理想の恋人という偶像(アイドル)を追い求めてしまう若者の哀しい心理『エクス・マキナ』

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映画『エクス・マキナ』に登場する女性型ロボットのエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)。今年のアカデミー賞で視覚効果賞を受賞。
 男はいくつになっても、理想の女性像を追い求めてしまうものらしい。友松直之監督の『老人とラブドール』(09)や城定秀夫監督の『ユリア100式』(09)といった独身男性と女性型アンドロイドとのラブロマンスを描いたファンタジー作品は男たちの涙腺を刺激してやまない。その一方で、自分の理想像を現実世界の女性に身勝手に押し付けた「元アイドル刺傷事件」という悲惨な事件が起きてしまった。多くの男は思う。犯人はなぜ生身の女性に稚拙な理想像を求めたのだろうと。そんな自分に都合のいい理想の女性なんて実在するはずないのにと。現実の世界には理想の女性は実在しない。それゆえに、余計に自分の脳内にいる理想の恋人が愛しく思えてくる。『わたしを離さないで』(10)の脚本家として知られるアレックス・ガーランドの監督デビュー作『エクス・マキナ』は、最新のAI(人工知能)を搭載した女性型ロボットに恋をしてしまう若者を主人公にした興味深い内容となっている。  主人公である青年ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は検索エンジンで有名な巨大IT企業に勤めるプログラマー。企業内の抽選に運良く当たり、普段は姿を見せない社長が暮らす豪邸に招待される。人里離れた山奥に建つ社長宅にヘリコプターで向かうケイレブ。厳重なセキュリティーシステムに守られた自宅にひとりで暮らす社長・ネイサン(オスカー・アイザック)はアスペルガー系かと思わせるかなりの変人。どうやらケイレブは社長と親睦を深めるために呼ばれたわけではないらしい。ここ社長宅は隔離された研究施設でもあり、ネイサンは最新のAIの開発を進めていた。そのAIの性能を確かめる“チューリングテスト”の質問者としてケイレブが選ばれたのだ。  社長のネイサンが開発したAIを見て、ケイレブは思わず息を呑んだ。AIは女性型ロボットに搭載されており、若く美しい女性の顔の下のボディ部分はスケルトン状になっており、配線の様子が覗いてみえる。ロボットを人間に似せれば似せるほど“不気味の谷”を感じさせるはずなのに、そのアンバランスで無防備な姿が何とも艶かしい。しかもエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)と名乗る女性ロボットは優れたAIを備え、初々しくも知的な会話が2人の間で交わされる。ボーイ・ミーツ・ガール。思春期の頃に両親を亡くし、淋しい生活を送ってきたケイレブはテストを重ねるごとに、どうしようもなくエヴァに魅了されていく。エヴァこそ、ケイレブにとって理想の女性だった。  エヴァを演じたアリシア・ヴィキャンデルは、『リリーのすべて』(15)で今年のアカデミー賞助演女優賞を受賞したスウェーデン出身の若手女優。生まれて間もないエヴァのあどけなさ、そして次期AIが開発されれば廃棄処分となるという運命を背負った哀しみを顔の表情で巧みに演じてみせる。物語の中盤、丸坊主だったエヴァはウィッグを被り、ソックスを履き、カーディガンを羽織ってテストに臨む。特にこのソックスを履くシーンは堪らない。足フェチならずとも、多くの男性はときめきを覚えてしまうだろう。ロボットなのに、エヴァはなんてエロチックなんだ。そんなギャップが、さらにケイレブの欲情を募らせる。
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メタル感とメッシュ地の組み合わせが、エヴァに新鮮な魅力を与えている。スケルトン状のボディが、何とも色っぽい。
 ケイレブとの会話を重ねることで、エヴァは自分の言動によって男性はどんなリアクションをするのかを学び、ケイレブに対して恥じらいの表情を見せ、おねだりすることを覚えるようになっていく。わずか数日間で、どんどん人間の女性に近い存在となっていく。これはもうチューリングテストというよりは、人間と機械との間に芽生えた恋愛感情である。もうすぐテストが終了すれば、エヴァはその役目を果たし、AIは初期化されてしまう。ケイレブはようやく出会えた理想の恋人を失ってしまうことになる。ケイレブはエヴァを連れて、ネイサン宅から逃げ出すことを考え始める。『旧約聖書』の創世記に記されたアダムとイブのように、エヴァもまた知恵を身に付けたことでケイレブを誘惑しようとしているのか。まるで機械仕掛け(エクス・マキナ)の失楽園を我々は目撃しているような気分になってくる。  理想の女性は現実には存在しない。多くの男性が思い描く理想の女性像は、幼かった自分にあらん限りの愛情を注いでくれた若き日の母親の面影だろう。もしくは恋愛初期段階で脳内物質が活発に働き、まぶしく映った異性の一瞬の姿ではないか。やがて恋が醒めると、冷ややかに相手のことを見ている自分がいることに気づく。仮に理想の女性がいたとしても、それは男性側の一方的な思い込みか、理想像を演じる女性の演技力のたまものに他ならない。  理想の女性なんて、どこにも存在しない。もし存在するとすれば、それは想像の世界のものだ。想像の世界と現実の世界を混同してしまうと、小金井市で起きたような悲惨な事件を招いてしまう。でもいつか、テクノロジーの進歩によって、本当にエヴァが誕生する日が訪れるかもしれない。果たして、それは楽園時代の再来なのだろうか。想像の世界と現実の世界との結界が崩れた、危険な時代となる可能性もある。新しく生まれてくるエヴァは、偏屈で古臭い思考回路しか持たない生身の男の手には負えるような代物ではないことは確かだろう。 (文=長野辰次)
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『エクス・マキナ』 監督・脚本/アレックス・ガーランド 出演/ドーナル・グリーソン、アリシア・ヴィキャンデル、オスカー・アイザック、ソノヤ・ミズノ 配給/ユニバーサル映画、パルコ R15+ 6月11日(土)より渋谷シネクイントほか全国ロードショー (c)Universal Pictures http://exmachina-movie.jp

