かつての国民的コメディ『フレンズ』のリブート映画の予告編が公開されたと、アメリカのネット民が大騒ぎしている。狂喜乱舞したファンがSNSで拡散させたのだが、実はこの動画、公開したのは「大ヒットしたドラマや映画の続編やリブート版がこうだったらいいな」という発想で、さまざまな映像をつぎはぎして「なんちゃって予告編」を制作しているYouTubeチャンネルだと判明。動画再生数は350万回を超え、まだまだ騒ぎは収まらなさそうだ。
近年、ハリウッドでは過去に大ヒットした映画のリブート/リメイク作品が次から次へと制作されている。昨年だけでも『ミイラ再生』(32)のリブート版でトム・クルーズ主演の『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』、『IT』(90)のリブート版『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』などが公開された。
この波は、テレビ業界にも押し寄せている。『ビバリーヒルズ高校/青春白書』(90〜00)、『ハワイ 5-0』(68〜80)、『ダラス』(78〜91)、『V』(83)などなど、かつて人気を博したドラマ/コメディシリーズのリブート/リメイク版が制作され、ファンは大喜びした。
しかし、大ゴケするケースも多い。08年に放送された『ナイトライダー』(82〜86)のリブート版、11年に放送された『チャーリーズ・エンジェル』(76〜81)のリブート版、『ワンダーウーマン』(75〜79)のリブート版、『第一容疑者』(91〜06)のリブート版などは視聴率がボロボロだった。あまりの不評から、早々に打ち切られる作品も少なくないのだ。
もちろん、成功作もある。「テレビ作品のリブートもイケる!」という流れを再びつくったのは、国民的コメディ『フルハウス』(87〜95)のオリジナルキャストが主演する『フラーハウス』(16〜)。ヒットの要因は、「同番組のキャストたちは放送終了後も交流を続け、SNSに仲良し写真を投稿していたのでファンが離れなかった」「全キャストがいい感じに年を重ねていたため違和感なく物語を続けられた」「子どもからお年寄りまで誰もが楽しめる作品だった」「勢いに乗っていたNetflixで配信された」といったところにあると考えられている。実際、世界中のファンがこの続編/リブートを大歓迎し、大いに楽しんだ。
そしてテレビ業界は、『フラーハウス』に続けとばかりに、オリジナルキャストを使った人気テレビシリーズの続編/リブートを次々と制作するように。『ギルモア・ガールズ』(00〜07)、『プリズン・ブレイク』(05〜09)、『ツイン・ピークス』(90〜91)、『X-ファイル』(93〜02)がそうだ。そして、国民的コメディでありながら最終話が暗すぎた『ふたりは友達? ウィル&グレイス』(98〜06)も、その最終話を「全部夢!」と説明して、楽しく続編をスタートしている。
このブームに「ぜひ乗ってほしい!」と強く切望されている国民的作品がある。94年から04年まで放送され、社会現象にもなったコメディ『フレンズ』だ。
美男美女が、大都会マンハッタンのオシャレなアパートメントで繰り広げる友情、愛情、人間としての成長を描いた、笑いあり、涙ありのコメディで、シーズンを重ねるごとに人気は上昇。
主要キャラクターは以下の通りだ。お金持ちでわがままだけれどシリーズを通して自立した女へと成長するレイチェル(ジェニファー・アニストン)。レイチェルの高校時代からの親友で、デブだった過去を持つ意識高い系女性のモニカ(コートニー・コックス)。モニカの元ルームメイトでスピリチュアルとヒッピーが大好きな不思議ちゃんフィービー(リサ・クドロー)。モニカの兄でレイチェルに思いを寄せてきた真面目なオタク男のロス(デイヴィッド・シュワイマー)。モニカのアパートメントの向かいの部屋に住む、皮肉屋でヘタなジョークを飛ばしてスベりまくるサラリーマンのチャンドラー(マシュー・ペリー)。チャンドラーのルームメイトで、イケメンだけどちょっと抜けてる俳優志願のモテ男ジョーイ(マット・ルブランク)。全米が、この6人の友情に憧れた。
ハリウッドスターたちも『フレンズ』のとりこになり、日頃はテレビ役者を下に見がちな映画スターたちが我先にゲストとして出演した。ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ブルース・ウィリス、リース・ウィザースプーン、ショーン・ペン……などなど、大勢のハリウッド・スターがちょい役で登場し、コミカルな演技を披露した。
主演の6人の中でもジェニファーの人気は断トツで、彼女の髪形、メイク、服装、すべてが注目され、全米一の女優と呼ばれるように。番組放送中に結婚したブラッド・ピットも当時は「ジェニファーの夫」扱いされていたほどだった。
『フレンズ』がすごいのは、リアルタイムで見ていた中年世代だけでなく、現在の若い層からも人気を獲得しているところだ。現在、アメリカの若者の中で人気を集めているドラマ『リバーデイル』に出演しているコール・スプラウスは、『フレンズ』でメインキャラクターの1人、ロスの息子役。その後、ディズニー・チャンネルの『スイート・ライフ オン・クルーズ』シリーズに双子の弟と主演し大ブレイク。ディズニー卒業後は役者業を休止、大学に進学しフォトグラファーとしても活動している。最近『リバーデイル』で役者に復帰し、若い層から「かっこいい生き方!」と支持されている。『フレンズ』はそんな彼の「本当の初期の頃の作品」としてファンの人気を集めているのだ。
