スカーレット・ヨハンソンが異色SF映画で初ヌード!『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』

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『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(c)Seventh Kingdom Productions Limited, Channel Four Television Corporation and The British Film Institute 2014/配給: ファインフィルムズ
 今週取り上げる最新映画は、スカーレット・ヨハンソンとマイケル・ファスベンダー、大人気スターがそれぞれ新境地を見せる英国発の2作品。ハリウッド製娯楽大作への出演とはまた違った魅力を放つ、2人の演技に要注目だ(いずれも10月4日公開)。  『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(R15+指定)は、スカーレット・ヨハンソンが地球の男たちを誘惑する妖艶なエイリアンを演じ、初のフルヌードも大きな話題のSFスリラー。セクシーな黒髪美女の外見に正体を隠した地球外生命体が、スコットランドの街で男たちを誘惑し、次々に捕食していく。だが、顔に障害を持つ孤独な男との出会ったことで、彼女に変化が訪れる。  監督は、『記憶の棘』(2004年)のジョナサン・グレイザー。「捕食」のシーンはシュールな映像で、SF的というよりはアート作品のよう。ストリングス系のシンセBGMが緊迫感をあおる。過去にもたびたびセクシーな役を演じてきたスカヨハが、初ヌードを披露する場として、小品の味わいのある異色SFを選んだことは意外な気も。ステレオタイプなキャスティングから「脱皮」したいという、願望のメタファーと読めなくもない。万人向けではないが、クセのある作品世界を楽しめる方にオススメしたい。  『FRANK フランク』は、イギリスでカルト的人気を誇った音楽コメディアン、故フランク・サイドボトムをモデルに、マイケル・ファスベンダーが終始かぶり物を脱がない男を演じたコミカルなドラマ。プロミュージシャンを夢見る青年ジョンは、ひょんなきっかけからインディーバンドに参加する。フロントマンのフランクは、巨大な張りぼてのマスクを常にかぶっていて、ステージ上はもちろん、普段の生活でも決して素顔を見せない謎めいた男だった。バンドがアイルランドで新作アルバムをレコーディングしている頃、ジョンがアップした演奏動画が反響を呼び、アメリカの音楽フェスに招かれることに。だが、これをきっかけにフランクが変調をきたし、バンド内の不協和音が高まっていく。  イギリス・アイルランド合作で、監督はアイルランド出身のレニー・アブラハムソン。ファスベンダーがハンサムな顔を「封印」し、ほぼ全編でマスクをつけて繊細に演じた。終盤の展開は、凡人には越えられない何かを見せつけられるようで、切なさも残る。オルタナ、アヴァンギャルド系バンドの物語は、音楽好きならストーリーとサウンドトラックで2倍楽しめるはず。『ザ・コミットメンツ』(91年)や『ONCE ダブリンの街角で』(06年)に連なる、音楽の素晴らしさと人生の哀しさを歌い上げる傑作がまた1つ誕生した。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』作品情報 <http://eiga.com/movie/57779/> 『FRANK フランク』作品情報 <http://eiga.com/movie/80487/>

