憧れの存在には、いつまでも輝き続けてほしい。哀歓系コメディ『ピンカートンに会いにいく』

 自分がブレイクできずにいるのは、事務所の営業努力のなさやプロデューサーたちに見る目がないからだ。映画『ピンカートンに会いにいく』の主人公・優子(内田慈)はそう思い込むことで、芸能界の片隅で辛うじてこれまで生きてきた。オーディションに落ちる度に、周囲に毒を吐く人生だった。アルバイトをしながら、タレント&女優として成功するという夢にしがみついてきたものの、30代も後半となり現実のシビアさが肌身にヒリヒリと沁みるようになってきた。『ピンカートンに会いにいく』は、夢は願い続ければきっと叶うという能天気な青春ドラマでもなければ、主人公が大人になる成長ドラマでもない。ずっとネガティブ思考に囚われ続けてきたひとりの女性が、人生のスタートラインに立つまでを描いたとても慎ましい物語だ。

 本作を撮り上げたのは、大阪芸術大学映像学科&東京藝術大学大学院映像研究科出身の坂下雄一郎監督。1986年生まれの新鋭監督だ。新しい才能の発掘を目的にしている「松竹ブロードキャスティング」が制作した勘違いコメディ『東京ウィンドオーケストラ』(17)で商業デビュー。続いて低予算映画の地方ロケの惨状をブラックコメディ化した異色作『エキストランド』(17)も公開され、再び「松竹ブロードキャスティング」と組んだ『ピンカートン』と、デビュー1年目にしてオリジナル脚本のコメディ作品が3本劇場公開される期待の存在。若手監督らしく『ピンカートン』にはまだ洗練されきっていない、レアな感情と毒っけのある笑いが注がれた新鮮みのある作品となっている。

 今や毒吐きおばさんと化している優子だが、実は20年前に5人組のアイドルグループ「ピンカートン」として芸能デビューを果たしていた。勝ち気な性格の優子がリーダーを務めていたが、シングル曲「Revolution now」をリリースしてこれからというときに、あっけなく解散してしまう。一番人気だった葵がソロデビューするという噂が流れ、グループ内に確執が生まれたことが原因だった。

 20年前はグループが解散しても、若い自分にはまだ明るい未来が待っていると信じていた。でも、いつの間にか自主映画の死体役とかパチンコ店のイベントのMCぐらいしか仕事は回ってこない状態に。さらに散々ディスってきた所属事務所からは、契約解除を言い渡されてしまう。40歳を目前にして、人生真っ暗闇となる優子。芸能界でスポットライトを浴びるという夢は、いつの間にか自分自身への呪いと変わり、優子を雁字搦めに縛り付けていた。

 だが、捨てる神あれば拾う神もあり。そんなドン底状態の優子に、一本の蜘蛛の糸が垂れ下がってきた。不完全燃焼で終わった「ピンカートン」の再結成ライブをやろうという奇特なプロデューサーが現われたのだ。レコード会社に勤める松本(田中健太郎)は、少年時代に「ピンカートン」の大ファンだったが、楽しみにしていたライブを観ることなく彼女たちは芸能界の表舞台から去ってしまった。憧れの存在だった「ピンカートン」に、ちゃんとライブをやらせてあげたい。ちょっと頼りなさげな松本の提案に、優子はもったいぶりながらもすがりつくしかない。

 美紀(山田真歩)をはじめ、かつてのメンバー3人は芸能界をすでに引退して、普通の主婦となっていた。家族や子どもたちの手前もあって、再結成にはあまり気が進まない。だが、美紀たちのモチベーションの低さ以上に大きな問題があった。かつて優子とケンカ別れした葵を呼び戻すことができなければ、「ピンカートン」は再結成したことにはならない。優子と葵が20年ぶりに仲直りできるかどうかが、グループ再結成の大事な鍵だった。

 人生の先が見えてきた現在とキラキラと輝く未来が待っていると信じていたアイドル時代とが交錯する形で、ストーリーは進んでいく。20年前、優子(小川あん)と葵(岡本夏美)はグループ内でいちばん仲がよかった。一緒にオーディションを受けにいき、「他のアイドルたちが全員死ねばいいのに」と2人で毒づきあいながら、ブレイクできずにいる悶々とした日々を共に過ごしてきた。優子と葵はいちばんの親友であり、いちばん身近なライバルでもあった。それゆえに、一度壊れた関係を修復するのは容易ではない。再結成を前に、仲直りを勧める他のメンバーたちに対して、優子はなかなか素直になれない。心で思っていることとは、真逆な言葉を吐き出してしまう。

「大人になったら仲直りって言わないんだよ。それって謝罪っていうんだからね!」

 毒づくことが習慣化してしまった“超痛い女”優子をリアルに演じているのは、インディペンデント系映画で売れっ子の実力派女優・内田慈。本作が映画初主演となる。優子がライバル視してきた葵の20年後を演じるのは、ドス黒系ミステリー『愚行録』(17)での“学園の女王さま”ぶりが印象的だった松本若菜。朝ドラ『花子とアン』(NHK総合)の女流作家役などクセのある役がうまい山田真歩らがこれに絡む。優子、葵のアイドル時代を演じた小川あん、岡本夏美たちもこれから人気が出てきそうな逸材。かつての仲間が再び集まるというプロットは韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』(11)からのいただきだが、毒は吐くのに、胸の中の本音は口にできない主人公たちの面倒くさい心理描写に坂下監督の独自のセンスを感じさせる。

 物語の後半、優子とプロデューサーの松本は、消息のつかめない葵を探して回ることに。グループ解散後、葵は事務所を移り、優子と同じように地味に芸能活動を続けていた。葵の元マネージャーだったという男を見つけるが、「過去にすがって、懸命に生きるのって痛いよね」と元マネージャーは葵のことを冷笑する。それまでずっとちぐはぐだった優子と松本だが、このとき2人は一致団結して、この元マネージャーをボコボコにする。かつて自分が憧れた存在には、いつまでも輝き続けてほしい。だから、自分にとってのアイドルやライバルをディスる奴は、到底許すことができなかった。

 20年の歳月を経て、優子と葵はお互いの心のわだかまりを消し去ることができるのか。優子と葵との20年ぶりの遭遇シーンが、本作のクライマックスとなる。おばさんになった「ピンカートン」の再結成ライブの行方は、映画を観てのお楽しみだ。最後にひとつ言えることは、優子は40歳を前にして、言い訳をしない自分の生きる道を見つけたということ。長年の呪いから、ようやく自分を解放することに成功した優子。目の前に広がる厳しい現実は変わらないものの、彼女の人生がこれから始まろうとしていた。
(文=長野辰次)

『ピンカートンに会いにいく』
監督・脚本/坂下雄一郎
出演/内田慈、松本若菜、山田真歩、水野小論、岩野未知、田村健太郎、
小川あん、岡本夏美、柴田杏花、芋生悠、鈴木まはな 
配給/松竹ブロードキャスティング、アーク・フィルムズ
1月20日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
C)松竹ブロードキャスティング
http://www.pinkerton-movie.com

※「ピンカートン」が歌う主題歌「Revolution now」が、フルコーラスで現在配信中!

