湊かなえ、桜木紫乃、柳美里――文壇で活躍する、ママ作家の光と影

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『柳美里不幸全記録』(新潮社)

 辻希美、神田うの、辺見えみり、小倉優子など、ママタレが芸能界を席巻している昨今、文壇でもママ作家が活躍している。最近では、川上未映子が出産で産休に入ったのも記憶に新しいが、育児と並行しながらヒット作を生み出す女性作家はたくさんいる。

「2008年のデビュー作『告白』(双葉社)が、250万部を超えるヒットとなった湊かなえは、現在小学6年生のお子さんがいて、運動会を見にいくために原稿を早めに上げるという子煩悩さ。同作の執筆中は、お子さんがまだ小学校低学年で一番が手の掛かる時期だったにもかかわらず、一度も原稿を落としたことはなかったとか。また、『図書館戦争シリーズ』(角川書店)で知られる有川浩は、子どもの教育に熱心なママだと、よく編集者の間で名前が挙がりますよ。体操教室に通う子どもの送り迎えをしているという話も聞きます。それから、直木賞作家の桜木紫乃も、朝6時に起きて娘さんのお弁当を作り、原稿に向かう生活をしていると語っています」(雑誌編集者)

ラブホテルという非日常で育った女の“節目”を描いた『ホテルローヤル』

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『ホテルローヤル』/集英社

■今回の官能小説
『ホテルローヤル』(桜木紫乃、集英社)

 「ラブホテル」という場所がある。それがどういう場所なのか知らなかった子どもの頃は、おもちゃのような原色のお城を指差して、「あのお城、なあに?」と、無邪気に両親に訊ねたりしたこともあった。今思い返すと、何ともばつの悪い空気が流れていたことだろう。

 「ラブホテル」とは、ふと冷静に考えると非常に不可思議な場所である。なぜなら、男と女が、ただセックスをするためだけに集結する場所だからだ。不倫カップルがたまの逢瀬をむさぼる部屋もあれば、性欲を満たすだけにホテトル嬢を呼んでいる部屋もある。目的とする行為は1つだけれど、それに至るまでの物語は、壁1枚を隔てて十人十色――それぞれの部屋で、わずか数時間ばかりの、男と女のさまざまなドラマが繰り広げられている。
 
 今回ご紹介する『ホテルローヤル』(集英社)は、北海道の片田舎にあるラブホテルが舞台となる連作短編集である。1年のほとんどが厚い雲で覆われ、寒さから身を守るように人々が身体を寄せ合って生きている――そんな人のぬくもりが人一倍恋しくなるような北海道の片隅に、ひっそりと「ホテルローヤル」は建っている。