アカデミー賞にも6部門でノミネート イーストウッド最新作『アメリカン・スナイパー』

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『アメリカン・スナイパー』(c)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
 今週取り上げる最新映画は、戦争ジャンルで米興収歴代1位を達成したイーストウッド監督の話題作と、リアルな復讐劇がカンヌの国際批評家連盟賞など高い評価を受けた新進監督の注目作。日本で「戦争」「暴力」「報復」をめぐる言論と世論が活発化している今、これら2作品を見て、現実の悲劇により深く想いを寄せることも有意義だろう。  『アメリカン・スナイパー』(2月21日公開、R15+指定)は、9・11以降のイラク戦争で活躍し米軍史上最強とうたわれた狙撃手の実話を、クリント・イーストウッド監督、ブラッドリー・クーパー主演で描く戦争ドラマ。米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの狙撃兵クリス(クーパー)は、市街戦が続くイラクに派遣され、高い精度で敵兵を次々に射抜く。多くの仲間を救い「レジェンド」の異名を轟(とどろ)かせる一方で、敵からは懸賞金がかけられ命を狙われる。クリスは4度の派遣で160人もの敵を射殺し、遠征から帰れば良き夫、良き父でありたいと願うが、安らぐことのない精神状態に苦しみ続ける。  冒頭でいきなり、不審なイラク人少年とその母親を狙撃するべきか否か、難しい判断を迫られる主人公。この映画が単純な「悪の敵兵を大勢やっつけた英雄」の物語ではなく、途方もない精神的プレッシャーの下で人命を奪う兵士の内面に切り込むドラマだと宣言する幕開けだ。イラク側狙撃手とのライバル関係も、西部劇のガンマン同士の対決を思わせる緊迫感があり、ガンファイターを数多く演じ『許されざる者』(1960年)の監督・主演でオスカーを獲得したイーストウッドの手腕がさえる。本国アメリカでは1月中旬に封切られ、これまでに興収2億8000万ドルを超えイーストウッド監督作で最大のヒット、また戦争映画ジャンルでもスピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』(88年)を抜いて米興収歴代1位を達成。今年のアカデミー賞にも6部門でノミネートされ、作品賞、クーパーの主演男優賞などの受賞が有力視されている。日本でも大きな話題となるのは確実だ。  『ブルー・リベンジ』(2月14日公開)は、2013年のカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した新感覚のスリラー復讐劇。サビだらけの青い車に寝泊まりし、世捨て人のように生きていたドワイトは、かつて両親を殺した男が近く出所することを顔見知りの警官から知らされる。復讐心に突き動かされ、ドワイトは男が刑務所から家族のリムジンで移動するのを尾行し、一家が入った店のトイレに忍び込んで男を刺殺する。だがこれは、ドワイトと犯人一家の壮絶な復讐合戦の始まりに過ぎなかった。  監督・脚本は、本作が長編映画2作目の新鋭ジェレミー・ソルニエ。スタイリッシュとは対極にある、ミス連発でヘタレ感漂う主人公の描写が抜群だ。盗んだ銃の錠を叩いて外すつもりが銃ごと壊してしまう、追跡されないようリムジンのタイヤをナイフで刺したら手を切る、脚に刺さった矢を自分で抜こうとするが痛すぎて病院に駆け込む、といった具合。特別な訓練も経験もない普通の男が相手を殺すつもりで戦えば、きっとこうなるというリアルさを醸し出すと同時に、この手のジャンル映画のユニークな批評にもなっている。はっとさせられるバイオレンス描写と、「破滅」を予感させる青を強調した映像も、本作の大きな見どころだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『アメリカン・スナイパー』作品情報 <http://eiga.com/movie/81224/> 『ブルー・リベンジ』作品情報 <http://eiga.com/movie/81296/>