映画史上もっとも“陰鬱な日本映画”月間が到来!! 無差別暴行、連続殺人鬼ほかドス黒映画が集中公開

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真利子哲也監督の商業デビュー作『ディストラクション・ベイビーズ』。もともとの題名は『喧嘩のすべて』だった。
 映画史上もっとも“陰鬱な日本映画”月間と呼びたい。柳楽優弥と菅田将暉が無差別暴行魔に扮した暴力ロードムービー『ディストラクション・ベイビーズ』が5月21日から劇場公開されたのに続き、V6の森田剛がストーカー&連続殺人鬼役で迫真の演技を見せている犯罪サスペンス『ヒメアノ~ル』が同28日より公開。さらに神戸児童無差別殺傷事件ほか幾つかの実在の事件をベースにした加害者家族の崩壊劇『葛城事件』、北九州監禁連続殺人事件や尼崎連続変死事件を連想させる黒沢清監督作『クリーピー 偽りの隣人』が6月18日(土)に同日公開。日本中の警察組織を震撼させた“稲葉事件”の悪徳刑事に綾野剛が渾身の演技で成り切ってみせた実録犯罪もの『日本で一番悪い奴ら』も6月25日(土)の公開日を待っている。  どの作品も口当たりのよい作品ではない。ハードなバイオレンスシーンが盛り込まれた犯罪映画&社会派作品が、短期間にこれほど次々と公開されるのも珍しい。配給会社はそれぞれ異なるため、偶然ではあるわけだが、これだけ一時期に集中することになった映画業界の背景を探ってみよう。雑誌編集者に話を聞いてみた。 「最近の日本映画で活気があるのは、『ちはやふる』など少女コミックの実写化作品。少女コミックの映画化は、人気原作を押さえられれば確実にファン層を動員でき、若手キャストの顔を売ることもでき、製作費もあまり掛からない。それで10億円程度の興収が望める。原作も売れ、winwinな企画なんです(笑)。今はどの映画会社も10代の女の子向けコミックの映画化を競っている状況ですね。でも、誰が監督なのか、よく分からないような作品がほとんど。そんな風潮に反発する製作者も少なくないと思います。気骨ある映画人たちの熱気が、ここに来ていっきに溢れ出したような印象を受けますね。『チェイサー』など実録犯罪ものの傑作が次々と生まれた近年の韓国映画を思わせ、映画好きには見応えのある作品ばかりです」(映画誌編集者)  昨年公開された桐谷美玲主演作『ヒロイン失格』や有村架純主演作『ストロボ・エッジ』は共に23億円の大ヒットに。少女コミックの映画化は学園を舞台にしたものが多く、キャストも若いため、製作費を抑えることができる。確かに映画会社にとっては美味しい企画に違いない。映画界の内情について、東京テアトルの大場渉太宣伝プロデューサーに聞いてみた。 「GWや夏休みのようなお客さんの掻き入れどきは、レイティングの掛かった作品はなかなか公開しにくいという事情があります。それでGWと夏休みの狭間となるこの時期に、エッジの効いた作品が集中することになったのでしょう。ヒットが期待できるコミック原作の映画は映画会社にとっては有り難い作品ですが、コミック映画ばかり作られている現状に危機感を感じている製作者は確かにいます。TBSが東宝に持ち込んだ『64 ロクヨン』は当初は重い社会派作品を二部作として公開することを危ぶむ声があったそうですが、主演の佐藤浩市の熱演もあって、前編は好スタートを切っています。東京テアトルが配給している『ディストラクション・ベイビーズ』は製作費も宣伝費も限られた作品ですが、柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎とブレイク中の若手キャストがそろっています。普段はコミックものなどの原作付きの作品に出演することの多い彼らですが、今回は新鋭・真利子哲也監督のオリジナル作品であり、地方都市で暮らすひとりの若者の暴力衝動に、同じようにくすぶって生きてきた少年や少女が感化されていくという異色作。真利子監督と一緒にゼロから役づくりしていくことが、キ ャストにとって新鮮で充実感のある現場だったそうです。作品に触れた観客も必ず刺激を受ける作品になっているので、テアトル新宿を中心にロングランできる作品に育てていきたいですね」(大場渉太宣伝プロデューサー)
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『その夜の侍』で監督デビューした赤堀雅秋監督の第2作『葛城事件』。家族が崩壊していく姿を冷徹に見据えている。
『ディストラクション・ベイビーズ』は若いキャストや監督たちに、将来の映画界を担って欲しいという想いも寄せられた作品のようだ。ちなみに大場プロデューサーは日活から東京テアトルに出向している身。日活が製作した『ヒメアノ~ル』『日本で一番悪い奴ら』についても聞いてみた。 「吉田恵輔監督の『ヒメアノ~ル』は古谷実さんのコミックが原作ですが、これはプロデューサーがオファーしたものではなく、吉田監督がずっと前から映画化を希望していたもの。企画にGOサインが出たのは、やはり日活が製作・配給した白石和彌監督の『凶悪』の成功が大きい。ピエール瀧、リリー・フランキーが実在の凶悪犯を演じた『凶悪』が単館系では大ヒットといえる2億円の興収結果を残したことで、犯罪ものもうまく作ればビジネスとしても成功することが分かった。『ヒメアノ~ル』はV6の森田剛が出演OKしたことも大きな決め手になったでしょう。白石監督の新作『日本で一番悪い奴ら』は、綾野剛主演作として『凶悪』以上のヒットが狙える作品。俳優たちも実人生では経験できないようなハードな役を演じることを望んでいるんだと思いますよ」  三浦友和が殺人犯の父親という難役を演じたシリアスドラマ『葛城事件』、西島秀俊が犯罪心理学者に扮した『クリーピー 偽りの隣人』は、どちらも温かく幸せなはずの家庭の中にドス黒い暗黒面が潜んでいることを暴き出した作品。他人事だとは言い切れない怖さがある。今回取り上げた“陰鬱な日本映画”は、華やかな少女コミック原作の映画とは真逆のベクトルにあるものばかり。キャストのみならず観客にすら“痛み”を強いるが、それだけ観た者の記憶に強く刻み込まれる作品でもある。人間のダークサイドに踏み込んだ陰鬱な日本映画たち、おひとついかがだろうか。 (文=長野辰次) 『ディストラクション・ベイビーズ』 監督・脚本/真利子哲也 脚本・喜安浩平 音楽/向井秀徳 出演/柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、池松壮亮、北村匠海、岩瀬亮、キャンデイ・ワン、テイ龍進、岡山天音、吉村界人、三浦誠己、でんでん  配給/東京テアトル R15 テアトル新宿ほか公開中 (c)2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会 http://distraction-babies.com 『ヒメアノ~ル』 原作/古谷実 監督・脚本/吉田恵輔 出演/森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ、駒木根隆介、山田真歩、大竹まこと  配給/日活 R15 TOHOシネマズ新宿ほか公開中 http://himeanole-movie.tumblr.com 『葛城事件』 監督・脚本/赤堀雅秋 出演/三浦友和、南果歩、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈  配給/ファントム・フィルム PG12 6月18日(土)より新宿バルト9ほか全国公開 (c)2016「葛城事件」製作委員会 http://katsuragi-jiken.com 『クリーピー 偽りの隣人』 原作/前川裕 脚本/黒沢清、池田千尋 監督/黒沢清 出演/西島秀俊、竹内結子、川口春奈、東出昌大、香川照之、藤野涼子、戸田昌宏、馬場徹、最所美咲、笹野高史  配給/松竹、アスミック・エース 6月18日(土)より丸の内ピカデリーほか全国公開 http://creepy.asmik-ace.co.jp 『日本で一番悪い奴ら』 原作/稲葉圭昭 脚本/池上純哉 監督/白石和彌 出演/綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄(デニス)、矢吹春奈、瀧内公美、田中隆三、みのすけ、中村倫也、勝矢、斎藤歩、青木崇高、木下隆行(TKO)、音尾琢真、ピエール瀧、中村獅童 配給/東映、日活 R15 6月25日(土)より全国ロードショー http://www.nichiwaru.com

