日本映画界から実写ヒット作が消えてしまった!? 『シン・ゴジラ』以降の主流なき邦画界を考える

 興収83億円を記録した『シン・ゴジラ』(16)を最後に、日本の実写映画から50億円を超えるメガヒット作が生まれていない。『シン・ゴジラ』や250億円の興収を上げた劇場アニメ『君の名は。』(16)が牽引する形で、2016年の日本映画界は今世紀最大となる2,355億円の興収を記録。続く17年もディズニー映画『美女と野獣』など洋画の大ヒットに恵まれ、前年に次ぐ2,285億円という高い数字を残した。アイドル俳優たちをキャスティングした学園青春もの、いわゆるキラキラ映画は費用対効果のよさから次々と製作されているが、以前は20億円が業界でのヒットの目安だったのが10億円にハードルが下がるなど、ヒットの規模は小さくなりつつある。また、東日本大震災直後の社会状況を反映させた『シン・ゴジラ』『君の名は。』のように、世代を越えた話題を集めるには至っていない。全体の興収結果を見る限りでは好調さをキープしているように見える映画界だが、本当にそうだろうか。2018年上半期も終わろうとしているが、今の邦画シーンはどういう状況なのか、映画ビジネスに詳しい映画ジャーナリストの大高宏雄氏に聞いてみた。

大高「2018年に入り、特に邦画実写作品が低迷しています。1月から5月、20億円を超えた作品が1本もありませんでした。“邦画の大ヒット作がないのでは?“という問いに答えるのなら、大ヒット作は生まれています。東宝が3月に公開した『ドラえもん のび太の宝島』は53億円、4月に公開した『名探偵コナン ゼロの執行人』は80億円に迫り、どちらもシリーズ歴代No.1の大ヒットになっています。特に入場者への特典を付けることもない『名探偵コナン』の6年連続での記録更新は目を見張るものがあります。第1作『──時計仕掛けの摩天楼』(97)は興収11億円ですから、すごい伸び率です。今や国民的アニメの位置を盤石なものにしていると言えるでしょう。アニメに偏り始めましたが、日本映画界にはヒット作は生まれています。以前とはヒットの構造が変わったということなんです」

 劇場版『名探偵コナン』は、原作コミック&TVアニメの知名度に加え、ハリウッド映画ばりの大掛かりなアクションシーンやサスペンス要素がふんだんに盛り込まれ、幅広い層を取り込んだGWに欠かせない定番シリーズとなっている。『ドラえもん のび太の宝島』は東宝のヒットメーカー・川村元気プロデューサーが脚本を担当している。人気アニメシリーズがマンネリ化に陥らない工夫をしている一方、実写映画に元気がないのが気になるところだ。大高氏は『シン・ゴジラ』以降、日本の実写映画が活性化できずにいる原因のひとつとして、17年に公開された『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(東宝、ワーナー共同配給)、『無限の住人』『鋼の錬金術師』(ワーナー配給)の不振を挙げている。3作品とも知名度の高い人気コミックを原作にした話題性抜群のアクション大作だったが、『鋼の錬金術師』は興収10億円、『無限の住人』『ジョジョの奇妙な冒険』は10億円に届いていない。3作品とも配給側が狙ったような興収結果を残すことはできなかった。

大高「日本ならではのエンタメ大作になるのではと、この3本には期待していたんです。人気コミックをベースにして、どんな新しい世界を見せてくれるんだろうと、公開が始まるまでワクワクでした。個人的には、『無限の住人』は三池崇史監督らしさが出ていて面白かったと思います。ただ、一般的にはどうだったでしょうか。この3本が興行的に失敗した原因は、いろいろ考えられます。キャスティングの問題、深みのない世界観……。でも、興行的に成功しなかった作品のことは、誰も分析しようとはしません。今や、まるで最初から存在しなかった作品のようになっていないか。次から次に新作が登場してくるので、当たらなかった作品のことを配給側も批評する側もかまっている余裕がありません。しかしですよ、ハリウッドがマーベルコミックをアメコミ映画として実写化して成果を上げているように、これらの作品もうまくやっていれば“ジャパコミ映画”として、日本映画に新しい路線を切り開くことができたんじゃないかと思うんです。そこを綿密に分析する必要があるのではないか。人気コミックを巧みに実写コメディ化した福田雄一監督の『銀魂』(ワーナー配給)は興収39億円を記録し、17年の実写邦画No.1ヒット作になっています。この成功は大きなヒントです。映画界の企画の貧困さは以前から言われていることで、そのことを今さら指摘してもどうにもなりません。求められるのは具体性です。人気テレビドラマの劇場版は、1980~90年代にドン底状態にあった日本映画界を活性化させる役割を果たしましたが、それに代わる新しいエンタメ大作にどう取り組んでいくかが課題ではないでしょうか」

■時間を費やした下地づくりの重要性

 今年のGW興行は、東映配給、役所広司や松坂桃李ら新旧実力派俳優たちが熱演した『孤狼の血』(現在公開中)が注目を集めたが、週間興収ランキング初登場3位といまいちな数字だった。作品に込められた熱気が、残念ながら世間一般にまで浸透できずにいる。興収は10億円に届くかどうか微妙なところだ。

大高「東映の実録ヤクザ映画『仁義なき戦い』(73)と比較されがちな白石和彌監督の『孤狼の血』ですが、『仁義なき戦い』は東映の任侠路線という下地があったからこそ熱狂的に受け入れられた作品です。『孤狼の血』は作品としての評価は高いものの、今の大多数の観客がヤクザ映画を見てみよう、楽しもうという下地がない状況での公開でした。役所広司が汚れ役もやれることは分かっているわけで、映画『娼年』(R18+)が単館系で3億円を超える大ヒットとなっている松坂桃李を思い切って主演にしてもよかったと思います。旧体依然とした大きな組織に、上司の命令に素直に従うだけだった新人刑事役の松坂桃李が闘いを挑むという構図は、マスコミで騒がれている日大アメフト部問題と似ている気がします。ヤクザ映画へのオマージュといった視点を越え、今の日本社会に果敢に斬り込くんでいく方向性がほしかった。東映は『孤狼の血』のシリーズ化を考えているようですが、宣伝も含め戦略を練り直す必要があるでしょう」