巨匠リドリー・スコット監督が最新VFXを駆使して描く歴史スペクタクル『エクソダス:神と王』

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『エクソダス:神と王』(C)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、映像派の巨匠が最新VFXを駆使して描く歴史スペクタクルと、音楽に徹底してこだわった人気コミックの実写化。次々に繰り出されるリアルで迫力満点の映像か、笑いと涙の後に訪れる感動の音楽か。どちらが好みでも、できれば映画館の大スクリーンと音響で存分に楽しんでいただきたい。  『エクソダス:神と王』(1月30日公開、2D/3D上映)は、巨匠リドリー・スコット監督がクリスチャン・ベールを主演に迎え、旧約聖書「出エジプト記」に登場する預言者モーゼの物語を描く歴史大作。紀元前1300年、エジプト王家に養子として育てられたモーゼ(ベール)は、優秀な武将になり民衆の支持を集める。だが、当時隷属状態にあったヘブライ人(ユダヤ人)の子であるという秘密が明らかになり、兄弟同然に育った王ラムセス(ジョエル・エドガートン)から追放される。神の声を聞いたモーゼは、40万人のヘブライ人を率いてエジプトを脱出し、約束の地カナンへの長く困難な旅に向かう。  『エイリアン』(1979年)や『ブレードランナー』(82年)といった先鋭的なSF映画の印象が強いスコット監督だが、アカデミー賞作品賞を獲得した『グラディエーター』(2000年)など、歴史大作もお手のもの。最先端の視覚効果を駆使し、壮麗な王宮、平原での合戦、天変地異が相次ぐ「十の災い」、紅海が割れる奇跡などを驚異のリアリティーで3D空間に描き出した。クリスチャン・ベールはキレのあるアクションと繊細な演技で、勇敢なリーダーでありながら神と民の間で苦悩する「人間モーゼ」を活写している。  『マエストロ!』(1月31日公開)は、さそうあきらの文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞作『マエストロ』を原作に、松坂桃李主演で実写映画化した音楽コメディードラマ。不況で解散した名門オーケストラの元団員、バイオリニストの香坂(松坂)に再結成の話が舞い込む。だが練習場は廃工場で、集まったのは再就職先もない「負け組」楽団員たち。再結成を企画した怪しげな指揮者・天道(西田敏行)は、指揮棒の代わりに大工道具を振り回し、団員たちを困惑させる。1カ月後の復活コンサートまでに、香坂らは難曲の「運命」と「未完成」を仕上げることができるのか――。  監督は『毎日かあさん』(11年)の小林聖太郎。世界的指揮者の佐渡裕が指揮指導に加え、終盤で流れる2曲の録音ではベルリン・ドイツ交響楽団を自ら指揮。さらにピアニストの辻井伸行が、本作のエンディング用に書き下ろしたオリジナル曲を演奏して提供するなど、クラシックファンも驚きの本格志向がうれしい。松坂と西田をはじめ、本作が女優デビューとなるシンガーソングライターのmiwaら、楽団員を演じる個性豊かな俳優陣も、長期間の楽器レッスンに臨んで演奏場面の説得力を高めた。練習場での迷走ぶりに笑い、香坂と父と天道の過去に泣き、多難を乗り越えたオーケストラが奏でる極上の音楽に感動する、魅力いっぱいの娯楽作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『エクソダス:神と王』作品情報 <http://eiga.com/movie/80710/> 『マエストロ!』作品情報 <http://eiga.com/movie/79899/>

