AIが関与!?する韓国の“ネット性暴力”とPV至上主義がもたらした元f(X)のソルリの死

 今年10月中旬、韓国で人気の女性アイドルグループf(X)の元メンバー・ソルリが、自宅で死亡しているのがみつかった。自殺だった。

 ソルリを自殺に追いこんだのはインターネット上の悪質な書き込み(韓国語で「アクプル」)だったと、多くの韓国メディアが分析している。それらはまるで鬼の首を取ったかのような書きぶりである。

 しかし、どの国においても、インターネット上に悪質な書き込みは氾濫している。「アクプルがソルリを苦しめ自殺に追い込んだ」という表面的な認識は、問題の本質を隠ぺいするものでしかない。メディアに自身を露出し続ける日々のなかで、彼女を常に苦しめてきたもの正体はほかならぬ「性暴力」だったのではないだろうか。

 11歳の頃にデビューしたソルリは、思春期から大人の女性に成長する過程において、メディアや世間から、プライベートや自身の考えを罵倒され続ける人生を歩んできた。特に彼女が、女性である自分の権利を主張した際には“攻撃”がエスカレートした。

 一回り年上のヒップホップ歌手との交際が発覚した時、また自身のアカウントで「ノーブラ」に見える姿で動画配信を行った時など、SNSのコメント欄には罵詈雑言や“性的虐待”のような書き込みが殺到した。

 韓国で堕胎を違法とする堕胎罪に違憲判決が下った時、ソルリが賛意を表明すると批判や罵倒が燃え上がったこともある。いずれも共通点は、彼女が「性」について自由や権利、意見を主張した時である。

 韓国メディアは、ソルリに対して向けられるインターネット上の性暴力に対して警鐘を鳴らすどころか、おもしろおかしく書き立て続けた。彼女が自殺した後、まるで正義の使者のように振る舞っている韓国メディアだが、彼女が苦しんでいる時にはひたすら悪意に火に油を注いできたのも彼らである。韓国では、そのようなメディアの商売手法を「コメント商売」、もしくは「女嫌商売」という。明らかな性暴力があったのにもかかわらず、彼女を守るメディアはほぼ皆無だったのだ。業界内部からはこんな声も聞こえてくる。

「“女嫌”を始めとする嫌悪感を増幅するニュースは、クリック数が増えるのでメディアの食い扶持となっている。また、韓国メディアはNAVERという大手ポータルに依存する傾向が強いのだが、そのNAVERは人でなくAIがニュースを選抜している。嫌悪感を増幅するニュースは人気が高いので、それをAIが検索で引き上げPVがさらに増えるという悪循環がある。韓国の記者の中では『AI様に向けて記事を書こう』など皮肉が酒の肴になって久しい」(韓国紙記者)

 公権力や政治、さらには女性の平等を唱える人々も、進歩派を自称する人々もソルリの問題を無視し続けた。驚いたことに「彼女は芸能人だから特別だ」として、誰も手を差し伸べてなかったのだ。芸能人と「アクプル」をテーマとし、ソルリが最後まで出演を続けたTV番組『アクプルの夜』も、結果的に彼女を守ることはなかった。彼女に対するアクプルに直接目を向け、ドキュメンタリーでも作った方が何倍もリアリティがあったのではないだろうか。

 ソルリはこの世を去ったが、韓国で「次のソルリ」が生まれるのも時間の問題かもしれない。実際、元ボーイフレンドからリベンジポルノを流布させると脅迫を受けたのにもかかわらず、むしろ非難中傷され自殺を図ったク・ハラの事件から韓国社会は何を学んでいいない。性被害や暴力を経験した女性芸能人たちは、ネット上の書き込みや誹謗中傷で2次、 3次的に被害を今でも受け続けている。

世界が注目する上海ファッションウィークとは? ドルガバ炎上後もブランド進出!中国ファッション界の急成長とリスク

――近年、上海ファッションウィークに出展するブランドは中国国内/国外問わず増え続け、世界的に通用し得るハイセンスな国産ブランドが頭角を現している。しかし一方で、ドルチェ&ガッバーナのPR動画が大炎上し、中国市場を一瞬にして失うという出来事もあった。そんなこの国のファッション界の実態を見ていこう。

一瞬にして巨大な中国市場を失ったD&G

 2018年11月、ドルチェ&ガッバーナ(以下、D&G)が上海で開催を予定していた大型ファッションショーが中止となった。原因は公式インスタグラムで公開されたショーのPR動画。アジア系女性が箸を使い、ぎこちない様子でピザやスパゲッティなどを食するという内容で、箸を「棒」と表現するなど「アジア文化を冒涜している」としてすぐさま炎上。さらに、D&Gのデザイナーであるステファノ・ガッバーナ氏が、抗議に対して公式インスタグラムで「君は僕が炎上を恐れていると思っているのかい」などと挑発し、ショーに出演予定だった女優チャン・ツィイーなど多くの有名人が続々と不参加を表明した(ガッバーナ氏は後に「アカウントが乗っ取られた。現在、弁護士が対応中だ。私は中国と中国文化を愛している。このようなことが起き、非常に残念だ」と釈明)。結果、ショーが中止となっただけでなく、同ブランドの商品が中国のECサイトや百貨店などから撤去される――つまり、D&Gは中国市場を失ったのである。

 なお、報道によると、D&Gの本国イタリアにおける17年度の売上高はたった24%。一方で、「日本を除いたアジア地域」は30%にのぼる。その大部分は、現在44店舗を展開している中国が占めているという。『ラグジュアリーブランディングの実際』(海文堂出版)などの著書がある早稲田大学ビジネススクールの長沢伸也教授は、D&Gの騒動について次のように解説する。

「イタリアのブランドであるD&Gは、これまでもたびたびシチリアピザを食べる女性モデルなどの広告を展開してきました。その流れもあって、軽いジョークのつもりでPR動画を制作したのでしょう。それが思いがけず炎上してしまった。慌ててしまったのか対応が遅く、不適切だったため、さらに炎上。ジョークのつもりでも、ブランド全体の3割の売り上げが一瞬で吹っ飛んだのだから代償は大きい。現在も中国国内の店舗は閑散としているそうです。政治的・文化的な文脈が絡む炎上なので、立ち直るには早くても人々が騒動を忘れてしまう3年、長ければ世代が入れ替わる10年はかかると思われます」

 ほかのラグジュアリーブランドも、そんなD&Gの騒動を見て気を引き締めたのではないだろうか。というのも、「ラグジュアリーブランド全体においても、売り上げのおよそ3割を中国人による購買(購買地は中国国内外を問いません)が占めている」(長沢氏)からだ。

「なかでも1992年にいち早く中国に進出したルイ・ヴィトンは、北京、上海、深セン、広州といったいわゆる一級都市はもとより、それに次ぐ二級都市や、さらに小さな都市にも店舗を展開しています。あるいは、プラダは11年に香港証券取引所に上場し、生産も中国で進めて、中国シフトをアピールしました。ただ、“メイド・イン・チャイナ”の商品がブランディング的に裏目に出たため、ここ4~5年は顧客が離れてしまい、ようやく下げ止まった印象です。また、07年にはフェンディが万里の長城でショーを行い、19年にはカルティエと北京の故宮博物院が共同で特別展を開催するなど、各ブランドとも中国マーケットを重視し、中国文化に敬意を表するイベントを開催しています」(同)

 ちなみに、二級都市と呼ばれる杭州は日本人にはマイナーな都市かもしれないが、同地の高級百貨店「杭州大厦购物城」は、17年時点における中国のデパートの中で「北京SKP」に次ぐ2位の売り上げを誇る。もちろんこの建物には、ルイ・ヴィトン、エルメス、カルティエ、ディオール、フェンディなどが出店している。

 ただし、中国国内でのラグジュアリーブランド品の価格は関税や消費税、さらに贅沢税がかかっているため、日本に比べて20%程度も割高である。それゆえに、日本の銀座をはじめ国外のあちこちで、中国人観光客がブランド品を爆買いする様子が見られるわけだ。

 ともあれ、ブランド品消費の中心となっているのが、“80后”と呼ばれる80年代生まれの層である。しかし、36年間にわたる一人っ子政策を取ってきた結果、中国は日本以上に深刻な少子高齢化が予想されている。中国社会科学院によると、17年に約10億人いた15歳から64歳までの生産年齢人口が、50年には約8億人に減少し、60歳以上の高齢者に関しては50年までに総人口の3分の1=約5億人にのぼると見られているのである。

「そのため今後、消費が落ち込むことは予測できます。そこでブランド側は、少子高齢化と消費の成熟化が進む日本でいかに対応するか、今のうちにノウハウを身につけておくことが求められます」(同)

 当然ながら、日本のアパレル企業も中国市場を無視しているわけではない。だが、ここ数年、中国に進出した企業の多くは競争の激化で苦戦しているようだ。ピーク時に300店を展開し、上海の繁華街である南京東路にファッションビルを開業していたイトキンは、16年に完全撤退。13年のピーク時に589店あったハニーズホールディングスも、18年に撤退した。好調なのは、進出は02年と後発ながら、20年度には中国全土に1000店体制を構築するというユニクロくらいである。

 こうした状況も確かにあるが、ファッション感度の高い一部の中国のバイヤーから、日本の先端をいくインディーズブランドに注目が集まっている。このきっかけとなったのが、ファッションショーや見本市、ショールームが開催され、中国全土から毎回約5万人のファッション業界関係者が訪れる「上海ファッションウィーク」(03年に初開催)だ。
「3~4年前は数えるほどしか出展していなかった日本のブランドですが、今年3月末~4月頭に開催された『上海ファッションウィーク2019AW』には120以上が出展したと報じられています。それだけ日本のブランドが中国で評価されているということもありますし、日本の市場がファストファッション中心で、プロダクトアウト(消費者のニーズよりもデザイナーの理念や創造性を優先する方法)のブランドにとってツラい状況になっているため、上海ファッションウィークへの期待が高まっているということでもある。すぐに大きなビジネスにつながらなくても、毎回新しい中国各地のバイヤーと出会えるので、2回、3回と続けて出展するブランドが多いですね」

 こう語るのは、上海を拠点に日本のブランドの中国進出を支援するKMT inc.代表の兒玉キミト氏。特に地方都市の需要が伸びているという。

「一級都市はブランドやセレクトショップが増えすぎて飽和状態ですし、東京やニューヨークへの直行便も多く、バイヤーは東京コレクションやニューヨークファッションウィークに直接行ってしまう。そうした環境ではない重慶、成都、西安、烏魯木斉などのバイヤーのエネルギーを強く感じます。情報や物量が多い一級都市とはファッションに対するリテラシーも違うので、それほど知名度が高くないインディペンデントブランドでも、バイヤーが気に入りさえすれば受け入れられる可能性が高い。しかも、中国は人口が多いので、一部の人に受け入れられるだけでも十分商売になる点が魅力となっています」(兒玉氏)