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憧れの存在には、いつまでも輝き続けてほしい。哀歓系コメディ『ピンカートンに会いにいく』

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 本作を撮り上げたのは、大阪芸術大学映像学科&東京藝術大学大学院映像研究科出身の坂下雄一郎監督。1986年生まれの新鋭監督だ。新しい才能の発掘を目的にしている「松竹ブロードキャスティング」が制作した勘違いコメディ『東京ウィンドオーケストラ』(17)で商業デビュー。続いて低予算映画の地方ロケの惨状をブラックコメディ化した異色作『エキストランド』(17)も公開され、再び「松竹ブロードキャスティング」と組んだ『ピンカートン』と、デビュー1年目にしてオリジナル脚本のコメディ作品が3本劇場公開される期待の存在。若手監督らしく『ピンカートン』にはまだ洗練されきっていない、レアな感情と毒っけのある笑いが注がれた新鮮みのある作品となっている。

 今や毒吐きおばさんと化している優子だが、実は20年前に5人組のアイドルグループ「ピンカートン」として芸能デビューを果たしていた。勝ち気な性格の優子がリーダーを務めていたが、シングル曲「Revolution now」をリリースしてこれからというときに、あっけなく解散してしまう。一番人気だった葵がソロデビューするという噂が流れ、グループ内に確執が生まれたことが原因だった。

 20年前はグループが解散しても、若い自分にはまだ明るい未来が待っていると信じていた。でも、いつの間にか自主映画の死体役とかパチンコ店のイベントのMCぐらいしか仕事は回ってこない状態に。さらに散々ディスってきた所属事務所からは、契約解除を言い渡されてしまう。40歳を目前にして、人生真っ暗闇となる優子。芸能界でスポットライトを浴びるという夢は、いつの間にか自分自身への呪いと変わり、優子を雁字搦めに縛り付けていた。

 だが、捨てる神あれば拾う神もあり。そんなドン底状態の優子に、一本の蜘蛛の糸が垂れ下がってきた。不完全燃焼で終わった「ピンカートン」の再結成ライブをやろうという奇特なプロデューサーが現われたのだ。レコード会社に勤める松本(田中健太郎)は、少年時代に「ピンカートン」の大ファンだったが、楽しみにしていたライブを観ることなく彼女たちは芸能界の表舞台から去ってしまった。憧れの存在だった「ピンカートン」に、ちゃんとライブをやらせてあげたい。ちょっと頼りなさげな松本の提案に、優子はもったいぶりながらもすがりつくしかない。

 美紀(山田真歩)をはじめ、かつてのメンバー3人は芸能界をすでに引退して、普通の主婦となっていた。家族や子どもたちの手前もあって、再結成にはあまり気が進まない。だが、美紀たちのモチベーションの低さ以上に大きな問題があった。かつて優子とケンカ別れした葵を呼び戻すことができなければ、「ピンカートン」は再結成したことにはならない。優子と葵が20年ぶりに仲直りできるかどうかが、グループ再結成の大事な鍵だった。

 人生の先が見えてきた現在とキラキラと輝く未来が待っていると信じていたアイドル時代とが交錯する形で、ストーリーは進んでいく。20年前、優子(小川あん)と葵(岡本夏美)はグループ内でいちばん仲がよかった。一緒にオーディションを受けにいき、「他のアイドルたちが全員死ねばいいのに」と2人で毒づきあいながら、ブレイクできずにいる悶々とした日々を共に過ごしてきた。優子と葵はいちばんの親友であり、いちばん身近なライバルでもあった。それゆえに、一度壊れた関係を修復するのは容易ではない。再結成を前に、仲直りを勧める他のメンバーたちに対して、優子はなかなか素直になれない。心で思っていることとは、真逆な言葉を吐き出してしまう。

「大人になったら仲直りって言わないんだよ。それって謝罪っていうんだからね!」

 毒づくことが習慣化してしまった“超痛い女”優子をリアルに演じているのは、インディペンデント系映画で売れっ子の実力派女優・内田慈。本作が映画初主演となる。優子がライバル視してきた葵の20年後を演じるのは、ドス黒系ミステリー『愚行録』(17)での“学園の女王さま”ぶりが印象的だった松本若菜。朝ドラ『花子とアン』(NHK総合)の女流作家役などクセのある役がうまい山田真歩らがこれに絡む。優子、葵のアイドル時代を演じた小川あん、岡本夏美たちもこれから人気が出てきそうな逸材。かつての仲間が再び集まるというプロットは韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』(11)からのいただきだが、毒は吐くのに、胸の中の本音は口にできない主人公たちの面倒くさい心理描写に坂下監督の独自のセンスを感じさせる。

 物語の後半、優子とプロデューサーの松本は、消息のつかめない葵を探して回ることに。グループ解散後、葵は事務所を移り、優子と同じように地味に芸能活動を続けていた。葵の元マネージャーだったという男を見つけるが、「過去にすがって、懸命に生きるのって痛いよね」と元マネージャーは葵のことを冷笑する。それまでずっとちぐはぐだった優子と松本だが、このとき2人は一致団結して、この元マネージャーをボコボコにする。かつて自分が憧れた存在には、いつまでも輝き続けてほしい。だから、自分にとってのアイドルやライバルをディスる奴は、到底許すことができなかった。

 20年の歳月を経て、優子と葵はお互いの心のわだかまりを消し去ることができるのか。優子と葵との20年ぶりの遭遇シーンが、本作のクライマックスとなる。おばさんになった「ピンカートン」の再結成ライブの行方は、映画を観てのお楽しみだ。最後にひとつ言えることは、優子は40歳を前にして、言い訳をしない自分の生きる道を見つけたということ。長年の呪いから、ようやく自分を解放することに成功した優子。目の前に広がる厳しい現実は変わらないものの、彼女の人生がこれから始まろうとしていた。
(文=長野辰次)

『ピンカートンに会いにいく』
監督・脚本/坂下雄一郎
出演/内田慈、松本若菜、山田真歩、水野小論、岩野未知、田村健太郎、
小川あん、岡本夏美、柴田杏花、芋生悠、鈴木まはな 
配給/松竹ブロードキャスティング、アーク・フィルムズ
1月20日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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爆死濃厚!? 土屋太鳳が広瀬すずの“二番煎じ”で、TBSドラマ『チア☆ダン』に主演

