『どうする家康』石川数正の「裏切り」は秀吉が仕組んだものだった?

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回は続きを読む

『孤独のグルメ』最終回は、まさかの角野卓造登場!“本当の名店”のかつてないニラ玉で最終飯

 いよいよ最終回を迎えた『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)。今や局を代表するドラマと言っても過言ではない本作。第12話「東京都中央区八丁堀 ニラ玉ライスとエビチリ」を振り返る。

(前回までのレビューはこちらから)

■久住バンドの生演奏からスタート

 今回、井之頭五郎(松重豊)が訪れたのは東京は中央区八丁堀。いつもと冒頭のBGM(松重“五郎”豊のテーマ 「STAY ALONE」)の雰囲気が違うと思ったら、まさかの原作者・久住昌之擁するザ・スクリーントーンズご本人による生演奏。

 五郎が商談で訪れたライブハウスでリハーサルをしていたのがスクリーントーンズだったという設定。目の前で「アイリッシュ・スプーン」(Season7のOP曲)の演奏が開始され「あ、なんか始まっちゃった」と慌てる五郎。からの、そのまま生演奏を活かしてのオープニングで「最終飯」を彩る。

 久住とすれ違う瞬間、五郎は「あれ、あの人……?」と何かに気付きかけるが「……ま、いっか」とやり過ごす。正直よくある手法だが、五郎風に言わせてもらえば「こういうの、なんかうれしい」。

 ちなみにこのライブハウスのマスター「五十嵐さん」を演じるのは大友康平。無茶を平気で言ってくる一見粗野な客だが、五郎もそれを受け入れ、逆に遠慮なく言い返せる認め合った間柄のよう。

 店を出た五郎に今期最後の「空腹」の波が。あんこうやフグなど高級そうな店ばかりの中「もっと庶民の店はないのかな」とさすらう。ようやく見つけた「中華シブヤ」という「教科書通りの町の中華屋」に安堵する五郎。

「庶民メシにありつけそうだ」と暖簾をくぐる。暖簾はなかったが。

 

■角野卓造が中華店にいるパラレル感

「いらっしゃい」

 迎え撃つ大将が、まさかの角野卓造。言わずと知れた「幸楽」(@TBS系『渡る世間は鬼ばかり』)のマスター。漂うラスボス感。

 しかし、この日は白い割烹着や帽子を着用していないので、パラレルワールド感がすごい。当然だが、いつまで経っても泉ピン子やえなりかずきは顔を出さない。

 あの橋田壽賀子が創造した天地とは別の異世界が広がる。メガネもしていないし、黒いポロシャツなんか着てる。もちろん何を着ててもいいのだが、やはり「中華店」に「角野」とハメてきたことで、ちょっとした部分が気になる。

 なんたって、ここの「勇」(渡る世間~での角野の役名)は調理でなくフロア担当だ。もう違和感だけでお腹がいっぱいになりそうだ。

 しかし、

「この赤地に白で手書き文字のオーソドックスなメニュー、これは信頼できそうだ」

 と、ラスボス・角野の撒き散らす「違和感」に気を取られることなく、いつものようにメニューを凝視、熟考する五郎。

「エビトースト? ちょっと気になるじゃないか……」

「ニラ玉かぁ……いやエビチリが俺を呼んでいる気がする……」

「ニラ玉かエビチリか、うーん……気絶するほど悩ましい」

 で、どうするのかと思ったら、

「すみません、ニラ玉とエビチリとライス。あとエビトーストください」

「全部頼む」という解決法。たしかにこれなら気絶しなくて済むが、ずるい。

 

■客が全員注文するメニューとは?

 さっそく出てきたのは「エビトースト」。

 四つ切りにした食パン(耳なし)にエビのすり身的なものを塗り、油でカラッと揚げたもの。

「想像してたのと違う」と、いきなりうれしい誤算。本品もうまそうだが、五郎の想像していた「エビトースト」も気になる。

 そうこうしてるうちに正午を回り、近くのサラリーマンがなだれ込んでくる。

 3人グループのサラリーマンは全員ニラ玉とライス。2人組もニラ玉とライス。さらに後から来た別の2人組がニラ玉丼と、全員がニラ玉だけを欲する異様な状況。

「何? みんなニラ玉? だって『ニラ玉』だよ? いったい何この店?」

 言いたいことはわかるぞ、五郎。だって「ニラ玉」だもん。

 餃子やレバニラなど、いわゆるメインを張る人気者に比べ、ひっそりと野に咲く地味なポジション。そんな「ニラ玉」に今、引く手数多のオファーが。

 そして、その渦中の「ニラ玉」が到着。驚くのはその見た目。

 たっぷりのニラを炒めたその上に、ドーンとでかい卵炒めが覆いかぶさっている。「中華ニラオムレツ」とでも言えばいいだろうか。

 いわゆる我々の知る、ニラと卵が規則正しく入り混じるあの色の配分ではない。真っ黄色の塊の下から少しだけ濃緑がはみ出て見える。

 卵でニラを包むようにして口へ。

「おーーなんじゃこりゃ。ニラ、味が濃い、強い、そして太い」

「野生の裸のニラの旨味だ」

 五郎の顔が至福で歪む。

「これは美味い。注文が殺到するわけだ」

「こんなにもニラの味がダイレクトに飛び込んでくるとは。豚肉もここではニラのサポートに徹してる感じだ」

「卵を一緒に炒めないのはこのためか!」

 一人でどんどん「事件」を解明していく味探偵・五郎。

 別々に炒めているからこそ、一緒に食べた時、味の具合が変化する。口に入れた時、初めて「ニラ玉」が完成する。食べたかのように語らせてもらったが推測だ。

 ついには白米だけを口に入れて「ニラ玉の余韻だけで、ご飯がぐいぐい進む。やっぱり俺は骨の髄から白いご飯至上主義者なんだな」と五郎、自分再発見。白米至上主義者って米国の差別団体みたいで、ちょっと怖い。

 最終的に五郎は「ニラ玉に対する認識がひっくり返った」とまで言っていた。

■エビチリで終わりかと思いきや

 さらにエビチリが到着。絶妙なオレンジ色のとろみ餡が艶かしく光る。

 大きめのエビを頬張り「これはいいエビチリだ。生姜が効いてる」と絶賛。

 筆者は過去に料理本を見ながら拙くもエビチリを作ってみたことがあるのだが、確かにニンニクも生姜も刻んで入れた。しかし、まず第一声でエビを差し置いて生姜を褒めるのが、さすがだ。

「エビチリからのエビトー(スト)」とエビリレー。

 前回はガリガリ君(ガーリックスープにガーリックトースト)だったが、さしずめ今回は「エビエビ君」か。

 さらにエビトーに食べるラー油をかけて「味変え」。どこまでも楽しみ尽くす五郎。

 メニューにない「ニラ玉ラーメン」を頼む常連客が「(味がぼやけるけど)どっちも食べたいんだもん」と笑うのを聞きながら、

「その気持ちわかります。俺とてニラ玉、エビチリ、どっちも食いたい、どうしようもない奴です」と勝手に心の中で自己紹介。

 いつもそうだが、五郎はまわりの雰囲気も「食べて」いる。

 気づけば回りのテーブルが「ニラ玉」で埋め尽くされていくのが壮観。

「ノーヒントで店の看板メニューを引き当てた自分を褒めてやりたい」と自画自賛したくなる気持ちもよくわかる。グルメサイトで得た情報で食べた時には得られない快感。

 パセリも完食し、いよいよ今期も終了かと思いきや、「追加でチャーシュー麺ください」ときた。常連客の「ニラ玉ラーメン」を見て我慢できなくなったのだ。これぞ五郎。

 Season7の初回、とんかつを食べた後に「追いステーキ」という荒技を見せてくれたが、今回もいわば「追いチャーシュー麺」。

 予想を超える追加に角野もたじろぐ。

 

■庶民中華とは何か

 出てきたのはオーソドックスなチャーシュー麺。五郎はチャーシューを噛みしめなごら「この店の誠実さが染み込んでいる」と、うれしそう。面と向かって言われたら「うるせえな」と思ってしまいそうだが、心の中だからOK。

 そして麺をすすりながら「これこれ、『庶民中華』のラーメンだ」と喜ぶ。

 今日は「庶民メシ」「庶民味」とやたら「庶民」という言葉を乱発しているが、今回も昼からメイン3品、しかもラーメンじゃなくチャーシュー麺というブルジョワ・オーダー。

 むしろ「庶民」を乱発しすぎて、逆に五郎がお忍びで下界にやってきた王家の人間に見えて来る。一度でいいから五郎の収支を見てみたい。

 いわゆるこの場合の「庶民中華」は、やたら志を掲げるラーメン専門店とかでない「町中華」という意味なのだろう。五郎は最後にSeason7を総括するように、こう言っている。

「こういう普通のラーメンがいいんだよ。『どうだどうだ』という押し付けがましさが微塵もない、町の定番。でもこんなラーメンを食べられる店が、都会ではどんどん減っている」

「毎日、八丁堀界隈で働く人々に普通の美味しさを淡々と提供し続ける。時代に媚びず、背伸びもせず、地道な味の工夫で客の心をがっちり掴んでいる。こういう店こそが本当の名店だと思う」

 一瞬、宮沢賢治の詩かと思ったが、五郎のコメントをほぼ添削しているという原作者・久住の想いがこもった言葉だ。

「最後はチャーシュー1枚締め。よーーお。(ぺろり)」で終了。チャーシューを用意して一緒に「締め」たかった。

「気持ちいい食べっぷりですね、見てる私までお腹いっぱいになっちゃいましたよ」と角野もご満悦。「お会計お願いします」と言われた時の角野の「あいよ!」の声が心地よく響いた。

「まだまだ、すごい店があるもんだ。明日は浅草か。何を食おうかな。」と街に消えていく五郎。

 つづく「ふらっとQUESUMI」も最終回だからと特段変わった部分もなく、いつも通り酒を飲んで申し訳程度の挨拶をしておしまい。

 気取らない最終回ながら、最後の「本当の名店」に対する台詞には熱い想いを感じた。

 当然あるであろうSeason8に期待もかかるが、力を抜いて作り続けて欲しい。
(文=柿田太郎)

今夜Season7最終飯!『孤独のグルメ』五郎オリジナルの“ガリガリ君”の食べ方とは?

