『トレース~科捜研の男~』微減も、高視聴率! 錦戸亮人気だけじゃない、キープの秘訣とは!?

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『トレース~科捜研の男~』の第2話が1月14日に放映された。

 1話から0.5ポイントダウンするも、11.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と2桁視聴率をキープ。最近の月9の視聴率アップや、3連休の最終日という環境の良さも理由にあるだろう。

 だが、前クールの『SUITS』(同)が2話で、1話から3.1ポイントダウンの11.1%だったことを考えると、本作第2話は好成績だったと言える。今回は、なぜトレースが高視聴率に恵まれているか、その要因を考察したい。

■第2話あらすじのおさらい

 まずはあらすじを事件パートと人間ドラマパートに分けて紹介する。(ネタバレを防止したい人は、「フジテレビオンデマンド」や「TVer」での見逃し配信を見てから、本記事を読むことをお勧めします)

 まずは事件パートから。

 祝賀パーティ会場のバルコニーから突き落とされ死亡する外科医・真田和寿(名高達男)。真田の娘・有里(関めぐみ)は、バルコニーから逃走する被疑者・宮永渉(篠原篤)を目撃。現場バルコニーで宮永が真田と揉み合った際に残ったと思われる血痕が発見され、真野礼二(錦戸亮)と沢口ノンナ(新木優子)はDNA鑑定を行う。だが、血痕は別の人間のモノであった。

 宮永は釈放されるも、現場で彼の落とした折り鶴が発見される。さらに殺された真田も同じ折り鶴を所持していた。2つの折り鶴で被害者と被疑者の接点が見えてくる。

 捜査一課の虎丸良平(船越英一郎)が、宮永が過去、真田の病院で骨髄移植を受けた患者だった確証を得る。宮永は他者の骨髄を貰い受けたことで、複数のDNAを持つ“キマイラ”という特異体質だったと発覚。血痕から宮永のDNAが検出されなかったのもそのためだ。

 真田を殺したのは宮永と断定しかけた矢先、有里が宮永に襲われる。宮永の真田殺害の動機は、有里に移植された心臓にまつわるエピソードにあった。そして、悲しい過去と事件の真相がわかり、第2話は幕を閉じる。

 以上が事件パートを中心に追ったあらすじである。そこに新木優子演じる沢口ノンナをメインとした人間ドラマパートが絡み合う。新人として科捜研の仕事に悩むノンナは、被害者の娘・有里と親交を深め、励まされる。しかし、科捜研の一員として父親が殺された理由が有里にあったというつらい真実を突きつける結果に。「真実で人は救えない」と落ち込むノンナを、礼二が「真実が人を前に進ませる。お前はよくやった」と前向きにさせる。

 第2話は、上記で分割した事件パートと人間ドラマパートの織り交ぜ方が見事だった。

 ストーリーの“構成”という類の話であるが、高視聴率の要因はその構成にあると感じる。次章では上記あらすじを元に、構成が高視聴率を呼び込んだ理由を分析する。

■最初から最後まで飽きずに見られる手品の種とは?

 タイトルまでの冒頭5分で、【主人公・礼二が仕事に苦悩するノンナと共に、宮永のDNA不一致の謎を追う回】だと分からせたことが、高視聴率の決め手だろう。

・開始1分まで――真田が転落し、娘・有里が被疑者・宮永を発見。

・開始3分まで――科捜研の足手まといとなっているノンナの苦悩を提示。

・開始5分まで――宮永のDNAと現場に残された血痕のDNAが一致しない。

 その後、人間ドラマはノンナの苦悩に集約し、ノンナが有里と励まし合う中で被疑者と被害者のバックグラウンドが見える作りになっていた。ノンナが悩むほど事件の真相に近づくという構造だ。その構造により、ドラマ冒頭で示した見所から物語が逸れることなく、事件の真相とノンナの悩み解消というゴールへと導かれていく。物語に脱線が少なく、視聴者が見たい部分だけを見せることができるため、飽きてチャンネルを変える人が少なかったのではないか。

 唯一の脱線といえば、あらすじでは触れなかった【虎丸の捜査班の解体の危機】という要素だけ。これは、DNA不一致により宮永を誤認逮捕したとされ、一週間以内に事件を解決できなければ班が解散するというもの。事件にもノンナの悩みにも作用しない要素ではあるが、一週間以内というタイムリミットと、解決すれば班の続行が叶うというメリットを提示できた。スーパーマリオでいうところの時間制限とピーチ姫の救出の役割と同じく、物語にメリハリを与え、のめり込んで見られる要素となっていた。

「冒頭で見所を明確に提示」「見所から脱線しにくい構造」「のめり込む要素の散りばめ」、その3点がバランスよく構成されていたことにより、第2話が見易く飽きないモノとなっていた。

■『トレース』は、他の事件モノまで面白くさせる作品か?

