政治知識ゼロで「生活が不安」なライターが政治家とぶつかり稽古!? 見えてきた「新しい民主主義」という地平【和田靜香×小川淳也トークイベントレポート】

 新型コロナウイルスが大流行し、誰もが先の見えない不安を生きている現代。この危機に政府が講じたのは、アベノマスクやGoToといった愚策だった。我々が感じる不安と政治不信は、ほぼイコールの関係にある。

 そんな中、ライター・和田靜香さんの新刊続きを読む

大東亜戦争と「コロナ戦」教訓はなぜ活かされないのか? また政府の誤解・楽観からくる判断ミスに翻弄される国民

 今年(2021)は、昭和16年(1941)に日本軍の真珠湾攻撃により、米国との大東亜戦争が始まってから80年目となる。2020年に引き続き、今年も依然として世界は新型コロナウイルスにより翻弄されている。コロナとの戦いは「戦争」である。日本人にはあまりそうした意識はないかもしれないが、世界の指導者は「戦争」と認識していた。

 例えば、フランスのマクロン大統領は新型コロナウイルス…

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菅首相の素顔に迫る映画『パンケーキを毒見する』がゾッとしながら笑える理由

 2021年7月30日より、菅首相の素顔に迫った政治ドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』が劇場公開される。

 まず、本作は今の政治のさまざまな問題について、「何となく知っている」もしくは「あまり興味がない」くらいのスタンスの方にこそおすすめしたい。そうした層に向けた視点が多く、そられが非常に「フェア」であり、なおかつ小難しさがない、「ゾッとしながら笑える」ブラックコメデ…

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【国交省発表】激動2020年の鉄道輸送の実情ー新型コロナの影響だけじゃない、台風に過疎が日本の鉄道に影響

 前回、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大による影響について、旅行関連、飲食関連と並んで、特に大きな影響を受けた交通関係の航空分野の状況を取り上げた。そこで今回は、航空分野と同様に大きな影響を受けた鉄道分野についてまとめた。

 国土交通省の「鉄道輸送統計月報」によると、2020年度(2020年4月~2021年3月)の鉄道旅客数は176億8174万人と前年度比29.8%とい…

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森喜朗氏の地元・石川県で「自民党を除名された」女性議員に聞く、女性が“排除される”地方社会

 女性蔑視発言が問題となり、森喜朗元首相が東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長を辞任した。しかし、後任の橋本聖子氏が務めていた五輪担当相と男女共同参画担当相を兼務することになった丸川珠代氏が、選択的夫婦別姓に反対するよう地方議員などに呼びかける書状に名前を連ねていたことが明らかになり、さらなる波紋を呼んでいる。

 昨年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」は、特に伝統主義的な自民党議員による強い反発を受け、「夫婦別姓」の文言が削除された。一方で「選択的夫婦別姓」に賛成する自民党議員もいて、夫婦別姓が賛意を示すことすら許されないほどタブー視されているようには思えない。

 そのような状況の中、森氏の地元である石川県では昨年6月、自民党野々市支部が、野々市市議会本会議に提出された夫婦別姓導入の請願に賛成した、梅野智恵子市議を除名処分とした。

 梅野市議は地元の北國新聞の取材に対して「党の考えに反するという認識はなかった」と答えているが、なぜ除名されるに至ったのか。その背景や経緯、そして女性差別や森氏についても話を聞いた。

ウグイス嬢の経験を経て、無所属で立候補

 梅野市議が賛成した「選択制夫婦別姓の導入など、一日も早い民法改正を求める国への意見採択についての請願」は、2020年の3月、市議会で共産党の岩見博市議が発議したもの。梅野市議は、「地方議会から声を届けるべきだと賛成したかった。なので(賛成を表すために)起立しました」と話す。

 自民党には所属していたが、一人会派「みのりの会」であるため、野々市市議会の自民党系会派で最大会派である「野々市フォーラム」の市議に相談することはなかったという。

 梅野市議の除名を報じた北國新聞の取材に対して、自民党野々市支部長の徳野光春県議は「遅刻、欠席等で党に迷惑をかける行為を続けたことも処分の理由」と述べている。さらに記事は「梅野市議は昨年(※2019年)12月に自民党系会派を離脱している」と締めくくられていた。梅野市議と「野々市フォーラム」との間に、何があったのだろうか? 

