妊娠中にエリート夫の浮気現場に遭遇! 警察の前で「DV妻」呼ばわりされ……

singlemother15a『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?

第15回 小松めぐみさん(仮名・40代)の話(前編)

「結婚前、夫は前妻にDVを受けたと言っていたので、『残念な人に当たっちゃったね』と言って慰めていました。ところが、彼は自分の浮気が発覚したとき、私のことを『こいつはDV妻』と言いだし、警察の前で嘘をついたのです」

 歯科医の小松めぐみさんはそう話す。小松さんは妊娠がわかって結婚し、子どもが2歳のときに別居。離婚したのは子どもが4歳のときだったという。彼女はいったいなぜ夫から「DV妻」と言われたのか? なぜ2年も別居をしていたのか?

■彼のことは“何か変だな”と思いつつ、目をつぶって結婚

――旦那さんとは、どのようなきっかけで出会ったのですか?

 実はそれまでの7年間、別の男性と一緒に住んでいました。彼とはすごく仲が良かったし、人として尊敬もしていましたが、彼はどうしても子どもを欲しがらなかった。当時、私は30代半ば。「このままいくと、子どもがいない人生になっちゃうな。子どもが産める相手を見つけよう」って思ったとき、信用できる知人から男性を紹介されました。「前の奥さんに恵まれなかったんだけど、中身はすごくいい人だから」って。それが元夫。会ってみたら、子どもを作ることに反対しなかった。それで、早まって結婚してしまったんです。

――どんな人ですか?

 背がスラッとした、絵に描いたようなハンサム。両親は欧米人だけど、彼は日本生まれの日本育ち。両親の都合で中学校から大学院までは英語圏に住んでいたので、バイリンガル。大学と大学院では1人暮らしをしていて、就職のタイミングで日本に戻ってきたらしい。会社では早くから出世していて、そのうちにヘッドハンティングされて、外資系の会社の上層部を転々としていたみたいです。

――まさに典型的なセレブですね。結婚前にデートはしたんですか?

 1年弱お付き合いして、その間に妊娠がわかりました。いわばデキ婚です。子どもが産みたいという前提だったので、彼のことは“何か変だな”と思いつつも、目をつぶって結婚しました。

――夫として相容れない部分があったのですか?

 元夫はDV被害者としてメディアに出たことがあって、そのとき「妻が台所のお皿を全部割って暴れた」とコメントしたそうです。実際、日常生活でもそういう話はしていました。「この風景を見ると前の妻を思い出してつらい」と言って急に泣きだしたりするんです。私はあっけにとられつつ、「残念な人に当たっちゃったね」と言って慰めるしかなかった。

――そのときは、彼のことを信じてたんですか?

 信じていました。彼が嘘をついてるなんて、当時は知る由もなかった。仕事柄、さまざまなタイプの患者と付き合いますので、人と接することには慣れています。だけど彼は両親が外国人で、「自分のアイデンティティはどこだ」という悩みを抱えていました。私はそれまで彼のような人とあまり接したことがなくて、日々一緒に暮らす中でも、彼の人間性を見抜けなかったんです。

――「嘘をついてる」とすると、DVというのは彼の被害妄想なんでしょうか?

 自分自身の思い込みを本当のことだと、記憶をすり替えてしまうんでしょう。彼自身、私にすごく攻撃を受けたという感覚は本当でしょうから。

――どういうことですか?

 例えば、トイレットペーパーが芯だけになって、そのままになってたときのこと。「切れたら自分で交換して」と言ったら顔色が変わったということがありました。あのとき、彼は、私のお願いに傷ついてしまったみたい。

――なぜそれで傷つくのか、理解できないです。

 彼はエリート家系の育ちで、いわゆるお坊ちゃん。お手伝いさんがこまごまとした世話は完璧にやってくれるけど、しつけはしない。だから、世の中の常識がわからないまま大人になったんです。

――大学に入ってからは、ずっと1人暮らしだったんですよね。

 いえ。彼のそばには、常に女がいたんです。大学生や大学院生のときだって、1人暮らししているとはいっても、付き合ってる女性にすべての家事をやってもらってたし、その後もずっとそうです。彼は典型的なハンサム男ですから、女が途切れなかった。誰かにやってもらってたから、生活をするための常識が身につかなかった。だからこそ、私に注意されただけで傷ついたんです。