 日本映画界に明るいニュースをもたらしたのは、カンヌ映画祭パルムドールを受賞したギャガ配給、是枝裕和監督の『万引き家族』(6月8日公開)だ。是枝監督作はカンヌ映画祭審査員賞を受賞した福山雅治主演作『そして父になる』(13)が興収32億円のヒット作となっており、『万引き家族』も期待されている。

大高「福山雅治が主演した『そして父になる』に比べるとキャストバリューは低いかもしれませんが、カンヌで受賞した直後での公開なので、かなりのヒットになるのではないかと思います。ただし、是枝監督はいきなりカンヌ映画祭で受賞したのではなく、今年で5回目の参加です。海外の映画祭に挑戦し続けてきたという長年の下地があったからこそ、今回の最高賞受賞に繋がったわけです。何事も下地は大切です。是枝監督が海外の映画祭で評価されたことで、これに続こうとする若い世代が必ず現われるはず。日本映画界、というより日本映画の今後において、これは大きな意味を持つと考えられます」

 1991年から続く「日本映画プロフェッショナル大賞」の主宰者でもある大高氏。今年の「第27回日プロ大賞」作品賞を受賞した『勝手にふるえてろ』の大九明子監督、浅野忠信が同賞の主演男優賞に選ばれた『幼な子われらに生まれ』の三島有紀子監督、同じく新人監督賞に選ばれた『愚行録』の石川慶監督らにも期待を寄せている。

大高「90年代の日プロ大賞はオリジナルビデオの世界や単館系興行の分野で活躍していた三池監督や黒沢清監督を高く評価してきました。2人は強烈な作家性の持ち主ですが、今回受賞した大九監督らは今の時代に大切な問題意識を存分に汲み取りながら、その上で演出上の持ち味を発揮できる職人的タイプではないかと思います。三島監督は『ビブリア古書堂の事件手帖』の公開が11月に控え、大九監督は『美人が婚活してみたら』が19年に公開予定となっています。石川監督はデビュー作『愚行録』を製作・配給したオフィス北野がこれからどうなるのか状況がまだ読めませんが、新人ながらあれだけの傑作を放った才人。将来が楽しみな監督です」

 夏には、東宝の川村元気プロデューサーが参加している細田守監督の劇場アニメ『未来のミライ』(7月20日公開)や大根仁監督の『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(8月31日公開)、福田監督が再び小栗旬とタッグを組んだ『銀魂2』(8月17日公開)、ピンク映画やオリジナルビデオで充分なキャリアを重ねてきた城定秀夫監督の『ご主人様と呼ばせてください 私の奴隷になりなさい・第2章』などの公開が待っている。2018年下半期には、サプライズヒットが生まれるだろうか。
(取材・文=長野辰次)

●大高宏雄(おおたか・ひろお)
1954年浜松市生まれ。文化通信社特別編集委員、映画ジャーナリスト。92年から「日本映画プロフェッショナル大賞」を主宰している。「キネマ旬報」にて「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞の毎週金曜の夕刊にて「チャートの裏側」などを連載。主な著書に『映画賞を一人で作った男 日プロ大賞の18年』(愛育社)、『昭和の女優 官能・エロ映画の時代』(鹿砦社)などがある。

松坂桃李『娼年』リピート続出でロングランへ「エロすぎるが、エロいだけじゃない」

 俳優の松坂桃李が主演を務める映画『娼年』が大きな話題を呼んでいる。作品は石田衣良の同名小説が原作で、松坂演じる無気力な生活を送る大学生のリョウが、女性専用コールクラブのオーナーと出逢い、男娼の仕事を開始。さまざまな女性たちと関係を持ち、女の欲望の奥深さを知って成長を遂げていくというストーリーだ。本編の半分以上が濡れ場というR18+指定作品で過激なシーンも満載。SNSを通じて口コミで評判も広がり、4月6日の公開以降、興行収入3億円を超えた。

 そんな映画の人気のワケについて、映像制作関係者は「エロすぎる作品ですが、エロいだけじゃないところが人気の秘密ですね。女優陣が惜しげもなく裸体をさらしていますが、それ以上にイケメン俳優・松坂さんの脱ぎっぷりがすさまじく、映画を見た女性客はメロメロになっちゃいますよ。数多くのセックス描写を体当たり演技でぶつかり、難しい役どころを爽やかにこなした松坂さんの評価も急上昇していますよ」と解説する。

 映画を観賞した女性客の中には2度、3度とリピートして足を運ぶ人も多いという。

「この映画はセックスについて考えさせられる部分も多く、女性が共感できる内容になっている。欲望をむき出しにする女性をイケメンが喜ばせるという視点は、女性向けAVにも通じるところがあります。女性の場合、セックスをなかなか客観視する機会が少ないですが、こういう作品があると自分のセックスを見つめ直すことができるんです。映画をきっかけに、女性がセックスについて知るシーンが増えてくれるといいですし、女性向けAVにも目を向けられるきっかけになるかもしれません。女性が『こんなセックスしたかった』と素直に思えるような社会になればいいですね。そんな社会貢献の要素も含んだ映画ですよ」(同)

 5月30日には東京・池袋HUMAXシネマズでこの映画の応援上映会が開かれ、そのチケットは瞬く間に売り切れたという。女性の性解放に一石を投じ、社会的評価を得る作品になるかもしれない。

血縁とも地縁とも異なる、新しい家族の在り方!? 日本の最下流社会のシビアな現実『万引き家族』

 巣鴨で起きた子ども置き去り事件を題材にした『誰も知らない』(04)、沖縄であった新生児取り替え事件にインスパイアされた『そして父になる』(13)など、是枝裕和監督は日本社会の暗部にスポットライトを当てることで映画を生み出してきた。カンヌ映画祭パルムドール(最高賞)を受賞した『万引き家族』も、実在の事件が元ネタとなっている。2010年以降、次々と発覚した年金不正受給事件から着想を得たものだ。親の死を隠して年金を受け取り続けた詐欺一家に、是枝監督は“正義の鉄槌”を下すマスコミや世論とは異なる角度から近づいていく。