 それを探るために、梅野市議の出馬から当選、そして現在までの経緯を振り返る。

 梅野市議は19年4月の統一地方選挙に立候補した。

「20年以上ウグイス嬢をやっていて政治が身近だったこと、そして、自分の住む地域を見た時に女性が政治の場にほとんどいないことに危機感を覚えたことで立候補しました」

 地方議会の選挙では町内会や校区を地盤とし、地盤の推薦を得て立候補することが多い。長年、国会・県議会・市町村議会の自民党議員のウグイス嬢を経験していた梅野市議は、自民党野々市支部とも関わりがあったが、無所属・公認なしで出馬(野々市市では自民党系の議員は無所属・公認なしでの立候補は一般的)。

「野々市市には町会(町内会)代表の議員として出馬するという暗黙のルールがあります。でも、すでに2人現職がいたので、自分が住む町会からは推薦されませんでした」

 町会の推薦や組織団体、党からの応援も得られない中、梅野市議はいわゆる「ドブ板選挙」と呼ばれるような選挙運動を展開した。 

「私は当選するために垣根を越えて野々市市をフルで歩きました。地図を見て、一軒一軒回ってピンポン押して、『立候補させていただきます、梅野と申します』と挨拶しました」

 町会の推薦を得ていない場合でも、同じ自民党系の議員が立候補している町会を避け、空白地帯で選挙運動をするという不文律があるようだ。

「長くウグイス嬢をやっていたので、選挙のノウハウはある。街頭演説は自分でできる。だから、協力してくれた少数の仲間たちで選挙を戦うことができたんです。おかげさまで初当選させていただくことができました」

 梅野市議は定員15人中6位の当選。新人では最も高い得票数となった。無所属・公認なしでの出馬だったが、当選後は自民党系の会派に入った。

 当初は自民党系会派「野々市フォーラム」に所属していた梅野市議だが、会派にいた頃、新人議員をフォローし盛り立てていこうという温かな雰囲気は全く感じられなかったという。冷たく排除するような空気は、徳野県議の「遅刻、欠席等で党に迷惑をかける行為を続けた」という発言にも表れている。

「初めて遅刻したのが、当選してすぐの予算決算常任委員会だったのですが、当時は絶対行かなければならないことを知りませんでした。19年夏の参院選に向けての選挙事務所の当番が、その日のその時間に当たっていて、そちらに行っていました。当番は会派で決めているはずなのですが、議会の事務局からの電話で遅刻に気が付いたんです」

 ほかにも、支持者との電話が長引いて広報委員会に出席できなかったことなどが、「欠席」に含まれているのだろうと梅野市議は言う。怠惰でたびたび遅刻や欠席をしたわけではないとの主張だ。

 会派での「飲み会」も、梅野市議にとっては大きな負担だった。

「飲み会が多いんです。行ったら行ったで『子どもがいるクセに』と言われ、行かなかったら行かなかったで悪く言われます。酔って(地元で事業を営む)父を罵倒されることもあり、思わず泣いてしまったこともあります」

 「このままではつぶされる」と感じた梅野市議は、19年12月に「野々市フォーラム」を離脱。一人会派「みのりの会」を立ち上げるが、引き続き自民党野々市支部には所属して活動することにした。

 一人会派では野々市フォーラムの視察や勉強会に参加できず、会派室も異なるため、ほかの自民党系議員との情報共有もままならない。しかし、それでも梅野市議への排除がやむことはなかった。

「地元国会議員から直接声をかけていただき、東京で官僚の方に講習を受けるため視察に行ったのですが、野々市フォーラムの議員の方々が『一人会派なのに』と国会議員に直接抗議したそうです」

 野々市フォーラムを抜けた翌年の3月、梅野市議は選択的夫婦別姓に賛同。そして3カ月後に、除名の発議がされた自民党野々市支部の総務会が実施される。除名処分は突然のことだった。

「6月に開かれた総務会の最後に、いきなり発議されたのは『梅野議員の処分を求める』。議長がすぐに受理されました。根回しはできていたみたいです。私はいったん退席させられました。ほかの地区代表の自民党議員も女性部長も、党員も、議長以外全会一致の除名ということになったらしく、『処分が決まりましたので』ということで入室許可が下りて議場に入った途端、『以上』で終わりました」

 梅野市議は後になって、総務会を退席している間に、自分が起こしたことになっている真偽不明の問題行動についての資料が配られていたことを知った。資料は自民党県連にまで配布されており、自民党野々市支部のやりすぎを指摘する声もあったが、県連に支部の決定を覆す権限はないため、そのまま除名となった。

 除名後、梅野市議はそれまでの自分をすべて失ったように感じたという。

「一番つらかったのが、一緒に選挙で戦った仲間が離れていったこと。自民党でなくなったら私は何の価値もなくなるのかと思いました」

 また、自民党自体から除名されたことで、党の女性局の勉強会や、党関連のフォーラムにも参加できなくなってしまった。

「今後どう活動していけばいいのだろうとか、勉強会にも出られないとか、悲観的にしか考えられない時期がありました」

 しかし、現在は「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の事務局長、井田奈穂さんに声をかけられたのをきっかけに、選択的夫婦別姓の勉強会や、稲田朋美議員が設立した「女性議員飛躍の会」に参加。さらにTwitterを通じて、ほかの一人会派の女性議員と交流し、励まされることもあったという。