ST専属モデル・中条あやみ、森川葵ら注目の美少女が勢ぞろい!『劇場版 零 ゼロ』

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(C)2014「劇場版 零~ゼロ~」製作委員会
 今週取り上げる最新映画は、山間の女学園を舞台に美少女たちが狙われるホラーと、同窓会を機に高校時代の封印された真実が明らかになるミステリー風味のドラマ。いずれも、女性たちの心理や感情が丁寧に描かれた邦画2作品だ。  『劇場版 零 ゼロ』(9月26日公開)は、人気ホラーゲーム『零』を『黒鷺死体宅配便』などで知られる作家・大塚英志がノベライズし、それを実写映画化した作品。山間の全寮制女学園で、アヤは「自分が死ぬ」という幻に襲われ自室に引きこもってしまう。そのころ学園内で、アヤそっくりの少女が写った写真を見た生徒が次々と失踪し、水死体で発見される。アヤは、クラスメイトのミチとともに、事件の真相を追う。  主演の2人、「Seventeen」専属モデルの中条あやみと森川葵をはじめ、主要キャストにモデル出身や子役時代から活躍する美少女たちがそろい、ガールズラブ的なムードも。特にアヤ役の中条あやみは、浮世離れした美しさとスタイルの良さでストーリーに説得力を与えている。この映画主演を機にファン層が一気に拡大しそうな新星だ。メガホンを取ったのは、『リアル鬼ごっこ』シリーズなど、ホラー作品を多数手がける女性監督・安里麻里。イタリアのクラシックなホラー映画を思わせるゴシックな雰囲気、緻密なストーリー構成、音声を繊細にコントロールした恐怖演出が印象に残る1本だ。  『太陽の坐る場所』(10月4日公開)は、直木賞受賞作『鍵のない夢を見る』などで知られる人気作家・辻村深月の同名ミステリー小説を、水川あさみと木村文乃の主演で映画化した作品。高校時代、クラスの女王として君臨していた響子(水川)と、物静かに彼女に寄り添っていた今日子(木村)。しかし、ある出来事をきっかけに2人の立場は逆転する。卒業から10年後、響子は地元地方局のレポーターとしてくすぶり、今日子は東京で人気女優として活躍していた。定期的に開かれていた同窓会に、響子が久しぶりに出席したことがきっかけで、封印されていた過去の真実が徐々に明らかになってゆく。幹事役の島津(三浦貴大)は、今日子にも出席してほしいと懇願するが……。  『ストロベリーショートケイクス』『スイートリトルライズ』など、女性の内面を繊細に描くことに定評のある矢崎仁司監督がメガホンをとった。水川あさみは、痛々しいこの役をよく受けたものだと感心させられる。木村文乃と高校時代の今日子役・吉田まどかは、雰囲気がよく似ているし、どちらも素晴らしい演技。原作小説と映画を比較すると、ラストを含め重要な要素がいくつか省略されており、映画だけ見るともやもやした疑問が残るかもしれない。ぜひ小説も読んで、それぞれの魅力を楽しんでいただきたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『劇場版 零 ゼロ』作品情報 <http://eiga.com/movie/80311/> 『太陽の坐る場所』作品情報 <http://eiga.com/movie/79724/>

市川由依の大胆濡れ場で話題沸騰中『海を感じる時』 行きずりの男とのSMプレイも……

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(c)2014「海を感じる時」製作委員会
 今週取り上げる最新映画は、スペースアドベンチャーにスーパーヒーローものの要素をミックスしたハリウッド製アクション大作と、30数年前に現役女子高生が多感な少女期の性を描いて「文学上の事件」と評された純文学の映像化作品。まるでタイプの異なる2本だが、どちらも70年代から80年代の雰囲気を伝えているというささやかな共通点もある(ともに公開中)。  『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2D・3D上映)は、見た目も性格もてんでバラバラな地球人とエイリアン4人の脱獄仲間が、銀河滅亡の危機に立ち向かう姿を描くマーベルコミックの映画化作品。9歳の時に庭先で宇宙船に拉致されたピーターは20年後、秘宝を求めて惑星間を渡り歩くトレジャーハンターになっていた。ある惑星で謎の球体「オーブ」を盗み出したピーターだったが、その球体は銀河を滅亡させる力を宿したパワーストーンであることが判明。さらに、宇宙の凶悪犯たちを収容する刑務所に投獄されてしまったピーターは、そこで一緒になったロケット、グルート、ガモーラ、ドラックスと協力して脱獄する。オーブを手に入れて宇宙を支配しようとする「闇の存在」がピーターらに迫った時、5人は“銀河の守護者たち”として命がけで戦う覚悟を決める。  同じくマーベルの『アベンジャーズ』をはじめ、特殊能力を持つ個性豊かなキャラたちがチームを組んで悪と戦うストーリーは数あれど、メンバーに毒舌のアライグマ=ロケットと、“歩く木”=グルートを含む、まるで統一感のない顔ぶれがまずユニーク。『アバター』で青い異星人を演じたゾーイ・サルダナは今回、緑の肌の暗殺者ガモーラをクールに演じた。クリス・プラット演じる主人公が、80年代に誘拐された際に携帯していたウォークマンで当時のミックステープを大人になっても愛聴しているという設定があり、70~80年代のヒット曲の数々がBGMとしても流れてレトロなムードを演出。最新の映像技術が使われているのに、どこか往年のSF冒険映画のような懐かしさを感じさせてくれる。監督のジェームズ・ガンは、宇宙生命体に人間が浸食されるSFホラー『スリザー』、なりきりヒーローの奮闘と悲哀を描くブラックコメディ『スーパー!』など、ジャンル映画を踏まえつつも個性的なひねりを加えるのがうまい映像作家。本作もまた、スペクタクルなスペースアドベンチャーに新鮮なサプライズと笑いと感動を盛り込んだ、幅広い世代が楽しめる1本となっている。  『海を感じる時』(R15+/配給・宣伝:ファントム・フィルム)は、1978年に現役女子高生が性を描いて話題を呼んだ中沢けいの文壇デビュー作を、安藤尋監督、市川由依主演で映画化した作品。高校1年生の恵美子(市川)は、授業をさぼって新聞部の部室にいると、3年生の先輩・洋(池松壮亮)から突然キスを迫られ、受け入れてしまう。恵美子は「前から好きだった」と告白するが、洋は「女の人の体に興味があっただけ。君じゃなくてもよかった」とつれない。それでも洋を追い求めて体を差し出し、何度も関係を重ねる恵美子。やがて洋は進学のため上京し、恵美子も後を追って東京の花屋に就職する。  市川由衣が28歳にして初のヌードに挑戦したことが大きな話題の本作。骨格が浮き出るような細身の肉体をさらし、池松壮亮との濃密なベッドシーンや、行きずりの男とのSMプレイなどを大胆に演じ切った。出演作がめじろ押しの新進俳優・池松も、一昔前の文学青年を思わせる複雑で繊細な役どころを好演。世間から理解されない特別な愛のかたちを通じて、少女が女へ、少年が男へと成長する過程と結末を、観客の多くは祈り見守るような気持ちで追うことになりそうだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』作品情報 <http://eiga.com/movie/77789/> 『海を感じる時』作品情報 <http://eiga.com/movie/80183/>

