今週取り上げる最新映画は、江戸時代の過酷な参勤交代に、古代ギリシャの命運を賭けた戦いと、史実を踏まえつつ大胆な創作で現代の観客を楽しませてくれる歴史活劇2作品。ジャンルも場所も大きく異なる2本だが、ほぼ“無理ゲー”な状況に置かれた少数の仲間たちが、勇気と知恵とチームワークで難関に挑むという共通点もある。 『超高速!参勤交代』(6月21日公開)は、佐々木蔵之介主演で、江戸幕府から無理難題を突き付けられた弱小藩の奮闘を描く時代劇コメディ。1万5000石の弱小藩である湯長谷藩(現在の福島県いわき市)は、腹黒い幕府老中・松平信祝(陣内孝則)から、通常なら8日かかる江戸までの行程をわずか4日間で参勤するよう命じられる。湯長谷藩主の内藤政醇(佐々木)は、知恵者の家老(西村雅彦)とともに奇想天外な作戦を練って出発するが、妨害をたくらむ松平も刺客を放っていた。 脚本コンクールの城戸賞で2011年に史上初の審査員オール満点を得た、土橋章宏による傑作シナリオを、『ゲゲゲの鬼太郎』『鴨川ホルモー』の本木克英監督が映画化。次から次へと直面する難局を、家老の知恵と家臣ら各自の得意技で一つひとつ乗り切るさまが痛快だ。時代劇ならではのチャンバラアクションも、ワイヤーやVFXを駆使して、従来の時代劇とは微妙にテイストの異なる活劇に。よく練られたストーリーとあふれるユーモアのおかげで、歴史マニアや時代劇ファンでなくとも間違いなく楽しめる快作だ。 『300 スリーハンドレッド 帝国の進撃』(公開中、2D/3D上映、R15+)は、100万人のペルシア帝国軍にわずか300人で立ち向かったスパルタ兵士たちを描いた『300 スリーハンドレッド』の続編。紀元前480年、多数の都市国家で構成されるギリシャを支配しようと、ペルシャ帝国の神王クセルクセスが大艦隊をエーゲ海に送る。アテナイの若きリーダー、テミストクレス将軍(サリバン・ステイプルトン)は、ギリシャの自由と平和を守る戦いを同胞たちに呼びかけ、3倍の軍勢を擁するペルシャ軍と対峙する。ギリシャに復讐を誓いペルシャ海軍を指揮する女傑アルテミシア(エバ・グリーン)は、テミストクレスを味方に引き入れようと画策するも失敗。怒りと復讐心を募らせ、ギリシャを壊滅すべく進撃を開始する。 フランク・ミラーのグラフィックノベルを原作とし、CMディレクター出身の新鋭ノーム・ムロが映像化。前作を監督して世界中の映画ファンに一躍名を知らしめたザック・スナイダーは今回、製作・脚本にまわっている。剣、盾、槍と肉弾戦のアクションを、再生スピードに緩急つけてよりダイナミックに演出するテクニックは前作を踏襲しており、飛び散る血しぶきが3Dで一層リアルに。エバ・グリーンは、意外なほどサマになっている剣さばき、攻撃的なメイクラブの場面など、まさに渾身の演技で観客を魅了。大胆なフルヌードとエロスで話題を集めたデビュー作『ドリーマーズ』以来、脱ぎっぷりの良さと美しさも変わらない。前作に比べてカタルシスに欠け、映像表現も見慣れてしまったせいかインパクトが若干足りないものの、おそらく第3作でギリシャとペルシャ神王との最終決戦が控えているはず。壮大なスケールの3部作の中継ぎという意味では、やはり見逃せない1本といえるだろう。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『超高速!参勤交代』作品情報 <http://eiga.com/movie/79398/> 『300 スリーハンドレッド 帝国の進撃』作品情報 <http://eiga.com/movie/77929/>(C)2014「超高速!参勤交代」製作委員会
「映画」カテゴリーアーカイブ
スク水姿の刈谷友衣子が「私の毛を剃って」!? 抱腹絶倒の青春映画『スイートプールサイド』
