飲んべえオッサンたちが大奮闘『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』

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(C)Focus Features
 今週取り上げる最新映画2作品は、主人公らが世界の危機に立ち向かうというのが共通のテーマ。とはいえ、片や飲んべえのオッサンたちが奮闘する姿を英国らしいシニカルなユーモアを交えて描くコメディ、片やアメリカの名を冠した王道のアメコミヒーローが巨大な陰謀と戦うアクション大作と、それぞれのテイストは大いに異なっている。  『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(4月12日公開)は、『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(07)のエドガー・ライト監督と主演サイモン・ペッグ&ニック・フロストの3人組が、母国イギリスを舞台に3度目のコラボで描くSFコメディ。約20年前、一晩でパブ12軒をハシゴするチャレンジの途中で挫折したゲイリー(ペッグ)は、再挑戦するため当時の仲間アンディ(フロスト)ら4人を招集し、故郷の町に舞い戻る。5人はハシゴの途中で、様子がおかしい住民らに襲撃され、異様な光景を目の当たりにするが、困惑しながらも12軒目の「ワールズ・エンド」を目指して飲み続ける。  住民たちがエイリアンに乗っ取られていた――そんな侵略SFの定番の設定をなぞりつつ、人類の命運を握るのがくたびれた酒飲み中年たちという点が、ユニークかつ最高にバカバカしい。前2作と同様、随所に盛り込まれたジャンル映画のオマージュやパロディを見つけるのも楽しいし、エイリアンに操られた住民たちからの必死の逃走、めまぐるしい大乱闘も笑いを誘う。コミカルな要素がはじけるストーリーの中で、グローバル資本主義とインターネット普及によるコミュニティの画一化や個人の疎外感への風刺という、ビターな隠し味が効いている。  『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』(4月19日公開、2D/3D上映)は、マーベルコミック原作のヒーローアクション『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(11)の続編で、引き続きクリス・エバンスが主役を演じる。国際平和維持組織「シールド」に属するヒーロー軍団「アベンジャーズ」のメンバーとして、ブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)やニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)らとともに任務に当たっていたキャプテン・アメリカ。だが3人は、シールド内部で全人類を監視する計画が動き出すと同時に、組織の内外から命を狙われ、誰が真の敵なのか分からないまま逃亡者となる。やがてキャプテン・アメリカは、最強の暗殺者ウィンター・ソルジャーに追いつめられるが、マスクが外れてあらわになった敵の素顔に衝撃を受ける。  物語は、マーベルヒーローが集結した超大作『アベンジャーズ』から2年後という設定なので、同作とシリーズ第1作は事前に見ておきたい。『アイアンマン』シリーズや『マイティ・ソー』シリーズがコミカルな要素を強める中、今作はシリアス路線に舵を切り、比較的大人向けのアクション映画となった。日本人にとってやや馴染みの薄いキャプテン・アメリカの内面を丁寧に描く場面も適切に配され、アクションシーンと緩急がつき相乗効果を生んでいる。格闘術や銃火器を巧みに操るクールなスカジョに加え、シールド副長官役のコビー・スマルダーズ、エージェント役のエミリー・バンキャンプらタイプの異なる美女3人の競演も嬉しいポイントだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』作品情報 <http://eiga.com/movie/78979/> 『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』作品情報 <http://eiga.com/movie/77787/>

