日テレ『有吉×巨人』アンチ巨人・有吉弘行目線で見る、“巨人ファン”という生き物

「今はもう死語になりつつある『アンチ巨人』を作りたいんです。今、言われないですよね。それは絶対に復活させたい」

 これは、今月からプロ野球・読売巨人軍の新社長に就任した今村司氏の就任インタビューでのもの(※スポーツ報知より)。今村氏は元日本テレビの敏腕制作マンで、『ザ!鉄腕!DASH!!』の「DASH村」や『家政婦のミタ』などのヒット企画を連発した人物だという。

 そんな新社長の就任を見越してのことなのか、はたまた偶然か、今春から古巣の日本テレビでは、まさに「アンチ巨人」をテーマにした番組がスタートしている。その名も『有吉×巨人』だ。

 芸能界でも指折りの広島カープファン・有吉弘行を番組MCに起用し、「アンチ巨人による、巨人ファンのためのジャイアンツ応援番組」としてプロ野球開幕直前の3月29日に放送開始。以降、深夜1時35分からの隔週ペース、というなかなか認知されにくい放送枠でありながら、さすがの有吉というべきか、すでに強烈なインパクトを残している。

 見どころは、アンチ巨人の有吉を巨人ファンに導くため、あの手この手で巨人の魅力をプレゼンしていく芸能界巨人ファンたちの人選にある。

 初回と第2回は、巨人ファン歴44年のレッド吉田が登場。どんなに懸命に巨人の魅力をアピールしても、そのすべてを痛烈なセンター返しのように切り返していく有吉、という構図は、さながら連打が止まらないカープ打線のようで安心感があった。

 第3回と第4回は、原辰徳監督に扮した神奈月と、スペシャルゲストとしてX JAPANのギタリストPATAがサプライズ出演。「ひとりでバラエティに出るのは初めて」と当初は緊張していたPATAだったが、いざ巨人の話題となれば、その舌は軽やか。「本業は巨人ファン。副業のX JAPANで稼いだお金でグッズを買ったり、球場に行ったり……」と語り、本番中にもかかわらずビールをあおる自由人っぷり。

 そして、5月24日に放送された最新第5回では、巨人ファン筆頭格ともいえるナイツの塙宣之が登場し、助っ人として兄のはなわを招集。まさかのはなわ兄弟共演が無駄に豪華だ。滑りっぱなしだったレッド吉田とは打って変わって、太田プロと揉める山田邦子ネタで有吉を慌てさせたりと、塙らしい話術でいい勝負を演じていた。

 もちろん、NHK『球辞苑』レギュラーを務める塙だからこそ、野球に関するマニアックトークも充実。たとえば、原監督の代名詞「グータッチ」が今年は封印されている謎について、「原監督は球界のジャニー喜多川。演出家だからこそ、グータッチしないのには何か意図があるはず」と推察し、「おそらく、阿部慎之助が400号を打ったら解禁するんじゃないか」という塙予言を展開した。

 果たして、この予言が放送された1週間後の6月1日、阿部が通算400号を達成した試合でグータッチは見事に解禁、という的中ぶり。ただの居酒屋トークではない、深い洞察力も堪能できた。

 そして、大本営・日本テレビだけあって、他局ではまず見られない巨人レギュラー陣のインタビューも充実。選手の魅力紹介についても、ときには技術論、ときにはキャラクター紹介と、ストライクゾーンが幅広い。お笑い好きも野球好きも、その両方を納得させる作りになっているのは見事だ。

この番組を通して改めて気づかされるのは、巨人ファンという存在の捉えどころのなさ。母体が大きく、それでいて「巨人ファンらしさ」を定義しにくいことが、結果的に有吉視点ではツッコミどころにもなっている。

 昨年出版された、巨人ファンをテーマにした野球本『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(菊地高弘・著/イースト・プレス)でもこの巨人ファンの捉えどころのなさ、実態の希薄さについて言及されているのだが、この本では「巨人ファンの隠れキリシタン化」と評していたことを思い出した。

 ナベツネ元オーナーの傍若無人ぶりのせいか、はたまた球界バランスを崩しかねない巨大戦力のせいか、巨人ファンの中には大手を振って「自分は巨人ファンである」と宣言できない(しない)人が意外に多い。それと対比するかのように、番組内で有吉は自身のカープファン度について「自分は改宗しない」「敬虔なカープファンである」と、これまた宗教的に語っているのが興味深い。

 交流戦が始まり、普段よりも少しだけ他球団のファンを意識することが増えるこの時期。「野球ファンとは何か」を考える上でも、『有吉×巨人』はなかなか示唆に富む番組ではないだろうか。

 いずれにせよ、有吉が巨人ファンに寝返ることは100%ないだろうし、この番組で巨人ファンが増えることもあまり期待できないが、アンチ巨人の顕在化には一役買うかもしれない。でも、それこそがまさに、巨人の球団新社長が望んでいること。野球人気活性化にもつながることを大いに期待したい。

(文=オグマナオト)

Jリーグはソシャゲ課金から学ぶべし!? テレ東『FOOT×BRAIN』ホリエモン回が面白すぎ

「サッカーはこれから頑張んないと、ヤバイなと思いましたね」

 多彩なジャンルの知を楽しみながら、サッカーの可能性を広げるテレビ東京の『FOOT×BRAIN』。2011年の放送開始から8年目の今年、春に放送日時の変更(日曜昼→土曜深夜へ)、夏には皆藤愛子卒業&大幅なセットチェンジという2度にわたるリニューアルを経て、最近やたらと面白い回が続く。その象徴が12月2日放送の堀江貴文ゲスト回「ホリエモン登場!『サッカー界はやばい』ズバリ物申す!」だった。

 面白かった理由は2つ。ひとつは単純に、堀江の知見がサッカーやスポーツビジネスを知る上で意義深いものだったこと。そしてもうひとつが、ここ最近の『FOOT×BRAIN』から感じる“継続性”だ。

 15年にJリーグのアドバイザーに就任した堀江。自らの役割を「極端なことを言う係」「(試合以外の)周りの何かを見るのが仕事」と評したが、なかなかどうして、今回の番組では極端どころか至極真っ当で、うなずける話が多かった。

 たとえば、プロスポーツにとって積年の課題ともいえる「人気が先か、強化が先か」論について。堀江は、「みんなチーム強化をすれば人気が出ると思ってるんだけど、間違いなく逆。強化より先に人気を出さないと。弱くてもファンが来てくれるチーム作り、環境作りをしないと」と断言する。その実例として挙げていたのがプロ野球だ。

「人気が出たチームは絶対強くなる。野球だってそうじゃないですか。広島カープって、10年前15年前って万年最下位みたいなチームだったのが、いまや3年連続で優勝して。なんで強くなったかといえば、マツダスタジアムでしかないと思う」

