故・高畑勲監督も苦笑い?『かぐや姫の物語』放送で“帝のアゴ祭り”再び!

 4月5日に逝去した高畑勲監督のアニメーション映画『かぐや姫の物語』が5月18日に『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)で放送され、平均視聴率10.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。

「2013年に公開された同作は、製作に8年を費やし、総製作費に50億円が投じられたとも。アカデミー賞長編アニメーション賞にもノミネートされ、惜しくも受賞は逃しましたが、昔話の『竹取物語』をベースにしながら実験的な手法を駆使した映像表現は、世界中から高く評価されています。TBSの宇垣美里アナウンサーも、ラジオ番組での監督の追悼特集で、女性への性差別的扱いを独自の視点で抉り取った高畑監督に感銘を受けたことを明かしています」(映画ライター)

 いま世界的に盛り上がっている#MeToo運動を先取りしていたとも受け取れることで、改めて高畑監督の偉大さがクローズアップされた形だ。

 一方、ネット上では“あの男”の再登場に異様な盛り上がりを見せたという。

「15年に地上波初放送となった際、物語の中盤で数々の求婚を断り続けるかぐや姫を見初めた帝(正式名称は御門)が登場するや、初見の視聴者は彼の長く尖った面白過ぎるアゴにクギ付けに。一気にトレンドを駆け上がり、リアルタイム検索では瞬間2万3,000近くがアゴについて触れたほどでした。今回も『アゴ様キター!』『これがウワサの帝のアゴですか』といったコメントが連打され、中にはアゴの角度を分度器で測った結果、67度を記録したという報告も上がっています。スタジオジブリ作といえば、『天空の城ラピュタ』(1986年)がテレビ放送された際、主人公のパズーたちが唱える滅びの言葉『バルス』に合わせて、視聴者たちがTwitterなどで一斉に『バルス』とつぶやく“バルス祭り”が有名ですが、今や“帝のアゴ祭り”はこれと双璧とも言われていますよ」(サブカル誌ライター)

 作品の意図とは離れたところでの大盛り上がりに、高畑監督は天国で苦笑いしているかも!?

故・高畑勲監督も苦笑い?『かぐや姫の物語』放送で“帝のアゴ祭り”再び!

 4月5日に逝去した高畑勲監督のアニメーション映画『かぐや姫の物語』が5月18日に『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)で放送され、平均視聴率10.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。

「2013年に公開された同作は、製作に8年を費やし、総製作費に50億円が投じられたとも。アカデミー賞長編アニメーション賞にもノミネートされ、惜しくも受賞は逃しましたが、昔話の『竹取物語』をベースにしながら実験的な手法を駆使した映像表現は、世界中から高く評価されています。TBSの宇垣美里アナウンサーも、ラジオ番組での監督の追悼特集で、女性への性差別的扱いを独自の視点で抉り取った高畑監督に感銘を受けたことを明かしています」(映画ライター)

 いま世界的に盛り上がっている#MeToo運動を先取りしていたとも受け取れることで、改めて高畑監督の偉大さがクローズアップされた形だ。

 一方、ネット上では“あの男”の再登場に異様な盛り上がりを見せたという。

「15年に地上波初放送となった際、物語の中盤で数々の求婚を断り続けるかぐや姫を見初めた帝(正式名称は御門)が登場するや、初見の視聴者は彼の長く尖った面白過ぎるアゴにクギ付けに。一気にトレンドを駆け上がり、リアルタイム検索では瞬間2万3,000近くがアゴについて触れたほどでした。今回も『アゴ様キター!』『これがウワサの帝のアゴですか』といったコメントが連打され、中にはアゴの角度を分度器で測った結果、67度を記録したという報告も上がっています。スタジオジブリ作といえば、『天空の城ラピュタ』(1986年)がテレビ放送された際、主人公のパズーたちが唱える滅びの言葉『バルス』に合わせて、視聴者たちがTwitterなどで一斉に『バルス』とつぶやく“バルス祭り”が有名ですが、今や“帝のアゴ祭り”はこれと双璧とも言われていますよ」(サブカル誌ライター)

 作品の意図とは離れたところでの大盛り上がりに、高畑監督は天国で苦笑いしているかも!?

元少年Aになりきった瑛太の自傷シーンはトラウマ級の衝撃!! 連続児童殺傷事件のその後『友罪』

 もしも、最近知り合った仲間が人に話せない秘密を抱えていたら。もしも、その秘密が償いきれないほどの重い罪だったら……。少年犯罪をテーマにしたミステリーものを手掛ける薬丸岳の小説『友罪』(集英社)が、生田斗真&瑛太主演作として映画化された。2人の熱演を引き出したのは、光市母子殺害事件をモチーフにした『ヘヴンズ ストーリー』(10)でベルリン映画祭国際批評家連盟賞を受賞した瀬々敬久監督。今回の『友罪』も実在の事件を連想させることで話題を呼んでいる。

 主人公となる益田(生田斗真)は元週刊誌記者。部数やスキャンダル性を重視する編集方針に不満を持ち、勤めていた出版社を退職してしまう。ジャーナリストとしての夢を捨て切れない益田だったが、家賃を払うこともできず、急場しのぎで寮付きの町工場で働き始める。同じ日に入寮したのが、鈴木(瑛太)だった。人とコミュニケーションすることを避けている鈴木に、益田は妙に惹かれてしまう。中学のときに自殺した同級生と雰囲気がよく似ていたからだった。

 益田も心にキズを負っていることを察知した鈴木は、次第に益田に対して心を開くようになる。慣れない工場での仕事中、益田は不注意から指を切断してパニックに陥ってしまう。益田の窮地を救ったのは鈴木だった。冷静に状況を見ていた鈴木は、益田の切断された指を氷で冷やしながら保存し、益田は接合手術に成功する。熱心な仕事ぶりもあって、鈴木の職場での評価が高まる。

 だが、平和な日々は長くは続かない。益田は元同業者である週刊誌記者の清美(山本美月)から最近起きた児童殺害事件についてのアドバイスを頼まれ、ネット検索をしているうちに、かつて日本中を震撼させた連続児童殺傷事件の当時14歳だった加害者少年と鈴木の顔がよく似ていることに気づく。鈴木は少年院を出所し、偽名を使って生きてきた元少年Aなのか? 益田は鈴木の隠された過去を調べずにはいられなくなってしまう──。