特撮ヒーロー“中の人”の悲哀と不屈の精神 唐沢寿明主演『イン・ザ・ヒーロー』

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『イン・ザ・ヒーロー』(C)2014 Team REAL HERO
 今週取り上げる最新映画は、「アクション映画は若者だけのものじゃない!」とばかりに、タフな中年の主人公が派手な立ち回りと真の男気を見せてくれる2本。年相応に漂う哀愁もまた、作品の滋味として楽しみたい。  『イン・ザ・ヒーロー』(9月6日公開)は、唐沢寿明が『20世紀少年』シリーズ以来5年ぶりに映画主演を務めたオリジナル作品。戦隊ヒーローなどの特殊スーツを着込んで演じるスーツアクターの渉(唐沢)は、25年のキャリアの中で一度も顔出しでの出演がかなわず、愛想を尽かした妻子には逃げられてしまう。後輩スーツアクターらの指導も行う渉は、成り行きで新人俳優・リョウ(福士蒼汰)のアクションを鍛えることに。渉の指導によりリョウはハリウッド製アクション大作のオーディションに合格するが、その映画の撮影で命を落としかねない危険なスタントを要求されたスター俳優が降板したことで、渉に急きょ役が回ってくる。  メガホンをとったのは、12月に『百円の恋』の公開も控える新鋭の武正晴監督。戦隊ヒーローものとチャンバラ活劇それぞれの魅力を、舞台裏のスタッフらの仕事ぶりもまじえ、ある意味メイキング映像に近い視点も合わせて見せてくれる。下積み時代に実際スーツアクターの経験があるという唐沢寿明は、『レスラー』でミッキー・ロークが演じた落ち目の中年プロレスラーのように、盛期を過ぎた悲哀と不屈の精神を説得力十分に演じきった。終盤のハイライトとなる超危険なスタントのシーンは、『蒲田行進曲』で平田満が体を張った「階段落ち」と並ぶほどの緊張感に満ちた名場面。一方で、夢を見続けることの残酷さにも言及しており、ほろ苦さも漂う、複雑な味わいのアクション娯楽作だ。  『フライト・ゲーム』(9月6日公開)は、『アンノウン』のリーアム・ニーソンとジャウム・コレット=セラ監督が再びタッグを組んだサスペンスアクション。航空保安官のビル(ニーソン)は、いつものように警備のため国際線の旅客機に搭乗。だが離陸直後、ビルの携帯電話に「1億5000万ドル送金しなければ、20分ごとに搭乗者を殺す」との匿名の脅迫メールが届く。予告通りの時間に1人目の犠牲者を出してしまい、ビルは乗客を拘束して荷物や携帯電話を調べるが、手がかりを見つけられない。犠牲者が続く中、地上での捜査で犯人が指定した銀行口座がビルの名義だと判明。ビル自身が犯人ではないかと上司や乗員乗客から疑われ、孤立無援になってしまう。  旅客機という閉ざされた空間で起きる、姿の見えない犯人によるハイジャック事件という着想がいい。1人また1人と乗客や乗員が殺されていく恐怖に、状況がめまぐるしく変化することで高まるサスペンス。殺しの手口も実行犯も分からないケースもあれば、予想外の人物が手を下すケースもあり、緻密に構成された脚本とスピーディーな演出で観客を飽きさせない。さらに終盤には、機内に掛けられた爆弾が爆発するかしないか、旅客機が墜落するのかどうかというスリルが加わり、迫力満点のVFXも相まって一層盛り上がる。リーアム・ニーソンは『96時間』の大ヒット以来、同作の続編、『アンノウン』といった具合に、強大な犯罪組織や陰謀に単身立ち向かうスーパー中年オヤジがハマり役になっているため、既視感がないわけではないが、工夫すればこの路線でまだまだいけることを証明した快作ともいえるだろう。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『イン・ザ・ヒーロー』作品情報 <http://eiga.com/movie/79845/> 『フライト・ゲーム』作品情報 <http://eiga.com/movie/79743/>

