今週紹介する新作映画2本は、コミカルなタッチの邦画とSFスリラー風味の洋画で、ともに不条理な世界で他者との関わりからアイデンティティーを問い直すというテーマが予想外の展開を見せる(いずれも5月25日公開)。 『俺俺』は、大江健三郎賞を受賞した星野智幸の同名小説を、『亀は意外と速く泳ぐ』(05)、『インスタント沼』(09)の三木聡監督が「KAT-TUN」の亀梨和也を主演に迎えて映画化。郊外の街に住み家電量販店で働く均(亀梨)は、満たされないまま平凡な毎日を過ごしていたが、たまたま拾得した他人の携帯電話でオレオレ詐欺をはたらいてしまう。ところが、金を振り込んだ女性は均を見ても「自分の息子だ」と言い、実家を訪ねれば自分と同じ顔をした「別の俺」がいた。こうして次第に「俺」が増殖し、やがて「俺」同士が互いを削除し合う事態に発展する。 亀梨が演じ分けた「同じ顔の俺」は実に33人! メイクとCG合成を駆使し、「巨乳ボディコンの俺」「全身タトゥーの俺」など“濃いキャラ”たちがウジャウジャと同じフレームに収まっている図はまさにカオス。顔だけでなく好みや考え方まで同じな「俺」たちが意気投合するほのぼのした序盤から、増殖しすぎてシリアスに転調する中盤、そして原作小説とは異なる終盤まで、「亀梨だらけ」の強烈な映像と相まって文字通り目が離せない。共演に内田有紀、加瀬亮、ふせえり、岩松了ほか。オレオレ詐欺から「振り込め詐欺」、さらに「母さん助けて詐欺」と呼称が変遷する比較的新手の犯罪を起点としつつ、人間関係と個性が希薄化する現代の社会問題をシニカルかつユーモラスな不条理劇に昇華させた原作小説もオススメだ。 もう1本の『アンチヴァイラル』は、鬼才デビッド・クローネンバーグの長男、ブランドン・クローネンバーグの長編監督デビュー作。憧れのセレブとの一体感を求めるマニアたちのニーズに応え、セレブが患った感染症のウイルスを注射するクリニックが存在する世界。そうしたクリニックで働く注射技師のシドは、厳しいセキュリティをすり抜けるため、希少価値の高いウイルスを自身に注射し、闇マーケットに横流していた。そんなある日、完璧な美貌でウイルスの販売も群を抜く超セレブ、ハンナから採取した血液を自らに注射したシドは、突然幻覚に襲われ失神。意識を取り戻すと、テレビのニュース番組はハンナが病死したことを報じていた。ハンナを絶命させたウイルスを唯一保有するシドは、裏社会のコレクターたちから標的にされてしまう。 今なお作家性の強い映画を撮り続けている父デビッドの、特にキャリア中期の『スキャナーズ』(81)、『ザ・フライ』(86)、『戦慄の絆』(88)といった作品群に顕著な人体の変形と破壊、筋骨や内臓のグロテスクな描写、倒錯した嗜好といった要素が、本作に見事なまでに受け継がれている。2012年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品されたことでも話題に。主演ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの病的な風情、ヒロイン役サラ・ガドンのクラシカルな美貌が作品世界に説得力を与えている。セレブに近づきたいと願う個人の心理と、商品として消費されるセレブの危うい関係性に鋭くメスを入れた問題作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『俺俺』作品情報 <http://eiga.com/movie/58213/> 『アンチヴァイラル』作品情報 <http://eiga.com/movie/78307/>(C) 2012 Rhombus Media(Antiviral)Inc.