「あの雰囲気がまたいいんですよ。夏場にちょっと風が吹いてくるスタジアムにいることが価値。そうすれば、あとはいつの間にか強くなるんですよ」

 サッカーの話をするはずが、野球について語る堀江。04年、球界再編問題での新球団設立断念によって球界と袂を分かった男が、プロ野球をしみじみと語る姿がなんとも味わい深かった。

 このほかにも、

・社交場としてのスタジアムの可能性

・ジャパネットたかた(V・ファーレン長崎)はいかにすごいか

・ピークシフト対策(渋滞を防ぐ)としてのスタジアムグルメ

・ピークシフト対策としてスタジアムにスーパー銭湯を作ろう

・競技人口減少に対抗するための外国人枠の撤廃

などなど、さまざまな実例や各クラブの取り組み、自らのアイデアを紹介していく。

「彼氏に連れてこられた彼女が『また行こう』ってなるような仕掛けをしてるかな?」と疑問を投げかけ、「1回来た客には2回目の無料チケットを渡せばいい」「3回目は友達連れてきたらキャッシュバックとか」と、ソシャゲ課金から学ぶべきと説いてみせる。

 ちなみに、堀江のJリーグアドバイザーとしての報酬は月額3万円。「これだけの情報で3万円。どんだけコスパがいいんだよ」と番組MCの勝村政信は驚いてみせたが、この日の番組自体が知的な刺激に満ちたコスパのいい30分間だった。

 そして、このホリエモン回が意義深かったのが、ここ最近の『FOOT×BRAIN』との継続性の部分。「この話、ちょっと前にも別なゲストが言っていたことと通ずるな」とリンクする話が多かったことだ。

 たとえば、「ピークシフト対策としてスタジアムにスーパー銭湯を作ろう」という堀江の提言は、11月に放送した「J1長崎社長・高田明が語った驚きの地域再生プラン」回において、V・ファーレン長崎の高田社長(元ジャパネットたかた社長)が明かした、ホテル・スタジアム構想と同じだ。

 この点は番組内で勝村も言及。すると堀江は「ジャパネットはすごいんですよ」と熱く語ってみせた。こうした名物社長同士の横のつながりも楽しい。

 また、堀江が提言したソシャゲ的チケット展開は、前週11月25日放送の「いま名古屋が熱い!一歩先のグランパスの集客戦略とは!?」で紹介されていた「3試合観戦で1試合無料」というチケット戦略と重なる。事実、今季の名古屋は常に降格圏争いに身を置く(順位的には)苦しいシーズンだったが、観客動員数ではクラブ史上最多を更新。堀江が語った「強化より先に人気を出さないと」を地で行く形となっていた。

 こうした“継続性”は、「また同じ話か」ではなく、「立場が違っても目指すものは同じになるのか」という気づきになるし、次はどんな話が聞けるのか? と、翌週以降、またこの番組を見るモチベーションにもなる。

 堀江がこの日語ったのは、ファンをいかに常連化させるか、という問題提起であり、アイデア。その意味で最近の『FOOT×BRAIN』はリピーター、つまり慣れ親しんだ視聴者にうれしい作りになっているのだ。

 こうした“経営視点のJリーグ”は『FOOT×BRAIN』で定期的に取り上げてきた話題ではあるが、今夏のリニューアル以降、明らかに多くなった印象を受ける。以前はもっと、戦術の話や日本代表についての話題、他競技から学ぼう、といったテーマが多かった。

 もちろん、それらもサッカーファンとしては知りたい話題ではあるが、極論すればこの番組でなくても触れる機会はある。だが、小難しい話ではなく、知的にサッカーを楽しめるコンテンツはなかなか少ない。だからこそ引き続き、『FOOT×BRAIN』らしさ、テレビ東京らしさ、深夜らしさを意識した番組作りで、今まで以上にサッカーファンの知的好奇心を広げてほしいのだ。

 この日の番組終了後、MC勝村政信が番組公式サイトでこんなことを書いていた。

「サッカーでも、たくさんのオプションを持っている選手、チームは強い。死ぬほどトレーニングを積んだ人にしか、オプションを作ることができない」

 日本サッカーの発展のためには、『FOOT×BRAIN』というオプションが必要だ、と思わせる番組作りを引き続き期待したい。

(文=オグマナオト)

プロ野球開幕! 野球ファンの心を捉えた好企画と、残念すぎたNACK5ラジオ中継

 ついに幕を明けた2018年プロ野球。ペナントレースの行方、個人成績やタイトル争いも気になるところだが、今年は、“野球の楽しみ方”が少し変わるかもしれない1年でもある。野球を取り巻くメディア環境が大きく変化しているからだ。

 たとえば、TBSラジオのプロ野球中継撤退。同様に、プロ野球12球団のうち10球団の試合を配信してきた「スポナビライブ」も5月末で撤退。代わって、17年からJリーグの放映権を一手に担うスポーツ動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」がプロ野球界にも本格参入。昨年の2球団(広島と横浜DeNA)から大幅増となる、巨人以外のプロ野球11球団の主催試合をすべて配信することになった。

 まさに「黒船来襲」ともいえるDAZNの攻勢。それを逆手に取るように、DAZNは北海道日本ハムファイターズの西川遥輝、横浜DeNAベイスターズの山崎康晃、さらにはお笑いトリオ・ロバートを起用した幕末モチーフのテレビCMを多数打ち続けている。出稿量からいっても、かなりの金額がかかっているはずだ。

 これで緊張感が走っているはずなのが、Jリーグの放映権をすべて持っていかれ、1年半で契約者数が20万件以上激減したとされるスカパー! だ。Jリーグの轍を踏まずに、どう乗り越えていくのか? まさに勝負の年、といえるのではないだろうか。

 それだけに、開幕に向けてスカパー! が実施したプロモーション「プロ野球12球団レジェンドに聞く あなたはどう見る? #オレ流」は、スカパー! の決意の表れと本気度がうかがえる好企画だった。

 スカパー! の広告塔である堺雅人と、元三冠王にして元名監督の落合博満による対談を、そのままCM化したこの企画。15秒CMとは別に、各球団の見どころを約1分半にまとめた映像も無料でWEB公開している。第1弾の「球団見どころ篇」と、第2弾の「注目選手篇」。どちらの動画も企画タイトル通り、落合博満のオレ流節が全開で、野球ファン必聴の面白さだ。

「成績が上がらない=お前ら、練習足らないんじゃないか? もっと野球を勉強しなくちゃいけないんじゃないの?」

「万が一おれが兼任(監督)をやったら、こんな楽なことはない。4番・落合、監督・落合。最っ高に面白いと思う」

「4番? 俺の中ではスーパーマン。なんでもやれる。そして、絶対に休まない。自分の一振りでゲームを左右できるのが4番バッターですよ」

 ……などなど、落合節は健在。そして、古巣・中日については特に舌鋒鋭く、厳しい見立てをしているのがなんとも言えず落合らしい。

「なぜ俺が中日楽しみだ、っていうかというと、もしかしたら、見納めになる選手が何人かいる。今のうちに見ておかないと、見損なった、というのが悔い残るんじゃないかな、という意味で。勝負度外視して、これだけプロ野球界に貢献した人の勇姿を見逃す手はないだろう。その意味で、中日、面白いです」

