試合のプレーだよね」といったさまざまな会話を通して、「やっぱりみんな、ラグビー大好きじゃん」という再確認ができる。

 そして、最後のメッセージがまた素晴らしい。

「世界の壁は高く、一人の前進は小さい。しかし、その挑戦を重ねない限り、たどり着けない未来がある」

 ラグビーという競技、日本代表という歴史を、これほど端的に教えてくれるコピーはないのではないか。制作陣に脱帽である。

 今回のW杯では、この三井住友銀行のCM以外でも、ラグビーをテーマにしたCMで秀作が多かった。なんなら、ヘタなスポーツ番組よりも、よっぽどラグビーの魅力、伝えるべきポイントを押さえているなぁ、とうなることばかりだった。

 選手たちが今回のW杯で「ラグビーを文化として定着させたい」という重い使命を抱きながらプレーしていたのと同様、「ラグビーの魅力をしっかり伝えたい」と思う人たちが大勢いた証し、といえる。日本代表の勇姿とともに、後世に語り継ぎたい名作CM群にも敬意を表したい。

(文=オグマナオト)

【ラグビーW杯】決勝トーナメント前に必見! ニュージーランド&南アチームの魅力とは?

 空前絶後の盛り上がりを見せているラグビーW杯。いまや報道番組だけでなく、情報系番組でもラグビーネタがズラリ。このまま決勝トーナメントに進もうものなら、一体どこまで盛り上がるのか?

 といっても、その多くは「選手を支える妻たち」「恩師との約束」といったサイドストーリーばかり。もっとラグビーの本質的なこと、さらにいえば対戦国についても学びたい。          

 そこで少々勇み足かもしれないが、日本が決勝トーナメントに進出した場合、初戦で対戦する可能性のある南アフリカとニュージーランドについて、そしてラグビーの魅力そのものも味わえるオススメ作品を、比較的手軽に視聴できる映像系コンテンツの中からいくつか紹介したい。

対「南アフリカ」戦に向けて

 南アフリカにとってのラグビーの立ち位置、代表チームの存在意義を知る上では、ラグビー映画の定番『インビクタス/負けざる者たち』は外せない。

 1994年に南アフリカ共和国初の黒人大統領となったネルソン・マンデラ。彼は、国から差別を排して一致団結するには、95年に自国開催するラグビーW杯での優勝が必要と感じ、白人の代表キャプテンと接触。彼らの志と不屈の闘志が国を変え、W杯で奇跡を生む……という実話を元にしたストーリーだ。

 監督はクリント・イーストウッド。モーガン・フリーマンとマット・デイモンのW主演という豪華メンバーだけでも十分楽しめるはず。実はW杯開幕日の9月20日にも日本テレビが『金曜ロードSHOW!』で放送していたのだが、このときは視聴率4.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)……。タイミングが早すぎたと言わざるを得ない。今なら2桁は堅いのではないか。

 そして、南アとの再戦となれば、やはり「史上最大の番狂わせ」と称された前回大会の因縁を振り返るのは必至。各番組でも最後のトライシーンとともに振り返り企画が展開されるはずだ。ただ、あの試合に至るまでの日本の“弱小国”ぶりや指揮官との軋轢、選手たちの悲壮な決意なども知っておかなければ、その快挙の真の意味は理解できない。

 そこでオススメしたいのが映画『ブライトン ミラクル』。今ならAmazonプライム、もしくはDAZNで視聴可能だ。試合シーンには実際のW杯映像がふんだんに使われている(どうやって権利をクリアしたのか?)ので見応え十分なのはもちろん、それ以上に見どころも名言も満載なのがドラマパートだ。

 前回大会のキーマンである主将のリーチ・マイケル、前主将にして『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)以降すっかり人気者になった廣瀬俊朗、エースの五郎丸歩、そして脳梗塞を患いながらもチームを率いた名将エディ・ジョーンズなど、本人たちの証言を挟みつつ、再現ドラマでその内幕を詳細に描いていく。

