ようやく登場した、酔いどれヒロイン・蒼井優! 原作ファンがやきもきする『宮本から君へ』第6話

 世間知らずで、青臭くて、そのくせ自分を曲げることが大嫌いな男。それが『宮本から君へ』(テレビ東京系)の主人公・宮本浩です。大学を卒業し、サラリーマンにはなったものの、まだまだ一人前の大人になったとは言えません。情熱は人一倍秘めているものの、空回りの連続です。そんな未熟な男・宮本の前に、宮本と同じか、それ以上の熱さを持った年上のヒロインが現われました。真ヒロイン・蒼井優が新加入した『宮本から君へ』第6話を振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 宮本浩(池松壮亮)は都内の小さな文具メーカーに勤める新人営業マンです。周囲から一目置かれる先輩営業マンの神保(松山ケンイチ)は1カ月後に退職することが決まっており、取引先の老舗文具問屋を宮本が引き継ぐことになりました。「会社の名前ではなく、自分の名前で呼んでもらえるようになれ」という神保の教えに従い、一人で営業回りするようになった宮本ですが、なかなか名前を呼んでもらうことはできずにいます。先輩営業マン・神保の大きさを感じてしまう宮本でした。

 恋人だと思っていた美沙子(華村あすか)にはあっさり棄てられ、温厚な上司・小田課長(星田英利)からは「クソ意地を張るのをやめないと、恋も仕事もできへん」と説教され、今の宮本には頼るものが何もない状態です。スマートで愛想のいい大手文具メーカーの営業マン・益戸(浅香航大)に対し、神保の猿まねで応じるしかありません。「毎度!」「宮本です!」「新しい名刺をつくったので、受け取ってください!」。かっこ悪くても、営業熱心な神保スタイルをひとつひとつ学んでいく宮本でした。

 宮本が「神保の猿まねに徹します」と営業先で宣言したことが、ライバル社の益戸は面白くありません。入社1年目の小僧から宣戦布告されたように感じたのです。そんなある日、問屋営業部の安達(高橋和也)から大手製薬会社にロゴ入りのクリアファイル1万セットを納品するという大口の仕事があることを知らされますが、これは益戸がいる業界最大手メーカーとの競合という形でした。どちらがより安く、よりいいサンプルを提案できるかの勝負です。宮本vs.益戸の企業代理戦争の勃発です。

 大手製薬会社への仲介を務める「ワカムラ文具」の営業部長・島貫(酒井敏也)へ宮本は神保と共にあいさつに向かいますが、戦争はすでに始まっていました。宮本たちが形式的なあいさつを済ませたタイミングを見計らって、益戸はわざと遅れて現われるのです。遅れたお詫びとして、益戸は島貫に商品券が入った封筒を差し出します。さらには一緒に昼食はどうかと島貫を誘うのでした。もちろん、商品券も昼食代も、すべて会社の経費扱いです。神保がいちばん嫌う営業スタイルを、益戸は仕掛けてきたのです。島貫の机の上には、宮本の名刺だけが残され、商品券はさっと消えていました。宮本は営業マンとしての自分の無力さを思い知らされます。

■日々刻々と変わっていく男と女の関係性

 新しい営業先で苦渋を味わう宮本ですが、これからの宮本の人生を大きく変える運命の出会いも待っていました。神保に誘われ、神保が新しく立ち上げるコンピュータ会社のメンバーたちと一緒に呑むことになったのです。居酒屋に集まった顔ぶれは、営業担当の神保、プログラマーの重松(板橋駿谷)、重松の会社の後輩女子・広瀬(安藤聖)と中野靖子(蒼井優)です。みんな酒好きで、お銚子を10本まとめて注文するという豪快な呑みっぷりです。ちなみ蒼井優と安藤聖はテレ東の人気番組『おはスタ』の“おはガール”出身です。すっかり大人になったおはガールたちとの宴会は大いに盛り上がるのでした。第1話のお通夜のようだった合コンとはまるで違います。会社の飲み会では、同期の田島(柄本時生)や小田課長に絡んでばかりいた宮本ですが、この夜は気持ちよく酔っぱらうのでした。

 終電はとっくに終わり、帰る方向が同じことから、宮本は靖子と2人で夜道を歩き始めます。靖子によると、いつも自信満々そうな神保も5年前は「仕事が面白くない」と愚痴ってばかりだったそうです。そんな神保に活を入れ、新会社を設立させる決心をさせたのが靖子だったのです。気取りがなく、気っ風のいい年上の女性・靖子に、宮本は美沙子にはない魅力を感じるのでした。