今週紹介する最新映画は、日本の小説家と漫画家が描いた日本人ならではのテーマを、気鋭の若手監督が独特のセンスで映像化した意欲作。万人向けではないかもしれないが、込められたエネルギーと創意工夫が観客に強い印象を残す2作品だ。 『私の男』(R15+/6月14日公開)は、人気作家・桜庭一樹が直木賞を受賞した小説を原作に、『海炭市叙景』の熊切和嘉監督が映画化した衝撃のドラマ。10歳で孤児となり、遠縁の男・淳悟(浅野忠信)に引き取られて、北海道紋別の静かな港町で育った花(二階堂ふみ)。他人と深く関わらず、互いを支えに暮らしていた淳悟と花だったが、ある日、町からほど近い海岸の流氷の上で殺人事件が発生。2人は逃げるように町を後にする。 凍てつく北海道の景色に、2人の内面からにじみ出る虚無感が際立つ。10代の少女から大人の女へ変貌する二階堂ふみが見事。流氷の海に飛び込むなど、過酷なロケでの演技からはすごみさえ伝わってくる。浅野忠信は珍しく、だらしのないダメ男を説得力十分に演じた。共演に高良健吾、藤竜也ほか。女の哀しさと強さ、世間に受け入れられない関係の重さが余韻を残す1本だ。 『スイートプールサイド』(公開中)は、押見修造による同名コミックを、『アフロ田中』の松居大悟監督が実写映画化した異色青春コメディ。局部に毛が生えてこないことに悩む高校生の年彦(須賀健太)は、同じ水泳部の毛深い綾子(刈谷友衣子)をうらやましく思っていた。そんなある日、綾子から「私の毛を剃って」と頼まれ、引き受けることに。綾子の腕の毛とスネ毛を毎週剃るようになった年彦は、やがて綾子に対して特別な感情を抱き始める。 思春期の性を、ストレートな衝動や行為でなく、毛にまつわるコンプレックスとフェティシズムで表現した点がユニーク。ユーモアのセンスも抜群で、剃毛に挑む年彦の内面を、草や木、茂みのメタファーで表現する映像は抱腹絶倒だ。刈谷友衣子の、無垢な存在感と、自らを持て余しているかのようなたたずまいが印象的。前半は微エロなコメディ、後半はホラー気味に展開する構成もうまい。笑いとともに思春期の気まずい感じを思い出させてくれる、愛すべき青春映画がまた一つ誕生した。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『私の男』作品情報 <http://eiga.com/movie/78264/> 『スイートプールサイド』作品情報 <http://eiga.com/movie/79148/>(C)2013『私の男』製作委員会
『ブラック・スワン』ダーレン・アロノフスキー監督×ラッセル・クロウ 『ノア 約束の舟』
今週取り上げる最新映画は、史実や伝説を題材にとった歴史スペクタクル2本。時を越えて語り継がれてきた物語が、現代のVFXで実写化された圧巻の映像を、映画館の大スクリーンで目いっぱい楽しみたい。 『ノア 約束の舟』(6月13日公開)は、『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督が、旧約聖書の「ノアの方舟伝説」をラッセル・クロウ主演で描いた壮大なドラマ。信心深いノア(クロウ)は、世界が大洪水によって滅びる夢を見て、神の啓示だと確信。罪のない動物たちを救うため、家族と一緒に巨大な箱舟を作り始める。ノアの父を殺した宿敵ルバル・カインが率いる軍勢が箱舟を奪おうと攻撃を仕掛けた時、ついに大洪水が到来する。 神が罪にまみれた世界を浄化するために起こす洪水の前に、ノアが巨大な船を作ってすべての動物のつがいを救ったという、よく知られたストーリー。アロノフスキー監督は、招かれざる者の乗船、ノアの異常なまでの使命感といった要素により、先の読めないサスペンスを巧みにプラスした。ノアの妻をジェニファー・コネリーが演じたことで、正しいと信じる道を追求するあまり精神に変調を来す夫と、大きな愛で夫を支える妻という『ビューティフル・マインド』のカップルの再来にもなった。岩で覆われた巨大なクリーチャーが船の建造を手伝ったり、押し寄せる悪党どもをなぎ倒したりと、ファンタジーアドベンチャー的な見どころも楽しい。 『ポンペイ』(公開中、2D/3D上映)は、『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督が、西暦79年の火山大噴火によって埋もれた古代都市を舞台に描くアクション大作。ローマ人に一族を滅ぼされて奴隷となり、剣闘士として成長したマイロ(キット・ハリントン)は、ローマ帝国の街ポンペイで貴族の娘カッシア(エミリー・ブラウニング)と出会い、恋に落ちる。闘技場でマイロたち剣闘士が命懸けの戦いを繰り広げる中、不穏な大地震が頻発。ついにベスビオ山が大噴火を起こす。 