今週取り上げる最新映画は、ブラピが第2次大戦の戦車乗りに扮するハリウッド製アクションと、人間の顔が瞬時にモンスターに変形するVFXが話題の和製ホラーアクション。どちらも衝撃的な映像に目を奪われるが、生きることの意味や仲間・家族の絆を描く人間ドラマの要素も見逃せない。 『フューリー』(公開中)は、ブラッド・ピットの主演・製作総指揮で第2次世界大戦下の戦車バトルを描く戦争アクション。1945年4月、ドイツへ侵攻する連合軍の戦車部隊に、「フューリー」(激しい怒り)と命名されたM4中戦車シャーマンを指揮する米兵ウォーダディー(ピット)がいた。歴戦でチームワークと信頼を築いてきた3人の乗員に、戦闘経験のない新兵のノーマンも副操縦手として加わり、凄惨な戦場を進んでいく。敵の奇襲攻撃に応戦し、ドイツ兵が立てこもる村を制圧した後で、ウォーダディーは戦略の要所となる十字路を確保せよとの新たな任務を受ける。5人が乗ったフューリーは、ほかの3輌の戦車と目的地へ向かう途中、当時世界最強と言われたドイツ軍のティーガー戦車に遭遇する。 監督・脚本は『エンド・オブ・ウォッチ』(2012年)、『サボタージュ』(公開中)のデビッド・エアー。映画業界に入る前は米海軍の潜水艦乗りだった経験を生かし、ストーリーから兵器、兵士たちのドラマまで、戦争のリアリティーに徹底的にこだわった。自走する本物のティーガー戦車が映画史上初めて使用されるなど、軍事マニアを歓喜させるポイントもたくさん。ウォーダディーの的確な判断と指揮の下、フューリーの乗員たちが連携してティーガーに果敢に立ち向かうシークエンスでは、「レッド・オクトーバーを追え!」の潜水艦の攻防のような兵力・知力・胆力を総動員したバトルが展開する。 ただし連合軍の勝利を賛美する映画ではなく、被弾した兵士の胴体や手足が吹っ飛んだり、兵士の遺体を戦車のキャタピラが踏みつぶして進む悲惨な光景もしっかり描き出す。新兵のノーマンが、投降して命乞いをするドイツ兵を射殺するよう命じられ、やがて“殺人マシン”に変わっていく姿にもどこか悲壮感が漂う。勧善懲悪でも戦いの美化でもなく、「戦争とはこういうものだ」と提示する本作は、戦争の記憶が失われつつある日本でも観るべき価値のある力作だ。 『寄生獣』(11月29日公開)は、80~90年代に連載された同名人気コミックを、VFX畑出身の山崎貴監督が実写映画化した2部作の前編。人間の脳を乗っ取って肉体を操り、ほかの人間を捕食する謎の寄生生物=パラサイトが、人知れず増殖していた。高校生の新一(染谷将太)もパラサイトに襲われるが、脳を奪えず右手に寄生した「ミギー」と共生することに。パラサイトたちが静かに勢力を拡大する中、一部のパラサイトが暴走し、新一とミギーも争いに巻き込まれていく。 先に映像化権を獲得していた米配給会社が断念し、連載終了から約20年後にようやく日本での実写映画化が実現した。その間に邦画のVFX技術が進歩したおかげで、顔がパックリ割れて鋭利な刃物のように変形する衝撃的なビジュアルが見事なクオリティーで描かれており、原作ファンも長年待ったかいがあったというもの。深津絵里や東出昌大ら、俳優たちの整った顔が一瞬でおぞましいモンスターに変形する様は強烈だ。染谷将太の冷めたルックスも、ミギーとの奇妙な共同生活を余儀なくされる主人公にぴったりで、相棒のミギーは、阿部サダヲが声とパフォーマンス・キャプチャーによる動きを担当している。 パラサイトと人間が殺し合うというエキセントリックな設定の中に、生きることの意味、共生とは、親子とはといった普遍的なテーマを問う作品でもある。浅野忠信、北村一輝らの暴れぶりが期待できそうな完結編(来年4月公開予定)も今から楽しみだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『フューリー』作品情報 <http://eiga.com/movie/80328/> 『寄生獣』作品情報 <http://eiga.com/movie/79555/>『フューリー』(C)Norman Licensing, LLC 2014
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クリストファー・ノーラン4年ぶりのオリジナル作品は、自身初の宇宙SF『インターステラー』