 今晩、早くも最終回を迎える『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)。ラスト前となる11話も、前回が海外編(ソウル)だったとは思えないほどの「いつも」っぷりだった。

 第11話「千葉市千葉市の特製ニンニクスープと生鮭のバター焼き」を振り返る。

(前回までのレビューはこちらから)

■カレーの匂いに刺激されたが、カレーは食えず

 今回、商談で井之頭五郎(松重豊)が訪れたのは、千葉の西登戸(にしのぶと)。神奈川に登戸(のぼりと)という街があるが、もちろん無関係。

 商談先のインド料理屋で、やけに関西弁の上手いインド人っぽい店主(デニス・植野行雄)に軽快なネタ話を披露されながらも、店内に染み付いたスパイスの匂いで食欲を刺激されてしまい、相当に上の空な五郎。

 そんなことおかまいなしに「見た目ガイジンなのに関西人丸出し」という、デニス植野のために当て書きされたようなインド人っぽい店主は、おしゃべりエンジン全開。

「僕ねお父さんはインド人やけど、生まれも育ちも大阪の鶴橋ですわ。どっちかといったらね、キムチと焼肉がソウルフードですわ」

 なかなかに興味深い内容だが、今の五郎の琴線には一切響かず。もしかしたら苦手なタイプなのかもしれない。

「突発性カレー欲」が収まらず、ついには「ここでカレーを食わせてくれ」と店主に懇願するが、定休日のため食材が一切ないと言われ撃沈。

 五郎は、値引きしてくれとすがる店主を振り切り、食事処を探しに店外へ飛び出すが、2階から降りたその1階が洋食屋(味のレストラン えびすや)なのを発見。店探しの時のあのBGMが、イントロクイズ並みの短さで終了し、即決で入店する。

 

■サービスに流されず、お得なセットになびかない姿勢

 店に入るなり、客の食べているオムライスとハンバーグを横目でマーク、そのクオリティを確認。さすが手馴れている。

 表紙が剥げかけた年季の入った革張りのメニューなど、古き良き洋食店といった感じだが、個人的には女将さんらしき女性を演じるのが藤田弓子なだけで、もう美味そう。

 店内に漂う「特製ニンニクスープ」の匂いに刺激され、1品目はすぐ決定。今日の五郎はやたら嗅覚が鋭い。

 しかし周りのテーブルの料理がみな美味そうで、なかなかもう1品が決まらない。

「惑わされるな、胃袋の声を聞け」

「フィッシュorミート」×3

 碇シンジのようなテンションで悩みに悩んだ五郎が注文したのは、フィッシュ=「生鮭のバター焼き」。

 ニンニクスープと合わせるならと藤田弓子女将にセットメニューを推奨されるも、「カニピラフも頼みたいんで単品でお願いします」と、あっさり拒否。サービスに流されないマイペースぶりがさすが。

 

■滋養強壮に効く“ガリガリ君”

 グラタン皿に入れられ、グツグツと沸き立ちながら運ばれてきた「特製ニンニクスープ」。中で生卵が今まさに半熟となりかけてる、あのズルいやつ。

 まずはニンニクの大きな欠片をサルベージしながら、胃袋に風味が広がるのを楽しむ。

 続いて女将に言われた通り、卵を溶いて粗く混ぜ合わせる。

「最強の滋養強壮スープ」とのことで、疲れてる時にこれだけ飲みに行きたい。

「こいつは脇役じゃない。メインを張れる逸品だ」と五郎のお墨付きのスープだが、実際この店一番の名物らしい。

 そして何やら思いついた五郎はガーリックトーストを追加注文。

 それをドブンとスープに浸し、「ガーリックにガーリックで『ガリガリ君』だ」と悪い顔で微笑む。思いついてもやらなそうなことを即行動に移すのがすごい。そして、味の染み込んだパンを貪りながら言った「まるでニンニクの高野豆腐」は秀逸な表現。ここのガーリックトーストはフランスパンでなくロールパンなのが珍しく、万人受けしそうだ。

 厨房では白髪のマスターがピラフの入った鍋をリズミカルに振る。一朝一夕にはできない年季の入った腰使い。「調理人の手際が見事すぎる場合、役者でなく本人」というのは『孤独~』あるあるだが、今回もそうだった。

■タルタリスト・五郎復活!

 そのカニピラフと生鮭のバター焼きが同時に到着。

 どろりとタルタルソースがかかったバター焼きを見て「タルタリストにはサプライズプレゼント」と喜ぶ五郎。

 今期第8話(中野区・チキン南蛮)で出た「タルタリスト」の名乗りが、またしても聞けるとは。バターにタルタル、さらにレモン汁を絞ってと、そんなのもう絶対美味に決まってる。

「これはお出かけ、よそ行きの美味しさだ。いつも定食屋でテレビ見ながら食べるシャケとは別物」と五郎は言っていたが、その定食屋のシャケだって、絶対美味しそうに食べてるはずなのに。

 付け合わせのニンジンも食べつつ「洋食の付け合わせは、とっても大事。これらの味がいい店はきっと長続きする」と、勝手に太鼓判を押す五郎。確かに、お通しや定食のサラダや漬物が手抜きだと、メインがどんなに美味くても満足度が一気に下がってしまう。そもそも五郎はこの甘いニンジンが「隠れた大好物」とのこと。初耳だ。

 そして、カニピラフ。一口食って「これは大好きな味です」と思わず敬語になってしまうほどの美味さ。

 マッシュルームやピーマン、もちろん蒲鉾ではない本物らしきカニの身も見え隠れし、やや茶色がかった味の濃そうな色味。

「ちょい焼き飯寄りのピラフ。なんで知ってるんだ? 俺がこうゆうのに弱いの」

 完全に浮かれている五郎。

「カニとシャケの豪華共演による洋食シーフード祭り」も、いよいよクライマックス。

「こういうのはどうだ?」と、ガーリックトーストの上にタルタルをたっぷり乗せたシャケの乗っけてかぶりつく。この日、一番食欲を刺激されたシーン。

「おほほーー、いい、いい!」「誰かに教えたい」

 残り汁をご飯に絡めたりするアレンジ食いを五郎はよく披露するが、今回は白米を頼んでいないのでガーリックトーストがその役割を担っていた。もはや途中から「ガリトー」と、まるで「ブリトー」のごとく呼んでいた。

 最後にガリトー in ニンニクスープ・アゲイン。「気取らないよそ行き味」のラストを“ガリガリ君”で締めくくった。

 

■最終飯のメニューは?

 お会計かと思いきや、女将がセットのデザートとコーヒーをつけるか聞いてくる。これが有料なのかサービスなのか解釈がわかれるところだが、なんにせよ食べっぷりがいいから勧めたくなった気持ちはよくわかる。

 女将の手作りプリンとアイスコーヒーで完全にフィニッシュ。

 店を出るなり仕事の電話。五郎は明日も仕事が詰まってるようで「疲れたら美味い飯に助けてもらおう」と、ニヤリと店を振り返り、帰路につく。まるで今回が最終回っぽくも見えたが、あと1回のモチベーションがグーンと上がるいい演出。

 原作者の久住昌之が同店を訪れる「ふらっとQUSUMI」のコーナーでは、「生ハムのサラダ仕立て」や「カキとキノコのオーブン焼き」のほか、「スペイン風スパイシーおじや」が気になった。「特製ニンニクスープ」のような熱々に加熱された鍋に、香辛料の効いてそうなスープとご飯と生卵が入り煮立っている。

 さらに「知ってる人にたまに出す」という「ナスとピーマンの味噌炒め」「ホウレン草のゴマ和え」をサービスで。他にも「切り干し大根」や「ヒジキ煮たやつ」が出たりするらしく、和のお惣菜丸出しで、このフランクさがいい。

 ちなみにこの「えびすや」は何店もあり、ここは幸町店とのこと。JRの千葉駅からでも千葉みなと駅からでもがんばれば歩けるくらいの距離なので、行ける方は是非。

 さて、いよいよ今晩最終飯。東京の八丁堀でニラ玉ライスとエビチリを食らうらしい。予告動画では「こういう店こそが本当の名店だと思う」と、しみじみ語る五郎の姿が。最後も見ながらみんなでお腹を減らしましょう。
(文=柿田太郎)

韓国編後半で意外なゲスト登場!『孤独のグルメ』肉の食べごろはいつなのか問題

『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)は、引き続き韓国編。前回はセルフビビンパを楽しんだ井之頭五郎(松重豊)だったが、今回は待ってましたの焼肉。Season1から各シリーズごとに必ず1回は登場する(ホルモン焼き含む)ド定番人気メニューだが、本場はもちろん初。

 今回は韓国らしく、でかい肉をハサミで切り分けられつつも「おあずけ」に苦しむ五郎の姿が。第10話「韓国ソウル特別市の骨付き豚カルビとおかずの群れ」。

(前回までのレビューはこちらから)

■朝から「立ち食いそば」感覚でトッポギ

 韓国滞在2日目の朝。朝からやってるトッポギ屋台を発見。

 仕事前のサラリーマンやOLがさっと食べてさっと出て行く様子は、五郎の言う通り「日本の立ち食いそばみたいな感覚」のよう。

 トック(うるち米でできた長細い餅)をコチュジャン(唐辛子味噌)や砂糖で甘辛に炒めたものを熱々でいただく。

 どちらかというと甘めな印象だが、五郎が食べたものはなかなか辛いようで、魚のすり身らしき具も入っている。

 続いて揚げたてのティギム(天ぷら)も追加。イカやさつまいもに混じってキムマリ(春雨海苔巻き)の天ぷらもあり、五郎も気に入った様子。

 水を飲もうと迷っていると、隣で食べていた若者が「おでんのスープと一緒に召し上がるといいですよ」と紙コップにオデンの汁だけよそって手渡してくれた。原作のハードボイルドと違い、ドラマの五郎はかまってあげたくなる。

 あちらのおでんの具は波打つように串に刺された練り物がメインで、スープを紙コップで飲むのも定番のよう。

 どうやら練り物自体を「オデン」と呼ぶようで、前回のビビンパの回も、甘辛いタレにまみれた小粒の「オデン」がおかずの一品に混ざっていた。

 ちなみに、ベースとなる料理は以前からあったとの説があるが、「おでん」という名前は戦時中の日本統治下で広まったものらしい。釜山では以前は「カントウ」と言い、これも関西の「関東炊き」からきているという。

 