歌舞伎町のラブホに集う“ワケあり”男女の群像劇 染谷将太×前田敦子『さよなら歌舞伎町』

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(C)2014『さよなら歌舞伎町』製作委員会
 今週取り上げる最新映画は、歓楽街のラブホテルに集う面々の人間模様を描く邦画と、米ポップアート全盛期に起きたゴースト画家騒動を描く洋画の2本。両作品に共通するのは、登場人物たちの隠す秘密が明らかになるかどうかが緊張感を生み、物語の展開を効果的に刺激している点だ。  『さよなら歌舞伎町』(1月24日公開、R15+指定)は、『ヴァイブレータ』(2003年)の廣木隆一監督、『寄生獣』(14年)の染谷将太主演で描く、大人の群像ドラマ。新宿歌舞伎町のラブホテルで店長を務める徹(染谷)は、同棲相手でミュージシャン志望の沙耶(前田敦子)や、福島に住む家族には自分が一流ホテルマンだと偽っている。徹がいつものように出勤したラブホで、過去の罪を隠す清掃員(南果歩)、韓国人のデリヘル嬢(イ・ウンウ)、家出少女(我妻三輪子)と風俗スカウト(忍成修吾)、警察官の不倫カップル(河井青葉、宮崎吐夢)ら、ワケありの男女の人生が交錯する。  客と従業員の間の没交渉が基本のラブホテルを舞台に、あえてグランドホテル方式の群像劇を組み立てたオリジナル脚本がユニーク。話題作への出演が相次ぐ染谷、元AKB48の前田、「ニコラ」(新潮社)モデル出身の我妻、韓国人女優のイなど多彩な若手と、大森南朋、田口トモロヲ、村上淳、松重豊ら実力派の中堅によるアンサンブルは、時に軽妙、時に濃密で2時間15分の長尺を飽きさせない。パートナーへの嘘や社会への隠し事で危うく成立しているカップルたちが、秘密の露見を前に決断を迫られる。愛や夢、欲望や虚栄といった、歌舞伎町が象徴するものに別れを告げる、どの登場人物に観客は自分を重ねるだろうか?  『ビッグ・アイズ』(公開中)は、鬼才ティム・バートン監督が、今から半世紀前の米ポップアート界を揺るがしたゴースト画家の実話を映画化したインディペンデント作品。美大で学んだ絵で生計を立てたいシングルマザーのマーガレット(エイミー・アダムス)は、社交的で自信家のウォルター・キーン(クリストフ・ワルツ)と出会い、ほどなく結婚する。彼女が悲しげな大きな目の子どもを描いた『ビッグ・アイズ』シリーズは、ある夜を境に人気が急上昇。だが、ウォルターは自分の作品だと偽って巧みに売り込み、一躍アート界の寵児となる。内気なマーガレットは夫に言われるままキーン名義で絵を描き続けるが、自宅でのトラブルを機に別居。やがて彼女は、自分を取り戻し作品を守るために、真実を公表することを決意する。  風変わりなキャラクターと奇想天外な世界観を描くファンタジーやホラー作品の多いバートン監督だが、今回は実話ベースのため至極真っ当な作り。とはいえ、特撮とメイクで俳優の目を大きく見せるシュールなシーンで、「らしさ」も添える。アダムスは本作で、今年のゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)を獲得。ワルツもペテン師まがいの夫を憎々しく熱演し、ヒロインの苦悩と葛藤を見事に引き立てている。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『さよなら歌舞伎町』作品情報 <http://eiga.com/movie/80641/> 『ビッグ・アイズ』作品情報 <http://eiga.com/movie/80081/>

「お手」や「おかわり」をマスターするかも!? 金魚をどんぶりで育てる『どんぶり金魚の楽しみ方』

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『どんぶり金魚』(池田書店)
 金魚を飼うというと、大きな水槽にエアーポンプやろ過装置、照明の設置、水草を植えたり……と、なかなか面倒臭いイメージがある。ところが、そんな余計な器具を一切使わず、どんぶりと水で育てよう! という画期的な飼育方法を薦める1冊が『どんぶり金魚の楽しみ方』(池田書店)だ。  著者は、金魚博士の異名を持つ東京海洋大学長・岡本信明氏と、日本インターネット金魚愛好会副会長&日本らんちう協会常任理事を務める、金魚飼育歴40年の川田洋之助氏。その出会いは、東京海洋大学で開催された、普通の飼い主が形にとらわれない自慢の金魚を持ち寄る品評会「素人金魚名人戦」なるもので、川田氏は岡本氏が出陳した小さな金魚の“シロちゃん”に衝撃を受ける。涼しげで、ろくに水も入らないガラスの器の中で泳ぎ、近づくと、シロちゃんが遊んで遊んで~と顔をもたげ、愛嬌たっぷりで、会場のお客さんもメロメロだったという。  金魚に愛嬌!? と驚かされるのだが、その理由はどんぶりで飼うので、水槽のように隔てるものがなく、エサをあげる時の距離が近いから。エサのやり方次第で「早く! 早く! ゴハンちょうだ~い」と、手渡しができちゃうほどなつかせることも可能だというのだ。これに、川田氏は器と金魚の新たなコラボの可能性を確信し、有田焼の器と自作の抹茶椀、生け花の水盆などで、数年間金魚を飼うなど、岡本氏と2人で研究を重ね、この本が誕生した。  大きなルールとしては、毎日水換えをする、エサは1粒ずつ、ひとつの器に一尾だけなど本当に簡単だが、さまざまな金魚がいるし、長生きさせるにはコツがたくさん。本書では、どんぶり飼育に向く“金魚”や器の選び方、どんぶりに入れる前に金魚にしてあげると長生きすること、仲良くなるエサのやり方、金魚の眺め方、世話の基本、病気と治療法などが、かなりわかりやすく写真付きで説明され、どれも難しいルールはないので、これならやってみようかなという気になる。室町時代に中国から渡ってきて、大名や豪族の楽しみとして飼育され、後に江戸時代に庶民へと広がった、金魚。浮世絵にも登場するほど美しいその姿は、まさに生きる芸術品。自分好みのどんぶりで、金魚を眺めて癒やされちゃおう。 (文=上浦未来) ●おかもと・のぶあき 1951年愛知県生まれ。東京海洋大学長。東京海洋大学海洋生物資源学科教授。研究分野は魚類病態生理学・魚類遺伝生理学。主に魚を病気から守るための研究を行っている。金魚博士の異名を持ち、国際誌「アクアカルチャー」などの編集委員ほか、素人金魚名人戦に参加するなど、金魚の普及に努めている。監修書に『育てて、しらべる日本の生きものずかん14金魚』(集英社)、共同監修書に『金魚 長く、楽しく飼うための本』『原色金魚図鑑 かわいい金魚のあたらしい見方と提案』『金魚のことば 君のきもちと飼い方がわかる82の質問』(すべて池田書店)がある。 ●かわだ・ようのすけ 1952年東京都生まれ。金魚銀座 座主(CEO)、素人金魚名人戦代表、日本インターネット金魚愛好会副会長、(社)日本らんちう協会常任理事、土佐金保存会副会長。金魚飼育歴40年。長年の飼育のノウハウを生きるかし、著書に『カラーガイド金魚のすべて』『らんちうのすべて』『四大地金魚のすべて』(すべてエムピージェー)、共同監修書に『金魚 長く、楽しく飼うための本』『原色金魚図鑑 かわいい金魚のあたらしい見方と提案』『金魚のことば 君のきもちと飼い方がわかる82の質問』(すべて池田書店)がある。