今週取り上げる最新映画は、VFXを駆使した宇宙の描写と人間ドラマが見事に融合したハリウッド製SF超大作と、ヘタレなロッカーがカリスマアイドルと出会って変わろうともがく姿を描いた和製ロックムービー。スケール感はまるで違うが、キャラクターや映像を通じて、スタッフの映画製作に注ぐ情熱がしっかり伝わってくる作品たちだ(いずれも11月22日公開)。 『インターステラー』は、『メメント』(2000年)や『ダークナイト』(08年)、『インセプション』(10年)のクリストファー・ノーラン監督による4年ぶりのオリジナル作品で、自身初となる宇宙SF。近未来、地球規模の環境悪化と食糧難により人類の滅亡が迫る中、NASAは太陽系外で新天地となり得る惑星を探す極秘ミッションを進めていた。経験を買われた元パイロットのクーパー(マシュー・マコノヒー)は、愛する家族に「必ず帰る」と約束し、先遣隊が送ってきたデータを頼りにブランド博士(アン・ハサウェイ)らと惑星間飛行へ旅立つ。 ノーラン監督は理論物理学者キップ・ソーンの協力を仰ぎ、時空の歪みやブラックホールなど最先端の宇宙物理学の理論を反映させつつ、親子や男女の絆と愛を織り込んで壮大な冒険物語を構築。巨匠スタンリー・キューブリックがSF作家アーサー・C・クラークと組んだSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』(68年)に、ストーリー面でも映像面でも比肩する傑作を完成させた。 共演陣もジェシカ・チャステイン、マイケル・ケイン、ケイシー・アフレックと演技派がそろい、短い出演ながらマット・デイモンも強い印象を残す。『2001年…』のHAL9000や『エイリアン2』(86年)のアンドロイド「ビショップ」を想起させるAIロボットのTARSや、宇宙飛行士の会話に出てくる「闇の奥」(『地獄の黙示録』の原作小説の題名でもある)など、映画マニアを喜ばせる仕込みもたくさん。映像表現の現在の到達点ともいえる宇宙空間の描写とスペクタクルな惑星間飛行のシーンを体感するためにも、大スクリーンでの鑑賞を強くオススメしたい。 『日々ロック』は、榎屋克優の同名コミック(「週刊ヤングジャンプ」で連載中)を、『SR サイタマノラッパー』(09年)の入江悠監督が映画化した青春ムービー。サエない高校時代の仲間とロックバンドを組んだ日々沼は、ビッグになることを夢見て上京する。ライブハウスで住み込みで働きながら、演奏活動を続けていたある日、ステージに酔った女が乱入して「雨あがりの夜空に」を熱唱。彼女は、デジタルな演出でカリスマ的人気のアイドル・咲だった。咲から「私に曲を書いて」と依頼されたことで、日々沼のロック人生が大きく変わっていく。 映画・テレビドラマの出演が相次ぐ若手注目株・野村周平が、コミュニケーション能力に問題を抱えながらもギターを持つとパワフルに豹変する、ロックバカな主人公を熱演。絶叫系のボーカルは好き嫌いが分かれそうだが、丸裸でギターを抱える姿にロッカーとしての説得力を感じさせる点はさすが。 咲役の二階堂ふみも、大ステージでのアイドルオーラあふれるパフォーマンスから、壊れそうに弱い少女の素顔をのぞかせる場面まで、振り幅の広い好演が光る。ビジュアル系バンドとのライバル関係をはじめ、大ネタ小ネタが次々に繰り出されて笑いっぱなしだが、青春のほろ苦さと夢の切なさと友情の熱さもしっかり描かれた快作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『インターステラー』作品情報 <http://eiga.com/movie/78321/> 『日々ロック』作品情報 <http://eiga.com/movie/80063/>『インターステラー』(C)2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
『アメリ』監督4年ぶりの新作は自身初の3D 天才少年の旅を描く『天才スピヴェット』
