18日に第一回が放送された深田恭子・松山ケンイチ主演のドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)。集合住宅(コーポラティブハウス)を舞台に、うわべは幸せそうな4組の「家庭」が抱えるそれぞれの悩みや、価値観の違いから生まれる摩擦を描くっぽい。いわゆる「妊活」を軸にしたドラマとは聞いていたものの、オンエアを観るまで今ひとつ雰囲気がわからなかったのだが、思ってたよりも軽やかなコメディ路線。「ヒューマンコメディ」というやつでしょうか。
コーポラティブハウスとは、入居者が集まって土地を買ったりデザインしたりを自主的に行って建てる集合住宅らしく、このドラマでは一軒家が4軒、そして中庭は共有スペースとなっており、若干ヒッチコックの『裏窓』(1954)っぽい印象。殺人は起きないはず。古くてすみません。さて「ご近所さん」とも「お隣さん」とも違う、その距離感がどんな摩擦を生むのか。
■まず登場人物は?
この4世帯がどうやって出会ったかの経緯は省かれているが、それぞれ他人同士。最初に住宅設計の打ち合わせで4組の住民が集合した際は、それぞれ幸せそうな家庭なり夫婦なりに見えた。
・五十嵐大器(松山ケンイチ)と五十嵐奈々(深田恭子)夫妻。それぞれ玩具メーカー勤務とスキューバダイビングインストラクターの、いわゆる幸せそうな新婚さん。子どもなし。
・川村亮司(平山浩行)と杉崎ちひろ(高橋メアリージュン)の結婚しそうな同棲カップル。スタイリストとネイリストで、業界臭強め。子どもなし。
・小宮山真一郎(野間口徹)と小宮山深雪(真飛聖)のベーシックな家庭。商社マンと専業主婦。小さい子どもが2人。
・広瀬渉(眞島秀和)渋い独身。このコーポラティブハウスを設計した一級建築士で、モテそう。子どもなし。
しかし、これはあくまでうわべだ。段々それぞれの歪みや本音が見えてくる。
■「女は子どもを産んでこそ一人前」
まず、拮抗を崩してきたのは、いわゆる旧態依然とした価値観を、悪気なくよかれと思って押し付けてくる専業主婦の小宮山深雪。
「みなさんもいずれは、お子さん作られるでしょうしね?」の何気ない(それでいて無神経な)一言が、他の3組の会話をピタリと止める。
「お仕事お忙しいのはわかるけど、子どもは絶対作ったほうがいいわよ~」
「いろんな考え方があっても子ども欲しいっていうのは女性共通の願いよ。やっぱり女っていうのは子どもを産んでこそ一人前だもん」
「少しでも少子化に歯止めかけなきゃね?」
他3組の微妙な空気を察した夫・真一郎が止めても、尻に敷いてるようでお構いなしに持論を展開。もうこの時点で、一緒に住むのを放棄する人がいてもおかしくないのでは? と思うほどだが、さらに、夫の海外赴任が多かった過去を自慢気に語ったりと、見事なヒールぶり。
子ども作れ発言に我慢できなくなった業界カップル・杉崎ちひろは、仕事のふりをして途中退席、パートナーの川村にぶちまける。
「私みたいに子ども欲しくない人だっているし、欲しくたってできない人だっているんだよ? 無神経じゃん!」
川村に「そう反論すればよかったのに?」とのんきに言われるも、「これからお隣さんになるのに、そんなこと言えるわけないじゃん」。
しかし怒りつつも、なんだかんだ川村(バツイチだが、そこもイジれる関係)といちゃついたり。カラッとしてるのが救いか。だが、小宮山深雪は小宮山深雪で、ちひろの高級バッグをさりげなく睨みつけ、嫉妬丸出し。火種が燻っている感じだ。