 このドキュメンタリー映画でキーワードとなるのが「決断」だ。エディとリーチ主将との会話、エディの会見シーンで、何度も何度も「決断する(できる)ことの重要性」が説かれていく。

 南ア戦での奇跡の逆転トライは、エディの指示を無視し、リーチ主将がスクラムからのトライを目指そうと決断したことで生まれたプレーだった、というのは有名な逸話。その決断に至るまでのエディと日本代表との1300日戦争は、ラグビーの奥深さ、ハードさも教えてくれる。

 どうせなら世界最強オールブラックスと戦ってほしい、という声も意外なほど多い。ここまでW杯2連覇中。今大会で前人未到の3連覇を目指す、王者オールブラックスの強さの秘密とは?

 それを知るための格好の教材が、Amazonプライム『オール・オア・ナッシング~ニュージーランド オールブラックスの変革~』だ。

『オール・オア・ナッシング』といえば、Amazonプライムが誇るチーム密着型スポーツドキュメンタリー。これまで、NFL名門チームや、プレミアリーグのマンチェスター・シティに密着して好評を博してきた人気シリーズが、満を持してオールブラックスを特集。2017年の戦いを追った45分のドキュメンタリーが6本展開されている。

 オールブラックスの、数々のスーパープレーだけでも眼福。今大会でも注目のスター選手、ボーデン・バレットですら苦悩する超一流選手同士の激しいレギュラー争い、世間からの強烈なプレッシャーなど、異世界の住人たちの奮闘劇が随所に描かれている。

 映像作品45分×6本も見る時間がないという人、もっとお手軽にオールブラックスを味わいたい、という人には、オールブラックス公式パートナーであるAIG生命のCMなんてどうだろう?

 CMといっても、もはや立派なショートフィルム。オールブラックスが東京の街を練り歩きながら未然に事故を防ぐという3分間のCM「Tackle The Risk」では、彼らの超人ぶりがコミカルに描かれていて実に楽しい。一方、2分CM「Diversity is Strength」では、差別と戦う意義を訴えている。

 オールブラックスの魅力として「多様性」が紹介されることは多い。先住民のマオリ族、ヨーロッパ系移民、フィジーやトンガなど近隣の島国からやってきた人……ひとつのチームにさまざまな選手たちが集い、それぞれの個性を認め合いながらチーム力につなげていく。その多様な色は交じり合うと黒になる、というメッセージもまた秀逸だ。

 今回は南アフリカ、ニュージーランドの魅力が味わえるコンテンツばかりを紹介したが、決勝トーナメントに勝ち上がってくる超人たち、魅力的なチームはほかにも多士済々。ラグビーってこんなにも面白かったんだ!と、改めてその魅力にはまった人は多いはず。

 そんな方には、NHKスペシャル『ラグビーワールドカップ2019シリーズ』も、ぜひオススメしたい。これまでに「第1回:“世界最強” 神 真髄に迫る」「第2回:日本代表 “奇跡”の先へ」をすでに放送済みだが、今後再放送もあるだろう。

 特に第1回の「“世界最強” 神髄に迫る」では、100台の高精細カメラを使った自由視点映像をもとにオールブラックスの戦術面を深掘りするほか、タックルで勝負をかけるオーストラリア、スクラムに磨きをかけるヨーロッパ勢、といった具合に各国の特徴や強化ポイントをわかりやすく、そして科学的な裏付けとともに提示してくれている。

 そんなNHKスペシャルで五郎丸歩が語っていたラグビーの魅力が、含蓄あるものだった。

「ラグビーが大事にしているのは、相手に対してのリスペクト。南アフリカ戦後、彼らは負けたにもかかわらず、日本の陣地にまで来てたたえてくれた。ただはしゃいでいただけの自分たちが、少し恥ずかしくなった。勝った負けた、だけの世界ではなく、彼らが何をしようとしているのか、何を成し遂げようとしているのか、みんなが追い求めてほしい」