“無敵オヤジ”が今度は追われる身に! リーアム・ニーソン『96時間 レクイエム』

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『96時間』(c)2014 Twentieth Century Fox
 今回取り上げる最新映画は、スタイリッシュな演出とサスペンスに満ちた展開が見どころのアクション娯楽作2本。いずれも人気シリーズの最新作だが、片やリアルなファイトやチェイスにこだわるノンストップ活劇、片や原作グラフィックノベルの世界を実写とデジタル技術で再現した新世代のフィルム・ノワールと、好対照な2作品だ。  1月9日公開の『96時間 レクイエム』は、リュック・ベッソン製作・脚本、リーアム・ニーソン主演のサスペンスアクション『96時間』シリーズの第3作。パリで拉致された娘キムを救出し、イスタンブールで家族の命を狙う犯罪組織を壊滅させた元CIA秘密工作員ブライアン(ニーソン)は、住み慣れたロサンゼルスで平穏な暮らしを取り戻すことを望んでいた。だがその矢先、自宅で元妻レノーアが殺され、容疑者として警察から追われる身に。ブライアンは警部ドッツラー(フォレスト・ウィテカー)らの追跡をかわしつつ、自分を罠にはめた真犯人を探し、再び狙われた娘を守るために奔走する。  監督のオリビエ・メガトンは、第2作『96時間 リベンジ』(2012年)からの続投。前作では主人公が妻と共に拉致され、娘の助けを得て脱出するまで、スピード感で第1作にやや劣るのが難点だったが、今回は序盤から追われる身となり、疾走感が途切れないままサスペンスを盛り上げる。演技派俳優からアクションスターへと変貌し、“無敵オヤジ”が当たり役になったリーアム・ニーソンも還暦を過ぎ、逃走の途中で息切れする演技が生々しくて哀感を誘う。シリーズ最終章と銘打たれた本作、最強パパの最後の暴走をしっかりと見届けたい。  続いて1月10日に封切られる『シン・シティ 復讐の女神』(R15+指定、2D/3D上映)は、フランク・ミラーによるグラフィックノベルを、ミラー自身とロバート・ロドリゲスの共同監督で映画化した『シン・シティ』(05年)の続編。悪徳に満ちた街シン・シティで、愛する者を奪われた踊り子ナンシー(ジェシカ・アルバ)は復讐を胸に秘め、そんな彼女を怪力大男マーヴ(ミッキー・ローク)が見守る。さらにギャンブラーのジョニー(ジョセフ・ゴードン=レビット)、私立探偵ドワイト(ジョシュ・ブローリン)らアウトサイダーたちが、それぞれのやり方で腐敗した権力者に立ち向かう。  モノクロを基調とし、口紅や金髪、血や炎といった鮮烈な色彩を際立たせるユニークな映像スタイルは前作から踏襲。今作では新たに3Dで制作されたことで、奥行きを持って広がる「罪深い街」のダークな空間に、観客自身も迷い込んでしまったかのような没入感を体験できる。脱がないながらも官能的なダンスを披露するジェシカ・アルバと、『300 スリーハンドレッド 帝国の進撃』(14年)に続き脱ぎっぷりのいい悪女役のエバ・グリーン、人気女優の“競艶”も見逃せない。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『96時間 レクイエム』作品情報 <http://eiga.com/movie/81182/> 『シン・シティ 復讐の女神』作品情報 <http://eiga.com/movie/80084/>

『ベイマックス』日本文化へのリスペクトに涙──2015年は、お正月映画が熱い!!