 また、日本からの出展ブランドが急激に増加した背景には、通信速度の向上とインターネット利用者の増加が関係しているのではないかと兒玉氏は分析する。中国で4G回線のサービスが始まったのが、13年末から14年にかけて。15年に総人口に対するネット利用者の割合が50%を超え、海外のファッションメディアにアクセスするようになるなど、地方都市に至るまで若者のファッションセンスが大きく向上した。ECサイトも日本以上に浸透しており、ネットショッピング大手「天猫(Tモール)」「京東商城(ジンドン)」のほか、「YOHO!(ヨーホー)」というサイトがストリート系では圧倒的人気を誇る。もともとファッション誌からスタートした「YOHO!」は、メディア、小売、イベントの3つを事業の柱として業績を伸ばしている。

「ただ、中国ファッション市場で気をつけるべき点は、やはり偽物。今年6月、上海に旗艦店を出していたフェイクブランドのシュプリーム イタリアが、本家シュプリームの働きかけにより中国での登録商標を抹消されたばかり。こうした点は日本よりトラブルが多いですね。また、バイヤー側が日本と比べると成熟しておらず、経営スキルが高くないケースが多々ある。そのあたりは取引先となったときに注意しておかないと、経営が突然傾いて損失を被る可能性もあります」(兒玉氏)

 そんなリスクがありつつも、日本を含めたさまざまな国外ブランドが中国市場を狙っているわけだが、中国発のブランドも負けじと成長し、今後は世界に打って出るケースが増えてくるかもしれない。中国の若手デザイナーを取材するファッション・ジャーナリストの倉田佳子氏は、このように語る。

「上海ファッションウィークの開催期間中に行われる、国内の若手デザイナーや新興ブランド(下段コラム参照)をフィーチャーしたショー『LABELHOOD(レーベルフッド)』は毎回、上海当代芸術博物館やTANKといった十分な広さのある大型美術館を会場として使い、大がかりに開催しています。ショーのフロントロウには、欧米のショーでも見かけるような有名メディアの編集長や人気ブロガーらが招待ではなく、自発的に取材に来ていますね。中国国内のみならず、海外からも注目されていることがよくわかりますよ」

 前出の兒玉氏も中国ブランドや人材に着目している。

「やはり資本力があるので、海外進出は大いにあり得ます。実際、スポーツアパレルブランドの李寧(リーニン)はニューヨークでショーを開催し、その話題を受けて中国国内でも『海外でウケている』と購買者が増加、業績を回復させています。これからも、ブランディングという意味で欧米に打って出ようと考えるブランドは増えるでしょう。とはいえ、海外進出には財力だけでなく、ファッションに関する知識やスキル、センスなども磨く必要があるわけですが、その点では、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズやニューヨークのパーソンズ美術大学、日本の文化服装学院など世界のファッション名門校で中国の留学生が増加している。このように海外留学を経験してから中国で働く若者たちは“海亀”と呼ばれ、期待されていますね」(兒玉氏)

 しかし、「LABELHOOD」のファウンダー/ディレクターであるターシャ・リュウに取材したことがある前出の倉田氏は、こうした留学一辺倒の教育システムに疑問を呈する。

「海外のファッションスクールに行く前段階としての塾が中国国内に何校もあるのですが、そこを経て留学するとなると、トータルの学費はかなりかかる。つまり、国内の学校で優秀な人材を十分輩出できる日本と違い、中国には留学させられる経済力のある家庭の子女でないとファッションデザイナーになれない、という暗黙の了解が染み付いているのです。留学から帰国した後、家族経営をして家族に還元するという価値観もいまだに根強く残っていますが、ターシャは金銭面を第一条件とせずに、純粋にクリエイションを重んじる学生を育てられる安定した環境を整備すべく動き始めているようです」(倉田氏)

 上海ファッションシーンにカネが飛び交い、熱気を帯びているといっても、文化としての成熟はもう少し先のことかもしれない。しかし、変化は速い。中国のファッション界が猛スピードで成長し続けているのは間違いない。

「『LABELHOOD』は単に若手のブランドを業界内に紹介するのみならず、演出面で一般客を楽しませるために工夫をするなど、クリエイション全体を成長させようという気概を感じます。その上で、国外へのプロモーション活動に積極的に取り組み、スポンサーを集め、長期的なビジネスとしても成り立たせようとしているんです。そこに、服として魅力あるブランドがもっと増えていけば、海外でもより面白い展開を見せるのではないでしょうか。また、デザイナーだけでなく、メディアという面でもWeChatを中心に発信する個人がブランドのプレスリリースをそのまま記事にするなど未熟な部分があるので、批評の環境が整備されれば相乗効果でファッション界が底上げされていくと思います。いずれにしろ、成長の速度がスゴいので、今後が楽しみですね」(倉田氏)

“メイド・イン・チャイナ”がオシャレの象徴になる日は、目の前に来ている。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

中国で前年比2倍を記録する「次なるバブル」2.5次元ミュージカルに13億人が熱視線!

「バブル」と言われ、右肩上がりのグラフを描いている中国の映画業界。もちろん、映画に限らず、成長著しい中国には世界各国のエンターテインメントが続々と輸入されている。なかでも近年では、ミュージカルの勢いが止まらない。

 他国に比較してまだミュージカルの観劇人口は少ないものの、2017年には前年比2倍となる3.5億元(約58億円)の興行収入を記録。まだまだ伸びしろのあるオイシイ市場を開拓しようと、17年から、劇団四季ではオリジナルミュージカル『魔法をすてたマジョリン』や『人間になりたがった猫』を中国の企業にライセンス販売し、中国事業に本格進出を遂げた。

 また、オタク女子を中心に爆発的な人気を誇っている2.5次元ミュージカルも中国に進出。日本のマンガ人気を背景に、2015年以降、『テニスの王子様』『刀剣乱舞』『黒執事』『美少女戦士セーラームーン』といった作品の数々が輸出されており、17年からは、2.5次元ミュージカルの中国公演用劇場として上海にある「虹橋芸術センター」を使用。現地のファンのみならず、わざわざ日本から足を運ぶ腐女子たちも多い。

 だが、映画と同様、もちろん演劇も検閲制度と無関係ではなく、事前に脚本とビデオの提出を求められるほか、公演中に突然検閲官が劇場を訪れて違反がないかを確認する。

 日本のミュージカル作品ではまだ検閲問題は表面化していないが、同性愛をテーマとしたブロードウェイミュージカル『スリル・ミー』の上海公演では、作品のキモとなる男同士のキスシーンはカットされた。また、昨年には、ドイツを代表する劇団「シャウビューネ」による環境問題をテーマとした演劇公演が検閲によって上演中止の事態に陥ってしまった……。

 映画に限らず、中国でカルチャービジネスを円滑に進めていくためには、検閲制度に対しても十分な理解が必要になるのだ。

――外国映画にも容赦なく適応される中国当局による検閲制度。では、どのような作品たちが検閲の壁に阻まれたのだろうか? ここでは、検閲によって修正や上映禁止の憂き目にあった外国作品を紹介しよう。

同性愛シーンは全カット!

【1】『ボヘミアン・ラプソディ』
フレディ・マーキュリーを主人公にし、日本国内だけで127億円、全世界で9億ドルの興行収入を叩き出した『ボヘミアン・ラプソディ』は、中国でも2019年に公開。しかし、1997年まで同性愛が犯罪とされ、現在も根深い差別意識が残っている中国では、男同士のキスシーンや、フレディが婚約者に自らのセクシャリティをカミングアウトするシーンなど、同性愛に関わる描写はすべてカットされている。また、性的過ぎるからか、フレディの股間がクローズアップされるシーンも削除されてしまった……。

 

中国に媚びても効果なし!!

【2】『ゴーストバスターズ』
80年代に大ヒットした映画『ゴーストバスターズ』のリブート版。ニューヨークのチャイニーズレストラン2階に事務所を構えているという設定や、メンバーのひとりがワンタンスープが大好きといった中国の観客に対するサービスが随所に盛り込まれていたものの、検閲によって公開はNGに……。中国では現代を舞台にした映画において迷信やオカルトを描くことは認められず、そもそも80年代に公開された初代『ゴーストバスターズ』もなじみが薄いことなどが、検閲を通過できなかった理由といわれている。

 

国家主席が大激怒!?

【3】『プーと大人になった僕』
ユアン・マクレガー主演による「くまのプーさん」の実写版となるこの作品も、中国では公開されなかった。実は、この理由、「習近平とプーさんが似ているから」と囁かれている……。13年、当時のオバマ大統領と習近平国家主席が歩く様子が、プーさんとティガーが並んで歩く様子に似ているというネタ画像が投稿され、中国国内で大ブームに。以降、中国ではプーさんが政治的反抗の象徴となり、SNS上でも、プーさんの画像投稿は禁止されているのだ。もちろん、作品内に検閲に抵触しそうな描写は一切ない。

 

1度はOKだったのに……

【4】『進撃の巨人 紅蓮の弓矢』
中国の動画サイトで4億回以上の再生回数を誇る人気作品『進撃の巨人』。この劇場版となる『紅蓮の弓矢』は、2015年の上海国際映画祭「日本映画週間」での上映が予定されていたものの、前日に急遽上映中止が言い渡された。事前検閲こそ通過していたものの、映画祭直前に中国文化省が同作を含む日本のアニメ38作品を「未成年者の犯罪や暴力、ポルノ、テロ活動を煽る内容が含まれる」としてインターネットでの配信を禁止。映画の上映も、この煽りを受けてしまったようだ……。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

タグホイヤーから青島ビールまで…リーグ優勝賞金は驚愕の70億円! Jリーグも完敗の中国サッカー

――欧州や南米から有名選手を、あり得ない金額で“爆買い”することで有名となった中国サッカー・スーパーリーグ。今や、資金力や観客数ではJリーグを凌駕するほどになっている。ただし、あまりの状態に中国政府もやんわり規制に入っている状態のようだ。このまま、中国サッカーバブルは終焉してしまうのか?