また、ここ最近、精力的にアメリカで活動しているK-POPグループ・防弾少年団が昨年11月『エレンの部屋』に出演した際、リーダーのRMが「自分が英語を話せるようになったのは『フレンズ』のおかげ。『フレンズ』を繰り返し見て英語を勉強した」と告白し、「さすが『フレンズ』!」と再注目されることとなった。
そのように世界中で幅広い層からの人気を得ている『フレンズ』のリブート映画の予告編が、ネットで拡散されたのだ。騒ぎにならないわけがない。
問題の予告編動画は、マンハッタンの街並みが現れた後、医療スタッフとして働いているフィービーにモニカが「あなたの声って超ホットでセクシーよね!」と言う。「その意気揚々としたダイヤルをうんと絞ってもらわなくちゃならないわね」と返され、「オッケー。あなた、いい匂いするわねぇ」「自信に満ち溢れた匂いなのよ」という、何ともちぐはぐした会話シーンからスタート。
次に放送局NBCの孔雀のロゴが現れ、車を擦ってしまい頭を抱えるモニカにチャンドラーが歩み寄ってアプローチをかけたり、ロスがジョーイとセレブなパーティーで再会したり、交際相手と不仲のモニカをレイチェルがなぐさめたり、飲酒運転で捕まったジョーイが警察で手続きをしているシーンが流れる。
「数年間バラバラだった彼ら」というキャプションが流れ、フィービーとビデオチャットするロスが「君、本当に(変わらず)美しいな」と感心するシーンの後に「フレンズが再会した」という文字が大きく現れる。
続けて、レイチェルがモニカの恋愛について指摘するシーン、モニカとチャンドラーが大笑いするシーンなどの後に、「NBCとワーナー・ブラザース制作」というキャプションが流れ、モニカがチャンドラーとわちゃわちゃするシーン、レストランでレイチェルがロスらしき人影に笑顔で近づくシーン、賞を受賞したジョーイが受賞スピーチをしているシーンなどが流れる。そして、最後に「フレンズ、ザ・ムービー」というキャプションが現れ動画は終了する。
話があちこちに飛んでおり、「どこかで見たようなシーンだな」と違和感も覚える予告編だが、それぞれのその後の成功や再会が予測でき、新作のストーリーに期待が持てるものとなっていた。この予告動画は「とうとう『フレンズ』の続編/リブート版が見られる!」とネット上で拡散。「本当に?」と、騒然となった。
が、まもなくして、この動画を制作したのは、大ヒットしたドラマや映画、ゲームの続編/リブート作品が「こうだったら」というコンセプトのもと、キャストの別の作品からのシーンを切り取り、それらしくつぎはぎした「なんちゃって予告動画」が得意なYouTubeチャンネル「Smasher」だと判明。がっかりしたファンたちだが、それでも「これがきっかけで、本当に実現したらいい」「なんちゃって予告編がこんなに話題になるんだから、NBCやワーナーも動かずにはいられないでしょ」「キャストたちも心を動かされたと思う」と期待に胸を膨らませた。
一方で、「リブート作ってこけたら悲惨。このままでいい」「フレンズは今の時代には似合わないから、やめてほしい。ジョーイがセクハラ野郎とか叩かれちゃう」という反対派の声、「『ハイスクール・ミュージカル 4』なんちゃって予告編のほうがうまくできてたよね。『フレンズ』のはイマイチ」という声も上がっている。
ちなみに今回、この「Smasher」が制作した「なんちゃって予告編」だが、実は4年前に出回った動揺の動画に手を加えたものである。
14年にジェニファー・アニストンが人気深夜トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』に出演した際、ジミーがロスになりきり、ステージに用意された『フレンズ』のセットで、ジミーが執筆した『フレンズ』の台本に沿って演技を披露し、コートニーとリサがサプライズで出演したのだ。これを見たファンは「3人とも全然違和感ない! 雰囲気も最高! ぜひ続編を制作してほしい!」と大興奮した。パロディ動画を制作しているYouTuber「VJ4rawr2」は、この盛り上がりに便乗し「なんちゃって予告編」を制作。大きな話題となったのだ。今回、「Smasher」で公開された予告編は、この「なんちゃって予告編」の一部を使っていた。
実際に『フレンズ』の続編/リブートが制作される可能性については、リサは米NBCの情報番組『トゥデイ』で「ありえないでしょうね」と断言。「あのドラマは20代が主人公の物語だったから、みんな夢中になって観たのよ。友達=ファミリーって感じだったから。年をとって、それぞれ家庭を持った今、おもしろい話なんて何もないじゃない?」と否定していた。
だが、今回「なんちゃって予告編」がこれほどまでに話題を集めたことからも、ある程度の視聴率は見込めると期待していいはずだ。ネット上では、「意外と勢いに乗ってワンシーズンくらい制作しちゃうのでは?」という意見もあれば、当時主要キャストたちが1話につきそれぞれ100万ドル(約1億1000万円)のギャラをもらっていたため「今や予算的に絶対無理でしょ」という現実的な意見も出ている。
放送終了から14年がたってもこれほど話題になる『フレンズ』の続編/リブート版制作は、「夢物語」でしかないのだろうか? 今回話題になった予告編についてキャストたちがどう思っているのか、ぜひ聞いてみたいものである。