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(C) 2014 Disney. All Rights Reserved./配給: ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
 2015年お正月映画を特集する今回は、幅広い世代が楽しめる多彩な魅力の話題作から、小粒ながらも強烈なインパクトを放つ力作まで、個性的な4作品を紹介していきたい(いずれも公開中)。  『ベイマックス』(2D/3D上映)は、ディズニー映画史上最も強く日本文化への敬愛が表現された長編アニメ。サンフランソウキョウに暮らす14歳の天才少年ヒロは、火災で命を落とした兄が遺したケアロボット「ベイマックス」に支えられ、失意から回復する。兄の死にかかわる陰謀を知ったヒロは、ベイマックスに戦闘用の装備とプログラミングを加え、兄の研究仲間と共に巨悪に立ち向かうが――。大きくてフワフワなベイマックスと日系人を思わせる主人公の関係が『となりのトトロ』(1988年)を参照していることをはじめ、日本のポップカルチャーへの言及、サンフランシスコと東京をミックスしたような未来都市など、日本人が見たら嬉しくなる要素が盛り沢山だ。  『バンクーバーの朝日』は、第2次世界大戦前のカナダで活躍した日系移民の野球チームの実話を、石井裕也監督が『ぼくたちの家族』(14年)に続いて、妻夫木聡主演で映画化した感動作。20世紀初頭、カナダへ渡った多くの日本人が過酷な労働や差別に苦しむ頃、日本人街に野球チーム「バンクーバー朝日」が誕生した。当初は体格で上回る白人チーム相手に負け続けるが、バントと盗塁を多用する頭脳的な作戦とフェアプレーで勝利を重ねるように。チームは日系移民たちに希望をもたらし、白人社会からも評価されるが――。米メジャーリーグでのイチローの活躍を、半世紀以上前にカナダの野球界で先取りしていたような、実話ベースのストーリーが興味深い。亀梨和也、池松壮亮、宮崎あおい、佐藤浩市ほか共演陣も豪華。撮影のために野球場、日本人街、白人街のセットを建設したというスケールの大きさも、映像から確かに伝わってくる。  『バッド・マイロ!』(R15+指定)は、潔いほどにB級テイストを追求したホラーコメディながら、モンスターの愛らしいルックスと、感動的な絆の物語にハマる人続出の異色作。嫌味な上司に配置換えされ、同僚らにリストラを言い渡す担当になったダンカンは、ストレスから猛烈な腹痛に何度も襲われ、そのたびに気を失ってしまう。時を同じくして、身近な人が惨殺される事件が相次ぐ。ほどなくダンカンは、自分の腸にできた腫瘍がモンスター「マイロ」となって体外に飛び出し、ストレス原因の相手を殺していたことを知る――。『E.T.』(82年)のエイリアンに似た外見につぶらな瞳がキュートなマイロと、主人公が親子のように心を通わせてゆく展開がバカバカしくも泣かせる。  『百円の恋』(R15+指定)は、『イン・ザ・ヒーロー』(14年)の武正晴監督、『かぞくのくに』(12年)の安藤サクラ主演でアラサー女性の自立と成長を描く意欲作。実家に引きこもり自堕落な生活を送っていた32歳の一子は、子連れで出戻ってきた妹と大げんかして、アパートで一人暮らしを始める。100円ショップで深夜勤務の職を得た一子は、近所のボクシングジムに通う中年ボクサー・狩野と出会い、恋をするが――。タイトルから予想される通り、底辺で暮らす女性のささやかな恋愛が進行する前半から一転、後半はスポ根ドラマのような展開に。脚本のシフトチェンジに伴い、みるみる変貌する安藤サクラの演技が圧巻だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 「ベイマックス」 <http://eiga.com/movie/80460/> 「バンクーバーの朝日」 <http://eiga.com/movie/79991/> 「バッド・マイロ!」 <http://eiga.com/movie/81279/> 「百円の恋」 <http://eiga.com/movie/80512/>