ゲームを原作とする息の長い映画シリーズでファンを飽きさせないアンダーソン監督らしく、次から次へと繰り広げられる格闘アクションとVFXを駆使したディザスター場面が、まさにてんこ盛り状態。まるで『グラディエーター』『ボルケーノ』『2012』『アルマゲドン』『タイタニック』といった歴代の大作映画のスペクタクルシーンをメドレーで見ているかのようなお得感だ。『エンジェル・ウォーズ』のセーラー美少女戦士に扮したエミリー・ブラウニングが、奴隷の剣闘士に恋する貴族の娘を可憐に演じている。『ロミオとジュリエット』のような格差愛の行方も含め、スリリングな展開とケレン味たっぷりの映像が最後まで楽しめる快作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ノア 約束の舟』作品情報 <http://eiga.com/movie/57491/> 『ポンペイ』作品情報 <http://eiga.com/movie/79720/>『ノア 約束の舟』
(C)MMXIV Paramount Pictures Corporation and Regency Entertainment (USA), Inc. All Rights Reserved.
才気あふれる日本の若き監督たちが描く“現代の家族”『ぼくたちの家族』『オー!ファーザー』
今週取り上げる最新映画は、極めて現実的な家族の問題と奮闘の様子を優しいまなざしでとらえた傑作ドラマと、およそ非現実的な構成の疑似家族が生み出す奇想天外の痛快コメディ。才気あふれる日本の若き監督たちが描く「現代の家族」、どちらも味わい深く示唆的だ(どちらも公開中)。 『ぼくたちの家族』は、昨年『舟を編む』で国内外から高い評価を得た石井裕也監督が、崩壊の危機に瀕した家族の奮闘を描くヒューマンドラマ。郊外の新興住宅街で暮らす若菜家の母・玲子(原田美枝子)は物忘れがひどくなり、病院で検査を受ける。「末期の脳腫瘍で余命1週間」と宣告され、父(長塚京三)、妻の第1子出産を控えた長男・浩介(妻夫木聡)と次男の大学生・俊平(池松壮亮)はそれぞれ動揺する。認知症に似た症状が強くなった玲子は、家族に隠してきた本音を吐露。男3人はさまざまな問題に直面しながら、最後の「悪あがき」を決意する。 原作は早見和真の同名小説。母の重篤をきっかけに、バラバラの家族が現実を直視したあとで絆を取り戻していく筋立ては、ジョージ・クルーニー主演の感動作『ファミリー・ツリー』の日本版といった趣だ。記憶があいまいになって約束を忘れたり、脈絡ない発言をしたりして夫や息子たちを困惑させる玲子の症状は、認知症などの脳障害の家族を持つ観客の胸にとりわけ強く迫るはず。責任感の強い兄と頼りない弟という序盤の印象が、過去のいきさつが明らかになるにつれ、微妙に変化する見せ方もいい。兄弟が急な階段を登った丘から眺める郊外の風景に象徴されるように、これは紛れもなく現代日本の家族を真摯に見つめる物語。崩壊の危機を迎えたとき、本音でぶつかり合うことで変わり出すもの、決して失われない絆を信じさせてくれる力作だ。 『オー!ファーザー』は、伊坂幸太郎の大ベストセラー小説を岡田将生主演で映画化したサスペンスコメディ。職業も性格もバラバラな4人の「父親」と暮らす高校生・由紀夫(岡田)は、彼らの過剰な愛情に煩わしさを感じつつも、奇妙な同居生活をそれなりに楽しんでいた。だがある日、街の賭博(とばく)場でカバンのすり替え事件を目撃した由起夫は、好奇心に突き動かされてとった行動が原因で、謎の武装集団に拉致監禁されてしまう。4人の父親たちは、愛する息子を救うことができるのか……。 日本大学芸術学部在籍時に本作の脚本を依頼された藤井道人が、幸運な商業映画監督デビューもつかみ取った。4人の父親役は佐野史郎、河原雅彦、村上淳、宮川大輔。各自の持ち味を生かしつつ、達者なアンサンブルで特殊な疑似家族のあり方を提示した。由紀夫にウザがられながらもまとわりつき、父親たちとも意気投合するヒロインを忽那汐里が好演。気の合う仲間とがんばれば何とかなるさ、と前向きな気持ちになれる本作で、五月病や梅雨の憂うつを吹き飛ばしていただきたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ぼくたちの家族』作品情報 <http://eiga.com/movie/78572/> 『オー!ファーザー』作品情報 <http://eiga.com/movie/78802/>『オー!ファーザー』(C)2014吉本興業