「いろんな人と自分から積極的につながれば、勉強はさまざまな形でさせていただけるんだなと、最近思うようになりました」

 ところで、除名処分を受ける原因になった選択的夫婦別姓について、梅野市議自身は別姓でもなく、別姓にしたいと思っているわけでもないという。

「私は、生まれ変わっても同姓を選びますよ。夫と一緒の姓になりたかったですし。でも、自分がそうだからって、ほかの人が同じわけではないですよね。育った環境も、みんな違う。苦しみや生きづらさに寄り添い、多様性を尊重することが大切。選択制であり、姓が違うから家族の絆が壊れるわけではありませんし、日本が壊れるわけでもないと思う。すでに親子別姓の家庭は再婚などのさまざまな事情で存在していて、『夫婦別姓だと子どもがかわいそう』との意見は親と姓が違う子どもに対する差別ではないかと危惧します。最近の保守は、少し偏っていると思います。私は、自由で寛容な保守主義が好きです」

 また、女性活躍を推進する議員の立場でも、選択的夫婦別姓の必要性を実感しているという。

「選択的夫婦別姓を望む女性はキャリア志向が強い人も多いですよね。その人たちが仕事や子育てをしやすい環境を整えることが、日本の飛躍につながると思います」

 現在、野々市市議会では議員15人中、女性は2人。少数派である。地方議員になる人は企業の社長や地権者(地主)の男性が多いそうだ。

「地方では地元の有力者と仲良くなって、飲み会などに出席するうちに、『お前出れや』と仲間内で盛り上がったり、『コイツ推そうぜ』と根回しをされたりして、みこしのように担がれて選挙に出ることが多いのです。“地盤で推す”という今の選挙の仕組みが、女性が飛び込める環境ではないということですね。私はウグイスの世界に長年いて、その空気をいつも感じていたから、抵抗なく政治の世界に入れたのだと思います」

 また、立候補することで、自分のプライバシーがさらされ、家族や子どもたちにとっても負担になってしまうのではという懸念が、特に子育て世代の女性の政治参加に高いハードルとなっているとも言う。

 梅野市議は女性目線での施策を増やすためにも、女性議員が増えることを望んでいる。

「私は、野々市に暮らしてまだ15年の“よそ者”なんです。結婚して、子どもを産んで育てている、普通のお母さんなのです。そういう人だって、この街をより良くしたいという思いがあれば、選挙に立候補できる仕組みが必要だと思います。議員にも多様性が必要なのではないでしょうか」

 梅野市議はウグイス嬢時代、森氏が地元石川県に選挙戦の「視察」に来た時の様子を次のように語った。

「私は、森喜朗前会長の選挙カーには乗ったことがないんです。ただ、ほかの候補者の国政選挙や地方議会選挙では視察に来られることもありました。選挙カーの後を、黒塗りの大きな車でついて見てらっしゃいました。ウグイス嬢のアナウンスにも『今しゃべっとったんは誰や』と、有権者の前でも厳しい指導が入ります。『自民党の議員に当選してほしい』という気持ちはウグイス嬢も同じで、声を枯らして走り回っているのに、みんなの前で怒鳴るのはどうかと、いつも疑問を感じていました」

 梅野市議は森氏の政治的功績に敬意を感じる一方で、言動に納得できないこともあったようだ。

 23年には、任期満了に伴う、野々市市議会議員選挙が実施される。2期目が勝負だと言う梅野市議。

 3月9日の定例会では、8日の国際女性デーにちなみ、「野々市市第3次男女共同参画プラン」「災害対策における男女共同参画の推進」「野々市市子どもの権利条例」について質問する予定だ。

梅野智恵子(うめの・ちえこ)
石川県野々市市議会議員。2019年当選。教育福祉常任委員会、予算決算常任委員会、議会改革・活性化特別委員会、広報委員会に所属。子育て・教育・防災などに力を入れる。所属会派は「みのりの会」(一人会派)。

(谷町邦子)

森喜朗氏の地元・石川県で「自民党を除名された」女性議員に聞く、女性が“排除される”地方社会

 女性蔑視発言が問題となり、森喜朗元首相が東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長を辞任した。しかし、後任の橋本聖子氏が務めていた五輪担当相と男女共同参画担当相を兼務することになった丸川珠代氏が、選択的夫婦別姓に反対するよう地方議員などに呼びかける書状に名前を連ねていたことが明らかになり、さらなる波紋を呼んでいる。

 昨年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」は、特に伝統主義的な自民党議員による強い反発を受け、「夫婦別姓」の文言が削除された。一方で「選択的夫婦別姓」に賛成する自民党議員もいて、夫婦別姓が賛意を示すことすら許されないほどタブー視されているようには思えない。

 そのような状況の中、森氏の地元である石川県では昨年6月、自民党野々市支部が、野々市市議会本会議に提出された夫婦別姓導入の請願に賛成した、梅野智恵子市議を除名処分とした。

 梅野市議は地元の北國新聞の取材に対して「党の考えに反するという認識はなかった」と答えているが、なぜ除名されるに至ったのか。その背景や経緯、そして女性差別や森氏についても話を聞いた。

ウグイス嬢の経験を経て、無所属で立候補

 梅野市議が賛成した「選択制夫婦別姓の導入など、一日も早い民法改正を求める国への意見採択についての請願」は、2020年の3月、市議会で共産党の岩見博市議が発議したもの。梅野市議は、「地方議会から声を届けるべきだと賛成したかった。なので(賛成を表すために)起立しました」と話す。

 自民党には所属していたが、一人会派「みのりの会」であるため、野々市市議会の自民党系会派で最大会派である「野々市フォーラム」の市議に相談することはなかったという。

 梅野市議の除名を報じた北國新聞の取材に対して、自民党野々市支部長の徳野光春県議は「遅刻、欠席等で党に迷惑をかける行為を続けたことも処分の理由」と述べている。さらに記事は「梅野市議は昨年(※2019年)12月に自民党系会派を離脱している」と締めくくられていた。梅野市議と「野々市フォーラム」との間に、何があったのだろうか? 