 いつもはクソ意地を張ってばかりいる宮本ですが、靖子の前では不思議なほど安堵感を覚えます。靖子にけしかけられ、ゴミ捨て場に放置されていた自転車を拾い、2人乗りで深夜の東京を駆け抜けていきます。「行け~! 宮本浩!」という靖子の号令のもと、警官すら振り切って全力で自転車を漕ぐ宮本。靖子と一緒なら、暗い夜道をどこまでも走っていけそうな気がする宮本でした。

 原作コミックを読んだファンは、この後の展開に驚いたものです。第1話に登場した美人OLの美沙子が『宮本から君へ』のヒロインだと思っていたら、美沙子は宮本を棄てて途中退場。神保たちの飲み会に参加していた目の細い、おばはんっぽい年上の女・靖子の出番がどんどん増えていき、宮本と濃厚なSEXを交わす関係になっていったからです。原作で初登場した際の靖子はおおよそ美人とは言いがたいキャラでしたが、宮本との付き合いが始まり、靖子はぐんぐんといい女に変わっていきます。運命の女性は意外なところに隠れていたのです。宮本も女性のルックスではなく、内面を重視するようになり、人間的な成長を遂げていくことになります。新井英樹の漫画と、人生は何が待っているのか分かりません。

 原作ファンが気になっているのは、ドラマ版『宮本から君へ』が単行本で全12巻ある原作のどこまでを映像化するのかという問題です。原作で大きな話題を呼んだ宮本と靖子とが2日間にわたって延々とSEXしまくるエロシーンは、テレビで描くことができるのか。また、靖子と宮本は、原作の後半戦でこれまたテレビでは表現不可能なとんでもない事件に巻き込まれます。クリアファイルの納品を巡る益戸との攻防は、原作の前半戦を大きく盛り上げる見どころですが、ドラマ版ではそこがクライマックスになるのか。それとも宮本の暴走パワーを愛する真利子哲也監督は、その先にまで挑戦するのか。原作ファンをやきもきさせる『宮本から君へ』第7話からの展開も見逃せません。
(文=長野辰次)

松ケン、蒼井優の投入は映画化への布石なのか!? リーマン地獄門編に突入『宮本から君へ』第5話

 世界卓球の中継延長のため、深夜2時すぎからのオンエアとなった池松壮亮主演ドラマ『宮本から君へ』(テレビ東京系)の第5話。ド深夜にもかかわらず、キャスティングがすごいことに。先輩営業マンの神保役として松山ケンイチが登場。劇場版『デスノート』の新旧Lの共演ですよ! 宮本のライバルとなる大手文具メーカーの営業マンに売り出し中の浅香航大、すっかり味のある俳優となった元「男闘呼組」の高橋和也、「チンポとポンチ」と楽しげに口ずさむ配送部のおっちゃんにボクシングアニメ『あしたのジョー』の主題歌を歌った尾藤イサオ……。次回からは蒼井優もレギュラー出演します。テレビ東京は『宮本から君へ』の映画化を狙っているのかなと思ってしまうほど、贅沢な配役です。いよいよ池松演じる宮本が営業マンとは何であるかを味わい尽くす、サラリーマン地獄門編に突入した第5話を振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 前回、大手自動車メーカーの受付け嬢・甲田美沙子(華村あすか)と初SEXしたものの、あっさり棄てられた弱小文具メーカーの新入社員・宮本浩(池松壮亮)。美沙子の職場にまで押し掛けて自分が棄てられたことをしっかりと確認した宮本ですが、帰り道の足取りは重く、なかなか会社に戻ることができずにいました。個人的な所用で帰社が遅くなった宮本を、会社で待ってくれていたのは小田課長(星田英利)です。大雨と失恋で身も心もズブ濡れ状態の宮本を、小田課長は半ば強引に自宅アパートへと誘うのでした。ほっしゃんの笑顔は、落ち込んだ人間のハートに優しく染み込みます。朝ドラ女優がほっしゃんに惚れたのも、何となくわかるような気がします。

 仕事で一人前になるまでは美沙子を抱かないと同僚たちに宣言していた宮本ですが、美沙子に押し切られた形でSEXし、その挙げ句に美沙子は元彼のもとへと走っていきました。モテない人間は「美女と1回でもエッチできてよかったね!」と思うのですが、宮本は美沙子ともうSEXできないことを悔しがっているわけではありません。本気で好きになったはずの美沙子に棄てられたのに、意外と悲しくない自分がいることに気づいたのです。じゃあ、美沙子のことは本気で愛していなかったのかと、宮本はウジウジと自問自答中です。宮本は本当に面倒くさい性格です。

