紳士たれ! スパイを志す青年の成長譚を痛快に描く!! 今週公開の2作品『キングスマン』 『天空の蜂』

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(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation
 今週取り上げる最新映画は、痛快ヒット作『キック・アス』(2010年)の原作者&監督コンビが放つ刺激と笑いが満載の英国製アクションと、江口洋介&本木雅弘共演で原発テロ犯との戦いを描く和製サスペンス。いずれもスリリングな展開が持ち味だが、前者が毒のあるユーモア、後者が家族愛を強調している点はそれぞれのお国柄といったところか。  『キングスマン』(公開中、R15+指定)は、マーク・ミラーのコミックを原作に、マシュー・ボーン監督が『英国王のスピーチ』(10年)のコリン・ファース主演で映画化したスタイリッシュで過激な新感覚スパイアクション。ロンドンの高級スーツ店を隠れみのにする独立諜報機関、「キングスマン」のエリートスパイ・ハリー(ファース)は、かつて自分の命を救った亡き同僚の息子エグジー(タロン・エガートン)から連絡を受ける。無軌道に生きていたエグジーを、ハリーはキングスマンの新人試験に推薦。候補生たちが危険な選考試験で絞り込まれる頃、IT富豪のヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)が、秘かに人類抹殺計画を進めていた。  英国紳士然として華麗に敵を倒すコリン・ファースと、やんちゃな熱血青年に扮する映画初出演のタロン・エガートンの組み合わせが、スパイ物というジャンル映画の温故知新に挑む本作のスタンスを端的に示している。ある事情でハリーが暴走する長尺のアクションや、とある状況下で大物たちの首が次々に飛ぶ終盤のスペクタクルなどは、残酷なのに絶妙なブラックユーモアのおかげで爆笑してしまう。ヴァレンタインの片腕で両足の義足が鋭利なブレードになっている美女ガゼル(ソフィア・ブテラ)も、『殺し屋1』を彷彿とさせる踵(かかと)落としが恐ろしくも魅力的な強烈キャラ。今年はスパイ映画の話題作が続々封切られているが、その中でも過激さと笑いの点で群を抜く大傑作だ。  『天空の蜂』(9月12日公開)は、東野圭吾が1995年に発表した同名小説を、『20世紀少年』シリーズの堤幸彦監督が映画化したサスペンス大作。95年8月、自衛隊用の最新大型ヘリコプター「ビッグB」を開発した設計士の湯原(江口洋介)は、妻と息子・高彦を連れて納入式典の会場を訪れる。高彦がこっそり乗り込んだビッグBが、何者かにより遠隔操作されて飛び立ち、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止。犯人は国内の全原発を破棄するよう要求し、従わなければ爆発物を積んだビックBを原発に墜落させると脅してくる。湯原は新陽の設計士・三島(本木雅弘)と協力し、高彦の救出と大惨事の回避を試みる。  まず驚かされるのは、今から20年も前に原発テロを題材とする小説を書き上げていた東野圭吾の先見性。安保法制をめぐる議論で原発テロのリスクも指摘される昨今、実にタイムリーな劇場公開となった。堤監督による演出は緊張感のコントロールが巧みで、実力派俳優らによる気迫のこもった演技も画面を引き締める。仲間由紀恵、綾野剛、柄本明ら共演陣も豪華。3・11を経験した私たちに、絵空事とは思えない切実なテーマを突きつけてくる意欲作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『キングスマン』作品情報 <http://eiga.com/movie/81623/> 『天空の蜂』作品情報 <http://eiga.com/movie/80517/>

大麻シーンだらけ!『テッド2』大ヒットで、日本にドラッグが蔓延する……!?