 土屋太鳳が7月期にTBS系「金10」枠で放送される連続ドラマ『チア☆ダン』で、主演を務めることがわかった。土屋の連ドラ主演は深夜帯を除けば、出世作となったNHK連続ドラマ小説『まれ』(2015年前期)以来、約3年ぶりで、地上波プライム帯では初となる。まだ1月期の同枠ドラマがスタートしていない段階で、次々期作が明らかになるのは異例のスピードだ。

『チア☆ダン』は、TBSと東宝などによる製作で、昨年3月に公開された広瀬すず主演映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』をベースにしたドラマ。これだけ早く発表したからには、TBSは並々ならぬ意欲で制作することになりそうだ。

 同映画は、福井県立商業高等学校のチアリーダー部「JETS」が、09年に全米チアダンス選手権で優勝した実話を基にした作品。ドラマ版は映画の数年後の設定で、幼い頃に「JETS」の演技を見てチアにあこがれをもった主人公が、将来は同部に入りたいという夢を抱くが、いつしか「自分には無理、できっこない」と考えるようになり、隣町の勉強も運動も中途半端な高校のチアリーティング部に入部するところから物語が始まる。夢をあきらめて過ごす高校生活の中で、ある日、東京から来た強引な転校生に「私とチアダンスをやろう!」という思いがけない言葉をかけられ、主人公のくすぶっていた思いに火を点ける。かけがえのない仲間や教師と共に泣き笑い、成長し、「打倒JETS!全米制覇!」というありえない夢を追いかけ、すべてを懸けて挑戦する姿を描いた青春ストーリーだという。

 映画とドラマとではストーリーが違うとはいえ、TBSでは映画のDVDなどの関連商品を独占販売しており、ドラマ化することで、映画グッズの販売にもつなげたいとの魂胆があるのは明らか。そのためには、ドラマがヒットしてくれないと困るのだ。

 ただ、同映画の興行収入は13億円どまりで、爆死とはいわないが、ヒットしたとはいいがたかった。昨年上半期の東宝配給作品で見ると、興収22億円を超えた『昼顔』(上戸彩主演)、同19億円超の『帝一の國』(菅田将暉主演)、同18億円超の『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(福士蒼汰主演)などと大きな差を付けられてしまった。

「映画そのものがヒットしておらず、かつ“広瀬すずの二番煎じ”と言われかねない状況で、よく土屋の所属事務所(ソニー・ミュージックアーティスツ)が、このオファーを受けたなとの印象です。映画には中条あやみ、山崎紘菜、富田望生、福原遥、柳ゆり菜、大原櫻子、真剣佑らが出演しましたが、ドラマも若手中心になるのは間違いなく、視聴者は若年層中心になりそうで、視聴率2ケタをキープできるかは疑問ですね。土屋は、同性にアンチが多いのも気になるところです」(テレビ誌関係者)

 朝ドラ以降、土屋は『下町ロケット』(15年10月期/TBS系)、『お迎えデス。』(16年4月期/日本テレビ系)、『IQ246~華麗なる事件簿~』(同10月期/TBS系)にヒロインで出演したが、いずれのドラマでも、いまひとつインパクトを残せなかった。

 昨年は映画に軸足を置いて、『PとJK』(ヒロイン)、『兄に愛されすぎて困ってます』(主演)、『トリガール!』(同)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(佐藤健とのW主演)と4作に出演。現在も公開中の『8年越しの花嫁』こそスマッシュヒットとなったが、そのほかの映画の興収はかんばしくなく、『トリガール!』は惨敗を喫した。ネット上では「賞味期限切れ」「映画に出すぎ」といった声が続出している状態だ。

 評価が下がり気味の土屋だけに、地上波プライム帯での初主演ドラマとなる『チア☆ダン』は、まさしく正念場。そもそも、朝ドラ『まれ』も19.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と大台に乗せられなかっただけに、なんとしても、今回は結果がほしいところ。だが、ヒットしなかった映画のドラマ版となれば、爆死の臭いもプンプン漂ってくるのだが、果たしてどうなることやら……。女子高校生のチアリーディング部が題材なだけに、人気若手女優やタレントを集結させれば、案外オジサンたちの癒やしのドラマになるかも?
(文=田中七男)

瑛太“番宣被り”で明暗分けた2本の主演映画『ミックス。』と『リングサイド・ストーリー』の苦悩

「今は映画もドラマと一緒で、原作重視、タレント重視、宣伝重視の傾向が以前よりも強くなってきている気がしますね。それを目の当たりにしたのが、先日公開された映画『ミックス。』でしたよ」(映画関係者)

 新垣結衣と瑛太のW主演で話題になった映画『ミックス。』。こちらは公開から2カ月が経過するが、最終的に興収15億円を目標にしているという。

「公開日は10月21日だったのですが、実はその前の週の14日にも、瑛太さん主演の映画『リングサイド・ストーリー』が公開されていたんです。『ミックス。』は知っていても、『リングサイド~』を知っている人は、少なかったんじゃないでしょうか。どちらも主演ですが、番宣で出ていたのは『ミックス。』ばかりでしたからね」(芸能事務所関係者)

 実際、『ミックス。』は新垣結衣とのW主演で、フジテレビが制作に入り、脚本は高視聴率連発の古沢良太、配給は東宝とヒットする要素が散りばめられていた。

「その点、『リングサイド~』は、ヒロインが佐藤江梨子さんで配給が彩プロという中小の配給会社でした。なので宣伝でブッキングできる番組もお金もなかったというのが実情です。佐藤さんひとりでは弱いので瑛太さんの事務所にもお願いしたのですが、『ミックス。』を優先されたそうですよ」(広告代理店関係者)

『リングサイド~』の監督は、安藤サクラを主演に据えて数々の映画賞を獲得した『百円の恋』(14)の武正晴。実際、作品の評判は上々だが、『ミックス。』の上映が日本各地で続く中、ひっそりと公開を終了している。

「宣伝も、例えばNHKの『あさイチ』は一度番宣で出演したら1年半は出られない慣例があるので、各事務所が協力して出るのが暗黙のルールなんです。それを調整するのが宣伝担当の仕事なのですが、番宣の成否で興収が2~3割変わるとも言われています。今回のケースも瑛太さん主演ですが興収には雲泥の差が出るでしょうね。本人としては両方宣伝したいんでしょうけどね」(テレビ局関係者)

 人気俳優ゆえの悩みといえそうだ。

瑛太“番宣被り”で明暗分けた2本の主演映画『ミックス。』と『リングサイド・ストーリー』の苦悩

「今は映画もドラマと一緒で、原作重視、タレント重視、宣伝重視の傾向が以前よりも強くなってきている気がしますね。それを目の当たりにしたのが、先日公開された映画『ミックス。』でしたよ」(映画関係者)