「中国の人々にとって、金額は問題ではない」

 中国・スーパーリーグの取材を始めた際、広州恒大淘宝足球倶楽部(以下、広州恒大)のイ・ジャンス元監督(元韓国人選手)が語った言葉だ。当初、イ元監督の言葉にはピンとこなかったが、取材を続けるほど、その意味するところが身に染みてきた。

 近年、広州恒大はアジアサッカー連盟・チャンピオンズリーグ(AFC)で2度優勝している。そのため、中国スーパーリーグのレベルの高まりを疑う人は徐々に減ってきている。そんな実力もさることながら、驚くべきは中国スーパーリーグの市場規模だ。すでにアジアの域を脱し、英プレミアリーグ、スペインリーグ、独ブンデスリーガ、伊セリエA、仏リーグアンなどといった、世界トップリーグのそれを脅かそうとしている。単純に中継権の規模だけをみても全世界で6位。前述した欧州のリーグを除けば、中国スーパーリーグより中継権が高いリーグは世界にない。

 中国のスポーツメディア『體奧動力』は2015年9月、中国スーパーリーグと5年間の中継権契約を結んだ。合計金額は80億元(約1252億7722万円)である。體奧動力が1年間で支給する中継権料(約250億円)は、DAZNがJリーグに支給する中継権料(約210億円)よりも多い。一方、韓国Kリーグの中継料は1年間で60億ウォン(約5億5910万円)ほどだ。仮に21年から中国スーパーリーグの中継権を得たい企業は、さらに高い金額を支払うことになろう。なお中国の中継料は、各球団の投資が増加すると共に一気に上昇した。2013シーズンにはわずか1000万元(約1億6000万円)に過ぎなかった。

 中国最大の生命保険会社であり金融機関でもある平安グループは、中国スーパーリーグのネーミングスポンサーを担い続けている。17年に再延長契約を結んだ際には、5年間で総額1億4500万ドル(約15億6128万円)を支払うとした。世界的なスポーツ用品メーカーであるナイキは、19年6月から29年までの10年間、用品スポンサー契約を結び、現金のみで毎年約18億円を支給することにしている。実際に、支給される製品や現物を金額換算して合わせると、その約3倍となる見通しだ。スポンサーは、平安グループやナイキだけではない。DHL、Shell、TAG Heuer、青島ビールなど、世界的な企業が中国スーパーリーグのスポンサーに名乗りをあげている。
 スポンサーシップの規模が膨らむ中、中国サッカー協会と中国スーパーリーグが掲げた優勝賞金も破格となっている。19シーズンの優勝チームには、4億5000万元(約70億4684万円)が支給される。なお、Jリーグで優勝すると優勝賞金と分配金を合わせ約21億5000万円が支給される。韓国・Kリーグ優勝賞金は日本円にすると約5000万円である。欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズリーグ優勝賞金が25億円程度であることを考えると、中国スーパーリーグの優勝賞金がどれだけ大きいか伺い知れよう。なお欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズリーグは、ラウンドを通過するたびに賞金を受け取るため、優勝すれば合計100億円程度をもらうことになるのだが。いずれにせよ、中国大陸を制覇した恩恵がとびきり大きいという事実は揺るがない。

 このように企業が中国スーパーリーグを後援する理由は何か。それは単に中国の経済規模が大きいからというだけではない。サッカー人気そのものにも着目しているのだ。中国スーパーリーグの平均観衆数は24107人(18シーズン)だ。これは、独ブンデスリーガ(44421人)、英国プレミアリーグ(37906人)、メキシコ・リーガMX(27832人)、スペインリーグ・プリメーラディビジョン(27143人)、伊セリエA(24784人)に次いで6位。すでに米メジャーリーグサッカー、仏リーグアンを上回っている。Jリーグは18883人(1部)であり、Kリーグは6505人に過ぎない。中国スーパーリーグの人気は今この瞬間にも高まっている。企業はそのような成長するリーグそのものに投資したいと思っている訳だ。

 中国スーパーリーグを見ているとたびたび驚く。世界的な選手や監督があまりにも多く活躍しているからだ(下段コラム参照)。16年に、長春亜泰と山東魯能の試合を取材した際には、世界的な選手や監督に直接遭遇したこともある。韓国人であるイ・ジャンス監督を取材するためロッカールーム前で待機していると、欧州のおじさんにすれ違いざまに目であいさつされた。よく見ると、ドイツの有名選手・指導者のフェリックス・マガト(当時、山東魯能の監督)ではないか! 続いて身体が大きな選手がひとりロッカールームに入っていった。元イタリア代表のグラツィアーノ・ペッレである。韓国人のチェ・ヨンス氏が江蘇蘇寧で監督を務めていた頃には、ラミレス・サントス・ド・ナシメント(英プレミア・チェルシー出身)に直接インタビューすることもできた。

 選手を引き抜くため、各チームは多額の契約金をばらまいている。有名選手の“爆買い”だ。中でも最も大きな話題となったのは、16年12月、上海上港がチェルシーでプレーしていたブラジル代表出身のMF・オスカル・ドス・サントス・エンボアバ・ジュニオールを、6000万ポンド(約88億円)で引き抜いた事例だろう。チェルシーにとっても、過去最高の移籍金収入だった。ちなみに、Kリーグの最高移籍金記録もすべて中国スーパーリーグの球団が作った。全北現代でプレイしていたキム・ギフィが上海申花に行く際には約7億円が支払われている。2019シーズンも同じような金額で選手が移籍しており、これらは欧州の球団が支払う移籍金よりもはるかに高い水準だ。

 中国で活躍する世界レベルの選手たちの年俸の総額は、実際のところベールに包まれている。誰も彼らがもらっている正確な金額を知らない。欧州でプレイするトップクラスの選手たちの週給は5000万円程度となるが、それと似たようなレベル、もしくは高い金額をもらっているとの予測があるだけだ。というのも、欧州よりも少ない年俸で知名度や格が低いとされる中国でプレイする理由がないからだ。なお中国リーグは年俸だけでなく、“手当”も破格だ。同国で活躍した韓国人選手のひとりは、「手当のことは親友にも明かしたことがない」と話す。これは勝利給のようなもので、重要な試合で勝利すると、手当が詰め込まれたキャリーバッグを引いて家に行くという話も事実に近いという。筆者が確認した最大の手当額は、一試合900万円だった。

 冒頭に書いた「中国の人々にとって、金額は問題ではない」という命題は現在、世界中のサッカー関係者だけでなくファンまで感じ取っている。欧州や日本、韓国のサッカー界は「中国スーパーリーグは最も非効率的なリーグ」と非難するが、中国側はその非効率をあまり気にしていない。金額は問題ではないからだ。

 ただし、中国内では多額の金額を支払って選手を獲得しようという動きが制限されつつもある。中国サッカー協会は、オスカルの移籍騒動をきっかけに、移籍収支(=移籍金収入-移籍金支出)が赤字となる球団が一定水準以上の移籍金を使った際、“その100%を「サッカー発展基金」として支払うべし”という規定を設けた。また、最高移籍金や最高年俸などを制限する制度も協議されている。

 中国サッカー協会が移籍金と年俸を制限しようとしている理由は、「金満体質的な獲得競争が激化するから」ではない。それは、球団とスポンサーが巨額の金額を取り交わす際に、そのお金を横領する可能性を当局側が疑っているからだ。中国の関係者は、「欧州のマスコミに出てくる選手の年俸をそのまま信じてはならない。選手が高い年俸をもらっているのは事実だが、実際はそれほど大きな金額ではない」と証言する。習近平主席の就任後、中国は以前とは異なり、規制が非常に厳しくなっている。いくら大企業の会長といえども、会社の資金を勝手に使うことができない。そんな中、中国の複数の関係者は、巨額の移籍金や年俸を支給するようにみせかけて、その一部を横領している可能性があると指摘している。

 ただ、中国スーパーリーグの“非効率的なお金の宴”は、今後少なくとも5年は続く可能性が大きい。すでに、中国国内選手たちの年俸や移籍金も高騰しおり、すぐに「正常」に戻すには時間がかかる。中国は1年のうちに自国選手であってもチームに5人しか連れて来ることができないルールがあるため、中国人選手の移籍金も非常に高くならざるを得ないという背景がある。同国のサッカーカルチャーや業界は非常に活性化しているが、選手を育てる速度がそれに対応できていないのが現状だ。結果的に、良い選手、中でも若い選手たちの“身代”はとても高価になるしかない。そのような需要と供給の不均衡が解決しない限り、「異常」は解決されないはずだ。

 さらに中国は、サッカー協会という枠組みを超え、政府レベルでスポーツ産業を振興しようという計画を持ち合わせている。中国の産業振興は、日本や韓国など資本主義国家とは異なり国のテコ入れがすさまじい。中国政府は2050年までにスポーツ産業の規模を大幅にはぐくむよう公式な計画を発表しているが、その中でサッカーが占める産業規模の割合は実に60%を超える。人知れず“それなりの計画”を“それなりの方法”で推し進めているのだ。

 そのような文脈では、中国スーパーリーグはお金の力で引き続き発展する可能性がある。リーグの発展は、サッカーのレベルと大きく関連しない。タイ、インドネシア、ベトナムのようにサッカーのレベルが比較的低い国でもプロリーグの人気は高い。そして今、中国市場は全世界の資本が集まる場所となった。しかも、中国市場は非常に成功しにくいところでもある。中国人が好きなサッカーを通じて、自社のイメージを変えようとする試みは一朝一夕では叶わない。企業は多額の金額を市場に投じるしかないのだ。

 そういう意味で、ナイキ、DHL、TAG Heuerのような多国籍企業も手をこまねいているわけではない。彼らは中国スーパーリーグと引き続き縁を保ち続けている。中国スーパーリーグはそれ自体、活用度が非常に高く、現在では、欧州でも中国スーパーリーグの中継を難なく見ることができる。また、全世界で中国人脈、また中国社会との関係を維持している“華僑”へのアプローチ手段にもなる。彼らは中国に関連したコンテンツを熱狂的に消費している。サッカーもそんな主要なコンテンツのひとつとなった。

 中国スーパーリーグという存在はとても不可思議だ。外部から見ると“異常”な部分が多い。取材をしてみても、理解できないことが多いのだ。それでも、我々が想像もできない方法で成長を遂げてきたのも事実である。今では、中国政府も注目するビッグコンテンツ。中国スーパーリーグがどんな道を歩んでいくか予想することは難しいが、ひとつだけ明らかなのは、どんな形であれ、今後も成長を続けていく、ということだ。


リュ・チョン(Chung Ryu)

サッカー専門誌「スポータルコリア」、英国雑誌「フォーフォーツー」のエディターを経て、2013年よりサッカー専門メディア「フットボリスタ」の取材チーム長として活躍。2017年からは中国および中国サッカーに関する記事を韓国最大ニュースポータル「NAVER」に寄稿。サッカー・旅行に関する書籍を多数執筆。

世界のタレントが中国に!