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(C)Tippett Studio/Universal Pictures and Media Rights Capital
 8月29~30日の国内映画ランキングが発表され、R15指定ながら『テッド2』が初登場1位の好スタートを切った。オープニング土日2日間で動員30万7,960人、興収4億4,200万円を記録。2012年に公開され興収42.3億円の大ヒットを記録した、前作『テッド』を上回る人気ぶりだ。  今作では、人格を持ったテディベアのテッドが人間と結婚、子どもを持つために「人権」を求める内容だ。テッドは「所有物」か「人間」か、という重いテーマにもかかわらず「R指定」。激しい下ネタもさることながら、前作にも増して大麻を吸いまくっているシーンのオンパレードなのだ。 「ストーリー的にはまったく必要がないシーンで、テッドと親友のジョン、ヒロインの弁護士3人が、眼前に広がる大麻畑を前にして『なんて美しいんだ』『言葉にならない。詩人を連れてくるべきだわ』と言いながら涙を浮かべたり、ジョンが離婚した妻と『一緒に(大麻を)やりたかったと告白、ヒロインが『趣味が合うのは大事』と同意するなど、まるで大麻を啓蒙するために盛り込んでいるように見えました。大麻畑にかぶせて、ジュラシックパークのテーマ曲が流れるのは、タイムリーで面白かったのですが(笑)」(映画ライター) 『テッド2』の公開に合わせて先日放映された『テッド』のテレビ版では、大麻部分はカット。シーン自体は重要であったため、つながりもおかしなことになってしまっていた。 「『テッド2』は、カットしきれないほど大麻シーンのオンパレードですから、地上波ではオンエアできないのでは。ちょっと大麻礼賛な感じがやりすぎ。テッドたちが当たり前に大麻を吸引しているので、ドラッグへのハードルがかなり下がりそうです。映画やDVDを観て、どれだけ気持ちがいいものなのかと、大麻に手を出す若者たちが増えてもおかしくはありません」(同)  もし『テッド3』があるなら、今度は大麻の合法化に向けてテッドが戦う物語になるのかも!?

あの豪快なパンチラが銀幕で! 今週公開の2作品『映画 みんな!エスパーだよ!』 『ヴィンセントが教えてくれたこと』

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(C)若杉公徳/講談社 (C)2015「映画 みんな!エスパーだよ!」製作委員会
 今週取り上げる最新映画は、売れっ子監督・園子温が手がけた人気テレビドラマの劇場版と、ビル・マーレイ主演の心温まるコメディ。前者はおバカなストーリーとセクシーな女優陣、後者は演技達者の主要キャストによるアンサンブルと、それぞれ見どころは異なるが、笑いと感動で気分転換にうってつけの2作品だ(いずれも公開中)。  『映画 みんな!エスパーだよ!』は、若杉公徳の人気コミックを園子温演出、染谷将太主演でドラマ化した『みんな!エスパーだよ』(テレビ東京系)の劇場版。愛知県東三河に住む高校2年生の嘉郎は、ある日突然、人の心の声が聞こえるテレパシー能力に目覚める。超能力研究者の浅見教授は、嘉郎や同じく超能力に目覚めたエスパーたちを招集。頼りない嘉郎らに、悪のエスパーが進める「人類エロ化計画」を阻止して世界を救うよう告げる。  Wヒロインにモデル出身の池田エライザと園映画に出演が続く真野恵里菜を配したほか、神楽坂恵、高橋メアリージュン、冨手麻妙、サヘル・ローズ、篠崎愛など、とにかく女優陣が豪華だ。染谷は主演作の『寄生獣』(2014年)と同様、非現実的なシチュエーションでキャラにリアリティーを持たせる稀有な才能を発揮。過去の作品でも豪快なパンチラにこだわってきた園子温監督が、本作でもパンチラをはじめ、水着・下着のセクシーショットを大盤振る舞い。中2男子が妄想するファンタジーを全力で実写化したような、園監督の振り切った演出と女優たちの露出度満点の演技を楽しみたい。  『ヴィンセントが教えてくれたこと』は、ビル・マーレイ主演のハートウォーミング・コメディ。酒とギャンブルだけが生きがいの偏屈な老人ヴィンセント(マーレイ)は、隣に引っ越してきたシングルマザーのマギー(メリッサ・マッカーシー)から、仕事中に12歳の息子オリバーを預かるよう頼まれる。時給12ドルでしぶしぶ引き受けたヴィンセントだったが、不思議とウマが合うオリバーをあちこち連れて歩き、いじめっ子の撃退方法も伝授。大きく年の離れた2人にいつしか友情が芽生えるが、オリバーをバーや競馬場に連れて行った事実が発覚し、交流を断たれてしまう。  監督・脚本はCM出身の新人セオドア・メルフィ。主役オファーを快諾したマーレイが、世捨て人のような暮らしぶりの不良ジジイが少年との交流を通じて次第に生きる意思を取り戻す姿を、哀愁とユーモアに満ちた渋い演技で魅せる。コミカルな役柄が多いメリッサ・マッカーシーがシリアスな演技に徹し、妊婦ストリッパーに扮するナオミ・ワッツのはすっぱな雰囲気もいい。マーレイが自ら歌うボブ・ディランの「シェルター・フロム・ザ・ストーム」など、挿入される音楽も効果的。老人と少年の変則的なバディムービーは、目いっぱい笑えて、しみじみと味わい深い逸品だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 「映画 みんな!エスパーだよ!」作品情報 <http://eiga.com/movie/81853/> 「ヴィンセントが教えてくれたこと」作品情報 <http://eiga.com/movie/81272/>