 その点、妻帯者であり、一児の父でもある小田課長は大人でした。部下である宮本の一本気な性格を理解しています。妻の友子さん(ぼくもとさきこ)に用意させた温かい手料理を宮本に食べさせた上で、いつになく厳しい言葉をぶつけます。

「自分しか愛せへん、究極のエゴイスト。それがお前や。お前がそのクソ意地とかクソこだわりを捨てへん限りは、人も愛せへん、仕事もできへん。この先、ずっと同じことの繰り返しや」

 交際相手と別れても自分のことしか考えられない宮本の偏屈さを、ズバリと指摘する小田課長でした。ほっしゃんは、アメとムチの使い方が抜群にうまいです。朝ドラ女優が惚れたのも、何となくわかる気がします。

 ところがまぁ、宮本も意地っぱりです。友子さんが止めるのを振り切って、わざわざ駐車場に置いてある小田課長の車の中で寝ようとするのでした。ついてないときは、とことんついてないもの。小田課長から渡された車のキーを溝の中に落としてしまいます。小田課長夫妻が眠っているアパートに戻ることを良しとせず、寒い駐車場で震えながら夜明けを待つ宮本でした。宮本の長い長い夜は、もうしばらく続きます。

 

■名刺への異常なこだわり。それこそがプロの道!

 

 正月を迎え、宮本は心機一転のために横浜の自宅を出て、ひとり暮らしを始めることにしました。長年暮らした自宅で過ごす最後の夜、ここで『宮本から君へ』の“生みの親”である漫画家・新井英樹が宮本の父親役で登場です。演技経験まったくなしの原作者を口説き落としたのは、青春暴走ロードムービー『ディストラクション・ベイビーズ』(16)で知られる真利子哲也監督です。27年前に誕生した漫画キャラクターの父親役を、原作者に演じさせるという真利子監督のこだわりが感じられます。芝居経験のあるなしや、演技がうまい下手は関係ありません。過剰なまでのこだわりを貫き、現代社会が見失ったものを見つけることがドラマ版『宮本から君へ』のメインテーマなのです。

 好々爺っぽい雰囲気の昭和の父を演じる新井英樹ですが、高校ラグビー部を舞台にした暑苦しい青春漫画『8月の光』(講談社)でデビューした後、文具メーカーに勤めた実体験をベースにした初長編作『宮本から君へ』(同)は若者向け雑誌で「嫌いなマンガ」第1位に選ばれました。さらに『ザ・ワールド・イズ・マイン』(小学館)では漫画史上かつてない大暴走ストーリーを展開させることになります。世間に迎合することなく、己の道を突き進む孤高の漫画家です。そんな暴走漫画家と難役を好んで演じる日本映画界の逸材が小さな呑み屋で肩を並べて日本酒を傾け合うシーンには、形容しがたいムードが溢れています。原作者から力水を授かり、池松演じる宮本の暴走劇はこれから本格化していきます。

 宮本がひとり暮らしを始めたのは、ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京系)や人気グルメ漫画『孤独のグルメ』(扶桑社)ですっかり有名になった赤羽にある木造アパートでした。山田孝之が役者バカ人生を見つめ直したように、宮本も赤羽から人生を再起動させるのでした。会社でも新しい仕事が待っていました。先輩営業マンの神保(松山ケンイチ)が1カ月後に退職することになり、神保が担当していた老舗の問屋を引き継ぐことになったのです。神保はかなり仕事ができる男です。取り引き担当の安達(高橋和也)に名前を呼んでもらえるようになるまで、何度も何種類も名刺を渡し続けたという伝説の持ち主です。安達の名刺入れは、名前を覚えてもらうために工夫されたさまざまな神保の名刺が収まっていました。両者ともに名刺交換にただならぬこだわりを持っていることがうかがえます。

 問屋の休憩室にて、神保が宮本に営業スマイルのダメ出しをしていると、そこに現われたのは大手文具メーカーに勤務する益戸(浅香航大)でした。あいさつ代わりに、宮本へ接待ゴルフ先で購入したお土産のお菓子を差し出します。せっかくのご好意だからと手を伸ばす宮本に、神保は「宮本、考えろよ~」と笑顔で熟考を促すのでした。好きでもないのに接待目的でゴルフを始めた男が、会社の経費で購入したお菓子(梅ケーキ)を安易に口にしていいのかと。たかが梅ケーキ、されど梅ケーキです。休憩室にサァ~ッと緊張感が走ります。

 大手メーカーの名前を使って要領よく仕事をする営業マンを見習うのか、それとも一人ひとりと地道にコミュニケーションしながら信頼関係を築いて仕事を取る営業マンになるのか。梅ケーキを前にして、宮本は今後の人生の大きな選択を迫られるのでした。