――わからないんだったら、聞けばいいだけなのに。

 アメリカの教育を受けて、リベラルを自負してるんです。だから上っ面では進歩的。だけど根の部分では「白人の自分は、黄色人種の妻より偉い」って思い込んでて、自然と私を見下してた。刃向かいはしないけど、いちいち偉そうでした。例えば、ケンカしたときに「俺は台所の床も拭いたし、トイレットペーパーも替えたぞ。なのに何が不満なんだ」って、わざわざ勝ち誇るように言うんです。「自分の家なんだから、やって当然でしょ」って言い返したら、「うーん」とか言って頭を抱えてました。プライドは高いけど、打たれ弱い人なんです。

――子どもが生まれる前に、こういった家庭を作っていきたい、という理想像はあったんですか?

 子どもをインターナショナルスクールに入れて、国際感覚が身につくように育てていこうとは言っていました。だけど実務的な話になると「海外旅行やパーティーに連れていって、君たちを楽しませてあげる。僕は頑張って働くから、支えてね」などと言って、肝心なルールの取り決めの話から逃げちゃうんです。

――なんだかフワフワしてますね。

 妻は、人形のようなお飾りでいてほしいってこと。外の人たちに自慢できる肩書だったり学歴だったり見た目だったりを、彼は私に求めていた。

――例えば、どんなことですか?

 政財界の重鎮が出席するというパーティーに招待されたときのことを思い出します。招待状が届いた途端に、「ドレスを見に行こう」と言って、六本木の高級ブティック街に連れていかれました。「これ似合うよ」と勧められて、何十万、いや何百万円もするドレスを次々と試着させられました。

――それで買ったんですか?

 それが、彼は払ってくれないんですよ。戸惑って「買ってくれないの?」って聞いたら、やれやれとあきれた様子。「そうやって女たちは、みんな俺のお金をあてにするんだ」と、いきなり悲劇のヒーロー気取りです。「わかった。じゃあ買わなくていい」って言ったら「安っぽいドレスじゃおかしいよ。みんなすごいドレスで来るんだから」と必死になって引き留めて私に買わせようとする。結局、買わずに、成人式のときの振袖でパーティーに行きましたけどね。

――家計は、どうしていたんですか?

 家賃は全部彼が払っていましたけど、それ以外はうやむやでしたね。私自身、稼ぎがあったし、出産休暇に入っても貯蓄がありましたから、彼の収入を頼りにする必要がなかった。彼はその点、甘えてましたね。ドケチなので。

――妊娠中は、どうだったのですか?

 妊娠8カ月の頃、一悶着ありました。その頃、私は土日に、車で30分のところにある実家へ帰っていましたが、実家から戻ってくると誰か知らない人が家に入ってる気配があって、「これは絶対、女を連れ込んでるな」と踏んだんです。それで私、その次の週末、実家に帰ったと見せかけて、前触れもなく自宅に戻り、解錠して中に入ってみました。すると案の定、家の中に知らない女がいるじゃないですか。「これ、どういうこと!?」と私は言いました。もしかすると、ドスが効いた声だったかもしれません。

――旦那さんは悲劇のヒーロー気取りですか?

 いえ。力ずくで私を家から追い出そうとしました。私はおなかが大きい状態です。抵抗して暴力を振るわれたり、転んだりしたら大変なことになる。そう思って、引っ張られるままずるずると、靴を履いていない状態で玄関の外に出されました。それで元夫は何をトチ狂ったのか、「なんで勝手に来たんだ! 警察を呼ぶぞ」って大声を出す。ところが私は、「呼びたいなら呼べば。私、暴力も何も振るってないし。何の落ち度もないってことを警察に説明できるから」と言って動じない。引くに引けなくなった彼は警察を呼びました。

 駆けつけた警察官2人に元夫は、「家の中に仕事関係の女性がいるけど、仕事の打ち合わせなんです。なのに、浮気と勘違いした妻が、家の中で暴れ狂ってしまったんです。お巡りさん、こいつはDV妻なんです。早く逮捕してください」と、興奮した様子で言うのです。それに対して私は「暴れてませんよ。家の中を見てきてください。争った形跡はないはずですよ」と言いました。

 2人の警察官は、膨らんだ私のおなかを見て状況を察し、そのうち1人が元夫に向かって冷静に言いました。「あなた被害者なんでしょう? まずは被害届を出してくれますか? でないと何もできないですよ」と。一方、私には、「奥さん、一旦、この場を離れたほうがいいですよ」と言うんです。私は警察官の助言に従って、実家へと帰りました。

(後編へつづく)

妊娠中にエリート夫の浮気現場に遭遇! 警察の前で「DV妻」呼ばわりされ……

singlemother15a『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?