10カ月で体重20~30kg増減する『俺物語!!』鈴木亮平の“役者魂”がストイックすぎる!!

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「映画『俺物語!!』」(集英社/2015映画「俺物語!!」製作委員会)
「また2カ月で30キロの減量をしたのですが、本人は『Mなので楽しみを感じてますよ!』と、たび重なる体重増減を楽しんでるようです。ただ一緒に仕事をしてる側からすれば、健康面は大丈夫なのかなって思いますよね。昨年の10月から、10カ月で20~30キロの増減を繰り返してますからね……」(映画関係者)  先日、映画『俺物語!!』(10月31日公開予定)に主演するにあたって、30キロ増量したことが話題になった鈴木亮平。その前に『天皇の料理番』(TBS系)で20キロの減量をしていたことから、その増減ぶりが注目された。 「実は、この8月から9月まで、一昨年に公開された映画『HK/変態仮面』の続編の撮影をしているんです。『俺物語!!』で増やした30キロを落として、かつ、前回と同じように肉体美を作り上げる必要がありますからね。普通に考えたら到底できないのですが、鈴木さんはそれを楽しんでますよね。『役者冥利につきますよ!』とノリノリでしたよ」(芸能事務所関係者)  ただ、各方面で話題になった『天皇の料理番』での役作りは、現場もかなり気を使っていたという。 「現場にケータリングが来ても、差し入れがあっても、一切手をつけていませんでした。基本的に固形物は口にしていませんでしたね。ほとんど水しか飲んでいなかったと思いますよ。主演の佐藤健さんも『食べづらいよね……』と、苦笑いしていました。実際、鈴木さんのシーンの現場は、何かを口にできるような雰囲気ではなかったですね。それくらい、鈴木さんの気迫がすごかったです」(TBS関係者)  実際、鈴木の減量方法について本人に聞いたところ、「特別、ジムに行ったり専門のトレーナをつけたりせずに、本を読んでトレーニングをしているようです。食事面でも、特別なことはしていないようです。基本的に“食べない”という減量方法で、ファスティングを定期的に行って調整しているようですよ」(同)  そこまで肉体面でのビジュアル作りにこだわる理由を聞いてみると、 「本人は『特に漫画原作だとこだわりますね。読者はそのキャラの画を見てますからね。どこまでそれに近づけられるかは役者の仕事ですよ』と言っていました。また、デビューが遅かったことも気にしていて、『人一倍努力しないといけないんです。少々、食べないくらい、我慢しないといけないんですよ。ただ、死にそうなくらいしんどいですけどね』と笑いながら言っていました。『俺物語!!』の時は、一度15キロ増量してから筋トレで体を作っていったようです。『HK』は、もともと30キロ増量した後なので、前回よりはやりやすいんじゃないですかね。少なくとも、増やす必要はないですからね。ただ、10月クールもなんらかの連ドラに出るでしょうから、そのときどういう役をやるのかも楽しみですよね」(別の芸能事務所関係者)  “カメレオン俳優”ならぬ、“リバウンド俳優”とでも言うべきか。