 野球ファンがうすうす思っていて、でも、なかなか口にしづらいことをあけすけに語ってくれる落合。そんな直球勝負を挑むスカパー! の姿勢には好感が持てた。

 そしてもうひとつ。開幕に向けたCMと連動動画企画で秀逸だったのが、プロ野球速報アプリを展開するスポーツナビが実施したCM「PRIDE OF FAN」だ。

 こちらは、落合博満のようなレジェンドも、堺雅人のようなタレントを使うこともなく、DAZNのように現役選手が出てくるわけでもなく、徹底的にファン目線。12球団それぞれのファンの「日常風景」を切り取り、そこにスポナビの一球速報アプリが欠かせない存在であることを描き出している。

 球団ごとに、シチュエーションもファン気質も、出てくる野球ワードが違うわけだが、その細かいニュアンスの描き分けが見ていてとても心地良い。「スポナビライブ」は5月末で撤退するわけだが、だからといってスポナビアプリの存在意義は揺るがない。そのことを改めて実感させてくれた。

 野球ファンの求めるもの、知りたい情報を的確に提示し、好印象を生んだスカパー! とスポナビアプリの両CM。だが、その他に目を向ければ、ファン気質を勘違いした企画を打ち出し、反感を買った事例もある。FMラジオ・NACK5の『サンデーライオンズ』の炎上問題だ。

 昨年まで当たり前にいた実況アナウンサーを置かず、番組進行役としてお笑い芸人をメインパーソナリティに起用。それだけでも炎上要素満載だが、さらにすごかったのは、球場から生中継しているにもかかわらず、球音を生かすどころかBGMを流し、「こんなホーム開幕戦はいやだ」など大喜利をしでかしたこと。

 私も炎上騒ぎを知ってラジオアプリ・radikoのタイムフリーで聞いてみたが、驚くほど臨場感はなく、そして試合展開はまったく頭に入ってこなかった。まさに、「こんな野球中継はいやだ」状態。ファンが求めているものを理解できていないばかりか、野球というスポーツへの愛情も感じられなかった。

 CM・動画企画と実際のラジオ中継。比較対象としては階層が若干ズレているかもしれないが、野球を盛り上げよう、野球ファンの心を捉えようという意味では、あまりに両極端だったこれらの施策。野球ファンはその志の差に敏感に反応し、評価を下すはずだ。
(文=オグマナオト)

【平昌パラリンピック】アスリートとメディアの関係性を刷新するかもしれない“成田緑夢の偉業”

 平昌オリンピックに続いて、前回ソチ大会以上の日本人選手の活躍に沸いた平昌パラリンピック。中でも金メダルに輝いたアルペンスキー女子・村岡桃佳とスノーボード男子・成田緑夢、ノルディックスキー男子・新田佳浩らのインパクトは衝撃的だった。

 そんなパラアスリートたちの活躍を連日ダイジェストで伝えてくれたのが『パラリンピックタイム』(NHK総合)。過去のパラリンピックでも同様のダイジェスト番組はあったが、今回の『パラリンピックタイム』を見て感じたのが、“パラスポーツ芸能人”と呼ぶべき存在が明確化されてきたな、ということ。日替わりで、広瀬アリス、武井壮、山里亮太(南海キャンディーズ)らがゲスト出演していたわけだが、彼(女)らに共通していたのは、お飾りの“ひな壇要員”として座っているのではなく、自らの言葉でパラの魅力について語ることができる面々だったこと。そのおかげで、安易な感動話にならず、競技の魅力やアスリートとしてのすごさを浮き彫りにすることができていた。

 広瀬、武井、山里らのトークが安心して聞けるのは、付け焼き刃ではないから。彼(女)らの肩書には、決まって「パラスポーツを体験」「パラスポーツを取材」といった言葉が記されていた。

 実際、広瀬アリスは『ハートネットTV』(NHK Eテレ)で、さまざまなパラスポーツを体験。今このタイミングでNHKの番組に出ることは朝ドラの番宣にも受け取られそうだが、朝の顔は封印し、いかにパラスポーツが大変か・難しいかを一生懸命に訴える姿は好感が持てた。

 武井壮は首都圏で放送中の『ひるまえほっと』(NHK総合)で、「車いすラグビー」「車いす陸上」など、さまざまなパラスポーツに本気で挑戦。パラ競技ならではの独自ルールや特殊な競技環境に最初は戸惑い、失敗しながらも、コツを掴んですぐに上達していく様は、さすが百獣の王。この4月からは『武井壮のパラスポーツ真剣勝負』(BS1)としてレギュラー化されることも決まっている。

 そして個人的に意外だったのが山里亮太。実は山里、斉藤工とともにパラスポーツをテーマにした絵画・作文コンクールで審査員を担当するほどのパラスポーツ通。今回の『パラリンピックタイム』においても、「スポーツって、もう進化はしないかと思っていた。でも、パラスポーツはいろんなことを加えることによって、さらに進化をしている。選手も、サポートする方も、みんなでもっともっと上を目指している。まだまだ伸びる。そこがおもしろいんですよ」と、その魅力を的確に表現していた。

 そんな一家言持つゲストらを抑え、今回も現地リポーターを務め、番組の顔となっていたのがジャニーズの風間俊介。平昌のNHK特設スタジオで、アナウンサーも置かずに一人で切り盛りする姿は、さすがのひと言。リオパラリンピックの際にも風間のパラスポーツへの造詣の深さには驚かされたが、今大会でも抜群の取材力を発揮。そして、どこまでもパラアスリートへの敬意に満ちた言葉選びが印象的だった。

 ジャニーズとパラスポーツといえば、元SMAPの香取慎吾が日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)スペシャルサポーターと、朝日新聞パラリンピックスペシャルナビゲーターを担当。パラサポのウェブマガジン『香取慎吾が見たピョンチャン』、朝日新聞の連載『香取慎吾と歩くパラリンピック』で現地の様子を伝えていた。

 香取は他にも、自身のインスタグラムにおいて、現地からの画像を連日アップ。結果的に、テレビでは風間、新聞・ネットメディアでは香取と、いい塩梅で住み分けができていたように思う。彼らの勢力図が今後どう変わっていくのかは、東京大会に向けてのひとつの注目点かもしれない。