■襲い来る「おかずの群れ」

 無事、午前中で仕事も終え、ソウルで昼飯の店探し。

「朝、屋台飯だったからガッツリしたものを(腹に)入れたい」と五郎は力んでいたが、朝からトッポギと天ぷらは、なかなかに「がっつり」だと思う。

 そんな筆者の気持ちなど伝わるわけもなく、「がっつり系 ガツンと響く ソウル飯」と街角で一句詠みつつ店を探す俳人・五郎。

 そして見つけた庶民的な焼肉店。さっそく入店し、隣席で食べている肉を指差したりジェスチャーを交え「デジカルビ」と「白米」を無事注文。独自の愛想を振りまいたからか「面白い日本人だな」と客に笑われるが、気にしない。

 注文後すぐ、前回の全州の店と同じく、オーダーしてないキムチやナムルなどのおかず(パンチャン)が何皿も運ばれてくる。五郎も驚いていたが、これは韓国では普通のことで、さらに基本おかわりもできて無料(というかメインの料理に「込み」)。今回も11皿がずらりと並ぶ、まさに「群れ」。『修羅の群れ』の主演は松方弘樹だが、「おかずの群れ」の主演は松重豊。

 さっそくテンジャンチゲ(味噌チゲ)から「群れ」退治。

「ご飯と汁があれば、あとの全てはおかずとして向こうに回し、定食が完成する」

 いつものように哲学しながら汁をすする。「毎日飲みたい」ほどちょうどいいらしいチョイ辛味噌汁。

 続いてニラ・ネギ・白菜の三種キムチ。一皿ずつしっかり量がある。

 白菜キムチは(前回もそうだが)一枚のまま切っておらず、こういう本場感がうれしい。

「キムチって漬物ではなくて一つの『道』、『教え』のような気がする」と悟りを開き、わしわしと音を立て「教え」を味わう賢者・五郎。

 続くケジャン(ワタリガニの辛い漬物)もうまそうだったが、マヨネーズで和えたリンゴのサラダに妙に惹かれた。給食で食べた淡いマヨネーズ味の和え物に野菜のほかリンゴやパイナップルが入っていた記憶があるが、これと関係があるのだろうか。

 昔は韓国で「サラダ」というと、とにかくマヨネーズで和えたものだったらしく、定番の味らしい。

 

■原作でも食べていたチャプチェ

 そして、主役のデジカルビが登場。骨が付いたままの豚のあばら肉をでかいまま1枚、網全面に広げ焼けるのを待つ。デジモンの「デジ」はデジタルだが、デジカルビの「デジ」は豚だ。

 焼いてる間に、「群れ」のチャプチェ(春雨炒め)やワラビナムルでつなぐのだが、目の前に鎮座する肉塊が気になって仕方ない。

 ナムルなどを楽しみつつも「それにしてもこの肉の焼ける匂い、拷問だよ。理性がグラグラしてきた」と、これから食べる肉の匂いに苦しむ五郎。

「このお預け感はハンパない、ああ、犬のように店の中を駆けずり回りたい」

「いや、俺は犬ではない、人として静かに待とう……」

 もはや満月の夜の人狼。チャプチェを食べる時も「小皿で肉食欲を散らすんだ」と自分の中の「野性」を必死に抑え込んでいた。チャプチェに失礼だぞ、五郎。

 ちなみに今回チャプチェに対し「スキヤキの残り物みたいな哀愁があって結構好きなんだ」とも言っていたが、原作漫画では、川崎を訪れた際に初めてチャプチェを食べており、その時は「なんだか翌日あっためなおしたスキヤキのようだ」と発言している。

 

■食べごろ感のズレが気になる

 ようやく店員が肉をハサミで切り分けたので、「(食べて)オーケー?」と聞くも、「もう少し」とお預けをくらう。

「まだなの?」「あーもう自分で焼きたい」爆発寸前の五郎。

 仕方なく、焼ける間に今度は海苔の和え物を食べて気を紛らわす五郎だが、美味しく味わいながらも正直「肉が気になって味がようわからん」と、もうノイローゼ状態。

 ちなみに筆者も、店員が焼いてくれるタイプのサムギョプサルの有名チェーンに行った時、よくこの感情を抱く。

 個人的な食べごろ時に箸を伸ばすと、もう少し焼いてと静止されてしまうのだ。そうしているうちにジューシー感はピークを越え、水分が減った感じ(ウエルダン)になって初めて「許可」が降りる。あちらではカリカリ感が大切なようで、余分な油をしっかり落とす意味合いもあると思われるが、「食べごろ」感のズレを感じる。

 

■豚肉だけでなく牛肉も

 そして、ようやく店員から念願の肉解禁サインが。

「うまいなあ……」

「おあずけ」を経た胃袋に染み渡る肉の美味さに溺れつつも、付けダレをひと舐めし「ん? ちょっと酸っぱいんだ」と分析する冷静さも持ち合わせているのはさすが。

 あとはただ力一杯味わうだけ。ご飯とともにグイグイ流し込む。

「力強い肉だ。待ちに待った俺をドーンと受け止める、ガッツリ系の最高峰」

「最高! 口がはしゃぎ、喉が喜び、胃袋が踊り狂っている」

「幸せだ。幸せ者とは、まさに今の俺のことなんだろう」

 一番うまいとされる骨の周りの肉も幸せそうに噛み剥がす。

「俺は今、ソウルの黒豹だ」

 勇ましい発言をした直後に勢い余って肉を落としてしまい「俺は黒豹失格だ」と即野獣引退。とにかく楽しそう。

 これで終わりかと思いきや、となりの席に運ばれてきたチャドルバギ(牛カルビの薄切り)を見て、またしても「同じやつください」戦法で追加注文。同時に半ライスも。

 ここでもやしナムルの小皿を完食するも、すぐさまおかわりが勝手に出てくる。五郎いわく「ナムルのわんこそば」。幸せなシステム。

 チャドルバギはデジカルビと違って軽く焼くだけでいいという。厚みの違いもあるが、やはり牛だからだろうか。

 脂身多めのスライス肉を次々と成敗。ごま油と塩を付けて「日本の焼肉屋の今は亡きレバ刺しの食べ方」と故人を偲ぶ。

 次は肉に味噌と白米を巻いて。牛肉と味噌と米。合わないわけがない。

「味噌、酸っぱいタレ、ごま塩。俺の胃袋に肉を放り込ませ続ける最強のトライアングル」

 原作の川崎焼肉回の名文句「うおォン、俺は人間火力発電所だ」を思い起こす食べっぷり。完食するとおかわりが来ちゃうからと「おかずの群れ」は残しつつ、完食。

 終わり際、肉でなく焼き魚定食を食べる酒好きの常連客が登場したのだが、クレジットを見たら『デュエリスト』(2005)や『M』(07)の監督イ・ミョンセ。韓国映画ファンにはうれしいサプライズ。

 そして前回はなかった原作者・久住昌之が同店を訪ねるコーナー「ふらっとQUESUMI」で、ついに久住がソウルへ。

 久住は五郎の頼んでいないサムギョプサルを食べていたが、こちらはあまりカリカリに焼いていなかった。焼く人次第で違うのだろうか?

 得意の、お酒を違うものに例えるくだりでは、マッコリを「牛乳」「コリアンミルク」と表現。このくだりは、ウザがられてもしつこく毎回やってほしい。

 今頃日本人観光客で賑わっているのだろうその店名は「チョンチョムスップルカルビ」。行ける方が羨ましい。

 次回は、千葉市の特製ニンニクスープと生鮭のバター焼き。一瞬何のお店かわからなかったが、いわゆる洋食店。Season7も残りわずか!
(文=柿田太郎)

韓国初上陸!『孤独のグルメ』雷波少年に出てた“あの人”がゲスト同行するも、やはり五郎は独り飯……

「来ちゃいました、初韓国」

 旅ロケっぽい独り言で始まった今回の『孤独のグルメ』(テレビ東京系)は、韓国編。ドラマでは過去に一度、台湾を訪れているが、それ以来の海外。原作では、かつていたパリを再訪し、元カノ(小雪)を思い出しながらアルジェリア料理を食す回があるが、それともまた違うドラマならではのコミカルな雰囲気。地元ゲスト登場も、どこにいようと井之頭五郎(松重豊)はマイペースに一人で飯を食う。第9話「韓国チョンジュ市の納豆チゲとセルフビビンパ」。

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■ゲストは『ハングル講座』に出演中の彼と『雷波少年』にも出てた彼女

 

 空港から登場かと思いきや、いきなりタクシーでソウルの住宅街に乗り付ける五郎。

「アイウォントゥーゴーヒヤー」

 片言の英語で道行くおばさまに道を尋ねるも、韓国語で答えられて、いきなり撃沈。貿易商という仕事柄、もう少し海外慣れしててもよさそうだが、この頼りない柔らかさがいい。

 なんとか商談先にたどり着くも、その社長(ソン・シギョン)に、すぐ全州に行き、ヨーロッパ向けのアンティーク商品をチョイスしてほしいと頼まれる。

 公式Twitterによると、ソン・シギョンは番組冒頭のナレーションを暗記していたり、過去に登場した店を訪れたりしている番組の大ファン。そのためか五郎と対面するシーンから喜びが溢れてるように見える。ちなみに現在、Eテレでハングル講座にも出演中。

 結局、彼の部下のパク・スヨン(パク・チョンア)に通訳などアシストしてもらいながら、全州市で伝統工芸品(傘や古家具など)を選ぶ五郎。しかし、飯屋の看板を見るなり仕事中なのに腹減りタイム。パクが事務所で資料をまとめている隙に、すぐさま一人で店探し。普通こういう時は同行してる人と飯を食いそうなものだが、ミスター孤食・五郎はおかまいなし。

 座敷タイプの「俺好み」の店を見つけると「言葉わからなくて追い出されたらそれまでだ」と、前向きに覚悟を決め入店。

 ちなみに、パク・チョンアは元ジュエリーという女性グループで、14年ほど前に日本デビューもしており、それ以前にも『雷波少年』(日本テレビ系)でのシンガポールからソウルまで歌を歌いながら旅する企画に参加していたので、そっちの記憶で覚えている方も多いかもしれない。

■とめどなく運ばれる膨大な皿数

 しかし、かつての台湾編では中国語が読めないなりに「海鮮」だとか「排骨」だとか漢字で手がかりをつかめたが、ここでは値段の数字表記以外、メニューのハングルが一切読めない。

 仕方ないので、一番安いのを頼み、出てきたものを見て、その後を考えるという作戦を決行。

 なんとか6,000ウォンの「チョングッチャン」を注文したはいいが「一体俺は何を頼んだんだ」と自問する五郎がおかしい。

 すぐさま、肉や野菜の皿が並べられ、「へーこんな感じかあ」と、ひとまず安心しかけるも、店のおばさんはとめどなく皿を運び続ける。

 すでに7皿。薬味や白米の茶碗入れたら10皿だ。そこに、ぐつぐつ煮えたぎる石鍋まで到着。約600円でフルコースのような品揃え。まさに「おかずのテーマパーク」。品数におののきながらも、ひとまず白米があることに安堵する五郎。

