高畑充希の魅力を味わい尽くすグルメドラマ『忘却のサチコ』(テレビ東京系)。第9話となる今回もダンス、寸劇、そして見事な食べっぷりと、さまざまな顔を見せてくれました。
(前回までのレビューはこちらから)
■ジーニアスの恋
人気作家・ジーニアス黒田先生(池田鉄洋)からアイドルとの対談の替え玉役を頼まれた幸子(高畑充希)の編集部の後輩・小林(葉山奨之)。
第2話に登場したジーニアス黒田は外見を公表していないため、基本対談などはNGにしているのだが、そのアイドル・桃乃もぎか(岩田華怜)が自分のファンだと知ってしまい、どうしても断れない。なぜならジーニアスも桃乃の大ファンだからだ。
「こんな俺(もっさりロン毛の池田鉄洋)が出ていけるわけない!」との思いから、イケメンの小林が自分(ジーニアス)の替え玉をしないのなら原稿を書かないと駄々をこね、あげく難色を示す小林に土下座までする始末。
しかし、小林に励まされ、「桃乃ちゃんに作品だけでなく、俺のことも好きになってもらいたい!」と、ダイエットを決意する。
ダイエットで解決する問題なのだろうか? と思ったが、それは置いておこう。池田さんすみません。
幸子はダイエットをバックアップするため、近隣のスーパー3軒のお惣菜ラインナップより考案した献立表や、1日の健康的なタイムスケジュールを作成するだけでなく、ジーニアスに運動させるために、桃乃の曲の振り付けまで「身体に叩き込んで」きて、ジーニアスに指導する。
このアイドルの曲「理想の彼氏はあなただぴょん」が、今時のアイドルっぽい音で無駄にちゃんと作られており、フルで聴きたくなるほど。
その曲に合わせ、アイドルさながらのダンスを真顔でする高畑充希と、同じ動きをする池田鉄洋。
第2話のおにぎりミュージカルを思い出すコラボ。
そして数日後、ダイエット失敗。
桃乃のCM「牛丼をお腹いっぱい食べる人、好き、好き、大好きー!」にまんまとやられ、何十杯も食べてたらしい。
悲しきファン心理。
しかし購買力のあるファンを持つアイドルを使う狙いは、そこだから仕方ない。
スズキの車を購入し、タマホームで家を建てた太いモノノフ(ももいろクローバーZのファン)も、きっといるはずだ。
■ジーニアスの想いが爆発
ということで対談当日、いつも通りの容姿で現れたジーニアスに鹿のお面(被るタイプ)を装着させ、顔出しNGとして対談させる幸子。
見た目はバンビーノのネタ「ダンソン~フィーザキ~」の狩られる側を想像してほしい。
対談中も桃乃の質問に答えず、無言でしばし見とれてしまうダメなジーニアスに、手を叩き意識を戻させるなど、けなげにサポートする幸子。
しかし桃乃のジーニアスを気遣う心に、ジーニアスの想いが爆発。
「僕、桃乃さんのこと、前のグループ、ブリングトップに入る前の素人時代の踊ってみました動画の頃からずっと見てました! 桃乃ちゃんがアイドルとして成長していく過程が僕の創作意欲の原点になってることは間違いありません!」と熱くぶちまけ、あげく嗚咽を漏らすほど興奮。
引かるかと思ったが、桃乃もジーニアスの手を握りしめて感激、その後、対談はジーニアスの1人しゃべりが5時間に及んだという。
■このシリーズ一番のジェットコースターな展開
ふらふらになりながらの帰宅途中、ガッツリといきたい幸子は程よく汚いジンギスカンの店に飛び込む。
今回は逃げられた俊吾さん(早乙女太一)を忘却するためではなく、単にエネルギー補給としての入店。
一人席に着き、マトンスライスジンギスカンを注文するが、横の席のカップルから「一人でなんでもできちゃう女って、かわいげないよなあ」と揶揄する声が漏れ聞こえる。
普通のグルメドラマなら、ここからはただジンギスカンを美味しく食べるだけのシーンになると思うのだが「私、一人でなんでもできるからダメなんでしょうか……かわいげって、なんでしょう……」と、ヒツジ肉の焼ける音をバックに悩む幸子。
さらに「もしも幸子がきゃぴきゃぴした女の子だったら」の妄想シーンに突入。お揃いのロンTを着た俊吾さんといちゃつきながら、ツインテールでパフェを食べる幸子。
この幸子、いや高畑充希のツインテールの似合いっぷりが半端なく、素直にかわいいと思いました。すみません。
この妄想にバットマンのようなマントを広げ、シルクハットを被った白井編集長(吹越満)が登場するのだが、この意味不明なキャラも妙にハマっていて、ジンギスカンの焼ける音で唾液が出かかってる最中に何を見させられているんだろうと変な気持ちになる。
「もしも私がそんな風(きゃぴきゃぴ)だったら、俊吾さんはソバにいてくれた……? ……でも……そんなの私じゃない」
妄想しつつ悩んでいた幸子がふと真顔に戻り、こちらもハッとさせられたことろに、間髪入れずに
「おまたせしました~マトンスライスジンギスカンになりまーす」と注文が到着。
相変わらず短い時間に丁寧に詰め込んで、観る側をさりげなく揺さぶる作り。地味なジェットコースターに乗ってるようだ。
「そんなの私じゃない」の言葉の耳に残る中、画面にはボールに入った生のマトンともやしが映っている。余韻の波状攻撃。
いろいろあるけど、結局身体に食べ物を入れないと始まらない。
いろいろあるけど、明日からも続いていく。
フィーザキーされた羊の肉を頬張る幸せそうな幸子。
どんな人間も、忘却しないと生きていけない。
うるさいカップルを尻目に、一人でジンギスカンを楽しむ幸子を見ていると、なぜかこちらまで幸せな気持ちになってくる。
こちらのそんな気持ちなどお構いなしに、画面では幸子は延々もやしの感想とか述べている。油断できないドラマだ。
今回は前半に早乙女太一、ふせえりとの贅沢な演劇シーンもあり、時間稼ぎのようなシーンで誤魔化さず手間を惜しんでないのがうれしい。
『男はつらいよ』のタイトル前の夢芝居みたいなのが毎回数本入ってくるわけだから、撮る側もやる側も大変だ。
■小林の片想いは実るのか?
体調を崩して対談に来れなかった小林が、幸子しかいない編集部に戻ってくる。
「佐々木さんに早く認めてもらいたいので」と、片想い丸出しの小林。
対談すっぽかしたお詫びにと飯を誘うが、当然幸子は食べてきたからと断る。
残念そうな小林に「デザートならまだ入ります」と幸子。
「デザートの美味しい店ですね」と生き返ったように検索しだす小林。
「さ、仕事がんばりますよ!」
「はい!」
暗い編集部に佇む2人の背中でエンディング。
なんか合ってるかわからないけど、これぞハッピーエンドという気持ちになりました。
残りの回もあと少し。最近は小林の片想いぶりがハマっているので、そちら目線でも見てしまう。まったく小林の想いが届いていなさそうだったのに、今回のデザートのくだりはちょっとずるい。
幸子、わかっててやってるのだろうか……? だとしたら、さじ加減が絶妙。また次回。
(文=柿田太郎)