今週取り上げる最新映画は、宮沢りえが不倫をきっかけに横領に手を染める難役に挑んだ7年ぶりの映画主演作と、女性を中心に高い支持を集めた『アメリ』(2001年)の監督が天才少年の旅を描く自身初の3D作品。どちらの主人公も特殊な「冒険」に踏み出すが、恋愛や家族のあり方、現実との向き合い方という普遍的なテーマが込められた2本だ(共に11月15日公開)。 『紙の月』は、ベストセラー作家・角田光代の同名小説を、『桐島、部活やめるってよ』(12年)の吉田大八監督が映画化したサスペンスドラマ。夫と2人で暮らす梨花(宮沢りえ)は、銀行の契約社員として外回りの営業を任され、丁寧な仕事ぶりで顧客から信頼を得、職場でも評価されていた。多忙な夫(田辺誠一)との希薄な結婚生活にむなしさを感じていた頃、年下の大学生・光太(池松壮亮)と出会った梨花は、外回りの帰りに化粧品を買おうとして代金が不足し、顧客の預金に手をつけてしまう。最初は1万円を借りただけのつもりが、次第にエスカレートし、顧客の預金証書を偽造する方法で横領を繰り返すようになる。 まじめな兼業主婦の銀行員が若い男との道ならぬ恋をきっかけに、顧客から預かった金を着服し転落していく過程を、宮沢りえが切なく哀しく透明感漂う演技で熱演。行内での横領の手口が緊張感たっぷりに描かれており、観客は主人公に感情移入してハラハラしながら眺めることになる。不倫愛の破局と犯罪の発覚を予感しつつも、ヒロインの幸せを願ってしまうはず。先月開催された東京国際映画祭では、コンペ部門で最優秀女優賞と観客賞を受賞しており、宮沢りえと吉田監督の評価が海外でも高まることを期待したい。 『天才スピヴェット』(2D/3D上映)は、日本でも大ヒットした『アメリ』のジャン=ピエール・ジュネ監督による4年ぶりの新作。米北西部モンタナの牧場で、発明が趣味の天才少年スピヴェットは、カウボーイの父、昆虫学者の母、アイドル志望の姉と一緒に暮らしている。だがスピヴェットの弟の死で、家族の心はバラバラになっていた。そんな折、スミソニアン博物館に送った発明が権威ある科学賞を受賞。スピヴェットは授与式に出席するため、家族に黙って家を後にし、貨物列車で米東部シカゴを目指して大陸横断の旅に出る。 原作は、ライフ・ラーセンの冒険小説『T・S・スピヴェット君 傑作集』(早川書房刊)。ジュネ監督は自身初となる3D映画で、原作本にある人物画やスケッチなどの挿絵を実写映像から浮遊するように重ねるなど、創意工夫あふれる立体的な映像で表現した。昆虫の標本などの3D描写も絶品で、ウェス・アンダーソン監督の箱庭世界に通じる映像体験を味わえる。主演のカイル・キャトレットは、これが映画初出演ながらピュアで繊細な演技で魅了する。繊細なスピヴェットの冒険と葛藤と成長に触れつつ、家族の関係性と愛情に思いをめぐらせ、胸が温かくなる感動作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『紙の月』作品情報 <http://eiga.com/movie/79885/> 『天才スピヴェット』作品情報 <http://eiga.com/movie/79745/>『天才スピヴェット』(C) EPITHETE FILMS - TAPIOCA FILMS - FILMARTO - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA
大胆濡れ場で“元天才子役”から脱却なるか――安達祐実が体当たりで挑む話題作『花宵道中』
今週取り上げる最新映画は、肉体派アクションスターのシュワちゃんが複雑な人物造形に挑んだサスペンスと、天才子役の面影がいまだ残る安達祐実が大胆な濡れ場を見せる時代劇。お馴染みの2人が新境地を切り拓く意欲作であり、時の流れを感じさせる2作品でもある。 『サボタージュ』(R15+/11月7日公開)は、麻薬取締局(DEA)をめぐる不正と連続殺人の謎を描く、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のサスペンスアクション。DEA特殊部隊を率いるベテラン捜査官ジョンは、8人の屈強な部下とともに麻薬組織のアジトに突入し、巨額の闇資金の一部を山分けするつもりで現場に隠す。だがその夜、チームが現場に戻ると、隠したはずの札束が消えていた。やがてチームは謎の猟奇連続殺人の標的となり、1人また1人と惨殺される中、メンバー間に疑心暗鬼が募っていく。 監督は、犯罪多発地域でパトロールする警察官の危険な日常を徹底したリアリズムで描いた『エンド・オブ・ウォッチ』(2012年)のデビッド・エアー。