 新垣結衣と瑛太のW主演で話題になった映画『ミックス。』。こちらは公開から2カ月が経過するが、最終的に興収15億円を目標にしているという。

「公開日は10月21日だったのですが、実はその前の週の14日にも、瑛太さん主演の映画『リングサイド・ストーリー』が公開されていたんです。『ミックス。』は知っていても、『リングサイド~』を知っている人は、少なかったんじゃないでしょうか。どちらも主演ですが、番宣で出ていたのは『ミックス。』ばかりでしたからね」(芸能事務所関係者)

 実際、『ミックス。』は新垣結衣とのW主演で、フジテレビが制作に入り、脚本は高視聴率連発の古沢良太、配給は東宝とヒットする要素が散りばめられていた。

「その点、『リングサイド~』は、ヒロインが佐藤江梨子さんで配給が彩プロという中小の配給会社でした。なので宣伝でブッキングできる番組もお金もなかったというのが実情です。佐藤さんひとりでは弱いので瑛太さんの事務所にもお願いしたのですが、『ミックス。』を優先されたそうですよ」(広告代理店関係者)

『リングサイド~』の監督は、安藤サクラを主演に据えて数々の映画賞を獲得した『百円の恋』(14)の武正晴。実際、作品の評判は上々だが、『ミックス。』の上映が日本各地で続く中、ひっそりと公開を終了している。

「宣伝も、例えばNHKの『あさイチ』は一度番宣で出演したら1年半は出られない慣例があるので、各事務所が協力して出るのが暗黙のルールなんです。それを調整するのが宣伝担当の仕事なのですが、番宣の成否で興収が2~3割変わるとも言われています。今回のケースも瑛太さん主演ですが興収には雲泥の差が出るでしょうね。本人としては両方宣伝したいんでしょうけどね」(テレビ局関係者)

 人気俳優ゆえの悩みといえそうだ。

人気女優ミシェル・ロドリゲスが性転換手術をした!? 2018年きっての珍作No.1に決定『レディ・ガイ』

 ミシェル・ロドリゲスといえば、『ワイルド・スピード』(01)や『バイオハザード』(02)などの大ヒットシリーズでおなじみの人気アクション女優。アイパッチ姿で機関銃をぶっ放す『マチェーテ』(10)なんかサイコーだった。そんなミシェルのキメキメなガンアクションが満載で、しかもフルヌードまで披露している見どころたっぷりな主演映画が『レディ・ガイ』(原題『THE ASSIGNMENT』)。共演が『エイリアン』(79)のシガニー・ウィーバーで、『48時間』(82)や『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)などの男臭いアクション映画を撮ってきたウォルター・ヒル監督が長年温めてきた企画と聞くとすごく期待値が高まるわけだけど、この映画いろんな意味でこちらの想像を遥かに上回る超エクストリームな怪作なのだ。

 ミシェル・ロドリゲスが出演OKしなければ、実現しなかっただろうこの映画。ミシェルはマジで体を張りまくっています。彼女が演じるのは、フランク・キッチンという名の凄腕の殺し屋。それだけでは別に驚かないけど、このフランクという殺し屋は髭づらの男。裏社会で長年サバイブしてきたタフガイだが、あまりにも多くのターゲットをあの世送りにしたため、敵も少なくない。髭づらのミシェルが素っ裸になって、股間から立派な男性器を起立させているところが、序盤の見逃し厳禁ポイントです。背筋がぞわぞわしてきませんか?

 男性フェロモンむんむんなフランクだが、ある日いつも彼に仕事を回しているマフィアのボスから騙し討ちに遭い、気がつくとそこは安ホテルのベッドの上。全身を包帯でグルグル巻きにされていたフランクが包帯をむしり取ると、びっくり仰天! なんと彼の胸にはたわわなおっぱいが弾み、股間にあった大切な男性シンボルが消えてしまっていた。フランクが意識を失っている間に、悪の天才女医ジェーン(シガニー・ウィーバー)の手によって性転換手術を施され、女性に生まれ変わっていたのだ!!

 女医ジェーンはかつてフランクによって弟を殺され、その復讐としてフランクに性転換手術を行なった。ジェーンいわく「女として生まれ変わって、人生をやり直すチャンスをあなたにあげたのよ」とのこと。この女医も狂っているけど、こんな企画を35年間にもわたって温めてきたウォルター・ヒル監督もどうかしてるよ。みずからこの役に名乗り出たミシェル・ロドリゲスもおかしいし、お正月映画として劇場公開する配給会社もやっぱり変。新年早々、みんなどうかしています。

 性転換手術を凶悪犯罪者への罰のように描いているこの設定は、ジェンダー問題に敏感な人からは非難されているとのこと。ウォルター・ヒル監督もそのことは想定済みだったらしく、以下のように語っている。

ウォルター「トランスジェンダーはこの映画のストーリーにおいては重要な問題だが、テーマではない。これは復讐を描いた映画なんだ。ダークファンタジーだ。トランスジェンダーが直面している現実とは、何の関係もない。この映画には、現実のトランスジェンダーの考え方を否定したり、反論したり、揶揄している部分はいっさいない」

 ぶっ飛び系復讐ドラマとして楽しんでほしいというのが、もうすぐ76歳になる超ベテラン監督の主張だ。それでもやはり、ジェンダーの在り方がこの作品を異色なものに押し上げている。天才女医ジェーンは、フランクがあまりにも攻撃的な男性であるため、性転換手術し、女性ホルモンを投与すれば、まっとーな人間に更生するに違いないという持論を試すために違法手術をやったわけだ。ところが性転換手術によって体は女になっても、フランクの心は元の男のまま。失った男性シンボルの代わりに、拳銃と弾丸へのこだわりをますます見せるようになり、こんな体に改造した女医ジェーンへの復讐心をメラメラと燃やすことになる。クライマックスでは女としてのセクシーな肉体さえも武器に使って、自分を陥れた奴らを次々と血祭りにしていくのだった。

 ミシェル・ロドリゲスはフルヌード、しかもヘアヌードさえ惜しげもなくさらけ出しているのだが、ところがこれがまるでエロくない。なぜなら、彼女が演じているフランクは心がずっと男のままだからだ。肉体は女性であっても、中身が男性だと、観ている側にもセクシーには映らないという奇妙な感覚を我々は味わうことになる。そこにある肉体に宿っているのは女性の心なのか、それとも男性の心なのか。性と心と肉体との不思議な関係について、ふと考えさせられてしまう。

 男としてのフランク、性転換手術によって女になったフランク、2人のフランクを特殊メイクの力も借りて演じ分けたミシェル・ロドリゲス。男性パートでは人工の男性器を股間に装着したまま演じ、そのことで自分は男だと常に意識しながら演じることができたと振り返っている。ちなみに彼女からのオーダーで、大きめの男性器が用意されたそうだ。また、ミシェルは自他共に認める「銃の扱いがいちばんうまい女優」であり、そのことに関して、以下のように語っている。