 それを探るために、梅野市議の出馬から当選、そして現在までの経緯を振り返る。

 梅野市議は19年4月の統一地方選挙に立候補した。

「20年以上ウグイス嬢をやっていて政治が身近だったこと、そして、自分の住む地域を見た時に女性が政治の場にほとんどいないことに危機感を覚えたことで立候補しました」

 地方議会の選挙では町内会や校区を地盤とし、地盤の推薦を得て立候補することが多い。長年、国会・県議会・市町村議会の自民党議員のウグイス嬢を経験していた梅野市議は、自民党野々市支部とも関わりがあったが、無所属・公認なしで出馬(野々市市では自民党系の議員は無所属・公認なしでの立候補は一般的)。

「野々市市には町会(町内会)代表の議員として出馬するという暗黙のルールがあります。でも、すでに2人現職がいたので、自分が住む町会からは推薦されませんでした」

 町会の推薦や組織団体、党からの応援も得られない中、梅野市議はいわゆる「ドブ板選挙」と呼ばれるような選挙運動を展開した。 

「私は当選するために垣根を越えて野々市市をフルで歩きました。地図を見て、一軒一軒回ってピンポン押して、『立候補させていただきます、梅野と申します』と挨拶しました」

 町会の推薦を得ていない場合でも、同じ自民党系の議員が立候補している町会を避け、空白地帯で選挙運動をするという不文律があるようだ。

「長くウグイス嬢をやっていたので、選挙のノウハウはある。街頭演説は自分でできる。だから、協力してくれた少数の仲間たちで選挙を戦うことができたんです。おかげさまで初当選させていただくことができました」

 梅野市議は定員15人中6位の当選。新人では最も高い得票数となった。無所属・公認なしでの出馬だったが、当選後は自民党系の会派に入った。

 当初は自民党系会派「野々市フォーラム」に所属していた梅野市議だが、会派にいた頃、新人議員をフォローし盛り立てていこうという温かな雰囲気は全く感じられなかったという。冷たく排除するような空気は、徳野県議の「遅刻、欠席等で党に迷惑をかける行為を続けた」という発言にも表れている。

「初めて遅刻したのが、当選してすぐの予算決算常任委員会だったのですが、当時は絶対行かなければならないことを知りませんでした。19年夏の参院選に向けての選挙事務所の当番が、その日のその時間に当たっていて、そちらに行っていました。当番は会派で決めているはずなのですが、議会の事務局からの電話で遅刻に気が付いたんです」

 ほかにも、支持者との電話が長引いて広報委員会に出席できなかったことなどが、「欠席」に含まれているのだろうと梅野市議は言う。怠惰でたびたび遅刻や欠席をしたわけではないとの主張だ。

 会派での「飲み会」も、梅野市議にとっては大きな負担だった。

「飲み会が多いんです。行ったら行ったで『子どもがいるクセに』と言われ、行かなかったら行かなかったで悪く言われます。酔って(地元で事業を営む)父を罵倒されることもあり、思わず泣いてしまったこともあります」

 「このままではつぶされる」と感じた梅野市議は、19年12月に「野々市フォーラム」を離脱。一人会派「みのりの会」を立ち上げるが、引き続き自民党野々市支部には所属して活動することにした。

 一人会派では野々市フォーラムの視察や勉強会に参加できず、会派室も異なるため、ほかの自民党系議員との情報共有もままならない。しかし、それでも梅野市議への排除がやむことはなかった。

「地元国会議員から直接声をかけていただき、東京で官僚の方に講習を受けるため視察に行ったのですが、野々市フォーラムの議員の方々が『一人会派なのに』と国会議員に直接抗議したそうです」

 野々市フォーラムを抜けた翌年の3月、梅野市議は選択的夫婦別姓に賛同。そして3カ月後に、除名の発議がされた自民党野々市支部の総務会が実施される。除名処分は突然のことだった。

「6月に開かれた総務会の最後に、いきなり発議されたのは『梅野議員の処分を求める』。議長がすぐに受理されました。根回しはできていたみたいです。私はいったん退席させられました。ほかの地区代表の自民党議員も女性部長も、党員も、議長以外全会一致の除名ということになったらしく、『処分が決まりましたので』ということで入室許可が下りて議場に入った途端、『以上』で終わりました」