 2013年に発表された薬丸岳の原作小説はあくまでもフィクションだが、原作で触れられる「黒蛇神事件」(映画では『五芒星事件』)は1997年に起きた“酒鬼薔薇事件”を連想させるものとなっている。酒鬼薔薇事件を起こした元少年Aといえば、2015年に出版された元少年A自身の手記『絶歌 神戸連続児童殺傷事件』(太田出版)がベストセラーになったことが記憶に新しい。元少年Aの出所後のストーリーは、『友罪』と『絶歌』でかなり重なり合う部分がある。

『絶歌』の前半部分は頭でっかちなリアルモンスターとしての少年Aの共感不可能な禍々しい日常が描かれているが、少年院を経て実社会に出た元少年Aはゴミ収集車に乗って初めての労働を体験し、また仕事仲間と触れ合うことで、生きることの喜びを実感する。それまで、ずっと死ぬことしか考えていなかった元少年Aは、仕事を通して現実世界と繋がり、それと同時に自分が犯した罪の重さをようやく思い知ることになる。

 映画化された『友罪』でも、他人との間に壁をつくっていた鈴木が、一緒に働く益田たちと交流を深めていくパートは重要なものとなっている。鈴木は口数が少ないものの、心にキズを負っている人間の存在には敏感だ。コールセンターに勤める美代子(夏帆)もつらい過去を抱えているが、鈴木は偏見を持つことなく美代子と接する。指の怪我の癒えた益田の退院祝いを兼ねて、みんなでカラオケに繰り出すシーンは、一瞬のユートピアのような温かさに満ちている。過ちを犯した人間も、善行を重ねればいつかは救済されると信じたくなる。

 一方、一度犯した罪は容易には許されないと糾弾するのが、瀬々監督のメジャーヒット作『64 ロクヨン』(16)に主演した佐藤浩市演じるタクシー運転手の山内だ。原作小説では山内の出番は限られていたが、瀬々監督は山内パートを脚色した上で大幅に増やしている。かつて山内の息子(石田法嗣)は過失事故で複数の子どもの命を奪った。事故以降、山内は加害者の父という責任感から家族を解散し、自分はタクシー運転手となって、細々と遺族に対して慰謝料を払い続けている。瀬々監督は『ヘヴンズ ストーリー』で撮影時17歳だったヒロイン・寉岡萌希に「家族が不幸に遭った人間は、幸せになることは許されない」とキツい言葉を吐かせた。今回は佐藤浩市に同じように重い台詞を言わせている。一度奪った命は二度とは帰ってはこない。新しい家族に、そのことを話すことができるのかと。

 三浦しをん原作、大森立嗣監督の『光』(17)でも心に暗い闇を抱えた若者を演じた瑛太が、今回も強烈な闇演技を披露している。美代子にまとわりつくDV男(忍成修吾)から殴る蹴るの暴行を浴びる鈴木は、無抵抗でボコボコにされるがままだ。さらに、鈴木は石を拾って自分の頭を鮮血が噴き出すまで何度も何度も叩き続ける。「僕が死ぬところ、見ててよ」と叫ぶ。

 自分の過去を隠し、新しい職場で束の間の平穏を感じることはあっても、心の奥に潜む闇は一生消えることはない。死への衝動と生に対する執着心とが、ない交ぜになった迫真の表情だ。元少年Aと同時代を生きる表現者としての、言葉では表現できない複雑な想いがスクリーンから噴き出している。
(文=長野辰次)

『友罪』
原作/薬丸岳 監督・脚本/瀬々敬久
出演/生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月、富田靖子、奥野瑛太、飯田芳、小市慢太郎、矢島健一、青木崇高、忍成修吾、西田尚美、村上淳、片岡礼子、石田法嗣、北浦愛、坂井真紀、古舘寛治、宇野祥平、大西信満、渡辺真紀子、光石研、佐藤浩市
配給/ギャガ 5月25日(金)より全国公開
(c)薬丸岳/集英社c)2018映画「友罪」製作委員会
http://gaga.ne.jp/yuzai

 

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人気女優のCMで好感度の高い優良企業の不祥事!! 日本企業の隠蔽体質を暴く『サムライと愚か者』

 神々のたそがれならぬ、日本企業のたそがれなのか。人気女優・宮崎あおいが2007年からCMキャラクターを務めている「オリンパス社」。国内ではカメラの老舗ブランドとして有名だが、内視鏡分野では世界シェアの75%を占める世界的な光学機器メーカーである。ギリシア神話の舞台となったオリンポス山を社名の由来とするオリンパス社が、国際ニュースを騒がしたのは11年に発覚した「オリンパス損失隠蔽事件」だった。オリンパス社が大量のCMを出稿するクラアントであることから、国内の大手メディアはオリンパス社が1,200億円もの損失を隠してきたこの事件を報じることに躊躇した。ドキュメンタリー映画『サムライと愚か者 オリンパス事件の全貌』は、15年に英国の国営放送BBCをはじめ、欧州各国でテレビ放映されて大きな反響を呼び、ようやく国内でも劇場公開されることになった。日本企業特有の隠蔽体質、組織のトップに対する忖度、外国人社長とのコミュニケーション不全……。海外生活の長い山本兵衛監督に、本作の製作事情とオリンパス事件が抱える特異性について語ってもらった。

 山本兵衛監督はニューヨーク大学映画製作科を卒業後、米国の映画配給会社で働くなどしながら、短編映画を各国の映画祭に出品してきた。今回の『サムライと愚か者』が長編デビュー作となる。かつて松竹を解任された苦い経験を持つ奥山和由プロデューサーはオリンパス社から解任されたマイケル・ウッドフォード元社長の告発本『解任』(早川書房)に感銘を受け、オリンパス事件をベースにした映画はできないかと山本監督に打診したのが12年。17年間に及ぶ海外生活の中で文化的価値観の相違を痛感してきた自分なら、日本人側の視点、国際的な視点の両面からこの事件を捉えることができると快諾したという。