五十嵐夫妻は、クセ的には一番フラットな家庭なのだが、やはりというか、夫・大器の母親が子作りをせっついてくる様子。深雪の「自分がひた走る価値観に周りを巻き込むことで安心したい」という弱さからくる感情よりも、もっとわかりやすい、いわゆる年老いた親が子ども夫妻に望むアレだ。
奈々が子作りに前向きなことがわかり、さっそくベッドインしたがる大器。絵に描いたように平和だ。
そして、ダンディな設計士・広瀬。
設計事務所の上司に、独立や、そのモチベーションとなる結婚や子作りをせっつかれている様子だが、表情が暗い。同僚の長谷部留美(橋本マナミ)が「結婚してくれたら子どもも産んであげる」と冗談ともつかないノリでからんでくるが、やはり広瀬は笑えない。
そんなある日、馴染みのバーで酔った青年・青木朔(さく・北村匠海)と出会う。
かつて付き合ってたパートナーの結婚式に出席した帰りだということで、荒れ気味に酔ってる青木が、何気なく言った言葉を広瀬は聞き逃さなかった。
「普通、付き合ってた男、結婚式呼びます?」
「行かなきゃ良かったのに」(マスター)
「だってー……どんな女か見たかったんだもん……」
予感がしたのか、静かに反応する広瀬。結論からいうと、広瀬はゲイだ(おそらくマスターは知ってる空気)。
それが確定するのは、歩けないほど酔った青木との帰り道。
「わたるん(広瀬)も、こっち側の人だよね?」と言われて、そのままキスを受け入れる。
LGBTに向き合いたいのか、ただ見世物的にBLっぽいことをやりたいのかはまだわからないが、ただ一部の層に向けたあざとさはバシバシと感じた。なぜならこのパートだけ不自然に美化されたおとぎ話のようだったから。
物語は途中で、1年が経過する。
■1年たって入居後
中庭で、一家で餅つきをしながら家族円満をアピールする小宮山深雪。
通りかかった広瀬にお見合い相手を紹介しようとしたり、派手な格好で「ニューイヤーパーティ」に出かける川村夫妻(まだ同棲状態だが結婚間近)のブランドバッグを目に、またしても自分のバッグを恥じて隠したりと相変わらず。
実は、小宮山真一郎は多すぎる転勤を苦に、妻に言わずに商社を退職しており、世間体を過剰に気にする深雪はそれを恥じ、周囲どころか子どもたちにすら隠している。次の仕事が決まらない真一郎に激怒し、会社に行くふりをさせ、帰りも早く帰ってきたら邪魔者扱いし、それでいて自分はキレイな部屋をブログに上げてのアクセス数増加に満足したりと、虚栄心に飲み込まれ具現化されたモンスターとして描かれる。弱腰の夫にピリつく時に、昼ドラのような過剰なBGMアリ。
一方の五十嵐夫妻は、未だ子宝に恵まれず。
「1年以上、避妊なしの性交を続けても妊娠に至らなかった場合、検査するまでもなく不妊症と言えます」
主治医(伊藤かずえ)にいきなり言われ、驚く2人。主治医に不妊治療の覚悟を問われるも、特に夫の大器は、妻の奈々に比べ、筆者のような多くの男性がそうであるように、妊娠や出産にいまいち無知な男性といった感じで受動的だ。
「もし、治療を始めるのであれば、明日の夜か、明後日の朝、性交渉をしてください(笑顔)」
「……え? 性交渉?」
「……ご主人、何か問題でも?」
「ん、ん、いえ、ん……(動揺)」
他にも、精液採取に大器が戸惑うなど、深刻な空気を出しすぎないようにしてる印象。
さらに、広瀬の元には、1年付き合ってきた青木が押しかけてくる。同居するために住むところを引き払い、背水の陣で攻め入るとは、なかなかの爆弾小僧。
「一つの棟に4軒しかないから、お互いにどんな生活してるか、すぐわかるって」と怒る広瀬だが、「もしかして遊びだった?」と、逆に詰め寄る青木。押し切られるように同居が始まった。
「幸せ。わたるんの料理一生食べ続けたい」