 梅野市議は後になって、総務会を退席している間に、自分が起こしたことになっている真偽不明の問題行動についての資料が配られていたことを知った。資料は自民党県連にまで配布されており、自民党野々市支部のやりすぎを指摘する声もあったが、県連に支部の決定を覆す権限はないため、そのまま除名となった。

 除名後、梅野市議はそれまでの自分をすべて失ったように感じたという。

「一番つらかったのが、一緒に選挙で戦った仲間が離れていったこと。自民党でなくなったら私は何の価値もなくなるのかと思いました」

 また、自民党自体から除名されたことで、党の女性局の勉強会や、党関連のフォーラムにも参加できなくなってしまった。

「今後どう活動していけばいいのだろうとか、勉強会にも出られないとか、悲観的にしか考えられない時期がありました」

 しかし、現在は「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の事務局長、井田奈穂さんに声をかけられたのをきっかけに、選択的夫婦別姓の勉強会や、稲田朋美議員が設立した「女性議員飛躍の会」に参加。さらにTwitterを通じて、ほかの一人会派の女性議員と交流し、励まされることもあったという。

「いろんな人と自分から積極的につながれば、勉強はさまざまな形でさせていただけるんだなと、最近思うようになりました」

 ところで、除名処分を受ける原因になった選択的夫婦別姓について、梅野市議自身は別姓でもなく、別姓にしたいと思っているわけでもないという。

「私は、生まれ変わっても同姓を選びますよ。夫と一緒の姓になりたかったですし。でも、自分がそうだからって、ほかの人が同じわけではないですよね。育った環境も、みんな違う。苦しみや生きづらさに寄り添い、多様性を尊重することが大切。選択制であり、姓が違うから家族の絆が壊れるわけではありませんし、日本が壊れるわけでもないと思う。すでに親子別姓の家庭は再婚などのさまざまな事情で存在していて、『夫婦別姓だと子どもがかわいそう』との意見は親と姓が違う子どもに対する差別ではないかと危惧します。最近の保守は、少し偏っていると思います。私は、自由で寛容な保守主義が好きです」

 また、女性活躍を推進する議員の立場でも、選択的夫婦別姓の必要性を実感しているという。

「選択的夫婦別姓を望む女性はキャリア志向が強い人も多いですよね。その人たちが仕事や子育てをしやすい環境を整えることが、日本の飛躍につながると思います」

 現在、野々市市議会では議員15人中、女性は2人。少数派である。地方議員になる人は企業の社長や地権者(地主)の男性が多いそうだ。

「地方では地元の有力者と仲良くなって、飲み会などに出席するうちに、『お前出れや』と仲間内で盛り上がったり、『コイツ推そうぜ』と根回しをされたりして、みこしのように担がれて選挙に出ることが多いのです。“地盤で推す”という今の選挙の仕組みが、女性が飛び込める環境ではないということですね。私はウグイスの世界に長年いて、その空気をいつも感じていたから、抵抗なく政治の世界に入れたのだと思います」

 また、立候補することで、自分のプライバシーがさらされ、家族や子どもたちにとっても負担になってしまうのではという懸念が、特に子育て世代の女性の政治参加に高いハードルとなっているとも言う。

 梅野市議は女性目線での施策を増やすためにも、女性議員が増えることを望んでいる。

「私は、野々市に暮らしてまだ15年の“よそ者”なんです。結婚して、子どもを産んで育てている、普通のお母さんなのです。そういう人だって、この街をより良くしたいという思いがあれば、選挙に立候補できる仕組みが必要だと思います。議員にも多様性が必要なのではないでしょうか」

 梅野市議はウグイス嬢時代、森氏が地元石川県に選挙戦の「視察」に来た時の様子を次のように語った。

「私は、森喜朗前会長の選挙カーには乗ったことがないんです。ただ、ほかの候補者の国政選挙や地方議会選挙では視察に来られることもありました。選挙カーの後を、黒塗りの大きな車でついて見てらっしゃいました。ウグイス嬢のアナウンスにも『今しゃべっとったんは誰や』と、有権者の前でも厳しい指導が入ります。『自民党の議員に当選してほしい』という気持ちはウグイス嬢も同じで、声を枯らして走り回っているのに、みんなの前で怒鳴るのはどうかと、いつも疑問を感じていました」

 梅野市議は森氏の政治的功績に敬意を感じる一方で、言動に納得できないこともあったようだ。

 23年には、任期満了に伴う、野々市市議会議員選挙が実施される。2期目が勝負だと言う梅野市議。

 3月9日の定例会では、8日の国際女性デーにちなみ、「野々市市第3次男女共同参画プラン」「災害対策における男女共同参画の推進」「野々市市子どもの権利条例」について質問する予定だ。

梅野智恵子(うめの・ちえこ)
石川県野々市市議会議員。2019年当選。教育福祉常任委員会、予算決算常任委員会、議会改革・活性化特別委員会、広報委員会に所属。子育て・教育・防災などに力を入れる。所属会派は「みのりの会」(一人会派)。