「もう大丈夫。鬼に金棒、俺に白飯だ」

 まずはチェユックポックム(豚肉の唐辛子炒め)で白米を食べ、「美味い!」と喜ぶやいなや、すかさず「違う違う」とおばさんがカットイン。いきなり出鼻をくじかれる。ステンレス製のボウルにおかずを少しずつ入れて、ハサミで切り刻んで白飯と混ぜて食えという。ここでようやく、これがセルフビピンパだと気づいた五郎。

 ナムルを各種(モヤシ、大根、白山菊)に、キムチ、目玉焼き、豚肉唐辛子炒めを入れて、さらに小粒なさつま揚げを甘辛く似たようなものも入れかけると、それは入れずに食べろと、またカットイン。ちょっとしたトラップだ。

 とりあえず、さつま揚げ以外全てハサミで切り刻み、白米と、コチュジャンを入れて、さらにぐつぐつの石鍋のスープの底に沈んでいる納豆も入れろと言われ、驚きながらも従う五郎。

 この石鍋の料理が「チャングッチョン」(納豆チゲ)で、実はメインはこれだ。

 豆腐や野菜も入って煮立つ汁をひとすすり、日本の納豆汁とはまた違う旨さらしい。

 ようやく完成したビピンパに、海苔をたっぷりかけ、かぶりつく。

「これだけいろんなものを適当に混ぜてこんなにおいしくまとまるって、どうなってるんだ?」と驚きながら、スプーンで次々と胃へ投入。

「まさにビビンパマジック」

 五郎の食べっぷりを見て、今度ビピンパを食べる機会があったら是非納豆も加えてみようと強く思った。

 そして、ビピンパには混ぜるなと言われたさつま揚げ。これはオデンという料理で、甘辛味。別にこれも混ぜてもよさそうに思ってしまうが、五郎も「美味いけど、これはビピンパに入れるもんじゃない、危ないとこだった」と言っているので、馴染まない味なのかも知れない。

 さらにサンチュに味噌を塗り、ビピンパを乗せて、巻き巻きしてかぶり付く。さらに大きな白菜キムチの葉でも巻き巻きアレンジ。絶妙な酸っぱさがうまいらしい。こういう作業をしている時の五郎の顔は、いつ見ても楽しそう。

■ようやく食べ終わったと思ったら、さらにもう一品……

 ペロリと1セット目を平らげると、おもむろに上着を脱ぎ、落語家が噺に入るかのごとく、新ビピンパ製造に取り掛かる井之頭亭。

 先ほどは入れなかった「新たな武器」ごま油も投入。

「全てを放り込んで、切るべし切るべし切るべし」

 さらに青唐辛子も入れて、

「肩の力を抜き、腕全体の力がしなやかに器に伝わるように混ぜるべし、混ぜるべし」

 前回の『あしたのジョー』パロディがよほど気に入っているのか、今週も引きずりまくる。

 気になるお味は「誰がなんと言おうと絶対に美味い」というくらい一杯目を凌駕する出来。

「初めて来た全州の街で最高の飯に出会えたことに、心からカムサハムニダ」

「もしも、またこの店を訪れることがあれば、この納豆汁ビビンパに再挑戦しよう。そしてさらなる高みを目指そう。そして見るんだ、誰も見たことのない納豆汁ビビンパの頂点を……! ごちそうさ……」

 いかにも締めっぽい五郎渾身の独り言の終わり間際、当たり前のように運ばれてくる一品。

「え? まだなんかあるの??」

 食いしん坊な五郎が驚くほど、終わらない宴。

 運ばれてきたのは「ヌルンジ」という、おこげを煮たシンプルなおかゆスープ。韓国では定番の締めの一品。

「それにしても600円でこの品数ってどうなってるんだ? いいのか? こっちが心配になるほどのサービスだ」と、改めて驚きを噛みしめる五郎。

 基本、アジアの国は、残すくらい食べさせるのが美徳のような考え方があるので食事の量は多めなのだが、韓国もご多分にもれず、多い。

 教えてもらったばかりの韓国語で「マシーソッソヨー」(美味しかったです)と店の外から声をかけるほど充実した韓国初日。次回は本場で焼肉!「骨付き豚カルビとおかずの群れ」。
(文=柿田太郎)

中野ブロードウェイで五郎が迷子『孤独のグルメ』敵地=居酒屋でも米さえあればこっちのもんだ!

 おじさんの一人飯の心情を描く孤高のドラマ『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)。今回は久しぶりの居酒屋飯。思えばSeason1の第1回放送も、門前仲町の居酒屋からだった。酒を飲まない五郎(松重豊)にかかれば居酒屋も立派な食堂に。「第八話 東京都中野区百軒横丁のチキン南蛮と地鶏モモ串」。

(前回までのレビューはこちらから)

■いきなり中野ブロードウェイ入り口からスタート

 知らない方のために説明させてもらうと、中野ブロードウェイとは1966年にできたショッピングセンターで、当初は商店街の延長のような普通の店舗(服飾や飲食など)が多かったが、1990年に「まんだらけ」が出店以降、サブカル系の店舗が続々と集まり、今や「サブカルの殿堂」とまで呼ばれるようになった都内随一の空間である。

 それでいて、今でも創業当時の飲食店やおばさま向けのブティックも残っていたり、一時はビットコインのATMまで置いてあったりと、イオンなどでは絶対あり得ない雑多なジャンルの店舗が300以上ひしめきあっている。

 そんなブロードウェイに初めて足を踏み入れた五郎。2階の喫茶店で商談の予定が、3階直通のエスカレーターに乗ってしまい2階を通過、軽くパニックに。このトラップ、ブロードウェイあるあるだ。

 しかも待ち合わせ場所が見つからず先方に電話するも、当の社長(東京03・角田晃広)は時間を勘違いして、近所で中華を食べており拍子抜け。ちなみにこの中華屋はブロードウェイ入り口に対し右の方向にある珉珉。

 仕方なく古銭やコスプレ、鉄道模型の店と、ブロードウェイ内部を散策、満喫する五郎。

 なんだかんだで昔ながらの喫茶店「喫茶 絵夢」(2階)にて商談開始。欲を言えば2階の通路だけ変に天井が低いので、そこを歩く長身の五郎が見たかった。が、ここでまさかの大口取引が決定!

「お祝いに相応しい飯を食おう」とブロードウェイを出た南東側に広がる飲食店エリア=「飲食店のジャングル」で良さげな店を見極めようと気合の入る「密林の狩人」五郎。

 珍しく夕暮れ時の繁華街をうろつくため、五郎の「孤独」ぶりが浮き立つ。

 そう言えば五郎が友人らと食事をしているシーンは、基本見たことがない。そういうコンセプトだから当たり前なのかもしれないが、夜に差し掛かる時間だし、誰かを誘おうという考えに至らないところが五郎の存在を際立たせる。

「みんな楽しそうだ、しかし下戸の俺の居場所はこの辺りにはないんだろうか」

 当初、連載の限られたページ数(8ページ)の中で収めるために五郎は下戸になったらしいが、これは結果オーライで、飲める主人公だったら今の飄々とした雰囲気は出なかったかもしれない。今回も居酒屋を「敵地」と表現するくだりがあり、この立ち位置は面白い。

■ボクシングの例えだらけ

 ようやく見つけた店は「やきとり 泪橋」。宮崎料理が得意な店らしく、「チキン南蛮」の文字が五郎に突き刺さり、入店。

「ジョーよ泪橋を逆に渡れ。明日のために食うべし食うべし」

 と、店名から『あしたのジョー』モードの五郎。(ジョーが暮らすドヤ街の入り口に掛かる橋が泪橋で、いつかドヤ暮らしから抜け出すことを「逆に渡る」と作中で表現)。店員役が千葉哲也で、ジョーの作者(ちばてつや)と同姓同名なのも遊んでいる。このためか、この日はしつこいくらいにボクシングにちなんだ発言が連発される。

・「試合開始のゴング前から胃袋が飛び出しそうだ」←注文前に炭で焼かれてる焼き鳥を見て

・「試合開始前から会場は熱気に包まれている」←注文繰り返す店員の威勢が良いだけで

・「先制の左ジャブだ」←お通しが美味くて

・「ガードが追いつかない」←チキン南蛮が美味しくて

・「でももうちょっと戦いたい」←あと少し何か食べたい

・「最終ラウンド」←ご飯をお代わりして

・「今夜このリングに立てたことを俺は誇りに思う」←食べ終わって

 ……などなど。

■「ご飯」さえあればこっちのもの

 ほぼカウンターのみの小さな店。飲み屋なのでまずはお通しから。

・アボカドとチーズの正油和え

・鶏皮の酢の物

「飲まないからお通しには敏感なんだ」という五郎の下戸審美眼を持ってしても「おざなりでない」満足の逸品。

 地鶏の皮の、歯ごたえの良さもさることながら、やや甘めであるところを「烏龍好き、ウーロンジャーには悪くない」と評価。第2話のバイキングの時は「バイキンガー」と名乗っていたし、今日はのちに「タルタリスト」とも宣言するし、一体いくつの顔を持っているのか?