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中田秀夫VSクドカン“団地映画対決”勃発!? 『クロユリ団地』『中学生円山』
今週紹介する新作映画は、若い女性が体験する恐怖を描くホラーと、中2男子の妄想と現実が交錯する思春期コメディ。ジャンルは違えど団地が物語の舞台となる邦画2作品が、奇しくも5月18日に同日公開されることから、“団地映画対決”という見方もできそうだ。 1本目の『クロユリ団地』は、ジャパニーズホラーの旗手・中田秀夫監督が前田敦子と成宮寛貴を主演に迎えて描く戦慄の最新作。介護士を目指す明日香(前田)は、毒々しい色の花に囲まれたクロユリ団地に引っ越してきた。入居早々、隣室からの不気味な音に悩まされ、級友からは「幽霊が出る団地」とのウワサを聞き、不安を募らせる明日香。やがて隣室で孤独死した老人を発見してしまい、その日を境に不可解でおぞましい出来事に巻き込まれていく。明日香は、老人の遺品整理にやってきた青年・笹原(成宮)の助けを求めるが……。 90年代の『リング』シリーズ、ハリウッド進出作『ザ・リング2』(05)で日本テイストの新感覚ホラーで世界に名を馳せ、近年は『L change the WorLd』(08)、『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』(10)などジャンルを超えて活躍してきた中田監督が、久しぶりに本格ホラーに帰ってきた。元AKB48の前田敦子の主演作ということもあってか残酷描写などは控えめだが、映像の色調や照明、音響などでじわじわと不安感をあおる演出は健在。老巧化した団地の描写に、希薄な近所付き合い、孤独死といった社会問題も折り込まれるなど、現代の日本に「あり得そうな恐怖」を体感できるはず。 もう1本の『中学生円山』は、演劇・テレビ・映画とマルチに活躍する“クドカン”こと宮藤官九郎の、『少年メリケンサック』(09)以来4年ぶりとなる監督作。団地の中で平凡な家族に囲まれて育った中学2年生の円山克也(平岡拓真)は、あるエッチな目的を達成するため、極限まで身体を柔らかくする「自主トレ」に励んでいた。そんなある日、上の階に謎めいたシングルファーザーの下井(草なぎ剛)が引っ越してくる。ほどなくして団地の近くで殺人事件が発生。克也は下井の正体が殺し屋だと妄想し始める。 今でこそNHKの朝ドラ『あまちゃん』の脚本を担当するなど、上品なユーモアで包んだストーリーもお手のものだが、もともとは下ネタ含む過激な笑いと風刺で人気の劇団、大人計画の主要メンバーとして成功したクドカン。自らの中学時代の体験や妄想を脚本に盛り込み、淡々とした団地と学校での日常と、エロありアクションありの過剰な妄想が小気味よく切り替わるストーリーに仕立てた。共演陣も仲村トオル、坂井真紀、遠藤賢司、ヤン・イクチュンと豪華で、皆川猿時、三宅弘城、宍戸美和公ら大人計画でおなじみの面々も。エッチなネタがなぜか感動エピソードに昇華したり、平凡なはずの団地で現実に銃撃戦あり格闘ありのアクションが繰り広げられたりと、クドカンワールドが全開の本作は、最後まで目いっぱい笑えて少しほろ苦い青春映画の傑作だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『クロユリ団地』作品情報 <http://eiga.com/movie/77733/> 『中学生円山』作品情報 <http://eiga.com/movie/77240/>(C)2013『中学生円山』製作委員会
“北海道が生んだ大スター”大泉洋のハマリ役『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』