 ただ今回のパラリンピック、「世界への発信力」という意味で、もっともパワーがあった人物は他にいる。スノーボード金メダリストの成田緑夢だ。実は彼、「アスリートYouTuber」を名乗っていて、以前からパラスポーツやスノーボードの魅力を、かなり奇抜な映像企画で訴求し続けてきた人物。今大会では、パラリンピック期間中にもかかわらず、「選手村で髪を切ってみた!」「金メダル初公開!!?」など、平昌の選手村から何度も新作動画をアップし続けていた。

 その極めつきが、閉会式直後にアップした「平昌パラリンピックメダリスト集結!??豪華すぎるゲスト!?」。今大会でメダルを獲得した日本選手4名(森井大輝、村岡桃佳、新田佳浩、成田緑夢)が中心となって、43分間の思い出トークを繰り広げたのだ。

 日本勢が獲得した10個のメダルすべてが無造作にテーブルに並ぶ中での、アスリートたちのプライベートトーク。こんな企画、NHKでも実現できていない。アスリートにこんなことをされたとあっては、放送局側にしてみれば、たまったモノではないはずだ。

 そんな成田がさまざまな媒体のインタビューで、共通して語っていたことがふたつ。「夢や感動、希望、勇気を与えられるアスリートになりたい」。そして、「目の前の一歩に全力で」ということ。YouTuberとしての活動も、その一環であるという。

 かつて、中田英寿がアスリートでは先駆けてブログを始め、引退発表までもメディアを通さずに世に広めたように、今後は成田緑夢のようなアスリートYouTuberが、競技の魅力や選手の生の声を伝えていくことになるのかもしれない。

 冬季大会だけでなく、2020年の東京大会も目指したいと語る成田緑夢。その発信力も含め、今後ますます目が離せないアスリートになりそうな気配だ。
(文=オグマナオト)

【平昌パラリンピック】アスリートとメディアの関係性を刷新するかもしれない“成田緑夢の偉業”

 平昌オリンピックに続いて、前回ソチ大会以上の日本人選手の活躍に沸いた平昌パラリンピック。中でも金メダルに輝いたアルペンスキー女子・村岡桃佳とスノーボード男子・成田緑夢、ノルディックスキー男子・新田佳浩らのインパクトは衝撃的だった。

 そんなパラアスリートたちの活躍を連日ダイジェストで伝えてくれたのが『パラリンピックタイム』(NHK総合)。過去のパラリンピックでも同様のダイジェスト番組はあったが、今回の『パラリンピックタイム』を見て感じたのが、“パラスポーツ芸能人”と呼ぶべき存在が明確化されてきたな、ということ。日替わりで、広瀬アリス、武井壮、山里亮太(南海キャンディーズ)らがゲスト出演していたわけだが、彼(女)らに共通していたのは、お飾りの“ひな壇要員”として座っているのではなく、自らの言葉でパラの魅力について語ることができる面々だったこと。そのおかげで、安易な感動話にならず、競技の魅力やアスリートとしてのすごさを浮き彫りにすることができていた。

 広瀬、武井、山里らのトークが安心して聞けるのは、付け焼き刃ではないから。彼(女)らの肩書には、決まって「パラスポーツを体験」「パラスポーツを取材」といった言葉が記されていた。

 実際、広瀬アリスは『ハートネットTV』(NHK Eテレ)で、さまざまなパラスポーツを体験。今このタイミングでNHKの番組に出ることは朝ドラの番宣にも受け取られそうだが、朝の顔は封印し、いかにパラスポーツが大変か・難しいかを一生懸命に訴える姿は好感が持てた。

 武井壮は首都圏で放送中の『ひるまえほっと』(NHK総合)で、「車いすラグビー」「車いす陸上」など、さまざまなパラスポーツに本気で挑戦。パラ競技ならではの独自ルールや特殊な競技環境に最初は戸惑い、失敗しながらも、コツを掴んですぐに上達していく様は、さすが百獣の王。この4月からは『武井壮のパラスポーツ真剣勝負』(BS1)としてレギュラー化されることも決まっている。

 そして個人的に意外だったのが山里亮太。実は山里、斉藤工とともにパラスポーツをテーマにした絵画・作文コンクールで審査員を担当するほどのパラスポーツ通。今回の『パラリンピックタイム』においても、「スポーツって、もう進化はしないかと思っていた。でも、パラスポーツはいろんなことを加えることによって、さらに進化をしている。選手も、サポートする方も、みんなでもっともっと上を目指している。まだまだ伸びる。そこがおもしろいんですよ」と、その魅力を的確に表現していた。

 そんな一家言持つゲストらを抑え、今回も現地リポーターを務め、番組の顔となっていたのがジャニーズの風間俊介。平昌のNHK特設スタジオで、アナウンサーも置かずに一人で切り盛りする姿は、さすがのひと言。リオパラリンピックの際にも風間のパラスポーツへの造詣の深さには驚かされたが、今大会でも抜群の取材力を発揮。そして、どこまでもパラアスリートへの敬意に満ちた言葉選びが印象的だった。

 ジャニーズとパラスポーツといえば、元SMAPの香取慎吾が日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)スペシャルサポーターと、朝日新聞パラリンピックスペシャルナビゲーターを担当。パラサポのウェブマガジン『香取慎吾が見たピョンチャン』、朝日新聞の連載『香取慎吾と歩くパラリンピック』で現地の様子を伝えていた。

 香取は他にも、自身のインスタグラムにおいて、現地からの画像を連日アップ。結果的に、テレビでは風間、新聞・ネットメディアでは香取と、いい塩梅で住み分けができていたように思う。彼らの勢力図が今後どう変わっていくのかは、東京大会に向けてのひとつの注目点かもしれない。

 ただ今回のパラリンピック、「世界への発信力」という意味で、もっともパワーがあった人物は他にいる。スノーボード金メダリストの成田緑夢だ。実は彼、「アスリートYouTuber」を名乗っていて、以前からパラスポーツやスノーボードの魅力を、かなり奇抜な映像企画で訴求し続けてきた人物。今大会では、パラリンピック期間中にもかかわらず、「選手村で髪を切ってみた!」「金メダル初公開!!?」など、平昌の選手村から何度も新作動画をアップし続けていた。

 その極めつきが、閉会式直後にアップした「平昌パラリンピックメダリスト集結!??豪華すぎるゲスト!?」。今大会でメダルを獲得した日本選手4名(森井大輝、村岡桃佳、新田佳浩、成田緑夢)が中心となって、43分間の思い出トークを繰り広げたのだ。

 日本勢が獲得した10個のメダルすべてが無造作にテーブルに並ぶ中での、アスリートたちのプライベートトーク。こんな企画、NHKでも実現できていない。アスリートにこんなことをされたとあっては、放送局側にしてみれば、たまったモノではないはずだ。

 そんな成田がさまざまな媒体のインタビューで、共通して語っていたことがふたつ。「夢や感動、希望、勇気を与えられるアスリートになりたい」。そして、「目の前の一歩に全力で」ということ。YouTuberとしての活動も、その一環であるという。