 そしてオーダーしたのは以下の「五郎’s 居酒屋定食セレクション」

・チキン南蛮
・鯖串
・豚ばらの味噌串
・鶏がらスープ
・ささ身ときゅうりのごま和え
・ご飯

 ご飯が「レンチンになっちゃう」と言われるも、全く問題とせず、むしろ米をゲットできたことに安堵する五郎。「チンだってなんだっていい、ご飯さえあればこっちのもんだ」「ご飯があれば飲み屋だってパラダイス」とは、居酒屋で飯を食う下戸の本音だ。あるとないとじゃ大違い。しかも麦飯で、うれしい誤算。

「ささ身ときゅうりのごま和え」をつまみ「定食屋では会えない味だ」と感慨にふける。今回、居酒屋を「敵地」と表現するくだりがあったが、そこに、濃厚そうなタルタルソース滴る「チキン南蛮」が到着。一心不乱に掻きこむ。

 揚げたてだが、甘酢を絡ませてあるのだろう、衣はしっとり。タルタルも一味違うらしく、調べてみると宮崎出身者おすすめの店とのことで、本場の味だ。慣れない美味さに「舌と頭が戸惑いながら喜んでいる」という五郎。ちなみにチキン南蛮は『孤独~』初登場。

 興奮しすぎた五郎は一旦我に返り、スープを挟む。「美味い焼き鳥屋の鶏スープが不味いわけがない」と、ごもっともな意見。中から鶏肉のかけらをサルベージし「お宝発見」と喜ぶ。

 鯖串は文字通り、串に刺したサバを焼いたもの。「サバってやつは、いつだって俺を喜ばせてくれる、いいやつだ」とのことで「これからもずっと仲良くしていこう」と唐突な決意表明。

 豚ばら味噌串は、当然米に合う味らしく、すぐさま五郎はご飯に乗っけてミニ丼を作成。きっとやるだろうなあ……と思っていると、案の定やってくれるからうれしい。

■「地鶏の炭火焼」の魔力

 残りのチキン南蛮を改めて美味しくかきこみ、それでもあと少し何か食べたい気分の五郎の目の前に現れたのが、他の客がオーダーした「地鶏のモモ串」。

 狭い店内で、後ろに座る客に手渡すために受け取ったのに思わず凝視、そして注文。

 宮崎名物の「地鶏の炭火焼」を串に刺して出しているのだと店主。

「地鶏の炭火焼」は名前もありふれてるし、結局焼いただけでしょ? みたいに思われがちだが筆者は鶏料理で一番くらいに好きなメニューだ。炭火の炎が立ち上る金網の上で、歯ごたえのある地鶏のぶつ切りを転がしながら焼いたもので、特段派手な部分はないが、炭の香りとシンプルな塩味で純粋に鶏の旨味を味わえる。歯ごたえあり、香ばしさあり、脂も肉汁もあり。添えられる柚子胡椒も、このために発明されたのでは? というくらい、合う。宮崎近辺ではお祭りの屋台などでも普通に見られる。

 一口食って、弾力と旨味に感激し、すぐさま麦飯に乗っけてまたかきこむ。ああ、美味そう。

「大口が決まったお祝いに、まさに相応しい宴」と五郎は大満足だったが、これが寿司や焼肉とならないところが「らしい」。かと言って正直普段のチョイスと何が違うのかはわからなかったが、原作での名言を使って言わせてもらえれば「まあ、感じ感じ」というとこだろう。

 店を出てエンディングが流れ終了……かと思いきや、エンドロール終盤で五郎のガラケーが鳴る。短いやり取りの後、「来週韓国かよ、いきなりだなあ」とワクワクする煽りで終了。映画みたいだ。

 すでにネットニュース等で知らされていたので驚かなかったが、「予告」もなくいきなり韓国行きを突きつけてくれた方がテンション上がるのになあと、少しだけ思いました。

 原作者・久住昌之が同店を訪れる「ふらっとQUSUMI」のコーナーでは、ちろり(酒を燗する金属製の容器)に入って出てくる焼酎を飲みつつ、「地鶏たたき」や、「アボカド炭火焼」「冷汁」と宮崎づくし。

 今回謎だったのは、やくみつるが特に見せ場もなく横で串を食ってたこと。店員役の千葉が「ちばてつや」とかかっていただけに、いろいろ「意味」を考えてしまったのだが、亀田家と揉めたことくらいしかボクシングとの共通点もないし、出身も宮崎というわけでもないし、おそらく意味はないのだが、気になるキャスティングだ。

 さて、来週から2週に渡りいよいよ韓国。何か電話でお願いをされていたようだが、果たしてその内容とは?
(文=柿田太郎)

『孤独のグルメ』来月には韓国編も! 実は『ルパンレンジャー』も大ファンだった?

 6月の1日深夜・8日深夜には韓国編の放送も決定した絶好調『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)。ソン・シギョンやパク・チョンアらの出演も話題だが、韓国でのこの作品の人気はかなりなものらしく、ただいま日本でツアー中の韓流アイドルグループ・MONSTA Xも、トーク中に五郎のモノマネを披露しているほど。そんな世界規模な人気を尻目に、今回も下町でひっそり一人飯を食ういつも通りの五郎。「第七話 墨田区東向島の納豆のピザと辛いパスタ」。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■『ルパンレンジャー』でもパロディに

 墨田区東向島。2駅隣の押上(元・スカイツリー付近)に比べ、昔の雰囲気が残っているのを感じながら井ノ頭五郎(松重豊)が行く。今回も雨。この番組はフィクションであるが、実在する店や街を使ったノンフィクションな部分もあるので、天候も生々しく感じる。

 訪ねた顧客から、あるブログを見せられ「探してほしい」と依頼を受ける。そこに写る女性を見て人探しの依頼かと困惑する個人貿易商・五郎。しかし探してほしいと言われたのは、その後ろに写る卓上型のアンティーク・チェスト(家具)。

 ブログのタイトル(=「ショッピングINシカゴ」)から、シカゴのものかと目星をつけ、業者仲間に一斉送信して情報収集。送信アドレスの中に滝山(前回のレビュー参照)のアドレス(takiyama-21@kgmail.com)があるのが、芸が細かい。

 ひとまず仕事終えての腹減りタイム。「思わぬ掘り出し店(みせ)」を探そうと意気込む五郎。

 ちなみにこの、路上でポツンとたたずむ五郎がだんだんと引きの映像になっていく、おなじみの「腹が減った」シーン、前回の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(テレビ朝日系)という戦隊アクションもののドラマ中でパロディにされており、以前もレストランのシーンで『孤独』のBGMを使っていたし、どうやら『孤独』ファンが『ルパンレンジャー』制作スタッフ内にもいるようだ。

■とっつきにくそうな店主との攻防

 話を戻します。五郎は住宅地の中にピザの看板を発見、中にしっかり釜があることを確認すると、もう我慢できないテンションに。

「下町とピザ、なんだか急に相性がいい気がしてきた」と、興奮して入店。

「Cattolica(カトリカ)」という店名は、イタリア東部の街からとったものらしい。こぢんまりした店だけに大柄な五郎が入店すると、ちょっとしたガリバー旅行記のよう。かなり大げさに言うとだが。

 メニューは飾り気ない紙にざっくりと手書きで、ネーミングも実にシンプル。

ニンニクのPizza
タマゴのPizza
アンチョビのPizza

 など、やはり飾り気がなくていい。

 チョコレートのPizzaやココナッツのPizzaなど、いわゆる甘めのデザートピザにも興味を示しつつも、五郎がもっとも惹かれたのは「納豆のPizza」。しかし「初めての店で、いきなり変わり種を頼むのもなんだかなあ……」と外食あるあるっぽく尻込み。

 ややとっつきにくそうな店主にハーフ&ハーフにできるか恐る恐る聞いてみると「できるものとでないものがあります」との返事。『納豆』と『生ハム』はできるかと問うと、釜を見たまま店主は「できません」とにべもない。

 しかし「納豆のピザは卵を使うんで生ハムと一緒にできない(焼けない)んですよ」と納得できる説明をしてくれる。焼く時間が関係してくるのだろう。店主も決して悪い人ではなさそう。だが、まだ五郎と噛み合っていない。

 和風のPizza(おかかや切りイカ)も気になった五郎は、それと『納豆』のハーフ&ハーフは? と問うが、即座に「できません」攻撃。

 店主からピシャリと言われるたびに「うっぷ」「うっぷっぷ」とリアクションする、かわいい五郎。結局、『納豆』生かしでできるものとして教えてもらった『ハムとタマゴ』でハーフ&ハーフを注文。

「しかし(ハーフ&ハーフできるかと)言ってみるもんだあ」と、交渉を成し遂げた自分に満足げな五郎が、女性客にはサービス気味なトークを振る舞う店主を、どこか納得いかなそうに見つめている。いいシーン。

 そんなどこか噛み合わない店主が「ハムとタマゴ&納豆のピザ」を持ってくる。まずは『納豆』パートを頬張る。

 溶けたチーズの中に納豆が見え隠れしつつ、中に半熟っぽい卵。そこに大きめにカットされた焼き海苔や白ごまのトッピングが散らばる。「白飯をピザ生地に変えたら驚くべき納豆世界が現れた」と五郎も感激。

 朝食のような組み合わせは相性いいだろうし、「納豆と卵はテッパンだ」し、納豆とチーズという発酵食品同士も合うだろう。合うものだらけの贅沢。こうして考えるとピザというものは実に「合うもの」を探す料理だ。まあ料理とはそもそもそういうものなのだが、ピザは特にその傾向が強い気がする。そんな中、納豆という癖の強いものがビンゴだったのだからさぞ五郎もうれしかっただろう。

「俺は今、納豆大好きな日本人で良かったと、腹の底から叫びたい」

「納豆とチーズ、日本とイタリアが糸を引きあって美味しくなっている」

「平和と友好の納豆」

 五郎、興奮。

■まさかの2店ハシゴ?

 一方、『ハムタマ』パート。溶けたタマゴをつけてかぶりつく。五郎はピザとタマゴの相性の良さがすっかり気に入った様子。

「これはbuono~! だ」「(主人は)釜使いの達人に違いない」と苦手そうだった主人を見る目も、すっかり変わっている。ドライトマトやソーセージ、ほうれん草も隠れていて、意外と具沢山で食べ応えがありそう。

 オリーブオイルをかけて味変えもしつつ大満足な五郎は、皿についたタマゴの黄身をピザ生地の欠片でこそげ取って口へ。自分の胃袋も、皿を洗う人も、双方うれしいやつ。そして当たり前のようにパスタを選びだす。

トマト味のPasta
塩味のPasta
クリーム味のPasta

 と、ことらもシンプル過ぎるネーミング。その中から五郎は「辛いPasta」をセレクト。

 見た目はトマトベースに平べったい麺(リングイネ)。「ペペロンをちょい辛にしてさらに何か足したような」感じらしい。ケッパーやオリーブのような欠片も見える。

「食べるほどに腹が減る、謎のパスタ」と五郎は言っていたが、もしそうなら恐ろしい食べ物だ。おそらく辛いと言いながら旨味が強いのだろう。そこにスパイスが合わさって新たな食欲を喚起する。食べていないけど、きっとそう。

「向島の路地に、こんな美味いピザ屋がひっそりとあるとは、おそれ入谷の鬼子母人」

「下町イタリアンにグラッチェ」

 と車寅次郎のようになっちゃう五郎。

 会計時、デリバリー用のピザに興味を示していると「チョコレートのピザ食べてきますか?」と店主が冗談を。「いや、さすがにこの量は(笑)楽しみは次回にとっておきます」と五郎も応じ、打ち解けた雰囲気に。