第15回 小松めぐみさん(仮名・40代)の話(前編)

「結婚前、夫は前妻にDVを受けたと言っていたので、『残念な人に当たっちゃったね』と言って慰めていました。ところが、彼は自分の浮気が発覚したとき、私のことを『こいつはDV妻』と言いだし、警察の前で嘘をついたのです」

 歯科医の小松めぐみさんはそう話す。小松さんは妊娠がわかって結婚し、子どもが2歳のときに別居。離婚したのは子どもが4歳のときだったという。彼女はいったいなぜ夫から「DV妻」と言われたのか? なぜ2年も別居をしていたのか?

■彼のことは“何か変だな”と思いつつ、目をつぶって結婚

――旦那さんとは、どのようなきっかけで出会ったのですか?

 実はそれまでの7年間、別の男性と一緒に住んでいました。彼とはすごく仲が良かったし、人として尊敬もしていましたが、彼はどうしても子どもを欲しがらなかった。当時、私は30代半ば。「このままいくと、子どもがいない人生になっちゃうな。子どもが産める相手を見つけよう」って思ったとき、信用できる知人から男性を紹介されました。「前の奥さんに恵まれなかったんだけど、中身はすごくいい人だから」って。それが元夫。会ってみたら、子どもを作ることに反対しなかった。それで、早まって結婚してしまったんです。

――どんな人ですか?

 背がスラッとした、絵に描いたようなハンサム。両親は欧米人だけど、彼は日本生まれの日本育ち。両親の都合で中学校から大学院までは英語圏に住んでいたので、バイリンガル。大学と大学院では1人暮らしをしていて、就職のタイミングで日本に戻ってきたらしい。会社では早くから出世していて、そのうちにヘッドハンティングされて、外資系の会社の上層部を転々としていたみたいです。

――まさに典型的なセレブですね。結婚前にデートはしたんですか?

 1年弱お付き合いして、その間に妊娠がわかりました。いわばデキ婚です。子どもが産みたいという前提だったので、彼のことは“何か変だな”と思いつつも、目をつぶって結婚しました。

――夫として相容れない部分があったのですか?

 元夫はDV被害者としてメディアに出たことがあって、そのとき「妻が台所のお皿を全部割って暴れた」とコメントしたそうです。実際、日常生活でもそういう話はしていました。「この風景を見ると前の妻を思い出してつらい」と言って急に泣きだしたりするんです。私はあっけにとられつつ、「残念な人に当たっちゃったね」と言って慰めるしかなかった。

――そのときは、彼のことを信じてたんですか?

 信じていました。彼が嘘をついてるなんて、当時は知る由もなかった。仕事柄、さまざまなタイプの患者と付き合いますので、人と接することには慣れています。だけど彼は両親が外国人で、「自分のアイデンティティはどこだ」という悩みを抱えていました。私はそれまで彼のような人とあまり接したことがなくて、日々一緒に暮らす中でも、彼の人間性を見抜けなかったんです。

――「嘘をついてる」とすると、DVというのは彼の被害妄想なんでしょうか?

 自分自身の思い込みを本当のことだと、記憶をすり替えてしまうんでしょう。彼自身、私にすごく攻撃を受けたという感覚は本当でしょうから。

――どういうことですか?

 例えば、トイレットペーパーが芯だけになって、そのままになってたときのこと。「切れたら自分で交換して」と言ったら顔色が変わったということがありました。あのとき、彼は、私のお願いに傷ついてしまったみたい。

――なぜそれで傷つくのか、理解できないです。

 彼はエリート家系の育ちで、いわゆるお坊ちゃん。お手伝いさんがこまごまとした世話は完璧にやってくれるけど、しつけはしない。だから、世の中の常識がわからないまま大人になったんです。

――大学に入ってからは、ずっと1人暮らしだったんですよね。

 いえ。彼のそばには、常に女がいたんです。大学生や大学院生のときだって、1人暮らししているとはいっても、付き合ってる女性にすべての家事をやってもらってたし、その後もずっとそうです。彼は典型的なハンサム男ですから、女が途切れなかった。誰かにやってもらってたから、生活をするための常識が身につかなかった。だからこそ、私に注意されただけで傷ついたんです。