 家族の崩壊が叫ばれて久しい。社会のいちばん小さな単位である家族が壊れていったことで、日本社会全体がすっかり歪んだものになってしまった。実在の事件を通して、家族の在り方を見つめてきた是枝監督は、「家族を結びつけるものは血か、それとも一緒に過ごした時間か」という問題をこれまでの作品の中で問い掛けてきた。今回の『万引き家族』は、そこからさらに大胆に踏み込んでいく。血縁や地縁といった、これまで語られてきた家族の絆に代わる、お金で結びついた打算的な関係として“万引き家族”を登場させている。

“万引き家族”のシンボル的な存在は、是枝作品の常連である樹木希林だ。樹木演じる老婆・初枝の銀行口座に毎月振り込まれる年金を頼りに、治(リリー・フランキー)、その妻・信代(安藤サクラ)、息子の祥太(城桧吏)、信代の妹・亜紀(松岡茉優)たちはゴミ屋敷のような一軒屋で暮らしている。治は日雇い労働、信代はクリーニング店で働いているが、毎日は仕事がなく、収入は限られている。足りない分は、治と祥太がスーパーマーケットから日用品を万引きすることでやり繰りしていた。明るい将来設計も、病気になったときの医療保険もない、ないない尽くしのビンボー一家だったが、みんなで笑って食事を囲む温かさだけは満ちていた。

 世間の目を忍んで、ひっそりと暮らす万引き家族に新しい仲間が増える。隣町でひと仕事を終えた治と祥太はその帰り道、団地で部屋から締め出されて凍えていた小さな女の子・ゆり(佐々木みゆ)に気づき、連れ帰ってきたのだ。初枝がゆりのシャツをめくると、体中が火傷の痕とアザだらけだった。親から虐待されているゆりを帰すことができず、治と信代の新しい子どもとして迎え入れることになった。万引き家族の一員になるため、ゆりは懸命に万引きの連係プレイに加わるようになる。

 学校に通うことのない祥太とゆりだったが、『誰も知らない』の柳楽優弥たち兄妹と同じように伸び伸びと育っていく。家族想いの優しい子どもたちに、家長である治は自分の知っている万引きのノウハウをいろいろと伝授していく。学歴も資格も何も持っていない治には、万引きのテクニック以外に教えてあげるものが何もないからだ。世間の常識から大きく逸脱した父子の絆が培われていく。歪んだ社会では、歪んだ親子の絆がとても真っすぐなものに映る。

 日本の低所得者層の生活をリアルに描いた『万引き家族』は、ペ・ドゥナ主演作『空気人形』(09)以来となる官能シーンに是枝監督が挑んでいることでも注目される。いつも家族と一緒なため、セックスレス状態だった治と信代だったが、夏の昼下がりに夫婦はそうめんを食べながら、珍しく2人っきりなことに気づく。汗ばんだ下着姿の安藤サクラのむっちりとしたボディが濃厚なフェロモンを発している。パンツ一丁のリリー・フランキーは、この強力なフェロモンに抗うことができない。2人が体を重ね合った後の、食卓に垂れ下がった白いそうめんが実にエロティックである。

 松岡茉優も体を張っている。松岡演じる亜紀の仕事先はJK見学店だ。亜紀はここでセーラー服に着替え、若さと性を売り物にしている。街のどこにも行き場所のない人たちが、マジックミラー越しの亜紀を求めて訪ねてくる。そんな行き場所のない人にとって、亜紀は10分刻みの天使となるのだった。お金を介することで、亜紀は孤独な心と繋がっていく。安藤サクラは人妻の妖艶さ、松岡茉優は新鮮な色香をほとばしらせるが、エロスはタナトスと背中合わせの関係でもある。一家にとって精神的&経済的な支柱だった初枝が眠るようにこの世を去り、家庭内のバランスが危うくなる。それと同時に、この一家の隠されていた秘密が次々と明るみになっていく。

 日本映画として、今村昌平監督の『うなぎ』(97)以来となるカンヌ映画祭最高賞を受賞したおめでたい『万引き家族』だが、そこで描かれているのは『誰も知らない』の頃よりもさらに厳しさを増した日本社会の現実である。それでも、この家族はとても幸せだ。誰かと手をつないだとき、抱きしめられたときの肌の温かさを子どもたちは知っているからだ。夏の終わりに、さほど美しくもない海へと家族そろって出掛けたことを、祥太とゆりは大人になっても忘れないだろう。世間的には犯罪者集団であっても、子どもたちにとっては得難い家族だった。世間の常識からこぼれ落ちたこの一家が、輝いて見える。世間の常識や良識を振りかざしても、解決できない問題がある。
(文=長野辰次)

『万引き家族』
監督・脚本・編集/是枝裕和 撮影/近藤龍人 音楽/細野晴臣
出演/リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、緒形直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美、柄本明、高良健吾、池脇千鶴、樹木希林
配給/ギャガ 6月2日(土)、3日(日)先行上映、8日(金)より全国公開
(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku

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「大泉洋は違った」『恋は雨上がりのように』初登場4位、「食傷気味」「気持ち悪い」の声

 5月25日から公開が始まった、小松菜奈・大泉洋共演の映画『恋は雨上がりのように』。全国301スクリーンでの上映となったが、国内映画ランキング(興行通信社提供)では初登場4位と苦しいスタートを切ることに。ネット上からは「期待外れの出足と言われてもしかたないよね」「結構テレビとかで番宣してたけど、4位止まりって……」といった声が上がっている。

 5月26~27日の全国週末興行成績では、『名探偵コナン ゼロの執行人』が週末2日間で1億8,000万円を稼いでV7を達成。対する『恋は雨上がりのように』は、動員8万6,000人・興収1億2,000万円という結果だった。