 日本のラグビー、そして世界のラグビーがこれから何を成し遂げてくれるのか? その素晴らしいドラマを最後まで追いかけていきたい。

(文=オグマナオト)

過剰なテロップ、うるさすぎるDJ……ラグビー&バレーW杯から考える「スポーツ中継の課題」

 世界的なスポーツイベントがめじろ押しの、この秋。だからこそ、日本のスポーツ中継のガラパゴス化というか、これでいいの? という疑問を感じることが多い。

 まずは、「やっぱり本物を見れば一気に盛り上がるものだなぁ」と痛感させられたラグビーW杯について。開幕カードの日本対ロシア戦は平均視聴率18.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)。ニュージラーンド対南アフリカ戦は12.3%を記録した。日本戦ではないラグビーの試合でこの数字は、なかなかすごいのではないか。

 SNSでの反応を見ると、読売テレビの幹部が「前回大会は17~18%。今回は最低でも25~30%取れれば」と事前に語っていたことから「大惨敗」といった声も聞こえる。でも、十分な数字ではないだろうか。

 同じ試合をNHK-BS、もしくはJ SPORTSでも中継しているわけだし、むしろ昔からのファンはこちらで見る場合が多い。と考えれば、この数字は「新規顧客」である可能性が高い。大会は1カ月以上続くのだから、この数字が今後どう変わっていくかを見守るほうが大事なはずだ。

 ただ、数字以上に中継をあちこち見比べて気になったのは、日本テレビ中継の画面の騒がしさ。特に開会式では、日本のスポーツ中継でよくある課題が露見されていた。とにもかくにも、テロップだらけなのだ。

 画面左には「LIVE」の文字が陣取り、画面上部にはTwitterからの引用コメント。右には「ラグビーW杯開会式 日本対ロシア」。右下にはラグビーW杯とは? 開催都市は? 出場チームは? といった情報テロップが代わる代わる出続け、左下には“W杯応援団長”の舘ひろし、“スペシャルサポーター”嵐・櫻井翔、“スペシャルMC”くりぃむしちゅー上田晋也の顔を映し出すためのワイプ画面……いや、多すぎだって。

 我々スポーツファンは、情報を 知りたいんじゃない。情緒を味わいたいのだ。競技を知らない視聴者層に向けて、ということなのだろうが、こういった情報の波は「なんだか難しそう」と思わせる要因になりかねないのではないか。

 一方、NHK-BSでも生中継されたこの開会式、画面に表示されていたのは「ラグビーワールドカップ2019 開会式 LIVE」のみ。一度だけ左下にワイプ画面が出てきたが、そこで映されたのは日本代表を乗せたバスが到着した、という同じスタジアム内だけれども別な出来事。あぁ、日本代表はこの開会式を見ず、本番の試合に備えているんだ、と知ることができた。情報の有益性ってこういうことだ。

 ちなみに、NHKの開幕戦中継でも、スタジオをにぎわせるためのゲストはいた。一人は前回大会のスター五郎丸歩であり、もう一人がTBSドラマ『ノーサイド・ゲーム』で一躍人気者となった廣瀬俊朗。きっと民放であれば、ワイプでずっとこの2人の顔が抜かれていたのだろうなと思う。

 結局、何をどう映すのか、という部分で両者を分けるのは、「この番組(試合・中継)における主役は何か?」を的確に捉えているかどうかなのだろう。NHKの場合、ゲストではなく、開会式をしっかり映そうという心意気がちゃんとあったということだ。それでいて、番組冒頭で廣瀬を紹介する際には『ノーサイド・ゲーム』主題歌、米津玄師の「馬と鹿」を流す遊び心も。これで十分、ゲストの存在感は担保されている。

 この「スポーツ中継における主役は何か?」をもっと考えさせられる世界的大会が、フジテレビで放送されているワールドカップバレーだ。

 私が指摘するまでもなく、バレーの国際大会というと、「アイドルがうるさい」という感想が毎度毎度の風物詩。だが、今大会ではこの「アイドルがうるさい」以上に、「DJがうるさい」「チャラいDJとうるさい応援でとても観てられない」「バレーのDJ、相手国に失礼」といった否定的な声が大きい。

