昨日(3月10日)、『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)の最終話が放送された。
多くの視聴者の予想通り、柊一颯(菅田将暉)が起こした今回の騒動はSNSに警鐘を鳴らすことが目的だった。
澪奈のさくらへの別れが手紙だった理由
景山澪奈(上白石萌歌)が自殺した日、茅野さくら(永野芽郁)はビルの屋上で澪奈と会っていた。さくらはクラスでいじめを受ける澪奈を見て見ぬふりし、皆と同じように無視したことを謝罪した。
ちょうどそのとき携帯が鳴り、さくらは会話を中断。そして、スマホを手に取った。すると、澪奈の耳にだけ「ドーピングの景山澪奈だ」「悲劇のヒロイン気取ってんじゃねえよ」という声が届く。
「やめて……。なんでそんなこと言うの!? なんで私を責めるの!?」(澪奈)
スマホに文字を打ち込むさくらを見て、様子がおかしくなる澪奈。さくらが味方だとはわかっている。なのに、さくらが敵に見えてしまう。SNSで誹謗中傷にさらされ、澪奈の身には幻覚や幻聴が起こるようになっていた。
「ダメなの。皆が敵に見えて、そんな風に思う自分が嫌で、たまらなく嫌で。だからもう、無理なんだ」(澪奈)
澪奈は屋上から飛び降り、自らの命を絶った。
第1話で「もう二度と話しかけないで。さくらとは友達になれない」と、澪奈から手紙をもらったことをさくらは明かした。それを聞いた柊は「なんで手紙だったんだろうな?」と質問した。もう、澪奈はメールも打てないくらいに追い詰められていたのだ。
SNSで標的にされ、澪奈のように心の病気になった人は現実でも大勢いるはずだ。
郡司(椎名桔平)を人質に取り、校舎の屋上に上がった柊は、「すべての真相をお話する」とSNSでライブ中継を行った。
まず、澪奈が亡くなった当日にビルから柊が出てきた映像について。これは相良孝彦(矢島健一)協力のもとに柊が製作したフェイク動画だった。その事実を知り、「俺たちをコケにしたってことかぁぁぁ!」「ワレ、何がしたいんじゃボケッ!」と怒りの書き込みがSNSで相次いだ。
「ハハハッ! 混乱してるねぇ! なのに、けなすことは忘れない。これだよ、これ! これが、俺が立てこもった最大の理由だよ」(柊)
フェイク動画を使い状況を二転三転させ、いかに不確かな情報に踊らされているかをネット民に自覚させる。これが柊の狙いだ。柊を凶悪犯扱いし、その後にヒーロー扱いし、武智大和(田辺誠一)に矛先を変え、再び柊を糾弾。確かに彼らは信憑性のない情報を元にたびたび態度を翻し、その都度、罵詈雑言を浴びせていた。
「これを娯楽としか思っていないあんたに言ってんだよ! おい! そこの!! 周りに流されて意見を合わせることしかできない、お前に言ってんだよ!」(柊)
マインドボイスに向き合う柊の視線が、視聴者の視線と合っている。「お前らに言ってんだ!」と叫ぶ柊。彼は、ドラマを見る我々に直接伝えようとしている。明らかに、私たちに向けての言葉だった。
「お前ら、景山の何を知ってたんだよ? 何にも知らねえだろ! 会ったことねえだろ、話したこともねえだろ! 大して知りもしないのに、なんであんなに叩けるんだよ? 『ウザイ』『キモい』『死ね』、よくもまぁそんなゲスなワードがポンポン出てくるもんだわ、恥ずかしい……。それだよ、それ! そのお前の自覚のない悪意が、景山澪奈を殺したんだよ!」
「自分の親や、友だちに面と向かって言えない言葉を、見ず知らずの他人にぶつけんなよ。お前のストレスの発散で他人の心をえぐるなよ」
「右にならって吐いた何気ない一言が、相手を深く傷つけるかもしれない。独りよがりに、偏った正義感が束になることでいとも簡単に人の命を奪えるかもしれないってことを、そこにいる君に! これを見ているあなたに! 一人一人の胸に刻んでほしいんだよ。他人に同調するより、他人を貶すより、まずは自分を律して、磨いて作っていくことが大切なんじゃないのか?」
こんなに熱弁を振るったとしても、ネット(私たち)はきっと変わらない。このメッセージを受け止め「感動した」と言っている人も、きっと数日後には忘れてしまう。いじめがなくならないのと同じようにゼロ。それが現実だ。3周忌の際、柊の遺影にさくらが語りかけた「あの事件で世の中が大きく変わったなんてことは全然ない」という言葉はリアルだった。
ドラマはある1人のネットユーザーへフォーカスする。柊のライブ中継開始を待機し「叩く準備はできたぞ、ばっちこーい!」と書き込んだ青年である。数年後、彼は「お前なんか死ねばいいのに」と書き込む寸前に思いとどまり、打ち込んだ文字をdeleteした。
きっと、ネットは変わらない。でも、誰か1人でも考える機会になればいい。この青年のように。それが制作陣の思いではないだろうか。
はっきり言ってこのドラマ、細部が雑だった。ストーリーに整合性が取れていない箇所があるし、未回収の伏線も多い(元大臣・牧原の存在、朝の体操が派手な理由、教師時代の郡司の教え子のこと、澪奈の絵画について等)。恐らく、あまり先のことを考えず脚本を作り、熱さのみで突っ走った結果だろう。
でも、「一時の感情で不用意な行動を起こすな」「自覚なき悪意を見ず知らずの他人にぶつけるな」という真芯だけは、全話通じてぶれていない。
ネットでは「中高生など若者向けのドラマ」「大人には響かないけど子どもに響けばいい」という視聴者の声が散見された。果たしてそうだろうか? 柊のメッセージを理解していない大人は大勢いる。それどころか、SNSで汚い言葉を発するのはどちらかと言えば大人のほうだ。武智はネットを悪用する大人の象徴のような存在だった。「若者ばかりに向けたメッセージではない」という制作陣の意図を察することができるのだ。
ライブ配信終了後に柊は屋上から飛び降り(死ぬつもりはなかったが)、寸前で生徒たちに助けられた。
「死ぬのは……怖いな」(柊)
死を怖がるよりも、ネットの罵詈雑言に耐えられず命を絶った澪奈。彼女のような存在を生み出してはならない。だから、私たちはLet’s Think!しなければならない。
正直、「ほかに黒幕がいる?」「最終話にどんでん返しがある?」等の予想もしていた。いや。ドラマが発するメッセージは、最後まで愚直なほどにどストレートだったのだ。
(文=寺西ジャジューカ)