行定勲監督が“原作モノ”映像化の真価を見せる『真夜中の五分前』

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(C) 2014 “Five Minutes to Tomorrow” Film Partners
 今回取り上げる最新映画は、コミックと小説、それぞれ人気の高い原作を見事に映像化した邦画2作品。原作との比較はもちろん、キャスティングの妙、脚色の技など見どころいっぱいの話題作だ(いずれも12月27日公開)。  『海月姫』は、「Kiss」(講談社)に不定期連載中の東村アキコの人気コミックを、『ホットロード』(2014年)の能年玲奈主演で実写映画化した娯楽作。クラゲを偏愛するオタク女子の月海(能年)はイラストレーターを志すも、部屋にこもってクラゲの絵ばかり描いている。彼女が住むボロアパート「天水館」には、鉄道や三国志など各自のオタク道を追求し、恋愛ともオシャレとも無縁の女子5人がゆるい共同生活を楽しんでいた。月海はある日ペットショップで華麗な美女に助けられるが、その正体は女装趣味のある蔵之介(菅田将暉)。蔵之介が天水館に出入りするようになり、月海の生活も少しずつ変化するが、そんな折、天水館が再開発による取り壊しの危機に直面する。  『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』(10年)や『映画 ひみつのアッコちゃん』(12年)でコミック映画化に実績のある川村泰祐監督が、本作でも天然ぶりが魅力のヒロインと、笑いとドタバタと感動に満ちた作品世界を巧みに映像化した。能年玲奈は三つ編みにメガネ、スウェットにジャージというオタク姿で主人公を熱演。蔵之介のサポートでシンデレラのように美しく変身し、人生初デートに臨む中盤の展開も盛り上がる。オタク仲間の池脇千鶴、篠原ともえ、太田莉菜ら共演陣も、顔が半分隠れる前髪や、スッピンにメガネで「え、誰?」状態だが、イケてない“腐女子”を楽しんで演じている様子が伝わってくる。  『真夜中の五分前』は、本多孝好のベストセラー小説を、行定勲監督、三浦春馬主演で映画化した恋愛ミステリー。上海の時計店で修理工として働く良(三浦)は、プールで知りあったばかりの美女ルオランから、双子の妹ルーメイへのプレゼントを選んでほしいと頼まれる。瓜二つの姉妹、妹の婚約者と4人で会った良は、ルオランの秘密を知るが、互いの過去を告白した2人は少しずつ距離を縮めていく。しかし、ルオランとルーメイが旅先で事故に遭ってしまう。  原作は日本が舞台で登場人物もみな日本人だが、中国との共同製作により設定と筋書きが大幅に改変された。中国人女優リウ・シーシーが1人2役で、謎めいた双子のヒロインを好演。主人公と中国語で交わされるロマンティックな会話が、上海の夜景など光と影を美しくとらえた映像と相まって、詩的なムードを醸し出す。評価の高い原作小説『真夜中の五分前 five minutes to tomorrow side-A/side-B』もできれば手に取り、相違点やそれぞれの魅力を確かめていただきたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『海月姫』作品情報 <http://eiga.com/movie/80291/> 『真夜中の五分前』作品情報 <http://eiga.com/movie/79592/>