 夭折した天才棋士の生涯を描いた『聖の青春』(16年)など、徹底した役づくりで知られる松山ケンイチですが、今回のような飄々とした、でも胸の奥に熱いものを秘めたリーマン役もいいじゃないですか。主演の池松を立てて一歩引いた芝居が、先輩俳優らしい風格さえ感じさせます。一方の益戸役の浅香航大は元ジャニーズですが、NHK朝ドラ『ひよっこ』の売れない漫画家役などでキャリアを積んできた若手実力派です。自分が何者であるかに悩んでいた宮本は、仕事のできる先輩やライバルの登場によって、自分の立ち位置を客観的に知ることになるわけです。ここからようやく『宮本から君へ』のメインストーリーが始まるのです。

 次回からは宮本にとって“運命の女”となる中野靖子(蒼井優)がついに登場。第6話にして、ようやくメインキャストが揃います。失恋の後、長い長い夜を過ごしていた宮本ですが、もうすぐ新しい夜明けが訪れそうです。
(文=長野辰次)

松ケン、蒼井優の投入は映画化への布石なのか!? リーマン地獄門編に突入『宮本から君へ』第5話

 世界卓球の中継延長のため、深夜2時すぎからのオンエアとなった池松壮亮主演ドラマ『宮本から君へ』(テレビ東京系)の第5話。ド深夜にもかかわらず、キャスティングがすごいことに。先輩営業マンの神保役として松山ケンイチが登場。劇場版『デスノート』の新旧Lの共演ですよ! 宮本のライバルとなる大手文具メーカーの営業マンに売り出し中の浅香航大、すっかり味のある俳優となった元「男闘呼組」の高橋和也、「チンポとポンチ」と楽しげに口ずさむ配送部のおっちゃんにボクシングアニメ『あしたのジョー』の主題歌を歌った尾藤イサオ……。次回からは蒼井優もレギュラー出演します。テレビ東京は『宮本から君へ』の映画化を狙っているのかなと思ってしまうほど、贅沢な配役です。いよいよ池松演じる宮本が営業マンとは何であるかを味わい尽くす、サラリーマン地獄門編に突入した第5話を振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 前回、大手自動車メーカーの受付け嬢・甲田美沙子(華村あすか)と初SEXしたものの、あっさり棄てられた弱小文具メーカーの新入社員・宮本浩(池松壮亮)。美沙子の職場にまで押し掛けて自分が棄てられたことをしっかりと確認した宮本ですが、帰り道の足取りは重く、なかなか会社に戻ることができずにいました。個人的な所用で帰社が遅くなった宮本を、会社で待ってくれていたのは小田課長(星田英利)です。大雨と失恋で身も心もズブ濡れ状態の宮本を、小田課長は半ば強引に自宅アパートへと誘うのでした。ほっしゃんの笑顔は、落ち込んだ人間のハートに優しく染み込みます。朝ドラ女優がほっしゃんに惚れたのも、何となくわかるような気がします。

 仕事で一人前になるまでは美沙子を抱かないと同僚たちに宣言していた宮本ですが、美沙子に押し切られた形でSEXし、その挙げ句に美沙子は元彼のもとへと走っていきました。モテない人間は「美女と1回でもエッチできてよかったね!」と思うのですが、宮本は美沙子ともうSEXできないことを悔しがっているわけではありません。本気で好きになったはずの美沙子に棄てられたのに、意外と悲しくない自分がいることに気づいたのです。じゃあ、美沙子のことは本気で愛していなかったのかと、宮本はウジウジと自問自答中です。宮本は本当に面倒くさい性格です。

 その点、妻帯者であり、一児の父でもある小田課長は大人でした。部下である宮本の一本気な性格を理解しています。妻の友子さん(ぼくもとさきこ)に用意させた温かい手料理を宮本に食べさせた上で、いつになく厳しい言葉をぶつけます。

「自分しか愛せへん、究極のエゴイスト。それがお前や。お前がそのクソ意地とかクソこだわりを捨てへん限りは、人も愛せへん、仕事もできへん。この先、ずっと同じことの繰り返しや」

 交際相手と別れても自分のことしか考えられない宮本の偏屈さを、ズバリと指摘する小田課長でした。ほっしゃんは、アメとムチの使い方が抜群にうまいです。朝ドラ女優が惚れたのも、何となくわかる気がします。

 ところがまぁ、宮本も意地っぱりです。友子さんが止めるのを振り切って、わざわざ駐車場に置いてある小田課長の車の中で寝ようとするのでした。ついてないときは、とことんついてないもの。小田課長から渡された車のキーを溝の中に落としてしまいます。小田課長夫妻が眠っているアパートに戻ることを良しとせず、寒い駐車場で震えながら夜明けを待つ宮本でした。宮本の長い長い夜は、もうしばらく続きます。

 

■名刺への異常なこだわり。それこそがプロの道!