戦後70年に見たい、注目の2作品『ふたつの名前を持つ少年』『この国の空』

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(C)2013 Bittersuess Pictures
 今週取り上げる最新映画は、戦後70年を迎える今夏、戦争をテーマに数多く公開される内外の新作の中でも特に注目すべき2作品。邦画と洋画の違いはあれど、市民の目線から戦争の理不尽さを描く姿勢は共通している。  『この国の空』(公開中)は、高井有一による谷崎潤一郎賞受賞作の同名小説を、ベテラン脚本家の荒井晴彦が18年ぶりにメガホンをとって映画化した人間ドラマ。昭和20年、米軍による空襲が始まっていた東京の杉並で、19歳の里子(二階堂ふみ)は、母(工藤夕貴)と健気に暮らしていた。妻子を疎開させた隣家の銀行支店長・市毛(長谷川博己)の身の回りの世話をするようになった里子は、戦況が悪化する中、結婚できないまま死ぬのではと不安を抱えながら、次第に女として目覚めていく。  役とほぼ同年齢の二階堂が、少女の無垢さの中に女の艶っぽさが芽生える頃の女性を、存在感たっぷりに体現。母役の工藤、途中から同居する伯母を演じた富田靖子と共に、女3人での口論や食事の場面にもリアリティーを感じさせる。若干冗長に感じられる部分もあるが、時代の閉塞感と市井の人々の葛藤がじわじわと迫り、深い余韻を残す1本だ。 『ふたつの名前を持つ少年』(8月15日公開)は、ポーランド人作家ウーリー・オルレブが実話を基にした児童文学『走れ、走って逃げろ』を原作に、短編やドキュメンタリーで実績のあるドイツのペペ・ダンカート監督が映画化した感動作。1942年夏、ポーランドのユダヤ人強制居住区から脱走した8歳の少年スルリックは、森で半年生活した後、凍死寸前で行き倒れたところをヤンチック夫人に救われる。少年の愛らしさと賢さに気づいた夫人は、彼が1人で生きていけるよう「ポーランド人孤児ユレク」としての身の上話を教え込む。少年はユレクを名乗り、ユダヤ人狩りを続けるナチスから必死に逃れながら、寝床と食べ物を求めて農村の家を渡り歩くようになる。  主人公は、700人以上のオーディションを勝ち抜いた双子のアンジェイ・トカチとカミルがシーンによって演じ分けた。時代が生んだ圧倒的な力と過酷な試練を象徴する広大な自然のワイドショットと、ちっぽけな少年の対比が印象的。森暮らしで生き抜く知恵を共有する子どもたち、身の危険を感じながらユレクを助けるポーランド人たちに救われる思いがする。少年の立場だったら、あるいは彼と出会った大人の立場だったら、同じように勇気ある行動ができるだろうか――そんな自問をうながす、力強いメッセージを秘めた作品だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『この国の空』作品情報 <http://eiga.com/movie/81191/> 『ふたつの名前を持つ少年』作品情報 <http://eiga.com/movie/81913/>