続編あり!? リュック・ベッソン×スカーレット・ヨハンソン『LUCY ルーシー』

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『LUCY ルーシー』(c)2014 Universal Pictures
 今週取り上げる最新映画は、リュック・ベッソンと園子温という、世界中の映画ファンを魅了してやまない人気監督が手がけた、タフなヒロインが躍動する新感覚エンターテインメント2本。常に時代を見据え、さらにその先を切り開く天才2人のストーリーテリングと映像センスを存分に楽しめる作品だ。  『LUCY ルーシー』(公開中/PG12)は、ベッソン監督、スカーレット・ヨハンソン主演のサイキックアクション。旅先の台湾で、運悪くマフィアの闇取引に巻き込まれてしまった普通の女性ルーシー(ヨハンソン)は、高い覚醒効果をもたらす非合法の薬物を腹部に埋め込まれ、運び屋として国外へ送り出されそうになる。だが、見張り役から暴行を受けたことで、薬物が体内に漏れ出すアクシデントが発生。普通の人間なら10%しか機能していないとされる脳の機能が徐々に覚醒し、それに伴い超人的な力を高めていくルーシーは、マフィアの計画を阻止するために行動を起こす。  『ニキータ』『ジャンヌ・ダルク』といった作品群で戦うヒロインを描き続けてきたベッソン監督と、アメコミヒーロー物『アベンジャーズ』シリーズのブラック・ウィドウ役で切れのいいアクションを披露しているヨハンソンによる、初のタッグが見事にハマッた。脳が覚醒するにつれて知覚や身体能力が並外れて高まり、驚異的なパワーでマフィアの男たちをなぎ倒していくさまは壮観。ベッソン監督得意のカーチェイスも、目一杯の工夫で楽しませてくれる。解釈の余地を残したエンディングも含め、興行成績次第では続編もあるのでは? と期待させる見どころたっぷりの快作だ。  『TOKYO TRIBE』(8月30日公開/R15+)は、漫画家・井上三太の代表作『TOKYO TRIBE2』(祥伝社コミックス)を、園監督が実写映画化。近未来のトーキョーで、さまざまなトライブ(族)に属する若者たちが、暴力で街を支配しながらお互いの縄張りを守っていた。そんな中、ブクロWU-RONZの勢力拡大を進めるメラと、ムサシノSARUの熱血漢・海(カイ)の2人を中心に、すべてのトライブを巻き込む一大抗争が勃発。高い戦闘能力を持つ謎の女・スンミも加わり、トーキョーを制する壮絶なバトルが繰り広げられる。  トライブに属する若者たちの抗争をラップ・ミュージカルで描くという着想がまずユニークで、作品の世界観をうまく表現している。海役で映画初出演を果たした新進ラッパーのYOUNG DAISは、確かな存在感と印象的な声で、佐藤隆太、染谷将太、窪塚洋介ら豪華な共演陣にも引けを取らない。スンミ役の清野菜名は、清純なルックスと裏腹に、パンチラしまくりの過激なアクション、ヌードもありの大盤振る舞い。日本では数少ない本格アクション女優として、今後の大成が期待される。コミック原作をミュージカル仕立てで、という点では三池崇史監督の『愛と誠』と共通するが、懐古風味だった同作に比べ、未開のフィールドを切り開いて新しい世界を感じさせてくれるという点では『TOKYO TRIBE』が上。常に挑戦を続ける園監督と、同時代を生きる喜びをかみしめたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『LUCY ルーシー』作品情報 <http://eiga.com/movie/80434/> 『TOKYO TRIBE』作品情報 <http://eiga.com/movie/78511/>