本作でも法執行機関の暴力性と暗部を浮き彫りにしつつ、隠し金を盗んだのは誰か、連続殺人の犯人は、というミステリー要素で観客の興味を牽引する。特殊な叙述テクニックで観客をミスリードする試みがあり、その点は賛否が分かれそうだ。シュワちゃんは数シーンでガンファイトもこなすが、どちらかと言えば主人公の苦悩と葛藤を表現するソリッドな演技に重点を置き、見どころにもなっている。無敵のヒーローに脳天気な展開という、従来のアクション主演作とは一線を画するダークな内容に、往年のファンは衝撃を受けるかも。 『花宵道中』(R15+/11月8日公開)は、安達祐実が20年ぶりに映画主演を果たし、初の花魁(おいらん)役に挑んだ作品。江戸時代末期の吉原で、遊郭の女郎として空虚な日々を過ごしていた朝霧(安達)は、たまたま出かけた縁日で染物職人の半次郎(淵上泰史)と出会う。半次郎に秘かな恋心を抱き、生きる喜びを取り戻した朝霧。だが、そんな2人に過酷な運命が待ち構えていた。 原作は、新潮社「女による女のためのR-18文学賞」第5回大賞の宮木あや子による同名小説。監督は『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(10年)の豊島圭介。1994年のテレビドラマ『家なき子』で当時最も有名な子役スターになった安達祐実が、久しぶりの主演作で世間のイメージからかけ離れた役どころに挑戦。決意の裸身をさらし、濃密な濡れ場を熱演した。子役時代の安達を知る観客は、30歳を過ぎてもなお少女の面影がある彼女の姿を、感慨深く眺めることになりそうだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『サボタージュ』作品情報 <http://eiga.com/movie/80167/> 『花宵道中』作品情報 <http://eiga.com/movie/80041/>『花宵道中』(c)2014 東映ビデオ
「吉原の遊女と子役時代の自分は重なる」安達祐実が語る、ずっと裏切りたかった“私”とは?
<p> 遊女の母親から虐待を受けながら育った少女は、また当然のように自身も遊女となり、狭い吉原の中で空虚な日々を送っていた。そんな女郎・朝霧が半次郎という1人の男性と出会い、凪いでいた人生は突然思いも寄らない波に飲み込まれる――。「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞した『花宵道中』(宮木あや子著、新潮社)が映画化、主人公である朝霧を演じるのは芸能生活30周年を迎えた安達祐実だ。公私ともに波乱の人生を歩んできた彼女の目に遊女の世界はどう映ったのだろうか。そこには誰もが知る名子役が苦難の果てに掴んだ、「等身大の自分」があった。</p>
またまた大物スター初参戦でヒートアップ!!!『エクスペンダブルズ3 』
今週取り上げる最新映画は、人気アクションシリーズ最新作と、ドラキュラ誕生を新解釈で描く歴史エンタテインメント。名だたるスターたちのリアルなファイトに熱くなる中、中世の戦場を舞台にVFXを駆使したバトルに驚嘆するか。好みに合わせて、スケールの大きなアクションをお楽しみいただきたい。 『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(11月1日公開)は、シルベスター・スタローンが中心になって立ち上げた新旧アクションスター豪華共演『エクスペンダブルズ』シリーズの第3作。“使い捨て”の傭兵たちで構成されるエクスペンダブルズ(消耗品軍団)を率いるバーニーの前に、軍団結成時のメンバーだったが決別し、悪の武器商人になったコンラッド(メル・ギブソン)が現れる。チームの弱点を知り尽くした強敵に対し、エクスペンダブルズは崩壊の危機に直面する。 3作目でブルース・ウィリスが離脱したのは寂しいが、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、アーノルド・シュワルツェネッガーの面々は再々登場。さらにメルギブのほかにも、アントニオ・バンデラス、ハリソン・フォードら大物スターが初参加でお祭りムードを盛り上げる。脱税で収監され昨年出所したウェズリー・スナイプスにとっては久々のメジャー復帰作だが、前科をネタにした設定でしっかり笑いを取る。