裏切ったのは一体どっち!? オバマvs凄腕ハッカー 戦いの記録『シチズンフォー スノーデンの暴露』

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国家機密を暴露したエドワード・スノーデン。現在は亡命先のロシアで暮らしている。
 伊勢志摩サミットに出席するオバマ大統領が、サミット終了後に広島を訪問することが決まった。米国の現役大統領の被爆地訪問は初となる。任期が残りわずかとなったオバマ大統領としては、広島から平和メッセージを世界へ発することで大統領任期のラストイヤーを美しく飾りたいところだろう。核兵器のない世界を訴えノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領だが、実際には核軍縮はほとんど進まず、今回の広島訪問は大統領引退後に執筆される回顧録のための思い出づくりの観が強い。「チェンジ」を合い言葉にした大統領就任時は多大な期待を寄せられたオバマ政権だが、既成勢力の厚い壁を突き崩すことはできなかった。さらにオバマ人気を支えてきた若い世代も失望させることになったのが、2013年に起きた「スノーデン事件」だった。米国の諜報機関CIA(中央情報局)やNSA(国家安全保障局)でハッカーとしての職務を請け負っていたひとりの青年エドワード・スノーデンの告発によって、オバマ政権は米国内だけでなく世界中の信頼を失った。  スノーデンがNSAから持ち出した極秘資料と共にマスコミに公表した内容は衝撃的だった。インターネットによってグローバル化された現代社会は、NSAによって米国だけでなく世界中が監視下に置かれているということ。また、最新のハッキング技術を誇るNSAは、インターネット上のメールやSNSだけでなく、携帯電話の通信内容、乗車カードの利用履歴、クレジットカードの明細内容まで、世界中の人々を丸裸状態にしている。これらオンライン上の情報を統合すれば、あらゆる人物の行動パターンや交際関係まで、すべて把握することができてしまう。ジョージ・オーウェルのSF小説『1984』で書かれた恐怖の管理社会は、すでに現実のものとなっていたのだ。  NSAによる監視システムは、9.11同時多発テロが起きたブッシュ政権時代に始まったものだが、マイクロソフト、グーグル、ヤフー、フェイスブック、スカイプ、ユーチューブ、アップルなどの大手民間企業のデータもすべて収集されていたことが明らかになった。一般市民のプライバシーを平気で侵害するこの監視システムが、オバマ政権になって解かれることをスノーデンは期待したものの、残念なことにオバマ政権は解除ではなく、監視体制をより強固にする方向に舵を取った。ドローンの軍事利用は、オバマ政権になってますます活発化している。
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NSAの内部資料をコピーして持ち出したスノーデン。パソコンの画面に驚きの事実が映し出される。
 日本では6月11日(土)から公開されるドキュメンタリー映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』は、問題の渦中にあったスノーデン本人を主人公としたもの。“シチズンフォー”というハンドルネームを名乗ったスノーデンは、信頼できるドキュメンタリー監督とジャーナリストを潜伏先の香港のホテルまで暗号メールで呼び寄せ、驚愕の告白をする。温厚そうな29歳の若者が、世界を震撼させる重大機密を暴露する瞬間がカメラに収められている。香港のホテルの一室が舞台となっているが、フィクションである『007』シリーズや『ミッション・インポッシブル』シリーズでは味わうことのできないスリリングさに満ちた内容だ。パソコン上のパスワードの設定を変えても、NSAは2日間あれば当ててしまうこと、IP電話はオンライン状態だと簡単に盗聴されてしまうなどリアルなスパイ情報も盛り込まれている。スノーデンはパスワードを設定する際に、毛布を頭から被って上半身を隠す。そうしないと目の動きや腕の動かし方で、入力情報が分かってしまうという。  テロの危険から市民を守るためという口実のもと、オバマ政権は世界中の人々のプライバシーを丸裸にするシステムを構築させた。その事実を公表したスノーデンは国家の最高機密を漏洩させた反逆者、売国奴として危険にさらされることになる。スノーデンいわく、覚悟の上での実名告発だった。オバマvs.スノーデン。お互いに正義を主張する者同士が、メディアを通じて激しくぶつかり合う。まるで現在公開中のアメコミ映画『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』のようだ。『シビル・ウォー』では自由の名のもとに正義であり続けようとするキャプテン・アメリカと、国連の管理下のもとで戦うことを選択したアイアンマンとが激突する。自由と管理、いったいどちらの正義が正しいのか?
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世界中で報道された「スノーデン事件」。ちなみにスノーデンは日本でサイバー工作員としての集中トレーニングを積んだという。
 別にやましいことはないから、米国の諜報機関にメール内容をチェックされても関係ないという人もいるかもしれない。でも2020年に東京五輪が始まる頃には、かつてない厳重なセキュリティーシステムが日本にも導入され、IDチェックが頻繁に求められ、街のあちらこちらに監視カメラが並んでいるはずだ。管理社会は平和や正義を口実に近づいてくる。  映画のタイトルとなっているシチズンフォー(第4の市民)とは、スノーデンよりも前に3人の内部告発者がいたことを指している。勇気ある3人の告発者たちだったが、残念なことにその告発はもみ消されてしまった。スノーデンに続いて、第5、第6、第7……と多くの市民が権力者の暴走に異議を申し立てることで、スノーデンとその家族は安全を確保でき、行き過ぎた管理システムにストップを掛けることができる。インターネット利用者は、日本のアニメやゲームを愛する若者スノーデンの名前を胸に留めておいてほしい。 (文=長野辰次)
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『シチズンフォー スノーデンの暴露』 製作総指揮/スティーヴン・ソダーバーグ 監督・撮影・プロデューサー/ローラ・ポイトラス 出演/エドワード・スノーデン、ローラ・ポイトラス、グレン・グリーンウォルド  配給/ギャガ・プラス 6月11日(土)より渋谷シアター/イメージフォーラムほか全国順次ロードショー (c)Praxis Films (c)Laura Poitras http://gaga.ne.jp/citizenfour