あの「四谷怪談」が現代ホラーに! 市川海老蔵×柴咲コウ×三池崇史『喰女 クイメ』

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(C)2014『喰女-クイメ-』製作委員会
 今週取り上げる最新映画は、古典の怪談と現代のホラーを巧みに接続した意欲作と、最先端のVFXで巨大竜巻を体感させてくれるディザスタームービー。ゾクゾクくるスリルと間近に迫る恐怖で、ほどよく身も心も冷やしてくれる残暑向きの2作品だ。  『喰女 クイメ』(8月23日公開)は、歌舞伎狂言「東海道四谷怪談」をモチーフに、歌舞伎俳優の市川海老蔵による企画・主演、三池崇史監督で描くサスペンスホラー。俳優の浩介(市川)は、恋人のスター女優・美雪(柴咲コウ)の推薦により舞台「真四谷怪談」の主役・伊右衛門役に抜擢され、お岩役の美雪と共演することになる。だが、若い共演女優(中西美帆)との浮気を繰り返す浩介に、美雪の精神状態は不安定になり、やがて2人の愛憎と確執は舞台と現実との境界を超えていく。  日本の代表的な怪談としてよく知られたお岩と伊右衛門の悲しくも恐ろしい物語を、それぞれを演じる美雪と浩介の私生活での関係に重ね合わせることで、四谷怪談のエッセンスが現代の恋愛関係にも通じる普遍性と魔力を持つことを見事に証明してみせた。柴咲の鬼気迫る演技と特殊メイクによる無惨な面相が圧巻。舞台のリハーサルが進行するスタジオと、マンションの室内で9割方ストーリーが進行するため、重苦しい閉塞感が全編に漂ってサスペンスを高めている。男女の不和が生む根源的な恐怖を、古今のホラー映画の記憶も取り込みながら表現した本作は、三池監督らしい独創性と過激な描写を楽しめる一本だ。  『イントゥ・ザ・ストーム』(公開中)は、観測目的で巨大竜巻を追う研究者たちと、脅威に直面する人々の姿を描いたディザスター映画。ドキュメンタリー映像スタッフと気象学者が組んだ竜巻ハンターの一行は、最先端の観測機器と複数のカメラを装備した車で捜索の末、桁外れに巨大な竜巻が発生することを察知し、アメリカ中西部の小さな町シルバートンに向かう。その日、地元の高校では卒業式が行われており、教師と生徒らが校庭で集まっている最中に天候が急速に悪化。さらに発生した複数の竜巻が合体して、直径3200メートル、秒速135メートルという未曾有のメガ竜巻がシルバートンを直撃する。  スター俳優を一切使わない代わりに、予算の大部分を竜巻のVFXと屋外セットに投じたのであろう驚異の映像が最大の見どころ。車や家はもちろん、果ては空港の旅客機までも空に巻き上げるモンスター竜巻に度肝を抜かれる。瓦礫や崩れた家屋、吹き飛ばされた車など、被災後の荒れ果てた街並みのリアルさもあ然とするほど。一部のシーンは、実際にハリケーン被害の地域で撮影したのでは? と思わせるくらい、スケールも状況も圧倒的だ。本作の工夫は、ドキュメンタリースタッフの手持ちカメラに加え、車載カメラ、高校生が回すビデオカメラ、携帯電話のカメラなど複数名によって撮影された一人称視点映像を組み合わせて、モキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)風に仕上げたこと。この仕掛けがあることで、観客はまさにストームへ「イントゥ」する(中に入る)瞬間を臨場感いっぱいに体験できる。映画館のスクリーンで見るにふさわしい、スリリングなディザスター映像に大興奮の快作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『喰女 クイメ』作品情報 <http://eiga.com/movie/78691/> 『イントゥ・ザ・ストーム』作品情報 <http://eiga.com/movie/78096/>

世界から注目を集める新人女性監督、衝撃のデビュー作『FORMA』はイヤミス?