今週紹介する新作映画は、難事件を追う探偵が主人公の邦画と、詐欺を仕掛ける即席コンビを描く洋画、共に犯罪にからむ筋立てだが、コミカルなタッチで気軽に鑑賞できる娯楽作2本だ。 5月11日公開の『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』は、東直己の小説『ススキノ探偵シリーズ』を原作とし、大泉洋主演で映画化した『探偵はBARにいる』(11)のシリーズ第2作。札幌の歓楽街ススキノを拠点とする探偵(大泉)は、友人だったオカマのマサコちゃん(ゴリ)を殺人事件で失い、相棒兼運転手の高田(松田龍平)と共に調査に乗り出す。警察の捜査がはかどらないのは、カリスマ政治家・橡脇(渡部篤郎)の力が働いているせいらしい。調査の途上、マサコちゃんと交流があった美人バイオリニストの弓子(尾野真千子)が現れ、探偵に犯人を捕まえるよう依頼する。 いまや北海道出身のスターとしてすっかり認知された大泉洋にとって、『ススキノ探偵』はまさにハマリ役。札幌のススキノをはじめ大通公園や大倉山ジャンプ競技場、室蘭の鉄鋼工場群やさびれた商店街など、北海道の現状が刻まれたロケーションを背景に、トボけたキャラを保ちつつカーチェイスや銃撃戦といった派手なアクションも熱く演じきった。マイペースだが頼れる相棒役、松田龍平とのコンビネーションも健在で、尾野真千子を交えたオンボロ車での珍道中もいい。意外な事件の真相や、切なくもスリリングなクライマックスなど、最後までしっかり楽しませてくれる充実の内容だ。 5月17日に封切られる『モネ・ゲーム』は、コリン・ファースとキャメロン・ディアスが初共演した犯罪コメディ。美術鑑定士のハリー(ファース)は、モネの名画「積みわら」の贋作を用意し、詐欺をもくろむ。テキサスのカウガールPJ(ディアス)を絵画の所有者に仕立て、英国のメディア王シャバンダー(アラン・リックマン)から15億円をだまし取ろうとするが、天然なPJのせいで計画は思いもよらぬ方向へ。果たしてハリーは大金を手にすることができるのか……。 67年に公開された『泥棒貴族』を元に、『ノーカントリー』(07)のジョエル&イーサン・コーエン兄弟が脚本を担当した。監督は『終着駅 トルストイ最後の旅』(10)のマイケル・ホフマン。『英国王のスピーチ』(10)でアカデミー主演男優賞を受賞した名優ファースが、ある事情でスーツのズボンを失いパンツ姿で名門ホテルをうろつくほか、ディアス、リックマンら共演スターたちも文字通り“一肌脱いで”笑いを誘う。英国紳士とテキサス娘の迷コンビをはじめ、文化的・経済的ギャップのネタが要所でアクセントになり、軽妙なストーリーにシニカルな視点を添えている。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』作品情報 <http://eiga.com/movie/77702/> 『モネ・ゲーム』作品情報 <http://eiga.com/movie/58010/>(C)2013『探偵はBARにいる2』製作委員会
本当にあった、ロス市警と大物ギャングの抗争『L.A. ギャング ストーリー』
今週取り上げる新作映画2本は、約半世紀前の「戦い」が身近に存在していたアメリカと日本を舞台に、男たちと女の生きざまを生々しく刺激的に描写した意欲作だ。 5月3日に封切られる『L.A. ギャング ストーリー』(R15+)は、1949年のロサンゼルスで、街を支配するギャングに立ち向かう警察官らの姿を描いたクライムアクション。大物ギャングのコーエン(ショーン・ペン)は、ドラッグや売春、賭博仲介で得た金と暴力で、ロス市警や政治家をも意のままに操り、勢力を拡大していた。しかし、賄賂になびかず正義に燃えるオマラ巡査部長(ジョシュ・ブローリン)ら6人の警察官が立ち上がり、コーエンの組織を撲滅する命がけの「部隊」を結成。警官の身分を隠し、令状を持たないまま盗聴、麻薬取引の妨害、組織の拠点の急襲などあらゆる手段で戦いを挑む。 監督は初メガホンの『ゾンビランド』(09)で一躍注目を集めた新鋭ルーベン・フライシャー。容赦ないバイオレンス描写の中にもシニカルなユーモアを込め、独特な味わいを醸し出す。警察官がギャング顔負けに銃をぶっ放し悪党に鉄拳制裁を下す戦いぶりは圧巻だが、原作小説が史実にゆるやかに基づくというから二度驚かされる。物語としては、アル・カポネに立ち向かう若き財務官らの活躍を描いた名作『アンタッチャブル』(87)に近いものの、暴力表現は本作のほうが過激。