 

 正月を迎え、宮本は心機一転のために横浜の自宅を出て、ひとり暮らしを始めることにしました。長年暮らした自宅で過ごす最後の夜、ここで『宮本から君へ』の“生みの親”である漫画家・新井英樹が宮本の父親役で登場です。演技経験まったくなしの原作者を口説き落としたのは、青春暴走ロードムービー『ディストラクション・ベイビーズ』(16)で知られる真利子哲也監督です。27年前に誕生した漫画キャラクターの父親役を、原作者に演じさせるという真利子監督のこだわりが感じられます。芝居経験のあるなしや、演技がうまい下手は関係ありません。過剰なまでのこだわりを貫き、現代社会が見失ったものを見つけることがドラマ版『宮本から君へ』のメインテーマなのです。

 好々爺っぽい雰囲気の昭和の父を演じる新井英樹ですが、高校ラグビー部を舞台にした暑苦しい青春漫画『8月の光』(講談社)でデビューした後、文具メーカーに勤めた実体験をベースにした初長編作『宮本から君へ』(同)は若者向け雑誌で「嫌いなマンガ」第1位に選ばれました。さらに『ザ・ワールド・イズ・マイン』(小学館)では漫画史上かつてない大暴走ストーリーを展開させることになります。世間に迎合することなく、己の道を突き進む孤高の漫画家です。そんな暴走漫画家と難役を好んで演じる日本映画界の逸材が小さな呑み屋で肩を並べて日本酒を傾け合うシーンには、形容しがたいムードが溢れています。原作者から力水を授かり、池松演じる宮本の暴走劇はこれから本格化していきます。

 宮本がひとり暮らしを始めたのは、ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京系)や人気グルメ漫画『孤独のグルメ』(扶桑社)ですっかり有名になった赤羽にある木造アパートでした。山田孝之が役者バカ人生を見つめ直したように、宮本も赤羽から人生を再起動させるのでした。会社でも新しい仕事が待っていました。先輩営業マンの神保(松山ケンイチ)が1カ月後に退職することになり、神保が担当していた老舗の問屋を引き継ぐことになったのです。神保はかなり仕事ができる男です。取り引き担当の安達(高橋和也)に名前を呼んでもらえるようになるまで、何度も何種類も名刺を渡し続けたという伝説の持ち主です。安達の名刺入れは、名前を覚えてもらうために工夫されたさまざまな神保の名刺が収まっていました。両者ともに名刺交換にただならぬこだわりを持っていることがうかがえます。

 問屋の休憩室にて、神保が宮本に営業スマイルのダメ出しをしていると、そこに現われたのは大手文具メーカーに勤務する益戸(浅香航大)でした。あいさつ代わりに、宮本へ接待ゴルフ先で購入したお土産のお菓子を差し出します。せっかくのご好意だからと手を伸ばす宮本に、神保は「宮本、考えろよ~」と笑顔で熟考を促すのでした。好きでもないのに接待目的でゴルフを始めた男が、会社の経費で購入したお菓子(梅ケーキ)を安易に口にしていいのかと。たかが梅ケーキ、されど梅ケーキです。休憩室にサァ~ッと緊張感が走ります。

 大手メーカーの名前を使って要領よく仕事をする営業マンを見習うのか、それとも一人ひとりと地道にコミュニケーションしながら信頼関係を築いて仕事を取る営業マンになるのか。梅ケーキを前にして、宮本は今後の人生の大きな選択を迫られるのでした。

 夭折した天才棋士の生涯を描いた『聖の青春』(16年)など、徹底した役づくりで知られる松山ケンイチですが、今回のような飄々とした、でも胸の奥に熱いものを秘めたリーマン役もいいじゃないですか。主演の池松を立てて一歩引いた芝居が、先輩俳優らしい風格さえ感じさせます。一方の益戸役の浅香航大は元ジャニーズですが、NHK朝ドラ『ひよっこ』の売れない漫画家役などでキャリアを積んできた若手実力派です。自分が何者であるかに悩んでいた宮本は、仕事のできる先輩やライバルの登場によって、自分の立ち位置を客観的に知ることになるわけです。ここからようやく『宮本から君へ』のメインストーリーが始まるのです。

 次回からは宮本にとって“運命の女”となる中野靖子(蒼井優)がついに登場。第6話にして、ようやくメインキャストが揃います。失恋の後、長い長い夜を過ごしていた宮本ですが、もうすぐ新しい夜明けが訪れそうです。
(文=長野辰次)

池松壮亮に町田啓太……女性マスコミ関係者たちを“虜にする”若手俳優たち!