 かつて、中田英寿がアスリートでは先駆けてブログを始め、引退発表までもメディアを通さずに世に広めたように、今後は成田緑夢のようなアスリートYouTuberが、競技の魅力や選手の生の声を伝えていくことになるのかもしれない。

 冬季大会だけでなく、2020年の東京大会も目指したいと語る成田緑夢。その発信力も含め、今後ますます目が離せないアスリートになりそうな気配だ。
(文=オグマナオト)

「美人すぎる」だけじゃない! 平昌冬季オリンピックで輝いていた“解説者”たち

 連日、盛り上がりを見せた平昌オリンピック。競技結果に負けず劣らず話題に上ることが多かったのが、NHK『ピョンチャンオリンピックデイリーハイライト』に連日出演していた、元カーリング日本代表・市川美余氏(28)、プロスノーボーダー・岩垂かれん氏(24)という、いわゆる“美人すぎる解説者”たちだ。NHKでは、ピョンチャンオリンピックNHK放送サポーターとして足立梨花を起用していたわけだが、その足立の存在を食っていた感すらある。

 見た目の華やかさから彼女たちにスポットライトが当たることが多かったが、実際の試合中継、そして『デイリーハイライト』番組内では、他にもオリンピックを盛り上げてくれた解説者たちの存在があった。

 スキーであれば、モーグルやスキークロス解説の三浦豪太氏。「前回ソチオリンピック以上にリサーチを重ね、さらに解説に磨きをかけて行う」と事前にコメントして臨んだ今回の平昌オリンピック。自由すぎて細かすぎる解説は、今回も健在、というかバージョンアップし、「レーザービーム」「ホールショットシム」「ビューティ・リューディ」といった独特のニックネームで、競技の“見どころ”を明確にしてくれた。

 三浦豪太の名(迷)解説、といえば、前回ソチ五輪・男子スキークロス準々決勝。ゴール手前で全員ずっこける、という奇跡の展開もさることながら、「さすが忍者」「抜き足、差し足、忍び足」といった珍ワードを連発させて盛り上げてくれるのが醍醐味。今回、あのレースを知っている者ならば思わずニヤリとなる、「くのいち」というニックネームを女子のスキークロスで披露。4年越しの大舞台にかける意気込みは、選手以上ともいえた。そんな三浦氏を評して、「スキー界の増田明美解説」と書いたメディアもあったが、言い得て妙。今年、増田明美がドラマのナレーションなどで新境地を開拓したように、三浦氏もまた、バラエティなど新たな分野でのナレーションにそろそろ呼ばれるのではないだろうか。

 平野歩夢が銀メダルを獲得したスノーボード・ハープパイプの解説で人気を呼んだのが中井孝治氏。「かっこいいですねー」「渋いですねー」「オシャレです」といった、これまでの解説ではあり得ない言葉遣い、そしてその優しい語り口が“新感覚”として話題となった。中継後、自身のブログで「僕の微妙な解説で分かりにくくしてしまってすみません」とコメントした中井氏だが、その低姿勢な点もまた好印象だった。

 テレビ中継ではないが、朝日新聞の動画配信サービスで味のある解説をしていたのが元スピードスケート日本代表の清水宏保氏。元金メダリストだからこそわかる、選手が置かれた極限状態、細かい技術的な差など、思わず唸ってしまう解説の数々は素晴らしかった。女子チームパシュートが金メダルを取った際、本中継での解説者は「言葉になりません」と伝えていたが、それでは解説の放棄だ。小平奈緒が銀メダルに終わった女子1000メートルでは、敗因を冷静に分析していた清水氏だが、その姿勢こそ解説者のあるべき姿だと思う。

 他にも、快活な言葉の数々が耳に残ったノルディック複合の荻原健司氏。いつもの名調子で安定感しかなかったフィギュアスケートの八木沼純子氏など、印象深かった解説者の声、言葉、フレーズは数多い。

 オリンピックで解説者が話題になるのは、夏ではなく冬の大会がほとんどだ。それは、冬季競技の多くが“マイナースポーツ”というポジションに置かれていることと無縁ではないはず。解説者ともなれば、そのシビアな環境のなかで努力を重ね、周囲のサポートに支えられて、なんとか世界と戦ってきた人物たち。だからこそ、「もっと競技のことを知ってほしい」というモチベーションが生まれ、魅力的な言葉やフレーズが生まれるのだろう。

 そんな名解説の中でも、個人的にもっとも印象深かった解説を最後に記したい。

 それは、24日(土)の『デイリーハイライト』における三宮恵利子氏の言葉。当日、スピードスケート女子マススタートで、チームパシュートに続いての金メダルを獲得した高木菜那選手を評して、こんなことを語っていた。

「パシュートって、『姉妹で取る金メダル』『チームで取る金メダル』が注目されましたけど、マススタートは、高木菜那選手というひとりの選手が生きたレースだった。『美帆選手の姉』という言葉も『姉妹』という単語もなく、高木菜那というワードが生きたレースだった」

 浮かれるのはワイドショーだけで十分。解説者の締まったコメントがあるからこそ、アスリートたちの存在はより光り輝く。この後の平昌パラリンピックでも、解説者たちが紡ぐ言葉に期待したい。
(文=オグマナオト)

オードリー・若林正恭の“熱い姿”が見られる唯一の番組が、今シーズンもやっぱり熱かった件

 今年に入ってから、コンビそろって話題を提供し続けているのがオードリーの2人、若林正恭と春日俊彰だ。新春早々、女優・南沢奈央との熱愛が発覚し、メディアをにぎわせたり番組でいじられたりしている若林。一方の春日は、東大受験の話題がこれまたスポーツ紙をにぎわせている。

 特に若林は、これまでの「人見知りキャラ」「女の子苦手芸人」「草食系」とのギャップも相まって、いいネタというか、カモにされている印象すらある。いずれにせよ、コンビのどちらにもニュースバリューがある、という時点で、今のオードリーの安定ぶりがうかがえる。

 そんなオードリーの魅力がもっとも味わえる番組は何か、というと、筆者が一番推したいのが、彼らのレギュラー番組のなかでも認知度が低いであろう、金曜深夜放送のオードリーの『NFL倶楽部』(日本テレビ系)だ。

 アメリカ4大スポーツのひとつ、プロ・アメリカンフットボール(NFL)の試合結果と魅力を伝えてくれるこの番組。オードリーがレギュラーになったのが2010年シーズンだから、もう7シーズン目に突入したことになる。振り返れば、オードリーがM-1で準優勝し、その勢いのままテレビに出まくって一気にスターダムにのし上がったのが2008~09年の出来事。まだ人気者になったばかりの頃から、芸能界で盤石な地位を築いた今でも、オードリーの2人がライフワークとして熱を入れ続けているのがこの番組ではないかと思っている。