山本「オリンパス社で初の外国人社長に抜擢された英国人のマイケル・ウッドフォード氏ですが、不可解な会計処理に気づき、真相を究明しようとしたところ、解任されてしまいました。事件の発覚後、再来日したウッドフォード氏がオリンパス社の内情を語る形で、事件を検証していく構成にしています。奥山プロデューサーから企画を打診され、より多くの出資を募るため、アムステルダムのドキュメンタリー映画祭の企画マーケットに出品したところ、BBCが興味を示し、欧州各国のテレビ局も出資してくれることになったんです。それもあって、まず英国、その後ドイツ、フランス、デンマーク、スウェーデンでも放映されました。欧州ではかなりの反響があり、日本でも公開することになったのですが、中には『世界的に知られる日本の優良企業の恥部を、どうしてさらすようなことをするんだ』と思う方もいるかもしれません。でも今回のオリンパス事件は、時代の変換期を迎えた日本社会が抱える様々な問題の縮図であるように、僕には思えるんです」

 11年7月、オリンパス事件を最初にスクープしたのは月刊誌「FACTA」(ファクタ出版)だった。出版取次を通さない会員向けの総合情報誌「FACTA」誌上で、記者クラブには所属しないフリージャーナリストである山口義正記者が怪しい企業買収を重ねるオリンパス社の不正を訴えた。同年4月にオリンパス社の社長に就任したばかりだったウッドフォード氏はこの記事に驚き、前社長である菊川剛会長(当時)に疑惑の解明を要求したところ、菊川会長を中心とする役員会(ウッドフォード氏以外は全員日本人)で一方的に解任されてしまう。この解任劇とウッドフォード氏によるオリンパス社の不正告発を海外のメディアは大々的に報道したが、日本の大手メディアがこの事件を取り上げるまでには相当の時間差を生じた。

山本「日本の企業文化の独自性を題材にしたドキュメンタリーになっていますが、オリンパス事件を追求しなかった日本のメディアもおかしな状況ではないでしょうか。世界で起きた重大ニュースを、日本のメディアは海の向こうで起きたローカルニュースのように扱う。例えば、米国パークランドの高校で起きた銃乱射事件の後、高校生たちが銃規制を訴えてワシントンでデモ行進したニュースを、日本のニュース番組では『歌手のレディ・ガガさんも参加しました』と芸能ニュース扱いで報じていました。海外の常識では考えらえないことが、今の日本のメディアでは当たり前になっています。日本のテレビ局はNHKニュースをまずチェックし、特オチしていないかを確認することが基本になっている。オリンパス事件の本筋からは離れてしまうので編集段階でカットしたんですが、国内メディアの姿勢にも大きな疑問を感じます。情報源の機嫌をそこねるようなニュースは出さない日本の既成メディアからは、本当の意味でのスクープは生まれません。今、世界では何が重大なニュースとなっているのか、報道されているニュースは正しいのか、そして報道されていないニュースは何かを知ることは、とても重要なことだと思います」

■オリンパス社の粉飾決算は氷山の一角に過ぎない!?

 本作のタイトルとなっている『サムライと愚か者』は、オリンパス社を解任されたウッドフォード氏の発言であり、山口記者の著書『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)からとったものだ。バブル時代に財政難に陥ったオリンパス社は長年にわたって粉飾決算を続け、ウッドフォード氏は本社の裏事情を知らないまま菊川会長によって新社長に抜擢された。菊川会長はCEOとして実権を握り続け、お飾りとしてウッドフォード氏は社長に祭り上げられた格好だった。疑惑を知り、説明を要求したウッドフォード氏は菊川会長と財務担当の森久志副社長(当時)とのランチミーティングの場を与えられるが、菊川会長と森副社長の前には豪華な寿司が用意され、ウッドフォード氏の前にはキオスクで売っているようなツナサンドが置かれたという屈辱を味わっている。日本社会ならではの“空気を読む”“忖度する”といった見えない壁に阻まれ、ウッドフォード氏は社内改革を実行できないまま、英国に帰国した。会社を守ろうとしたサムライは、一体どちらだったのか?

山本「今回のオリンパス事件で海外の人たちが驚いているのは、不正を働き、そのことをずっと隠してきたオリンパス社の役員たちが私腹は肥やしてなかったということなんです。ウッドフォード氏は会社の過ちを正そうとした自身やサポートしてくれた一部の社員たちをサムライ、今回の解任劇を黙って見ていた役員たちを愚か者だと称しているわけですが、役員側の立場に回れば、ウッドフォード氏のほうが空気を読まずに勝手に暴走した愚か者だということになるんです。もちろん不正を明らかにしようとしたウッドフォード氏の行動は企業ガバナンス的に正しいのですが、現体制を守ろうとした役員たちの心情は日本人として理解することはできる。ウッドフォード氏はサムライという言葉を使っていますが、侍/武士は言ってみれば封建時代の既得権者でもあるんです。侍が正しい存在という考えは、幻想にすぎません。また、菊川会長は私腹を肥やしてはいないものの、10年間にわたって大企業のトップにいた。権力の座に長くいると、判断力が鈍り、組織は腐敗していくものです。どちらがサムライで、どちらが愚か者なのかは、本作をご覧になった方に判断してもらえればと思います」

 創業から99年という長い歴史を持つオリンパス社で起きた大不祥事。オリンパス社だけの問題ではなく、不正の事実を見逃してきた監査法人、オリンパス社の怪しい財務状況に気づかずにいたメインバンクの在り方など、掘り下げれば下げるほど、日本特有の企業社会の暗部が広がっていく。

「戦後の復興期は、みんな一丸となって働くという日本的なやり方がよかったわけです。そのお陰で日本は復興し、高度経済成長を遂げることができた。でも、国際化の時代は日本だけで通じるやり方ではやっていくことはできません。組織のトップを守ろうという意識だけでは、企業は成り立たないんです。じゃあ、どうすれば組織を変えることができるのかと問われても、僕には具体策を提示することはできません。でも問題があることを認識し、その部分を改善し、組織を変えていく努力をしていかないことには船は沈んでしまいます。大相撲やレスリング界でもパワハラ問題が起きているように、旧来の組織論では通じない時代になっています。オリンパス事件はどの企業にもどの組織にも共通する、普遍的な問題ではないでしょうか」