 テレビではいつも笑顔を絶やさない芸能人だが、裏では「まったく逆」という評判がよく聞かれる。暴言や横柄な態度など、芸能人の悪いところばかりが取り上げられるが、中には本当に良い評判しかない芸能人もいる。今回は業界スタッフから好評価を受ける芸能人を紹介したい。

 まずは、子役として活動し、現在はテレビ東京系で放送されているドラマ『宮本から君へ』にて主演を務め、実力派人気俳優のひとりとなった池松壮亮。映画では影がある役が多いが、実際の彼は真逆のようだ。

「出演映画の宣伝での撮影でのこと。池松さんは自分の車で現場まで来たんですが、結構な大型車を自分で運転してきて、颯爽と運転席から降りてくる彼が、とてもかっこよく、スタッフ一同メロメロでした(笑)。それに、撮影中も連日仕事にもかかわらず、疲れている表情をひとつも見せないで、トークで和やかな雰囲気を作ってくれて。暗い役が多い彼ですが、普段は明るくとても好青年でしたね」(雑誌カメラマン)

 また、女性スタッフを中心に評判なのが、劇団EXILEの町田啓太だ。「第3回劇団EXILEオーディション」にて、約2,000人の中から合格した彼は、NHK朝ドラ『花子とアン』にて主人公の夫の弟役を好演。さらに現在はNHK大河ドラマ『西郷どん』に薩摩藩家臣・小松帯刀役で出演している。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの彼も評判が非常に良い。

「町田さんはインタビューの際、ひとつひとつの質問に真剣に答えてくれるのですごく好印象でした。また、インタビュアーが取材内容と関係のない質問をしても、楽しそうに答えてくれ、『イイですね〜!』『それ、面白いですね!』などと言ってくれるんです。その時のインタビュアーは女性だったんですが、撮影終了時にうれしそうな顔を見せて、『人気が出るのもわかるわ〜!』と言っていましたよ(笑)」(雑誌編集者)

 映画公開前のインタビューなどは、同じことを聞かれることが多く、中には面倒くさくなり態度が横柄になる芸能人もいる。そんな中での彼の対応は、スタッフとしては大変助かるのだろう。

 また、「若いのにきちんとしている」とスタッフから評判なのが、男性アイドルグループ・DISH//。表では仲良く見せていても本当は仲が悪いグループもいる中、彼らの仲は本当に良いという。

「今まで、たくさんのグループを見てきましたが、DISH//は本当に全員仲が良くて、びっくりしましたね。鏡の前でじゃれ合っていたり、女性誌を見ながら『どのファッションがかわいいか』と全員で討論などしていて、高校生っぽくてかわいいなと思いました(笑)。また、礼儀もきちんとしていて、帰り際はスタッフに『ありがとうございました』と言いながら握手していましたね。最近、メンバーがひとり脱退してしまいましたが、苦難に負けず今後も頑張ってほしいですね」(雑誌ライター)

 彼らの人柄がわかるエピソード。スタッフからの評価も人気が出る要因のひとつなのかもしれない。

池松壮亮に町田啓太……女性マスコミ関係者たちを“虜にする”若手俳優たち!

 テレビではいつも笑顔を絶やさない芸能人だが、裏では「まったく逆」という評判がよく聞かれる。暴言や横柄な態度など、芸能人の悪いところばかりが取り上げられるが、中には本当に良い評判しかない芸能人もいる。今回は業界スタッフから好評価を受ける芸能人を紹介したい。

 まずは、子役として活動し、現在はテレビ東京系で放送されているドラマ『宮本から君へ』にて主演を務め、実力派人気俳優のひとりとなった池松壮亮。映画では影がある役が多いが、実際の彼は真逆のようだ。

「出演映画の宣伝での撮影でのこと。池松さんは自分の車で現場まで来たんですが、結構な大型車を自分で運転してきて、颯爽と運転席から降りてくる彼が、とてもかっこよく、スタッフ一同メロメロでした(笑)。それに、撮影中も連日仕事にもかかわらず、疲れている表情をひとつも見せないで、トークで和やかな雰囲気を作ってくれて。暗い役が多い彼ですが、普段は明るくとても好青年でしたね」(雑誌カメラマン)

 また、女性スタッフを中心に評判なのが、劇団EXILEの町田啓太だ。「第3回劇団EXILEオーディション」にて、約2,000人の中から合格した彼は、NHK朝ドラ『花子とアン』にて主人公の夫の弟役を好演。さらに現在はNHK大河ドラマ『西郷どん』に薩摩藩家臣・小松帯刀役で出演している。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの彼も評判が非常に良い。