「『名探偵コナン』がシリーズ歴代最高の興収を挙げるなど依然強さを発揮していますが、それでも300スクリーン規模で4位は寂しい成績。5月18日公開で3位に踏みとどまった『ピーターラビット』にも敗れてしまいました。この成績に落胆した映画ファンも多く、ネット上には『ほぼ貸し切り状態で、びっくりしたところだった』『なぜこの手の作品を300スクリーン規模で公開しようと思ったのかな』『同じ恋愛映画の「ママレード・ボーイ」が公開されて間もないから、みんな完全に食傷気味でしょ』といった反応が並んでいます」(芸能ライター)

 原作はアニメ化もされた眉月じゅんの同名漫画で、挫折を味わった女子高生が、バイト先の年上の男性店長に思いを寄せる姿を繊細に描いた恋愛物語。1月には「第63回小学館漫画賞」の一般向け部門を受賞するなど、高い評価を獲得している。

「主人公の女子高生・あきらを小松、ファミレス店長の近藤を大泉が演じました。映画『帝一の國』をヒットに導いた永井聡が監督を務めたこともあり、原作ファンは実写映画化に期待を寄せていた様子。『すごく詩的で感動した』『ラストの余韻がいい』と好評の声もありましたが、一方で『原作が好きすぎるせいか、店長は大泉洋じゃない感が強かった』『小松菜奈は良かったけど、ほかのキャスト陣が微妙』『原作の良さを描き上げるには、完全に尺が足りてない』などの批判もみられました」(同)

 “漫画からの実写映画化”に対するハードルの高さは毎回話題になるが、ストーリーそのものに対する不快感を示した人も。

「同作は、17歳のあきらが45歳でバツイチ子持ちの近藤に優しくされたことをきっかけに恋に落ちる物語。しかし“冴えない中年男性”に女子高生が恋をするという設定に抵抗を感じる人が少なくなく、ネット上には『フィクションだとはわかっていても、設定にちょっと引いてしまう』『中年男性のための映画みたいで気持ち悪い』『現実で女子高生が冴えないオジサンに恋愛感情抱くなんて、99%ないよ』といった意見も噴出しています」(同)

 批判の声も上がっているが、「実写化としては成功の部類」と肯定派がいることも事実。息の長い興行で大逆転を見せるのか、ランキングの推移に注目しよう。

「大泉洋は違った」『恋は雨上がりのように』初登場4位、「食傷気味」「気持ち悪い」の声

 5月25日から公開が始まった、小松菜奈・大泉洋共演の映画『恋は雨上がりのように』。全国301スクリーンでの上映となったが、国内映画ランキング(興行通信社提供)では初登場4位と苦しいスタートを切ることに。ネット上からは「期待外れの出足と言われてもしかたないよね」「結構テレビとかで番宣してたけど、4位止まりって……」といった声が上がっている。

 5月26~27日の全国週末興行成績では、『名探偵コナン ゼロの執行人』が週末2日間で1億8,000万円を稼いでV7を達成。対する『恋は雨上がりのように』は、動員8万6,000人・興収1億2,000万円という結果だった。

「『名探偵コナン』がシリーズ歴代最高の興収を挙げるなど依然強さを発揮していますが、それでも300スクリーン規模で4位は寂しい成績。5月18日公開で3位に踏みとどまった『ピーターラビット』にも敗れてしまいました。この成績に落胆した映画ファンも多く、ネット上には『ほぼ貸し切り状態で、びっくりしたところだった』『なぜこの手の作品を300スクリーン規模で公開しようと思ったのかな』『同じ恋愛映画の「ママレード・ボーイ」が公開されて間もないから、みんな完全に食傷気味でしょ』といった反応が並んでいます」(芸能ライター)

 原作はアニメ化もされた眉月じゅんの同名漫画で、挫折を味わった女子高生が、バイト先の年上の男性店長に思いを寄せる姿を繊細に描いた恋愛物語。1月には「第63回小学館漫画賞」の一般向け部門を受賞するなど、高い評価を獲得している。

「主人公の女子高生・あきらを小松、ファミレス店長の近藤を大泉が演じました。映画『帝一の國』をヒットに導いた永井聡が監督を務めたこともあり、原作ファンは実写映画化に期待を寄せていた様子。『すごく詩的で感動した』『ラストの余韻がいい』と好評の声もありましたが、一方で『原作が好きすぎるせいか、店長は大泉洋じゃない感が強かった』『小松菜奈は良かったけど、ほかのキャスト陣が微妙』『原作の良さを描き上げるには、完全に尺が足りてない』などの批判もみられました」(同)

 “漫画からの実写映画化”に対するハードルの高さは毎回話題になるが、ストーリーそのものに対する不快感を示した人も。

「同作は、17歳のあきらが45歳でバツイチ子持ちの近藤に優しくされたことをきっかけに恋に落ちる物語。しかし“冴えない中年男性”に女子高生が恋をするという設定に抵抗を感じる人が少なくなく、ネット上には『フィクションだとはわかっていても、設定にちょっと引いてしまう』『中年男性のための映画みたいで気持ち悪い』『現実で女子高生が冴えないオジサンに恋愛感情抱くなんて、99%ないよ』といった意見も噴出しています」(同)

 批判の声も上がっているが、「実写化としては成功の部類」と肯定派がいることも事実。息の長い興行で大逆転を見せるのか、ランキングの推移に注目しよう。

“原作実写化俳優”山崎賢人の憂鬱……『キングダム』劇場公開予算は10億円超も中国ロケなし

「今、原作の実写化といえば山崎賢人というくらい彼の名前を見ない作品はないですね。来月公開の映画『羊と鋼の森』もそうですが、年に2~4本のペースで映画出演している彼が原作のなかった作品に出演したのは、5年前の『ジンクス!!!』までさかのぼらないといけません。また、来年公開予定の映画『キングダム』でも主演を務めますが、こちらも漫画原作です。この夏にかけての撮影は、彼が多忙ということもあって中国の歴史物語にもかかわらず、オール日本ロケになる予定だそうです」(映画関係者)