――わからないんだったら、聞けばいいだけなのに。

 アメリカの教育を受けて、リベラルを自負してるんです。だから上っ面では進歩的。だけど根の部分では「白人の自分は、黄色人種の妻より偉い」って思い込んでて、自然と私を見下してた。刃向かいはしないけど、いちいち偉そうでした。例えば、ケンカしたときに「俺は台所の床も拭いたし、トイレットペーパーも替えたぞ。なのに何が不満なんだ」って、わざわざ勝ち誇るように言うんです。「自分の家なんだから、やって当然でしょ」って言い返したら、「うーん」とか言って頭を抱えてました。プライドは高いけど、打たれ弱い人なんです。

――子どもが生まれる前に、こういった家庭を作っていきたい、という理想像はあったんですか?

 子どもをインターナショナルスクールに入れて、国際感覚が身につくように育てていこうとは言っていました。だけど実務的な話になると「海外旅行やパーティーに連れていって、君たちを楽しませてあげる。僕は頑張って働くから、支えてね」などと言って、肝心なルールの取り決めの話から逃げちゃうんです。

――なんだかフワフワしてますね。

 妻は、人形のようなお飾りでいてほしいってこと。外の人たちに自慢できる肩書だったり学歴だったり見た目だったりを、彼は私に求めていた。

――例えば、どんなことですか?

 政財界の重鎮が出席するというパーティーに招待されたときのことを思い出します。招待状が届いた途端に、「ドレスを見に行こう」と言って、六本木の高級ブティック街に連れていかれました。「これ似合うよ」と勧められて、何十万、いや何百万円もするドレスを次々と試着させられました。

――それで買ったんですか?

 それが、彼は払ってくれないんですよ。戸惑って「買ってくれないの?」って聞いたら、やれやれとあきれた様子。「そうやって女たちは、みんな俺のお金をあてにするんだ」と、いきなり悲劇のヒーロー気取りです。「わかった。じゃあ買わなくていい」って言ったら「安っぽいドレスじゃおかしいよ。みんなすごいドレスで来るんだから」と必死になって引き留めて私に買わせようとする。結局、買わずに、成人式のときの振袖でパーティーに行きましたけどね。

――家計は、どうしていたんですか?

 家賃は全部彼が払っていましたけど、それ以外はうやむやでしたね。私自身、稼ぎがあったし、出産休暇に入っても貯蓄がありましたから、彼の収入を頼りにする必要がなかった。彼はその点、甘えてましたね。ドケチなので。

――妊娠中は、どうだったのですか?

 妊娠8カ月の頃、一悶着ありました。その頃、私は土日に、車で30分のところにある実家へ帰っていましたが、実家から戻ってくると誰か知らない人が家に入ってる気配があって、「これは絶対、女を連れ込んでるな」と踏んだんです。それで私、その次の週末、実家に帰ったと見せかけて、前触れもなく自宅に戻り、解錠して中に入ってみました。すると案の定、家の中に知らない女がいるじゃないですか。「これ、どういうこと!?」と私は言いました。もしかすると、ドスが効いた声だったかもしれません。

――旦那さんは悲劇のヒーロー気取りですか?

 いえ。力ずくで私を家から追い出そうとしました。私はおなかが大きい状態です。抵抗して暴力を振るわれたり、転んだりしたら大変なことになる。そう思って、引っ張られるままずるずると、靴を履いていない状態で玄関の外に出されました。それで元夫は何をトチ狂ったのか、「なんで勝手に来たんだ! 警察を呼ぶぞ」って大声を出す。ところが私は、「呼びたいなら呼べば。私、暴力も何も振るってないし。何の落ち度もないってことを警察に説明できるから」と言って動じない。引くに引けなくなった彼は警察を呼びました。

 駆けつけた警察官2人に元夫は、「家の中に仕事関係の女性がいるけど、仕事の打ち合わせなんです。なのに、浮気と勘違いした妻が、家の中で暴れ狂ってしまったんです。お巡りさん、こいつはDV妻なんです。早く逮捕してください」と、興奮した様子で言うのです。それに対して私は「暴れてませんよ。家の中を見てきてください。争った形跡はないはずですよ」と言いました。

 2人の警察官は、膨らんだ私のおなかを見て状況を察し、そのうち1人が元夫に向かって冷静に言いました。「あなた被害者なんでしょう? まずは被害届を出してくれますか? でないと何もできないですよ」と。一方、私には、「奥さん、一旦、この場を離れたほうがいいですよ」と言うんです。私は警察官の助言に従って、実家へと帰りました。

(後編へつづく)

養子を迎え、育児に協力的だった夫が単身赴任で浮気【別れた夫にわが子を会わせる?】

わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?