スタローンとデ・ニーロが夢の共演! 異色のスポ根コメディ『リベンジ・マッチ』

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(C)2014 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
 今週取り上げる新作映画は、スタローンとデ・ニーロが初老ボクサー役で夢の競演を果たした異色のスポ根コメディと、美少女2人の大胆な性愛描写が話題を呼び、昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞を獲得した愛のドラマ。一度きりの人生、型破りでもやりたいことや好きなものを追求して生きることの大切さを教えてくれる2作品だ(いずれも公開中)。  『リベンジ・マッチ』は、映画史に残る傑作ボクシング映画『ロッキー』と『レイジング・ブル』、それぞれに主演したシルベスター・スタローンとロバート・デ・ニーロがリング上で因縁の対決を演じる娯楽作。80年代のボクシング界でライバル同士だったレイザー(スタローン)とキッド(デ・ニーロ)は、1勝1敗後の第3戦直前にレイザーが突然引退し、以来2人は犬猿の仲に。30年がたち、造船所で働くレイザーと、商売を営むキッドのもとに、プロモーターから遺恨を晴らす試合のオファーが舞い込む。レイザーは旧友の老トレーナーに、キッドは疎遠だった息子に鍛え直され、ついに対戦当日を迎える。  監督のピーター・シーガルは、『裸の銃を持つ男 PART33 1/3 最後の侮辱』(94)、『ゲット スマート』(08)などコメディを得意とし、本作でも数々の映画の引用、パロディでファンを楽しませる。序盤のゲーム制作場面で、モーションキャプチャー収録のはずがリアルな乱闘になってしまう展開は、「本当に面白いアクションは、CGなんかじゃなく生のファイトなんだ」と訴えているかのよう。老トレーナーとの絆、離れていた家族との葛藤と和解のサブストーリーも巧みにからませ、終盤の胸アツな決戦をドラマチックに盛り上げる。本編が終わったあとも、慌てて席を立たないように。エンドロールで超有名な2人のカメオ出演があり、ヘビー級の映画ネタギャグが炸裂する。  『アデル、ブルーは熱い色』(R18+)は、フランスの新進女優アデル・エグザルコプロスと、「マリー・アントワネットに別れをつげて」(12)のレア・セドゥーが、運命的な恋に落ちた2人を演じる愛と人生の物語。文学を愛する高校生アデルは、上級生の男子とのデートに向かう途中、青く髪を染めた美大生エマと目が合い、心を射抜かれる。ほどなくバーで再会した2人は、激しく愛し合うようになる。数年後、教師になったアデルは、画家のエマと同棲生活を送っているが、2人の気持ちは次第にすれ違ってゆく。  フランスの人気コミックを原作に、アラブ系フランス人のアブデラティフ・ケシシュ監督が映画化。2013年・第66回カンヌ国際映画祭では審査委員長のスティーブン・スピルバーグに絶賛され、監督と主演女優2人の3人にパルムドールが贈られるというカンヌ史上初の快挙を達成した。美しく切なく、痛みを伴う愛の行方を、あえて“メロドラマ”にせず、2人を静かに観察するかのような演出で描く。作品世界の中で鳴っている音楽(店内やイベントや路上パフォーマンスなど)を除くとBGMが一切使用されず、登場人物の緊張や興奮が、息づかいやあえぎ声を通じて生々しく伝わってくる。愛の交歓シーンでは、愛し合っている2人に感情移入して高揚する気分と、のぞき見のような背徳感とが混じり合い、複雑な感覚を味わうはず。官能的な映像の魅力もさることながら、愛の意味に哲学を重ね合わせることで、世界観に奥行きが出ている。多民族社会、格差、性的マイノリティーへの偏見と自由化運動など、フランスの今が垣間見られる作品でもある。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『リベンジ・マッチ』作品情報 <http://eiga.com/movie/78100/> 『アデル、ブルーは熱い色』作品情報 <http://eiga.com/movie/79242/>