 前章で挙げた3つのポイントは、多くのドラマが心がけている基本ではある。ただ、『トレース』の場合は他のドラマ以上にセオリーに忠実で、見る人への配慮が行き届いている。その手堅さを、ウェルメイドに感じてつまらないと思う人もいるかもしれない。

 だが、スタンダードなドラマがあるからこそ、他のドラマの個性を楽しむことができる。2018年度の話題となった事件モノのドラマを例にあげてみよう。

 まずは『アンナチュラル』(TBS系)。この作品は、ベタな事件モノを見ている人ほど楽しめる作りになっている。「普通ならこうなる」というドラマ的なセオリーとは違う斜め上の展開が随所に見られた。また、『リーガルハイ』(フジテレビ系)や『科捜研の女』(テレビ朝日系)などの有名作品を意識したパロディ的な小ネタも頻出する。

 高視聴率を博した『99.9』(TBS系)であれば、他の事件モノよりもミステリー難易度を下げ、キャラの軽妙なやり取りに特化したドラマだと見てとれる。

『トレース』を基準に他の事件モノのドラマを見てみると、各ドラマの斬新さやドラマ全体のトレンドが見えやすくなるだろう。

 そう言うと、まるで『トレース』が無個性ドラマのようだが、本作の個性は細かいポイントに散りばめられている。紫のトレードカラーや、『科捜研の女』を意識したサブタイトルやキャラの名前(沢口靖子由来かもしれない、沢口ノンナ)が挙げられる。その小ネタを作中でイジることなく視聴者にツッコミを委ねてしまう割り切りも洒落ている。

 笑える、重厚、斬新など、ドラマを形容する言葉はさまざまだが、『トレース』は「美しいドラマ」と評するのが相応しい作品だと思う。真摯に視聴者を楽しませようとする心意気も、ドラマ界全体を見渡した上での存在意義も、何を見せたいのか明確な作品性も、美しいと感じるからだ。これは綺麗ごとかもしれないが、作り手の誠実さが、視聴率に反映しているとも思えてくる。

 今回は第2話の構成にスポットを当てたが、全話を通した構成も楽しみである。

 第1話では、『主人公たちはどんなキャラクターなのか』を、第2話では構成の絶妙さで『どんな事件を扱うドラマなのか』を丁寧に描いていた。

 1月21日放映予定の第3話では何を見せてくれるのだろうか。虎丸の先輩刑事が過去に捜査した事件と酷似する児童の殺人を扱うため、虎丸のキャラや過去にスポットが当たるのか。それとも許しがたい殺人で、メイン3人の事件へのリアクションの違いを示してくれるのか。作り手の意図や意識にも注目しながら、第3話を楽しみにしたい。

(海女デウス)

錦戸亮主演月9『トレース』視聴率12.3%の好スタート! “科捜研の男”はまさかの胸キュンドラマ!?

 2019年1発目の月9ドラマ、『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)が1月7日に放映スタート。前クール『SUITS』(同)の初回14.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)には及ばないものの、2桁視聴率の好発進だった。

 本題に入る前に、本作の内容を紹介。

 科捜研の法医研究員・真野礼二(錦戸亮)と沢口ノンナ(新木優子)のコンビが、捜査一課の虎丸良平(船越英一郎)らの反発の中、指示されていない捜査や鑑定で、事件の真相へとたどり着く1話完結型の物語。

 本記事ではトレースの見どころを登場人物や制作陣にスポットを当て、紹介したい。

 キーワードは“胸キュン”と“程よい距離感”。1シーン目から切断された左手がゴロッと転がる事件モノなのになぜ胸キュン?……。その理由は、次章より第1話の内容に触れながら、解説していく。

■シリアスなストーリーに散りばめられたキャラ萌え要素

 切断された左手を元に、礼二とノンナがバラバラ遺体を山中で発見。それを機に、被害者女性の家庭内暴力を受けた過去、そして被害者女性が誰を守ろうとし、誰に殺されたのかまでを科学鑑定を元に解き明かす1話だった。

