『キャメラを止めるな!』は「原作と違うからダメ」を一蹴する

話題作のリメイクに孕む危険

 キャスト無名の超低予算映画ながら2018年に大ヒットを記録した『カメラを止めるな!』(監督:上田慎一郎)。そのフランス版リメイクだ。一言で言えば、まったくもって申し分ない出来である。オリジナル版の三部構成【劇中劇→人物ドラマ→劇中劇の裏側種明かし】はそのままに、フランス版ならではの画面の雰囲気、キャストたちの佇まい、い…

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女性視点で描かれた戦争の恐怖『戦争と女の顔』 消えることのないPTSDの苦しみ

 戦争映画の多くは矛盾に満ちている。企画意図に「反戦、平和」を謳いながらも、実際に製作された映画の中の戦闘シーンには、観客に高揚感を与えるものが少なくない。スティーヴン・スピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』(98)はノルマンジー上陸作戦をリアルに再現しているが、戦争の残酷さを伝えると同時に殺人ショーとしての刺激的な側面も持っている。トム・クルーズ主演の『トップガン マーヴェリック』(…

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山岳映画『アルピニスト』と『神々の山嶺』同日公開 狂気以上の“映画館で見る価値”

 まるで示し合わせたかのような「同日公開」だ。何がって、ドキュメンタリー映画『アルピニスト』と、アニメ映画『神々の山嶺(いただき)』のことである。

 この「断崖絶壁や過酷な環境に挑む登山家もの」という大きな共通点…

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磯村勇斗、北村優衣をピンク映画の鬼才が撮る、社会派・カルト・スリラー『ビリーバーズ』

 オウム真理教や連合赤軍、人民寺院、マンソン・ファミリーなどの新興宗教やカルトコミュニティを連想させる山本直樹の漫画『ビリーバーズ』(小学館)は、日常から切り離された環境の中で、信仰心と欲望のどちらが勝るのかというような実験要素を詰め込んだ作品だ。

 人里離れた孤島で、いつ届くかわからない食料や物資を待つ不安、娯楽やストレスのはけ口もない中で、毎日続ける謎の儀式……。全てに理由…

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『破戒』間宮祥太朗が見せる“芯”と“間” 島崎藤村の名作が今、映画化される理由

 1948年に木下恵介監督、1962年に市川崑監督によって映画化されてきた、明治の文豪・島崎藤村の不朽の名作『破戒』。その、およそ60年ぶりの映画化作品が、7月8日に公開される。

 人類平等といえども、生まれや育ち、生活環境も対照的な2人の女性が、現代の東京で交わるストーリーを描いた映画『あの子は貴族』(2020)のように、見えない格差というものは確実に存在している。

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磯村勇斗初主演映画『ビリーバーズ』 カルト宗教を題材にした社会派エロス!

 新興宗教とセックスを題材にした山本直樹の青年漫画『ビリーバーズ』(小学館)が、ピンク映画出身の城定秀夫監督によって実写映画化された。冴えない高校生たちの青春群像劇『アルプススタンドのはしの方』(20)が高い評価を得て、一般映画でも注目を集めるようになった城定監督が長年望んでいた企画だった。孤島で暮らす3人の男女の関係性が、信仰心と性欲のせめぎ合いによって大きく変化していく様子が描かれている…

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森達也監督が初の劇映画に挑む 家族と郷里を愛する自警団が虐殺を犯した「福田村事件」とは?

 ゴーストライター事件で騒がれた佐村河内守氏に密着取材した『FAKE』(16年)、東京新聞の望月衣塑子記者を追うことで、官邸や日本のメディアの異様さを浮き彫りにした『i-新聞記者ドキュメント-』(19年)……。新作を発表する度に大きな反響を呼び起こすのが、ドキュメンタリー映画界の鬼才・森達也監督だ。

 その動向が常に注目を集めてきた森達也監督が、現在取り組んでいるのが初の劇映画…

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映画『ゆるキャン△』シリーズから数年後。社会人になったって、ゆるい視点は大切だ

 本格的じゃなくても、自分たちに合ったゆるいキャンプをする。それがモットー。女の子たちの自由気ままなキャンプの様子がほのぼのとしており、キャンプに興味のなかった層にまでキャンプや観光地巡りの魅力を伝えることになった作品が『ゆるキャン△』だ。

 そんな『ゆるキャン△』は、アニメ化もドラマ化もされ、この度映画化されることに。映画『ゆるきゃん△』が7…

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人間を本能に忠実にさせる感染症が蔓延! 台湾発のR18ホラー『哭悲/THE SADNESS』

 ウイルスは変異を繰り返すことで、自然界の環境に適応しようとする。台湾発のホラー映画『哭悲(こくひ)/THE SADNESS』は、そんな変異型ウイルスのような作品だ。未知のウイルスに感染した人たちが凶暴化し、次々と周囲の人々に襲いかかるというゾンビ映画のフォーマットを踏襲しながら、より現代的にアップデートされた恐怖を描いている。R18指定されているので、観る人は振り切ったスプラッターシーンの…

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コロナ禍をサバイブするミニシアターの現状を名古屋の名物支配人がぶっちゃける

 いま、ミニシアターが揺れている。ミニシアターの元祖「岩波ホール」が2022年7月いっぱいで閉館することが報じられ、アップリンク渋谷やユジク阿佐谷などではスタッフへのパワハラが問題となった。個性的なインディペンデント映画を上映するミニシアターは、多様性の時代を象徴する文化的拠点として人気を誇っていたが、コロナ禍以降はどの劇場も観客動員に悩んでいる。

 ミニシアターはこれからどう…

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