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『FORMA』(c)kukuru inc.
 今週取り上げる最新映画は、日本の新しい才能をスクリーンで堪能できる邦画2本。テレビでおなじみの若手スターの新境地や、すでに海外で高い評価を獲得している女性新人監督の衝撃のデビュー作を、ぜひ映画館で確かめていただきたい(いずれも公開中)。  『ホットロード』は、1980年代に「別冊マーガレット」(集英社)で連載された紡木たくの人気少女コミックを、NHKの朝ドラ『あまちゃん』の能年玲奈と三代目J Soul Brothersの登坂広臣の主演で実写化した純愛映画。  母親と2人で暮らす14歳の和希(能年)は、自分が望まれて生まれた子ではないことに心を痛めていた。ある夜、級友に誘われて行った湘南で、暴走族「Nights」の次期リーダー春山(登坂)に出会い、不良の世界に戸惑いながらも居場所を求めるように。春山から告白された和希は、急速に春山にひかれていく。  監督は、『ソラニン』『僕等がいた』『陽だまりの彼女』と、青春映画を得意とする三木孝浩。能年は『あまちゃん』の純朴なヒロインから打って変わり、茶髪にロングスカート、親に悪態をつき男を殴る不良少女を懸命に演じた。登坂も映画初出演ながら、シャープなルックスと情熱を秘めたクールな表情がスクリーンによく映える。10代の孤独と不安、世界が広がる感覚、そして運命的に出会った相手との鮮烈な恋を描く本作は、同世代の若者からは共感を、また当時を知る大人からは懐かしさをもって支持されることだろう。  『FORMA』は、本作でデビューを飾る坂本あゆみ監督が、2人の女性が互いに憎しみを募らせ心の闇を深めていく過程を描いたサスペンス。  会社員の綾子(梅野渚)はある日、高校の同級生だった由香里(松岡恵望子)と偶然再会し、自分と同じ職場で働くよう由香里を誘う。だが、綾子は由香里に公私で理不尽な態度をとり、由香里は次第に追い詰められていく。積年の思いを抱く綾子はある夜、由香里を会社の倉庫に呼び出す。  昨年の東京国際映画祭、今年のベルリン国際映画祭での受賞をはじめ、すでに内外で高い評価を得ている本作。淡々とした語り口で人間の闇の深さをえぐり出す作風は、カンヌ国際映画祭で最高賞受賞を2度受賞した巨匠ミヒャエル・ハネケの作品群を思わせる。綾子、由香里、そして由香里に接近する男・修(ノゾエ征爾)の順にそれぞれの視点で描き直すことで、張りめぐらせた伏線を回収していく緻密な構成が見事。湊かなえの小説『告白』に代表されるイヤミス(嫌な後味のミステリー)の、映画版といったところか。  世界から注目を集める女性監督の1人になった坂本のデビュー作は、コアな映画ファンの口コミから徐々に人気が高まりそうだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ホットロード』作品情報 <http://eiga.com/movie/79355/> 『FORMA』作品情報 <http://eiga.com/movie/79260/>