 映画は最後にウッドフォード氏がオリンパス社から和解金を受け取ったことを伝えてエンディングを迎えるが、事件はまだ終結していない。ウッドフォード氏はかつて勤めたオリンパスの子会社である英国メーキッド社から半ば嫌がらせのように横領罪で訴えられ、ウッドフォード氏はオリンパス社の報復だと法廷で争っているところだ。日本での劇場公開は5月19日(土)から。オリンパス社は本作の公開について沈黙を守っている。
(取材・文=長野辰次)

『サムライと愚か者 オリンパス事件の全貌』
監督・編集/山本兵衛 エグゼクティブ・プロデューサー/奥山和由 
配給/太秦 5月19日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
(c)チームオクヤマ/太秦
※5月19日、イメージフォーラムにて先着100名に関西土産として話題の「黒忖度まんじゅう」を初日プレゼント。2017年の流行語にもなった“忖度”の味を映画を観ながら噛み締めたい。
https://samurai2018.com/

●山本兵衛(やまもと・ひょうえ)
1973年生まれ。米国マサチューセッツ州の高校を卒業、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。卒業作品『A Glance Apart』はニュヨークエキスポ短編映画祭にて、最優秀フィクション賞を受賞。短編4作目『わたしが沈黙するとき』は15以上の世界の映画祭で上映された。日本に帰国後、2011年に制作会社ヴェスヴィアスを設立。初めてのドキュメンタリー映画『サムライと愚か者』で長編デビューを果たした。現在は2作目となるドキュメンタリーを準備中。

 

「アンクル・トムの小屋」は差別を助長するの!? 米国の暗黒史『私はあなたのニグロではない』

 子どもの頃に世界名作全集「アンクル・トムの小屋」を読んだ人は多いだろう。黒人奴隷トムの苛酷な運命を描いたものだが、親切だったかつての白人オーナーの息子と死に際に再会するラストシーンは涙を誘った。米国南部における人身売買の実態が広く知られるようになり、南北戦争のきっかけになったとも言われている。ところが現代の米国では、アンクル・トムは不人気らしい。トムにとっての幸せは優しい白人オーナーのもとで暮らすこと、という設定が黒人にとっては面白くないのだ。ドキュメンタリー映画『私はあなたのニグロではない』(原題『I AM NOT YOUR NEGRO』)は、人種問題に繋がる有名作品の数々を取り上げた興味深い構成となっている。

 本作のナレーションを務めるのはサミュエル・L・ジャクソン。彼が出演したクェンティン・タランティーノ監督作『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)で描かれた黒人虐待シーンは強烈なインパクトがあった。『アベンジャーズ』シリーズをはじめ数多くの娯楽大作に出演しているサミュエルだが、もともとはスパイク・リー監督の『ドゥ・ザ・ライト・シング』(89)など人種差別を題材にした社会派作品で注目を集めた俳優だ。ハイチ出身のラウル・ペック監督は、“アメリカ黒人文学のレジェンド”ジェームズ・ボールドウィンが遺した未発表原稿をサミュエルに朗読させる形で、キング牧師やマルコムXらが最前線に立った1960年代の公民権運動の歴史を検証していく。

 ストウ夫人ことハリエット・ビーチャー・ストウが「アンクル・トムの小屋」を発表した1852年から9年後に南北戦争が始まり、1863年の奴隷解放宣言へと繋がった。米国史上最大の内戦となった南北戦争は奴隷解放を旗印にした北軍の勝利に終わったが、北軍が引き揚げた後の米国南部では黒人たちに対して大きな締め付けが待っていた。「ジム・クロウ法」という州法が米国南部では施行され、白人が利用するレストランやトイレなどに黒人は入ることは許されず、白人との結婚も禁止といった人種差別政策は、1960年代に公民権運動が盛り上がるまで実に100年近く続くことになった。人権保障を記した合衆国憲法も歴史的な奴隷解放宣言も、実際に効力を発揮するまでにあまりにも多くの血が流れている。

 米国の映画史も偏見と事実の歪曲から始まった。有名すぎるために本作からは省かれているが、“映画の父”と呼ばれるD・W・グリフィスの代表作『国民の創生』(1915)では、南北戦争後に無法地帯化した南部で暴れる黒人たちを制裁する正義の覆面戦隊としてKKK(クー・クラックス・クラン)が描かれている。米国映画の中で正義のヒーローは常に白人だった。ハリウッド黄金期、白人の映画スターたちはスクリーン上で華やかに歌い、踊った。たまに出てくる黒人は、もっぱら頭の弱い道化師役だった。幼い頃のボードウィンは父親に顔がよく似た黒人俳優が登場する映画を観るが、その俳優が演じたのは白人女性をレイプした上に殺害した疑いで逮捕される哀れな学校の用務員というキャラクターだった。

 1950年代になると、黒人の映画スターとしてシドニー・ポワチエが現われる。ポワチエとユダヤ系移民のトニー・カーティスがダブル主演した『手錠のままの脱獄』(58)は古典的バディームービーの名作として知られているが、黒人側にしてみれば、納得しかねるストーリーだった。クライマックス、列車に乗って逃亡しようとする脱走囚の2人。黒人のポワチエはうまく列車に飛び乗るが、怪我を負った白人のカーティスは乗りそびれてしまう。この場面でポワチエは単独での逃亡を諦め、カーティスと一緒に列車から降りてしまう。このエンディングに白人の観客は感動し、黒人の観客はブーイングした。名優として今なおリスペクトされているポワチエだが、白人にとって都合のいい優等生を演じたにすぎないとボールドウィンは手厳しい。アンクル・トムと同じだというわけだ。