第6回 根本みゆきさん(仮名・61歳)前編

「夫は、相手女性の子どもを認知していたんです。判明したときには、すでに8年もたっていました。認知は夫の戸籍謄本を取って発覚したんですけど、それによって、これまでの疑問が全部晴れました」

 そう話すのは、東北で介護士をしている根本みゆきさん。彼女には、今年成人式を迎えた息子がいる。夫の隠し子問題が原因で、離婚したのは3年前のことだという。

■不妊治療の末、わが子が家にやってきた

 根本さんは30年前に結婚した。夫は、地方転勤が多い1歳年下のゼネコン社員。夫婦は長年、不妊治療をしていた。根本さんは子宮筋腫、夫は精子が平均の4分の1しかなかった。

「実は私、自分で産んでいないんです。授からなかった。それで41歳のとき、生まれたばかりの男の子を引き取ったんです。

 というのも、不妊治療を受けていた病院から『赤ちゃんを見に来ませんか』と連絡をいただきまして。2人で駆けつけたんです。生後まだ2日。母親は15歳の少女。産んだものの、育てられないとのことでした。とてもかわいい子でね、『この子を育てよう』と、夫とすぐに意気投合しました。そして私の妹からベビー用品のお下がりをもらった後、生後10日で男の子を家に迎えました」

 いきなり引き取って育て始めるのは、大変だったのではないか?

「おむつを何時間かごとに交換しなきゃならないじゃないですか。そんなことさえ知らなかった。赤ちゃんの抱き方すらわかってなかったし、なぜ泣くのか、どうやってあやしたらいいのかってことも、最初はわからなかった。戸惑いの連続でしたが、自分たちの子として育て上げるんだという共通の夢がありましたからね。子育てを苦だとは思わなかった。

 夫は、子育てにかなり協力的でした。私から指示を出して、いろいろ手伝ってもらいました。でも、それは夫のためでもありました。ただでさえ仕事で家を出ている時間が長いんですから、小さいときからちゃんと世話をして、密な交流をしておかないと、しっかりとした父子関係が作れないでしょ」

 そのうち根本さんの夫が単身赴任となる。夫婦の自宅から車で1時間半ほど離れた町で、通える範囲だったが、夫は自宅から通勤しようとしなかった。

「当初は毎週末、帰ってきていたんですが、2週間に一度、3週間に一度、さらには1カ月に一度と、帰宅間隔が次第に空いていきました。滞在時間は短くなり、日帰りということもありましたよ。帰ってくるときの表情も、次第にひどくなっていきました。笑顔が次第に消え、気がつくと、夫の顔は鋭い顔つきになっていました」

 2人は、夜の営みはもちろん、会話すらしなくなっていく。夫は根本さんに用件があるとチラシを4等分にした紙に「今日は会議があるので、朝4時半に出ます」などとメモを残したという。

「異変を感じるようになったのは、いつかしら? 服に口紅がついていたり、カットバンが2つぐらい首に貼ってあったり……。女の影が現れ始めたんです。

 浮気だと確信したのは、夏に一緒にプールへ出掛けたときでした。背中の左右両側に4本ずつのミミズ腫れがあって。『引っかいたかもしんない』って、夫はニタニタしながら言うんです」

 それは、相手女性からの無言の挑戦状であった。

「女の行動は、だんだんと大胆になっていきました。いたずら電話はしょっちゅう。ワン切りに無言のガチャ切り、果ては堂々と偽名を使って夫を呼び出すほどです。電話をかけてきて、『ご主人様はいらっしゃいますか?』って。電話に出た夫は女に責め立てられているのか、ずいぶん恐縮した様子で返答してるんですよ」