 20日に東京都内で行われた主演映画『羊と鋼の森』の完成試写会に出席した、主演の山崎賢人。

「とにかく最近の山崎さんは、作品選びに頭を悩ませてるそうです。山崎さんといえば、やはり王子様キャラということで、これまでも特に少女漫画の原作モノの主演が多かったのですが、同世代の菅田将暉さんや新田真剣佑さんがバランス良く作品を選んで賞を取ったりして活躍しているのを見て、このままの路線でいいのか、親しい人には相談してるようです」(テレビ局関係者)

 今回の劇場版『キングダム』も、もともとは原作の連載10周年を記念して作られた実写特別動画が元になっている。

「その時も、原作者から山崎クンの指名があったように、今回も彼が主演になりました。監督は佐藤信介氏で、配給はワーナーが行います。ウワサされていた中国からの出資はなく、予算は10億円を超えるそうですが、関係者は『ボランティアにかなり頼ることになりそうだ』とこぼしていましたね」(芸能事務所関係者)

 確かに原作モノの主演に抜擢されるケースが多い山崎だが、裏を返せば“今風”の顔であるということで、それはそれで大きな武器でもある。

「そんな中でも『陸王』(TBS系)に出たり、自分からコメディ色の強い福田雄一監督の作品に出たいと事務所に直訴したり、いろいろと悩みながら動いてはいるようです」(同)

 日本屈指の“原作実写化俳優”の悩みは深そうだ。

“原作実写化俳優”山崎賢人の憂鬱……『キングダム』劇場公開予算は10億円超も中国ロケなし

「今、原作の実写化といえば山崎賢人というくらい彼の名前を見ない作品はないですね。来月公開の映画『羊と鋼の森』もそうですが、年に2~4本のペースで映画出演している彼が原作のなかった作品に出演したのは、5年前の『ジンクス!!!』までさかのぼらないといけません。また、来年公開予定の映画『キングダム』でも主演を務めますが、こちらも漫画原作です。この夏にかけての撮影は、彼が多忙ということもあって中国の歴史物語にもかかわらず、オール日本ロケになる予定だそうです」(映画関係者)

 20日に東京都内で行われた主演映画『羊と鋼の森』の完成試写会に出席した、主演の山崎賢人。

「とにかく最近の山崎さんは、作品選びに頭を悩ませてるそうです。山崎さんといえば、やはり王子様キャラということで、これまでも特に少女漫画の原作モノの主演が多かったのですが、同世代の菅田将暉さんや新田真剣佑さんがバランス良く作品を選んで賞を取ったりして活躍しているのを見て、このままの路線でいいのか、親しい人には相談してるようです」(テレビ局関係者)

 今回の劇場版『キングダム』も、もともとは原作の連載10周年を記念して作られた実写特別動画が元になっている。

「その時も、原作者から山崎クンの指名があったように、今回も彼が主演になりました。監督は佐藤信介氏で、配給はワーナーが行います。ウワサされていた中国からの出資はなく、予算は10億円を超えるそうですが、関係者は『ボランティアにかなり頼ることになりそうだ』とこぼしていましたね」(芸能事務所関係者)

 確かに原作モノの主演に抜擢されるケースが多い山崎だが、裏を返せば“今風”の顔であるということで、それはそれで大きな武器でもある。

「そんな中でも『陸王』(TBS系)に出たり、自分からコメディ色の強い福田雄一監督の作品に出たいと事務所に直訴したり、いろいろと悩みながら動いてはいるようです」(同)

 日本屈指の“原作実写化俳優”の悩みは深そうだ。

微妙にズレてる日本文化が、逆に愛おしく思える!? 黒澤明×宮崎駿をポップにリミックス『犬ヶ島』

 独特なビジュアルセンスとユーモア感覚の持ち主であるウェス・アンダーソン監督の新作映画『犬ヶ島』は、かなりおかしな作品だ。人種隔離政策ならぬ、犬隔離政策を打ち出した為政者に対し、ひとりの少年と6匹の犬たちが“七人の侍”として立ち上がるという、黒澤明映画を思いっきりオマージュした内容となっている。アンダーソン監督が日本文化と黒澤映画が大好きなことはすごく伝わってくるけど、黒澤ワールドが人形アニメ(ストップモーションアニメ)として描かれ、その上アンダーソン監督は脱力系ギャグが得意な人ゆえ、日本人のイメージする黒澤作品とはまったく異なるものに仕上がっている。その違和感が、何ともいえない味わいなのだ。

 黒澤監督の『どですかでん』(70)はゴミ捨て場が舞台となっていたが、同じく『犬ヶ島』もゴミの島が舞台だ。メガ崎市ではドッグ病が蔓延し、人間に感染することを恐れた小林市長(声:野村訓市)はノラ犬も飼い犬もすべての犬を、ゴミ島あらため“犬ヶ島”へ強制送還することを決定。ノラ犬のチーフ(声:ブライアン・クランストン)は元飼い犬のレックス(声:エドワード・ノートン)ら4匹の犬たちと徒党を組み、犬ヶ島でたくましくサバイバルライフを送るようになっていた。

 ある日、犬ヶ島に小型飛行機に乗って、ひとりの少年が現われる。小林市長の養子・小林アタリ(声:ランキン・こうゆう)だった。いちばんの親友だった愛犬スポッツと引き離されたアタリは、養父の目を盗んでスポッツを探しに訪れたのだ。人間から愛された記憶のないノラ犬チーフだったが、お気に入りのメス犬ナツメグ(声:スカーレット・ヨハンソン)から「彼はまだ子どもよ。助けてあげなさい」と言われたことから、スポッツ探しをサポートすることに。だが、小林市長の命令で出動したドローンやロボット犬たちがアタリたちの前に立ち塞がり、壮絶なバトルに。犬ヶ島はまるで怪獣島のような有り様となる。