 少年時代のボードウィンは多くの男の子がそうであるように、西部劇に夢中になった。西部劇はそれこそ暴力と偏見に溢れたジャンルだ。映画史に残るジョン・フォード監督の人気作『駅馬車』(39)だが、主人公であるジョン・ウェインは駅馬車を襲うネイティブ・アメリカンを次々と射殺する。子どもの頃のボードウィンはウェインら西部劇のヒーローたちに無邪気に声援を送っていたが、やがて物心がつく年齢になると、自分はウェインたち白人側の人間ではなく、白人が虐殺するネイティブ・アメリカン側の人間なのだと気づき、愕然とすることになる。

 襲い掛かる敵に向かって、銃を持って反撃することが許されているのは白人だけだと、ボールドウィンは指摘する。西部劇はすっかり人気がなくなったものの、ボードウィンが半世紀前に指摘したこの構図は現代も変わらない。コロンバイン高校で実際に起きた銃乱射事件を題材にした犯罪映画『エレファント』(03)の中で、イジメがはびこるスクールカーストに対して銃を手にして抵抗することが許されたのは白人の少年たちだった。ボードウィンは言う、「白人が『自由か死か』と叫べば英雄になれるが、黒人が同じことを叫べば断罪される」と。根深い偏見や差別意識は今も消えることがない。映画やテレビなど様々なメディアの中で、それは息づいている。

 白人夫婦の家で、家政婦として働く太った黒人女性のイラストも本作の中に挿入される。この太った家政婦のイラストは、1940年代から続く人気アニメ『トムとジェリー』に登場した黒人のお手伝いさんミセス・トゥ・シューズ(足だけおばさん)を彷彿させる。黒人女性=家政婦というステロタイプなイメージを長年にわたって拡散しつづけたテレビ番組も、ボードウィンらにとっては不快なものだったようだ。

 魔女狩りのように、問題表現のある作品をあげつらい、封印化を迫るのが本作の狙いではない。むしろ、ボードウィンは逆のことを言っている。「問題をすり替えている限り、この社会に希望はない」と。問題に向き合っても、社会は容易には変わらない。だが、問題に向き合わない限り、社会を変えることはできない。本作はボールドウィンのこんな言葉で締めくくられる。

「歴史は過去ではない、現代である。我々は歴史だ。そして、この事実を無視することは犯罪である」
(文=長野辰次)

『私はあなたのニグロではない』
監督/ラウル・ペック 原作・出演/ジェームズ・ボールドウィン
語り/サミュエル・L・ジャクソン 
配給/マジックアワー 5月12日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー
http://www.magichour.co.jp/iamnotyournegro

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現場レベルでは変化なし……KADOKAWAの組織再編は、引越準備なのか?

 4月に大規模な組織再編を行ったKADOKAWA。その再編の理由をめぐりさまざまな憶測が流れている。

 今回の組織再編のもっとも大きな動きは、アスキー・メディアワークス事業局の解体だ。これまであった文芸・ノンフィクション局が文芸局に名称変更。アスキー・メディアワークス事業局は文芸局に吸収されることになった。

「昨年、アスキー・メディアワークスの代表取締役を務めたこともある佐藤辰男氏が取締役相談役に就任。塚田正晃執行役員が、アスキー・メディアワークス事業局長から外れ、旧・角川書店の文芸出身だった郡司聡氏が、アスキー・メディアワークス事業局も担当するなどの動きもありましたが、文芸局と統合されたのは、どういう理由なのか。ちょっと理解に苦しんでいます」(出版業界関係者)

 ここでさらに注目されているのはアスキー・メディアワークスの看板ともいえる「電撃文庫」の配置だ。KADOKAWAのラノベレーベルは、エンタテインメントノベル局の傘下にあるのだが、電撃文庫だけは文芸局傘下になっているのだ。

「ご存じの通り、ラノベの読者層は既に年齢を重ねています。電撃文庫を文芸局傘下にする背景には、年齢層の広がりを受けて、より上の世代に対応できるラノベを作っていく意図があるのではないでしょうか」(同)

 KADOKAWAでは2015年に、2013年のグループ各社との合併によって生まれた社内カンパニー制を廃止し、コミックや雑誌などジャンルごとの「局」への再編を実施。この再編で「角川書店」や「富士見書房」などはブランドとしてのみ残ることとなった。1945年の創業以来続いた「角川書店」の名前は、ここに歴史の役割を終えていたが、アスキー・メディアワークスだけは会社の部門として残っていた。

「電撃文庫系の編集部は、文芸局・電撃メディアワークス編集部としては残りますが、組織名としてのアスキー・メディアワークスは消滅することになりました。さすがに伝統のある名前だけに組織名から外すのは社内でもさまざまな意見があったそうです」(同)

 伝統ある組織名を消滅させる方向へと舵を切ったのは大きな変化。ただ、実際にこの組織再編によって、なにか大きな変化があったのだろうか。上記、再編の該当となった某編集部の編集者に聞いてみると、

「いや……特に、現場レベルではなんにもなくて。いつも通り出勤して仕事している毎日なんですけど……」

 とはいえ、大規模な再編。とりわけ、電撃文庫も文芸局傘下となる変化は気になる様子。

「なんだかんだといっても、角川書店は文芸から始まった会社ですから、現代の文学ともいえるラノベを重視しているのではないでしょうか……ともあれ、現実的な線としては所沢移転に向けた部署の整理だとウワサされています」(同)

 ……え、もしや組織再編は引っ越しの準備?
(文=是枝了以)

映画じゃけぇ、何をしてもええんじゃ!! 男根から真珠を取り出すシーンが強烈すぎる『孤狼の血』

 森林浴ならぬ、人間浴はいかがだろうか。せっかく人影もまばらな森や山できれいな空気を吸っても、街に戻ればストレスの多い人間関係に悩まされてしまう。それならいっそアクの強い人間たちにもみくちゃにされ、免疫をしっかりつけておきたい。最新の“人間浴映画”としてお勧めしたいのが、役所広司&松坂桃李主演作『孤狼の血』。実録犯罪映画『凶悪』(13)や『日本で一番悪い奴ら』(16)で注目を集めた白石和彌監督が、東映ヤクザ映画へのオマージュをたっぷり注いだ激熱作品となっている。登場人物は男も女もみんなワケありで、人間くさいキャラクターばかり。劇場を出るときは、きっと誰もがタフガイを気取って、歩道の真ん中を闊歩したくなるはずだ。