本当の“つながり”とはなんなのか――ネット時代の心の闇を描く『ディス/コネクト』
今週取り上げる最新映画は、ヤミ金融に群がる人々の騒動をバイオレンスとブラックユーモアを交えて描く邦画と、デジタルなつながりに依存し、真の絆を見失いがちな現代人に問いかける洋画の2本。いずれも劇的な筋立てと誇張した表現を含むが、現実にある問題を提示していることを確信させる力作だ。 『闇金ウシジマくん Part2』(公開中)は、真鍋昌平の人気コミックを山田孝之主演でテレビドラマ化、2012年に劇場版も作られた『闇金ウシジマくん』の続編。貸金業の資格を持たず暴利で貸し付け、容赦なく取り立てる闇金業者の社長ウシジマ(山田)のもとへ、暴走族のヘッド・愛沢(中尾明慶)にボコボコにされたヤンキーのマサル(菅田将暉)が連れてこられる。マサルに借金させろという愛沢の要求をはねつけたウシジマは、マサルを見習いで働かせることに。彼らを取り巻くライバル闇金業者、ホスト、風俗嬢、ストーカーの欲望と思惑が交錯し、壮絶なサバイバルが展開する。 仏頂面で鋭い目つき、まばたきさえほとんど見せない異色の主人公を、山田孝之が抑えた表現と圧倒的な存在感で好演。違法な金貸しを生業としながらも通すべきスジは通し、不遇な弱者に情けをかける一面も持つウシジマは、ままならぬ世の中をしたたかに生き抜くダークヒーローとして支持されているのかもしれない。4月公開の『そこのみにて光輝く』で重要な役を演じた菅田将暉が再びキーパーソンを熱演、同作主演の綾野剛もショートリリーフ的に顔を見せる。門脇麦、キムラ緑子、高橋メアリージュンが個性を生かして体現する三者三様の女の生きざまも印象的だ。 『ディス/コネクト』(5月24日公開)は、ネットやSNSに「つながり」を求め、落とし穴にはまって傷つき、立ち直ろうともがく人々を描くサスペンスドラマ。孤独な高校生ベンは、同じ学校の少年2人がSNS上でなりすました「少女」と親密なやりとりをするうち、求められて自身のヌード写真を送ってしまう。これが学校中にばらまかれたことでベンはショックを受け、自殺未遂を起こす。ベンの父親で弁護士のボイドは、パソコンに残った情報を手がかりに、息子が絶望した原因を探ろうとする。一方、授かった赤ん坊を亡くして夫との距離を感じるようになったシンディは、有料サイトのチャットルームで似た痛みを抱える男性と交流していた。だが、このサイトで使ったクレジットカードの情報が盗まれ、不正に使用されたことが高額請求によって判明する。 監督は、ドキュメンタリー映画とCMでキャリアを築いたヘンリー=アレックス・ルビン。ボイド役のジェイソン・ベイトマン、その妻を演じたホープ・デイビス、『オブリビオン』でトム・クルーズと共演し本作では野心的なテレビレポーターに扮したアンドレア・ライズボローといった演技派俳優たちによって、緻密に関係が絡み合う群像劇がスリリングに展開する。携帯やネットで「つながる」ことが当たり前になった現代で、実は人と人とのリアルな「絆」が損なわれていることを、現実に起こり得るエピソードを通じて浮き彫りにした。つながりが幻想だったと知って崩壊寸前の彼らに、再生への兆しは訪れるのか。スマホやパソコンを日々使う多くの観客にとって、警鐘と示唆に満ちた作品だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『闇金ウシジマくん Part2』作品情報 <http://eiga.com/movie/79578/> 『ディス/コネクト』作品情報 <http://eiga.com/movie/79831/>(c) DISCONNECT, LLC 2013
過剰なスプラッター描写が逆に笑いを誘う! 山田悠介×井口昇『ライヴ』