「たくさん養子とって大家族作る」
と、グイグイくる青木に対し、「この話は以上」と広瀬は先をはぐらかす。広瀬は職場にも周りの家族にも、いわゆるカミングアウト的なことはしていない。
部屋でワインを飲みながら食べてたのがアヒージョなのかどうかTwitter検索で確認しようと思い「わたるん」と打ち込むと、すかさず予測で「わたるん 受け」「わたるん 攻め」という言葉が並ぶ。結局「妊活」ドラマというより、こっちの話題が先行してる様子。
そして、ここまでただひたすらにバブリーなだけだったスタイリスト川村の元に突然、前妻の死を告げる電話が。5年間、一度も会っていなかったという前妻との子どもにそっけなくされるなど、いきなり暗雲が。
家に帰ってきてもどこか様子がおかしいので、ちひろに「子どものこと迷ってんじゃないかなって思って」と言われ、「え?」と思わず焦ってしまう川村。
「言っとくけど、私、本当に産まないよ?(その後あーだこーだ)」
川村は、前妻との子どものことを念頭に置いて焦ったのだろう。ちひろには、まだ何も伝えていない様子。わた……広瀬と青木の時もそうだが、こういった会話の細かい仕掛けがうまい。
ちなみに前妻の子どもが父親を無視して見ていたのは、大人気ユーチューバーのフィッシャーズ。チョイスに、やや媚びを感じました。
■リアルな4家庭が出揃う
・不妊症発覚の五十嵐夫婦。
・結婚目前で、前妻との子どもをどうするか問題が出てきた川村と子ども欲しくない杉崎ペア。
・他人を妬み価値観押し付けがちな妻と、その妻に言い返せない無職の夫。子どもは元気そう。
・ゲイカップルの広瀬と青木。
第1回放送を見終わって感じたのは、主演の2人が少し薄い印象。
今が一番かわいいとの呼び声高い魔性の女・深キョンこと深田はもちろんかわいいのだが、いまいち感情が見えない。演技のせいというより、そういうシーンをあえて省いてる気も。これが深田にプラスなのかマイナスなのか……。妊活の前の晩に、うなぎ、山かけ納豆、レバニラを晩御飯に出してくる深田というか奈々は古典的ですが、よかったです。
コミカルな芝居もうまい松ケンのからみは王道な感じでいいのだが、いまいち妊活部分もとってつけた感じがして、特に医者とのからみあたりは薄い『コウノドリ』(TBS系)のような印象。その軽さがいいのかもしれないけど、それぞれ「昼ドラ」だったり「BL」だったりと、(意図的に?)とっちらからせてる雰囲気を、どうまとめ上げるのかが見ものです。
今のところ一番気になるのは、スタイリスト川村が実子をどうするのかという問題。それでなくても「子どもいらない」を連呼してる強気なパートナー・杉崎ちひろと結婚目前なのに。いけすかねえ金持ちスタイリストだと思ってノーマークだっただけに、5年ぶりに会った子どもの前でぎくしゃくする平山浩行の芝居がとても良かったです。
あと、気になったのはこの番組が厚生労働省の「ポジティブ・シェアリング」「こころの耳」に賛同してタイアップを行っていること。「みんなの力で心を軽く!」だかの啓蒙スローガンを掲げていたが、なんかこれを知った途端に、少し萎えました。
まあドラマだし、と見て見ぬ振りしてた「なんだかんだ全員やけに金持ってそうじゃん」問題が見過ごしにくくなったり。別にドラマだし、みすぼらしくする必要はないのだが、悩みのある人に寄り添うという役所の政策がちらつくと、どうしても少し見え方が変わってきてしまう。
その辺のタイアップなどの縛りの影響で、教習所で見せられるような交通安全の映画みたいになるのだけはぜひとも避けていただきたい。第2話も期待してます!
(文=柿田太郎)