 中国スーパーリーグでは、数多くの世界的プレイヤーが活躍している。例えば、ブラジルの有名選手であるフッキことジヴァニウド・ヴィエイラ・ジ・ソウザや、オスカル・ドス・サントス・エンボアバ・ジュニオールが所属するのは上海上港だ。

 パウリーニョことジョゼ・パウロ・ベセーラ・マシエル・ジュニオール、タリスカことアンデルソン・ソウザ・コンセイソンは広州恒大に所属。広州は香港の北西部に位置する中国第三の都市である。テクノロジー都市・深センや観光地・マカオにも近く、広東料理が味わえる地域だ。サッカー観戦だけでなく、現代中国の動向や文化を知る上では欠かせない土地である。

 同じくブラジル代表のレナト・アウグストは、北京国安に所属している。一方、アレックス・テイシェイラ、本文に登場するラミレス、エデル・チタディン・マルティンス、元伊代表のガブリエル・パレッタは江蘇蘇寧に所属。現地に行けばそのプレイを直接拝むことができるかもしれない。江蘇省には東洋のベニスと冠される「山塘街」もある。中国にサッカーを見にいくならオススメの地域のひとつだ。

 また伊代表のグラツィアーノ・ペッレ、ベルギー現役代表のマルアン・フェライニは山東魯能に所属している。山東省はビールで有名な青島が人気の観光スポットとなっている。それ以外にも中国スーパーリーグでは、独代表だったザンドロ・ヴァーグナー(天津泰達)、ムサ・デンベレ(広州富力)、ヤニック・フェレイラ・カラスコ(大連一方)も中国大陸を闊歩している。アルゼンチン代表のエセキエル・ラベッシとハビエル・マスチェラーノは河北華夏幸福で大活躍だ。天津、河北、大連は、ともに北京から近い。少し長めの休暇を取れるのであれば、各選手を観戦しながら周遊することもできるかもしれない。

 なお、フッキ(2016年)やオスカル(2017年)が中国リーグに移籍した際、メディアからは「金を稼いですぐに去るだろう」という予測がすう勢だった。しかし、彼らは3年以上も上海上港に在籍している。パウリーニョは広州恒大でプレイした後、FCバルセロナに移籍。再び広州に戻ってきている。

 監督の面々も豪華だ。バロンドールを受賞したファビオ・カンナヴァーロ監督は広州恒大を率いており、独出身の戦術家ロジャー・シュミットは、北京国安を指揮している。韓国代表が望んでいたスペインの名匠キケ・サンチェス・フローレスは、上海申花の監督を務めているし、故ヨハン・クライフの息子であるジョルディ・クライフは重慶当代力帆の指揮を任されている。韓国代表監督だったウリ・シュティーリケは、今や天津泰達の監督だ。中国旅行を楽しみながら世界レベルのサッカーを楽しめる。サッカーファンにとって、そんなぜいたくな時代が訪れている。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

テンセントにネットフリックスも参戦! もはや毒肉まんは過去の話、国家も支援する「中国食動画」

――中華料理なんてものはない――中国の広大な国土の中で多様な民族がおりなす食を紹介する動画が今、熱い。さままざな形で同地のグルメを追求する動画が中国では大量に生産されており、ユーチューブなどで配信されている。13億人の人民がユーザーが熱狂する、ハイクオリティグルメ動画をご紹介!

 最国・雲南省にある屋台街が真俯瞰で映し出される。もうもうと煙が立ち込める小さな店内に、客たちは名物の牛肉串焼きを50本、100本単位で注文し、黙々と食べ続けている。ドローンなど最新の撮影機器を使用した映像は、欧米のドキュメンタリーとそん色がない。ナレーションは従来のドキュメンタリーのように静ひつさや重厚さはなく、話し言葉のようにポップな口調で展開される。そこに「1本が安くてもこれだけ食べると割高だよ」「串焼きを食べ過ぎるとがんになるって、ばあちゃんが言ってた」などの弾幕(コメント)が映像にかぶさって飛び交う。

 中国各地の串焼きを紹介する「人生一串」【1】のワンシーンだ。同作は、中国最大級の動画プラットフォーム「bilibili(ビリビリ)」が2018年夏に初めて制作したオリジナルのドキュメンタリー。

「人生一串」のシーズン1(全6話)は約5697万回再生され、約1万人のユーザーによるレビューも9・8と高スコアとなっている。7月のシーズン2の放映開始を前にして、多くのユーザーが続編を心待ちにしているようだ。同作の特徴は「90后」や「00后」といった90年~00年代生まれの若者をターゲットにしたところで、ビリビリのメイン層である二次元・アニメオタクに刺さるタイトルやナレーションを多用している。弾幕でユーザーたちがコメントを入れられるよう、あえて「ツッコミどころ」を要所要所に忍ばせてあるのだ。

 中国では近年、ドキュメンタリー番組が急増している。中国国務院「中国ドキュメンタリー発展報告2019」によれば昨年、全土で番組制作に投入された総額は約766億円(前年比19%増)、同市場規模は約980億円以上となっている。この急成長の原因のひとつは間違いなくグルメ番組の存在だ。昨年、中国で最も観られたのはグルメドキュメンタリー「風味人間」【2】で、視聴回数は10・7億回、2位の「舌尖上的中国シーズン3」(約4億回)もグルメ番組だ。他ジャンルと違ってグルメ番組に若者の視聴者が多いのは、ビリビリのような事例のほか、スマホやスマートテレビの動画配信で気軽にクオリティの高いグルメ番組が見られるからだろう。
 世界的に「食コンテンツ」がはやり始めたのは16年頃から。ネットフリックスやアマゾンプライムでは「シェフのテーブル」や「アグリー・デリシャス」などグルメ番組が数多く作られるようになり、時を同じくしてSNS上では「Tasty」や「Delish Kitchen」などオシャレで質の高いレシピ動画が多くの人々の間でシェアされるようになる。日本では「孤独のグルメ」や「深夜食堂」などグルメドラマがヒットし、食コンテンツはテレビ・動画のメインジャンルのひとつとなった。

 こうしたなか、中国の食コンテンツは世界の潮流から影響を受けつつ、独自の進化を遂げてきた。中国のグルメドキュメンタリーの元祖にして金字塔とも言われるのは12年に放送された「舌尖上的中国(舌の上の中国)」【3】だ。中国国営のCCTVが制作した同作は各地の名産品や郷土料理を紹介する内容で、3シーズン累計で10億人以上が視聴し、ネットで10億回以上再生されたオバケ番組。シーズン1(全7話)の撮影期間は13カ月、中国の70のエリアで撮影され、ドキュメンタリー番組として中国で初めてHDカメラが導入された。国内だけでなく、マレーシアなど東南アジアやベルギーなどEU圏のテレビ局が放映権を購入し、各国で放送されている。

 映像はいわゆる欧米のドキュメンタリーそのもの。さまざまな手法で撮られた食材や料理、美しい山間や海辺の風景。生産者やシェフへのインタビューなどが“国営”ならではの重厚なナレーションとともに紹介されていく。一部ではクルーにオランダ人など海外のカメラマンを起用していたという。シーズン3は昨年2月に放送が終了したが、今も動画配信プラットフォームではキラー・コンテンツのひとつとなっている。

「舌尖上的中国」の総監督を務めたドキュメンタリー映画の著名な監督・陳暁卿は中国メディアのインタビューで、「当時、世界でスローフードがはやりだして、その視点で中国グルメを紹介したいと思った」と述べている。同作が誕生した時期はまだ胡錦濤政権の時代。規律より拝金が横行していた。毒食品や偽装食品など食の現場で不正が横行した時期でもある。こうした情勢の中、中国では安全で安心な食品・原材料への関心が高まっていたこともあり、同作のテーマと視点は一般大衆の心に刺さったのだろう。

 シーズン1終了後、陳には1・6億円の投資が集まり、番組名の使用権は12億円の値がついたという。一躍、有名人となった陳はこの後シーズン2で番組を降板し、新たにテンセントと前述の「風味人間」という人気シリーズを手がけていく。テンセントビデオで独占配信された同作は昨年の中国動画ランキングで特別賞を受賞し、公開3時間後に再生回数が1億回を突破するなど大きな話題を呼んだ。日本はもちろん、欧米のドキュメンタリーをも超える高レベルの圧倒的なクオリティにいち早く目をつけたのがネットフリックスで、同社は陳と独占配信契約を結び、「風味人間」の続編に当たる「風味原産地/Flavorful Origins(邦題:美味の起源 奥深き潮州料理の世界へ)」【4】を制作。同作はネットフリックスオリジナルのドキュメンタリー作品で初となる中国語作品で、20言語に翻訳され、190カ国以上に配信された。

 陳が切り開いた中国のグルメドキュメンタリーは、ネットフリックスが独占契約したことにより、新たなステージに入った。豊富な資金力でトップクリエイターを招集し、最新の撮影技術やCGで学術的な食材に関する知識をわかりやすく、丁寧に伝えて世界中の人々に感動を与える。完成した映像は芸術品そのものだ。お笑い芸人による食レポや大食いを中心とした稚拙な食コンテンツがまん延する我が国との差は歴然としている。中国人動画配信者による、日本料理や食品の紹介は中国本土でも人気コンテンツだが、近い将来、中国のクルーが日本にやってきて、和食をテーマにしたクオリティの高いグルメドキュメンタリーを制作する日も近いのではないか。

 中国の食コンテンツでもうひとつ、注目すべきは素人による動画配信だ。グルメの世界においても多数の中国版ユーチューバーが出現し、芸能人並みの人気を得ている配信者もいる。

 テンセントが発表した「2018年十大美食紅人」(紅人は人気配信者の意)に挙がった10人はそれぞれ、オーソドックスな中華料理のレシピを紹介する人や中国やアジアのスイーツをひたすら食べ歩く女性、美少女大食い系などジャンルもさまざまだ。皆、「優酷(Youku)」やテンセントビデオ、ビリビリ、微博などのプラットフォームを利用しており、フォロワー数は数百万人を抱えている。先の十大美食紅人でトップに輝いた「美食家大雄」【5】は、家庭料理を紹介するごく普通の内容だが、語り口調や手際の良さ、短時間で美味しい料理を作る小技が受け、フォロワー数は800万人に上る。