今週取り上げる最新映画は、人気作家が手がけた話題の小説を映像化した邦画2作品。高校生の淡い恋を描く青春ドラマに、過剰なスプラッター描写が逆に笑いを誘うサバイバルホラーと、趣はまるで異なるが、春らしいフレッシュなキャストと印象的な映像センスという共通点もある(いずれも公開中)。 『百瀬、こっちを向いて。」は、ももいろクローバーの元メンバーで、ドラマ、CM、PV出演と活躍する女優、早見あかりの初主演映画。新人文学賞を受賞した30歳の小説家・ノボル(向井理)は、母校から講演を依頼されて15年ぶりに帰郷し、当時を回想する。地味で女子と無縁な高校生だったノボルは、ある日先輩の瞬から、ショートヘアで鋭い目つきの美少女・百瀬陽(早見)を紹介される。瞬には本命の彼女・神林徹子(石橋杏奈)がいたが、陰で百瀬とも会っていて、一部でウワサになっていた。ウワサを打ち消すため、瞬はノボルに百瀬と付き合うふりをするよう提案。ノボルと百瀬は、校内で手をつないで歩くなど「ウソの交際」を始める。 原作は、人気作家の乙一が別名義の中田永一として発表した短編。CMで女性をキュートに撮ることに定評があり、「NO MORE 映画泥棒」の演出でも注目の耶雲哉治が長編監督デビューを飾った。初主演のヒロインに若手の共演陣、演技や演出の未熟さは認められるものの、初々しさが青春の不器用さを思い出させる効果も。大切な人のために本心を抑え、苦悩しながら恋人同士を装う高校生たちだからこそ、説得力たっぷりではない、ぎこちないくらいのたたずまいが似合う。光、影、風が映像に美しくとらえられ、川辺と高圧線鉄塔の郊外の風景にも雰囲気がある。ともあれ、現在19歳の早見あかりの魅力が全開で、おそらく演技面でも精神的にも猛スピードで成長する時期、今後の出演作にも大いに期待したい。 『ライヴ』は、山田悠介の同名小説を、『片腕マシンガール』「電人ザボーガー」などで国内外にカルト的人気を広げる井口昇監督が映画化。フリーターの直人(山田裕貴)のもとにある日、謎の男から山田悠介の小説「ライヴ」が届けられる。携帯電話には母親が拉致監禁されている動画が届き、「母親を助けたければ、小説の内容をヒントにデスレースのゴールを目指せ」と脅される。直人は、同じように家族や恋人を拉致された人々とレースを開始するが、そこには凶悪な敵と死のトラップが待ち受けていた。 メインキャストはほかに、『高校デビュー』の大野いと、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の森永悠希。原作本がレース攻略本として劇中に登場するというヒネリは、常識を突き抜けた独創性が海外で高く評価される異能の天才・井口監督ならでは。自主映画から商業映画へと移行する過程で、過激な描写が減る傾向にあるが、今作はメジャー配給作品にもかかわらず、わざとらしい状況やありえない展開が笑いを誘うバイオレンスシーンも満載。知名度は低めだがやたら身体能力の高い脇役たち(特に女優陣)によりバトルシーンもいい感じでハジケている。ストーリーにほとんど関係ない微エロのシーンも、男性観客にはうれしいポイントだ。東京のまちなかで展開する不条理なサバイバルレースを、ライブ中継で観戦する感覚で楽しみたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『百瀬、こっちを向いて。』作品情報 <http://eiga.com/movie/78729/> 『ライヴ』作品情報 <http://eiga.com/movie/79996/>(C)2014『ライヴ』製作委員会
映画『相棒』、“不審者侵入事件”が宣伝に!? 大喜びの東映にとんでもないウワサ浮上
『相棒‐劇場版III‐巨大密室!特命係 絶海の孤島へ』公式サイトより
人気ドラマ『相棒』(テレビ朝日系)の劇場版第3弾『相棒‐劇場版III‐巨大密室!特命係 絶海の孤島へ』が、4月26日から公開になった。テレ朝と配給の東映から“稼ぎ頭”として期待がかかる同作だが、ディズニー映画『アナと雪の女王』が予想以上のヒットを続けていること、また2012年の大ヒット作の続編『テルマエ・ロマエII』と公開が重なったことで、今回は苦しい戦いを強いられるともいわれている。
しかしその公開初日、『相棒』に思わぬトラブルが発生した。主演・水谷豊らが都内劇場で舞台挨拶をしている最中、同ビル内の東映本社に不審な男が侵入したのだ。そのため、各報道で大きく取り上げられることとなり、結果的に宣伝につながったという。
『ディープ・ブルー』『アース』のBBC EARTH最新作『ネイチャー』で地球を感じろ!