日本社会が抱える闇を突きつける、井上真央×綾野剛『白ゆき姫殺人事件』

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(C)2014『白ゆき姫殺人事件』製作委員会(C)湊かなえ/集英社
 今週取り上げる最新映画は、話題の小説を原作とし、人気若手俳優を配した邦画2作品。原作の味わいを再現しつつ、映像ならではの魅力が加わった好作だ。  『白ゆき姫殺人事件』(3月29日公開)は、『告白』の湊かなえの小説を、『アヒルと鴨のコインロッカー』の中村義洋監督、井上真央主演で映画化したサスペンス。日の出化粧品の美人社員・三木典子(菜々緒)が惨殺される事件が起こり、地味な同僚の城野美姫(井上)に疑惑の目が向けられる。ワイドショーのディレクター赤星(綾野剛)は、美姫の同僚や同級生、故郷の家族や住民を取材し、美姫に関する驚くべき証言をテレビで流す。美姫の過去が明らかになるにつれ報道は過熱し、Twitter上で飛び交うウワサも関係者らを翻ろうしてゆく。  地味な外見に多くを秘めた表情の主人公を、井上真央が好演。物語の進展に伴うキャラクターの複雑な変化も見事に体現している。クールな印象が強い綾野剛も、今回は取材で得た情報をツイートしまくる軽薄なテレビマンの役が意外なほどハマった。貫地谷しほり、小野恵令奈、谷村美月、染谷将太ほか共演陣も豪華。伊坂幸太郎の小説の映画化を数多く手がけた中村監督らしく、謎解きの鮮やかな語り口にさりげなくユーモアを添える演出が本作でも光る。子ども時代のいじめからネット上の誹謗中傷まで、日本の社会が抱える闇をあらためて思い知らされるが、ひとすじの希望を示すラストに救われる。  『大人ドロップ』(4月4日公開)は、今年6本の出演作が公開予定の若手実力派・池松壮亮が主演、ヒロイン役に『桐島、部活やめるってよ』の橋本愛で描く青春映画。高校3年生の由(池松)は親友のハジメ(前野朋哉)に頼まれ、彼の片想いの同級生・杏(橋本)とのデートをセッティングしようとして、杏を怒らせてしまう。夏休みに入り、杏が学校をやめて引越すと聞き、モヤモヤした気持ちを抱えて日々を過ごす由。同級生のハル(小林涼子)からは年上の彼氏との恋愛相談を持ち掛けられ、周囲が大人になろうとしていることに焦りを感じ始めるが、杏に会いに行くことを決意し旅に出る。  原作は樋口直哉の同名小説で、監督・脚本は『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』の飯塚健。すでに社会人になった主人公が高校3年のひと夏を回想する体裁になっており、昨今の基準からするとやや奥手な高校生にも感じられるが、大人の観客が自分の青春時代と重ね合わせるにはほどよいリアルさでもある。高校時代、由と杏が出会った小学生時代、そして現在と行き来する構成が効果的で、はっとさせられる印象的なシーンもいくつか。池松壮亮の自然体のたたずまいが素晴らしい。登場人物らのもどかしさ、焦り、衝動が見る者の胸に迫り、忘れかけていた過去の記憶や感情を思い出させてくれるはずだ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『白ゆき姫殺人事件』作品情報 <http://eiga.com/movie/78960/> 『大人ドロップ』作品情報 <http://eiga.com/movie/79311/>