今度のイーサン・ハントは、軍用機のドアに張り付き……『ミッション:インポッシブル』最新作 

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(C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
 今週取り上げる最新映画は、トム・クルーズが不可能ミッションに挑む大ヒットシリーズの第5作と、70年前の8月に日本が終戦を迎えるまでの舞台裏を描く歴史大作。いずれも一流のサスペンス演出に引き込まれる、この夏見るべき2作品だ。  『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(公開中)は、トム・クルーズ主演の人気スパイアクション『ミッション:インポッシブル』のシリーズ最新作。イーサン・ハント率いるCIAの特殊作戦部IMFは、多国籍スパイ組織「シンジケート」の暗躍により、解体の危機に陥る。イーサンはシンジケートの追跡中、逆に拉致されてしまうが、拷問の直前に謎の美女から助けられ脱出。組織の後ろ盾を失ったイーサンと仲間たちは、秘密裏に行動しながら、シンジケートせん滅という最難関のミッションに挑む。  主演のクルーズが毎回、自ら高難度のスタントを敢行する姿も見どころになっている本シリーズ。今回は、離陸する軍用機のドア外部に張り付き、時速400キロで高度1,500メートルに上昇する機体内へ侵入するという冒頭のシーンが圧巻だ。『ユージュアル・サスペクツ』(1996年)でアカデミー賞脚本賞を獲得したクリストファー・マッカリー(本作では監督・脚本)の巧みな采配で、IMFにシンジケート、それに英秘密情報部MI6も絡む三つ巴の諜報バトルがスリリングに展開。IMFのメンバーに扮するサイモン・ペッグ、ジェレミー・レナーら主演級スターたちの掛け合いも楽しい。極限のアクションと王道のサスペンスに、優雅さと笑いも有機的に結びついた、今夏屈指の傑作エンタテインメントだ。  『日本のいちばん長い日』(8月8日公開)は、『駆込み女と駆出し男』(15年)の大ヒットも記憶に新しい原田眞人監督が、役所広司を主演に迎えて描く群像歴史ドラマ。太平洋戦争末期の1945年7月、日本は連合国からポツダム宣言受諾を要求される。降伏か本土決戦か、連日連夜の閣議で結論が出ないまま、8月、広島と長崎に原子爆弾が投下される。阿南陸軍大臣(役所)や鈴木貫太郎首相(山崎努)、そして昭和天皇(本木雅弘)が決断に苦悩している頃、畑中陸軍少佐(松坂桃李)は決戦派の仲間らとクーデターを画策していた。  原作は半藤一利のノンフィクション『日本のいちばん長い日 決定版』。8月15日の玉音放送までに、閣議で決戦・降伏をめぐり激論と駆け引きが繰り広げられていたこと、さらに若手将校らによるクーデター計画が進行していたことが、サスペンスに満ちた演出で描かれる。役所の硬軟使い分けた円熟の演技、山崎の重厚な存在感、本木の気品ある所作が、セピア調の映像になじんで一層味わい深い。優男の印象が強い松坂は、丸刈りでイメージを一新、血気盛んなクーデター首謀者を熱演。戦後70年にふさわしい、ずっしりとした見応えの力作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』作品情報 <http://eiga.com/movie/80973/> 『日本のいちばん長い日』作品情報 <http://eiga.com/movie/81487/>

