沢村一樹が刑事生活20年分の記憶を失ってしまった役で主演を務めるドラマ『刑事ゼロ』(テレビ朝日系)も今回で最終回。14日に放送され、平均視聴率10.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録しました。
(前回までのレビューはこちらから)
前回、タロットカードの図柄に見立てた2件の殺人容疑で逮捕される直前、ネットニュース記者の外山直澄(粟島瑞丸)が拳銃自殺してしまう事件が発生。その自宅を時矢暦彦(沢村一樹)らが捜索したところ、外山が模倣したとされる、能見冬馬(高橋光臣)が3年前に起こした殺人事件も自身が犯行に及んだという遺書が見つかります。
また、犯人しか持っていないであろう犯行現場で撮影した遺体写真も見つかったため、能見は釈放されることに。しかしその後、能見を勾留していた留置場の看守・草場友喜(今野浩喜)が、部屋の壁にローマ数字が彫り込まれていることを発見。その連絡を受けた時矢は、6件目の殺人事件を示唆しているのだと直感し、すぐさま能見の元へと向かいます。
しかし、能見はすでに何者かに殺された後でした。捜査に行き詰まってしまった時矢は、元妻で能見の弁護人でもある奥畑記子(財前直見)に頭を下げ、犯罪心理学の権威・藤林経子教授(南果歩)による能見の精神鑑定書を見せてもらうことに。すると意外なことが発覚します。
前回、時矢が面会した時には、藤林は能見の心神喪失の可能性は低いと語っていたものの、鑑定書には「高い」と記されていたのです。さらに、これまでの殺人事件のターゲットになった人物らが全員、藤林から精神鑑定を受けたことや、彼女自身と能見、外山がいずれも過去に事件や事故で家族を失い、その加害者が後に死亡したという共通点も判明するのでした。
それらの事実から時矢は、“復讐を果たせなかった加害者の人数分、殺人事件で不起訴になったターゲットを身代わりに裁きを下す”ことができるという論理のもと、藤林らが犯行を重ねていたのではないかと推測します。
さらに、能見から突き落とされ、記憶を失った事件の現場であるビルの屋上へ足を運んだ時矢は、落下する直前に能見から、殺人事件の容疑者らに罪を下せなかったのは「刑事の罪」だと言われたことを思い出し、罪悪感にとらわれるのでした。
そんな時矢の様子が気がかりな相棒刑事・佐相智佳(瀧本美織)は、ふとした瞬間に時矢を見失ってしまい、連絡が繋がらず途方に暮れてしまいます。するとその夜中、藤林が教授として在籍する大学へ来るよう時矢から連絡があり、嫌な予感を抱きつつ構内へ向かったところ、腹部を刺された藤林の遺体と、血が付着したナイフを握りしめる時矢の姿を発見。犯行時のことが記憶にないという時矢ですが、状況的に犯人とみなされて留置場へ送られてしまいます。
智佳たちはショックで落ち込むのですが、そこへ時矢から封筒が送られてきます。その中には、タクシーに乗って大学まで向かう様子を撮影したペン型のカメラが入っていて、時矢が構内に到着した時にはすでに藤林が殺されていたことや、何者かに後頭部を殴打されたために昏倒し、目が覚めた時には血の付着したナイフを握りしめさせられていたことが映されているのでした。
アリバイが証明されたことで釈放された時矢は、マスコミに囲まれ揉みくちゃに。その混乱の中、何者かにナイフで腹部を刺されるものの、犯人の手を掴んで放しません。そこへ駆けつけた智佳たちが取り押さえた犯人は、留置場の看守・草場。時矢は以前、能見から、「郵便配達に気をつけろ」という謎の忠告をされたことがあるのですが、それが“犯人には思えない普通の人物にこそ注意しろ”という意味だと気づき、署から出る前に防刃ベストを着用していたため致命傷を免れたのです。
その後、取調室にて、容疑者たちがまったく反省の色を見せない姿を目の当たりにして我慢できず犯行に及んだ、という草場の供述を引き出した時には、記憶を失う前の状態に戻ったかと思われた時矢ですが、結局記憶は戻らないまま。シリーズ化をニオわせたところで終了となりました。
さて感想ですが、前回のラストから怪しげな存在として登場し、今回の序盤も黒幕だと思わせる演出がてんこ盛りだった藤林があっさり殺害され、草場が真犯人というのは、視聴者の裏をつくことだけが目的の薄っぺらく雑な脚本だと感じました。
反省の色が見えない容疑者たちに腹が立つ気持ちはわかりますが、それが連続殺人を起こすほどの動機になりますかね。また、“復讐を果たせなかった人数分、殺しをする”という論理も理解に苦しみます。タロットカードの意味を持ちだしてもっともらしくこじつけていましたけど、無理やり感が半端なかったです。
それと、「郵便配達に気をつけろ」というメッセージは、ミステリーの古典小説からの引用とのことですが、能見がなぜ時矢にそんなことを言ったのかもよくわかりません。時矢に回りくどいヒントを与えておちょくっていたということなんですかね?
また、“目立たない人間”に気をつけろというのであれば、もう少しキャスティングに気を遣った方が良かったのではないかとも思いました。草場役の今野は個性的な顔ですし、他の作品で犯人やミスリード役として登場することが多いですから、何の意味も持たずに出演することはないとすぐに予想がつきます。
藤林に会いに行く時、時矢がなぜ隠しカメラで撮影していたのかもよくわからなかったのですが、このドラマは今回に限らず全体的にご都合主義な演出が目立ちました。記憶を失う前は誰からも一目置かれる存在だった時矢が、新人の智佳に尻に敷かれる、という関係性はシリーズ化向きの面白さがあるだけに、次作があるならばもう少し謎解き部分にも注力してもらえたらと思います。
(文=大場鴨乃)