ライアン・ゴズリングが演じる警察官と、エマ・ストーン扮するコーエンの情婦、美男美女の危険な恋が華を添えている。 もう1本の『戦争と一人の女』(公開中、R18+)は、坂口安吾の短編小説を映画化した官能文芸ドラマ。太平洋戦争末期から終戦後の東京で、時代に翻弄された男女の運命を描く。戦争に突き進む日本と国民に絶望した作家の野村(永瀬正敏)は、元娼婦の女(江口のりこ)と刹那的な同棲を始め、現実から逃避するように愛欲にふける。一方、中国戦線で片腕を失い帰還した大平(村上淳)は、戦場での行為がトラウマとなり妻と性交渉できなくなっていたが、ある日男たちに襲われている女性を見て激しく興奮していることに気づき……。 幼い頃に遊郭に売られ不感症になった女が、作家との性の行為を通じて「生きる力」を得ていく過程を、江口のりこが渾身の演技で体現。若松孝二監督の下で映画作りを学んだ脚本家の井上淳一が、本作で監督デビューを飾った。あえて観客に意識させるような明示的なズーミングなど、ドキュメンタリー作品にも似た映像の演出も相まって、遠い昭和の男女の営みを奇妙なリアルさで映し出す。あの戦争を風化させず、現代の日本人に「戦うこと」「生きること」の意味を考えてほしいという願いが伝わってくる。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『L.A. ギャング ストーリー』作品情報 <http://eiga.com/movie/57689/> 『戦争と一人の女』作品情報 <http://eiga.com/movie/77490/>(C)2013 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED / Photo Credit: WILSON WEBB
自分のサバイバル能力がわかる『図書館戦争』心理テスト
映画『図書館戦争』公式サイト
映画『図書館戦争』が4月27日から全国で上映スタート。舞台は、近未来の検閲が合法化された日本。問題ありと判断された本は「メディア体」という組織により強引に没収、処分されます。図書館側は、どんな本でもみんなが読める自由を守るため、時には武力で反撃する「図書隊」を創設。主人公・笠原郁(榮倉奈々)はこの図書隊の新人隊員。郁をしごく鬼教官・堂上篤(岡田准一)ら仲間たちと、図書館の自由を守るために戦う物語です。そこで質問です。
【質問】
もしあなたが、『図書館戦争』の舞台のように大切にしているものが規制され、自由に楽しめなくなりそうになったらどうしますか? 以下の中から選んでください。
A:映画の主人公のように組織に入り戦う
B:映画の主人公のように組織に入り戦う
C:何もせずじっと我慢をする
D:諦めて、もっと大切にできる何かを見つける
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ダコタ・ファニングが子役から脱皮! 注目のGW映画『17歳のエンディングノート』
いよいよゴールデンウィークに突入する今週末、配給各社もかき入れ時とばかりに力作や話題作を一気に公開。その中から今回は、それぞれジャンルを踏襲しながらも新味を加えた洋画3本を紹介したい。 4月26日に封切られる『アイアンマン3』(2D/3D上映)は、ロバート・ダウニー・Jr.主演のアメコミヒーロー・アクションシリーズ第3作。人類滅亡の危機を救ったヒーローチーム「アベンジャーズ」の戦いから1年、トニー(ダウニー・Jr.)はトラウマに苦しみながら新型アイアンマンスーツの開発に没頭していた。トニーの公私のパートナーであるペッパー(グウィネス・パルトロウ)には、トニーに恨みを抱く研究者キリアン(ガイ・ピアース)が接近する。そんな時、謎のテロリスト・マンダリン(ベン・キングズレー)率いる悪の組織が米国家を相手に攻撃開始。標的になったトニーも襲撃され、開発拠点の自宅を多数のアイアンマンスーツもろとも失ってしまう。 『アベンジャーズ』(12)を含めるとアイアンマン役で4度目の登板となるロバート・ダウニー・Jr.