 世間的には、暑苦しくて空回りしている春日と、それを冷静に処理する若林、という構図で認知されているオードリー。だが、この番組ではむしろ逆。春日は変わらず空回りしがちなのだが、若林の熱が過剰になるあまり、春日以上に空回りすることも。「人見知り」で「草食系」な若林なんて、この番組には存在しない。とにかく若林が熱すぎるのだ。

 今月2日深夜、アメリカプロスポーツ最大の祭典・スーパーボウル直前の放送でも、番組終盤に突然、「俺はねぇ、ずっと我慢してきたんですけど……ブレイディが好きだぁ!」と叫んだ若林。ブレイディとは、これまで若林が番組において“アンチ”を公言してきたNFL屈指のスーパースター(なぜなら、地位も名誉も手にしていて、奥さんも美人だから)。そのブレイディを「すごい」と評することはあっても、「好き」と語ったことは、これまでなかったはず。実際、4日に行われた今年のスーパーボウルでは、そのブレイディの一投が勝敗を決する最後のプレーとなり、9日深夜に放送された『NFL倶楽部』では、そのプレーを振り返りながら、「最後の0秒まで(勝敗の行方が)わからないのは、ブレイディだから。それを俺らは何度も見てきているからね」と、しみじみとコメントした若林。前の週の熱い叫びがあるからこそ、より印象的なひと言になっていた。

 また、番組では毎週、「若林の熱視線」というコーナーでNFLのプレーをマニアック解説。この番組におけるオードリーの役割は本来「MC」のはずなのだが、進行はアナウンサーに任せ、しっかりと解説業までこなしてみせている。先月には、この「若林の熱視線」を書籍化した『オードリーのNFL倶楽部』(文藝春秋)が発売。すぐに増刷が決まったというから驚かされる。

 オードリーが好きな人であっても、「NFLには興味ないから」とか「深夜だから」「(NFLシーズンだけに放送される)不定期番組だから」と見ていない人が多いのではないかと思われるこの『NFL倶楽部』。だが、オードリーファンにこそ見てほしい。というのも、この番組で見せる2人の関係性こそが、「オードリーの原点」だからだ。

 学生時代、ともに同じ高校のアメフト部でプレーしていた2人。若林は、関東代表にも選ばれる選手だった春日を見て、「いつか、こいつとコンビを組もう」と思ったといわれている。その後、実際にコンビを組み、結成当初にやっていたネタのひとつがアメフトのショートコント。それどころか、春日の決めゼリフである「トゥース!」も、もともとはアメフトで集合の合図として使われる掛け声だ。この『NFL倶楽部』では番組冒頭の合図として使用され、若林もしっかり声を張っている。

 芸能人が、あるスポーツの魅力について語ることは許せても、解説までしてしまうと「ちょっと待てよ」と思うことも珍しくない。だが、アメフトとNFLに関しては、オードリーの2人の7シーズンにわたる継続的な取り組み、そして「若林の熱視線」の信頼性もあって、不思議と嫌な感じがしない。今季の放送も残りあと数週間。試合自体はもう終わっているので、あとはオードリーのスーパーボウル珍道中がメインになるはず。むしろここからオードリー色がさらに濃くなると思うので、ぜひ一度、熱すぎる若林に熱視線を送ってもらいたい。
(文=オグマナオト)

オードリー・若林正恭の“熱い姿”が見られる唯一の番組が、今シーズンもやっぱり熱かった件

 今年に入ってから、コンビそろって話題を提供し続けているのがオードリーの2人、若林正恭と春日俊彰だ。新春早々、女優・南沢奈央との熱愛が発覚し、メディアをにぎわせたり番組でいじられたりしている若林。一方の春日は、東大受験の話題がこれまたスポーツ紙をにぎわせている。

 特に若林は、これまでの「人見知りキャラ」「女の子苦手芸人」「草食系」とのギャップも相まって、いいネタというか、カモにされている印象すらある。いずれにせよ、コンビのどちらにもニュースバリューがある、という時点で、今のオードリーの安定ぶりがうかがえる。

 そんなオードリーの魅力がもっとも味わえる番組は何か、というと、筆者が一番推したいのが、彼らのレギュラー番組のなかでも認知度が低いであろう、金曜深夜放送のオードリーの『NFL倶楽部』(日本テレビ系)だ。

 アメリカ4大スポーツのひとつ、プロ・アメリカンフットボール(NFL)の試合結果と魅力を伝えてくれるこの番組。オードリーがレギュラーになったのが2010年シーズンだから、もう7シーズン目に突入したことになる。振り返れば、オードリーがM-1で準優勝し、その勢いのままテレビに出まくって一気にスターダムにのし上がったのが2008~09年の出来事。まだ人気者になったばかりの頃から、芸能界で盤石な地位を築いた今でも、オードリーの2人がライフワークとして熱を入れ続けているのがこの番組ではないかと思っている。

 世間的には、暑苦しくて空回りしている春日と、それを冷静に処理する若林、という構図で認知されているオードリー。だが、この番組ではむしろ逆。春日は変わらず空回りしがちなのだが、若林の熱が過剰になるあまり、春日以上に空回りすることも。「人見知り」で「草食系」な若林なんて、この番組には存在しない。とにかく若林が熱すぎるのだ。

 今月2日深夜、アメリカプロスポーツ最大の祭典・スーパーボウル直前の放送でも、番組終盤に突然、「俺はねぇ、ずっと我慢してきたんですけど……ブレイディが好きだぁ!」と叫んだ若林。ブレイディとは、これまで若林が番組において“アンチ”を公言してきたNFL屈指のスーパースター(なぜなら、地位も名誉も手にしていて、奥さんも美人だから)。そのブレイディを「すごい」と評することはあっても、「好き」と語ったことは、これまでなかったはず。実際、4日に行われた今年のスーパーボウルでは、そのブレイディの一投が勝敗を決する最後のプレーとなり、9日深夜に放送された『NFL倶楽部』では、そのプレーを振り返りながら、「最後の0秒まで(勝敗の行方が)わからないのは、ブレイディだから。それを俺らは何度も見てきているからね」と、しみじみとコメントした若林。前の週の熱い叫びがあるからこそ、より印象的なひと言になっていた。

 また、番組では毎週、「若林の熱視線」というコーナーでNFLのプレーをマニアック解説。この番組におけるオードリーの役割は本来「MC」のはずなのだが、進行はアナウンサーに任せ、しっかりと解説業までこなしてみせている。先月には、この「若林の熱視線」を書籍化した『オードリーのNFL倶楽部』(文藝春秋)が発売。すぐに増刷が決まったというから驚かされる。

 オードリーが好きな人であっても、「NFLには興味ないから」とか「深夜だから」「(NFLシーズンだけに放送される)不定期番組だから」と見ていない人が多いのではないかと思われるこの『NFL倶楽部』。だが、オードリーファンにこそ見てほしい。というのも、この番組で見せる2人の関係性こそが、「オードリーの原点」だからだ。