 ひときわオリジナリティ溢れる人気配信者のひとりが「亦公室小野(オフィスの小野さん)」【6】という25歳の女性だ。ユーチューブにもチャンネルがあり、日本語の動画説明もある。ただし日本人ではなく、四川師範大学出身でIT企業に勤める高畑充希似の中国人だ。日本名を名乗っているのは日本文化に親しみを持つ90后だからなのかもしれない。彼女はオフィスにあるもので料理を作るという一風変わったテーマを採用。17年に「ウォーターサーバーで火鍋を作ってみた」がバズって有名配信者となった。工作や実験の要素を取り入れたクッキング動画が世界中で受け、ユーチューブのチャンネル登録者数は670万人を突破。昨年、中国本土在住者で唯一のカリスマユーチューバーとしてグーグルからも表彰された。ちなみにユーチューブのアクセスが禁止されている中国で、彼女を含めた多くの食関連の配信者がどうやって動画をアップしているのか謎だが、国内動画サイトで配信した作品を、香港などにいるパートナーがアップしているようだ。テーマが食で“無害”だからか、今のところ中国当局は黙認している様子。

 もうひとり、十大美食紅人で忘れてはいけないのが「李子柒」【7】だ。四川省の山奥で祖母と暮らすアラサーの美女で、動画にナレーションはなく、彼女の声も一切入らない。ただ淡々と素朴な日々の暮らしを伝えるものばかりだ。映像は素人とは思えないクオリティで、美しい風景とともに自給自足の中国スローライフを紹介する彼女の動画は瞬く間に人気が出た。微博のフォロワーはなんと1698万人。ユーチューブのチャンネル登録者数は496万人に上っている。

 ただし李子柒をめぐっては、さまざまなうわさも飛び交う。「四川省の省都・成都でDJをしていたが父の死をきっかけに田舎に戻った」という設定だが、売れないタレントでバックにプロデュースする男性がいるという話もある。彼女の微博での投稿は中国共産党青年団のアカウントが頻繁にリツイートして称賛していることから、中国政府のプロパガンダではないかと見る向きもある。数々の謎に包まれている彼女だが、それもまた魅力になっているのだろうか。

 彼らは動画広告や企業とのタイアップ、番組出演などでマネタイズする。中には法人化して投資を受ける配信者もいる。テンセントが発表した「2018微博アカウント発展レポート」によれば、月10億PV以上ある20のカテゴリーのひとつに「美食」がランクインしている。関連アカウントは現在1・5億以上あり、MCN(配信者のマネジメント会社)は150を越えるという。今後も関連コンテンツは増えていくだろう。

「食の本場」の名の通り、中国の食コンテンツは想像をはるかに超える規模で発展し、欧米を凌駕しつつある。今後、どんな作品が発表されるのか楽しみだ。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

テンセントにネットフリックスも参戦! もはや毒肉まんは過去の話、国家も支援する「中国食動画」

――中華料理なんてものはない――中国の広大な国土の中で多様な民族がおりなす食を紹介する動画が今、熱い。さままざな形で同地のグルメを追求する動画が中国では大量に生産されており、ユーチューブなどで配信されている。13億人の人民がユーザーが熱狂する、ハイクオリティグルメ動画をご紹介!

 最国・雲南省にある屋台街が真俯瞰で映し出される。もうもうと煙が立ち込める小さな店内に、客たちは名物の牛肉串焼きを50本、100本単位で注文し、黙々と食べ続けている。ドローンなど最新の撮影機器を使用した映像は、欧米のドキュメンタリーとそん色がない。ナレーションは従来のドキュメンタリーのように静ひつさや重厚さはなく、話し言葉のようにポップな口調で展開される。そこに「1本が安くてもこれだけ食べると割高だよ」「串焼きを食べ過ぎるとがんになるって、ばあちゃんが言ってた」などの弾幕(コメント)が映像にかぶさって飛び交う。

 中国各地の串焼きを紹介する「人生一串」【1】のワンシーンだ。同作は、中国最大級の動画プラットフォーム「bilibili(ビリビリ)」が2018年夏に初めて制作したオリジナルのドキュメンタリー。

「人生一串」のシーズン1(全6話)は約5697万回再生され、約1万人のユーザーによるレビューも9・8と高スコアとなっている。7月のシーズン2の放映開始を前にして、多くのユーザーが続編を心待ちにしているようだ。同作の特徴は「90后」や「00后」といった90年~00年代生まれの若者をターゲットにしたところで、ビリビリのメイン層である二次元・アニメオタクに刺さるタイトルやナレーションを多用している。弾幕でユーザーたちがコメントを入れられるよう、あえて「ツッコミどころ」を要所要所に忍ばせてあるのだ。

 中国では近年、ドキュメンタリー番組が急増している。中国国務院「中国ドキュメンタリー発展報告2019」によれば昨年、全土で番組制作に投入された総額は約766億円(前年比19%増)、同市場規模は約980億円以上となっている。この急成長の原因のひとつは間違いなくグルメ番組の存在だ。昨年、中国で最も観られたのはグルメドキュメンタリー「風味人間」【2】で、視聴回数は10・7億回、2位の「舌尖上的中国シーズン3」(約4億回)もグルメ番組だ。他ジャンルと違ってグルメ番組に若者の視聴者が多いのは、ビリビリのような事例のほか、スマホやスマートテレビの動画配信で気軽にクオリティの高いグルメ番組が見られるからだろう。
 世界的に「食コンテンツ」がはやり始めたのは16年頃から。ネットフリックスやアマゾンプライムでは「シェフのテーブル」や「アグリー・デリシャス」などグルメ番組が数多く作られるようになり、時を同じくしてSNS上では「Tasty」や「Delish Kitchen」などオシャレで質の高いレシピ動画が多くの人々の間でシェアされるようになる。日本では「孤独のグルメ」や「深夜食堂」などグルメドラマがヒットし、食コンテンツはテレビ・動画のメインジャンルのひとつとなった。

 こうしたなか、中国の食コンテンツは世界の潮流から影響を受けつつ、独自の進化を遂げてきた。中国のグルメドキュメンタリーの元祖にして金字塔とも言われるのは12年に放送された「舌尖上的中国(舌の上の中国)」【3】だ。中国国営のCCTVが制作した同作は各地の名産品や郷土料理を紹介する内容で、3シーズン累計で10億人以上が視聴し、ネットで10億回以上再生されたオバケ番組。シーズン1(全7話)の撮影期間は13カ月、中国の70のエリアで撮影され、ドキュメンタリー番組として中国で初めてHDカメラが導入された。国内だけでなく、マレーシアなど東南アジアやベルギーなどEU圏のテレビ局が放映権を購入し、各国で放送されている。

 映像はいわゆる欧米のドキュメンタリーそのもの。さまざまな手法で撮られた食材や料理、美しい山間や海辺の風景。生産者やシェフへのインタビューなどが“国営”ならではの重厚なナレーションとともに紹介されていく。一部ではクルーにオランダ人など海外のカメラマンを起用していたという。シーズン3は昨年2月に放送が終了したが、今も動画配信プラットフォームではキラー・コンテンツのひとつとなっている。

「舌尖上的中国」の総監督を務めたドキュメンタリー映画の著名な監督・陳暁卿は中国メディアのインタビューで、「当時、世界でスローフードがはやりだして、その視点で中国グルメを紹介したいと思った」と述べている。同作が誕生した時期はまだ胡錦濤政権の時代。規律より拝金が横行していた。毒食品や偽装食品など食の現場で不正が横行した時期でもある。こうした情勢の中、中国では安全で安心な食品・原材料への関心が高まっていたこともあり、同作のテーマと視点は一般大衆の心に刺さったのだろう。

 シーズン1終了後、陳には1・6億円の投資が集まり、番組名の使用権は12億円の値がついたという。一躍、有名人となった陳はこの後シーズン2で番組を降板し、新たにテンセントと前述の「風味人間」という人気シリーズを手がけていく。テンセントビデオで独占配信された同作は昨年の中国動画ランキングで特別賞を受賞し、公開3時間後に再生回数が1億回を突破するなど大きな話題を呼んだ。日本はもちろん、欧米のドキュメンタリーをも超える高レベルの圧倒的なクオリティにいち早く目をつけたのがネットフリックスで、同社は陳と独占配信契約を結び、「風味人間」の続編に当たる「風味原産地/Flavorful Origins(邦題:美味の起源 奥深き潮州料理の世界へ)」【4】を制作。同作はネットフリックスオリジナルのドキュメンタリー作品で初となる中国語作品で、20言語に翻訳され、190カ国以上に配信された。

 陳が切り開いた中国のグルメドキュメンタリーは、ネットフリックスが独占契約したことにより、新たなステージに入った。豊富な資金力でトップクリエイターを招集し、最新の撮影技術やCGで学術的な食材に関する知識をわかりやすく、丁寧に伝えて世界中の人々に感動を与える。完成した映像は芸術品そのものだ。お笑い芸人による食レポや大食いを中心とした稚拙な食コンテンツがまん延する我が国との差は歴然としている。中国人動画配信者による、日本料理や食品の紹介は中国本土でも人気コンテンツだが、近い将来、中国のクルーが日本にやってきて、和食をテーマにしたクオリティの高いグルメドキュメンタリーを制作する日も近いのではないか。

 中国の食コンテンツでもうひとつ、注目すべきは素人による動画配信だ。グルメの世界においても多数の中国版ユーチューバーが出現し、芸能人並みの人気を得ている配信者もいる。

 テンセントが発表した「2018年十大美食紅人」(紅人は人気配信者の意)に挙がった10人はそれぞれ、オーソドックスな中華料理のレシピを紹介する人や中国やアジアのスイーツをひたすら食べ歩く女性、美少女大食い系などジャンルもさまざまだ。皆、「優酷(Youku)」やテンセントビデオ、ビリビリ、微博などのプラットフォームを利用しており、フォロワー数は数百万人を抱えている。先の十大美食紅人でトップに輝いた「美食家大雄」【5】は、家庭料理を紹介するごく普通の内容だが、語り口調や手際の良さ、短時間で美味しい料理を作る小技が受け、フォロワー数は800万人に上る。

 ひときわオリジナリティ溢れる人気配信者のひとりが「亦公室小野(オフィスの小野さん)」【6】という25歳の女性だ。ユーチューブにもチャンネルがあり、日本語の動画説明もある。ただし日本人ではなく、四川師範大学出身でIT企業に勤める高畑充希似の中国人だ。日本名を名乗っているのは日本文化に親しみを持つ90后だからなのかもしれない。彼女はオフィスにあるもので料理を作るという一風変わったテーマを採用。17年に「ウォーターサーバーで火鍋を作ってみた」がバズって有名配信者となった。工作や実験の要素を取り入れたクッキング動画が世界中で受け、ユーチューブのチャンネル登録者数は670万人を突破。昨年、中国本土在住者で唯一のカリスマユーチューバーとしてグーグルからも表彰された。ちなみにユーチューブのアクセスが禁止されている中国で、彼女を含めた多くの食関連の配信者がどうやって動画をアップしているのか謎だが、国内動画サイトで配信した作品を、香港などにいるパートナーがアップしているようだ。テーマが食で“無害”だからか、今のところ中国当局は黙認している様子。