 DJとは、競技場内で応援を盛り上げるために配置されているスタジアムDJのこと。得点が入るたびに選手名を連呼し、観客にもっと盛り上げていこうぜぇ、と促す。はっきり言って蛇足でしかない。

 テレビ中継ではこのDJ音声を積極的に集音しているわけではないのだが、それでも気になるのだから、会場にいる人にはもっとうるさいのではないか。ただ応援だけしている人であればそれでいいかもしれないが、観客のなかには純粋に世界のプレーを観戦に訪れている人だっているだろう。

 スポーツにおける「音」は、視覚情報以上に大事な要素だ。シューズがこすれる「キュキュッ」という音だったり、ときには選手たちの息遣い、掛け声からも緊迫感が増すことは多い。それこそがスポーツにおける大事な情報であり、情緒だ。が、バレー中継ではDJの音にかき消され、それら繊細な音が届いてこない。

 このスタジアムDJは、中継局の問題とはまた別であるのは重々承知。ただ、「どうすればスポーツの素晴らしさが伝わるか」という視点が弱いからこうなるのでは? という部分で、問題の根っこは同じではないだろうか。

 余談だが、バレー中継の合間に、「東洋の魔女」以降の日本女子バレーの名シーンを編集したNOMURAのCMを見ることができる。とても情緒的な仕上がりになっていて、グッと心をつかまれる。スポンサーのほうがスポーツの価値をしっかりわかっている、というのがなんとも皮肉だ。

 ラグビーの話に戻れば、今大会で選手たちは、決勝トーナメント進出という成績面の目標だけでなく、「ブームではなく文化として定着させる」という重たい使命を口にしているのが印象的だ。それって、選手たちだけでなく、伝えるメディアや運営側も同じ気持ちでなければ達成は難しい大テーマのはず。大願成就のための道のりは、なかなかに険しい。

(文=オグマナオト)

◆「熱血!”文化系”スポーツ部」過去記事はこちらから

TBS『ノーサイド・ゲーム』の盛り上がりとラグビーW杯の扱いから見える「テレビ局の論理」

「ラグビーW杯、盛り上がってほしいのに、なんだかこう突き抜けられないよねぇ。なんでかなぁ」

 先日、80年代のラグビー人気を象徴する存在ともいえる伝説のドラマ『スクール☆ウォーズ』のある出演者にインタビューした際、こんなやりとりがあった。確かに、オリンピック、サッカーW杯に続く世界三大スポーツ大会の開幕まであと1週間、にしては世間の熱気がまだまだ物足りない。これが嵐の前の静けさならいいのだけど。

 静かな立ち上がりを見せそうなW杯とは一転、最終回に向け、がぜん盛り上がりを見せているのがTBSドラマ『ノーサイド・ゲーム』だ。さすがは『スクール☆ウォーズ』を生んだTBS、その血脈は受け継がれていたんだなぁとうれしくなる。

 実はこの、「なぜラグビーW杯がなかなか盛り上がらないのか?」と、「『ノーサイド・ゲーム』に、なぜ熱中してしまうのか?」という2つの話、突き詰めると表裏一体のテーマでもあることに気づく。鍵となるのは「放送局の論理と、それを打ち破る大義」だ。

 まず、「なぜラグビーW杯がなかなか盛り上がらないのか?」問題について。

 もちろんこれから一気にヒートアップするとは期待しているのだが、事前段階でのメディアの情報量に関していえば物足りないと感じるのは事実。そしてその理由は、オリンピックやサッカーと異なり、地上波中継局がNHKと日本テレビに限られている、という点が大きな理由だ。

 放送局が限定された結果、この2局以外ではスポーツ番組でもなかなかラグビーニュースが扱われない、という事態に。ある放送局では、トップダウンで「日テレの宣伝になるから、ラグビーネタは極力扱うな」というお達しも出ていると聞く。