 無骨な店主を演じた中原丈雄のツンデレな笑顔にほだされた人は、五郎以外にもきっといただろう。ちなみに女性客の一人は石橋貴明の娘・石橋穂乃花。二人で「映えてる」と写真を撮っていた。

 しかし、さすがなのは、このあとの五郎の行動だ。チョコレートのピザを見て舌が甘いものを欲したのだろう、すぐさま他店できびだんごを買い求め、神社の境内で一人、食しだしたのだ。さっき食えないとか言ってたのに! おそらくそれは量の話で、甘党の五郎としては、もうスイッチが入っていたのだろう。

 この「吉備子屋」のきびだんごは、串に刺さったものが5本で1パック(270円)。出来たてだとあったかく、とても柔らかいらしい。優雅なデザートタイムを過ごしていると、そこに友人の西村(ナレーションも務める植草朋樹アナ!)から電話が。

 先ほどの一斉送信した中の一人のようだが、ブログの内容から、ブログ筆者はアメリカのシカゴではなく和歌山の四箇郷(しかごう)の人ではないかと。だからブログ名に「(笑)」がついていたのだ。アメリカからチェスト探し出すのに比べたら「和歌山ならすぐ見つかるな」と楽観的に串にかぶりつく五郎。結果オーライでドラマパート終了。

 原作者・久住昌之が同店を訪ねる「ふらっとQUESMI」のコーナーでは、本物の店主に勧められた、素焼きピザ(フォカチーノ)をパン代わりにおまかせの単品メニューを食べるという通っぽいオーダーを実践。

「赤イモのマリネ」や「竹の子のマリネ」「イワシのオーブン焼き」をつまみつつ、結局白ワインに落ち着くいつも通りの酒飲み展開。

 今回は、食べ物がシンプルだった分、店主とのハラハラなやりとりあり、ちょっとした謎解きあり、野外でのデザートありと、盛りだくさんな回でした。次回は中野の百軒横丁でチキン南蛮と地鶏モモ串をいただくらしい。そしてその次は韓国。通常回での海外、楽しみです。
(文=柿田太郎)

銀ダラは実は「鱈」ではない?『孤独のグルメ』“名無しの権兵衛さん”は生で食べたら危険な海藻……

 金曜深夜のバーチャル食事ショー『孤独のグルメSeason7』(テレビ東京系)。今回は、ディスニーランドなどのあるエリアを埋め立てるまで漁師町として栄えた浦安。今もその名残が強く息づく街で、クセの強い魚料理が登場。「第六話 千葉県浦安市の真っ黒な銀だらの煮付定食」。

(前回までのレビューはこちらから)

■まるで石炭のよう

 雨の浦安。三番瀬に注ぐ細い川沿いを行く井之頭五郎(松重豊)は「都会の川でも、川は川」と、今日も街歩きしながら商談へ。

 目的地のペットホテルに着くが誰も出てこないので、ケージの中に入り犬をあやすも、悪いタイミングで店長(ふかわりょう)が戻ってきてしまい、子犬をあやすひょっとこ顔→驚きの形相と顔芸二連打。松重の顔芸は、いつだって楽しい。

 商談中から、すでにランチに向かう従業員の様子を観察していたぬかりのない五郎は終了後、すぐに飲食店探し。浦安では、『Season1』の4話で静岡おでんを食べているのだが、特に言及することはなし。五郎は過去の店を再訪しないのかが気になる(おでんを食べたカフェは今は閉店している)。

 猫実川沿いに、一見スナックっぽい外観の店を発見。「お食事所 魚や 羅甸」とあるが「らしゅん?」読めないまま入店。

 大きな短冊に書かれたメニューが壁にずらり。

「鯵の南蛮漬 お刺みを付けて 1250」
「いかの生姜焼き お刺みを付けて 1350」
「鰆(さわら)の西京焼き 1200 お刺み付けて 1350」などなど。

「お刺身付き」ではなく「お刺みを付けて」という言い回しに血の通ったものを感じる。「色っぽいじゃないか」と五郎もお気に入り。「み」が平仮名なのもいい。

 煮魚気分の五郎は「鯖の味噌煮」か「銀ダラの煮付け」の二択で悩み、「すみません『銀ダラの煮付け お刺み付けて』をお願いします」と律儀にメニュー通り注文。1,450円。「沖縄産生もずく」も追加。

 ご飯おかわり「三杯目から有料」という張り紙を見て「客のご飯おかわり率が尋常じゃなく高いと読み取れる。これは期待大」とボルテージを上げる名探偵・井の頭。

 隣の席の鯖味噌があまりに美味そうなので判断を誤ったかと後悔しかけるも、出てきた銀ダラのインパクトで全てが吹き飛ぶ。吸い込まれそうなほどに黒いのだ。

 思わず「これ銀ダラですか?」と尋ねちゃう五郎。

「ええ。見た目は黒いですけど、正真正銘、銀ダラです。ふふふ」おかみさんが意味ありげに微笑む。みな驚くのだろう。

 普通の煮付けは茶色だし、形も切り身だが、この煮付けは全て違う。異様なほど照りを伴って黒光りし、形も無骨で、黙って出されたら銀ダラどころか魚であることすら見破れない自信がある。見れば見るほど石炭の如し。

 

■「銀ダラ」は鱈とは違う魚

 しかし一口食べて五郎はすぐさま病みつきに。

「確かに銀ダラだ。だが俺の知ってる銀ダラとは全然違う。ふわふわ。こんなの初めて」
「中は真っ白。巨大な岩山を採掘してるみたいだ」

 砂糖と醤油で味付けしているらしいのだが(本物の店主談)、素材が違うのか調理法に秘密があるのか、煮付けというより巨大な佃煮のようにも見える。

 とにかくこれが大当たりであると確信した五郎は「鯖味噌が美味いと知りながら、あえて銀ダラを選んだ自分を褒めたい」とアトランタ五輪の有森裕子のように勝ち誇る。実は客の8割が銀ダラ目当てらしく、見事な五郎の嗅覚。

「銀ダラ銀シャリ銀ダラ銀シャリ……銀のラリーが止まらない」『銀』に侵された五郎は「箸が止まらない。アイキャンストップラビングユー、銀ダラに首ったけ」と、ついに煮魚に告白。レイ・チャールズもびっくり。銀シャリもお代わり。

 ちなみに「銀ダラ」というのは真鱈(まだら)やスケトウダラとは全く違う魚で、どちらかというとアイナメに近く、いわば鱈の代用魚。脂が強くて嫌われていたが、むしろ最近はその脂のおかげで人気になった例のパターン。「ムツ」に対しての「銀ムツ=メロ(マジェランアイナメ)やメルルーサ」などと同じ構図だが、この銀ダラはムツの代用品であったこともあるからややこしい。

■刺身のツマ・オゴノリは生で食べたら危険

 そして「お刺み」。マグロ赤身3切れと、細長く切った短冊のイカ刺し。煮付け(1,300円)に+150円で付いてくるとは思えないクオリティ。

 刺身のツマの緑の細長い海藻を好いている五郎は「やるじゃないの、名無しの権兵衛さん」と改めて評価。この海藻はおそらくオゴノリで、実は東京湾でも潮干狩りの際に普通に採れたりするのだが、生のものをそのまま食べると嘔吐や意識低下の末、亡くなることのあるので要注意。もちろん市販のものは湯でたり、石灰処理を行っているので安全だ。

 小鉢も手を抜かず、マグロをあっさり煮たフレーク状のもので、「マグロの連打」。

 豆腐の味噌汁。「魚が上手い店は100パーセント、味噌汁も美味い」とすすっていたが、やはり出汁がちゃんとしてるのだろう。

 たくわん付いて、味噌汁付いて、小鉢付いて、あげくコーヒーまで付いてくる。五郎いわく「つきまくり」。

 別注の沖縄産生もずくは酢の物ではなくしゃきしゃきした歯ごたえで、「アシストを超えた戦力」。これでも白米をわしわし食べる。

 

■3杯目はタレだけで

 とにかくこの漆黒の煮付けに骨抜きにされた五郎は「まだ美味い。うまさが衰えない。この店、リピート確実」「これのためだけに浦安に来る価値がある」と大絶賛。年間パスポートがあれば買う勢い。

「大将が毎日河岸に足を運び、長い歳月をかけて出来上がった煮付け。この銀ダラは大将が掘り当て、磨き上げた黒い宝石だ」

 最大の賛辞を贈り、大団円かと思いきや、残った黒光りするタレに目に止まる……。禁断のご飯有料おかわりに突入!

 タレの残る平皿に飯を落とし、混ぜこねる。前々回の群馬・下仁田で豚すき焼きの残り汁を使い卵かけご飯を食したのに通じる、最低にして最高の禁じ手。

「ご飯が美味しさの黒いマントを羽織っていく」こういう作業をしてる時の五郎、いや全ての大人は実に悪い笑顔になる。一口食って「ほーら来ちゃったよ! 文句なしの美味さだ!」と賭けに勝った喜びを噛み締める五郎。もはや箸でなくスプーンで掻き込む「銀ダラ残り汁絡め飯」(命名・五郎)。見た目はイカスミのリゾットのよう。

「たっぷりの旨味とコクとちょい苦味が混ざったこの味は完璧な美味さの黄金比」

 こんな感想を聞けば聞くほど、おかわりに制限あることに納得してしまう。それくらい「食わせて」しまう味なのだろう。

 

■謎の友人・滝山

 コーヒーを飲み店を出た五郎は「今度、滝山にも教えてやろう」と満足げ。

 滝山とは原作1巻・6話「ひかり55号のシュウマイ弁当」で2コマだけ登場した五郎の友人。この時は新刊線のお供にシュウマイ弁当の購入を勧めるも、五郎は瞬間で温まるタイプ(ジェット)を購入してしまい、車内で匂いが充満し顰蹙を買ってしまうという事件が起きた。

 ドラマ化されてからも滝山は『Season2』の9話で声だけ登場(声=テレ東の植草朋樹アナ・ふらっとQUSUMIナレーターも担当)したが、『Season4』の9話でついに実写化。待ち合わせに遅刻してきながらも五郎に上客を紹介し、それも自らがバカンスへ旅立つためという憎めない悪友ぶりを村田雄浩が演じた。

『Season5』の8話でも、登場しないが手紙で五郎にどっきりを仕掛けるなど、ほとんど顔を見せないのに名物キャラとして認知されている。

 この「滝山」のモデルは、原作者・久住昌之の盟友・滝本淳助(ヒカシューのジャケット写真撮った人)であるとの説がある。共著『タキモトの世界』(太田出版)や『タモリ倶楽部 東京トワイライトゾーン』(日之出出版)での共闘ぶりを見ていると、あり得なくもないと思うが、身近な仲間の名前をもじっただけのような気もするし、真相が気になる。

 そして、久住が同店を訪ねる「ふらっとQUSUMI」のコーナー。鯖の塩焼きも美味そうだったが、主人の持って来た銀ダラ煮付けを食べるなり「うわ! うんまい! これはみんな食べるのわかるわ! 参った」と久住も脱帽。鯖塩の時と久住のリアクションが違いすぎて笑ってしまった。

 最後に明かされたのが「羅甸」の読み方。「らてん」と読み、ラテンアメリカの「ラテン」の当て字で、店主ご夫妻がラテンダンスをやっていたのがその由来だという。次回は「墨田区東向島の納豆のピザと辛いパスタ」。
(文=柿田太郎)

『孤独のグルメ』意外にも麻婆豆腐は初登場! 原作には、あの宇佐美圭司の東大の絵も登場していた!