 もうひとり、十大美食紅人で忘れてはいけないのが「李子柒」【7】だ。四川省の山奥で祖母と暮らすアラサーの美女で、動画にナレーションはなく、彼女の声も一切入らない。ただ淡々と素朴な日々の暮らしを伝えるものばかりだ。映像は素人とは思えないクオリティで、美しい風景とともに自給自足の中国スローライフを紹介する彼女の動画は瞬く間に人気が出た。微博のフォロワーはなんと1698万人。ユーチューブのチャンネル登録者数は496万人に上っている。

 ただし李子柒をめぐっては、さまざまなうわさも飛び交う。「四川省の省都・成都でDJをしていたが父の死をきっかけに田舎に戻った」という設定だが、売れないタレントでバックにプロデュースする男性がいるという話もある。彼女の微博での投稿は中国共産党青年団のアカウントが頻繁にリツイートして称賛していることから、中国政府のプロパガンダではないかと見る向きもある。数々の謎に包まれている彼女だが、それもまた魅力になっているのだろうか。

 彼らは動画広告や企業とのタイアップ、番組出演などでマネタイズする。中には法人化して投資を受ける配信者もいる。テンセントが発表した「2018微博アカウント発展レポート」によれば、月10億PV以上ある20のカテゴリーのひとつに「美食」がランクインしている。関連アカウントは現在1・5億以上あり、MCN(配信者のマネジメント会社)は150を越えるという。今後も関連コンテンツは増えていくだろう。

「食の本場」の名の通り、中国の食コンテンツは想像をはるかに超える規模で発展し、欧米を凌駕しつつある。今後、どんな作品が発表されるのか楽しみだ。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

登録ユーザーは1.3億人以上! 中国の過酷な受験戦争が生んだ「教育テクノロジー」の進化

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

■作業幇(ゾウイエバン)

2014年に、中国の小中高校生向けに、宿題の写真をスマートフォンでアップロードすると、その「解き方」を探してくれるアプリとして誕生した。またオンライン上で1対1の学習指導などをおこなってくれる有料サービスなども備えている。もともと百度(バイドゥ)から生まれたが、スピンアウトして有力ベンチャーキャピタルから出資を受けて、現在はユニコーン企業(時価総額1000億円以上の未上場企業)のひとつに数えられている。

「中国の受験戦争は、比喩じゃありません。本当の戦いなんです」

 2019年6月7日朝、北京市内の空気はいつもよりも張り詰めていた。何しろこの日は、中国全土の高校3年生たちが、これからの人生を大きく左右することになる大学入試の統一試験「高考」を受験する日だからだ。

 たまたま取材のために北京に滞在していた私は、受験会場に足を運んで、たくさんの受験生たちがやってくる様子を眺めに行った。同行してくれたのは、中国の最高学府である清華大学大学院生の夏目英男さん(23)だ。

 今年は1031万人の生徒がこの一発勝負のテストに挑み、どの大学に入学できるかが決まる。超名門の清華大学や北京大学、浙江大学を頂点にして、場合によってはわずか1点の差で、14億人の学歴ヒエラルキーにおける位置づけが決まってしまう。

学歴社会の中国では受験生たちへのプレッシャーも大きい

 ちなみに学歴社会で知られる中国にとって、ことさら受験生たちが受けるプレッシャーは半端なものではない。

 さらに日本の大学受験よりも過酷なのは、中国には私立大学という選択肢が事実上ないことだ。いわゆる東京大学や京都大学などの国立大学に落ちても、慶応大学や早稲田大学に行けばいい、という「逃げ道」がほとんどないという。

 会場まで、両親がマイカーで送りにくるケースも多い。そしてお弁当を抱えて、会場の外で待機して、我が子の奮闘を祈っているのだ。

「もう6年前に受験したのですが、この日が来ると、反射的に緊張しますね」

 自身も留学生向けの高考を経験している夏目さんによれば、中国には高校生活のすべてをこの日のために捧げている生徒が、たくさんいるのだという。誰もが知っている名門校は、衡水市(河北省)にある「衡水中学校」だ。

 全寮制のこの高校では、まるで牢屋のように鉄格子がはまった部屋で、起床から就寝まで、分刻みで勉強のスケジュールが組まれている。ランチタイムを過ごす食堂で、テキストを読みながら行列している姿は、中国でも賛否両論あるという。

 しかし、一流大学に合格すれば、出自に関係なく大きなチャンスがつかめるのも事実。そのタフな戦いのために役立つのが、ものすごいスピードで進化している中国の「教育アプリ」だ。

 中国のエドテク(教育テクノロジー)に詳しい人が、一様に注目株として名前を挙げるのが、作業幇(ゾウイエバン)というスマートフォンのアプリだ。

 14年に始まったこのサービスは、K12(幼稚園から高校)の子どもたちが、あらゆる学習をすることができるモバイルプラットフォームだ。このサービスが面白いのは、人工知能を使った「宿題の解き方」を教えてくれる機能。例えば数学のプリントで、わからない問題があったら、すかさずスマホのカメラで撮影をすればいい。

 そうすると自分が悩んでいる問題と、似たような問題をデータベース上から自動的に探し出してくれて、どうやれば解くことができるのかという「解き方」をアドバイスしてくれるのだ。だから数学が苦手でも、このアプリを片手に理解を進めることができる。

 さらにこのアプリを通して、動画によるオンライン授業であったり、1対1の家庭教師サービスであったり、リアルタイムで質問をすることができる「バーチャル塾」のようなサービスも展開されている。

 日本の子どもたちの多くは塾にせっせと通っているが、ここ中国では、スマートフォンを使ってオンラインレッスンを受けることが当たり前になっているという。

「合計ユーザー数は1.3億人以上、毎月利用しているアクティブユーザーも9000万人に上っています。信じられない人数です」と、同社に出資している、投資ファンドのレジェンドキャピタルの幹部は証言する。

 同じように、ユニークな教育アプリは数多く誕生している。

 さらに巨大なエドテク企業となっているのが、猿補導(ユェンフーダオ)だ。あらゆる科目のオンライン授業を、スマートフォン上で受けることができるこのサービス。教師のキャラクターや難易度もさまざまだ。

 アプリを開いてみると、トップ大学を目指している生徒に向けた「オンライン夏期講習」の受講者を募集していた。7月13日から20日にかけて8日間、午後7時から9時までのライブストリーミング講座は、合計で299元(約5000円)で参加できる。

 ひとりあたりの授業料は高くはないけれども、すでにこの授業は1241人(6月8日時点)もの受講者が集まっており、単純計算で500万円近いレッスン料が集まることになる。

 授業が始まると、スマホ画面の横いっぱいにホワイトボードが広がり、そこに数式や解き方などが次々と書き込まれてゆく。

 また右端上には教えている先生のライブ映像が、右端下にはチャット形式で生徒たちとのやり取りが表示される。

 それぞれの先生には受講者からのレビューコメントがついており、「前回110点だったテストの成績が、先生の授業を受けてから134点に上がりました!」といった声が並んでいる。

 まさにオンラインショッピングや、オンライン動画といったモバイル時代のビジネスが、そのまま受験勉強に「応用」されている印象だ。

 夕日が沈む頃、中国全土の高考の初日を終えた生徒たちが、それぞれの家族らと共に自宅に帰ってゆく。この日のことは、大学受験をしたあらゆる中国人にとって、忘れがたい1日になるようだ。

 教育は国家100年の計にあり、とは昔からよく言われたことだ。中国では2000年代前半まで、大学への進学率は、10%前後だったといわれる。それが近年、30%から40%にまで上がっている。

 しかし今でも、北京や上海などの都市部と、地方都市などでは、教育をめぐる環境格差が大きいのが実態だ。だからこそテクノロジーを駆使した、スマートフォンを使った学習アプリが、次々に生まれてきている。

 例え良い教師や学校になかなか恵まれない環境にあったとしても、教育アプリをつかえば中国全土の名門校の「過去問」などが手に入り、オンライン授業であれば地理的なハンディキャップも埋めることができるのだ。

 また今回は紹介することができなかったが、オンラインのみならず、リアルな学校空間もテクノロジーによって進化をつづけている。例えばカメラによる顔認識の技術を使って、いま生徒がどのくらい授業に集中しているのか、といった状況をデジタル的に分析することができるサービスなども登場しているという。

 筆者が勤めるNewsPicksにも、中国出身の女性エンジニアの同僚がいる。30代前半の彼女も上海にある全寮制の高校で、朝から晩まで、3年間にわたって勉強をしたのだという。いきさつがあって、大学は日本の理系大学としてはトップの東工大に進学した。

「勉強ばかりの高校生活を送ったので、日本の大学入試は楽勝でした」

 良いか、悪いかではなく、中国にはこうした過酷な受験レースで勝ち上がった人たちがいる。その頭脳は、長期的にこの国の競争力になるに違いない。(月刊サイゾー7月号より)

後藤直義(ごとう・なおよし)
1981年生まれ。青山学院大学文学部卒。毎日新聞社、週刊ダイヤモンドを経て、2016年4月にソーシャル経済メディア『NewsPicks』に移籍し、企業報道チームを立ち上げる。グローバルにテクノロジー企業を取材し、著書に『アップル帝国の正体』(文藝春秋)など。

女性嫌悪もすごいが男性嫌悪もすごい!? 芸能人を追い込み遺族を愚弄する「韓国ネット民の闇」

――日本で韓国の芸能人の自殺が報じられる際、「背景にはネット上での苛烈なバッシングがあった」と伝えられることもある。日本よりもネットの普及が進んでいる韓国だが、同国の人を死に追いやるまでのネットコミュニティとは、どのようなものなのだろうか?