今週取り上げる最新映画は、手つかずの大自然が超リアルな映像で眼前に広がるドキュメンタリーと、虚飾にまみれた元セレブの再起をかけた奮闘がおかしくも哀れなコメディドラマ。普通は直接体験できないテーマだからこそ、映画館でしばし現実を忘れ、別世界のライフに浸ってみたい。 『ネイチャー』(3D上映、公開中)は、『ディープ・ブルー』『アース』のBBC EARTHが、新開発の4K3D撮影機材でアフリカ大陸と近隣の海域に息づく大自然をとらえたドキュメンタリー。熱帯雨林で無邪気に遊ぶマウンテンゴリラの子ども、乾期に水を求めて過酷な旅を続けるアフリカゾウの家族、灼熱の砂漠でサバイバルを繰り広げる爬虫類と昆虫、サンゴ礁がはぐくむカラフルな海生動物といった生き物たちの姿と、火山口の溶岩、巨大な滝、激しく逆巻く波のダイナミックな表情を映し出す。日本語版ナレーションは滝川クリステル。 今なお変化に富む自然環境と多様な希少動植物に恵まれた“魅惑の王国”アフリカに、4K3D用の最新カスタム機材で臨んだ映像が圧巻。小動物や昆虫のクローズアップは、観客自らが小動物になって向き合うかのような臨場感で、トカゲやヘビなどの爬虫類に寄ったショットでは、彼らに表情があるかのように見えてくるから不思議だ。特に技術向上の恩恵が実感できるのは、ハイスピード撮影とスロー再生による水滴、水流、波の美しさ。シャープにフォーカスが合ったパイプライン(波のトンネル)は絶品で、青く透き通って輝く宝石のよう。壮大さを演出しようとしてか、BGMが騒々しいのが玉にキズだが、大自然は人間の作為に頼らずとも十分に劇的で驚きに満ちていることを感じ取れるはずだ。 『ブルージャスミン』(5月10日公開)は、ケイト・ブランシェットが身勝手で痛々しい元セレブに扮する、ウッディ・アレン監督44作目のドラマ。ニューヨークの裕福な実業家ハル(アレック・ボールドウィン)と結婚し、上流階級の優雅な生活を満喫していたジャスミン(ブランシェット)は、結婚生活が破綻し全財産を没収されたため、サンフランシスコに住む妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)の質素なアパートに身を寄せる。庶民的な暮らし、騒々しいジンジャーの子どもと男友達、慣れない仕事にストレスを募らせ、現実逃避してブツブツと独り言をつぶやくほど不安定になったジャスミン。パーティーで洗練された外交官ドワイト(ピーター・サースガード)に出会ったことで、上流階級復帰の妄想を膨らませていく。 本作で第86回アカデミー賞主演女優賞を獲得したケイト・ブランシェット。自分語りばかりで人の話を聞かない冒頭から、酒と薬に依存しヨレヨレにになっていく中盤、いよいよ壊れてボサボサ髪と流れたマスカラとビッショリ脇汗が強烈な終盤まで、実際に身近にいたら黙って離れたくなるに違いない超迷惑なキャラクターを入魂の演技で表現した。自分勝手で薄っぺらいセレブに対する、アレン監督らしいシニカルな視点と辛らつなユーモアが爆笑を誘うが、格差社会の現実を突きつけられた苦さもじわりと残る。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ネイチャー』作品情報 <http://eiga.com/movie/79699/> 『ブルージャスミン』作品情報 <http://eiga.com/movie/79024/>(C) BBC Earth Productions (Africa) Limited and Reliance Prodco EK LLC 2014
ダイナミックなアクションが3Dと相性抜群!『アメイジング・スパイダーマン2』