 公式HPには本作の物語設定は今から20年後の日本と記されているが、アンダーソン監督がイメージしたのは、黒澤監督の社会派ドラマ『酔いどれ天使』(48)や『野良犬』(49)などで描かれた戦後復興から高度経済成長へと向かった日本のワイルドな雰囲気。戦争は終わり、復興が進んでいく一方、新たな貧富の差が生まれていった時代だ。黒澤映画では庶民たちはビンボーなれど、エネルギッシュに生きていた。そんな復興期から高度成長期にかけての日本人の姿が、犬キャラたちに投影されている。『隠し砦の三悪人』(58)の千秋実と藤原釜足が、同じく黒澤作品を敬愛するジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』(77)のC-3POとR2-D2のモデルになったような感じ。心の狭い民族主義者なら「外国人が日本人を犬扱いするなんて!」と青筋を立てそうだけど、『犬ヶ島』では犬キャラをハリウッドスターが、日本人キャラは日系キャストがアテレコしているのだ。

 アンダーソン監督はロアルド・ダール原作の『ファンタスティック Mr.FOX』(09)で初めてストップモーションアニメに取り組み、実写映画のみならずアニメーション表現でも非凡な才能を発揮してみせた。アンダーソン監督は黒澤作品に加え、宮崎作品からも大いに影響を受けているそうだ。宮崎作品の中で描かれる静謐な世界の豊かさや独特なリズム感に魅了されているとのこと。他にも東宝特撮映画『地球防衛軍』(57)、大友克洋のSFコミック『AKIRA』、持永只仁の人形アニメなどの要素も感じさせる。『犬ヶ島』は4年の歳月を費やし、作られた人形の数は人間と犬を会わせて合計1,097体。総勢670名ものスタッフを動員。ただの酔狂で撮り上げられた作品ではない。それぞれのパペットのディテールや細かい仕草に、アンダーソン監督をはじめとするスタッフの異常な愛情が溢れ出ている。

 今年公開されたスティーブン・スピルバーグ監督のSF大作『レディ・プレイヤー1』では、森崎ウィンは黒澤映画の常連俳優・三船敏郎を仮想現実「オアシス」でのアバターとしていた。現在公開中のドキュメンタリー映画『MIFUNE THE LAST SAMURAI』ではスピルバーグやマーティン・スコセッシ監督らが俳優・三船敏郎の魅力を嬉々として語っている。『犬ヶ島』でも“三船敏郎”は要重要人物だ。アタリの養父である小林市長は、量産型のアニメ作品なら100%の悪役キャラになるところだが、アンダーソン監督は分かりやすい悪役にはしていない。『悪い奴ほどよく眠る』(60)や『天国と地獄』(63)に出ていた頃の三船敏郎を思わせる、社会秩序と闇世界との狭間で葛藤する大人のキャラクターとなっている。三船敏郎は日本だけでなく、海外でも深く愛されてきたことが分かる。

 スピルバーグ監督が久しぶりに少年少女たちを主人公にした『レディ・プレイヤー1』の仮想現実「オアシス」は、貧富の差や人種的偏見のない、平等で自由な世界として描かれていた。ガンダムやメカゴジラたちが著作権の壁を乗り越えて、対等に戦いあった。アンダーソン監督が撮り上げた『犬ヶ島』も、時空や国境を越えた世界であり、人間と犬との友情が描かれる。人間と犬とは、言葉が通じないからこそ永遠の友情を結ぶことができる。特に少年期にある人間と犬は、動物の生態系の枠組みを越えて、強い繋がりを感じあえる。米国テキサス州生まれのアンダーソン監督も、ネイティブな日本人ではないからこそ、日本文化を愛してやまない。

 自分とは異なるもの、異なる世界に憧れるのは自然な摂理だろう。アンダーソン監督が描く『犬ヶ島』は、現実の日本ではない。黒澤明や宮崎駿が夢想した理想社会へ、アンダーソン監督は『犬ヶ島』を通して近づくことを夢見ている。
(文=長野辰次)

『犬ヶ島』
監督/ウェス・アンダーソン 原案/ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン、野村訓市
声の出演/ブライアン・クランストン、ランキン・こうゆう、エドワード・ノートン、ボブ・バラバン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、野村訓市、高山明、グレタ・ガーウィグ、フランシス・マクドーマンド、伊藤晃、スカーレット・ヨハンソン、ハーヴェイ・カイテル、F・マーリー・エイブラハム、ヨーコ・オノ、野田洋次郎、渡辺謙、夏木マリ、フィッシャー・スティーブンス、村上虹郎、リーヴ・シュレイバー、コートニー・B・ヴァンス 
配給/20世紀フォックス映画 5月25日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー中
(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
http://www.foxmovies-jp.com/inugashima/

 

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安室奈美恵の封印された“黒歴史”……元TOKIO・山口達也と共演した『That’sカンニング! 史上最大の作戦?』って!?

 歌手の安室奈美恵がこの秋の引退へ向けて5大ドームツアーをこなしており、6月の東京ドーム公演を残すのみとなった。5月23日に沖縄県民栄誉賞を受賞し、有終の美を飾らんとする活躍を見せる彼女だが、実は渦中の意外な人物とつながりがある。

「先ごろ未成年女性への強制わいせつ事件で、グループ脱退と所属のジャニーズ事務所退所を発表した元TOKIOの山口達也ですね。2人は1996年公開の映画『That’sカンニング! 史上最大の作戦?』で共演しています。当時の両者はトップアイドル同士といえるでしょう。山口は主人公の木村見次、安室は木村に心を寄せる女子大生である森下由美を演じています。安室の数少ない女優出演作品ですね。演技のぎこちなさはありますが、スタイル抜群の八頭身美女ぶりがフレームにうまくハマっています」(芸能ライター)