は、社交的で軽薄なところもあるトニーがPTSDで苦悩するさまや、挫折と喪失の後、他者とのかかわりを通じて人間的に成長する姿を熱演。アイアンマンスーツもさらに進化し、単にトニーが装着して戦うだけでなく、別の人間を守ったり閉じこめたり、あるいは中身不在のままリモコンで操作したりと、観客をあっと驚かせる仕掛けが満載だ。監督は『キスキス,バンバン』(05)のシェーン・ブラックにバトンタッチしたが、前2作でメガホンを取ったジョン・ファブローも引き続き運転手ハッピー役で笑いを誘う。「トニー・スターク“最後”の戦い」と謳われる本作、シリーズは本当に完結してしまうのか、15年に公開予定の『アベンジャーズ2(仮題)』にはどうつながるのか。エンドロールの最後まで目が離せない。 同じく4月26日公開の『ジャッキー・コーガン』(R15+)は、ブラッド・ピットが現代のクールな殺し屋を演じるスタイリッシュなクライムサスペンス。ニューオリンズの街で、犯罪組織が運営する賭場から大金が強奪される事件が発生。支配人マーキー(レイ・リオッタ)に罪をかぶせようとする地元の悪党3人の仕業だったが、組織は事態収拾のため外部から凄腕の殺し屋ジャッキー(ピット)を雇う。「優しく殺す」がモットーのジャッキーは、感情を表に出さず独特の流儀で、事件にかかわった男たちを1人また1人と始末していく。 ブラピが立ち上げた「プランBエンターテインメント」の製作の下、『ジェシー・ジェームズの暗殺』(07)でもタッグを組んだアンドリュー・ドミニクが監督。スローモーションを多用して優雅にソフトに魅せる殺しのシーンや、オバマ大統領が演説で語る国の理想と現代の裏社会に生きる人々の現実をシニカルに対比させる構成など、従来のクライムドラマの枠にはまらない演出が印象に残る。圧倒的な存在感、無駄のない所作、冷徹な口調で新時代の殺し屋を創造したブラピはもちろん、リチャード・ジェンキンス、サム・シェパードら渋いキャストの演技も味わい深い。 3本目の『17歳のエンディングノート』(4月27日公開)は、ダコタ・ファニングが余命を宣告された少女を演じる英国発の切ない恋愛ドラマ。十代前半で白血病を発症し引きこもり生活を送ってきたテッサは、17歳で余命わずかと医者から告げられる。仕事を辞めて治療法探しにのめり込む父親や現実を受け止められない母親をよそに、テッサは「お酒を飲む」「セックス」など危険な「やることリスト」を作成し、残りの人生を精いっぱい生きようと決意。そんな折、隣に引っ越してきた青年アダムに恋をしたことから、テッサは外の世界を体験し、生きることの意味を考え直していく。 監督は『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(13)の脚本を書いたオル・パーカー、アダム役は『戦火の馬』(11)でスティーブン・スピルバーグ監督から主役に抜擢されたジェレミー・アーバイン。かつての天才子役、ダコタ・ファニングも現在19歳に。最近は『トワイライト』シリーズのバンパイア、『ランナウェイズ』(11)のロックスターなどある意味コスプレ的な役どころが続いていたが、今回は白血病患者の役ということでショートヘアにごく薄めのメイクと、少女から大人の女性に変わるハイティーンの素顔がスクリーンに瑞々しく映し出される。死を前にして苦しみながらも、恋を経験して生を実感するヒロインを繊細に演じきったダコタを堪能できる一本だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『アイアンマン3』作品情報 <http://eiga.com/movie/57266/> 『ジャッキー・コーガン』作品情報 <http://eiga.com/movie/77848/> 『17歳のエンディングノート』作品情報 <http://eiga.com/movie/78030/>(C) 2012 Blueprint Pictures (Now) Limited, BBC and The British Film Institute. All Rights Reserved.