ハリウッドの若手注目女優が未来世界のジャンヌ・ダルクに! SF大作『ダイバージェント』

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『ダイバージェント』(C)2014 Summit Entertainmet, LLC. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、近未来の管理社会でヒロインが“異端者”としての使命に目覚めていくハリウッド製SF大作と、孤独な女子高生とモテ男子のピュアな恋愛を描く邦画の2本。不安と迷い、決断と行動といった揺れ動く思春期を映像で疑似体験できる、夏にふさわしいフレッシュな作品だ(いずれも公開中)。  『ダイバージェント』は、全米ベストセラーのヤングアダルト小説シリーズを、『ファミリー・ツリー』でジョージ・クルーニーの娘を演じたシャイリーン・ウッドリーの主演で映画化したSFアクション。大規模な戦争から100年後、全人類は性格別に5つの共同体(勇敢、無欲、平和、高潔、博学)に分かれて暮らすことで平和を保っていた。16歳になり選択の儀式を控えたトリス(ウッドリー)は、性格テストの結果、抹殺対象である「異端者=ダイバージェント」と判定される。結果を隠して「勇敢」を選択したトリスは、厳しい訓練で徐々に戦闘能力を高めていくが、大がかりな異端者狩りの陰謀が動き出し、その身に危険が迫る。  現在とは異なる区分けの共同体で人々が管理された未来世界に、革命のヒロインとしての宿命を背負った主人公という設定は、やはりヤングアダルト小説から映画化された『ハンガー・ゲーム』と多く共通する。ただし本作のトリスは、「無欲」出身で運動能力も人並み、それでも過酷な訓練に必死で取り組むうちに次第に強くなっていく過程が見る者の共感を誘う。すでに米国で絶大な人気を誇るシャイリーン・ウッドリーと、彼女を指導する「勇敢」のリーダー役、テオ・ジェームズの熱のこもった演技が、4部作シリーズの第1弾としてやや説明傾向の強い本作に活気を与えている。初の悪役に挑むケイト・ウィンスレットのほか、アシュレイ・ジャッド、マギー・Qと共演陣も豪華だ。  『好きっていいなよ。』は、葉月かなえが月刊少女漫画誌「デザート」で連載中の原作を、『桜蘭高校ホスト部』の川口春奈と、NHK朝ドラ『あまちゃん』でブレークした福士蒼汰の主演で実写化した青春恋愛映画。友人も恋人も作らずに生きてきた16歳のめい(川口)はある日、高校一のイケメン・大和(福士)にケガをさせてしまう。だが、大和はめいを気に入り、一方的に友達宣言した上、めいをストーカーから救うためキスをする。モデル事務所からスカウトされるほどの大和に対し、釣り合わないと感じながらも、同級生らとの交流を通じて少しずつ成長するめい。さらには恋のライバルも現れて、めいの心は大きく揺れる。  原作漫画は、コミック史上最速で100万部突破、累計540万部超という“恋愛バイブル”。女性ならではの繊細な描写に定評のある、『森崎書店の日々』の日向朝子が監督・脚本を務めた。こちらも主演カップル2人の好演が光る。特にキスのシーンはいろいろなパターンがあり、ロマンティックに撮れている。心情の変化を映すファッションも見どころで、原作のファンや若い世代の観客を中心に支持を集めそうだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ダイバージェント』作品情報 <http://eiga.com/movie/78223/> 『好きっていいなよ。』作品情報 <http://eiga.com/movie/78995/>

日本のラノベがトム・クルーズ主演でハリウッド実写化『オール・ユー・ニード・イズ・キル』

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『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BMI)LIMITED
 今週取り上げる最新映画は、日本の小説とヨーロッパの童話をそれぞれ原作に実写化したハリウッド大作。大スター、壮大な世界観、3Dを含む最新映像技術で、ケレン味たっぷりのビジュアルを楽しめる2作品だ(ともに公開中)。  『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2D/3D上映)は、桜坂洋のSF小説「All You Need Is Kill」をトム・クルーズ主演でハリウッド実写化したアクション大作。エイリアンの地球侵略が始まってから5年後の世界で、実戦経験皆無の兵士ケイジ(クルーズ)は、最前線に送られるもあっけなく戦死。だが、時間をリセットする能力を持つエイリアンと接触したことで、死ぬたびに戦闘が始まる前の時間に戻るというタイムループに陥る。かつて同じ体験をした女性兵士リタ(エミリー・ブラント)に導かれ、繰り返される戦いと死の中で戦闘スキルを高めたケイジは、劣勢な戦況を変える糸口をつかむ。  死=ゲームオーバーのたびにスタート地点に戻るが、繰り返される敵の動きと攻撃を読めるようになり、次第に強い戦士=プレイヤーになっていく展開は、シューティングアクションゲームの分かりやすいメタファーになっている。同じシナリオがリピートされるたび主人公がスキルアップする設定という点では、SFサスペンス『ミッション:8ミニッツ』やラブコメ『恋はデジャ・ブ』といった過去作と見比べるのも楽しい。エミリー・ブラントがジャンヌ・ダルクをイメージさせるタフなヒロイン役で魅力全開。目まぐるしい展開の中にも、恋愛要素やユーモラスな場面がちりばめられ、刺激に満ちた娯楽大作に仕上がっている。  『マレフィセント』(2D/3D上映)は、よく知られるヨーロッパの童話『眠れる森の美女』に、新たなエピソードと解釈を加えた実写化作品。人間界と妖精界が隣り合う場所で、青年ステファンと美しい妖精マレフィセントは恋に落ちる。だが王位を狙うステファンの裏切りで翼を失ったマレフィセントは、王女の誕生祝賀パーティーに現れ、オーロラ姫に「16歳の誕生日までに永遠の眠りに落ちる」という呪いをかける。  現在39歳、“美魔女”の代表格と言えそうなアンジェリーナ・ジョリーが、特殊メイクでとがったほお、大きな角をつけて邪悪な妖精を熱演。異形の外見だけでなく、絶望の果ての怒りと憎悪、強い意志、深い母性愛といった極めて人間らしい表情も印象的だ。オーロラ姫を演じるのは、『SUPER8/スーパーエイト』『幸せへのキセキ』の頃よりだいぶ大人びてきたエル・ファニング。キモカワなクリーチャーたちも楽しさいっぱいだ。有名な原作から筋書きを大きく変えて先を読ませない工夫も含め、大人の観客の心に響く感動作になった。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』作品情報 <http://eiga.com/movie/77676/> 『マレフィセント』作品情報 <http://eiga.com/movie/57267/>