 だが、現在この映画について言及されることはほとんどない。一応DVD化はされているが、注目度は低いままだ。

「ストーリーは、学生寮の落ちこぼれメンバーが、悪徳教授に立ち向かってゆくもので、よくできた青春コメディ映画だといえます。ただ、さまざまなカンニングの方法を紹介するという内容は、現在の観点からするといろいろと問題がありそうです。2011年に実際に京都大学で携帯電話を用いたカンニング事件が起こり、ネタが現実のものとなってしまいました。さらには、安室自身が『ポンキッキーズ』(フジテレビ系)へのシスターラビッツとしての出演をはじめ、歌手以外の活動を事実上の“黒歴史”として封印していること。さらに山口の強制わいせつ事件も起こってしまいましたので、コンプライアンス重視の現在、この映画がテレビで放送される機会はないでしょうね」(同)

 さまざまな事情で封印された幻の日本映画は多く存在する。一部カルト映画マニアの間では隠れた名作という呼び声もある作品だけに『That’sカンニング! 史上最大の作戦?』も、そうなってしまうのは残念である。
(文=平田宏利)

このドロ臭さは、「競輪版ロッキー」と呼びたい!! 『ガチ星』が生ぬるい邦画界に追込みを掛ける

 サイコーに熱い映画が、福岡からやってきた! 例えるなら、福岡県民のソウルフードである豚骨ラーメンと辛子めんたいを食べ合わせたような、こってり&スパイシーな味わい。福岡を拠点に国際的に活躍する映像ディレクター・江口カン監督の劇場デビュー作となる『ガチ星』がそれだ。高校卒業後、競輪選手を目指していたという異色の経歴を持つ無名俳優・安部賢一をオーディションで主役に抜擢。家族や友達の善意をことごとく裏切ってきた中年クズ男が、過酷な競輪の世界で再起を目指すという超泥くさい人間ドラマが繰り広げられる。キラキラ映画全盛の日本映画界にドロドロ映画で追込みを掛ける江口監督と主演の安部に熱い胸の内を吐き出してもらった。

 まずは『ガチ星』のストーリーを紹介しよう。主人公は福岡のプロ野球球団・ホークスの中継ぎ投手・濱島(安部賢一)。恵まれた体格と体力を誇る濱島だったが、登板する度に打ち込まれてしまう。憂さ晴らしで酒びたりとなり、戦力外通告されるはめに。妻や息子と別れ、親友の居酒屋でバイト生活を始めるも、親友の奥さんとゲス不倫。さらには酒、パチンコ、借金に溺れてしまう。生き地獄に陥った濱島がすがったのは、なじみの店主(博多華丸)のラーメン屋で聞いた「競輪学校には年齢制限がない」という情報だった。40歳を目前にした濱島は再起を賭けて競輪界へ飛び込むが、競輪学校で待っていたのは年齢の離れた濱島に対する猛烈なシゴキとイジメ。壮絶な闘いの中で、濱島はようやく自分に欠けていたものに気づく―。

 競輪の世界を舞台に、中年男の死にものぐるいの再生を描いた『ガチ星』。カンヌ国際広告祭で3年連続受賞するなど売れっ子CMディレクターだった江口監督が40歳を過ぎ、人生の折り返し地点からの新しい挑戦として選んだのが映画製作だった。東京ではなく、福岡だからこそ生まれた映画だと江口監督は断言する。

江口「普段は僕が生まれ育った福岡をベースにして仕事をしているんですが、映画製作はやっぱり東京だろうと、東京にいる映画関係者たちに企画を持ち掛けたんです。ですが、全員から無理だと言われました。いまどきの若者たちは競輪に興味を持たないと。言われたことはもっともなんですが、でも競輪の映画がないからこそ、僕はつくってみたいと思った。誰もやっていないからこそ、挑戦してみたいと。それで福岡のテレビ局(テレビ西日本)のローカル枠で深夜ドラマとして放送させてもらい、新たに音入れなどして再構成することで劇場版として完成させたんです。もちろん、キラキラ映画が人気なのは分かります。震災や経済の低迷が続き、明るい映画を求める人は多いでしょう。でも、僕はボクシングの世界を描いた『ロッキー』(76)や『レイジング・ブル』(80)、『どついたるねん』(89)みたいな男臭い映画が大好き。小倉が発祥の地である競輪を題材に、自分自身が熱くなった男のドラマを描きたかったんです」

 そう、『ガチ星』をひと言でいえば「競輪版ロッキー」の世界なのだ。怠惰な日常生活に流されてきた主人公がしっかりと現実を見つめ、体を張って闘うことでようやく覚醒を果たす。福岡から近い韓国のヤン・イクチュン監督&主演作『息もできない』(08)も、江口監督が刺激を受けた映画の一本だ。また、江口監督は福岡在住の川島透監督を“師”と仰いでいることも興味深い。川島監督は故金子正次が主演した『竜二』(83)で鮮烈なデビューを飾った。『ガチ星』に主演した安部も俳優として目立つ実績はなかったが、懸命に喰らい付くことで主役の座を手に入れた。

安部「中学までは甲子園を目指していたんですが、肩を壊して野球は断念しました。高校卒業後、父が競輪選手ということもあって、競輪学校を4回受験したんです。父からは厳しく鍛えられましたが、やはり家族ということで僕にどこか甘えがあったのかもしれません。結局、競輪学校の入学試験には100分の4秒ほど足りずに落ち、当時は年齢制限があったので諦めたんです。25歳で役者の道を目指して大分から上京したものの、オーディションに落ち続ける生活。40歳を迎え、最後のオーディションのつもりで受けたのが『ガチ星』でした。これに落ちたら、大分に帰るつもりだったんです」

■恥も外聞もかなぐり捨てた最後のオーディション

 ところが『ガチ星』のオーディション直前に安部は体調を崩し、高熱を出してしまう。熱が下がらない状態のままオーディションに参加した安部は、全力を出しきれないまま落選。野球、競輪での失敗を経験している安部のキャリアに注目していた江口監督はOKを出したかったが、安部の明るさやスマートさがネックとなっていた。