すでに第4作の出演者の候補に元007役のピアース・ブロスナン、日本でも人気を博した元プロレスラーのハルク・ホーガンの名が挙がっており、まだまだ続きそうな夢の共演を熱く応援していきたい。 『ドラキュラZERO』(10月31日公開)は、実在した中世ヨーロッパの君主がなぜ吸血鬼ドラキュラと呼ばれるようになったかを、新たな解釈で描く歴史アクション娯楽作。15世紀、トランシルバニア地方を治める君主ヴラド3世は、民衆に慕われ、愛する家族と平穏に暮らしていた。だが圧倒的な兵力でヨーロッパ侵略を狙うオスマン帝国の皇帝から、息子を含む1000人の少年を差し出せと要求されたヴラドは、これを拒否。帝国軍の侵攻から愛する家族と領民を守るために、険しい山の洞窟に囚われていた闇の力と契約を結び、恐ろしい代償と引き換えに強大な魔力を手にいれる。 ヴラド3世は、19世紀末に発表されたブラム・ストーカーの古典小説『ドラキュラ』に登場する吸血鬼ドラキュラ伯爵のモデルとも言われる人物。『ホビット』シリーズの弓の達人バルト役で人気を博した英俳優ルーク・エバンスが、苦渋の決断で悪魔と取引してしまう主人公を熱演した。歴史スペクタクルとしても十分通用するセット、コスチュームや戦闘シーンと、最新VFXを駆使して描くヴラドの超絶な戦いぶりの組み合わせが新鮮で、従来のバンパイア物とは一線を画する重厚なスケール感とスタイリッシュなアクションを楽しめる。監督は、CMディレクターとしてキャリアを築き、これが長編映画デビューとなるゲイリー・ショア。『アンチヴァイラル』(2012年)、『複製された男』(13年)などで印象的な役どころを演じてきたサラ・ガドンが、本作でも主人公の妻ミレナ役でピュアな魅力を放っている点もポイントだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』作品情報 <http://eiga.com/movie/79776/> 『ドラキュラZERO』作品情報 <http://eiga.com/movie/80610/>(C)EX3 Productions, Inc. All Rights Reserved.
早くも続編決定か!? デンゼル・ワシントンが英国版・必殺仕事人に『イコライザー』
今週取り上げる最新映画は、いわば米国版『必殺仕事人』と、英国版『Shall we ダンス?』。日本の観客になじみ深いシチュエーションと、それぞれのお国柄が反映された細部の描写やストーリー展開を楽しめる痛快な2作品だ。 『イコライザー』(10月25日公開)は、オスカー俳優のデンゼル・ワシントンが、合法的に処罰できない極悪人たちを鮮烈なテクニックで抹殺する元CIAエージェントに扮したサスペンスアクション。ホームセンターで働く中年男性のマッコール(ワシントン)は、温厚な性格と面倒見の良さで同僚から信頼され、静かで質素な生活を送っていた。だがある夜、近所の食堂で、ロシアンマフィアに囲われた未成年の娼婦テリー(クロエ・グレース・モレッツ)の絶望的な境遇を知り、封印していた正義感と特殊技能を覚醒させる。マフィアの拠点に単身乗り込んだマッコールは、部屋にあった灰皿や花瓶などを武器に変え、屈強な男たち5人をほんの十数秒で倒してしまう。しかし、これはマッコールと強大な組織との壮絶な戦いの始まりに過ぎなかった。 原案は80年代に米国で放映された同タイトルの連続ドラマで、日本でも『ザ・シークレット・ハンター』の題で放映された。イコライザーとは、もともと「等しくする、たいらにする(物や人)」という意味で、本作では社会の悪を抹消し世の平穏を保つ仕事人を指す。監督は、『トレーニング デイ』(2001年)でワシントンにアカデミー主演男優賞をもたらしたアントワン・フークワ。13年ぶりのコンビ復活で、穏やかな日常から冷徹なバイオレンスへと主人公が豹変するさまをスリリングに表現してみせた。まるで居合いの達人のような、瞬時の状況把握と素早いレスポンス、正確無比な攻撃の描写は、演出にうるさいアクションマニアをもうならせるはず。『ボーン』シリーズのスピーディーでスタイリッシュなアクションと、『96時間』シリーズの“無敵のオジサマ”の良いとこ取りをしたような快作で、米国ですでに大ヒットしていることから、続編製作の可能性も大だ。 もう1本の『カムバック!』