文芸作品かと思いきや、驚いた! 最良の「超展開」で魅せる映画『華魂 幻影』

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 とんでもない映画を観てしまった。  実は最初、宣伝担当者から「ぜひ、試写に来てほしい」と電話をもらったときには、ちょっと躊躇した。なんだか文芸映画のような感じがしたからである。なにしろ『華魂 片影』のタイトルの下には、次のような言葉が記されている。  突然咲いた一輪の毒々しい花、これは人間だれしもが潜在的に持っているであろう、「密かな欲望」をエネルギーに成長・繁殖しようとする植物だった。この植物は華魂は意志を持ち、世界を侵食する。  この一文を読んで、これは気合を入れて観ないといけないと思った。  そうして始まった上映。物語の舞台となるのは、閉館を決めた、うらぶれた映画館。主人公の沢村(演:大西信満)は、その映画館の映写技師。そんな彼の目には、最近ずっと画面に見えないはずの黒づくめの少女(演:イオリ)が映っていた。恋人たちが戯れる映画の中には、ありえない少女の姿……。  夜、家に帰り、冷え切った関係の妻・みどり(演:川上史津子)のヒステリーにたまらず逃げ出した沢村は、その黒づくめの少女と出会うのだ。  と、ここまで読んだ読者は幻想的な世界を描く重厚な作品だと思うのではあるまいか。筆者も、そうだと思っていた。  だが、この映画の本質は少しずつ姿を現す。  潰れかけた映画館で、支配人は内気なメガネの受付嬢(演:稲生恵)に、別れの記念に「パンティをくれ」と迫る。と、その支配人を演じているのは、フォークシンガーの三上寛ではないか。かつて、刑事ドラマの名作『大都会PARTII』で、伊佐山ひろ子演じるウェイトレスにデートをすっぽかされた怒りから、人質を取って東京タワーに立て籠もるという、どうしようもない犯人を演じた三上寛が、さらにどうしようもない姿で魅せるのだ。  そのあたりから、映画は観客の予想もしなかった方向へと突っ走っていく。閉館にあたり最後の上映に詰めかける大勢の観客たち。  そこで上映される映画『激愛』は、砂浜で若い男女がお互いの愛を確かめ合うはずだった。ところがなぜか映画は、予想外の内容に変わり、それとともに映画の中の世界も観客たちも欲望のたがを外していくのである……。  まさかこんな映画だったのは! それが、正直な感想だ。映画を観ていた筆者も、想像を超えた展開に画面を食い入るように見ていたのはいうまでもない。  よい意味での「超展開」で観客を虜にしてくれる作品。ゆえに、一人で鑑賞するよりも何人かで連れ立って驚きを共感すべき娯楽作といえるだろう。ポスターに「映画バンザイ!」というキャッチが入っている意味がよくわかった。  なお上映期間中、中森明夫(作家)や外園昌也(マンガ家)など多彩なゲストのトークも予定されているので、さらに上映後の驚きを共有できそうだ。 (文=昼間たかし) 『華魂 幻影』 監督:佐藤寿保 脚本:いまおかしんじ 編集:鵜飼邦彦 新宿ケイズシネマにて上映中 トークの予定など詳細は公式サイトにて http://www.hanadama-movie.com/

文芸作品かと思いきや、驚いた! 最良の「超展開」で魅せる映画『華魂 幻影』

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 とんでもない映画を観てしまった。  実は最初、宣伝担当者から「ぜひ、試写に来てほしい」と電話をもらったときには、ちょっと躊躇した。なんだか文芸映画のような感じがしたからである。なにしろ『華魂 片影』のタイトルの下には、次のような言葉が記されている。  突然咲いた一輪の毒々しい花、これは人間だれしもが潜在的に持っているであろう、「密かな欲望」をエネルギーに成長・繁殖しようとする植物だった。この植物は華魂は意志を持ち、世界を侵食する。  この一文を読んで、これは気合を入れて観ないといけないと思った。  そうして始まった上映。物語の舞台となるのは、閉館を決めた、うらぶれた映画館。主人公の沢村(演:大西信満)は、その映画館の映写技師。そんな彼の目には、最近ずっと画面に見えないはずの黒づくめの少女(演:イオリ)が映っていた。恋人たちが戯れる映画の中には、ありえない少女の姿……。  夜、家に帰り、冷え切った関係の妻・みどり(演:川上史津子)のヒステリーにたまらず逃げ出した沢村は、その黒づくめの少女と出会うのだ。  と、ここまで読んだ読者は幻想的な世界を描く重厚な作品だと思うのではあるまいか。筆者も、そうだと思っていた。  だが、この映画の本質は少しずつ姿を現す。  潰れかけた映画館で、支配人は内気なメガネの受付嬢(演:稲生恵)に、別れの記念に「パンティをくれ」と迫る。と、その支配人を演じているのは、フォークシンガーの三上寛ではないか。かつて、刑事ドラマの名作『大都会PARTII』で、伊佐山ひろ子演じるウェイトレスにデートをすっぽかされた怒りから、人質を取って東京タワーに立て籠もるという、どうしようもない犯人を演じた三上寛が、さらにどうしようもない姿で魅せるのだ。  そのあたりから、映画は観客の予想もしなかった方向へと突っ走っていく。閉館にあたり最後の上映に詰めかける大勢の観客たち。  そこで上映される映画『激愛』は、砂浜で若い男女がお互いの愛を確かめ合うはずだった。ところがなぜか映画は、予想外の内容に変わり、それとともに映画の中の世界も観客たちも欲望のたがを外していくのである……。  まさかこんな映画だったのは! それが、正直な感想だ。映画を観ていた筆者も、想像を超えた展開に画面を食い入るように見ていたのはいうまでもない。  よい意味での「超展開」で観客を虜にしてくれる作品。ゆえに、一人で鑑賞するよりも何人かで連れ立って驚きを共感すべき娯楽作といえるだろう。ポスターに「映画バンザイ!」というキャッチが入っている意味がよくわかった。  なお上映期間中、中森明夫(作家)や外園昌也(マンガ家)など多彩なゲストのトークも予定されているので、さらに上映後の驚きを共有できそうだ。 (文=昼間たかし) 『華魂 幻影』 監督:佐藤寿保 脚本:いまおかしんじ 編集:鵜飼邦彦 新宿ケイズシネマにて上映中 トークの予定など詳細は公式サイトにて http://www.hanadama-movie.com/