 5月末に自殺未遂を起こし、療養中と伝えられていた元KARAのク・ハラが、日本の芸能事務所から再デビューすることになった。6月17日付の「スポーツソウル日本版」によると、彼女の自殺未遂の背景には、元交際相手からのリベンジポルノや暴行問題といった、さまざまな問題で頭を抱えていたにも関わらず、一部のネットユーザーから、彼女が受けた二重まぶたの手術に関しての悪質なコメントが絶えなかったことも影響しているという。

 日本でもネット上の誹謗中傷に悩まされる芸能人は多いが、韓国の芸能界では自殺者も出るほど深刻な問題となっている。「1990年代最高の女優」といわれたチェ・ジンシルや、“韓国の倖田來未”と呼ばれ日本でも活動していたU;nee(ユニ)は、ネットの中傷により自らの命を絶ったのではないかと、当時の「中央日報」など一部メディアで報じられた。しかも、過度な露出衣装や整形疑惑でバッシングされていたユニに至っては、死後も公式ホームページで「今日は夜の商売に行かないの?」などと、中傷コメントが書き込まれたほどだ。

 人を死に至らしめるほどの、悪質なネットユーザーたちはどこにいるのか? 本稿では理不尽な芸能人バッシングなどを例に、韓国のネット社会が抱える問題と、それが現実に及ぼす影響を明らかにしていく。

 まずは、韓国におけるインターネット・コミュニティの成り立ちは、日本と大きく異なるという点から説明していきたい。「クーリエ・ジャポン」(講談社)創刊号より、朝鮮半島担当スタッフとして従事していたライター・翻訳者の金香清氏は、こう語る。

「フェイスブックやツイッターが広く普及される前、韓国のネット界で流行したのが“カフェ”と呼ばれる会員制コミュニティでした。イメージとしては『mixi』のコミュニティに近いですね。代表的なカフェは国産ポータルサイトの『NAVER』や『Daum』で提供されているものです。この2社はヤフーやグーグルといった海外勢力を凌ぐほどで、現在も『NAVER』がポータルサイト国内利用率1位です。理由としては、話者の少ない韓国語は英語などに比べて、利用できるネットコンテンツが少ないという事情があります。そこでNAVERなどは、カフェなどのサービスを増やしたり、カテゴリーを細分化することによって、韓国語コンテンツの検索結果を増やしていったのです」

 NAVERとDaumの設立は共に1999年。同時期の日本では、ネットコミュニティとして匿名掲示板の「2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)」が勢力を伸ばしていたが、韓国にも“カフェ”以外にそのような掲示板は存在したのだろうか? 韓国に関する著作を多数持つノンフィクションライターの高月靖氏はこう語る。

「韓国版2ちゃんねると言えるのは『dcinside』という掲示板ですね。もともとはデジカメのレビューを目的とする画像掲示板だったのが、さまざまな方面に拡散して巨大化したという経緯を持っています。韓国で親しまれているネットミームのほとんどは、ここから生まれたと言っても過言ではないでしょう」

 そして、こうした掲示板やカフェで芸能人の話題が上るのは日本と同じだが、ここで注目するべきは、そこには日本とは大きく違う独自のファン文化が出来上がっているということだろう。最新のK-POP事情に詳しい、ライターのDJ泡沫氏は語る。

「韓国の芸能界ではファンカフェと呼ばれる、無料のネットコミュニティの影響力が強いです。ファン個人が開設する私設のファンカフェもありますが、事務所が運営する有料のファンクラブを持っているのは、金を出してでも入りたい人が大勢いるような、ひと握りのグループだけですので、公式のファンカフェも存在します。ファンカフェのメッカといわれているのはDaum。韓国の芸能界ではデビューするとDaumにファンカフェが立つ、というのが定番の流れとなっています。好きなトピックのファンカフェに入会して、掲示板で同好の仲間と語らうといった具合ですが、特徴的なのはファンの間に存在する階級制です」

 ファンクラブの中に上下関係があるのは日本人の感覚からすると不思議に思えるが、ファンカフェの階級制度は韓国でのヲタ活(アイドルオタク活動)において非常に重要な意味を持つという。

「事務所公式のファンカフェには、正確なイベントスケジュールなどが掲載されます。ファンカフェに入会すると、まずはみんな準会員からスタートし、そこから掲示板への書き込み、熱心なファンにしかわからないクイズに正解するなどして、正会員を目指していくことになります。なぜ、正会員を目指すのかというと、アイドル本人が降臨することもある公式カフェには、正会員しか見られないコンテンツがありますし、音楽番組の公開収録に参加するためです。韓国のヲタ活でもっともポピュラーなもののひとつがこの公開収録なのですが、これに参加するために番組側から提示される最低条件にたいてい“ファンカフェの正会員”であることが含まれるのです」(同)

 正会員になるだけでもハードルが高そうなのに、そこからさらに先着順の公開収録に臨む……このような“ガチ勢”がファンカフェの中核を担っており、その結束力や統率力は、かつて日本に存在した“親衛隊”を思わせる。ただ、その分「自分たちが支えている」という自負も強いようで、中には暴走してしまう者もいる。

「そもそも、グループのファン同士が対立しており、合同ライブなどではライバルグループに対してブーイングしたりということも以前はありましたし、ファンカフェの逆であるアンチカフェも存在します。また、韓国のアイドルへの距離感はファンがオッパ(お兄さん)やオンニ(お姉さん)と呼ぶように、日本の感覚からするとかなり近いものに思えますし、アイドルのことを公人のように見る傾向が強いと思います。これは、アイドルが何かやらかしたときに公人のような対応を求めるという意味で、ファンの要求には基本的になんでも応えるべき、という考えが強いようです。また、住所やパスポート番号など、プライバシーに関わる情報なども密かにネットに流れますし、ファンに対して文句を言うことは許されない空気があるんです。例えば昨年、iKONのメンバーであるジュネが、インスタグラムで北野武のサインの写真を投稿しました。するとファンから『北野は右翼的な思想をもつ日本人だ、そんな人物を好きだなんて公言しないほうがいい』と、苦言を呈されたんですが、彼はそこで『私は彼の映画のファンであり、思想は関係ない』といった趣旨の“反論”を行ったのです。すると、これが大炎上。批判する側のトーンが『右翼思想の日本人が好きだなんて』から『心配してアドバイスをしたファンに反論するなんて』に変わっていったのが印象的でした。最終的にジュネは手書きの謝罪文を投稿して収束しました」(同)

 このように理不尽なバッシングは日常茶飯事で、ファン=親、アイドル=子、といったような力関係が窺える。芸能人が“問題行動”を起こせば、ファンは即座に掌を返し、事務所も手がつけられないほどの制裁が加えられるのだ。

 このように、韓国芸能界はネットコミュニティと現実がリンクするが、他方でネットコミュニティの存在そのものが社会問題となることもある。その権化ともいえるのが「日刊ベストストア(イルベ)」である。

 イルベはもともとdcinsideのまとめサイトで、削除された過激な書き込みをまとめることで知られていた。それがやがて掲示板として独立した勢力になったのである。

 この掲示板でもTWICEのメンバーであるミナに対して殺害予告が書き込まれるなど、芸能人に対する悪質な投稿は多数行われているが、他のポータルサイトや掲示板と違うのは、韓国社会から「悪」と明確に名指しされ、忌み嫌われているという点である。

「イルベが有名になったきっかけは14年に起きたセウォル号事件です。当時、被害者遺族の一部が、政府に対し座り込みのハンガーストライキを起こしていたのですが、イルベ民たちは彼らの目の前に陣取り、ピザやフライドチキンを食べる“カウンター行動”を始めたのです。イルベ民の政治スタンスは保守なので、こういったリベラルな市民運動を目の敵にしているんですね。もちろん、行為そのものは激しく非難されましたが、保守的な運動は年寄りがやるものという認識が一般的だったので、参加者に若者が多かったことは韓国社会に大きな衝撃を与えました」(金氏)

 当時のハンスト現場の写真を見てみると、確かに参加者は若い男性がほとんどのようだ。顔を隠す様子などもなく、堂々とピザを囲む姿は一見ただのオフ会にすら見える。

 イルベ民の基本スタンスは保守(極右)のほか、「女性蔑視、排外主義、左派への憎悪、特定地域への誹謗」など、あらゆる差別意識の上に成り立っているが、もちろん、右派的スローガンを掲げてデモや集会を開く、日本の在特会同様、この掲示板に書き込んで過激な行動に移るのは、ごく一部のネットユーザーに限られる。

 しかし、調査会社「ニールセンコリア」によると、イルベの15年4月のモバイル基準のユニーク訪問者(UU)数は、約173万2420人で、コミュニティサイト全体の中では8位になるなど、ネット上での存在感は強い。また、ニューヨークのタイムズスクエアに故人であるノ・ムヒョン元大統領を卑下する広告を出したり、彼が表紙を飾った雑誌「TIME」の見出し「Hello, Mr.Roh」を「Go To Hell Mr.Roh」に変えたような、イルベ発の悪質なコラ画像をテレビ局がそのまま使用してしまうなど、もはや、その影響力はネットに収まりきらなくなっている。そして現実社会もまた、イルベに厳しい目を向けているという。

「5ちゃんねる用語と同じように、イルベ用語というものがあります。ネットは流行の拡散も早いので、自然とイルベを知らない人にも波及していくわけです。しかし、差別や人を揶揄する意味が根底にある言葉を知らずに使ってしまうと、社会的には許されないようで、かつて、日本でも話題になったクレヨンポップというグループのメンバーが、何気なくイルベ用語を使ったところ、せっかく決まっていた広告モデルを降板させられるという出来事がありました」(同)

 芸能人への殺害予告、女性嫌悪、左派への憎悪など、多方面に差別意識を持ち、その掲示板での投稿で逮捕者が出たり、ニュースにもなるイルベ。一方で、イルベの女性嫌悪に対するカウンターとして、逆の過激派勢力も台頭している。

「儒教や家父長制の影響もあって、長らく男尊女卑だった韓国社会ですが、とりわけ00年代から急激に変化していきます。ドラマや映画にもフェミニズム的な要素が見られるようになり、先進国並みの意識に変わっていくスピードはものすごく速かったですね。そんな中、16年に『女性だから』という理由で、男性が若い女性をメッタ刺しにした『江南通り魔殺人事件』が起こります。この事件は“女性嫌悪犯罪”と呼ばれ、大きな議論を呼びました。同時に『#MeToo』運動の気運も高まっていき、そうした動きの中で登場したのが『メガリア』や『WOMAD』などの男性嫌悪の匿名掲示板です。WOMADはもともとDaumの非公開カフェとして始まりましたが、警察の捜査を受けた後に海外サーバのウェブサイトに移転しました」(高月氏)

 誕生の経緯が似ているところも含め、イルベにとってまさに宿敵といえる存在である。しかし、「警察の捜査」というのはどういうことなのだろうか?