 本作の時代設定は、まだ暴対法が施行されていなかった昭和63年(1988)。深作欣二監督が撮った実録ヤクザ映画の金字塔『仁義なき戦い』(73)と同じく広島が舞台。柚月裕子の原作小説では広島県呉原市という架空の街となっているが、映画のロケ地は『仁義なき戦い』にあやかって呉市で行なっている。菅原文太、松方弘樹、金子信雄、田中邦衛、梅宮辰夫らが人間くささを競い合った『仁義なき戦い』シリーズや『県警対組織暴力』(75)の世界を現代に蘇らせようという試みだ。

 昭和の男優たちがギラギラと輝いた『仁義なき戦い』『県警対組織暴力』の世界を愛して止まない白石和彌監督のこの試みに、『シャブ極道』(96)で薬物中毒に陥る破滅的な暴力団組長を熱演した役所広司が期待を裏切ることなく応えてみせる。呉原署に勤めるマル暴刑事の大上(役所広司)、通称ガミさんはヤクザよりもヤクザらしい。昔気質の地元暴力団「尾谷組」と新興暴力団「加古村組」が対立する中、ヤミ金融マンが失踪する事件が発生。大上は事件の真相を探るため、パチンコ店で見かけたヤクザを恫喝し、さらには捜査に非協力的な旅館に付け火をする。大上と行動を共にする新人刑事・日岡(松坂桃李)は、大上のあまりの傍若無人ぶりに驚きを隠せない。

「警察じゃけぇ、何をしてもええんじゃ!」と叫びながら、大上が連れ込み宿に監禁した「加古村組」の構成員・吉田(音尾琢真)を拷問するシーンはひと際強烈だ。好色な吉田の自慢は、男性器の中に埋め込んだ“ごっつい真珠”。大上は吉田をベッドに縛り付け、ごっつい真珠を刃物を使って取り出してみせる。もちろん、ノー麻酔で。ごっつい真珠で多くの女たちを泣かせてきた吉田は、自分もその真珠で泣くはめになる。大上はこの街では怖いもの知らずの存在だった。

 大上の凄さはそれだけではない。裏社会の情報を入手するため、「加古村組」と敵対する「尾谷組」の若頭・一之瀬(江口洋介)や右翼団体の代表・瀧井(ピエール瀧)とはズブズブの関係だった。ヤクザと懇意にしても異動や処分されればそれで終わりだが、大上は警察上層部のスキャンダルも収集し、闇ノートを作成している。この闇ノートがある限り、警察上層部は大上の無軌道ぶりを咎めることができない。ヤクザvs.大上、大上vs.警察上層部、古豪ヤクザvs.新興ヤクザ……と様々な局面が展開し、物語は熱気を帯びてスリリングに転がっていく。

 久々の狂乱演技を見せる役所広司の相棒役を務めるのは、白石和彌監督の『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)で超チャラい不倫男を巧みに演じてみせた松坂桃李。今年公開の映画『不能犯』ではニタニタと不気味に笑う連続殺人鬼、大ヒット中の『娼年』では年上の女性たちを虜にしてしまうコールボーイと、作品ごとにまったくの別人になりきってみせている。今回は広島大学を卒業し、公務員としての職業倫理を遵守するマジメな新人刑事役だ。大上のでたらめさに辟易する日岡だったが、大上が誰よりも捜査に情熱を燃やしていることは認めざるをえない。情熱はゾンビウィルスに比べると遅効性だが、やがて激しく強く感染する。ドブのようにすえた臭いのする裏社会を大上と一緒に駆けずり回るうちに、大上に反発しながらも日岡はガミさん二世と呼びたくなるようなワイルドな刑事へと変貌していく。

 物語の後半、ある事情から大上は街から姿を消すことになる。これからクライマックスに差し掛かるというときに、主人公がふいに消えたことで、逆に物語は大きく膨らんでいく。残された日岡たちは、それまで矢面に立っていた大上抜きで戦うしかない。そして、不思議なことにその場にいないはずの大上の存在感が、より大きなものに感じられる。主人公の不在が物語のカタルシスを呼び込むこの作劇は、本作のたまらない魅力となっている。現代社会から欠落してしまったもの。それは大上が全身からほとばしらせる過剰なまでの情熱であり、人間臭さであり、そして悪党たちを上回る悪知恵である。

 今村昌平監督のパルムドール受賞作『うなぎ』や黒沢清監督のブレイク作『CURE』(ともに97)、実際に起きたバスジャック事件と奇妙にシンクロした『EUREKA』(01)など数多くの名作に出演してきたベテラン俳優・役所広司から、多彩な役に挑んでいる真っ最中の松坂桃李への継承杯のような赴きを感じさせる本作。また、男たちの熱さに触発されたかのように、クラブのママ役の真木よう子、怪我を負った日岡の手当てをする薬局の店員役の阿部純子ら女優陣も女のフェロモンを存分にスクリーンに振りまく。テレビ放映されることを前提に製作されたテレビ局主導映画とは大きく異なる、去勢されることを拒み続ける者たちが集った砦のような劇場映画だ。

 平成の世が終わろうとする現代に、男たちが熱かった昭和の物語がリブートされた。孤高に生きる狼たちの熱い血を、ぜひ最後まで飲み干してほしい。
(文=長野辰次)

『孤狼の血』
原作/柚月裕子 脚本/池上純哉 監督/白石和彌
出演/役所広司、松坂桃李、真木よう子、音尾琢真、駿河太郎、中村倫也、阿部純子、滝藤賢一、矢島健一、田口トモロヲ、ピエール瀧、石橋蓮司、江口洋介
配給/東映 R15+ 5月12日(金)より全国ロードショー
(c)2018「孤狼の血」製作委員会
http://www.korou.jp

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「東宝の不手際どころじゃない!」と観客激怒! 今度は松坂桃李出演の東映映画でひと悶着

 4月23日に菅田将暉、土屋太鳳出演の映画『となりの怪物くん』のイベントに当選していたにもかかわらず、満員で会場には入れなかった人が続出。配給の東宝が公式ホームページでお詫びを発表するという、当選者からすればありえない事態が起こった映画業界。