シュワちゃん扮するT-800が「3世代」で活躍!『ターミネーター』

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(C)2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、あのシュワちゃんが「アイルビーバック」の決め台詞と共に帰ってきた人気シリーズのリブート作と、トリンドル玲奈・篠田麻里子・真野恵里菜のトリプルヒロインが話題の園子温監督作。方向性は異なるが、激しいアクションと予想外の展開で、ジメジメした梅雨どきの気分をスカッと晴らせてくれる2作品だ。    『ターミネーター:新起動 ジェニシス』(公開中、2D/3D上映)は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の大ヒットSFアクション「ターミネーター」(82)のシリーズ第5作。2029年に人類抵抗軍が機械軍に勝利を収める目前、抵抗軍主導者ジョン・コナーの母サラを歴史から抹消するため、機械軍は殺人マシン「T-800ターミネーター」を1984年に送り込む。ジョンの部下カイルがサラ抹殺を阻止するため1984年に到着すると、液体金属型T-1000に急襲され、さらに中年姿のT-800も現れる。  シュワルツェネッガーだけでなく、ジェームズ・キャメロン監督にとっても出世作となった『ターミネーター』。『マイティ・ソー ダーク・ワールド』のアラン・テイラー監督をはじめとする本作のスタッフ陣は、キャメロンがメガホンをとった第1作、第2作を大いにリスペクトしつつ、過去が書き換えられたことでタイムラインが変わるという解釈で新たなストーリーを展開。シュワちゃん扮するT-800が、CGと特殊メイクも駆使され青年・中年・初老と「3世代」のルックスで活躍するほか、ファンにはお馴染みの主要キャラクターたちも微妙に設定が変わって興味をかき立てる。シリーズの過去作を未見の人、観たけど忘れたという人は、少なくとも1作目と2作目は予習しておくと、本作とのさまざまなリンクをより一層楽しめるはずだ。  『リアル鬼ごっこ』(7月11日公開、R15+指定)は、山田悠介の同名ベストセラー小説を原作に、『新宿スワン』『ラブ&ピース』と新作公開が相次ぐ園子温監督がオリジナル脚本で新たに映画化したアクションホラー。女子校の旅行で級友らと貸切バスに乗っていたミツコ(トリンドル玲奈)は、偶然かがんだ瞬間にバスが見えない力で上下真っ二つに切断され、ただ一人生き残る。逃げた先の学校でも、教師らが機関銃で女子高生たちの皆殺しを開始。結婚式を控えたケイコ(篠田麻里子)、マラソン大会で出走中のいづみ(真野恵里菜)も、理不尽な大量虐殺が繰り広げられる中、生き残るため必死に逃走する。  原作の「全国の佐藤さんが鬼に殺される」という設定を、「全国のJKが殺される」筋書きへと大胆に変更。トリプルヒロインにアイドルタレント3人を配したにもかかわらず、スプラッター全開、「切り株」満載という、園監督らしい過激な娯楽作に仕上がった。トリンドル玲奈の、小鹿のような細長い手足を持て余し気味に走る姿がいい。思えば「鬼ごっこ」とは、鬼と子の役をそれぞれ演じる原始的なロールプレイングであり、演劇や映画、RPGの先祖のようなもの。そう考えると、ラストで明らかになる園監督の翻案のキモは、理にかなった帰結であるとともに、映画の原点を見つめ直す試みといえるのかもしれない。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ターミネーター:新起動 ジェニシス』作品情報 <http://eiga.com/movie/80340/> 『リアル鬼ごっこ』作品情報 <http://eiga.com/movie/81818/>

ジュリアン・ムーアの圧倒的な演技力は必見! 今週末公開『アリスのままで』

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(C)2014 BSM Studio. All Rights Reserved.
 今週取り上げる最新映画は、アカデミー賞主演女優賞を獲得したジュリアン・ムーアの名演が光るハリウッド作品と、世界遺産の絶景と辛辣な対話の応酬が印象的なカンヌ・パルムドール受賞作。娯楽大作が相次ぎ封切られるゴールデンウイークと夏休みの谷間にあたるこの時期、人間の内面に向き合うドラマ映画をじっくり味わうのも一興だ(いずれも6月27日公開)。  『アリスのままで』は、認知症研究者が著した全米ベストセラー小説を、ジュリアン・ムーア主演で映画化したドラマ。言語学者で大学教授のアリスは50歳になった頃、講演中に言葉を思い出せなくなったり、いつものジョギングコースで道に迷うといった異変を経験。検査を受けたところ、若年性アルツハイマー症と診断される。家族の介護も空しく、徐々に記憶と知識を失い、講義に支障を来たして大学も辞めることになったアリス。ある日彼女は、かつて自分宛てにパソコンに保存した動画メッセージを見つけ、「自分のままで」いるためのある行動を実行しようとする。  言語の権威が言葉と知性を失っていくという残酷かつ劇的な過程を、ジュリアン・ムーアが圧倒的な演技力でリアルに表現。アカデミー賞をはじめ、各国で22の主演女優賞を獲得する快挙となった。自身も難病ALS(筋委縮性側索硬化症)を抱えるリチャード・グラッツァーと、英国出身のウォッシュ・ウエストモアランドが共同で監督。アリス以外の風景がぼやけた映像で、見当識を失ったときの不安と恐怖を表現するなど、優れたカメラワークと編集で登場人物の内面を活写した。夫役のアレック・ボールドウィン、娘役のケイト・ボスワースとクリステン・スチュワートら、家族のアンサンブルも見応え十分だ。  『雪の轍』は、トルコの巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督が、2014年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール大賞を受賞した重厚な人間ドラマ。親から莫大な資産を受け継いだ元舞台俳優のアイドゥンは、奇岩群で知られるカッパドキアで洞窟ホテル・オセロのオーナーとして、何不自由なく暮らしている。しかし、慈善活動に打ち込む若く美しい妻や、何かと批判的な出戻りの妹との会話は、互いの神経を逆なで、溝が深まるばかり。家賃を滞納する貧しい一家との関係も、アイドゥンと妻に暗い影を投げかけていく。  世界遺産カッパドキアのエキゾチックな景観と、胎内を思わせる洞窟ホテルの部屋が、人間の本質をむき出しにするかのような会話劇の舞台として秀逸。何もそこまで言わなくても、と思わず止めたくなるほどの攻撃的な批判の応酬が物語を駆動し、雪に刻まれた轍のようにどこまでも平行線をたどる。対話の強度と、秋から冬にかけてのカッパドキアの魅力的な表情が、3時間16分という長尺を感じさせない。ジェイラン監督作で日本での劇場公開はこれが初めてだが、日本の映画ファンにも広く支持されるに違いない傑作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『アリスのままで』作品情報 <http://eiga.com/movie/81382/> 『雪の轍』作品情報 <http://eiga.com/movie/80441/>