ミシェル「私はすごく銃が好きで、指の動きひとつで何かをぶっ壊せるとか、そういうところに魅せられている。自分の中に秘めたバイオレンス部分があるのかもしれないと思っていたんだけれど、よく考えてみると、ある意味それは脆さとか弱さの裏返しなのかもしれない。それって自分は女性であること、無防備であることを、銃を持つことで補おうとしているのかもね。銃にこだわる男性たちもそれは同じで、男性にとっての優位な社会、男性としての存在感を銃によって守ろうとしているんじゃないの?」

 低予算で製作されたB級アクション映画だが、娯楽映画という体裁のところどころに性と暴力との関係性が透けて見えてくる。物語の後半、どこにも行き場所のないフランクを匿ってくれた女性看護士ジョニーに対し、フランクは彼女を思いやる感情を抱くようになっていく。女になったフランクを繊細に演じてみせるミシェルの芝居にも注目したい。ただの珍作、怪作とは言い捨てられない奇妙な味わいが余韻として残る。

(文=長野辰次)

『レディ・ガイ』
監督/ウォルター・ヒル テーマ曲/ジョルジオ・モロダー
出演/ミシェル・ロゲリゲス、シガニー・ウィーバー、トニー・シャルーブ、アンソニー・ラバリア、ケイトリン・ジェラード
配給/ギャガ・プラス R15+ 1月6日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
(c)2016 SBS FILMS All Rights reserved
http://gaga.ne.jp/lady-guy

 

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美女と冒険を愛するジャッキー魂は永遠に不滅!! お約束の展開が心地よい『カンフー・ヨガ』

 お正月をジャッキーと一緒に過ごせる。映画好きな人間にとって、こんなに幸せなことはない。『男はつらいよ』シリーズの寅さんは遠くへ旅立ち、『007』シリーズのジェームズ・ボンドも初代ショーン・コネリーの頃とはずいぶん雰囲気が変わってしまった。映画館の暗がりの中で相も変わらず体を張って、観客を楽しませ続けているスター俳優は、もはやジャッキー・チェンぐらい。そんなジャッキーの最新主演映画『カンフー・ヨガ』は彼の陽性の魅力が存分に発揮された作品。世界興収はすでに290億円を突破し、ジャッキー史上最大のメガヒット作となっている。

『カンフー・ヨガ』というタイトルから分かるように、本作は中国とインドとの合作映画。近年の目覚ましいインド経済の成長とボリウッドパワーをしたたかに取り入れる、商魂たくましいジャッキー師匠。さすがです。中国とインドはカシミール紛争やら弾道ミサイル配備問題もあり、国家レベルでは仲が悪いんだけれど、そこは「アクション映画に国境はなし」を謳うジャッキー映画。香港映画が培ってきた小気味よいアクション&テンポと、インド映画ならではの数百年にわたる壮大な恩讐劇とド派手なミュージカルシーンをミックスさせた一大エンターテイメント絵巻に仕立ててみせている。

 今回、ジャッキーが演じるのは中国・兵馬俑博物館に勤める著名な考古学者にして、なぜかカンフーの達人でもあるジャック。そんなジャックのもとに、インドから超絶美女のアスミタ(ディシャ・パタニ)が古い地図を持って訪ねてくる。かつて天竺(インド)と唐(中国)は友好だった時代があり、その友好の印である秘宝の在り処を古地図は示していた。美女と冒険に目がないジャックは、さっそく助手のシャオグァン(レイ)やトレジャーハンターのジョーンズ(アーリフ・リー)たちを連れて、シルクロード奥深くへと出発。ところがインドの大富豪ランドル(ソーヌー・スード)もこの秘宝を狙っており、崑崙山脈、さらにはドバイ、インドへと目まぐるしく舞台を移しながらのお宝争奪戦が繰り広げられる。

 トレジャーハンター役は『李小龍 マイブラザー』(10)で若き日のブルース・リーを演じたアーリフ・リーに譲っているけど、ジャッキーが“アジアの鷹”を演じた『プロジェクト・イーグル』(91)あたりと、まぁよく似た内容です。スタンリー・トン監督は、ジャッキーとは『ポリス・ストーリー3』(92)、『レッド・ブロンクス』(95)、『THE MYTH/神話』(05)など度々組んできた仲だけに、アクションシーンを若手に振りながらも、美味しいところはしっかりジャッキーに回すという阿吽の呼吸ぶり。ハズレのないおみくじを引くような安定感で、まさにお正月映画にぴったり。

 氷河に覆われた崑崙山脈での宝探しシーンはアイスランドロケを敢行し、ドバイではランボルギーニやフェラーリなどのスーパーカー合計70台を使ったカーチェイスで火花を散らし、見どころ満載な本作。でも、いちばん盛り上がるのは、やっぱりジャッキーの肉体を駆使したアクションシーン。伝説となっている『プロジェクトA』(83)の時計台からの落下や『WHO AM I?』(98)の高層ビルでの滑走のような命懸けなスタントはさすがにないものの、現在63歳とは思えない抜群にキレのあるカンフーアクションを見せてくれる。序盤の木人を相手に体馴らしをするシーンなんか、長年のファンはぐっと来てしまいますね。カンフーの奥義を披露してくれるクライマックスも、もちろん見逃せません。

 また、ジャッキーが屋外マーケットに出没すると、そこで大騒動が起きるのも大切なお約束。今回はインドの市場で路上パフォーマンスが行なわれているところに、ジャックたち一行が逃げ込んだから、さぁ大変! 火喰い芸、蛇使い、剣呑み、空中浮揚といったインドならではの大道芸が繰り広げられる中、ジャックと仲間たちvs.秘宝を執拗に狙う悪党一味との集団抗争が勃発することに。お馴染みの展開の中にも、ロケ先の風情を取り入れて新鮮みを醸し出すことを怠らないアクション指導のジャッキー&長年の盟友スタントリー監督なのです。

 ジャッキー映画はどれも頭空っぽで楽しめるものばかりだけど、『ゴージャス』(99)では環境汚染に言及したり、『ライジング・ドラゴン』(12)では歴史問題を現代の価値観で裁くことの無意味さを説くなど、やんわりとメッセージが込められてきたわけです。今回も敵味方入り乱れての争奪戦となる伝説のお宝は、それを手に入れたものは世界を思うがままに支配することができると言い伝えられている秘宝中の秘宝。冒険ドラマではこの手の財宝は物語を動かすための小道具であって、発見された財宝そのものには意味がないことがほとんどなわけだけど、ジャックたちが苦労して手に入れた今回の財宝はけっこートンチの効いた代物。こういったオチもジャッキー映画ならでは。