「町田さんはインタビューの際、ひとつひとつの質問に真剣に答えてくれるのですごく好印象でした。また、インタビュアーが取材内容と関係のない質問をしても、楽しそうに答えてくれ、『イイですね〜!』『それ、面白いですね!』などと言ってくれるんです。その時のインタビュアーは女性だったんですが、撮影終了時にうれしそうな顔を見せて、『人気が出るのもわかるわ〜!』と言っていましたよ(笑)」(雑誌編集者)

 映画公開前のインタビューなどは、同じことを聞かれることが多く、中には面倒くさくなり態度が横柄になる芸能人もいる。そんな中での彼の対応は、スタッフとしては大変助かるのだろう。

 また、「若いのにきちんとしている」とスタッフから評判なのが、男性アイドルグループ・DISH//。表では仲良く見せていても本当は仲が悪いグループもいる中、彼らの仲は本当に良いという。

「今まで、たくさんのグループを見てきましたが、DISH//は本当に全員仲が良くて、びっくりしましたね。鏡の前でじゃれ合っていたり、女性誌を見ながら『どのファッションがかわいいか』と全員で討論などしていて、高校生っぽくてかわいいなと思いました(笑)。また、礼儀もきちんとしていて、帰り際はスタッフに『ありがとうございました』と言いながら握手していましたね。最近、メンバーがひとり脱退してしまいましたが、苦難に負けず今後も頑張ってほしいですね」(雑誌ライター)

 彼らの人柄がわかるエピソード。スタッフからの評価も人気が出る要因のひとつなのかもしれない。

ラブホで人生哲学する俳優・池松壮亮の真骨頂! 理不尽さに満ちた世界『宮本から君へ』第4話

 若手演技派男優として、真っ先に名前が挙がるのが池松壮亮です。R指定映画『愛の渦』『海を感じる時』(ともに13年)では門脇麦、市川由衣を相手に過激な濡れ場を演じて話題を呼びました。演技面できっちりリードするので、共演女優たちからは信頼されています。官能系映画で汗を流す一方、時代の流れに迎合できずにいる現代の若者像をナイーブに描いた石井裕也監督の『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17年)でも主演しています。ベッドで腰を振りながら、自分が生きている意味を模索し続ける俳優、それが池松壮亮です。社会人1年生の宮本浩が恋に仕事に全力で悩む『宮本から君へ』(テレビ東京系)はそんな彼にぴったりの深夜ドラマです。ヒロインとのベッドシーンが用意された第4話を振り返ってみましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

 宮本浩(池松壮亮)は都内の小さな文具メーカーに勤める新人営業マンです。通勤電車で顔を合わせる大手自動車メーカーの受付嬢・甲田美沙子(華村あすか)と仲良くなり、職場近くのカフェで早朝デートするようになりました。初キスは済ませましたが、初SEXはまだ。友達以上恋人未満という微妙な距離感を、宮本は悶々としながらも楽しんでいるようです。

 出社前から宮本と美沙子がイチャイチャしている光景を見かけた宮本の同僚・田島(柄本時生)は、「お前はええのう。おもろない生活から逃げ道ができて」とついつい嫌味のひとつも言いたくなります。営業マンとしてはまだ半人前であるのは宮本も一緒です。美沙子と過ごす時間を心の支えにしながらも、「美沙子=逃げ道」という田島の指摘が気になってしまいます。美沙子とエッチしたい。でも美沙子への欲望は純粋な愛情ではなく、仕事にやりがいを見出せない現実からの逃避なのかと宮本は思い悩むのでした。

 第1話に続き、昭和感漂う居酒屋「酔の助」での呑み会。職場の仲間たちと呑んでいても、やっぱり宮本の顔は浮かないままです。美沙子との交際がスタートしたのに、美沙子を抱くのは自分が営業マンとして一人前になってからと宮本は決めています。妙にストイックな宮本に対し、「何べんでもSEXすればいい。人間のすることに完全なんかない。気持ちは後から付いてくるよ」と上司の小田課長(星田英利)は優しく諭します。でも、意地っ張りな宮本はついつい反論してしまうのでした。「人間なら完全になれると信じたいです。やってみなくちゃ、分からないでしょ!?」と酒の席でシャウトするのでした。

 美沙子とのデートの日が訪れました。渋谷のバーで、2人っきりの時間を過ごす宮本と美沙子。この日の美沙子はいつになく積極的でした。「宮本さんは紳士なの? けだもの?」「私は淑女なの? それとも……」。何度も何度も思わせぶりな「今夜はOKだよ」サインを発する美沙子でした。でも、美沙子とのSEXをつまらない仕事の逃げ道にしたくない宮本は、美沙子の甘い誘いになかなか乗ってきません。ついに業を煮やした美沙子は「今夜は帰らないって、家族には言ってきたから」と男が断れない最後の決め台詞を吐くのでした。