(谷町邦子)

剣道2段もウソ! 森田健作千葉県知事、虚偽事項公表の末に芸能界復帰を目論む身勝手人生

 大停電や住宅の損壊など、千葉県内の広い範囲に大きな被害をもたらした9月の台風15号。この台風に際しては、上陸時に森田健作県知事が県庁に登庁せず、対策本部の設置が遅れるなど、対応が後手に回ったことに批判が集中。12月3日には、知事が対応を謝罪し、自らの給与減額を表明したが、その一方で、政界引退後の芸能界復帰を画策しているという情報を入手した。

「任期は2021年の春までですが、『週刊文春』(文藝春秋)が2週にわたって“公用車で別荘”疑惑を報じたこともあって、県民からはリコールすべきという声も上がっている。カッコばかり気にする森田は、事態が悪化する前に、自ら引退を表明するのではという見方もあるようです」(千葉県内の政界関係者)

 筆者は、明治学院大学法学部で森田知事の1年先輩にあたる。筆者は除籍、森田は中退という縁もあって、彼が老舗芸能プロ「サンミュージックプロダクション」の「第1号タレント」としてデビューした頃から、興味を抱いていた。

 森田といえば、ドラマ『おれは男だ!』(71年)で剣道部主将の高校生を演じたことがブレイクのきっかけで、以来、長年自ら“剣道2段”と吹聴していたものの、それが嘘だったことが知事就任後に明らかになっている。

 筆者は、取材を通じて、サンミュージックの創設者である故・相澤秀禎会長と親しくなったこともあり、森田のデビューの経緯についても聞いたが、相澤会長によれば、剣道2段は売り出しのため手段だったようだ。

「この嘘について、森田は“10代半ばに親類の道場主から『わかった。2段を許す』と言われた”と釈明にもならない釈明に終始した。“剣道2段”というプロフィールは知事選でも大いにアピールしていましたから悪質ですよ」(マスコミ関係者)

 実は筆者は、森田が千葉県知事選に無所属で初出馬する前に、インタビューしたことがある。そこでわかったことは、彼が、自分なりの政治に対する主張、政策をなにも持っていないことだった。

 筆者は、森田を取り巻くマスコミ関係者も数人知っているが、彼らは政治より“性事”の方に興味がある輩ばかりで、政策ブレーンとしては使えない。実際、政策論争に弱く、知事選の討論会では「時間がない」とさっさと帰ろうとして、堂本暁子前知事から「ちょっと待ちなさい! 討論会なんだからここにいなさい!」とたしなめられたという、笑えないエピソードもある。

 だが、彼がさらに悪質なのは、選挙戦では“完全無所属”をアピールしながら、その裏で、自民党の東京都衆院選挙区第2支部の支部長を務めていたことだった。あえて隠したのは、無所属のほうが千葉県民の支持を得られたからだ。

 その狙い通り、“完全無所属”を信じた県民の多くが森田に投票したが、森田は、現官房長官で、当時、選挙対策副委員長だった菅義偉と昵懇の仲。“隠れ自民党員“だったのだ。報道によれば、知事当選後に、菅も「実質的に我々が応援した候補が勝利したのはうれしい」とコメントしたという。

 おまけに、同支部で集めた資金が知事選で使われたという疑惑まで浮上した。その後、“完全無所属”を掲げながら当選したことは、公職選挙法(虚偽事項の公表)に違反するなどとして、市民団体が森田知事を千葉地検に刑事告発したが、彼は、「(“完全”がついていたので誤解した人もいるのであれば)もし、そういうことがあったならば、残念だ」と、“誤解”した県民側に責任を転嫁してみせた。

 それでもタレントとしての知名度が功を奏してか、現在、3期目となるが、功績といえば、東京湾アクアラインの通行料を3,000円から800円(普通車片道)に値下げしたくらい。筆者が親しくしている千葉県内の首長は、「県庁に行っても、(知事室に)いたことがない。側近に居場所を尋ねても、“どこで何をやっているかわからない”という答えが帰ってくる」と困惑している。

 もっとも、県政を牛耳る県の実力者や役人たちにとっては、都合のいい“お飾り”だったのだろう。今回の災害対応が後手に回ったことで、知事自身の馬脚を現したに過ぎない。さらに、2週にわたる“文春砲”で県知事としての信用は失墜。県民からは“百条委員会を設置して責任を追及しろ”という声も上がっているという。

「森田は、いまだに『サンミュージック』の所属タレントですからね。早くも芸能界復帰を画策して、BS局のキャスターとして売り込んだという噂もあります」(前出の千葉県内の政界関係者)

 しかし、“文春砲”で“県民の安全より自分の別荘”という身勝手ぶりや、使途不明金疑惑まで暴露された森田知事。台風で被災したタレントの坂上忍も、自らMCを務める『バイキング』(フジテレビ系)で知事の対応を大批判しているが、今後もテレビ界で居場所を見つけることは至難の業だろう。