 学生時代、ともに同じ高校のアメフト部でプレーしていた2人。若林は、関東代表にも選ばれる選手だった春日を見て、「いつか、こいつとコンビを組もう」と思ったといわれている。その後、実際にコンビを組み、結成当初にやっていたネタのひとつがアメフトのショートコント。それどころか、春日の決めゼリフである「トゥース!」も、もともとはアメフトで集合の合図として使われる掛け声だ。この『NFL倶楽部』では番組冒頭の合図として使用され、若林もしっかり声を張っている。

 芸能人が、あるスポーツの魅力について語ることは許せても、解説までしてしまうと「ちょっと待てよ」と思うことも珍しくない。だが、アメフトとNFLに関しては、オードリーの2人の7シーズンにわたる継続的な取り組み、そして「若林の熱視線」の信頼性もあって、不思議と嫌な感じがしない。今季の放送も残りあと数週間。試合自体はもう終わっているので、あとはオードリーのスーパーボウル珍道中がメインになるはず。むしろここからオードリー色がさらに濃くなると思うので、ぜひ一度、熱すぎる若林に熱視線を送ってもらいたい。
(文=オグマナオト)

今年は“当たり年”だけに……2018年の「スポーツの伝え方」で期待したいこと

 2018年はスポーツの当たり年。目前に迫った平昌冬季オリンピックから始まり、3月の平昌パラ、6月のサッカーロシアW杯、夏の甲子園第100回記念大会と、ビッグイベントが目白押しだ。だからこそ、スポーツを伝える側に期待したい点や注目メディアについて、3つの視点から探ってみたい。

■卓球界の“広告塔”は誰になる!?

 

 14歳の張本智和が史上最年少で全日本王者になるなど、ますます盛り上がりをみせる日本卓球界。卓球が楽しめるカフェやバーも一気に増えてきた。卓球はここ数年、オリンピックや世界選手権で好成績を収めるなど、日本人が世界で活躍できる競技という立ち位置を確立。“日陰の部活動”の代名詞だった時代がウソのような盛り上がりぶりだ(もちろん、とても喜ばしい)。

 ただ、その日陰だった時代があるからなのか、今ひとつ突き抜けた盛り上がりを手にできていないように思う。そこで重要になってくるのが「卓球の広告塔」の存在だ。

 この「広告塔」には2種類ある。ひとつは、アスリート側=アイコン的選手の台頭だ。数年前まで、卓球界のアイコン的役割を担ってきたのは福原愛だったが、現在は休養中。そこに生まれた待望の新スターが“チョレイ”張本智和、というわけだ。

 そして、もうひとつの広告塔がメディア側の人材。しゃべりのプロが、いかに競技や選手の魅力を広げてくれるかどうか。卓球の場合、この部分でもの足りなさがある。わかりやすくいえば、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「卓球芸人」を企画する際に、リーダーとしてその魅力が語れる人物がまだ見当たらないのだ。

 現在、この立ち位置に最も近いのは、テレビ東京系の卓球中継でパーソナリティを務める福澤朗。そして、らくご卓球クラブを取り仕切る三遊亭小遊三……うーん……若手世代に向けて発信していくには、ちょっと重鎮すぎるのだ。もっと楽しく、ほどよく熱く卓球の魅力について語れる人材が出てくると、卓球界の盛り上がりはいよいよ本物になるのではないだろうか。

 高校野球におけるアンジャッシュ・渡部建、広島カープにおけるチュートリアル・徳井義実、相撲におけるナイツ・塙宣之といったポジションに、卓球では誰が落ち着くのか? そろそろ今年あたり定まってもいい頃合いだと思うので、注目して待ちたい。

 

■LINE NEWSのスポーツインタビュー企画が新しい

 

 スポーツの話題がどんどん増えているからこそ、それを伝えるメディアの数もWEBを中心にどんどん増えている。ただ、正直いって玉石混淆。ページビュー獲得だけを狙った質の悪い記事も多い。また、スポーツ紙、スポーツ雑誌がWEB用に展開する記事やコラムの場合、細かくページが分断されて公開されているものがほとんどで、はっきりいって読みにくい。ページビュー信仰の悪しき弊害だ。

 そんな中、異彩を放っているのが昨年10月からスタートしたLINE NEWSのインタビュー企画。LINE NEWS編集部が独自に取材したコンテンツが「読みやすく」「内容も深い」と評判だ。特に今月公開された第7弾、『阿部勇樹、イビチャ・オシムに会いに行く。』の前・後編は、スマホ時代のスポーツ・ノンフィクションの見本になるのではないだろうか。

 具体的には、従来のページビュー狙いではなく、明らかにページ滞在時間狙いでつくられていること。ページを切り替えることなく、下へ下へとスクロールして最後まで読み進めることができる。また、スマホで読むことに特化した文字量やサイトデザインがなされているのも特徴的だ。ひとつひとつのパラグラフが短く、合間合間に取材動画が挿入され、記事内容の補完的役割を果たしている。

 もちろん、こうした表現をするサイトやコンテンツはこれまでにもあったが、ことスポーツネタではまず見かけることはなかった。文字情報と動画をうまくリンクさせたスポーツ記事も新鮮だ。

 興味深いのは、これらの特集企画を取材・執筆しているのが、スポーツ紙の元記者であるということ。スポーツ紙ならではの取材力はそのままに、スマホに最適化された構成がなされているのだ。LINEというメディアの可能性と、スポーツ紙というメディアの古さが露見した、ともいえる。

 現状、担当している記者はひとりだけ。だが、扱う競技は多岐に渡り、それぞれの取材内容や切り口はひとつひとつ新鮮だ。まだ、あまり知れ渡っていないように思うのだが、もっともっと広く読まれていいコンテンツだ。

 

■2018年は、過去を振り返る絶好の機会

 

 今年はスポーツイベントが多いだけでなく、スポーツ界にとってさまざまな「節目」の年でもある。春のセンバツ甲子園が90回、夏の甲子園が100回記念大会。それはつまり、第70回センバツと第80回夏の甲子園で燦然と輝いた松坂大輔の甲子園物語から、ちょうど20年がたったことを意味している。

 ほかにも、Jリーグが誕生から25周年。W杯に初出場してから、ちょうど20年。プロ野球では埼玉西武ライオンズ40周年や福岡ソフトバンクホークス創設80周年、北海道日本ハムファイターズが北海道移転15周年。もひとつおまけに、「週刊ベースボール」(ベースボール・マガジン社)の創刊60周年、なんてものもある。

 何が言いたいかというと、2018年は、過去をしっかり振り返る年にしなければならない、ということ。スポーツの醍醐味のひとつは、歴史との比較。過去の偉人たちが打ち立てた記録や物語を、現在に生きるアスリートたちが継承し、更新していくところで新たなドラマが生まれる。