 その直後の同25日、今度は東映配給で行われた、役所広司や松坂桃李が出演する映画『孤狼の血』(5月12日公開)の完成披露試写会で、観客たちと劇場スタッフとの間でひと悶着起こっていたという。

「事の発端はスタッフ側のミスで、舞台挨拶で一般招待客向けに発券していた席を、マスコミの取材用に充ててしまい、トラブルになっていました。このため、舞台挨拶中、席がなく座れなくなってしまった約30~40人ほどの観客が、劇場内通路側でスタッフから説明を受けることになったんです」(ワイドショー関係者)

 そのスタッフからの説明というのが、観客たちの気持ちを逆なでするものだったという。

「スタッフは当初、舞台挨拶中は観客を劇場の外で待たせ、映画本編だけをみせようとしていたようです。しかし観客は、豪華キャストの挨拶を少しでも近い場所で見たい人が大半で、この日も松坂桃李目当てのファンが多かった。スタッフ側はそんなファン心理をまったく理解していなかったようで、マスコミの取材を優先しようとしたため怒り出す人もいましたね。そこで、劇場側は観客が端の方の通路で舞台挨拶を見てもらうことで我慢してほしいと説得したのですが、これは観客の怒りへ火に油を注ぐようなもの。ついには怒号が飛んでました。その声の中には『東宝の不手際どころじゃない!』と、憤っている人もいました」(同)

 結局、最前列に座っているマスコミ向けに、先にフォトセッションを行い、撮影終了と同時に報道陣と観客を入れ替えるという対応がとられたというが……。

「ギリギリで事なきを得た感じでしたが、舞台挨拶のキャスト陣も気まずそうな様子でしたよ」(同)

 なんとも後味が悪いイベントになってしまったよう。東映にとって、東宝のトラブルは対岸の火事とはいかなかったようだ。

銀盤の真ん中で「愛がほしい」と叫んだ淫蕩女!! 人気アスリートのドキュン人生『アイ,トーニャ』

 冬期五輪における花形競技となっているフィギュアスケートだが、芸術点をめぐってたびたび問題が起きる。スピードや点数を競う他の競技と違い、競技が始まる前から、選手の容姿や品格といった数値化できないものが基礎票として付いて回る。かつては多くの非欧米系選手が、この芸術点に泣かされてきた。米国人ながら“ホワイト・トラッシュ”と呼ばれる貧困層出身のトーニャ・ハーディングも、泣かされてきた側のひとりだった。マーゴット・ロビーがプロデューサーと主演を兼ねた『アイ,トーニャ』は、1994年のリメハンメル五輪直前に起きた「ナンシー・ケリガン襲撃事件」でスポーツスキャンダル史に名前を残すことになるトーニャ・ハーディングの生い立ちから、現在に至るまでの半生を追い掛けた実録ドラマとなっている。

 米国代表として92年のアルベールヒル五輪、続くリメハンメル五輪と2大会連続出場を果たした女子フィギュア選手トーニャ・ハーディング(マーゴット・ロビー)。彼女の選手生活を振り返る上で外すことができないのが、トーニャの母親ラヴォナ(アリソン・ジャネイ)だ。ラヴォナは7度にわたって結婚と離婚を繰り返し、トーニャは幼くして実父と別れ、家庭の愛情に飢えた少女時代を過ごした。そんなトーニャが強い興味を示したのがフィギュアスケートだった。ひんやりとしたリンクの上で軽やかに滑り、くるくると回れば、みんなが注目し、お姫さま気分を味わうことができる。ラヴォナはトーニャにフィギュアを学ばせるが、それは娘への愛情からではなかった。トーニャが金の卵を産むガチョウになるに違いないと踏んだからだった。

 ウエイトレスとして稼いだお金でトーニャをフィギュアの道へと進ませたラヴォナは、コーチよりも怖い存在だった。トーニャが練習中にトイレに行きたいと訴えても、それを許さなかった。トーニャが競技会に出場するようになると、いくら娘ががんばっても、周囲の目を気にすることなく罵倒した。「あの子は叩かないと実力を発揮しない」というラヴォナの偏狭な教育法だった。母親から逃れるように、トーニャはチンピラ風の男ジェフ(セバスチャン・スタン)と交際・結婚するが、トーニャも母親似で男を見る目がなかった。ジェフが優しかったのは最初の数カ月だけで、気に喰わないことがあるとすぐにトーニャを殴った。でも、小さい頃から母親に虐待されてきたトーニャは暴力には慣れっこだった。凶器を手にして反撃するなど、似た者夫婦として付かず離れずの生活を送ることになる。

 トリプルアクセルに成功した史上2人目の女子選手となるトーニャ(1人目は伊藤みどり)だが、選考会ではいつも点数が伸び悩んだ。納得がいかないトーニャは、審査員のひとりを追い掛けてその理由を問いただす。「残念ながら、君は僕たちがイメージする選手像ではないんだ。国家代表になるには、家庭も完璧でないとね」という審査員の言葉は、温かい家庭を知らずに育ったトーニャを冷たく突き放すものだった。高価な競技衣装を買えないトーニャは手縫いの衣装で出場していたが、センスが悪いと酷評されていた。遠征費用やコーチ代もバカにならない。その上、完璧な家庭を持っていないとダメだという。それでもトーニャは諦めない。別居中だったジェフと復縁するなど、彼女なりのベストを尽くす。すべては五輪に出場するため。フィギュアの世界で頂点を極めることが自分の人生を輝かせてくれると、トーニャは信じて疑わなかった。