安倍首相が乗り切った「桜を見る会」疑惑で2つの重要資料が出てこない理由

 街がクリスマスムードに包まれているというのに、永田町だけは桜、桜とかまびすしかったわけだが、臨時国会が閉幕に近づき、安倍官邸はこの疑惑を乗り越えたように見える。

 安倍首相主催の「桜を見る会」の問題である。

 それにしても、森友・加計問題を彷彿とさせる後味の悪さだった。「桜」取材に忙殺された政治部記者が嘆息する。

「いずれも決して『巨悪』でなく、安倍総理や夫妻がちょっと権力を私物化してしまっただけ。安倍首相がきちんと事実を認めて謝りさえすれば良かったが、まずいのは役所側で、それらを”合法化”させたいあまり、行き当たりばったりの理論武装を始めてドツボにハマってしまった。森友問題で自殺者を出したトラウマがあったからか、桜を見る会は、即座に来年の中止が決まりましたが、役所の”忖度”は相変わらず。野党の資料要求当日に、招待者名簿がシュレッダーにかけられたり、さらにその言い訳をするため、安倍首相に『障害者職員の勤務時間を調整して、たまたまその時期になった』と答弁させました」

 子どもでもウソとわかる答弁のオンパレードだったのに、事態が収束に向かっているのはなぜなのか。

 2つの重要資料、すなわち、シュレッダーにかけられた内閣府作成の「安倍首相枠」の招待者名簿、安倍後援会による前夜祭のホテルニューオータニの明細書、がなかなか出てこないためだ。

「招待者には、安倍首相の後援者だけでなく、単に名刺交換をしただけの反社会勢力も含まれると見られています。安倍首相は『サーバーでデータ保存し、その廃棄後は復元できない』と答弁しましたが、その生データがあれば、ツッコミどころ満載となります。前夜祭は1人会費5,000円という高級ホテルのパーティにしては格安の設定で、安倍首相サイドが不足分を持ったのではと疑われています。これは有権者への寄付にあたり、公選法違反。安倍首相は明細書はないと言い放ちましたが、そんなはずはないですし、当然ホテル側が保管しています」(前出の記者)

 森友問題は財務省が公文書を改ざんしていたことを朝日新聞がキャッチしたことで、加計問題は前川喜平・前文科次官の告発があって、「疑獄化」した。

「そうならないのは、内閣府が『ホッチキス官庁』だからですよ」

 前出の記者が解説する。

「財務省にせよ文科省にせよ、官僚人生すべてを捧げる人ばかりで、省への愛があり、だからこそ真実をメディアに告発したくなるのでしょう。一方内閣府は、『ホッチキス』と揶揄される省庁の寄せ集め集団。今の山崎重孝次官は自治省(現総務省)出身ですしね。職員の告発を期待するのは難しそうです」

 ニューオータニの明細書となると、よりハードルが上がる。

「ホテルマンが客の個人情報を出すなどご法度。一発でクビです。そもそも、安倍事務所のようなお得意様にサービスするのは当然で、値段設定はかなり安くしているはず。ただそれが明るみになると、正規料金で利用する他の顧客を怒らせることになる。つまり、安倍事務所、ホテルの双方が、明細は出さないという方針で一致しているのです」(同前)

 野党は来年の通常国会でも追及を続ける方針だが、そこまで世の関心が続くかどうかは、この資料がカギを握っているといえる。

決定的写真を入手! GPIF理事長の”特別な関係”処分を巡ってリーク合戦

 

 まずは当サイトが入手した写真を見ていただこう。

 頭がハゲ上がり、ネクタイをキッチリしめた真面目そうな紳士と、それに寄り添う白いコートの女性。プライバシー上の理由で顔を隠したが、清楚系の和風美人である。

 嫁入り前の娘と父親の仲睦まじい姿、に見えなくもないが、夜に撮られた粗い画像、クリスマス直前の日付からは、危険な香りのする年の差カップルのようだ。

 厚労省担当記者が解説する。

「10月18日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の高橋則広理事長が、部下の女性との”特別な関係”が疑われたとして、減給(20%)6カ月の処分を下されました。プレスリリースによれば、昨年12月から、両者の”特別な関係”を指摘するメールや文書が高橋理事長の元に届き始めた。今年9月、GPIFを監督する経営委員会が調査に乗り出し、高橋理事長が女性職員と複数回食事し、公用車に同乗したと判断され、女性の”情実採用”も疑われるとしました。ただし高橋理事長は女性との関係を『相談を受けていたにすぎない』と”情実”であることを否定しています」

 告発文書には、昨年12月21日の両人のデート現場とされる6枚の写真が同封されていた。当サイトはそれらを入手し、上記写真はその一部である。

 この処分を各紙はニュースにし、日本経済新聞は社説で「GPIF理事長は襟を正せ」と糾弾、「週刊文春」(文藝春秋)も小さな記事で「リリースを出しただけで、記者会見も行なっていない」と指摘した。GPIFは、160兆円もの国民の年金資金を運用する極めて公益性の高い組織。そのトップのスキャンダルとなれば、厳しいトーンになるのは当然のことだ。