ダニエル・デイ=ルイスの迫真の映画にビビッ! 単なる偉人の伝記映画にとどまらない『リンカーン』
今週紹介する新作映画は、ベテラン俳優の演技とキャラクターをたっぷり味わえる2本。年輪を重ねてなお輝きを増す、ハリウッドスターの魅力を満喫したい。 4月19日に封切られる『リンカーン』は、スティーブン・スピルバーグ監督、ダニエル・デイ=ルイス主演で、米国第16代大統領エイブラハム・リンカーンの人生を描いた歴史ドラマ。「すべての人間は自由であるべき」という高い理想を掲げ、大統領に就任したリンカーン。だが、奴隷解放運動を推進したことで南部6州の合衆国離脱を招き、南北戦争で国が2つに割れる危機に直面する。リンカーンは奴隷制を永久に禁止する憲法修正を目指すが、議会では奴隷制廃止を取り下げて北軍と停戦すべしとする声も高まっていた。 何よりもまず、ダニエル・デイ=ルイスの魂がこもった演技に引き込まれてしまう。本作でアカデミー賞史上初となる3度目の主演男優賞を受賞。感情を抑えながらも強い意志がにじみ出る表情、有名な演説に通じるシンプルで力強いセリフの数々に、まさに歴史が動く場面を目撃しているかのような興奮を覚える。映像面でも、困難に直面するリンカーンの葛藤と孤独を表す漆黒の影が印象的。単なる偉人の伝記映画にとどまらず、信念を貫くことの意義、憎しみを乗り越えて平和を求めることの大切さを描くメッセージ性の強い作品でもある。 続いて4月27日公開の『ラストスタンド』は、2003~11年まで米カリフォルニア州知事を務めたアーノルド・シュワルツェネッガーが俳優復帰後、初めて主演したアクション大作。かつてロサンゼルス市警の敏腕刑事として活躍したレイは、今ではメキシコとの国境に近い静かな田舎町で保安官を務め、引退同然の暮らしを送っていた。だがある日、警官殺しの凶悪犯が逃走し町に向かっているとの連絡を受け、警察やFBIの応援も間に合わないと知ったレイは、戦闘経験のない部下や町の仲間、銃器オタクら即席チームで武装集団を迎え撃つ。 シュワルツェネッガーは過去数年の間にも、『ターミネーター4』(09)のデジタル合成によるカメオ出演や、『エクスペンダブルズ』シリーズでのワンポイントリリーフ的な登場でアクション映画ファンを喜ばせてきたが、ついに主役で完全復活。1947年生まれ、現在65歳のシュワちゃんが引退目前の老保安官を演じることである種のおかしみが生まれ、老体にむち打ってカーアクションや肉弾戦に奮闘する姿に思わず声援を送ってしまうはず。『グッド・バッド・ウィアード』(08)などで知られる韓国のキム・ジウン監督のハリウッド進出作でもある。最新のスポーツカーやハイテク武器を駆使した今風の派手なアクションと、西部劇のオールドファッションなヒーロー像を巧みに融合させたことで、幅広い世代が盛り上がれる娯楽作となっている。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『リンカーン』作品情報 <http://eiga.com/movie/77491/> 『ラストスタンド』作品情報 <http://eiga.com/movie/57827/>(c) 2012 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION and
DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC
映画『舟を編む』の恋模様から学ぶ、あなたの恋愛における純情さとしたたかさ
映画『舟を編む』公式サイトより
映画『舟を編む』が4月13日から全国で公開。三浦しおん原作の小説は、本屋大賞に選ばれ、ベストセラーになりました。出版社に勤務している主人公の馬締光也(松田龍平)は、突然、営業部から辞書編集部に異動することに。そこで、新しい辞書『大渡海』の制作に関わり、才能を発揮していく物語。そして、この映画の見所のひとつが、馬締の恋です。馬締は、板前をしている林香具矢(宮崎あおい)に一目惚れ。恋愛経験が乏しく奥手な馬締は、香具矢にどう告白するか悩みに悩むのです。
恋愛が苦手の馬締のように、突然恋に落ちたあなたは、どうやって相手に思いを伝えますか?