 ルールに抗い刑事の指示なく真相の解明をする科捜研の男。指示を聞かない男を怒鳴り圧力をかけるベテラン刑事。2人の板挟みで振り回される新米研究員のヒロイン……と、事件モノではベタな構図と言える。しかしその分、1シーン1シーンに無駄が少なく、難しい専門知識は分かりやすく説明され、ハイスピードな展開ながらついていくことができる洗練された1作であった。

 引き込まれる要因は、前述した3人の男女それぞれの魅力だろう。

 まずは主人公・礼二。「他の人と視点が違う」というのが彼の魅力なのだが、捜査や鑑定以外の場面でも、視点の違いは生かされていた。バラバラ遺体を発見して食欲を無くした新人・ノンナに対し、「彼女(被害者)は君に見つけてもらって感謝してると思う」と励ます。ただのバラバラ遺体が、殺されるまで普通に生活していた一人の女性だったとノンナだけでなく視聴者の認識まで変えてしまう名シーンだった。

 ノンナ自身も守られるばかりの受け身な女性のままでなく、事件の鍵を握る関係者に感情でぶつかり解決の糸口を掴む活躍を見せた。

 また、礼二を怒鳴ったり担当から外したりする虎丸刑事のキャラは特に秀逸。傍若無人なパワハラ刑事に見せながら、裏では上司からは嫌味を言われ、家に帰りを待つ家族は無く、人生を刑事の仕事に捧げてきたという不器用な男だ。ラストは報われない被害者女性を哀れみポロっと涙を見せてしまう人情家ぶりまで垣間見える。

 淡々と3人の人物像を書き連ねたが、正直思う。何たるや胸キュン要素のつまった人たちだろうか……!!

 錦戸扮する礼二の最大の武器は天才的な頭脳でなく、同僚や被害者にふと垣間見せる優しさ。新木優子も媚びる女でなく仕事に正面から立ち向かう強い女子。船越英一郎は中年の悲哀と孤独を背負った涙もろいオッサン(しかもツンデレで負けず嫌い)。

 濃い面々とはいえ、キャラを強調するための無駄なお笑いシーンやお涙頂戴シーンをわざわざ作らず、ストーリーを捜査や鑑定から脱線させずにキャラの魅力を出せていた。

 役者陣の力量もさることながら、演出家や脚本家の手腕も素晴らしい。

 次章では本作の演出家と脚本家について迫りたい。

■脚本家と演出家はフジヒットドラマを支えた名コンビ

 まずは脚本家の相沢友子氏。『やまとなでしこ』(2000年、フジテレビ系 ※中園ミホ氏と共作)『恋ノチカラ』(02年、フジテレビ系)などを手掛けて来たベテラン作家である。演出家の松山博昭氏も『信長協奏曲』(14年、フジテレビ系)などのヒット作のメガホンを取った実力者だ。

 そして、その二人がタッグを組んでいたのが本作と同じ月9の事件モノ『鍵のかかった部屋』(12年、フジテレビ系)。本作と同様に、程よい距離感の3人の男女が事件を解決するスタイリッシュなドラマであった。

 この、“程よい距離感”というのは、相沢友子氏のなせる技なのかもしれない。前述した『恋ノチカラ』も堤真一と深津絵里が、上司部下の程よい距離感だったからこそいじらしくなり応援してしまう、見ていて幸せな気持ちになれるラブストーリーだった。

 本作『トレース』にはラブの要素はなさそうだが、メイン3人のキャラ萌えに加え、3人の距離感にも着目すれば、事件モノ+αの楽しみ方ができるかもしれない。

■『トレース』が再認識させてくれた月9の在り方

 月9はトレンディ時代の恋愛ドラマ全盛期を経て、最近では事件モノが多くなった。ジャンルの違いはあっても、キャラの魅力を楽しめる枠が月9だったなぁと本作を見て再認識させられた。『東京ラブストーリー』の赤名リカ(鈴木保奈美)、『ひとつ屋根の下』の“あんちゃん”こと柏木達也(江口洋介)、『やまとなでしこ』の桜子さん(松嶋菜々子)、『ガリレオ』の湯川教授(福山雅治)など、ジャンル問わずヒット作品には忘れられない人物がいた。対して、ヒットしなかった作品は登場人物がどんなキャラだったかハッキリと思い出せない。

 本作『トレース』も、キャラの個性や、やりとりにスポットを当てれば今の高視聴率を持続できるような気がする。

 今後も、黒幕的な存在感を出している千原ジュニア扮する刑事部長などキャラクターで楽しめそうな要素が満載だ。第2話以降も、楽しみに見続けていきたい。

(海女デウス)