 実はこの時点では、写真は外部に流出していない。忘れ去られるのも時間の問題と思われた。ところがここへ来て、この騒動が蒸し返しされ始めたのである。

 11月21日には『現代ビジネス』で伊藤博敏氏、『東洋経済オンライン』で元FACTA編集長・阿部重夫氏が立ち上げた「チームストイカ」が立て続けに報じ、翌22日には、ヤフーニュースで山本一郎氏が参戦。いずれもジャーナリズム界では知らぬ者のいない腕っこきの書き手だ。

 これらの記事に共通しているのは、告発文やデート写真を「怪文書」と斬り捨て、「高橋理事長はハメられた」と分析。山本氏は写真を「フォトショップで加工したと思しき痕跡があり、素人が頑張ったんだろうなあという印象」とおちょくった。確かに上記2枚の写真では、男性と女性の背丈の差が違うように見える。

 記事を読んだ記者はこう感想を漏らす。

「9月末での退任が確実視されていた三石博之理事と水野弘道理事兼最高投資責任者(CIO)は、10月、急転直下で再任が決まりました。記事は、その裏でこの『怪文書』を巡り、安倍官邸と近い関係にある水野氏らによる『謀略』があったのではと疑義を唱えたスクープといえます。ただリリースに沿って書かれた日経の社説にまで『謀略』と噛みついており、高橋理事長に寄り添った印象を受けました」

 これらの記事に水野氏は怒り心頭。「私が謀略の主導者のように誘導する記事は、悪意があり完全に名誉毀損」とツイートした。

 それにしても処分から1カ月たった今、なぜこうした記事が書かれたのか。

「GPIF内で週刊誌に写真がリークされたらしいと話題になったからです。焦った高橋理事長サイドが著名ジャーナリストらを使って巻き返しを図ったのでは、疑われています。写真が加工されたとしても、探偵など”プロ”に尾行されるような行動をとったのは事実でしょうし、高橋氏が処分を甘んじて受けたのは、身に覚えがあったからでしょう。ハメられたと感じたのなら、すぐに記者会見で自らの口で潔白を訴えるべきでした」(GPIF関係者)

 真相は藪の中だが、国民の虎の子資産を預かるトップたちに、こんな内ゲバを繰り広げる暇などないはずである。

香港政府トップ一家の「英国籍剥奪」を要求する署名が35万を突破! 今後の情勢次第で英国議会も動く!?

 24日に投票が行われた香港区議会議員選挙は、民主派が議席の80%近くを獲得する圧倒的勝利に終わった。ところが、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、デモ参加者が掲げる「五大要求」の受け入れについて拒否を貫いている。中国共産党の意向を考えれば当然の態度だが、林鄭氏に対する民主派の批判は強まるばかり。その矛先は家族にまで及んでいる。

 台湾メディア「ETtoday」(11月21日付)などによると、林鄭氏の夫と2人の子どもの英国籍を取り消すための署名活動が2カ月前から署名サイト「Change.org」を通じて行われているという。選挙後、一気に署名の数は増え、28日13時半現在で35万を超えている。林鄭氏一家は、英国と香港特別行政区の二重国籍だったが、林鄭氏は2007年、公職に就くに当たって英国籍を放棄した。しかし夫と2人の子どもは、英国籍を保有したまま、現在も英国に居住しているという。

 発起人は英国人のDeeran Kumar氏。過去に香港の公立大学に留学した経験があるようで、今回の呼びかけの理由について、「香港政府は『緊急状況規則条例(緊急法)』を発動し、『覆面禁止法』を施行したが、警察には適応されず、自分たちの身元を隠すことができる。もはや香港では法による統治が行われておらず、政府と行政機関は法の前に平等ではない。これは危機的な状況である。言い換えれば、法による支配は死んだ」と悲痛な思いを告白。

 その上で、香港での暴力を抑制するためには(元宗主国である)英国に道義的責任があり、それを果たすためにも「彼らの市民権を永遠に無効にすべきだと心から信じている。キャリー・ラムが自らの政権の説明責任を否定し、極めて厳しい法律を施行しているように」と主張している。

 賛同者の多くは、林鄭氏に反感を持つ香港人とみられる。行政長官として、香港市民に中国共産党への服従を求めながら、自らの家族は英国籍を保有し続けているのだから、不満を持たれても当然だろう。林鄭氏自身はすでに英国籍を放棄したとはいえ、英国籍を持つ夫の配偶者として、英国に永住することも可能だと考えられる。そのため、林鄭氏が混乱の香港を捨て、英国に逃亡することを阻止しようという意図もあるのかもしれない。

 英国政府が設置した請願サイトでは、署名が1万を超えると政府は何らかの対応をしなければならず、10万を超えると議会の議題に挙がる可能性があるという 。もし今回の呼びかけが英国内でも盛り上がれば、英国議会が動くことになるかもしれない。家族が英国籍を失いかねないといったところで中国政府が反発するはずもなく、林鄭氏はますます孤立を深めることになりそうだ。