(10月25日公開)は、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(08年)、『宇宙人ポール』(11年)などサイモン・ペッグとの共演でも知られる俳優ニック・フロストが、製作総指揮・原案・主演の3役を務めたダンスコメディ。十代の頃サルサダンスの才能を開花させながら、いじめが原因で踊らなくなり、25年後の今はすっかりメタボ体型の会社員ブルース。新任の美人上司ジュリア(ラシダ・ジョーンズ)に憧れるが、たまたまジュリアがプライベートでサルサダンスを踊っていることを知り、彼女の気を引くためにダンサーとして返り咲くことを決意する。 会社勤めのさえない中年男性が、ダンスでいきいきとした人生を取り戻すという構図は、1996年の周防正行監督作品で世界的に大ヒット、ハリウッド版リメイクも製作された『Shall we ダンス?』そのもの。ただし本作の主人公がおデブキャラ、音楽がサルサという2点のおかげで、ユーモラスで陽気なムードあふれる楽しさいっぱいのコメディに仕上がった。終盤に入り、太い体にもかかわらずキレの良い見事なパフォーマンスを披露するフロストに、思わず拍手喝采を送りたくなるはず。ダンス好きなら必見の1本で、単調な仕事や生活に疲れ気味の方にも、ぜひ鑑賞して元気になっていただきたい。“相棒”サイモン・ペッグが一瞬だけ登場する場面もお見逃しなく。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『イコライザー』作品情報 <http://eiga.com/movie/78782/> 『カムバック!』作品情報 <http://eiga.com/movie/80276/>『イコライザー』(10月25日公開/配給: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)
相性バッチリ! 瑛太と松田龍平の脱力バディムービー第2弾『まほろ駅前狂騒曲』
今週取り上げる最新映画は、瑛太と松田龍平がW主演するバディームービー続編と、深夜バラエティ番組で生まれた人気企画の映画化第2弾。スクリーンとテレビでおなじみのキャストたちが織りなすドラマやドタバタを楽しめる邦画2作品だ。 『まほろ駅前狂騒曲』(10月18日公開)は、三浦しをんの人気連作小説『まほろ駅前』シリーズの映画化第2弾で、第1作『まほろ駅前多田便利軒』の主要キャスト・スタッフが再結集したドラマ。まほろ市で便利屋を営む多田(瑛太)のもとに、中学の同級生だった行天(松田龍平)が転がり込み、助手兼同居人になってから3年目。多田は行天の元妻・凪子(本上まなみ)から、海外出張の間、行天の実娘を預かってほしいと頼まれる。一方、まほろの裏社会で暗躍する星(高良健吾)からは、新興宗教団体を前身とする謎の野菜販売集団の極秘調査を押しつけられる。厄介な依頼に悪戦苦闘する2人は、さらに地元の路線バスで起きたバスジャック事件に巻きこまれる。 前作に続き大森立嗣が監督を務め、主演2人による脱力気味のやりとりが最大の魅力になっている点は揺るがない。キャストはほかにも真木よう子、大森南朋、麿赤兒、松尾スズキなどシリーズのレギュラー組がそろうほか、行天の秘密を知る集団のリーダー役・永瀬正敏が謎めいた存在感で後半のサスペンスを盛り上げる。お気楽なバディムービーを装いながらも、現代的な家族と疑似家族の姿や、新興宗教の問題も含む共同生活の光と影を描き出し、見る人それぞれの楽しみ方、感じ方が可能な印象深い快作に仕上がった。 『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ』(公開中)は、テレビ東京のバラエティ番組『ゴッドタン』から生まれた、劇団ひとりのアドリブ演技が人気の企画「キス我慢選手権」の映画化第2弾。目隠しをされ、とある高校の校舎に連れて来られた制服姿の劇団ひとり。ボロボロの制服を着た女子高生・亜衣に連れられて屋上に出ると、血まみれの生徒たちが多数倒れていた。劇団ひとりだけが設定もせりふも知らされず、共演者たちの演技を頼りにシナリオに沿ったアドリブを繰り広げるチャレンジの幕が切って下ろされる。 監督は前作に続き、佐久間宣行。キャストは番組レギュラーのおぎやはぎとバナナマンの芸人たちに加え、福士誠治、中尾明慶、伊藤英明ら俳優陣、上原亜衣、小島みなみ、白石茉莉奈のセクシーアイドル3人などバラエティ豊かだ。