主役級女優が演じる四姉妹! 美しい家族愛を描いた、是枝監督の最新作『海街diary』

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(c)2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ
 今週取り上げる最新映画は、世界的にも評価の高い是枝裕和と、マニアックな支持を集める冨永昌敬、2人の個性派監督による待望の新作。それぞれ鎌倉と水戸でロケを行い、地方の街並みと自然をドラマの背景として有効に機能させている点も見どころだ(いずれも6月13日公開)。  『海街diary』は、吉田秋生の人気コミックを原作に、『そして父になる』(2013年)の是枝裕和監督が主役級の人気女優4人を揃えて実写映画化した作品。鎌倉の古い一軒家で暮らす長女・幸(綾瀬はるか)、次女・佳乃(長澤まさみ)、三女・千佳(夏帆)の香田家3姉妹のもとに、15年前に家族を捨てて出ていった父の訃報が届く。山形での葬儀に出席した3人は、そこで腹違いの妹すず(広瀬すず)と対面。実母と既に死別していたため身寄りのなくなったすずが、葬儀の場で気丈に振る舞う姿を見た幸は、すずに「鎌倉で一緒に暮らさない?」と声をかける。提案を受け入れたすずが鎌倉に引っ越してきて、四姉妹の新たな生活が始まる。  女優4人の魅力を活かしつつ、姉妹のキャラクターを明瞭に描き分ける是枝監督のしなやかな演出が光る。生真面目な役柄の綾瀬と、奔放で露出度高めの長澤が好対照。広瀬はある意味別格の扱いで、成長の一瞬一瞬を映像に刻むかのようなイメージビデオ風のシーンが美しい。菅野よう子による音楽はつつましく情感に寄り添う。さらに波、雨、風、鳥、虫といった環境音も繊細にとらえられ、趣いっぱいに鎌倉の風情が広がる。身近な人の死を通じて生と絆の価値を実感する四姉妹の物語は、親子やきょうだいのあり方という、忘れがちだが大切な普遍のテーマを改めて思い出させてくれる。  『ローリング』は、『パビリオン山椒魚』(06年)、『乱暴と待機』(10年)の冨永昌敬監督が、水戸短編映像祭で縁のある茨城県水戸市で全編ロケを敢行して描いたオリジナル作品。水戸のおしぼり業者で働く貫一(三浦貴大)は、10年前に通った高校で盗撮事件を起こし失踪していた元教師の権藤(川瀬陽太)と再会する。権藤はかつての教え子たちから糾弾され面目を失い、さらに東京から連れて来ていたキャバクラ嬢みはり(柳英里紗)が貫一に奪われてしまう。一方、かつて権藤が盗撮した動画に貫一の悪友たちが目をつけたことで、芸能事務所を巻き込む騒動に発展する。  リリー・フランキーにダチョウ倶楽部・上島竜兵を足したような風貌の川瀬陽太が演じる権藤のダメ人間っぷりがたまらない。今年9本もの出演作が公開される売れっ子・柳英里紗は、ふわっとした存在感を漂わせつつ、三浦貴大とのベッドシーンでは生々しいエロスを印象づける。哀愁と自虐が笑いを誘う川瀬のナレーション、人を食ったような渡邊琢磨の音楽、オフビート気味にぐいぐい進むストーリーがからみ合い、独特の冨永ワールドが展開。ハードディスクをドリルで破壊、ソーラーパネル詐欺、原発労働といった今どきのネタをさらりと盛り込んで、東京と地方の関係や格差社会の問題というより大きな構図を示唆している点も見逃せない。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『海街diary』作品情報 http://eiga.com/movie/80446/ 『ローリング』作品情報 http://eiga.com/movie/81845/