賞レースから外れた意外な話題作がめじろ押し!! 映画界のアンチテーゼ「日プロ大賞」GW開催

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『バクマン。』HPより。佐藤健、神木隆之介ら人気若手俳優が大挙出演し、興収17億6000万円を記録した。
 メジャーな映画賞の多くは映画会社の力関係や人気俳優を抱える芸能プロダクションの思惑に左右され、作品としてのクオリティーが高くても賞レースから漏れてしまう秀作は少なくない。また賞レース以前に、邦画だけで年間500本以上も公開されている近年の日本映画界では、宣伝予算もなく上映館数も少なく、人目に触れないまま埋もれていく作品が山のようにある。様々なしがらみに捕われることなく、また公開規模にかかわらず、“いい仕事”をしているプロフェッショナルな映画人たちに脚光を当てているのが、映画賞レースの最後を飾る「日本映画プロフェッショナル大賞」(日プロ大賞)だ。三池崇史監督、黒沢清監督といった国内では映画賞とは無縁だった才能を、日プロ大賞は90年代から顕彰してきている。  今年で25回目を迎えた日プロ大賞だが、今年は従来の傾向とは異なるタイトルが受賞作に選ばれている。これまでインディペンデント系の作品を推してきた同賞だが、今年は東宝配給で全国公開された大根仁監督の『バクマン。』がベストテンの第1位、そして作品賞に選出された。『バクマン。』は日本アカデミー賞では話題賞のみに留まっている。『バクマン。』は漫画家デビューを目指す若者たちの物づくりに注ぐ情熱と葛藤をハイテンポに描き、退屈になりかねない漫画製作の現場をプロジェクションマッピングを導入するなどしてエンターテイメント化してみせた力作だった。大根監督の前作『恋の渦』は製作費60~70万円という超低予算映画だったが、日プロ大賞では若手キャストたちに新人俳優奨励賞を贈っている。メジャーとインディペンデントの枠に縛られない大根監督の活躍は、もっと評価されていいだろう。 『ピース オブ ケイク』『深夜食堂』とコミック原作もの2作に出演した多部未華子が主演女優賞に選ばれているのも注目される。演技力はすでに折り紙付きな多部だが、映画賞の受賞は新人時代にまで遡ることになる。大根監督の劇場デビュー作『モテキ』もそうだが、格式を重んじる映画賞ではコミック原作ものは往々にして軽視される傾向にある。今年の日本アカデミー賞作品賞『海街dairy』もコミック原作だが、豪華女優陣を並べたカンヌ出品作『海街dairy』のことをコミックものという認識だった日本アカデミー賞会員はほぼいなかったはず。人気コミックの知名度に頼っただけの映画化企画はもちろん勘弁してほしいが、オリジナル脚本>文芸小説>エンタメ小説>コミック原作という映画賞の安易な格付けの仕方も見直すべき時期にあるようだ。  今回のもうひとつの注目ポイントは、売れっ子俳優・染谷将太と主演男優賞を分け合った形の川瀬陽太。テレビドラマしか観ない人には見慣れない名前だが、ピンク映画やインディペンデント系の映画に数多く出演してきた名バイプレイヤーだ。冨永昌敬監督の『ローリング』ではハレンチ行為で退職した元高校教師を軽妙に演じ、味のある存在感が改めて評価された。授賞式の場でどんなスピーチが飛び出すのか楽しみ。黒沢清監督と『トウキョウソナタ』『贖罪』『岸辺の旅』などでコンビを組んできた芹澤明子撮影監督に特別功労賞、橋口亮輔監督に7年ぶりの新作長編『恋人たち』を撮らせた深田誠剛&小野仁史プロデューサーに新進プロデューサー賞を贈るあたりも日プロ大賞らしい。  5月3日(祝)にテアトル新宿で行なわれる授賞式の後、恒例となっているオールナイト上映のプログラムも決まった。塚本晋也監督の渾身の自主映画『野火』や神戸連続児童殺傷事件をモチーフにした安川有果監督の『Dressing Up』などスクリーンで観賞する機会の限られていた作品が編成されている。授賞式に続いて、『バクマン。』の大根監督と東宝の川村元気プロデューサーが登壇してのトークショーも予定されているとのこと。日本映画界のこれからが気になる人は、ぜひともチェックしておきたい。 「第25回日本映画プロフェッショナル大賞」ベストテン&個人賞 ●ベストテン 1位 バクマン。(作品賞) 2位 野火   (監督賞) 3位 ローリング(主演男優賞) 4位 GONINサーガ 5位 ハッピーアワー 6位 岸辺の旅 (特別功労賞) 7位 ソレダケ/that’s it(主演男優賞) 8位 トイレのピエタ 9位 きみはいい子 9位 私たちのハァハァ ●個人賞 作品賞:バクマン。 監督賞:塚本晋也『野火』 主演女優賞:多部未華子『ピース オブ ケイク』『映画 深夜食堂』 主演男優賞:染谷将太『さよなら歌舞伎町』『ソレダケ/that’s it』 主演男優賞:川瀬陽太『ローリング』『犯(や)る男』 新人監督賞:安川有果『Dressing Up』 新進プロデューサー賞:深田誠剛、小野仁史『恋人たち』 特別功労賞:芹澤明子『岸辺の旅』および、長年の映画撮影の功績に対して ●5月3日(火)日プロ大賞授賞式イベント&特別オールナイト上映作品 授賞式イベントに引き続き、4作品の上映 『バクマン。』 『野火』 『ローリング』 『Dressing Up』 ●授賞式参加者(予定) 大根仁監督、川村元気プロデューサー、多部未華子、塚本晋也監督、安川有果監督、深田誠剛プロデューサー、小野仁史プロデューサー、芹澤明子 ● 日時:5月3日(火)夜9時30分開場/夜9時45分開演/翌4日朝6時終映(予定) 場所/テアトル新宿 料金/3000円 チケットはテアトル新宿窓口、およびWEBにて座席指定券を販売