 今回の『孤独のグルメSeason7』(テレビ東京系)は、東京・三河島。常磐線を使っていないと馴染みのない駅名かもしれないが、もともと荒川区の多くは「三河島」という地名で、ある大規模な鉄道事故のイメージを払拭するため、ちょうど50年前に「荒川」に置き換えられた(一部他の地名に組み込まれた)という。「第5話 東京都荒川区三河島の緑と赤の麻婆豆腐」。

(前回までのレビューはこちらから)

■路上で子どもに焼き鳥を差し出される域に達した五郎の食いしん坊ぶり

 昔の街並みの残る三河島の惣菜店を眺めつつ、「商店街っていえば、昔はどこもこんなふうだった」と郷愁に浸る井之頭五郎(松重豊)は、今日もマイペース。

 途中、路上で男子児童が頬張る焼き鳥に見とれすぎ、気づいたその男児に無言で焼き鳥を差し出されてしまうほど。いい大人なのに、一瞬「え? いいの?」と手を伸ばしかけるも、ふと我に返ったため、さすがに食べはせず。しかし、坊主頭の児童との微笑ましいアイコンタクトが実にいい塩梅でした。

 菓子店を開店予定の杉山(中山忍)との商談帰りに、三河島近辺に多い韓国食材店を訪ねると、すでに杉山に土産としてキムチをもらっているのに、同じ店(丸満商店)でまたキムチを購入しちゃう欲しがり五郎。あげく、そのキムチでご飯を食べることを想像しながらの帰り道、「このキムチで飯をばくばくと……いかん……家までもたない。ここで店を探そう!」と、食物連鎖ならぬ食欲連鎖でスイッチオン、街を彷徨いだす。キムチの役目はここで終わり。

 見つけた店は「麻婆豆腐専門・真実一路」。漫画『3年(ハイスクール)奇面組』(集英社)に真実一郎というキャラクターがいたのを思い出す。

「その麻婆一筋、わき目も振らぬ心意気、痺れるじゃないか」と、山椒にかけた上手いことを言いつつ五郎、入店。手に2つのキムチを抱えて。

 

■色とりどりの麻婆

 ここの麻婆豆腐は「五味一体」にこだわっており、店内の黒板にいろいろが記されている。

・「麻」…四川花山椒の痺れ
・「辣」…四川朝天辣椒で作る自家製辣油の辛味
・「香」…ニンニクや秘伝配合の豆板醤、四川永川豆チの香り
・「熱」…鍋フチを焦がすほどの熱さ
・「色」…豆腐、辣油、ニンニクの芽の3色のコントラスト

 ということらしい。店の壁にうんちくが書かれている店は、どこか説教臭く感じてしまうが(すみません)、中国のフィルターを通しているせいか、特に気にならない。ちなみに「三位一体」はキリスト教の教え。

メインの麻婆豆腐には4色があるようで、

・王道の「赤」
・青唐辛子と山椒で爽やかな「白」
・中国たまりと黒胡椒を使った「黒」
・野菜ペーストを使った「緑」

 とどれも気になるラインナップ。

 注文しようと声をかけるも、一人でカウンター内で作業している店員にあまり声が届いていないようで、何度か呼び直すことになる五郎。これ、実際にあると気を使うやつだ。さらに大きな声で呼び直すパターンと、作業を凝視し、その隙間を縫って自然に聞こえるように声をかけるパターンとに分かれるが、ドラマでの五郎は躊躇なく前者。しかし、以前、回転寿司を食べていた時の五郎は後者(見かねた隣のおばさんが店員に伝えてくれた)だった。ちなみに筆者も後者だ。前者になりたい。

 そして、この店「麻婆専門」と看板に掲げながらも麻婆以外のメニューが実に多い。いつものようにガシガシと頼んでいく五郎。

・ザーサイのネギ生姜和え
・ワンタン入り滋養スープ
・海老と大葉の春巻き
・豚ヒレと野菜の五目春巻き
・緑の麻婆豆腐
・ライス
・白茶

「給料日だから」とか「今日は奮発しちゃえ」とかいう理由も葛藤も一切なく、当たり前のようにこの品数を頼める五郎の懐具合に毎回驚く。今日もしっかり数千円コース。「頼みすぎじゃない?」とか「そんなにお腹空いてたの?」とか「1,000円超えちゃうよ?」とか勝手にハラハラしてしまっていたが、一応個人の貿易商だし、何より大食漢ということで、今は「どれだけ頼んでも大丈夫な人」として慣れた。

■緑色の麻婆には何が?

 まず出てきた白茶の茶葉が開く間、隣の席で頼まれていた「麻婆(豆腐専用)ハイボール」が気になる五郎。調べると山椒が振りかけられているものらしいが、下戸の五郎は当然スルー。

 白茶を美味しそうに味わいつつも、本音は「よく分からない」と素直な感想。しかし、甘さもあるこのお茶は、辛い麻婆から何度も五郎を救ってくれる。いいチョイス。

 そして「ワンタン入り滋養スープ」は「滋養という言葉が胃袋に沁みて」「体にいい。心にもいい。魂が癒やされていく」と、五郎の胃袋がほだされていくのがわかる。

「ザーサイのネギ生姜和え」でつないでいるところに、揚げたての春巻きが到着。

「海老と大葉の春巻き」からかじり付くが、まずかじる音がいい。衣の砕ける音が食欲をそそる。味も「味付けが程よくて、程よい」という五郎らしい感想。「豚ヒレと野菜の五目春巻き」は「濃いめのオカズ味」と感想を言いながら、米も来てないのに食い進む。

 そして、「緑麻婆豆腐」が登場。エメラルドグリーンに輝くその色は、福島の名所・五色沼の湖面のような色合い。野菜のペーストが使われており、野菜の甘みがありつつ、それが辛味と絡む。

「でも確かに麻婆豆腐だ。これは驚いた……。しかし驚きながらもスプーンは進んでいく!」と活弁士のような気合の入った五郎の心の声が響きわたる。甘みのある白茶で流し込む五郎の表情は幸せそのもの。

 

■さらに真紅の麻婆を追加

 隣の席に「燻製焼き飯」が到着。五郎は身を乗り出して食いつきつつ、「なるほどの燻製臭。謎の中国人・クン・セイシュウ」と不気味な独り言(妄想)。

 その勲星周(当て字は適当)に刺激された五郎は「五味一体麻婆豆腐・赤」を追加。鍋ごと焼かれ、グツグツと沸き立つ赤麻婆。「これ、もしかして100度超えてるんじゃないの?」と五郎は恐れていたが、脂が表面にある分、そうかもしれない。

 フハフハしながら一口すすった五郎の感想→「熱くて味がわからない!」に爆笑。

 しかし慣れてくるにつれ、「熱いけど美味い。俺の舌は痺れと辛さで悲鳴を上げ続けているのに、脳がスプーンの動きを止めるのを拒絶している」。

 あー、美味い四川風の麻婆って確かにこんな感じ。舌が痺れてるのに手が止まらなくなるあの感じ。

 一緒に出てきた白米にぶっかけて赤麻婆を掻き込む。

 ちなみに食べた人の感想を調べると、この「赤」が一番辛くて、次いで「白」そして「緑」、意外にも「黒」が一番辛くないらしい。五郎というか、松重おじさんの額に天然の汗が玉のように滴る。

 ここで五郎は「助け舟を呼ぼう」と「正式杏仁豆腐」を召喚。余計なものやシロップなどのかかってない、ただただ濃厚そうな杏仁がたっぷり到着。

「ねっとりとしてすっきりしてる。ネトスキで品良い甘み」を味わいながら、辛さからの落差を楽しむ五郎。あーどっちの「豆腐」も食べたい。辛いから甘いへの豆腐のハシゴ。この流れで見ていると、むしろ美味しく杏仁を食べるために麻婆を食べたくなってくるほど。それほどこの流れでの杏仁豆腐が美味しそうに感じた。最後に白茶で全て洗い流す感じもいい。

 店内のメニューには「鱈と白子の麻婆豆腐」や「とろけるチーズの麻婆豆腐」など、他にも気になるものが多かったのだが、今回筆者が一番気になったのは、「燻製麻婆豆腐」で、白麻婆豆腐に桜の燻香をプラスしたものらしい。燻製チャーハンもそうだが、一度は体験してみたい。

 原作者・久住昌幸が同店を訪れる「ふらっとQUSUMI」では

・胡瓜の四川唐辛子和え
・ピータンとピーマンの香り和え

 など酒に合いそうなツマミをつまみつつ、久住が「カメ出し生紹興酒」を「カメ出し烏龍茶」だと言い張るという昼酒時恒例の和尚様のような秘技・飲酒隠しを披露、こちらも幸せそうだった。

 

■宇佐美圭司の、あの東大の絵が原作に登場していた

 意外だったのは、麻婆豆腐が、原作やドラマの全シリーズ通して初登場だったこと。シーズン2(第6話・京成小岩の四川家庭料理 珍々)にて「豆腐のニンニクタレかけ」なるものは食べているが、これは丸のままの豆腐にしゃばしゃばしたタレをかけたものだし、やはり違う。

 他にも四川っぽいものが登場していないかと調べていると、原作コミック2巻(扶桑社)で東大学食を訪れ「赤門ラーメン」なる担々麺(風)のものを食べている。これは言わずもがな汁の色をかの赤門に寄せたメニューで、四川云々といったものではないのだが、それとは関係なくコマをよく見てみると壁に見覚えのある壁画が…。