【質問】
あなたは、馬締のようにある異性を一目で好きになり、思い切って相手に気持ちを伝えることにしました。その時、どんな手段で気持ちを伝えますか? 以下の中から選んでください。
A:直接口頭で
B:手紙で
C:メールで
D:仲介人を通して
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ジャッキー・チェン“最後のノースタント・アクション”を見届けよ!『ライジング・ドラゴン』
今週紹介する新作映画2本は、香港・中国合作の冒険アクションと、英国発の人生賛歌。ジャンルもテーマも異なるが、共にベテラン俳優が監督を手がけた作品でもある。 4月13日に封切られる『ライジング・ドラゴン』は、ジャッキー・チェンが監督・製作・脚本・主演を務め、伝説の秘宝をめぐって繰り広げる冒険を描いたアクションアドベンチャー。中国・清王朝時代に諸外国から略奪された十二支のブロンズ像を集めるため、あるアンティーク取引業大手がトレジャーハンターのJC(ジャッキー・チェン)を雇う。カンフーの達人で超人的な身体能力を持つJCは、チームを結成し秘宝を求めて世界を駆けめぐるが、行く先々で強敵に遭遇する。 『ドランク・モンキー 酔拳』(78)以来、30年を超える映画活動の総決算として、ジャッキーが自ら「最後のノースタント・アクション」を宣言した超大作。スピーディーな拳と蹴りにユーモラスな挙動も織り交ぜたお馴染みのカンフーはもちろん、ローラーブレード・スーツで腹ばいになって山腹の下り坂を滑降するシーンや、パラグライダー、クライマックスのスカイダイビングまで、文字通り体を張ったアクションが目白押し。従来のジャッキー映画のフォーマットに、『ミッション:インポッシブル』と『パイレーツ・オブ・カリビアン』両シリーズの要素もちゃっかり取り込み、見どころ3倍の娯楽活劇となった。1954年生まれ、現在59歳とはとても思えない離れ業の数々もこれがラスト。お約束のエンドロールのNGシーン集まで、しっかり見届けたい。 続いて、4月19日公開の『カルテット!人生のオペラハウス』は、名優ダスティン・ホフマンによる初監督作品。英国の田園地方に立地し、引退した音楽家たちが暮らす「ビーチャム・ハウス」で、穏やかに余生を送るレジー(トム・コートネイ)ら昔のカルテットメンバー3人。だが、かつての仲間であり、野心家でエゴイストだったため皆を傷つけ疎遠になっていたジーン(マギー・スミス)が新たに入居してくる。近く開かれるコンサートが成功しなければハウス閉鎖という危機を迎え、伝説のカルテット復活に皆の期待が集まるが……。 『戦場のピアニスト』(02)、『潜水服は蝶の夢を見る』(07)などで知られる脚本家のロナルド・ハーウッドによる戯曲を映画化。舞台となる元音楽家向けの老人ホームは、手入れの行き届いた庭園と緑豊かな丘陵に囲まれた上流階級の屋敷といった風情で、思わず羨望のため息が出てしまう。施設の住人たちに本物のオペラ歌手や演奏家を多数起用したのも話題で、彼らによるくつろいだ雰囲気でのパフォーマンスも音楽ファンにはたまらない。老いの悲喜劇をユーモアで包み、「年を重ねるのも悪くないな」と思わせてくれる滋味豊かな逸品だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ライジング・ドラゴン』作品情報 <http://eiga.com/movie/77834/> 『カルテット!人生のオペラハウス』作品情報 <http://eiga.com/movie/77846/>(C)2012 Jackie & JJ International Limited,