 だからこそ、各メディアやスポーツを扱う媒体には、過去を改めてしっかり掘り下げてほしい。そのなかから、後世にも語り継がれる良質なコンテンツが生まれるのではないだろうか。2018年は、その絶好の機会のはずだ。
(文=オグマナオト)

スポーツ熱の高まりと、スポーツ熱のある人々と──「2017年スポーツメディア考」

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックが着々と迫る中、2017年のスポーツメディアはどんな盛り上がりを見せたのか? 印象深かった番組や特集企画などをおさらいしたい。

 

■スポーツ系番組で求められ始めた「熱量のあるプレゼン能力」

 

 今年、スポーツ系番組で最も秀逸だったと思うのが、Amazonプライム限定コンテンツ『有田と週刊プロレスと』だ。Amazonレビュー評価では、星5つが88%。各種マスコミレビューでも、いい評判を見かけることが多い。

 くりぃむしちゅー有田哲平が毎回1冊の「週刊プロレス」をテーマに、語って、語って、語りまくり、プロレスから学ぶべき人生の教訓を伝授する……というプロレストークバラエティ。始まったのは昨年末のことだが、そこから今年5月までがシーズン1。2カ月半のブレークを挟んで、すぐにシーズン2がスタート。民放の各種番組がどこかぬるい企画を続けるなか、有田とこの番組スタッフの熱量の高さは実に痛快だった。

『有田と週刊プロレスと』が革新的なのは、スポーツ系番組の“核”ともいうべき、試合映像が使えない(使わない)点にある。その代わり、肝となるのが有田の話芸であり、モノマネ力であり、プレゼン能力だ。

 もちろん、過去にもトーク力を生かしたスポーツ系番組はあったが、ここまで徹底して試合映像を使わないものはなかったはず。その無謀な企画を可能にしているのは、有田の異常なまでのプロレス知識であり、プロレス愛であり、そして何よりも歴史を知っていることにある。

 スポーツファンにもいろいろな層があって、中には歴史には興味がない、という人も意外といる。それどころか、過去の名選手・名試合について興味がない、という現役アスリートも実に多い。だが、その競技のことを真剣に考え、認知度を高めていく上では、歴史を知ることも重要のはず。有田もまた「歴史を学んでください」と番組内で何度も口にする。とことんマニアックでありながら、どこかアカデミックな印象もあるからこそ、プロレスファン以外からも支持を集めるのではないだろうか。

 同様に、マニアックな知識で競技愛を発露したのが、ボクシング中継における俳優、香川照之の存在だ。実は10年以上前から、香川の熱狂的ボクシング愛は変わっていない。だが、村田諒太が22年ぶりにミドル級世界王者になる、という快挙も手伝って、フジテレビの中継でゲスト解説を務めた香川のボクシングトークにも日の目が当たった格好だ。

 SNS上での香川照之ボクシングトークへの評判は、正直なところ否定的な声も多い。だが、香川の圧倒的なボクシング知識は、今後、ボクシングファンの裾野を広げるのに大きな役目を担ってくるのではないか、と勝手に期待している。世間的には『昆虫すごいぜ!』(NHK)での怪演ぶりの方が話題だが、「2017年の香川照之」という意味では、ひとくくりに覚えておきたい。

 マニアックな競技愛をこじらせた結果、その競技の伝道師となった有田哲平と香川照之。来年以降、同様の存在が、他の競技でもどんどん出てくるのではないだろうか(というか、出てきてほしい)。

 

■好感が持てた、テレビ東京のスポーツ熱

 

「熱量」という点でもうひとつ、今年のトピックスとして押さえておきたいのが、テレビ東京におけるスポーツ熱の高まりだ。

 テレビ東京といえば、日本にサッカー文化を根づかせた往年の名番組『三菱ダイヤモンドサッカー』や、箱根駅伝を日本テレビよりも前に中継していた──などなど、かつてはスポーツをキラーコンテンツとしていた時代もあった放送局。あの「ドーハの悲劇」も中継したのはテレビ東京だ。

 だが、サッカーや駅伝の人気が高まった結果、皮肉にもそれらの中継権は他のキー局へ。ここ最近、特に若い世代において、テレ東=スポーツ、というイメージはなかったはず。

 そんなテレビ東京が今年5月末、「テレ東スポーツ祭」と題して『世界卓球2017ドイツ』と『全仏オープンテニス2017』を連日連夜放送。特に卓球は日本人選手の活躍もあって大きな盛り上がりを見せた。05年から「世界卓球」を地上波独占放送してきたテレビ東京の執念が実ったといえる。

 このほかにも、夜帯のスポーツ番組『SPORTSウォッチャー』では、ビビる大木を又吉直樹と並ぶMCに据えてテコ入れを図ったり、さまぁ~ずがさまざまなスポーツに体当たりで挑戦するスポーツバラエティ『さまスポ』が今春から始まったりと、今年のテレビ東京がスポーツに対して、例年以上に予算と時間と人をかけていたのは明白。『SPORTSウォッチャー』では、日本テレビ顔負けの巨人・阿部慎之助への密着取材など、気になる企画も多かった。

 もともと、バラエティでは他局以上に実験的な企画を仕掛けてくるテレビ東京。今後、スポーツものでも、他の局が思いつかないような企画が飛び出してくるかもしれない。

 

■DAZN・楽天の本格参入元年。スポーツメディアは、どう変わる!?

 

 スポーツメディア史、という意味で、17年のトピックスとして外せないことがもうひとつ。ライブストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」の本格参入だ。

 17年から10年間、2,100億円という巨額の契約でJリーグ全試合の放映権を獲得したDAZN。これまでJリーグの有料放送を担ってきたスカパー!の会員数が落ち込んだ、というニュース以上に、Jリーグ自体が1シーズン制に戻り、賞金額が大幅に増えるなど、競技のあり方そのものにも大きな影響を及ぼしている。

 DAZNはJリーグ以外にも、どんどん中継コンテンツを増やしているが、ほかにも、楽天がNBA視聴サービス『Rakuten NBA Special』を、この秋からスタート。これまでNHKでのNBA中継を楽しみにしていたファンからは困惑の声も聞こえている。

 考えてみれば、上述した『有田と週刊プロレスと』もAmazonプライム限定コンテンツ。17年は、「スポーツの視聴方法や楽しみ方」そのものが大きく変わった年、として後年、大きな意味を持つことになりそうだ。

 その一方で、これまた上述したテレビ東京をはじめ、既存のテレビ局にとっても、“2020年”を控えている以上、スポーツはますますキラーコンテンツだ。だからこそ、従来的な、ひな壇芸人を並べてのアスリートいじり、といった手垢のついた企画よりも、熱量あふれた企画や番組作りが今後はますます求められるはず。18年、新規サービスと既存メディアの競争がより顕著になることで、純粋に面白いスポーツ系番組が増えることを期待したい。
(文=オグマナオト)