■心当たりのない、ホテルからの不審な電話

 相手女性の挑発はさらに続いた。離婚する4~5年前だから、今から7~8年前のこと。ホテルから家に、心当たりのない電話がかかってきた。

「『先日、奥様がお泊まりになったときに、フリルのついた下着をお忘れでしたよ』というのです。私は女の仕業だと、すぐにピンときました。『家に送ります』とホテルの従業員が言うので、待つことにしました。ところが5日、10日と待っても、一向に届かないんです。

 後日、こちらからホテルへ改めて電話をかけたら、別の従業員が出て、『〇〇様から電話があって〇〇様の方へお送りしました』とのことでした」

 下着の一件は、夫が帰宅したタイミングで伝えたという。

「するとね、彼、見え透いた嘘をつくんです。『△△建設の××夫妻(がホテルに泊まったとき)に俺が名前を貸したんだ。そのときスカーフを忘れたんだ』って。頭にきたので、彼に言ってやりました。『あなたとの関係がギクシャクしているのって、その人が原因だから。私、その人と直接話したい。どこの誰!』って。すると夫は途端にオロオロして、『それだけはやめてくれ』って哀願されました」

 浮気のことが、息子さんの耳に入ったりはしなかったのか?

「息子が小学5年のとき、仕事を終えて帰ってきた私に、不思議なことを言うんです。『うちにも犬がいるけど、パパは違うところにも犬を飼ってるんだね』って。写真を撮ろうとして、夫の携帯電話をいじっているうちに、知らない犬小屋に入った知らない犬の写真を見てしまったそうなんです。写真は、女の家の飼い犬だったんでしょう。それでつまり、夫は向こうに家を構えてるってことがわかってしまい……」

--息子さんは、浮気の証拠を偶然見てしまったんですね。なんとふびんな。

「それどころか、夫は息子にひどい仕打ちをしていたんです。私が気づいてあげればよかったんですが、当時は気がつかなかった……」

 気がついたきっかけは、中学校に上がるときに行った机の掃除だったという。

「引き出しがあまりに汚いので、中のモノを全部出させたんです。一番奥に入っていたのが、小学1年のときに私が買い与えたファインディング・ニモのメモ帳でした。

 そこには『パパのバカ』とか『パパがぼくの耳をいたくしたとか』『あんなやつ死ね』『だいきらい』といった言葉が殴り書きしてあった。SOSを出していたかもしれないのに、なんで気がついてあげられなかったのか。後悔の念で涙が止まらなくなりました……。

 そういえば、息子が小学校高学年の頃、耳の上の角のところが紫色に変色していたんですよ。治る暇なく、常にです。それで『どうしたの?』って聞いたら『ミニバスケやっててけがした』って言ってたんです。『痛くない』っていう言葉をうのみにしてたし、深刻に捉えてなかった……」

 夫は息子への関心を失っていたのか、休日に帰ってきて近くへ息子と出掛けても、息子を残して、よくふらっと消えたという。

「息子は傷つきますよね。そうしたことが積み重なっていったからか、中学に入る頃、『僕はパパにとって大事ではないんだ。僕はパパがいない子だ』って言うようになりました」

--パパがいない? 血のつながった実の父親の存在に気がついていたからこその発言ではないのですか?

「いや、それはないです。知らないですから。パパとママの子じゃないかもって思って調べたとしても、証拠は出てこないはず。生後10日目で引き取ってから、ずっと一緒なんです。彼は、私を本当のお母さんだと思ってるに違いないです」

(後編へつづく)

養子を迎え、育児に協力的だった夫が単身赴任で浮気【別れた夫にわが子を会わせる?】

わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?

第6回 根本みゆきさん(仮名・61歳)前編

「夫は、相手女性の子どもを認知していたんです。判明したときには、すでに8年もたっていました。認知は夫の戸籍謄本を取って発覚したんですけど、それによって、これまでの疑問が全部晴れました」

 そう話すのは、東北で介護士をしている根本みゆきさん。彼女には、今年成人式を迎えた息子がいる。夫の隠し子問題が原因で、離婚したのは3年前のことだという。

■不妊治療の末、わが子が家にやってきた

 根本さんは30年前に結婚した。夫は、地方転勤が多い1歳年下のゼネコン社員。夫婦は長年、不妊治療をしていた。根本さんは子宮筋腫、夫は精子が平均の4分の1しかなかった。

「実は私、自分で産んでいないんです。授からなかった。それで41歳のとき、生まれたばかりの男の子を引き取ったんです。

 というのも、不妊治療を受けていた病院から『赤ちゃんを見に来ませんか』と連絡をいただきまして。2人で駆けつけたんです。生後まだ2日。母親は15歳の少女。産んだものの、育てられないとのことでした。とてもかわいい子でね、『この子を育てよう』と、夫とすぐに意気投合しました。そして私の妹からベビー用品のお下がりをもらった後、生後10日で男の子を家に迎えました」

 いきなり引き取って育て始めるのは、大変だったのではないか?