 美沙子は分かりやすい女です。学生時代から付き合ってきた彼に振られて間もない美沙子は「私を捕まえて。私、宮本さんを逃げ道にするから」と堂々と言い放ちます。元彼のことを忘れるくらい強く激しく愛してほしいと、宮本のハートと股間に剛速球を投げ込みます。ここまで女に言わせたら、もう宮本も帰るわけにはいきません。「行くぞッ!」と取って付けたような男らしさでラブホに向かうのでした。

■未練がましい? 最初で最後となる美沙子のいる職場への訪問

 

 ラブホではバスローブ姿になった美沙子が、ベッドで待っていた宮本の横に座り、しなだれ掛かります。自身の男性器が勃起していることを確認した宮本は、美沙子のバスローブを剥ぎ取りました。美沙子の巧妙なマインドコントロールによって、宮本はあっさり「一人前になるまで美沙子は抱かない」という自分への誓いを破ってしまいます。宮本との初SEXを済ませ、満足したのか美沙子は大きな鼻息を立てながら、ぐっすりと眠っています。美沙子の寝顔を見つめながら「……けだもの」と呟く宮本でしたが、ようやく美沙子と身も心も繋がったという充足感も感じているのでした。

 美沙子と一線を越える仲になったも束の間、宮本は天国から地獄へと突き落とされます。宮本を地獄送りにしたのは、誰であろう美沙子に他なりません。毎朝、一緒に電車通勤していたのに、いきなり美沙子は姿を見せなくなったのです。考えられる理由はひとつです。日曜日に短大時代のサークルの集まりに参加すると話していた美沙子は、元彼も来るかもしれないけど……と宮本にお伺いを立てていました。美沙子と初SEXしたばかりの宮本は、「行けばいいよ」と男の寛容さを誇示したのですが、これが命取りでした。「私を捕まえて」と美沙子が言っていた言葉の重みを反芻する宮本ですが、今さらもう手遅れです。

 元彼はそんなにいい男なのでしょうか? 宮本とは比べものにならないくらの高給取りなのでしょうか? 宮本よりも抜群にSEXがうまいのでしょうか? 宮本は美沙子に棄てられたという現実を直視することができず、美沙子に電話をかけることすらできません。美沙子と音信不通になって数日後、駅で美沙子を宮本は見かけますが、美沙子は無言のまま目を合わせようとしません。美沙子の乗った電車を宮本はみっともなく追いかけるものの、無情にも扉が閉まった電車は遥か遠くへと去っていきます。

 翌日の朝方、美沙子からメッセージが届きました。元彼から「やり直したい」と言われたそうです。「自分勝手で本当にごめんなさい」と綴られたメッセージだけでは、どうにも宮本の心は落ち着きません。土砂降りの雨の中、美沙子の勤める大手自動車メーカーの本社を訪ねる宮本でした。もちろんアポなしです。エントランスで大きく深呼吸した宮本は、美沙子のいる受付けへと進んでいきます。「僕の名前は宮本浩です!」「用はありません!」「さようなら!」。短い3つのフレーズに、自分の思いの丈を存分に込めて叫ぶ宮本でした。この奇妙で愚直な宮本の行動を、受付嬢である美沙子は「はい」「ありがとうございました」と懸命に泣くのをこらえながら対応するのでした。

 最後にお辞儀しながら、宮本は美沙子に見送られます。このお辞儀は、真っすぐに生きることを何よりも尊んだ青春時代との別れの挨拶でもありました。宮本は元彼のもとに走った美沙子への怒りよりも、美沙子の逃げ道にすらなれなかった自分の器の小ささに対する不甲斐なさでいっぱいです。美沙子を大切に思うあまりSEXを控えていた宮本は、美沙子に押し切られてSEXしますが、その直後に棄てられてしまいました。何という不条理でしょう。この世界は理不尽さに溢れています。でも、そんな理不尽さのひとつひとつを、社会人1年生の宮本はこれからも噛み砕きながら前へ進んでいくしかありません。

 これにて『宮本から君へ』の序章は終了。次回からはカリスマ営業マンの神保(松山ケンイチ)が登場し、宮本にサラリーマン稼業の真髄を叩き込むことになります。原作者である漫画家・新井英樹も宮本の父親役で出演するようです。いよいよ本章が幕を開ける『宮本から君へ』第5話は要チェックです。
(文=長野辰次)