爽快なアドベンチャーを疑似体験! ベン・スティラー監督・主演、人生賛歌の快作『LIFE!』

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(C) 2014 Twentieth Century Fox
 今週紹介する最新映画は、誠実だが地味な会社員が人生初の大冒険に踏み出すヒューマンドラマと、敵地で孤立した特殊部隊員らの死闘を描く実録ミリタリーアクション。前者は爽快なアドベンチャーを、後者は極限のサバイバルをそれぞれ観客に疑似体験させ、「生」の意味をあらためて考えさせてくれる(いずれも公開中)。  『LIFE!』は、1939年に短編小説が発表され47年に映画化もされた『虹をつかむ男』をベースに、ベン・スティラーの監督・主演で現代のストーリーとして再映画化したドラマ。アメリカのグラフ誌「LIFE」の写真管理部で、臆病で不器用なウォルター(スティラー)は実直に働き、変化のない日々を過ごしてきた。彼の唯一の楽しみは、単調な現実から逃避して刺激的な空想にふけること。そんなある日、「LIFE」最終号の表紙を飾る大切な写真が行方不明になり、ウォルターは一大決心して冒険カメラマンのショーン(ショーン・ペン)を探す困難な旅に出る。  組織の中で目立たない仕事をコツコツとこなし、どこか報われない思いを抱きつつ、勇気を出して人生を変えたいと願う……そんな主人公に共感する人も多いはず。ウォルターの視点で現実が継ぎ目なく空想の世界に移行する演出が斬新で、VFXの活用もひねりが効いている。アイスランド、ヒマラヤと、ウォルターがショーンを追って旅する辺境の絶景も文句なく素晴らしい。めくるめくスペクタクルを堪能したあとで、身近な日常をしみじみ愛(いと)おしいと実感させてくれる、まさに人生賛歌の快作だ。  『ローン・サバイバー』は、米海軍特殊部隊ネイビーシールズ創設以来最大の悲劇とされる作戦を、マーク・ウォールバーグ主演で映画化した軍事アクション。2005年6月、マーカス(ウォールバーグ)ら4人のシールズ隊員は、アフガニスタンの山岳地帯でタリバン兵のキャンプを偵察する任務に赴く。だが地元のヤギ飼いに遭遇し、民間人殺害を禁じる軍規に従い彼らを解放したことで、200人を超すタリバン兵の攻撃にさらされる。  極限の状況を生き延び、奇跡の生還を果たした唯一の隊員が執筆したノンフィクションが原作。監督は、『キングタム 見えざる敵』(07)、『バトルシップ』(12)など、テロや戦闘をめぐる人間ドラマとミリタリー系アクション描写を得意とするピーター・バーグ。山岳での銃撃戦の迫力は当然だが、主人公らが岩場の急斜面を体中ぶつけながら転げ落ちるシーンが異様なリアルさで描かれ、見ているほうまで痛みが伝わるかのような衝撃だ。序盤には軍の求人CMかと思うほど、新兵らが過酷な訓練でしごかれ精鋭部隊を目指す様子が相当な尺で描かれるが、このパートによって、自らの生存本能をも超克するシールズ4人の絆が説得力を持つとも言える。アフガニスタンの人々を画一的に描かず、さまざまな主義や信念を持って生きている、観客と同じ人間だということを伝えている点も見逃せない。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 「LIFE!」作品情報 「ローン・サバイバー」作品情報

銀河最凶のダークヒーローが宇宙を舞台に大暴れ!『リディック ギャラクシー・バトル』

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(c) 2013 RIDDICK PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved./配給:プレシディオ/公式サイト<http://www.riddick-movie.jp/>
 今週取り上げる最新映画は、琵琶湖のほとりで脱力気味に繰り広げられる異能者たちの戦いを描く邦画と、銀河の果てでタフなアンチヒーローが臨む、サバイバルと死闘を活写するハリウッド製SFアクション。しばし現実を離れてファンタジーに浸り、肩の力を抜いて気分転換をするのに手頃な娯楽作2本だ(いずれも3月8日公開)。  『偉大なる、しゅららぼん』は、人気作家・万城目学による同名小説の映画化作品。琵琶湖畔の町・石走(いわばしり)に現存する城に、代々不思議な力を伝承する日出一族が暮らしていた。分家の息子・涼介(岡田将生)は、高校入学を機に城に居候し、一族の掟に従って力の修行を始める。日出家の跡取りで最強の使い手という高校生・淡十郎(濱田岳)からは従者扱いされ、振り回される涼介。やがて淡十郎が学校長の娘・沙月(大野いと)に恋したことで、別の力を操るライバル一族との因縁に火がつき、町を巻き込む騒動へと発展していく。  『鴨川ホルモー』『プリンセス・トヨトミ』の原作でも知られる万城目学の小説群は、現代の関西の都市を舞台に、時代がかった非日常が浸食してくる、「マキメワールド」とも呼ばれる独創的な展開が特徴。本作でも、今どきの普通の若者が、くせ者ぞろいの一族と自らが秘めた特殊能力に翻弄されながら成長してゆく姿がユーモラスに軽やかに描かれ、岡田将生の大真面目な演技も笑いを誘う。年齢不詳な高校生役の濱田岳が味わい深く、深田恭子、貫地谷しほり、佐野史郎ら個性派共演陣も作品世界に見事にハマった。メガホンを取ったのは新鋭の水落豊監督。  『リディック ギャラクシー・バトル』(R15+)は、『ピッチブラック』(00)、『リディック』(04)に続きヴィン・ディーゼルがダークヒーロー、リディックに扮するSFアクションシリーズ第3作。宇宙を統べる一族の王座に就いたリディックだったが、重臣らの反乱に遭い、灼熱の荒野が広がる惑星に置き去りにされてしまう。凶悪なエイリアンが生息する星から脱出するため、リディックは宇宙に向けてビーコンを発し、自分の首を狙う賞金稼ぎを惑星のシェルターに呼び寄せる。手を組んだ2組の賞金稼ぎとリディックの死闘が始まった時、嵐とともエイリアンの大群がシェルターに迫る。  メガホンを取ったデビッド・トゥーヒーは、シリーズ3作のほか、『アライバル 侵略者』(96)の監督、『ウォーターワールド』(95)、『クローン』(01)の脚本も手がけ、SF映画ファンには知られた存在。シンプルな原題“Riddick”に対し、「銀河の戦い」を足した邦題はやや盛りすぎ。ディーゼルにとって、1作目が出世作になったことから、今作のため自宅を抵当に入れて製作資金を捻出し、ファンの期待に応えたという裏話が泣かせる。それほど愛着のあるキャラクターを、マッチョな肉体と機敏なアクションで熱演するディーゼルの“男気”に、日本の観客がどれだけ応えられるか。過激なバイオレンス描写を含むが、そんなB級テイストも合わせて楽しみたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『偉大なる、しゅららぼん』作品情報 <http://eiga.com/movie/78528/> 『リディック ギャラクシー・バトル』作品情報 <http://eiga.com/movie/79161/>