「おむつを何時間かごとに交換しなきゃならないじゃないですか。そんなことさえ知らなかった。赤ちゃんの抱き方すらわかってなかったし、なぜ泣くのか、どうやってあやしたらいいのかってことも、最初はわからなかった。戸惑いの連続でしたが、自分たちの子として育て上げるんだという共通の夢がありましたからね。子育てを苦だとは思わなかった。

 夫は、子育てにかなり協力的でした。私から指示を出して、いろいろ手伝ってもらいました。でも、それは夫のためでもありました。ただでさえ仕事で家を出ている時間が長いんですから、小さいときからちゃんと世話をして、密な交流をしておかないと、しっかりとした父子関係が作れないでしょ」

 そのうち根本さんの夫が単身赴任となる。夫婦の自宅から車で1時間半ほど離れた町で、通える範囲だったが、夫は自宅から通勤しようとしなかった。

「当初は毎週末、帰ってきていたんですが、2週間に一度、3週間に一度、さらには1カ月に一度と、帰宅間隔が次第に空いていきました。滞在時間は短くなり、日帰りということもありましたよ。帰ってくるときの表情も、次第にひどくなっていきました。笑顔が次第に消え、気がつくと、夫の顔は鋭い顔つきになっていました」

 2人は、夜の営みはもちろん、会話すらしなくなっていく。夫は根本さんに用件があるとチラシを4等分にした紙に「今日は会議があるので、朝4時半に出ます」などとメモを残したという。

「異変を感じるようになったのは、いつかしら? 服に口紅がついていたり、カットバンが2つぐらい首に貼ってあったり……。女の影が現れ始めたんです。

 浮気だと確信したのは、夏に一緒にプールへ出掛けたときでした。背中の左右両側に4本ずつのミミズ腫れがあって。『引っかいたかもしんない』って、夫はニタニタしながら言うんです」

 それは、相手女性からの無言の挑戦状であった。

「女の行動は、だんだんと大胆になっていきました。いたずら電話はしょっちゅう。ワン切りに無言のガチャ切り、果ては堂々と偽名を使って夫を呼び出すほどです。電話をかけてきて、『ご主人様はいらっしゃいますか?』って。電話に出た夫は女に責め立てられているのか、ずいぶん恐縮した様子で返答してるんですよ」

■心当たりのない、ホテルからの不審な電話

 相手女性の挑発はさらに続いた。離婚する4~5年前だから、今から7~8年前のこと。ホテルから家に、心当たりのない電話がかかってきた。

「『先日、奥様がお泊まりになったときに、フリルのついた下着をお忘れでしたよ』というのです。私は女の仕業だと、すぐにピンときました。『家に送ります』とホテルの従業員が言うので、待つことにしました。ところが5日、10日と待っても、一向に届かないんです。

 後日、こちらからホテルへ改めて電話をかけたら、別の従業員が出て、『〇〇様から電話があって〇〇様の方へお送りしました』とのことでした」

 下着の一件は、夫が帰宅したタイミングで伝えたという。

「するとね、彼、見え透いた嘘をつくんです。『△△建設の××夫妻(がホテルに泊まったとき)に俺が名前を貸したんだ。そのときスカーフを忘れたんだ』って。頭にきたので、彼に言ってやりました。『あなたとの関係がギクシャクしているのって、その人が原因だから。私、その人と直接話したい。どこの誰!』って。すると夫は途端にオロオロして、『それだけはやめてくれ』って哀願されました」

 浮気のことが、息子さんの耳に入ったりはしなかったのか?