 秘宝のタネ明かしが済めば、エンディングは敵も味方も、中国人もインド人も、メインキャストもエキストラもスタッフも、みんな一緒になっての一大ダンスシーン。跳んで、踊って、ここはジャッキーパラダイス。ジャッキーが笑えば、みんなも笑う。浮世の垢は、きれいさっぱり洗い流しましょう。セラピー効果は抜群です!
(文=長野辰次)

『カンフー・ヨガ』
監督・脚本/スタントリー・トン
出演/ジャッキー・チェン、アーリフ・リー、レイ(EXO)、ソーヌー・スード、ディシャ・パタニ、アミラ・ダスツール、エリック・ツァン、チャン・グオリー、ムチミヤ
配給/KADOKAWA 12月22日より全国ロードショー中
C)2017 SR MEDIA KHORGOS TAIHE SHINEWORK PICTURES SR CULTURE & ENTERTAINMENT. ALL RIGHTS RESERVED
http://kungfuyoga.jp

 

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美女と冒険を愛するジャッキー魂は永遠に不滅!! お約束の展開が心地よい『カンフー・ヨガ』

 お正月をジャッキーと一緒に過ごせる。映画好きな人間にとって、こんなに幸せなことはない。『男はつらいよ』シリーズの寅さんは遠くへ旅立ち、『007』シリーズのジェームズ・ボンドも初代ショーン・コネリーの頃とはずいぶん雰囲気が変わってしまった。映画館の暗がりの中で相も変わらず体を張って、観客を楽しませ続けているスター俳優は、もはやジャッキー・チェンぐらい。そんなジャッキーの最新主演映画『カンフー・ヨガ』は彼の陽性の魅力が存分に発揮された作品。世界興収はすでに290億円を突破し、ジャッキー史上最大のメガヒット作となっている。

『カンフー・ヨガ』というタイトルから分かるように、本作は中国とインドとの合作映画。近年の目覚ましいインド経済の成長とボリウッドパワーをしたたかに取り入れる、商魂たくましいジャッキー師匠。さすがです。中国とインドはカシミール紛争やら弾道ミサイル配備問題もあり、国家レベルでは仲が悪いんだけれど、そこは「アクション映画に国境はなし」を謳うジャッキー映画。香港映画が培ってきた小気味よいアクション&テンポと、インド映画ならではの数百年にわたる壮大な恩讐劇とド派手なミュージカルシーンをミックスさせた一大エンターテイメント絵巻に仕立ててみせている。

 今回、ジャッキーが演じるのは中国・兵馬俑博物館に勤める著名な考古学者にして、なぜかカンフーの達人でもあるジャック。そんなジャックのもとに、インドから超絶美女のアスミタ(ディシャ・パタニ)が古い地図を持って訪ねてくる。かつて天竺(インド)と唐(中国)は友好だった時代があり、その友好の印である秘宝の在り処を古地図は示していた。美女と冒険に目がないジャックは、さっそく助手のシャオグァン(レイ)やトレジャーハンターのジョーンズ(アーリフ・リー)たちを連れて、シルクロード奥深くへと出発。ところがインドの大富豪ランドル(ソーヌー・スード)もこの秘宝を狙っており、崑崙山脈、さらにはドバイ、インドへと目まぐるしく舞台を移しながらのお宝争奪戦が繰り広げられる。

 トレジャーハンター役は『李小龍 マイブラザー』(10)で若き日のブルース・リーを演じたアーリフ・リーに譲っているけど、ジャッキーが“アジアの鷹”を演じた『プロジェクト・イーグル』(91)あたりと、まぁよく似た内容です。スタンリー・トン監督は、ジャッキーとは『ポリス・ストーリー3』(92)、『レッド・ブロンクス』(95)、『THE MYTH/神話』(05)など度々組んできた仲だけに、アクションシーンを若手に振りながらも、美味しいところはしっかりジャッキーに回すという阿吽の呼吸ぶり。ハズレのないおみくじを引くような安定感で、まさにお正月映画にぴったり。

 氷河に覆われた崑崙山脈での宝探しシーンはアイスランドロケを敢行し、ドバイではランボルギーニやフェラーリなどのスーパーカー合計70台を使ったカーチェイスで火花を散らし、見どころ満載な本作。でも、いちばん盛り上がるのは、やっぱりジャッキーの肉体を駆使したアクションシーン。伝説となっている『プロジェクトA』(83)の時計台からの落下や『WHO AM I?』(98)の高層ビルでの滑走のような命懸けなスタントはさすがにないものの、現在63歳とは思えない抜群にキレのあるカンフーアクションを見せてくれる。序盤の木人を相手に体馴らしをするシーンなんか、長年のファンはぐっと来てしまいますね。カンフーの奥義を披露してくれるクライマックスも、もちろん見逃せません。

 また、ジャッキーが屋外マーケットに出没すると、そこで大騒動が起きるのも大切なお約束。今回はインドの市場で路上パフォーマンスが行なわれているところに、ジャックたち一行が逃げ込んだから、さぁ大変! 火喰い芸、蛇使い、剣呑み、空中浮揚といったインドならではの大道芸が繰り広げられる中、ジャックと仲間たちvs.秘宝を執拗に狙う悪党一味との集団抗争が勃発することに。お馴染みの展開の中にも、ロケ先の風情を取り入れて新鮮みを醸し出すことを怠らないアクション指導のジャッキー&長年の盟友スタントリー監督なのです。

 ジャッキー映画はどれも頭空っぽで楽しめるものばかりだけど、『ゴージャス』(99)では環境汚染に言及したり、『ライジング・ドラゴン』(12)では歴史問題を現代の価値観で裁くことの無意味さを説くなど、やんわりとメッセージが込められてきたわけです。今回も敵味方入り乱れての争奪戦となる伝説のお宝は、それを手に入れたものは世界を思うがままに支配することができると言い伝えられている秘宝中の秘宝。冒険ドラマではこの手の財宝は物語を動かすための小道具であって、発見された財宝そのものには意味がないことがほとんどなわけだけど、ジャックたちが苦労して手に入れた今回の財宝はけっこートンチの効いた代物。こういったオチもジャッキー映画ならでは。

 秘宝のタネ明かしが済めば、エンディングは敵も味方も、中国人もインド人も、メインキャストもエキストラもスタッフも、みんな一緒になっての一大ダンスシーン。跳んで、踊って、ここはジャッキーパラダイス。ジャッキーが笑えば、みんなも笑う。浮世の垢は、きれいさっぱり洗い流しましょう。セラピー効果は抜群です!
(文=長野辰次)