賞レースから外れた意外な話題作がめじろ押し!! 映画界のアンチテーゼ「日プロ大賞」GW開催

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『バクマン。』HPより。佐藤健、神木隆之介ら人気若手俳優が大挙出演し、興収17億6000万円を記録した。
 メジャーな映画賞の多くは映画会社の力関係や人気俳優を抱える芸能プロダクションの思惑に左右され、作品としてのクオリティーが高くても賞レースから漏れてしまう秀作は少なくない。また賞レース以前に、邦画だけで年間500本以上も公開されている近年の日本映画界では、宣伝予算もなく上映館数も少なく、人目に触れないまま埋もれていく作品が山のようにある。様々なしがらみに捕われることなく、また公開規模にかかわらず、“いい仕事”をしているプロフェッショナルな映画人たちに脚光を当てているのが、映画賞レースの最後を飾る「日本映画プロフェッショナル大賞」(日プロ大賞)だ。三池崇史監督、黒沢清監督といった国内では映画賞とは無縁だった才能を、日プロ大賞は90年代から顕彰してきている。  今年で25回目を迎えた日プロ大賞だが、今年は従来の傾向とは異なるタイトルが受賞作に選ばれている。これまでインディペンデント系の作品を推してきた同賞だが、今年は東宝配給で全国公開された大根仁監督の『バクマン。』がベストテンの第1位、そして作品賞に選出された。『バクマン。』は日本アカデミー賞では話題賞のみに留まっている。『バクマン。』は漫画家デビューを目指す若者たちの物づくりに注ぐ情熱と葛藤をハイテンポに描き、退屈になりかねない漫画製作の現場をプロジェクションマッピングを導入するなどしてエンターテイメント化してみせた力作だった。大根監督の前作『恋の渦』は製作費60~70万円という超低予算映画だったが、日プロ大賞では若手キャストたちに新人俳優奨励賞を贈っている。メジャーとインディペンデントの枠に縛られない大根監督の活躍は、もっと評価されていいだろう。 『ピース オブ ケイク』『深夜食堂』とコミック原作もの2作に出演した多部未華子が主演女優賞に選ばれているのも注目される。演技力はすでに折り紙付きな多部だが、映画賞の受賞は新人時代にまで遡ることになる。大根監督の劇場デビュー作『モテキ』もそうだが、格式を重んじる映画賞ではコミック原作ものは往々にして軽視される傾向にある。今年の日本アカデミー賞作品賞『海街dairy』もコミック原作だが、豪華女優陣を並べたカンヌ出品作『海街dairy』のことをコミックものという認識だった日本アカデミー賞会員はほぼいなかったはず。人気コミックの知名度に頼っただけの映画化企画はもちろん勘弁してほしいが、オリジナル脚本>文芸小説>エンタメ小説>コミック原作という映画賞の安易な格付けの仕方も見直すべき時期にあるようだ。  今回のもうひとつの注目ポイントは、売れっ子俳優・染谷将太と主演男優賞を分け合った形の川瀬陽太。テレビドラマしか観ない人には見慣れない名前だが、ピンク映画やインディペンデント系の映画に数多く出演してきた名バイプレイヤーだ。冨永昌敬監督の『ローリング』ではハレンチ行為で退職した元高校教師を軽妙に演じ、味のある存在感が改めて評価された。授賞式の場でどんなスピーチが飛び出すのか楽しみ。黒沢清監督と『トウキョウソナタ』『贖罪』『岸辺の旅』などでコンビを組んできた芹澤明子撮影監督に特別功労賞、橋口亮輔監督に7年ぶりの新作長編『恋人たち』を撮らせた深田誠剛&小野仁史プロデューサーに新進プロデューサー賞を贈るあたりも日プロ大賞らしい。  5月3日(祝)にテアトル新宿で行なわれる授賞式の後、恒例となっているオールナイト上映のプログラムも決まった。塚本晋也監督の渾身の自主映画『野火』や神戸連続児童殺傷事件をモチーフにした安川有果監督の『Dressing Up』などスクリーンで観賞する機会の限られていた作品が編成されている。授賞式に続いて、『バクマン。』の大根監督と東宝の川村元気プロデューサーが登壇してのトークショーも予定されているとのこと。日本映画界のこれからが気になる人は、ぜひともチェックしておきたい。 「第25回日本映画プロフェッショナル大賞」ベストテン&個人賞 ●ベストテン 1位 バクマン。(作品賞) 2位 野火   (監督賞) 3位 ローリング(主演男優賞) 4位 GONINサーガ 5位 ハッピーアワー 6位 岸辺の旅 (特別功労賞) 7位 ソレダケ/that’s it(主演男優賞) 8位 トイレのピエタ 9位 きみはいい子 9位 私たちのハァハァ ●個人賞 作品賞:バクマン。 監督賞:塚本晋也『野火』 主演女優賞:多部未華子『ピース オブ ケイク』『映画 深夜食堂』 主演男優賞:染谷将太『さよなら歌舞伎町』『ソレダケ/that’s it』 主演男優賞:川瀬陽太『ローリング』『犯(や)る男』 新人監督賞:安川有果『Dressing Up』 新進プロデューサー賞:深田誠剛、小野仁史『恋人たち』 特別功労賞:芹澤明子『岸辺の旅』および、長年の映画撮影の功績に対して ●5月3日(火)日プロ大賞授賞式イベント&特別オールナイト上映作品 授賞式イベントに引き続き、4作品の上映 『バクマン。』 『野火』 『ローリング』 『Dressing Up』 ●授賞式参加者(予定) 大根仁監督、川村元気プロデューサー、多部未華子、塚本晋也監督、安川有果監督、深田誠剛プロデューサー、小野仁史プロデューサー、芹澤明子 ● 日時:5月3日(火)夜9時30分開場/夜9時45分開演/翌4日朝6時終映(予定) 場所/テアトル新宿 料金/3000円 チケットはテアトル新宿窓口、およびWEBにて座席指定券を販売