「この掲示板を有名にしたのは過激なミラーリングです。もともとは『男性にされたことをそのままお返しするという行為』だったのですが、だんだんそれがエスカレートして『コーヒーに不凍液を混ぜて職場の上司に飲ませた』という投稿が寄せられ、警察沙汰になりました。ほかにも『胎児が男だったので中絶した』や『保育士が男児への悪戯をほのめかした』といった投稿もあり、本流のフェミニズム団体からも非難されるようになりました。イルベとは互いのユーザーの個人情報を晒し合うなど、何回か小競り合いは起きていますね」(同)

 ネットの過激な思想に感化され、現実社会でも問題を引き起こしてしまうほど、同国の男女間の嫌悪は想像以上に深刻なようにも見える。しかし、今回取材した識者たちによると、数年前に比べると、こうした極端なネットコミュニティの求心力は薄れ、今は男女間の対立も落ち着いてきているという。

 とはいえ、ジェンダー間の課題はいまだに現実に残されている。そんな中、新たな火種となっているのが、日本でもベストセラーになった『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)だ。

「この作品は小説という体裁でありながら、実際のジェンダー関連のデータを織り込んだりと、フェミニズムや女性解放を訴える内容です。しかし、WOMADやメガリアの影響でフェミニズムそのものにミサンドリー(男性嫌悪)的な悪いイメージがついたせいか、Red Velvetのメンバー・アイリーンがこの本を読んだと言っただけで炎上したりと、かつてほどではないとしても、いまだにネット上での男女間の対立は続いている印象を受けます。日本のアマゾンにも同書の発売前から、韓国人と思われるユーザーからの低評価レビューがありました」(DJ泡沫氏)

 実際に高月氏に同書のレビューを読んでもらったところ、明らかに韓国語から日本語に直訳したと思われる文章がいくつか見つかった。ネット上の過激派に焚きつけられた、ミソジニー(女性嫌悪)とミサンドリーの戦いは、まだまだ終わってはいないようだ。

 芸能人に対するバッシングに限らず、ネット上の思想対立が現実に及ぼす影響も、もはや無視できないレベルにまでなっている。日本でもフェミニズムが声高に叫ばれるようになった今、韓国の現状を他山の石とするべきだろう。

過酷な受験戦争が生んだ、中国の「教育アプリ」の進化

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

■作業幇(ゾウイエバン)

2014年に、中国の小中高校生向けに、宿題の写真をスマートフォンでアップロードすると、その「解き方」を探してくれるアプリとして誕生した。またオンライン上で1対1の学習指導などをおこなってくれる有料サービスなども備えている。もともと百度(バイドゥ)から生まれたが、スピンアウトして有力ベンチャーキャピタルから出資を受けて、現在はユニコーン企業(時価総額1000億円以上の未上場企業)のひとつに数えられている。

「中国の受験戦争は、比喩じゃありません。本当の戦いなんです」

 2019年6月7日朝、北京市内の空気はいつもよりも張り詰めていた。何しろこの日は、中国全土の高校3年生たちが、これからの人生を大きく左右することになる大学入試の統一試験「高考」を受験する日だからだ。

 たまたま取材のために北京に滞在していた私は、受験会場に足を運んで、たくさんの受験生たちがやってくる様子を眺めに行った。同行してくれたのは、中国の最高学府である清華大学大学院生の夏目英男さん(23)だ。

 今年は1031万人の生徒がこの一発勝負のテストに挑み、どの大学に入学できるかが決まる。超名門の清華大学や北京大学、浙江大学を頂点にして、場合によってはわずか1点の差で、14億人の学歴ヒエラルキーにおける位置づけが決まってしまう。

学歴社会の中国では受験生たちへのプレッシャーも大きい

 ちなみに学歴社会で知られる中国にとって、ことさら受験生たちが受けるプレッシャーは半端なものではない。

 さらに日本の大学受験よりも過酷なのは、中国には私立大学という選択肢が事実上ないことだ。いわゆる東京大学や京都大学などの国立大学に落ちても、慶応大学や早稲田大学に行けばいい、という「逃げ道」がほとんどないという。

 会場まで、両親がマイカーで送りにくるケースも多い。そしてお弁当を抱えて、会場の外で待機して、我が子の奮闘を祈っているのだ。

「もう6年前に受験したのですが、この日が来ると、反射的に緊張しますね」

 自身も留学生向けの高考を経験している夏目さんによれば、中国には高校生活のすべてをこの日のために捧げている生徒が、たくさんいるのだという。誰もが知っている名門校は、衡水市(河北省)にある「衡水中学校」だ。

 全寮制のこの高校では、まるで牢屋のように鉄格子がはまった部屋で、起床から就寝まで、分刻みで勉強のスケジュールが組まれている。ランチタイムを過ごす食堂で、テキストを読みながら行列している姿は、中国でも賛否両論あるという。

 しかし、一流大学に合格すれば、出自に関係なく大きなチャンスがつかめるのも事実。そのタフな戦いのために役立つのが、ものすごいスピードで進化している中国の「教育アプリ」だ。

 中国のエドテク(教育テクノロジー)に詳しい人が、一様に注目株として名前を挙げるのが、作業幇(ゾウイエバン)というスマートフォンのアプリだ。

 14年に始まったこのサービスは、K12(幼稚園から高校)の子どもたちが、あらゆる学習をすることができるモバイルプラットフォームだ。
 このサービスが面白いのは、人工知能を使った「宿題の解き方」を教えてくれる機能。例えば数学のプリントで、わからない問題があったら、すかさずスマホのカメラで撮影をすればいい。

 そうすると自分が悩んでいる問題と、似たような問題をデータベース上から自動的に探し出してくれて、どうやれば解くことができるのかという「解き方」をアドバイスしてくれるのだ。だから数学が苦手でも、このアプリを片手に理解を進めることができる。

 さらにこのアプリを通して、動画によるオンライン授業であったり、1対1の家庭教師サービスであったり、リアルタイムで質問をすることができる「バーチャル塾」のようなサービスも展開されている。

 日本の子どもたちの多くは塾にせっせと通っているが、ここ中国では、スマートフォンを使ってオンラインレッスンを受けることが当たり前になっているという。

「合計ユーザー数は1.3億人以上、毎月利用しているアクティブユーザーも9000万人に上っています。信じられない人数です」と、同社に出資している、投資ファンドのレジェンドキャピタルの幹部は証言する。

 同じように、ユニークな教育アプリは数多く誕生している。

 さらに巨大なエドテク企業となっているのが、猿補導(ユェンフーダオ)だ。あらゆる科目のオンライン授業を、スマートフォン上で受けることができるこのサービス。教師のキャラクターや難易度もさまざまだ。

 アプリを開いてみると、トップ大学を目指している生徒に向けた「オンライン夏期講習」の受講者を募集していた。7月13日から20日にかけて8日間、午後7時から9時までのライブストリーミング講座は、合計で299元(約5000円)で参加できる。

 ひとりあたりの授業料は高くはないけれども、すでにこの授業は1241人(6月8日時点)もの受講者が集まっており、単純計算で500万円近いレッスン料が集まることになる。

 授業が始まると、スマホ画面の横いっぱいにホワイトボードが広がり、そこに数式や解き方などが次々と書き込まれてゆく。

 また右端上には教えている先生のライブ映像が、右端下にはチャット形式で生徒たちとのやり取りが表示される。

 それぞれの先生には受講者からのレビューコメントがついており、「前回110点だったテストの成績が、先生の授業を受けてから134点に上がりました!」といった声が並んでいる。

 まさにオンラインショッピングや、オンライン動画といったモバイル時代のビジネスが、そのまま受験勉強に「応用」されている印象だ。

 夕日が沈む頃、中国全土の高考の初日を終えた生徒たちが、それぞれの家族らと共に自宅に帰ってゆく。この日のことは、大学受験をしたあらゆる中国人にとって、忘れがたい1日になるようだ。

 教育は国家100年の計にあり、とは昔からよく言われたことだ。中国では2000年代前半まで、大学への進学率は、10%前後だったといわれる。それが近年、30%から40%にまで上がっている。

 しかし今でも、北京や上海などの都市部と、地方都市などでは、教育をめぐる環境格差が大きいのが実態だ。だからこそテクノロジーを駆使した、スマートフォンを使った学習アプリが、次々に生まれてきている。

 例え良い教師や学校になかなか恵まれない環境にあったとしても、教育アプリをつかえば中国全土の名門校の「過去問」などが手に入り、オンライン授業であれば地理的なハンディキャップも埋めることができるのだ。

 また今回は紹介することができなかったが、オンラインのみならず、リアルな学校空間もテクノロジーによって進化をつづけている。例えばカメラによる顔認識の技術を使って、いま生徒がどのくらい授業に集中しているのか、といった状況をデジタル的に分析することができるサービスなども登場しているという。

 筆者が勤めるNewsPicksにも、中国出身の女性エンジニアの同僚がいる。30代前半の彼女も上海にある全寮制の高校で、朝から晩まで、3年間にわたって勉強をしたのだという。いきさつがあって、大学は日本の理系大学としてはトップの東工大に進学した。

「勉強ばかりの高校生活を送ったので、日本の大学入試は楽勝でした」

 良いか、悪いかではなく、中国にはこうした過酷な受験レースで勝ち上がった人たちがいる。その頭脳は、長期的にこの国の競争力になるに違いない。(月刊サイゾー7月号より)

後藤直義(ごとう・なおよし)
1981年生まれ。青山学院大学文学部卒。毎日新聞社、週刊ダイヤモンドを経て、2016年4月にソーシャル経済メディア『NewsPicks』に移籍し、企業報道チームを立ち上げる。グローバルにテクノロジー企業を取材し、著書に『アップル帝国の正体』(文藝春秋)など。

韓国が依存する日本のアダルト産業、“あの人物”の人気がハリウッドスター級に!

 日本が韓国を「ホワイト国」から除外したことを受け、日韓関係は悪化の一途。しかし、そんな貿易摩擦どころでは済まないほど、韓国が日本に依存している産業があるという。週刊誌記者がこう明かす。

「アダルト産業ですよ。韓国は性に関するモラルに厳しく、”AV女優”が存在しません。そのため、韓国男子の下半身は日本のAV女優に骨抜きにされています。今年2月には海外のポルノサイトへのアクセスが規制されましたが、抜け道はいくらでもあるので、規制の意味を成していない状況です」

 そんな韓国では、アイドルグループ出身の三上悠亜などの人気女優を差し置いて、ある人物の人気がぶっちぎりで高いという。

「一番人気はAV男優のしみけんです。YouTubeの『しみけんTV』は46万人以上の登録者がいて、その大半は韓国人。アダルト界どころか、ひょっとすると、『韓国で一番有名な日本人』と言っても過言でないほどの存在です。韓国の映画館では『アベンジャーズ』が上映される前に、しみけんがゲームを紹介するCM映像が流れ、彼の顔をドアップでラッピングした路線バスが走っていたことも。韓国の20~30代をターゲットにした男性誌で表紙グラビアを飾った際のテーマは、『韓国の性的な悩みを解決するために降臨した愛の神』だったそうです(笑)。もはやAV界のハリウッドスターくらいの扱いになっていますよ」(週刊誌編集者)

 しみけんには、日韓の架け橋としてこれからも文字通り一肌脱いでもらいたい。