剥き出しの性欲とセックスを嘲笑する私たちが、突き落とされる『愛の渦』の場所

<p>「着衣時間、たった18分半。」</p> <p> 3月1日(土)から公開の映画『愛の渦』は、このキャッチコピー通り、役者陣がほぼ裸の状態で展開していく映画である。原作は、人気劇作家・三浦大輔が主催する演劇ユニット「ポツドール」の代表作で、2006年の第50回岸田國士戯曲賞受賞作。「乱交パーティーに集った男女」を描いた異色の舞台劇だ。</p>

3年ぶりにクロエ・モレッツが大暴れ!『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』

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(C)2014『東京難民』製作委員会/配給:ファントム・フィルム
 今週紹介する最新映画は、東京に暮らす普通の大学生がホームレスへと転落していく姿を描くシリアスなドラマと、ニューヨークのオタク高校生がヒーローとして悪と戦うアクションコメディ。設定も展開も対照的な2作品だが、問題と矛盾に満ちた現代の社会とどう向き合うべきか、エンタテインメントを通じて問いかけるという共通点も見逃せない(どちらも公開中)。  『東京難民』(R15+)は、福澤徹三の同名小説を、『半落ち』(03)、『夕凪の街 桜の国』(07)など社会派エンタテインメントで知られる佐々部清監督が映画化した衝撃作。ごく普通の大学生活を送っていた修(中村蒼)は、借金を抱えた父親の失踪を契機に、授業料未払いで大学を除籍され、家賃滞納でアパートも追い出される。ネットカフェに泊まりながら日払いバイトで食いつなぐが、ある日、だまされて入ったホストクラブで働くことに。華やかなホストの裏側を知った修は無傷で抜け出すことができず、ついにはホームレスにまで転落してしまう。  軽薄な大学生、染まりきれないホスト、さらに劣悪な環境に置かれながらも誠実に生きようとする主人公・修を、中村蒼が自然な雰囲気で好演。ホストクラブの恐い店長に扮する金子ノブアキ(人気バンドRIZEのドラマーでもある)の存在感もいいが、出色はホストの修に貢ぎやがてソープ嬢に身を落とす茜を演じた大塚千弘。世間的には妹の山下リオのほうが有名かもしれないが、ヌード、ベッドシーンをいとわず、切なくも慈愛を感じさせる本作のヒロイン役でファンを一気に増やすことだろう。ネットカフェ難民、治験バイト、ホストが寝泊まりするタコ部屋、日雇い労働者を食い物にする貧困ビジネスなど、修がたどる道はさながら現代の“地獄めぐり”のようだが、ラストに残る温かさと希望がこれからの日本に広がることを信じたい。  もう1本の『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』(R15+)は、アメコミ好きのオタク高校生が自らヒーローとして立ち上がる姿を描いたマーク・ミラー原作のコミックを映画化し、世界的ヒットを記録した『キック・アス』の続編。キック・アス、ヒット・ガールというヒーローの姿を捨て、普通の学園生活を送っていたデイブ(アーロン・テイラー=ジョンソン)とミンディ(クロエ・グレース・モレッツ)。しかし、やはりヒーローしかないと思い直したデイブは、キック・アスの活躍に触発された元ギャングのスターズ・アンド・ストライク大佐(ジム・キャリー)とともにヒーローチーム「ジャスティス・フォーエバー」を結成。そんな彼らの前に、キック・アスに父親を殺されたレッド・ミストが新たにマザー・ファッカーを名乗り、莫大な遺産で集めた殺し屋軍団を率いて姿を現す。  キュートな少女が超絶な殺人アクションと下品なセリフを決めまくるミスマッチな魅力が全開の前作で人気爆発、メジャー作品から出演依頼が殺到したクロエ・モレッツも今や17歳。スティーブン・キング原作の主演ホラー『キャリー』のヒロインと同様、同級生に意地悪される女子高生ライフの描写もあるが、ある意味、キャリーの念力以上に破壊的でお下劣なミンディの復讐は爆笑を誘う。監督は前作のマシュー・ボーンから、『ネバー・バックダウン』(08)のジェフ・ワドロウに交代。1作目の要素を尊重しつつ、デイブの葛藤と成長を丁寧に描き、終盤の軍団同士の激突も派手に見せてくれるが、残念ながら前作を超える傑作の域には到達していない。とはいえ、完結編とされる第3作での飛躍を期待しつつ、キック・アスとヒット・ガールの活躍ぶりをぜひ劇場の大スクリーンで熱く応援していただきたい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『東京難民』作品情報 <http://eiga.com/movie/78608/> 『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』作品情報 <http://eiga.com/movie/79094/>