今週取り上げる最新映画は、若い世代を中心に幅広い層が楽しめるアメコミヒーローアクションと、大人向けの恋愛ドラマ。家族、カップル、友人同士で出かける機会の増えるゴールデンウィーク、好みに合う作品をぜひ劇場でご覧いただきたい。 『アメイジング・スパイダーマン2』(公開中、2D/3D上映)は、マーベルのスーパーヒーロー・コミックを原作に、マーク・ウェブ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演でシリーズをリブートした『アメイジング・スパイダーマン』の続編。スパイダーマンとしてニューヨーク市民を守る活躍が続くピーター・パーカー。恋人グウェン(エマ・ストーン)とともに高校を卒業するが、彼女の亡き父との約束が原因で、2人は別れてしまう。そんな頃、感電事故に遭って高圧電流を操る怪人となったエレクトロ(ジェイミー・フォックス)や、難病を克服するために投与した物質のせいで醜く変貌したグリーン・ゴブリンが、次々にスパイダーマンに襲いかかる。 3Dで上映されることが多いスーパーヒーロー映画の中でも、臨場感や奥行き感、被写体がスクリーンから飛び出してくるギミックなど、3D映像の魅力を目いっぱい楽しめる点で屈指の本シリーズ。もともと、摩天楼の間を振り子の要領で移動する「スパイディー・スイング」のような高低差を活かしたダイナミックな動きが3Dと相性が良いことに加え、スパイダーマンの手首から放たれたクモの糸が観客側にグングン伸びてくるショットなど、これぞまさに3D! という映像が満載だ。中盤のエレクトロとの初対戦では、怪人が市街地で放った高圧電流により危機一髪な通行人多数をストップモーションで静止させ、その空間をスパイダーマンが俊敏に動き回って1人1人を救う様子を、移動する視点で見せていくという、『マトリックス』で有名になったバレットタイム技法を発展させたような名場面も。アクションだけでなく、恋愛映画『(500)日のサマー』のウェブ監督らしく、ピーターとグウェンの恋と運命を丁寧に描いている点も見逃せない。グウェン役のエマ・ストーンがアップになると、金髪の立体的なウェーブ、虹彩の奥行きまで感じられ、男性はもちろん女性までうっとりとロマンチックな気分に浸れそうだ。第1作を未見なら、DVD等で鑑賞してから本作に臨むとストーリーを一層楽しめるだろう。 『とらわれて夏』(5月1日公開)は、許されない愛を貫こうとする男女の姿を描く感動のドラマ。アメリカ東部の小さな町で、夫と離婚して13歳の息子ヘンリーと2人で暮らすアデル(ケイト・ウィンスレット)は、1987年9月初めのある日、買い物に出かけたスーパーで脱獄犯のフランク(ジョシュ・ブローリン)に遭遇。強要されるまま、フランクを車に乗せて帰り、自宅にかくまうことになる。フランクはケガをした脚が治れば危害を加えず出て行くと約束し、アデルの家事を手伝い、ヘンリーには野球を教えて過ごす。それぞれつらい過去を抱えたアデルとフランクは、ほどなく互いを強く求め合うようになる。その頃、町では警察によるフランク捜索の手が広げられていた。 J・D・サリンジャーと同棲したことでも知られる女性作家ジョイス・メイナードが2009年に発表した小説を原作に、『JUNO ジュノ』『ヤング≒アダルト』の若き天才、ジェイソン・ライトマン監督が映画化。2人の過去をフラッシュバックで徐々に明らかにする緻密な構成で、緊張をはらむ抑えた演技と演出により濃密な4日間の心の変化を表現した。過去にパートナーとの関係で失敗したことが心の傷になっている男女が、障害を乗り越えて新しい愛に生きようとする姿に、「罪のあがない」が必要と分かっていても思わず応援してしまうはず。過去の罪や悲劇からの再生が描かれると同時に、不安定な母を支える少年の成長物語としても味わい深い。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『アメイジング・スパイダーマン2』作品情報 <http://eiga.com/movie/78257/> 『とらわれて夏』作品情報 <http://eiga.com/movie/57489/>(C) 2013 CTMG. All Rights Reserved.
