サッカーJリーグの横浜F・マリノスに、またまたトラブルが起きているとメディアが報じている。
昨年12月から来季に向けた契約更改に臨んでいたものの、「どうやってチームが強くなっていくのか、イメージが描けなかった」と語っていたマリノスの齋藤学が、川崎フロンターレに移籍することが今月12日に発表されたのだ。
昨季の中村俊輔に続き、背番号10の主将がチームへの不満を口にして移籍することに対し、メディアは「マリノスのフロントは大丈夫か?」と報じているのだが、実情はどうなのだろうか? サッカーライターに聞いた。
「マリノスが大丈夫か? というよりも、齋藤のコメントのみが一人歩きしているように思います。昨年のマリノスの成績、そして新監督を見れば、マリノスのプロセスは理解できるはずです」
昨年、マリノスはファンタジスタタイプの中村ではなく、チームにファンタジスタを必要としないエリク・モンバエルツ監督を優先した。監督の残留を受け、中村はチームを出ていくことを選び、マリノスはメディアやファンから大バッシングを浴びることになる。
だが、批判の声に反比例するように、モンバエルツ監督は得意とする堅守速攻を浸透させていく。そして、リーグ戦5位、天皇杯も準優勝と結果を残した(参照記事)。
その一方で、モンバエルツ監督と選手たちの間に齟齬があったのも事実である。モンバエルツ監督だけでなく、フィリップ・トルシェ元日本代表監督やヴァヒド・ハリルホジッチ現代表監督など、フランス系の監督と日本人はコミュニケーションがかみ合わないことが多い。
それをマリノスのアイザック・ドル統括本部スポーティングダイレクターも感じていたようで、「監督にとって一番大切なことは、選手とスタッフのマネジメントです。あとは日本のサッカーをわかっているかどうか」と基準を設定し、アンジェ・ポステコグルー監督を招聘した。
ポステコグルー監督はオーストラリア人で、オーストラリアに初のアジアカップ制覇をもたらし、ワールドカップも経験している。軋轢なく世代交代も進めた。さらにフィジカルをベースにした堅守速攻一本だったチームに、アタッキングフットボールも根付かせている。マリノスのフロントに整合性はある。
齋藤がマリノスへの不満を口にした5日後に、マリノスは新監督を発表している。マリノスが来季のビジョンを説明できなかったとは思えない。では、なぜ齋藤は移籍したのだろうか?
「今のマリノスは欧州的でプロフェッショナルな判断をするクラブです。齋藤は現在、ケガを抱えています。しかも、昨季のケガ前のゴール数は『1』。そして、昨季は希望通り単年契約を結び、欧州への移籍にトライした。そんな齋藤に今のマリノスが高い評価を与えるはずはないし、自分の会社にそういった社員がいたらどうですか? 来年には転職したいというケガをしている社員に高給を与えたりしないでしょう。でも、齋藤は年齢的に今がピークで、自信があるため、『強化部と選手との間で評価に差がある。明らかに自分とは考えが違う』といった不満が生じる。要するに誰が悪いではなく、マリノスも、齋藤も、互いにプロフェッショナルな判断をしただけです。」
それでも、どこか後味が悪く感じるのは、選手が“クラブ愛”を大々的に語ってから移籍していくからだろう。本来は女々しい話なのだが、メディアが選手側に立ち、考察なく選手コメントのみを報じるため、ファンもノスタルジックな気持ちになる。そして、チーム側が批判されるという、なんとも不可思議なループだ。欧州ならば、選手が何を言っても、更新を拒んだ場合、その契約内容次第では裏切り者と呼ばれるのだが……。
マリノスの炎上騒動は、選手コメントのみで記事を書く日本のサッカーメディアが火の元といっても過言ではない。
(文=TV Journal編集部)