広島ローカルネタも満載! 松田龍平×前田敦子のホームドラマ『モヒカン故郷に帰る』

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(C)2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会
 今週取り上げる最新映画は、松田龍平と前田敦子が恋人同士を演じる、笑いあり感動ありの娯楽作と、自主映画監督らのゲスな生きざまを描く異色の人間ドラマ。キャラクター設定は一見極端だが、家族や仲間との接し方や距離にいつの間にか共感を覚える2作品だ。 『モヒカン故郷に帰る』(4月9日公開)は、『キツツキと雨』(2011)、『横道世之介』(12)の沖田修一監督が脚本も手がけて描くホームドラマ。モヒカン頭の売れないバンドマン・永吉は、妊娠した恋人・由佳との結婚を報告するため、瀬戸内海の戸鼻島(とびじま)へ7年ぶりに帰郷する。実家には、矢沢永吉を愛する頑固な父・治と広島カープファンの母、さらに偶然帰省していた弟もいて、久々に家族がそろう。だが大宴会の夜に治が倒れ、病院での検査の結果、ガンを患っていることが明らかになる。  松田と前田に、治役の柄本明、母役のもたいまさこ、弟役の千葉雄大を加えた5人の間に流れる、独特の間とゆるい笑いがたまらない。戸鼻島は広島県下という設定の架空の島だが、同県出身の矢沢永吉や、カープ戦のテレビ中継など、ローカルネタの活用も巧み。とりわけ、治が顧問を務める中学校吹奏楽部による、矢沢の名曲「アイ・ラヴ・ユー、OK」の頼りない演奏がいい味で、島の素朴な景観と、のんびりした人間模様によくなじむ。長く離れていた家族の心が次第に近づく過程に、しみじみと温かい気持ちになる好作だ。 『下衆の愛』(4月2日公開)は、年間出演作が5本以上という年もざらにある、売れっ子の個性派俳優・渋川清彦がゲスな映画監督に扮したドラマ。40歳前にして夢をあきらめきれない自主映画監督のテツオは、映画祭での受賞経験を心の支えに、女優を自宅に連れ込む自堕落な生活を送っていた。だがある日、才能あふれる新人女優ミナミと出会い、新作映画の実現に向けて立ち上がる。『裸と動物』にこだわるプロデューサーの貴田、枕営業にかける女優の響子、ハメ撮りで生計を立てる助監督のマモルなど、映画界の底辺であがく仲間たちと最後の賭けに挑むテツオに、現実の壁が立ちはだかる。  監督・脚本は、『グレイトフルデッド』(13)が世界30以上の映画祭で上映され注目を集めた内田英治。でんでん、忍成修吾、岡野真也、津田寛治、古舘寛治らが脇を固めた。登場人物ほぼ全員が身勝手でだらしなく、感情移入をなかなか許さないが、後半になって各キャラの魅力が出そろう構成が巧い。見苦しくも尊い映画愛、哀しく切ないエロスが散りばめられ、映画好きなら笑い泣き必至の快作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『モヒカン故郷に帰る』作品情報 http://eiga.com/movie/82074/ 『下衆の愛』作品情報 http://eiga.com/movie/83066/