早くもアカデミー賞有力候補との呼び声! 鬼才デビッド・フィンチャー『ゴーン・ガール』

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『ゴーン・ガール(c)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、早くもアカデミー賞有力候補の呼び声高いデビッド・フィンチャー監督による話題作と、ピーター・ジャクソン監督が手がける冒険ファンタジーシリーズの完結編。どちらも、映画館で鑑賞すれば一層楽しめること請け合いの傑作だ。  『ゴーン・ガール』(公開中、R15+)は、『セブン』『ファイト・クラブ』の鬼才デビッド・フィンチャー監督が放つ衝撃のサスペンスドラマ。米ミズーリ州の田舎町に暮らすニック(ベン・アフレック)は結婚5周年の記念日に、妻のエイミー(ロザムンド・パイク)が失踪したことを知り、警察に通報する。自宅の家具の破損や血痕から、警察は当初誘拐の可能性を考えるが、やがて周囲の証言や証拠からニックを疑い始める。マスコミの報道を通じて全米から疑惑の目を向けられたニックは、窮地を打開するため敏腕の弁護士を雇う。  原作は同名の全米ベストセラー小説で、著者のギリアン・フリンが脚本も担当した。アフレックとパイクによる秘密と闇を抱えた夫婦役の好演、たたみかけるような予想外の展開と衝撃のシーン、そしてスタイリッシュでスリリングなフィンチャー監督の演出により、先に封切られた本国アメリカでは歴代フィンチャー作品の興収1位を記録。今年度のアカデミー賞の最有力候補とも目される。エイミー失踪の真相や、「完璧な計画」が思わぬ方向へ転がっていく過程を目撃し、最大限の衝撃を味わうためにも、ネタバレのレビューや口コミを避けて、早めに劇場で鑑賞することを強くオススメしたい。  『ホビット 決戦のゆくえ』(12月13日公開、2D/3D上映)は、J・R・R・トールキンのファンタジー小説を映画化した『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの前日譚にあたる『ホビット』3部作の最終章。ホビット族のビルボ、王トーリンとドワーフ族の仲間たちは、邪龍スマウグからドワーフの故郷エレボール山と財宝を奪還することに成功。だが、財宝に執着するあまり仲間を疑い、協力したエルフや人間への見返りも拒否するトーリンに対し、いさめようとするビルボは危険な選択を迫られる。その頃、復活した冥王サウロンがオーク鬼の大群を放ち、中つ国に生きる各種族の戦士が集結したエレボール山で、運命の決戦が始まる。  『ロード~』3部作に続き、本シリーズもピーター・ジャクソンが監督を担当。VFXを駆使したキャラクター造形と刺激的なアクションシーンを、ニュージーランドの雄大な風景に溶け込ませて壮大な世界観を見事に実写化した。映像面でも、通常の倍のコマ数にあたる毎秒48コマのハイ・フレーム・レート3D(HFR 3D)がさらに洗練され、被写体の滑らかな動きと明るさ、前景から後景までの自然な奥行き感が向上している。オーランド・ブルーム演じるエルフ族・レゴラスが、バラバラと崩れ落ちる石の上をぴょんぴょんと駆け上がるシーンなど、笑ってしまうほどカッコいいアクションも痛快だ。こちらもぜひ、劇場の大スクリーンで長い旅の締めくくりを体感していただきたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ゴーン・ガール』作品情報 <http://eiga.com/movie/79771/> 『ホビット 決戦のゆくえ』作品情報 <http://eiga.com/movie/77478/>

早くもアカデミー賞有力候補との呼び声! 鬼才デビッド・フィンチャー『ゴーン・ガール』

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『ゴーン・ガール(c)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、早くもアカデミー賞有力候補の呼び声高いデビッド・フィンチャー監督による話題作と、ピーター・ジャクソン監督が手がける冒険ファンタジーシリーズの完結編。どちらも、映画館で鑑賞すれば一層楽しめること請け合いの傑作だ。  『ゴーン・ガール』(公開中、R15+)は、『セブン』『ファイト・クラブ』の鬼才デビッド・フィンチャー監督が放つ衝撃のサスペンスドラマ。米ミズーリ州の田舎町に暮らすニック(ベン・アフレック)は結婚5周年の記念日に、妻のエイミー(ロザムンド・パイク)が失踪したことを知り、警察に通報する。自宅の家具の破損や血痕から、警察は当初誘拐の可能性を考えるが、やがて周囲の証言や証拠からニックを疑い始める。マスコミの報道を通じて全米から疑惑の目を向けられたニックは、窮地を打開するため敏腕の弁護士を雇う。  原作は同名の全米ベストセラー小説で、著者のギリアン・フリンが脚本も担当した。アフレックとパイクによる秘密と闇を抱えた夫婦役の好演、たたみかけるような予想外の展開と衝撃のシーン、そしてスタイリッシュでスリリングなフィンチャー監督の演出により、先に封切られた本国アメリカでは歴代フィンチャー作品の興収1位を記録。今年度のアカデミー賞の最有力候補とも目される。エイミー失踪の真相や、「完璧な計画」が思わぬ方向へ転がっていく過程を目撃し、最大限の衝撃を味わうためにも、ネタバレのレビューや口コミを避けて、早めに劇場で鑑賞することを強くオススメしたい。  『ホビット 決戦のゆくえ』(12月13日公開、2D/3D上映)は、J・R・R・トールキンのファンタジー小説を映画化した『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの前日譚にあたる『ホビット』3部作の最終章。ホビット族のビルボ、王トーリンとドワーフ族の仲間たちは、邪龍スマウグからドワーフの故郷エレボール山と財宝を奪還することに成功。だが、財宝に執着するあまり仲間を疑い、協力したエルフや人間への見返りも拒否するトーリンに対し、いさめようとするビルボは危険な選択を迫られる。その頃、復活した冥王サウロンがオーク鬼の大群を放ち、中つ国に生きる各種族の戦士が集結したエレボール山で、運命の決戦が始まる。  『ロード~』3部作に続き、本シリーズもピーター・ジャクソンが監督を担当。VFXを駆使したキャラクター造形と刺激的なアクションシーンを、ニュージーランドの雄大な風景に溶け込ませて壮大な世界観を見事に実写化した。映像面でも、通常の倍のコマ数にあたる毎秒48コマのハイ・フレーム・レート3D(HFR 3D)がさらに洗練され、被写体の滑らかな動きと明るさ、前景から後景までの自然な奥行き感が向上している。オーランド・ブルーム演じるエルフ族・レゴラスが、バラバラと崩れ落ちる石の上をぴょんぴょんと駆け上がるシーンなど、笑ってしまうほどカッコいいアクションも痛快だ。こちらもぜひ、劇場の大スクリーンで長い旅の締めくくりを体感していただきたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ゴーン・ガール』作品情報 <http://eiga.com/movie/79771/> 『ホビット 決戦のゆくえ』作品情報 <http://eiga.com/movie/77478/>