 そう。生協側が廃棄してしまったことが発覚し、先日話題になった画家・宇佐美圭司のあの絵だ。2巻が発売されたのは2015年。原作者の久住は13年に取材で訪れたとTwitterで発言しており、当然だが当時はあそこに行ったら否応無しに目に入ってくるものだったのだろう。

 ちなみに五郎は絵については特に触れていないのだが、地下に広がるこの学食の構造について「学食サンダーバード基地!」と興奮している。

 話が脇道にそれたが、次回は千葉県浦安市の真っ黒な銀ダラの煮付け定食。

 最近は予告で店を調べて放送日前に行くのが流行ってしまい、すでにこの麻婆の店も放送日前から行列ができていたらしい。行く方はお気をつけて。
(文=柿田太郎)

『孤独のグルメ』今シーズン初の地方遠征は群馬! 『ガキ使』のあの人気キャラも登場で……

 おじさんがぶつぶつ言いながら一人で飯を食ってるのを、どこかシンクロしながら鑑賞するドラマ『孤独のグルメ Season7』(テレビ東京系)。第4話はSeason7初の地方遠征、しかもダブルヘッダー。「第4話・群馬県甘楽郡 下仁田町のタンメンと豚すき焼き」。

(前回までのレビューはこちらから)

■仕事前にいきなり食事

「ずいぶん早く着いちゃったな」

 旅情たっぷりな台詞とともに井之頭五郎(松重豊)が降り立ったのは、上信電鉄・上信線の下仁田駅。2両ほどのローカルな車両から降り立つ導入は映画のよう。

 商談で来たはずだが、駅を出るなり渋い路地を見つけ散策し出す。

「うわー、よく『残ってる』なあ」という台詞から、根っからの街歩き好きぶりがうかがえる。撞球場と書かれた木造丸出しのビリヤード場に感激したり、「食亭エイト」という趣があるんだかないんだかなリアルな店名を見て「味のある店名だ」と感心したり、仕事する前から自分なりに地方を満喫しちゃう幸せそうな五郎。

 そんな中遭遇したのが、地元に愛されていそうなこれまた渋い中華食堂。

「一目惚れしちゃう面構え」に惹かれた五郎は「餃子・タンメン 一番」と掲げられた看板を見るなり「こんな店にタンメンとか言われると、腹が、減ってきた……!」と、まだドラマのオープニング前なのに空腹宣言シーンと同時に入店、すぐさま食事シーン。今回は忙しそう。

 餃子とタンメンを注文し、老齢の主人が1個ずつ小麦粉の団子を皮に伸ばしていく様に感嘆する五郎。

「注文の都度、この作業をやってるのか……!」

 横では奥さんらしきお婆さんが、年季の入った中華鍋を振っている。この無駄のなさすぎる所作が、あまりに堂にいっていたので気になり調べてみたら、どうやらこのご夫婦、ご本人らしい。

 主人の朴訥とした台詞回しは、まるで往年の笠智衆のよう。

「作るとこ見ながら料理待ってるの大好き」とカウンターから無邪気に覗き込む五郎。今日も楽しそう。

 まずはタンメン到着。五郎は「一目で美味いのがわかる」というエスパーのような発言をしていたが、確かに間違いなさそう。変な言い方だが、美味いタンメンって絶対に美味い。

 一口食うなり、しみじみと「あー、これはいいタンメンだ……」と幸せを噛み締める。

 見ているだけで口に噛みごたえが伝わってくるような、むちむちの太麺。

「肉は少し、野菜はもやしとキャベツと人参。それだけ。具材を削ぎ落とした『引き算のタンメン』」モノは言いようだが、とにかく美味そうだから説得力が半端ない。

 途中、美味さに感激しながら五郎がタンメンをすするシーンがワンカット長回しで1分40秒に渡って繰り広げられ、最後は「久しぶりにスープ全飲み」、まさに「うますぎて止められん!」のが伝わってくる渾身の食べっぷりを見せてくれた。

 ここで餃子到着。正直カタチはさほど綺麗ではない。潰れ気味で、ごてごてとくっつき合い、ボテッと塊になった餃子。しかし、その皮の焦げ具合や、もちもちした輝きっぷりが絶対美味いやつだと予感させる。今まで幾度となく餃子は登場しているが、そのどれとも違う存在感。店員の沼田(戸塚純貴)に言われた通り、酢多めに醤油とラー油でかぶりつく。

「焦げがジャスト」という、いい表現。焦げを噛んだ時に出る音が、感触を想起させまくる。具材に何が入っているとかはわからないままだが「これはいい店に当たったあ」という五郎の感想が全てだろう。そして、あの名言まで飛び出した。

「こういうのでいいんだよ、こういうので」

 余計なことをせず、それでいて必要最低限の要素がしっかりしている品が出てきた時、五郎が口にする言葉。原作では板橋でのシンプルなハンバーグランチが出てきた時に言っているのだが、結局その際は、外国人店員にきつくあたりすぎる不遜な店主に五郎が憤慨し、完食せずに店を出たあげく、路上で逆上し襲いかかってきた店主にアームロックを決め懲らしめるという、ドラマではあり得ない原作屈指のシーンが展開された。松重は柔道2段なので、かのシーンを踏まえてのキャスティングかと思われたが、Season7現在、そういった展開はどうやらなさそうだ。

■『ガキ使』のピカデリー梅田も登場

 商談を終え、駅で帰りの電車を30分待つつもりが2時間以上ベンチで居眠りして、3本も電車を乗り過ごしてしまう五郎。長い時間見てたのに、起こしてくれずニタニタしてる駅員(正名僕造)もいい味を出していたが、ベンチで「秘湯中の秘湯だよ」と温泉を勧めてきたお年寄り(菅登未男)が、『ガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の入れ歯怪談師や入れ歯考古学者としてお馴染みの「ピカデリー梅田」だったことにびっくりした。孫役らしき女性に手を引かれていたもののお元気そうで何より。御年87歳。

■2件目のすき焼きは豚肉と下仁田ネギで

 結局この日、2回目の「腹が減った」コールで店探し。実は下仁田は醤油だれにさっとくぐらせただけの「下仁田かつ丼」も有名なのだが、そののぼりには目もくれず五郎が目指したのは、先ほどの店の真隣にあった「すきやき・鍋物料理 コロムビア」という店。タンメン食った直後から気になってた五郎だったが、「失敗はご馳走で取り返せ」と、都合のいい名言を吐きながら直行する。

「コロンビア共和国」のコロンビアではなく、「コロムビアレコード」とか「コロムビア・トップ・ライト」(漫才師)とかのコロムビア。すき焼き屋なのにコロムビア。前述の「食亭エイト」もそうだが、この決して狙って付けてない、あざとさゼロのちぐはぐ感がいい。

 奥へ通されると、カラオケステージまである広間はまるで旅館の宴会場。なんちゃらプロデューサーとかなんとかコーディネーターとかが絶対関わってないこの感じ、いい。

 メニューはなく、すき焼きの肉を牛肉か豚肉か選ぶだけ。下仁田では豚すき焼きが一般的だと聞きもちろん豚で注文する。

 登場したすき焼きは、立派な豚ロースに下仁田ネギなど各種野菜。割り下を入れる前にネギだけ素焼きで食べてみろと勧められ、太くて立派な下仁田ネギをこんがり焼いて頬張る。

「むちゃくちゃ甘くて美味しい」とのこと。

 さらに、豚肉と割り下を投入、生卵で焼けた肉を頬張る。

「なるほど、こうなるか。豚すき、イケる。」どうやら五郎は豚すき焼きを食べるのが初めてらしく、筆者は東京だが、子どもの頃、すき焼きといえば豚の時代があったので、五郎が初めてとは少し意外。

 さらに下仁田ネギを豚で巻いて食うのだが、これも美味そう。しっかりした豚ロースならではの食べ方かもしれない。口に入れた五郎から「完にして璧」とのお墨付き。卵をじゅるじゅるとすする音も最高の効果音だ。

 白滝、しいたけ、エノキ、さらに冷奴として付いてきた小さな豆腐まで投入、「昼のタンメンとは逆の足し算のすき焼き」だと分析する哲学者・五郎。

 グツグツと具が小躍りしてるのを眺めながら「鍋の中は今、宴たけなわだ」と五郎の気分もマックス。アコースティックギターから始まるBGM「店を探そう」をバックにギアを上げる。

「少年たちよ、君達にも、いつかすき焼きの椎茸の意味を知る日が来るんだ」と椎茸を頬張ったかと思うと、「くったくたになったネギを卵につけて食べるのもまた趣のある美味さ」とネギをちゅるりと流し込む。

「なぜこれが都内で普通に食べられないのだろう、豚すき最高だな」と、すっかり豚すきがお気に入りの様子。残った具を全て卵にくぐらせ、それらを白米の上に蓋をするように並べ、すき焼き丼にして「いざ!」とシフトチェンジ。同時にBGMも「喰らいマックス」にチェンジしてテンションアップ。

「下仁田流すき焼き、最高のフィニッシュだ」と言った瞬間、豚の脂の溶け出し煮詰まった割りを見て固まる五郎。

「この残り汁を見ちまったら終われんだろう」と白米と生卵を追加、「(生)卵&すき焼きの汁かけご飯」を製造、口に含むなり「うわ、マジで美味い! やったあ!」と感激。「俺は最高の仕上げ方を見つけてしまった」と自画自賛、予想より美味かった発見に驚く五郎がかわいい。

 最後のBGMは新曲「アイリッシュ・スプーン」で後半3段階で駆け上がる畳み掛けがすごかった。

 結局満腹の五郎は帰るのがめんどくさくなったらしく温泉にで行こうかと壁にもたれ掛かかって、今回は終了。おそらく泊まって帰ったのでしょう。

 原作者・久住昌之が同店を訪れる「ふらっとQUSUMI」では最初の店・一番を訪問。タンメンで使う太麺を使った、常連が頼む裏メニュー・焼きそばなどを紹介。

 見習い店員の沼田さんは、街がこの味を残すために行った募集に応募してしてきた若者で、ドラマでの役者(戸塚純貴)があまりに沼田氏本人にそっくりだったため、ネットでは「店員なのに芝居が上手い」と情報が錯綜したほど。

 今回は、地方ならではの2店ハシゴながら無駄のない構成で、小旅行気分を味あわせてくれた良回。特に一番のご夫婦の存在感がよく、役者でなくご本人に出ていただいたのが好采配だったと思います。ご馳走様でした。
(文=柿田太郎)