ストーリー的にも学園青春ものをベースに、超能力やタイムトラベルといったSF要素、お色気シーンを含む恋愛要素を盛り込み、決して多くはないであろう予算の範囲でかなり頑張った印象。2013年公開の新感覚ホラー『キャビン』を思わせる、筋書きを操作する側とされる側の構造も映画ファンには楽しい。予期せぬキャストの登場や特殊効果が作動した時の驚きの表情、求められる演技を瞬時に察知し巧みにせりふを繰り出す様子など、劇団ひとりのリアクションとアドリブ力を満喫できる1本だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『まほろ駅前狂騒曲』作品情報 <http://eiga.com/movie/79711/> 『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ』作品情報 <http://eiga.com/movie/80750/>(C)2014「まほろ駅前狂騒曲」製作委員会
劇中歌にも注目! クロエ・モレッツ主演『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』
今週取り上げる最新映画は、突然の悲劇に見舞われた女子高生が生死の淵で苦悩する姿を描くドラマと、人並み外れた性衝動を抱え、多くの男性と性交渉を重ねた女性の数奇な半生が語られる衝撃作。生きることの意味や、人生における性の意味について、あらためて考える機会を与えてくれる洋画2作品だ(いずれも10月11日公開)。 『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』は、人気若手女優クロエ・グレース・モレッツが主演、交通事故で生死の境をさまよう高校生のある決断を描くドラマ。優しい家族と親友、恋人にも恵まれた17歳のミアは、チェロ奏者になる夢をかなえようと、ジュリアード音楽大学の入試に挑戦することに。だがある雪の朝、家族と同乗していた車が事故で大破。瀕死の重傷を負ったミアは、意識が体から離れ、病院に搬送された家族と自分自身の過酷な状況をただ傍観するしかない。充実していたこれまでの人生を振り返りながらも、ミアは次第に生きる意欲を失っていく。 米作家ゲイル・フォアマンのベストセラー小説『ミアの選択』を映画化。監督のR・J・カトラーは、舞台とテレビでキャリアを築き、本作が長編映画デビューとなる。『キック・アス』(2010年)の過激なヒットガール役で一躍有名になったクロエも、いまや青春がよく似合う可憐な17歳。ロックミュージシャンを目指すボーイフレンドとの恋愛と苦悩から、家族や友人とのやりとり、自らの生死をどうするかという究極の選択までを、瑞々しく繊細に演じた。劇中で流れるクラシックとロックは、選曲もBGMとしての効果も見事で、キャストらの好演を引き立てている。ミアが置かれた状況は特殊ではあるけれど、恋愛、家族、夢、幸福、人生の選択といった、誰もが経験する普遍的な要素がたくさん詰まった本作。ネタバレの記事や口コミを避けて、ぜひ主人公と一緒に悩み、一緒にラストの決断を体験してもらいたい。 『ニンフォマニアック Vol.1』(R18+指定)は、デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督が、強い性的欲求を抱えた女性の半生を2部作で描く問題作。ある冬の夕暮れ、年配のインテリ独身男性セリグマンは、殴打され倒れていた女性ジョーを見つけ、自宅に連れて介抱する。回復したジョーは、セリグマンに何があったのか質問され、幼い頃からの性への強い関心と、大勢の男たちと交わってきた数奇な半生を語り始める。 タイトルは「色情狂」の意味。現在のジョーをシャルロット・ゲンズブール、若い頃のジョーをフランス出身の新人ステイシー・マーティンが熱演。前編にあたる本作ではマーティンが実質的な主人公として、細身の裸身をさらしながら性の渇望と冒険を体現している。官能の探求と重ね合わせて、数学、宗教、音楽などさまざまな分野の知識と真理の追求が語られ、ユーモアを添える効果も。ウェルメイドの対極にあるかのような、突き抜けた問題提起と、安易な理解や共感を拒む濃厚なエピソード。