『カンフー・ヨガ』
監督・脚本/スタントリー・トン
出演/ジャッキー・チェン、アーリフ・リー、レイ(EXO)、ソーヌー・スード、ディシャ・パタニ、アミラ・ダスツール、エリック・ツァン、チャン・グオリー、ムチミヤ
配給/KADOKAWA 12月22日より全国ロードショー中
C)2017 SR MEDIA KHORGOS TAIHE SHINEWORK PICTURES SR CULTURE & ENTERTAINMENT. ALL RIGHTS RESERVED
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片想いをこじらせた“痛い女”松岡茉優に惚れる! 綿矢りさ原作を換骨奪胎した『勝手にふるえてろ』

 松岡茉優はけっこう芸歴が長い。ジュニア時代には園子温監督のブレイク作『愛のむきだし』(09)にヒロイン・満島ひかりを慕う親戚の女の子役でちょい出演し、人気番組『おはスタ』(テレビ東京系)のおはガールも務めていた。『おはスタ』卒業後は本格的に女優の道を歩み出し、吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ』(12)で東出昌大の彼女、朝ドラ『あまちゃん』(NHK総合)でアイドルグループ「GMT」のリーダーを演じるも、作品世界にあまりにも同化しすぎて、松岡の存在は印象に残らないという不憫な状況に陥っていた。役へのなりきりぶりが災いした格好だった。

 ところが、2016年にオンエアされた深夜ドラマ『その「おこだわり」、私にもくれよ!』(テレビ東京系)や大河ドラマ『真田丸』(NHK総合)など素の松岡を“当て書き”した作品に出演し、いっきに輝きを増すようになった。そんな松岡にとって、待望の映画初主演作となるのが綿矢りさ原作『勝手にふるえてろ』だ。

 松岡演じる主人公・ヨシカはかなり重度なこじらせ女子である。OLとして地味に経理の仕事をこなしているが、頭の中は煩悩だらけ。中学時代にずっと片想いしていた“憧れの王子さま”イチ(北村匠海)のことが忘れられず、イチとのほんのちょっとした会話やチラッと目線が合ったときの記憶を反芻してはニヤニヤしている。ちなみにヨシカから告白したり、卒業後に連絡しようと働き掛けたことはいっさいなし。記憶の中のイチを召喚しては、甘酸っぱい想いに駆られる毎日だった。

 そんな“痛い女”ヨシカでも、「俺と付き合ってください」とアタックしてくる男がいる。同期入社した営業部のニ(渡辺大知)だった。王子さま系には程遠いニは、ヨシカのタイプではまったくないものの、人生で初めてコクられて悪い気はしない。いつも挨拶を交わしている近所の釣りおじさん(古舘寛治)やアパートの隣人(片桐はいり)たちに鼻高々に自慢するヨシカ。かなり面倒くさい女である。

 正直、ヨシカにとってストライクゾーンではない“うざい系”のニだが、ヨシカはヨシカで週末に一緒に出掛ける相手もいない。強引なニに渋々つきあううちに、次第に感化されるようになっていく。ニはヨシカとお近づきになりたくて、営業部の同期に頼んで経理部女子との飲み会をセッティングしてもらったと打ち明ける。いつもはニのことを見下している上から目線のヨシカだが、ちゃっかりニの戦術をパクって中学時代の同窓会を企画することに。ヨシカはクラスではまるで目立たない存在だったので、米国留学中の同級生の名前を騙った偽SNSで動員を謀る。もちろん同窓会の目的はただひとつ、卒業以来まったく逢っていないイチと再会するためだ。男性経験ゼロなヨシカだが、理想の彼・イチと現実世界の彼・ニとの二股交際に走る貪欲ガールへと変貌していく。

 理想と現実との狭間で見苦しくジタバタとあがくヨシカを見て、女性だけでなく男性も「これは自分自身の物語だ」と思うのではないだろうか。誰もが“理想の恋人”とつきあいたいと願う。でも、その“理想の恋人”はあくまでも自分の頭の中で描いている想像上の生き物でしかない。実際に憧れの相手と交際できたとしても、「自分の理想像と違う」と早々に幻滅するか、自分の理想像へ矯正しようとし、諍いが起きる。結局、自分が愛していたのは自分が勝手に思い描いていた理想像でしかない。理想の王子さま像にこだわり続けるヨシカは相当に痛々しいが、まったくの赤の他人とは思えない。ヨシカの暴走ぶりに笑いながらも、観ているこちらの胸にグサグサと突き刺さるシーンの連続となっている。

 ストライクゾーンが異様に狭いヨシカにまとわりつき、ストライクゾーンの中へ強引に入り込もうとするのが、ミュージシャンでもある渡辺大知演じる人間臭い男・ニである。ニは自分の趣味である渓流釣りや卓球へとヨシカを無理矢理に連れ出す。そんなニの無神経さはいちいちヨシカの神経を逆なでするが、会社以外はアパートに篭りっきりのヨシカにとっては新鮮な世界であるのも確かだった。それはニにとっても同じだった。自分とは異なる価値観の持ち主とのコミュニケーションに戸惑い、ふるえ、つまずきながらも、ヨシカとニはお互いの距離を少しずつ縮めていくことになる。

 芥川賞作家・綿矢りさが2010年に発表した中編小説を、大九明子監督は大胆に脚色している。原作小説ではヨシカ、イチ、ニ、ヨシカの同僚・くるみ(石橋杏奈)と登場人物が限られていたが、映画版ではヨシカと顔なじみの釣りおじさん、アパートの隣人、コンビニの店員(柳俊太郎)、最寄り駅の駅員(前野朋哉)、行きつけのカフェのウエイトレス(趣里)ら個性豊かな仲間たちとのやりとりを交えた賑やかなコメディ快作となった。クライマックスにはミュージカルパートも用意され、松岡が切々と“痛ガール”の心情を歌い上げる挿入歌「アンモナイト」も見どころ・聴きどころとなっている。松岡の素顔を大九監督が当て書きしたシナリオだが、20代の頃にお笑い芸人を真剣に目指すも挫折した経験を持つ大九監督のこじらせた過去も投影したものとなっている。こじらせた青春を過ごした人ほど、ヨシカのことがますます愛おしく思えてくるに違いない。

 ヨシカが「勝手にふるえてろ」と呟く場面も呟く相手も、原作と映画ではまったく異なるものとなっている。換骨奪胎とも言えるアレンジとなった映画『勝手にふるえてろ』の世界で、女優・松岡茉優は他の誰にも似ていない輝きを放っている。
(文=長野辰次)

『勝手にふるえてろ』
原作/綿矢りさ 監督・脚本/大九明子 
出演/松岡茉優、渡辺大知、石橋杏奈、北村匠海、趣里、前野朋哉、池田鉄洋、稲川実代子、柳俊太郎、山野海、梶原ひかり、金井美樹、小林龍二、増田朋弥、後藤ユウミ、原扶貴子、仲田育史、松島庄汰、古舘寛治、片桐はいり
配給/ファントム・フィルム 12月23日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
(c)映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
http://furuetero-movie.com