伝説のCIA捜査官“ジャック・ライアン”新シリーズ始動!『エージェント:ライアン』

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Photo Credit: Anatoliy Vorobev /(c) MMXIII Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved./2月14日(金)先行公開、2月15日(土)全国公開
 今週取り上げる最新映画は、リブート版『スター・トレック』シリーズのカーク船長役でおなじみ、クリス・パインがCIAエージェントに扮するスパイアクションと、モデル出身の新星マリーヌ・バクトが惜しげもなく裸身をさらす、美しくも切ないフランス製青春ドラマ。若きスターたちのフレッシュな輝きが楽しめる2作品だ(いずれも公開中)。  『エージェント:ライアン』は、米ベストセラー作家トム・クランシーが手がけた人気連作で、過去に4度映画化された“ジャック・ライアン”シリーズの最新作。表向きはウォール街の投資銀行に勤めるライアン(パイン)は、実は経済テロ阻止を目的とするCIAアナリストとして活動している。ある日、モスクワの投資会社の不審な動きを察知したライアンは、上官ハーパー(ケビン・コスナー)の命令でモスクワへ。スパイ経験ゼロのライアンだが、ハーパーと婚約者キャシー(キーラ・ナイトレイ)に助けられながら、持ち前の情報分析力と行動力で困難なミッションを遂行していく。  英国が誇る名優ケネス・ブラナーが監督を務め、自らもテロを首謀する悪役として出演。コスナーとともに、重厚な演技で若い主役を巧みにサポートしている。過去の映画化作品では敵とのインテリジェントな攻防が見どころだったが、本作はむしろ『007』や『ミッション:インポッシブル』といった人気スパイシリーズにならってアクションを主眼に置いた印象。とはいえ、敵オフィスに侵入しチームワークでデータを盗み出すシーンなど、スタイリッシュな演出も随所に光る。スパイの訓練を積んでいないライアンが格闘やカーチェイスで活躍しまくるなど、少々ご都合主義的な展開が気になるが、新シリーズ始動という位置づけなので、続編以降でより説得力あるヒーローに成長することを期待つつ見守りたい。  『17歳』(R18+)は、『スイミング・プール』(2003)のフランソワ・オゾン監督が、少女から大人の女へとうつろう17歳の性を描いた作品。裕福な家庭に育ちパリの名門高校に通う17歳のイザベルは、家族と訪れたリゾート地のビーチで初体験を済ませる。パリに戻り、学校帰りに男から声をかけられたことがきっかけで、不特定多数の男たちを相手に売春を重ねるようになったイザベル。だがある日、ホテルのベッドで初老の常連客と行為の最中、事件が起こる。  主役を務めたマリーヌ・バクトは、イヴ・サンローランのCMモデルで注目を集めた、凛々しい顔立ちの正当派美女。長編初主演の本作で、ぜい肉のない伸びやかな肢体のフルヌードと大胆なベッドシーンを存分に披露。理由なき売春行為に対するオゾン監督流の問題提起への答えは、観客に委ねられている。『スイミング・プール』にも出演したベテラン女優シャーロット・ランプリングの存在感、美少女との残酷な対比も見逃せない。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『エージェント:ライアン』作品情報 <http://eiga.com/movie/77992/> 『17歳』作品情報 <http://eiga.com/movie/79373/>