 物語後半からはいよいよ「ナンシー・ケリガン襲撃事件」の真相が語られるが、ここから先はまるでコーエン兄弟の犯罪ミステリー『ファーゴ』(96)のよう。初めての五輪出場となったアルベールヒルで思うような結果が残せなかったトーニャは、2年後に開催されることになったリメハンメル五輪に賭け、トレーニングを再開する。そんなとき、トーニャのもとに殺害を予告する脅迫状が届く。ナーヴァスになったトーニャは予選会を欠場してしまう。なぜ自分ばかり、つらい目に遭うのか。一度離婚したもののトーニャとよりを戻していた元夫ジェフは、米国代表の座を競うライバルのナンシー・ケリガンも同じ目に遭わなければ不公平だと考える。ところがまぁ、ダメ人間のもとにはダメ人間が集まるもの。自称諜報員というジェフの友人ショーン(ポール・ウォルター・ハウザー)がケリガン宛に脅迫状を送ることを請け負うが、伝言ゲームのように内容がすり替わり、なぜかケリガンを襲撃するという計画に変わってしまう。ショーンが雇った男に足を殴打されたケリガンは五輪選考会を欠場するはめに陥り、トーニャは念願の米国代表の座を手に入れる。だが、当然ながらFBIも含め誰もが、ケリガン襲撃事件の黒幕はトーニャに違いないと疑いの目で彼女を見ていた。

 審査員だけでなく、五輪会場中の観客が、いや世界中の人々が疑惑の目を向ける中で、トーニャにとって最後の五輪競技が始まる。『スーサイド・スクワッド』(16)で愛する男ジョーカーのために命を投げ出す激情女ハーレイ・クイン役でブレイクしたマーゴット・ロビーが、世界中を敵に回しながら孤独に闘うビッチな女になりきってみせる。リンクに降りる前、ドレッシングルームで入念にメイクをするトーニャ。処刑台に上がる直前の死刑囚のようだ。死刑囚にとって、最期の見せ場が死刑執行の瞬間である。トーニャは最後の最後まで、トーニャらしさをリンク上で貫き通す。

 帰国したトーニャには、2度目の死刑執行が待っていた。フィギュアスケート界からの永久追放が言い渡されたのだ。フィギュアだけを生き甲斐にしてきたトーニャにとっては最悪の宣告だった。生き甲斐を奪われたトーニャだったが、それでも彼女は生きている。食べていくためにプロ格闘技の世界へと身を投じる。自分よりも遥かに体のデカい相手にボコボコにされても、トーニャはひるまない。リングで何度ダウンを喰らっても、その度に立ち上がって闘志を見せる。全日本女子プロレスの松永会長がトーニャに出場要請したこともあるが、1試合2億円のギャラでも成立しなかった。このときはトーニャがまだ司法による保護観察処分中で日本に渡航できなかったためだが、ビッチな上にゼニゲバなイメージがトーニャには付いて回った。優雅さを競うフィギュアの世界から最も遠い女がトーニャだった。

 五輪でメダルを獲得し、世界中の人々から賞讃されることを夢見たトーニャ・ハーディングだが、その夢は叶うことはなかった。でも、彼女は世界中の人々に後世まで語り継がれるに違いない。リンクの上で“愛”を叫んだ女として。
(文=長野辰次)

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
監督/クレイグ・グレンスピー 製作・脚本/スティーヴン・ロジャース
出演/マーゴット・ロビー、セバスチャン・スタン、アリソン・ジャネイ、ジュリアンヌ・ニコルソン、ポール・ウォルター・ハウザー、マッケナ・グレイス、ケイトリン・カーヴァー、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、アンソニー・レイノルズ
配給/ショウゲート PG12 5月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
C) 2017 AI Film Entertainment LLC. All Rights Reserved.
http://tonya-movie.jp

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木梨憲武&佐藤健『いぬやしき』初登場5位の大コケ! 「ストーリー説明不足」と不満の声

 4月20日に公開が始まった映画『いぬやしき』が、4月21日~22日の国内映画ランキング(全国週末興行成績・興行通信社提供)で初登場5位に登場。木梨憲武&佐藤健ら豪華キャスト共演作品の“不発”に驚きの声が広がっている。

 同作は全国313スクリーンで公開され、土日の動員9万1,000人・興収1億2,400万円という成績に。今回のランキング上位は、1位『名探偵コナン ゼロの執行人』、2位『レディ・プレイヤー1』、3位『映画クレヨンしんちゃん 爆盛! カンフーボーイズ 拉麺大乱』だった。

「同日公開の『レディ・プレイヤー1』は、作中で多くのキャラに混じって“ガンダム”も活躍するスティーヴン・スピルバーグ監督作品。1位の『名探偵コナン』は公開週の土日だけで興収12億9,600万円を記録し、『クレヨンしんちゃん』もコナンと並ぶヒットコンテンツです。『いぬやしき』は公開のタイミングを誤まったとしか思えず、『コナンにクレしん、スピルバーグまでいたら勝てないよ』『4月公開の映画がすごすぎて、そりゃ埋もれちゃうわ』『コナンが化け物級の稼ぎを出してるし、公開日の設定が悪いよ……』と同情の声が集まりました」(芸能ライター)

『いぬやしき』は、奥浩哉の同名マンガを原作に佐藤信介監督が実写化。今回の成績は佐藤監督の前作『デスノート Light up the NEW world』(2016年)の興収比27.0%、『アイアムアヒーロー』(同)の興収比54.9%という苦しいスタートになっている。

「作品への批判としてネット上で見られたのは、『原作マンガの良さを表現するには尺が足りてない』『ラストバトルに至るまでがつまらない』『マンガにあった物語の奥深さが足りなくて、感情移入しきれなかった』『圧倒的な、ストーリーの説明不足感』という声。マンガを実写化した際に原作ファンから否定的な目で見られてしまうことはこれまでにも多くあり、『いぬやしき』でも原作の良さを出しきれていないと批判されています」(同)

 原作ファンから不評を買ってしまった同作だが、映像面では高い評価を受けている。

「同作では犬屋敷(木梨)と高校生・獅子神(佐藤)が、機械化した体を武器にバトルを展開。ラストバトルは新宿を舞台にして、ビル群を縫うように高速で飛翔する2人やミサイルで街が崩壊していく様子がリアルに描かれました。ネット上には『「新宿決戦、どうやって撮ったの?」っていうくらいのド迫力!』『ノリさんと健くんの演技も良くて対決シーンはハラハラした!!』『邦画の映像技術もここまできてたんだな。ハリウッド大作に全然負けてない』といった感想が相次いでいます」(同)

 映画興行では、口コミによって成績が伸びるケースもあるが、『いぬやしき』はこのまま沈んでいってしまうのか。ランキングの推移に注目したい。