ジョージ・クルーニーのディズニー初出演映画 話題のSF大作『トゥモローランド』

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(C) 2015 Disney Enterprise,inc. All Rights Reserved./配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
 今週取り上げる最新映画は、スペクタクルな視覚効果とスリリングな展開が魅力のハリウッド製娯楽大作2本。新進スターが輝く若者向け映画のようでいて、奥行きある世界観や批評的な視点が幅広い世代の観客にアピールする充実作だ。  『トゥモローランド』(6月6日公開)は、『Mr.インクレディブル』(2004年)、『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(11年)のブラッド・バード監督が、ディズニー映画初出演となるジョージ・クルーニーを迎えて描くSFアドベンチャー。1964年のニューヨーク万博に自作のジェットパックを持ち込んだ発明少年フランクは、美少女アテナに導かれて秘密のルートを抜け、超ハイテク都市空間「トゥモローランド」にたどり着く。時は流れて現代、宇宙旅行を夢見る女子高生ケイシーは、手荷物に紛れていたピンバッジの不思議な力により、別世界にそびえ立つトゥモローランドを訪れて驚嘆する。現実に戻ったケイシーは、バッジを奪われそうになるピンチをアテナに救われ、孤独な中年男になっていたフランク(クルーニー)と共に、再びトゥモローランドを目指す。  ウォルト・ディズニーが晩年に構想した実験的未来都市がモチーフになったという本作。ジェットパックで空を飛んだり、ガラス張りのモノレールでハイテク都市を俯瞰したり、パリ某所からスチームパンク風の宇宙船で飛び立ったりと、テーマパークのライドを思わせる冒険が満載だ。主要キャストで特筆すべきは、アテナ役のキュートなそばかすっ娘、ラフィー・キャシディ。『つぐない』(07年)でシアーシャ・ローナンが、『キック・アス』(10年)でクロエ・グレース・モレッツが一躍スターになったときと同様の存在感と演技力で、2人に続く若手女優の逸材として今後も要注目だ。  『ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』(公開中)は、人気ヤングアダルト小説を原作にジェニファー・ローレンス主演で映画化した『ハンガー・ゲーム』(12年)シリーズの3作目にして、完結編2部作の前編。独裁国家パネムが主催する殺人サバイバルゲームの闘技場から、危機一髪で反乱軍に救出されたカットニス(ローレンス)は、コイン首相(ジュリアン・ムーア)率いる反乱軍とともに戦うことを決意する。これに対し、パネムのスノー大統領はカットニスの盟友ピータ(ジョシュ・ハッチャーソン)を人質に取り、抵抗勢力を抑えようと画策。政府軍の爆撃をしのいだ反乱軍は、ピータ救出作戦を決行する。  主人公の人物像がフランス革命のジャンヌ・ダルクを模していることは第1作から明らかだが、いよいよ今作ではカットニス自身が革命の象徴となることを受け入れ、抑圧された人民を鼓舞する役割を担うことになる。両陣営がメディア合戦を繰り広げるなか、カットニスがカメラの前で革命のシンボルを「演じる」舞台裏を見せる場面もあり、現代の戦争とメディアの関係をシニカルに笑うかのよう。昨年2月に他界したフィリップ・シーモア・ホフマンは、存命中に本作と次作『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』(今冬公開予定)の出演シーンの撮影を済ませており、憂いを称えた表情が胸を打つ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『トゥモローランド』作品情報 http://eiga.com/movie/79351/ 『ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』作品情報 http://eiga.com/movie/80330/