2人の天才F1ドライバーが織り成す、人生ドラマ『ラッシュ プライドと友情』

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(C)2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.ALL RIGHTS RESERVED.
 今週紹介する最新映画は、極限の世界で命を賭して闘う男たちを描く、骨太でスリル満点の2作品。主人公らと一緒に体の芯からアツくなれる、この季節にうってつけの娯楽作だ(いずれも公開中)。  『ラッシュ プライドと友情』は、『ビューティフル・マインド』(01)のロン・ハワード監督が、2人の天才F1ドライバー、ジェームズ・ハントとニキ・ラウダの戦いと絆を描くヒューマンドラマ。大胆な走りが身上で享楽的な人生を満喫するハント(クリス・ヘムズワース)と、メカに精通し緻密なコース攻略を追求するストイックなラウダ(ダニエル・ブリュール)は、F3での初対決以来、互いに対抗心を燃やす。先にF1に移りフェラーリのチームで1975年の世界選手権を制したラウダに対し、ハントは76年、マクラーレンのドライバーとして挑む。シーズン中盤まで快調に首位を走るラウダだったが、悪天候のドイツGPで大事故に遭いひん死の重傷を負う。奇跡的に6週間で復帰したラウダと、わずかなポイント差で迫るハント、2人の優勝争いは最終戦の日本GPに持ち越される。  ハワード監督作品には『アポロ13』(95)、『フロスト×ニクソン』(08)など、実話に基づく傑作ドラマが多い。本作でも、生き方も走りも好対照なライバル同士、ハントの主張で強行されたレースでラウダが重傷といった具合に、創作以上にドラマチックな2人の関係を印象的に再現してみせた。レース場面には1シーンに30台以上のカメラが駆使され、地面すれすれを時速300キロで疾走するF1ドライバーの世界を疑似体験させてくれる。好敵手2人が織り成す人生のドラマと大迫力のレースシーンが見事に融合した本作、車マニアに限らず広く映画ファンにオススメしたい。  もう1本の『スノーピアサー』は、『殺人の追憶』(03)、『グエムル 漢江の怪物』(06)で知られる韓国の鬼才ポン・ジュノ監督が、欧米のキャストで描く近未来SFエンタテインメント。2014年、地球温暖化を防止するため、各国の上空で薬品を散布したことで、地球上は逆に寒冷化してしまい氷河期を迎える。それから17年後、わずかな生存者らは「スノーピアサー」と呼ばれる列車の中で暮らし、地上を移動し続けていた。列車の前方で贅沢な生活を送る一握りの上流階級に対し、後方車両の劣悪な環境に押し込められる貧しい人々。最後尾車両で革命の時機を待っていたカーティス(クリス・エバンス)はある日、仲間と決起して前方車両を目指すが……。  ポン・ジュノ監督にとっては初の英語作品で、原作はフランスのグラフィックノベル。凍てついた地球上のレールを保守の人員もなく十数年も走り続ける列車なんて、鉄ちゃんでなくても設定に疑問を抱きそうだが、劇中で一応の説明はされている。細かいことは気にせず、弾丸列車という閉環境の中でダイナミックに展開する下克上のドラマとアクションを楽しもう。エド・ハリスらハリウッドスターの出演も話題で、とりわけ、本来クールな美女のティルダ・スウィントンが別人と見まがうほどの特殊メイクで悪役を怪演しているのは必見。余談めくが、本作主演のクリス・エバンスはキャプテン・アメリカ役で、またクリス・ヘムズワースはソー役として『アベンジャーズ』(12)で共演しており、マーベルヒーローに扮する若手スター2人が活躍の場を広げている例として、今週取り上げた2作品を見比べるのも一興だ。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ラッシュ プライドと友情』作品情報 <http://eiga.com/movie/78315/> 「スノーピアサー」作品情報 <http://eiga.com/movie/78218/>