コリン・ファース×二コール・キッドマン×真田広之『レイルウェイ 運命の旅路』
今週取り上げる最新映画2本の舞台は、昭和の雰囲気が残るさびれた地方都市と、第2次世界大戦で日本軍が連合軍と戦い占領した東南アジア。それぞれの作品が持つ生々しさ、真に迫る力が、私たちが暮らす今ここに地続きでつながっていることを実感させてくれる。 『そこのみにて光輝く』(R15+/4月19日より全国ロードショー)は、『海炭市叙景』(10)で知られる函館市出身の小説家・佐藤泰志が自殺する1年前に発表した唯一の長編小説を、呉美保監督、綾野剛主演で映画化した作品。死亡事故が起きた採石場の仕事を辞め、海に近いある町で無為に過ごしていた達夫(綾野)は、仮釈放中の人懐こい若者・拓児(菅田将暉)とパチンコ屋で知り合う。ついて来るようせがまれ訪れた拓児の家には、寝たきりの父とその世話で疲弊する母、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。昼は塩辛の加工工場で働き、夜は体を売って一家を支える千夏に、達夫はひかれ、やがて互いを求め合う。だが、拓児に仕事を世話している植木農場の社長が、千夏に体の関係を続けるよう強要したことで、ある事件が起こる。 芥川賞をはじめ多くの文学賞で候補になりながら、受賞がかなわず自ら命を絶った“不遇の作家”佐藤泰志による1989年の小説を、現代の物語に置き換えた。格差社会の底辺でもがき、傷つきながら生きる若者たちの姿を、残酷なほど切実で、しかしその中にあたたかな眼差しを感じさせる映像を通じて描き出す。池脇千鶴のほとんど諦めかけた表情、たるんだ肉体のリアリティーに女優魂を実感。暗闇のようなどん底の人生で、苦しみと痛みを経たからこそ輝く「光」は、生前評価されなかった原作者へのレクイエムであると同時に、今の時代に悩めるすべての人へのエールでもある。 オーストラリア・イギリス合作の『レイルウェイ 運命の旅路』(4月19日公開)は、コリン・ファース、二コール・キッドマンという2人のオスカー俳優と、真田広之の共演で実話を映画化したヒューマンドラマ。第2次世界大戦時、英国軍兵士のエリックは、シンガポール陥落時に日本軍の捕虜になり、タイとビルマを結ぶ鉄道を建設現場で過酷な労働と拷問を体験。約50年後、当時の記憶に苦しめられながらも、愛する妻パティ(キッドマン)と静かに暮らしていたエリック(ファース)は、建設現場にいた日本人通訳・永瀬(真田)が今もタイで戦争体験を伝えていることを知る。トラウマに襲われ動揺するエリックだったが、過去と向き合うことを決意し、タイを訪れて永瀬に対面する。 原作は、元英国兵士が実体験をつづったノンフィクション作品。『英国王のスピーチ』(10)でアカデミー主演男優賞を獲得したコリン・ファースの、緊張をはらんだ静と動の演技が味わい深い。地味な髪型と控え目なメイクで脇役に徹しているニコール・キッドマンに好感。後半でようやく登場する真田広之は、出演シーンこそ短いが、捕虜酷使と拷問に立ち会った男の苦悩と贖罪を確かな存在感で印象的に表現している。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『そこのみにて光輝く』作品情報 <http://eiga.com/movie/78908/> 『レイルウェイ 運命の旅路』作品情報 <http://eiga.com/movie/78220/>(C)2013 Railway Man Pty Ltd, Railway Man Limited, Screen Queensland Pty Limited, Screen NSW and Screen Australia