人工知能は人間を超えるのか――ジョニー・デップ主演『トランセンデンス』

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『トランセンデンス』(c) 2014 Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
 人工知能(AI)という言葉に聞き覚えがなくても、スマートフォンの音声アシスタントを日常的に使っていたり、自走式の掃除ロボットなら知っているという人は多いはず。そんなAIをテーマにした2本の映画が、くしくも日本で同時期に封切られる(いずれも6月28日公開)。近い将来に起こり得る危機的状況や悲喜劇を通じて、「人間ってなんだろう?」とあらためて問いかけてくる作品たちだ。  『トランセンデンス』は、ジョニー・デップ主演によるSFサスペンスアクション。人工知能を研究する天才科学者ウィル(デップ)は、反テクノロジーのテロリストに銃撃されるが、死ぬ間際にその頭脳は、共同研究者で妻のエヴリン(レベッカ・ホール)によってスーパーコンピュータにインストールされる。コンピュータの中でよみがえったウィルの意識は、ネットワークを通じて膨大な知識と情報を吸収し、際限なく進化。金融市場にアクセスして得た資金でハイテク研究所を建設し、再生医療を発展させて不死身の兵士を作り出すまでになる。  製作総指揮は『ダークナイト』シリーズや『インセプション』のクリストファー・ノーラン。主要なノーラン作品で撮影監督を務めてきたウォーリー・フィスターが、本作で監督デビューを果たした。主人公が早々に死んでしまうので、ジョニデのファンならずとも不安になるが、驚くべき方法で復活を果たすのでご心配なく。AIだけでなく、金融取引を行うプログラム、再生医療、ナノロボットなど現実に応用が進んでいるさまざまな先端技術を巧みにストーリーに盛り込んでおり、人間が制御できなくなるハイテクの恐怖を分かりやすいビジュアルで警告する側面も。後半で派手なアクションを見せるために、やや荒唐無稽な筋立てになる点は評価が分かれそうだが、知的好奇心を刺激されつつスリリングな活劇も楽しめる快作だ。  『her/世界でひとつの彼女』は、『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』の奇才スパイク・ジョーンズ監督が手がけた近未来ラブストーリー。手紙の代筆を職業とするセオドア(ホアキン・フェニックス)は、幼馴染みだった妻キャサリン(ルーニー・マーラ)と別れ、傷心の日々を送っていた。そんな時、最新のAIが搭載されたOSに興味を持ち、自宅PCとモバイル端末にインストール。利用者に最適化されたOS「サマンサ」の魅力的な声にひかれ、セオドアは“彼女”と過ごす時間に幸せを感じ始める。  ジョーンズ監督が長編で初めて単独で脚本も手がけ、今年のアカデミー賞で脚本賞を受賞。ナイーブな「こじらせ男子」の恋物語は、独創的な映画を撮り続ける監督の世界観にぴったりだ。明るくセクシーなサマンサの声は、スカーレット・ヨハンソンが担当。リリカルな映像とドビュッシー風ピアノ曲のBGMで、岩井俊二監督作品に近いテイストも非人間の存在に恋してしまうシチュエーションをユーモラスに描きつつ、普遍的な恋愛の真理、存在と関係性という哲学的命題にも挑んだ意欲作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『トランセンデンス』作品情報 <http://eiga.com/movie/79708/> 『her/世界でひとつの彼女』作品情報 <http://eiga.com/movie/79523/>