相当に強度のある作品なので、後編にあたる『ニンフォマニアック Vol.2』(11月1日公開)とともに、体調を整えて臨みたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』作品情報 <http://eiga.com/movie/80699/> 『ニンフォマニアック Vol.1』作品情報 <http://eiga.com/movie/80589/>「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」(C)2014 Warner Bros. Ent. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights Reserved./配給:ワーナー・ブラザース映画
パリ、台湾、スペイン、サンフランシスコ……禁断のハッテン場漫遊記『世界一周ホモのたび 祭』
『世界一周ホモのたび 祭』(ぶんか社)は、めくるめく禁断のホモ旅をのぞき見ることができる大人気シリーズの第3弾。本書は、デブ好きでフケ専のホモライター・サムソン高橋氏の原作を基に、派手好きで露出好きのホモ漫画家・熊田プウ助氏がイラスト描く“ハッテン(場)漫遊記”である。その内容は、ふたりが元ホモ雑誌編集者時代の同僚ということもあり、かなり詳細で、あけっぴろで、最初から最後までぶっ飛んでいる。熊田氏のユーモアあふれるかわいらしいタッチのイラストに惹かれ、軽い気持ちでページをめくると、性へのあくなき探求心……いや、ホモの方々だけが知るディープな世界が広がり、ページをめくった瞬間から「わー、わー、わー!!!」と叫びたくなる。 第3弾では、“祭”という名のタイトルにふさわしく、台湾で6万人の参加者が集まった世界最大級のゲイパレートや、ヨーロッパ中のゲイが参加するパリのゲイパレード、サンフランシスコの革とSMの祭典「フォルサムストリートフェア」などのイベントをはじめ、ゲイバーやゲイサウナ、ハッテン便所ほか、いわゆる“ハッテン場”と呼ばれる世界各国のゲイスポットを、短編マンガで紹介している。 一言で“ホモ”といえど、プロレスラー的に鍛えた太めのガチホモ、パッと見でいかにもホモとわかる独特ファッションに身を包んだイカホモ、美青年系などいろいろなタイプがいるそうで、高橋氏自身は40代の自称ブス系で、好みは冒頭で書いた通り、デブ好きのフケ専。その筋では、角●卓造氏のようなタイプがかなりの高級物件だという。そんな高橋氏が「ブスだから相手にされない!」と怒りながらも、デブフケ系を狙い、グイグイと積極的にアプローチしては撃沈を繰り返していく姿がこの本の見どころとなっている。 終始非常に濃密な下話が続くのだが、ラストは同姓婚が認められているスペインで、輝くようなイケメン親父に「パリはキャンセルしてしばらくこの家にいたら? 君が望むなら好きなだけ」と求愛されるも断り、「また今度」と涙でお別れ……という、ちょっと切ないエピソードで締められている。 ……と、「イイハナシダナー」のまま終わればいいのだが、直後のコーナー「サムソン高橋×熊田プウ助 ハミ珍対談」での会話がひどい。『世界一周ホモのたび 祭』(ぶんか社)
高橋:編集者から<いつもハッテンでモテない話ばっかり! 恋愛エピソードはないの?」ってリクエストがあって、そんなものない体験の中で必死に探して書いたのがこの話で、その原稿が送ったら、ソッコーで返事がきて、<すっごいムカつく!>って。 熊田:その編集者の気持ちはよくわかるんだけど、ひどい話ね。 高橋:(いや、)熊田さんが仕事の途中にツイッターで「(原作に絵を)描きながら不愉快で体調がおかしくなりそうです」とかってつぶやいてたんだよね……。 熊田:ぜんぜん覚えてないわ。あまりムカついたから記憶から消去したのかしら。 高橋:おふた方の反応を見て、ああ、自分はモテないままのほうが皆さんに幸せを届けられるんだな、と改めて実感しましたよ。だから今後の目標としては、読者の幸せ配達人としてこれからもモテないままでいたいですね。 熊田:そこはいちいち目指さなくても、今のままで大丈夫だから。こんなふたりが描く、ホモ旅の世界。読者は非常にニッチな層に思えるのだが、第3弾まで出ているということは、いわゆる“ノンケ”の方々からも需要があるのかも!? ホモとノンケの世界の架け橋になる1冊かもしれない。 (文=上浦未来)