各国でインド映画興収第1位を記録! 奇想天外なアクション娯楽大作『チェイス!』

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『チェイス!』(C)Yash Raj Films Pvt. Ltd. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、人気アイドルグループのメンバー3人が斬新なフォーマットに挑む少々ひねった青春ムービーと、インド発ながらハリウッド超大作に負けないアクションシーンが売りの痛快娯楽作。どちらもコアなマニアだけでなく、一般の映画ファンも楽しめる魅力を備えたオススメの2本だ。  『超能力研究部の3人』(12月6日公開)は、『マイ・バック・ページ』(11年)の山下敦弘監督が、映画初主演となる乃木坂46の秋元真夏、生田絵梨花、橋本奈々未を迎えてユニークな構成で作り上げたアイドルムービー。北石器山高校の超能力研究部に所属し、日々超能力の訓練にいそしむ良子、育子、あずみは、楽々とスプーンを曲げていた同級生の森を強引に入部させる。「自分は宇宙人」と告白した森を故郷の星に帰してあげたいと考えた3人は、UFOを呼び寄せようと奮闘する。  乃木坂46のシングル「君の名は希望」のPVも手がけた山下監督が、同ビデオ内で行われたオーディションで選出した3人を起用。大橋裕之の連作短編漫画『シティライツ』を原作とする学園青春ドラマのパートと、彼女たちが山下監督から演出を受けたりオフの時間を過ごす様子などを収めたメイキング風のパートで構成した。後者はドキュメンタリータッチで描かれ、アイドルから女優へと成長する3人の生の姿が映し出されるのかと思いきや、彼女たちのマネジャーが過剰に干渉するあたりから雲行きが怪しくなり……。フェイクとリアルがあいまいに溶け合うメイキングパートと、ほのぼのとした高校生の日常に過激な言動も飛び出すドラマパートの相互作用もあり、アイドル=偶像の「虚」と「実」にまで迫る稀有な作品に仕上がった。  『チェイス!』(12月5日公開)は、本国インドをはじめ、各国でインド映画興収第1位を記録したアクション娯楽大作。米国シカゴでサーカス団を率いるマジシャンのサーヒル(アーミル・カーン)は、マジックとダンス、バイクの曲乗りを融合させたショーで人気を集めている。だが、彼は裏で金庫破りを繰り返し、かつて父を破滅させた銀行へ復讐する計画を進めていた。そんなサーヒルを追い、インドから敏腕刑事ジャイ(アビシェーク・バッチャン)が渡米。サーヒルの人生をかけた壮大なトリックと、ジャイの執念が激突する。  インド映画史上最大規模の製作費をかけ、シカゴでもチェイスシーンを含む大がかりなロケ撮影を敢行。高層ビルの壁面を垂直に駆け下りたり、バイクで張られたワイヤーの上を逃走したりと、奇想天外で刺激的なアクションが満載だ。クリストファー・ノーラン監督の『プレステージ』(06年)に似た、マジシャンの復讐をモチーフにしたストーリーも興味深く、インドの国民的女優カトリーナ・カイフを交えたダンスシーンの楽しさもボリウッド映画ならでは。ハリウッド映画に負けない、豪華で痛快なエンタテインメント大作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『超能力研究部の3人』作品情報 <http://eiga.com/movie/80953/> 『チェイス!』作品情報 <http://eiga.com/movie/79710/>