江口「役者って、どうしても自分をよく見せようとしてしまうもの。僕がイメージしていた濱島の酒や人間関係にだらしない雰囲気と全然違ったんです。伊豆にある競輪学校でロケハンする際、被写体として彼をもう一度呼び、その合間に再度オーディションしたんですが、やっぱりダメ。諦め切れなかった彼は、その場で泣き出したんです。そこまでこの役に賭けているのかと分かると、こちらも情が湧いてしまう(苦笑)。後日、最後の最後のオーディションをやったところ、そのときはようやく身にまとっていたものを全て脱ぎ去って、カメラの前に立っていたんです」

安部「言い訳になると思って、僕からは口にしませんでしたが、実はずっと熱が下がらなかったんです。2度もオーディションに失敗したけれど、まだ主演俳優は決まっていないと分かったので、ここは泣いてでも喚いてでも、しがみついてやろうと(笑)。1週間後に行なわれた最後のオーディションは体調も回復し、自分のすべてをさらけ出す覚悟でした。多分、『ガチ星』に出ていなかったら、実家に戻って、それこそ濱島みたいに地元の友達を頼って働いていたと思います」

江口「僕は基本、役者の涙は信じないんだけどね(笑)。福岡の人間って、ダメなヤツに対してどこか甘さがあるのかもしれない。でも、最後のオーディションでは、彼は濱島そのものになりきってくれていた。僕もこの映画には賭けているので、これなら一緒に心中できる、信頼してタッグを組めると思えたんです」

■ダメ人間を甘やかしてしまう、福岡という街の恐ろしさ

 競輪学校では、クランクイン前に他の若手キャストと共に1カ月の合宿特訓。10キロ体重を増やし、無精ひげを伸ばし、より濱島へと近づいていった。また、東京で暮らす安部に対して、福岡で映画の準備を進めた江口監督はスマホでダメ出しを続けたという。

安部「毎日、濱島になりきった不機嫌な表情を、LINEで江口監督に送り続けたんです。撮影前はそれが日課になっていました。たまに江口監督から返事がこなくて、深夜2時すぎまで寝ないで待っていたこともあります」

江口「ごめん、その晩は酒を呑んでてLINEを返しそびれた(笑)。LINEでのやりとりでの演出は初めてだったけど、離れた場所にいる役者に対して、これは意外と有効だと分かり、他の作品でもやっています。要は一度掴んだ役のイメージを撮影当日まで忘れさせないことが肝心なんです」

安部「競輪学校近くの登坂コースを登るのもキツかったし、バンクを周回するシーンは何度も何度もリハが続くのでヘトヘトになり、先導するプロの競輪選手に付いていくだけで必死でした。ドラマパートでも江口監督から厳しいダメ出しが続きましたが、厳しい分だけ江口監督やスタッフのみんなが『ガチ星』に熱い情熱を注いでいることを実感できたんです」

 福岡は気候が穏やかで、美味しい食材に恵まれ、気のいい性格の人間が多い。だが、そんな居心地のよい環境に甘えて、『ガチ星』の主人公・濱島は救いようのないクズ人間へと堕ちていく。ゲロを吐き、汚物まみれとなる濱島を目覚めさせるのは、家族や友人たちの優しさではなく、競輪学校で出会った天才的レーサー・久松(福山翔大)というライバルの存在であり、生と死の境界線ギリギリに自分は立っているのだというシビアな現実認識だった。甘さを排除した展開に、地元・福岡にいながら第一線で活躍を続ける江口監督の並々ならぬ想いも感じさせる。

江口「7年ごしで『ガチ星』を完成できたことで、これからも福岡を拠点に無名の俳優たちを起用した映画を撮っていきたいという気持ちが強まりました。すでに何本かは準備中です。東京の人にも『へぇ、こんな映画もあるんだ』と外国映画を観るような感覚で楽しんでほしい」

安部「蜷川幸雄さんが演出する舞台に出たときに、『お前は体がデカいんだから、何もせずに堂々とそこに立っていればいいんだ』と言われたんですが、『ガチ星』の濱島を最後まで演じきったことで、蜷川さんの言葉を実感できたように思います。役になるための準備を充分した上で、本番では演技に頼ることなく、役そのものになりきっていることが大事なんだなと。他の監督の作品にもチャレンジし、江口監督にまた呼んでもらえるような俳優になりたいですね。ここからがスタートです」

 豚骨ラーメンのようにクセがあり、辛子めんたいのようのホットな映画『ガチ星』が完成した。面白い映画に飢えていた大人の観客たちの食欲を充分に満たすに違いない。
(取材・文=長野辰次/撮影=尾藤能揚)

『ガチ星』
監督/江口カン 脚本/金沢知樹
出演/安部賢一、福山翔大、林田麻里、船崎良、森崎健吾、伊藤公一、吉澤尚吾、西原誠吾、博多華丸、モロ師岡
配給/マグネタイズ 5月26日(土)より新宿K’s cinema、小倉昭和館ほか全国順次公開 
(C)2017 空気/PYLON
http://gachiboshi.jp

●江口カン(えぐち・かん)
福岡県出身。九州工科大学画像設計科卒業。CMディレクターとして手掛けた「ナイキ ジャパン」「おしい!広島」「スニッカーズ」などのCMが人気を集める。2007年から3年連続で「カンヌ国際広告祭」受賞。13年には博多華丸、富田靖子主演ドラマ『めんたいぴりり』(テレビ西日本)のディレクターを務めた。15年には続編『めんたいぴりり2』がオンエアされ、2作連続で日本民間放送連盟賞優秀賞を受賞。16年はNHK大河ドラマ『真田丸』番宣ムービー『ダメ田十勇士』が話題に。19年1月に映画『めんたいぴりり』が公開予定。

●安部賢一(あべ・けんいち)
大分県出身。高校卒業後、競輪選手を目指すが競輪学校に合格できずに断念。役者の道へ進むも、オーディションは落選ばかりという下積み生活が続いた。舞台では蜷川幸雄演出「タンゴ・冬の終わり」「ひばり」(シアターコクーン)、映画では北野武監督の『監督・ばんざい』(07)や『アキレスと亀』(08)などに出演している。『ガチ星』は初めての主演作。