「息子が小学5年のとき、仕事を終えて帰ってきた私に、不思議なことを言うんです。『うちにも犬がいるけど、パパは違うところにも犬を飼ってるんだね』って。写真を撮ろうとして、夫の携帯電話をいじっているうちに、知らない犬小屋に入った知らない犬の写真を見てしまったそうなんです。写真は、女の家の飼い犬だったんでしょう。それでつまり、夫は向こうに家を構えてるってことがわかってしまい……」

--息子さんは、浮気の証拠を偶然見てしまったんですね。なんとふびんな。

「それどころか、夫は息子にひどい仕打ちをしていたんです。私が気づいてあげればよかったんですが、当時は気がつかなかった……」

 気がついたきっかけは、中学校に上がるときに行った机の掃除だったという。

「引き出しがあまりに汚いので、中のモノを全部出させたんです。一番奥に入っていたのが、小学1年のときに私が買い与えたファインディング・ニモのメモ帳でした。

 そこには『パパのバカ』とか『パパがぼくの耳をいたくしたとか』『あんなやつ死ね』『だいきらい』といった言葉が殴り書きしてあった。SOSを出していたかもしれないのに、なんで気がついてあげられなかったのか。後悔の念で涙が止まらなくなりました……。

 そういえば、息子が小学校高学年の頃、耳の上の角のところが紫色に変色していたんですよ。治る暇なく、常にです。それで『どうしたの?』って聞いたら『ミニバスケやっててけがした』って言ってたんです。『痛くない』っていう言葉をうのみにしてたし、深刻に捉えてなかった……」

 夫は息子への関心を失っていたのか、休日に帰ってきて近くへ息子と出掛けても、息子を残して、よくふらっと消えたという。

「息子は傷つきますよね。そうしたことが積み重なっていったからか、中学に入る頃、『僕はパパにとって大事ではないんだ。僕はパパがいない子だ』って言うようになりました」

--パパがいない? 血のつながった実の父親の存在に気がついていたからこその発言ではないのですか?

「いや、それはないです。知らないですから。パパとママの子じゃないかもって思って調べたとしても、証拠は出てこないはず。生後10日目で引き取ってから、ずっと一緒なんです。彼は、私を本当のお母さんだと思ってるに違いないです」

(後編へつづく)

ドラマ『奪い愛、冬』、婚約中の浮気も不倫と同じ?

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回のドラマ>
『奪い愛、冬』(テレビ朝日系/金曜日午後11時15分~)

■口頭の合意があれば婚約となる

 1月20日スタートのドラマ『奪い愛、冬』は、倉科カナと三浦翔平が繰り広げる、どろどろの恋愛模様が見どころ。倉科演じる主人公・池内光は、婚約者がいるにもかかわらず、その心は妻帯者である元彼を求めていくという設定だが、結婚前の「婚約」の段階で浮気をしたら、慰謝料請求される可能性はあるのか? アディーレ法律事務所の村松優子弁護士に聞いた。

 まず、婚約の法的な定義について、村松弁護士は次のように説明する。

「婚約とは、将来婚姻をするという約束をいいます。そのため、当事者が真に将来婚姻関係を成立させる旨の口頭の合意があれば婚約となります」

 つまり、口頭で「結婚しよう」とプロポーズして、相手も受け入れれば、その時点ですでに婚約が成立した状態になるのだ。ただし、村松弁護士は次のように続ける。

「ですが、当事者の内心の意思は、客観的に把握するのが困難であるため、公的に婚約が成立したと言えるためには、長期間の肉体関係を継続していること、両親や友人などに対して当事者が婚約意思を伝えていること、婚約指輪の授受、結納の執り行い等の客観的な事情が存在していることが必要となります」

 では、結婚前に婚約者以外の相手と浮気をしたら、された側は慰謝料等を請求することは可能なのだろうか?

「諸説ありますが、婚約をした当事者は、双方婚姻成立に向けて誠実に交際し、婚姻関係を成立させるために努力する義務を負っており、婚姻成立となれば互いに貞操を守る義務を負います。貞操義務に違反をすれば離婚原因にもなり得る以上、婚約中の当事者間においても、婚姻中ほど強くないとしても、互いに貞操を維持する義務を負っていると解されていますので、原則として慰謝料の請求は可能と考えられています」

 いったん婚約したら、それはもう結婚に近い法的な拘束力があるということ。だから、浮気をすれば不倫と同じように見られても仕方なく、慰謝料を請求される可能性もあるのだ。禁じられた恋ほど燃えるものかもしれないが、ドラマの主人公の想いはどこまで行くのか、目が離せなくなりそうだ。

アディーレ法律事務所