 ならば日テレが頑張ってくれればいいわけだが、どうも日テレは「ラグビーは難しい」と考えすぎているように思う。だから、せっかく代表選手や元有名選手たちを独占的にキャスティングできるのに、バラエティ番組でお茶を濁して終わり、というものばかりが目立つのだ。もっと素直にラグビーの魅力を伝えてくれればいいのに。

 一方、この「ラグビーの魅力」を素直に描写できているのが『ノーサイド・ゲーム』なのだ。ドラマ成功の背景には、池井戸潤作品特有の勧善懲悪感、毎話最後は未来志向になる構成、サラリーマンの琴線をくすぐる企業内闘争などもあるだろうが、真摯にラグビーと向き合っているから、という点も大きい。ドラマ以上に、ラグビー描写が濃いのだ。

 ではなぜ、他局ではスポーツ番組ですらラグビーを扱うことに躊躇しているこのご時世に、TBSのこのドラマでは、ここまでど直球にラグビーを描くことができているのだろうか?

 ここで重要になるのが、番組のトップとTBSのトップに共通するラグビー愛であり、「日本ラグビーが盛り上がるのなら、局の論理なんて気にするな」という気概だ。

 まずは番組トップ。総監督的な立場にいる演出の福澤克雄は慶應大学ラグビー部出身。だからこそ、ラグビー描写に妥協がないし、キャスティングにもラグビー経験者ばかりを揃えるこだわりがある。

 チームのキャプテン岸和田徹を演じる高橋光臣は大阪の強豪校・啓光学園ラグビー部出身。ドラマ初挑戦とは思えない存在感を放つ浜畑譲役の廣瀬俊朗は元日本代表キャプテン。そのほかにも、主要キャストはほぼ全員がラグビー経験者であるため、スポーツドラマでありがちな“スポーツ描写でのがっかり感”が見当たらないのだ。

 8日放送回ではあまりにもさりげなく濱田岳がゲスト出演していたが、濱田もまた元ラグビー少年。「こんなにも熱いドラマにラガーマンとして少しでも役に立てるなら協力したい」と、自ら番組側に逆オファーしたという。

 これほどまでの「ラグビーど直球」、おそらくTBS局内でも「日テレの宣伝になる」と眉をひそめる人物はいるだろう。そんな声を押しのけ、ラグビーを前面に押し出した企画を突き通せたのは、局のトップであるTBS社長の佐々木卓もまた早稲田大学ラグビー部出身、ということも大きな要因のはずだ。

 佐々木社長は、ラグビーと経営をテーマにしたインタビューで、こんなコメントを残している。

《負けることよりも怖いのは、アンフェアだという烙印を押されることです。1回や2回の負けはやり直しが利いても、アンフェアだという烙印は一生付いて回る》(「週刊ダイヤモンド」8月31日号より)

 この言葉から、佐々木社長には、目の前の視聴率競争以上に、放送局としての大義、そしてラグビーを愛する者としての矜持があるように思えてならない。

 ここから先、実際にW杯の試合が始まれば、日テレ以外の局であっても、日本戦の試合結果や活躍した選手を取り上げてくれるはず。つまりは、日本代表の結果次第では、まだまだ盛り上がる可能性は大きい。もし、それでもW杯の扱いがおざなりなスポーツ番組があったとしたら、その番組の良心とスポーツ愛を疑ったほうがいいと思う。

『ノーサイド・ゲーム』の中では、主演の大泉洋がラグビー部の廃部を主張する上司に対して、こんなセリフで対抗するシーンがあった。

《日本のラグビーは必ず変わります。きっと強くなります。お願いします。ラグビーの未来を、必死に戦っている選手たちの将来を閉ざさないでください》

 なんだかこれ、日本のメディアに向けて言われたような気がしたのは、筆者だけだろうか。

(文=オグマナオト)