キャリア史上最高にホットで過激なディカプリオに大興奮『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

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 今週取り上げる最新映画2本は、実話ベースとフィクションの違いはあれど、どちらも人並み外れた“パワー”の持ち主が主人公。スクリーンから飛び出すほどの壮大なハジケっぷりに、唖然としつつ興奮し、勇気と活力をもらえるはずだ。  『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(公開中、R18+)は、マーティン・スコセッシ監督がレオナルド・ディカプリオと組み、実在の株式ブローカーの栄光と転落をセンセーショナルに描いたドラマ。学歴も金もコネもないが野心だけは人一倍のジョーダンは、22歳でウォール街に飛び込むも、正規ブローカーの資格を得た途端に株価大暴落の余波で失職。くじけないジョーダンは、ペニー株(ボロ株)の仕事をきっかけに、巧みな話術で着々と成り上がる。26歳で証券会社を設立し、素人の創業仲間たちにノウハウを伝授して急成長、年収は49億円に。酒、ドラッグ、高級コールガールの豪遊をエスカレートさせるジョーダンだったが、政府機関から目をつけられ、やがて破滅を迎える。  ディカプリオとスコセッシ監督のタッグは実に5度目で、その中の『ディパーテッド』はアカデミー賞で作品賞を含む4部門を獲得。今作でも同賞主要5部門にノミネートされている。ウォール街の若きカリスマに扮したディカプリオは、部下を鼓舞するエネルギッシュなスピーチ、フルヌードでのベッドシーン、バッドトリップしてはいずり回る場面など、キャリア史上最高にホットで過激な演技を披露。タガが外れた金融資本主義を体現する破滅型キャラクターを、シニカルな笑いも交えて提示するスコセッシ監督の、71歳にして枯れるどころかますますスキャンダラスなテーマにチャレンジする創作意欲にも圧倒される。  『マイティ・ソー ダーク・ワールド』(公開中、2D/3D上映)は、マーベル・コミックのスーパーヒーローを映画化した『マイティ・ソー』の続編。ロンドンで原因不明の重力異常が発生し、調査に訪れた天文物理学者のジェーン(ナタリー・ポートマン)は、地球滅亡の鍵となる「ダーク・エルフ」の力を宿してしまう。恋人のジェーンを救うため、ソー(クリス・ヘムズワース)は彼女を連れて神々の国アスガルドに戻る。だが、そのせいで故郷を危機に陥れてしまったソーは、弟で宿敵でもあるロキ(トム・ヒドルストン)に協力を求める。  マーベルの人気ヒーローたちが集結し、世界的大ヒットを記録した『アベンジャーズ』から1年後が舞台。アイアンマン、ハルクといったヒーロー軍団を苦戦させた敵キャラのロキが、今作ではソーと共闘するという意外な展開がファンを楽しませてくれる。前作から出番は減ったものの、浅野忠信も引き続きアスガルドの戦士ホーガン役でアクションを披露。一方で、「キミに逢えたら!」のカット・デニングスは、色っぽいボケキャラの助手役で前作より出演シーンが大増量。ともすると人類が置いてけぼりになりかねない神々の壮大すぎる戦いの合間に、ほどよい人肌感で笑いと恋愛要素を提供している点がうれしい。 (文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉) 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』作品情報 <http://eiga.com/movie/78790/> 『マイティ・ソー ダーク・ワールド』作品情報 <http://eiga.com/movie/77785/>