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片想いをこじらせた“痛い女”松岡茉優に惚れる! 綿矢りさ原作を換骨奪胎した『勝手にふるえてろ』

 松岡茉優はけっこう芸歴が長い。ジュニア時代には園子温監督のブレイク作『愛のむきだし』(09)にヒロイン・満島ひかりを慕う親戚の女の子役でちょい出演し、人気番組『おはスタ』(テレビ東京系)のおはガールも務めていた。『おはスタ』卒業後は本格的に女優の道を歩み出し、吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ』(12)で東出昌大の彼女、朝ドラ『あまちゃん』(NHK総合)でアイドルグループ「GMT」のリーダーを演じるも、作品世界にあまりにも同化しすぎて、松岡の存在は印象に残らないという不憫な状況に陥っていた。役へのなりきりぶりが災いした格好だった。

 ところが、2016年にオンエアされた深夜ドラマ『その「おこだわり」、私にもくれよ!』(テレビ東京系)や大河ドラマ『真田丸』(NHK総合)など素の松岡を“当て書き”した作品に出演し、いっきに輝きを増すようになった。そんな松岡にとって、待望の映画初主演作となるのが綿矢りさ原作『勝手にふるえてろ』だ。

 松岡演じる主人公・ヨシカはかなり重度なこじらせ女子である。OLとして地味に経理の仕事をこなしているが、頭の中は煩悩だらけ。中学時代にずっと片想いしていた“憧れの王子さま”イチ(北村匠海)のことが忘れられず、イチとのほんのちょっとした会話やチラッと目線が合ったときの記憶を反芻してはニヤニヤしている。ちなみにヨシカから告白したり、卒業後に連絡しようと働き掛けたことはいっさいなし。記憶の中のイチを召喚しては、甘酸っぱい想いに駆られる毎日だった。

 そんな“痛い女”ヨシカでも、「俺と付き合ってください」とアタックしてくる男がいる。同期入社した営業部のニ(渡辺大知)だった。王子さま系には程遠いニは、ヨシカのタイプではまったくないものの、人生で初めてコクられて悪い気はしない。いつも挨拶を交わしている近所の釣りおじさん(古舘寛治)やアパートの隣人(片桐はいり)たちに鼻高々に自慢するヨシカ。かなり面倒くさい女である。

 正直、ヨシカにとってストライクゾーンではない“うざい系”のニだが、ヨシカはヨシカで週末に一緒に出掛ける相手もいない。強引なニに渋々つきあううちに、次第に感化されるようになっていく。ニはヨシカとお近づきになりたくて、営業部の同期に頼んで経理部女子との飲み会をセッティングしてもらったと打ち明ける。いつもはニのことを見下している上から目線のヨシカだが、ちゃっかりニの戦術をパクって中学時代の同窓会を企画することに。ヨシカはクラスではまるで目立たない存在だったので、米国留学中の同級生の名前を騙った偽SNSで動員を謀る。もちろん同窓会の目的はただひとつ、卒業以来まったく逢っていないイチと再会するためだ。男性経験ゼロなヨシカだが、理想の彼・イチと現実世界の彼・ニとの二股交際に走る貪欲ガールへと変貌していく。

 理想と現実との狭間で見苦しくジタバタとあがくヨシカを見て、女性だけでなく男性も「これは自分自身の物語だ」と思うのではないだろうか。誰もが“理想の恋人”とつきあいたいと願う。でも、その“理想の恋人”はあくまでも自分の頭の中で描いている想像上の生き物でしかない。実際に憧れの相手と交際できたとしても、「自分の理想像と違う」と早々に幻滅するか、自分の理想像へ矯正しようとし、諍いが起きる。結局、自分が愛していたのは自分が勝手に思い描いていた理想像でしかない。理想の王子さま像にこだわり続けるヨシカは相当に痛々しいが、まったくの赤の他人とは思えない。ヨシカの暴走ぶりに笑いながらも、観ているこちらの胸にグサグサと突き刺さるシーンの連続となっている。

 ストライクゾーンが異様に狭いヨシカにまとわりつき、ストライクゾーンの中へ強引に入り込もうとするのが、ミュージシャンでもある渡辺大知演じる人間臭い男・ニである。ニは自分の趣味である渓流釣りや卓球へとヨシカを無理矢理に連れ出す。そんなニの無神経さはいちいちヨシカの神経を逆なでするが、会社以外はアパートに篭りっきりのヨシカにとっては新鮮な世界であるのも確かだった。それはニにとっても同じだった。自分とは異なる価値観の持ち主とのコミュニケーションに戸惑い、ふるえ、つまずきながらも、ヨシカとニはお互いの距離を少しずつ縮めていくことになる。

 芥川賞作家・綿矢りさが2010年に発表した中編小説を、大九明子監督は大胆に脚色している。原作小説ではヨシカ、イチ、ニ、ヨシカの同僚・くるみ(石橋杏奈)と登場人物が限られていたが、映画版ではヨシカと顔なじみの釣りおじさん、アパートの隣人、コンビニの店員(柳俊太郎)、最寄り駅の駅員(前野朋哉)、行きつけのカフェのウエイトレス(趣里)ら個性豊かな仲間たちとのやりとりを交えた賑やかなコメディ快作となった。クライマックスにはミュージカルパートも用意され、松岡が切々と“痛ガール”の心情を歌い上げる挿入歌「アンモナイト」も見どころ・聴きどころとなっている。松岡の素顔を大九監督が当て書きしたシナリオだが、20代の頃にお笑い芸人を真剣に目指すも挫折した経験を持つ大九監督のこじらせた過去も投影したものとなっている。こじらせた青春を過ごした人ほど、ヨシカのことがますます愛おしく思えてくるに違いない。

 ヨシカが「勝手にふるえてろ」と呟く場面も呟く相手も、原作と映画ではまったく異なるものとなっている。換骨奪胎とも言えるアレンジとなった映画『勝手にふるえてろ』の世界で、女優・松岡茉優は他の誰にも似ていない輝きを放っている。
(文=長野辰次)

『勝手にふるえてろ』
原作/綿矢りさ 監督・脚本/大九明子 
出演/松岡茉優、渡辺大知、石橋杏奈、北村匠海、趣里、前野朋哉、池田鉄洋、稲川実代子、柳俊太郎、山野海、梶原ひかり、金井美樹、小林龍二、増田朋弥、後藤ユウミ、原扶貴子、仲田育史、松島庄汰、古舘寛治、片桐はいり
配給/ファントム・フィルム 12月23日(土)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
(c)映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
http://furuetero-movie.com

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