Huayi Brothers Media Corporation and Emperor Film Production Company Limited
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大和田伸也が65歳初監督 故郷・福井を舞台にしたヒューマンドラマ『恐竜を掘ろう』
毎週新作映画を紹介する当コーナーでは今回、劇場公開こそ小規模だが、予算などさまざまな制約の中、アイデアと工夫によってユニークな作品に仕上がった2本を取り上げたい(いずれも3月30日公開)。 1本目の『恐竜を掘ろう』は、松方弘樹が珍しく穏やかで少しさびしげな役で主演し、内山理名、鈴木砂羽、ガッツ石松らが共演したヒューマンドラマ。福井市で美術店を営む草介(松方)は、経済的に成功し、仲間と夜な夜な飲み歩く日々を過ごしながらも、空虚な思いを抱えていた。ある日、いつもショーウィンドウ越しに店をのぞいていた少女(小野花梨)から手紙を受け取った草介は、気になって少女の家を訪問。だが、数日前から行く先を告げず家を出ていた少女はその頃、恐竜の卵の化石を発掘することが夢だと語る青年(入江甚儀)に出会っていた。 福井県敦賀市出身の俳優・大和田伸也が故郷の福井を舞台に撮り上げた初監督作品。松方弘樹がにわか探偵になって少ない手がかりで少女の家を探し当てたり、スナックで働く顔見知りの若い女性(内山理名)の車にこっそり乗り込んで自宅を突き止めたりと、見方によってはかなり危ない行動をとるが、テレビのバラエティ番組でおなじみの「オジサンのかわいらしさ」でなんとなく納得させられてしまう。ユーモラスなタッチとヒューマンなストーリー展開が十分になじんでいないところもあるものの、ある種のぎこちなさ、初々しさも味わいではある。山奥に突如出現する巨大な「ハコモノ」の恐竜博物館や、夜ごとスナックに通う男たちがろくに働いていない(ように見える)描写に、原発立地の事情がそれとなく伝わってくるが、現実を見据えた上で内なる希望を「掘り起こそう」という監督からのポジティブなメッセージととらえたい。 もう1本の『UFO 侵略』は、英国発の低予算SFアクションながら、ジャン=クロード・ヴァン・ダムが重要な役どころで格闘アクションも披露した注目作。ある朝マイケルは、出会ったばかりの恋人キャリーや同居人たちと目覚めると、町一帯で停電が発生し、携帯電話もつながらない。住民らの騒然とした様子に気づいて外に出た彼らは、上空を覆う巨大なUFOを目撃。マイケルたちは車を走らせ、宇宙人の襲来を予見し長年準備してきたせいで変人扱いされていた元特殊部隊兵士の叔父ジョージ(バン=ダム)に助けを求める。 マイケル役にピアース・ブロスナンの息子ショーン・ブロスナン、キャリー役にバン=ダムの娘ビアンカ・ブリーと、二世俳優の共演でも注目。特にビアンカ・ブリーは、端正な顔立ちとグラマラスな肢体に似合わずハードなアクションで「父娘対決」も熱演しており、今後の活躍に期待したいところ。おそらくは予算の都合上で、バン=ダムの出演シーンの多くを別撮りして編集でつないでいるのがバレバレだが、むしろ開き直ったかのような構成が潔い。宇宙船などの視覚効果も「今どきこんな……」とあきれるほどチープだが、そうしたツッコミどころも含め広い心で楽しめるB級SFのファンにおすすめだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『恐竜を掘ろう』作品情報 <http://eiga.com/movie/77803/> 『UFO 侵略』作品情報 <http://eiga.com/movie/78233/>(C)『恐竜を掘ろう』製作委員会