震災から5年、日本映画は何を映してきたのか? 風化する記憶を刻むタイムカプセルとしての役割

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園子温監督『希望の国』(左)/君塚良一監督『遺体 明日への十日間』(右)
 東日本大震災の発生から5年の歳月が流れた。映画はその時代の写し鏡とされているが、この5年間で日本映画は何を映し出してきたのか。そして、多くの犠牲者を出し、すべての日本人を震撼させた3.11後、日本映画界は変わったのか。それとも何も変わっていないのか。映画を通して、この5年間について考えてみたい。  興収面を見ると、震災が起きた2011年は東北や関東で映画館の閉館や休館が相次ぎ、また自粛ムードから年間興収は前年の2,207億円から1,811億円と近年の日本映画界の水準とされる2,000億円の大台を大きく割った。続く12年は1,951億円、13年は1,942億円と低迷が続いたが、『アナと雪の女王』(14)など洋画のメガヒット作が生まれた14年に2,070億円と大台への復帰を果たした。15年は2,171億円を記録。数字だけ見ると映画界の活況は震災前に戻ったように映るが、ここ数年間で耐震性や費用対効果の問題から銀座シネパトスや吉祥寺バウスシアターほか全国各地の伝統ある映画館が次々と取り壊されている。ミニシアターの雄・渋谷シネマライズも姿を消した。数字では見えない形で、映画界は様変わりしている。  震災後の主な劇映画に目を向けてみると、『ヒミズ』(11)で被災から間もない石巻でのロケを行なった園子温監督が原発問題に正面から斬り込んだ『希望の国』(12)は海外からの資金援助を受けることでようやく製作に漕ぎ着け、ビターズ・エンドが配給した。『踊る大捜査線』シリーズの脚本家として知られる君塚良一氏がみずから監督した『遺体 明日への十日間』(13)は、ファントム・フィルム配給で公開された。メジャー系の作品としては、東宝配給の『風立ちぬ』(13)はテクノロジーの進化が人間社会にもたらす負の側面に言及した宮崎駿監督からのラストメッセージとなった。松竹配給の『天空の蜂』(15)は原発施設をめぐる恐怖をサスペンスエンターテイメントとして堤幸彦監督が描き、10.8億円という興収結果を残している。直接的に震災を描いてはいないが、耐震性の検査を行なう技師を主人公にした橋口亮輔監督の『恋人たち』(15)は“喪失感からの再生”をテーマとしており、これも3.11後の映画として位置づけられるだろう。  映画界の5年間を駆け足で振り返ったが、日本映画プロフェッショナル大賞を主宰し、メジャー系・インディペンデント系を問わず良質の作品を四半世紀にわたって顕彰してきた映画ジャーナリストの大高宏雄氏に、より踏み込んだ形でコメントしてもらおう。 大高「今、私が強く感じているのは、震災の記憶に対する風化の速度があまりにも速いということです。震災直後には“第二の戦後”というような言葉も発せられ、何か大きな変化の予兆もあったのですが、もはや、そのような言葉自体が忘れ去れました。映画ジャーナリストの私は、震災によってこれから映画表現はどう変わるのか、映画に向けた言葉はどう変化するのかに注目してきました。その過程で、製作側の意欲に比べ、映画の書き手側の意識があまりに鈍いことが気がかりでした。先日、テレビで山田洋次監督の『東京家族』(13)を3年ぶりに見ました。震災によって、作品の中身が一部修正された作品です。公開時にはあまり評価が高いとは思えない作品でしたが、震災から5年が過ぎた今見直すと、胸にズシーンと響いてくるものがあります。橋爪功が居酒屋で、『(日本は)このままじゃいけん』と、切実に言うシーンがありました。何気ないひと言ですが、庶民の本音をさらっと語らせる演出手腕に改めて感心しました。山田監督は、インテリでも何でもない庶民の一人である彼から、その言葉を引き出し、この国への希望を託しているのだと思います。また、妻夫木聡が、結婚することになる蒼井優と、被災地で小指をからませて愛を確認したと話すシーンがあります。素晴らしくて、涙が出ました。ここでも、希望なんですね。甘ったるいシーンですが、共同体をこれから作っていく男女の慎ましい出会いに、震災後のこの国の希望を託している。今では、国家をはじめ、職場、家庭、学校、地域といった場が、共同体として機能しづらくなっています。進む人々の孤立、孤独化は、共同体の今のありようと大きな関係があります。だからこそ、5年後の今、『東京家族』で描かれた希望の光がとても胸に迫るものがあるのです」  2013年の日本映画プロフェッショナル大賞では、日米合作映画『おだやかな日常』(12)の主演女優・杉野希妃に新進プロデューサー賞、被災地でのロケを敢行した『希望の国』の主演女優・大谷直子に特別賞を贈っている。どちらの作品も福島第一原発事故を題材にした社会派ドラマだ。 大高「杉野さんがプロデュースも兼ねた『おだやかな日常』は、東京郊外で暮らす主婦の視点から震災を捉えたもので、原発事故によって誰もが感じた恐怖や不安感をとてもリアルに描いています。生々しさの残る被災地でロケを行なった『希望の国』も、問題意識の高い作品です。ただ、『東京家族』があまり評価されなかったように、『希望の国』も公開時の評価はそれほど高くなかった。ドキュメンタリーはある程度の評価がある一方で、劇映画=フィクションに、妙な忌避感があるように思えます。公開時は震災からまだあまり時間が経っておらず、作品との距離感が取りにくかったことも一因かもしれません。これら作品も見直すことで、全然違った感慨が湧いてくるのではないでしょうか」  時間を経て見直すことで、新しい価値観を見出すことができるのは映画ならではの魅力だろう。また、震災の本質を突いた劇映画としての決定作はまだ作られていないと大高氏は語る一方、新藤兼人監督の『原爆の子』(52)や市川崑監督の『野火』(59)といった戦争映画の秀作が終戦から映画の完成・公開まである程度の時間を要したことを先例として挙げる。 大高「被災地などの現状を伝えるドキュメンタリーも重要ですが、原発問題も含めた形で、これからの日本社会はどうなるのかを描く骨太な劇映画が作られることを期待しています。こちらはマスの観客を対象とするケースもあるから、影響力が大きいのです。被災地で起きたことを克明に描こうとすれば、被災された方たちにとっての良い面と嫌な面の両方に触れざるをえません。また、いろんなタブーにも引っ掛かるでしょう。少し前に、新藤監督や若松孝二監督が亡くなりましたが、彼らが元気だったらどういう挑戦をしていたか、ふと思うことがあります。タブーに果敢にぶつかっていった新藤、若松的な映画の作り方が、今強く求められています。日本映画監督協会の理事長を務めている崔洋一監督が震災直後、『(大震災の)記録と記憶を柱にした映画を残そう。未来に残すことは全映画人の宿命』という主旨の声明をしていたのも思い出します。震災を題材にした映画は、映画会社からは生まれにくいようです。私は震災直後、映画界全体で被災地に何か働き掛けることがあるのではないかと期待を込めて書きました。今では、そういう言い方を悔いています。映画界の総意には、期待しないほうがいいのです。寂しいですけどね。だから、プロデューサー、監督、脚本家らの表現者を含めたまさに全映画人としての個々人が、それこそ、各々の場で考えるか行動する以外ないのです」  今年のベルリン映画祭では桃井かおりが出演したドイツ映画『フクシマ、モナムール』が国際アートシアター連盟賞を受賞し、韓国のキム・ギドク監督は福島でロケを行なった『STOP』を完成させ、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映を行なっている。 大高「海外含めて、いろいろな動きがあります。見たばかりの篠崎誠監督の『SHARING』という作品が、素晴らしい出来栄えでした。震災を題材に、ホラー映画のテイストで、見る者をぐいぐい引っ張っていきます。面白いのです。震災を描いて、面白いとは何事かという人が出てくる気もしますが、この作品は、そのような見方、言い方そのものを俎上に乗せつつ、震災と映画の関わり方を問うているのです。震災からたかだか5年ですが、一時の節目のあとには、また膨大な歳月があるのです。映画もまた、その膨大な時間の前に、やることはとても多いのだと思っています」  他にも園子温監督が『ヒミズ』『希望の国』に続いて被災地でロケを行なった自主映画『ひそひそ星』(新宿シネマカリテほかで5月14日~)、震災によって皮肉にも社会復帰を果たす男を佐野和宏が演じる『夢の女』(ポレポレ東中野にて4月9日~)などの作品が公開を控えている。映画が震災と震災を経験した人々をこれからどう描いていくのか注目していきたい。 (取材・文=長野辰次) ●おおたか・ひろお 1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。92年から毎年、独立系作品を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を開催。今年で25回目を迎える。現在、キネマ旬報に「大高宏雄のファイト・シネクラブ」(2012年度キネマ旬報読者賞受賞)、毎日新聞に「チャートの裏側」、日刊ゲンダイに「エンタメ最前線」などを連載中。『興行価値―商品としての映画論』(鹿砦社)、『ミニシアター的!』(WAVE出版)、『日本映画 逆転のシナリオ』(WAVE出版)、『日本映画への戦略』(希林館)、『仁義なき映画列伝』『同・増補新版』『同・復刻新版』(鹿砦社)、『映画業界最前線物語 君はこれでも映画をめざすのか』(愛育社)など著書多数。昭和の官能女優たちの映画を取り上げた『昭和の女優 官能・エロ映画の時代』(鹿砦社)が4月下旬に発売予定。 ※2015年度の第25回日本映画プロフェッショナル大賞受賞作は近日発表の予定 http://nichi-pro.filmcity.jp

V6・岡田准一『エヴェレスト』大コケ! 総製作費15億円も「大赤字必至」「レビュー酷評の嵐」

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映画『エヴェレスト 神々の山嶺』公式サイトより

 3月12~13日の国内映画ランキング(全国週末興行成績・興行通信社提供)が発表され、V6・岡田准一主演の『エヴェレスト 神々の山嶺』が初登場第3位にランクインした。先週に引き続き第1位の『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』、第2位はピクサーのアニメ『アーロと少年』に敗北する厳しいスタートとなってしまったようだ。

 『エヴェレスト』は全国322スクリーンで公開され、オープニング2日間で動員16万5,220人、興収2億949万1,800円の成績で、最終興収は15億円程度と見込まれているというが、ネット上では「大規模公開で、この数字は大爆死」「あんな超大作が初登場3位とか」「最終興収15億円も厳しいんじゃ」といった声が噴出している。