放送作家から都議会議員になり、「セクハラ野次」で注目を集めた塩村あやかさん。後編では、個人事業主やフリーランスの出産・育児に対するサポートの現状、小池百合子都知事の評判について聞いた。
(前編はこちら)
■フリーランスや非正規で働く人の代表が政治家になっていないことは、大きな問題
――「女性活躍」が叫ばれる一方で、個人事業主やフリーランスで働く女性の存在は、完全に忘れられている気がします。働かなければ収入がゼロになるため、晩婚・晩産のかなり大きな要因になっていると思うのですが、出産・育児に関するサポートはどういう状況でしょうか?
塩村あやかさん(以下、塩村) 残念ながら、政治の世界では、ほとんど触れられていません。フリーランスで働いたことのないおじさんばかりですから、その存在にすら気づかないんですよね。女性議員も増えてはきていますけれども、企業でトップを張ってきた人や官僚、個人事業主であれば、ものすごく成功した人です。
世の中には、マスコミ業界だけでも、放送作家、アナウンサー、タレント、カメラマン、デザイナー、ライター……フリーランスで働く女性がたくさんいます。そういう今どきの働き方をしている人たちの代弁者を増やす必要がありますね。その思いもあり、政治家になってみたけど、見渡してみたら、そういう人が全然いない。親に大学まで出してもらった議員というのが多い。恵まれて育っているんです。
都議会だと、女性で、仕送りがないので奨学金とバイトの掛け持ちで短大をなんとか卒業して、非正規雇用で社会に出て、奨学金の返済をし、タレントをしてボランティアを経験して放送作家に転身して議員になったのは、私ぐらいじゃないでしょうか。就職しようと思った1999年は、超就職氷河期で、希望する多くの会社で正社員の募集が見送られた時代でした。「会社員にならなかったから悪い」「好きでフリーランスをやっているんだろう」と言う人も多いですが、今は、フリーランスや非正規で働くことが当たり前の時代です。それにもかかわらず、この世代の代表が政治家になっていないことは、大きな問題だと思っています。
――今後、個人事業主や育児に対するサポート面で、改善されていきそうな気配はありますか?
塩村 少しずつ動いていくとは思うんです。12月8日の、私にとって最後の都議会の一般質問で、「ベビーシッター代を経費で落とせるように税制を変えてほしい」と提案しました。
この提案は、ある経営者の女性から言われたことがきっかけで、ハッと気がついたんですが、個人事業主やフリーランスの人は、本当は毎日子どもを保育所に預ける必要はないんですね。けれども、すぐに預けられるところがないから、保育所に入れようと努力する。ある時は週に2日、1日のうち数時間だけ、でも、ある時は、1週間丸々預けなければいけないこともある。そういった時に、預かってくれる人がいなかったり、ベビーシッター代がものすごく高いから、初めから認可保育所に預けたほうが安全だ、となるわけです。ベビーシッター代が経費として認められれば、保育所に預けなくても済む人が出てくるかもしれないですよね。
今は、税制上、売り上げに関わらない経費は認められていないので、できないんです。こういうところから、個人事業主やフリーランスの女性の声を取り入れなければいけないと思っています。
■政治に参画すると得をする
――フリーランスの女性も、自分たちで声を上げないといけないですね。どうしたら、女性がもっと政治のことを身近に感じられるようになると思いますか?
塩村 女性はダイエットとか美容とか、そういう記事は読みますよね。それ以上に大事なのが政治だ、と打ち出すことだと思います。政治に参画しても、肌がキレイにはならないけれども、働きやすくなるのは一番のストレス解消法ですから、「本当に賢い女性は政治に参画する」ということが、おしゃれに伝わればいいですね。
あと、私たちはいろんな税金を払っているじゃないですか。消費税だって払うし、温泉に行けば入湯税だって払う。税金をたくさん払っているのに、例えば、選挙に行かないのは、お金を「好きに使っていいよ」と行政と議員にプレゼントしているようなものですよ。
私は、恋愛がうまくいっているとき以外の話は、全部政治につながっていると思っています。例えば、結婚する、離婚する、子育てが難しいこと、離婚してしまった時のサポートなど、直接ではないので、気づかないかもしれないけれど、全部政治に行き着いている。
――そう言われれば、確かにそうですね(笑)。
塩村 政治に参画すればするほど得することに、みんな気がついていますか? 経団連とか、大きな会社の社長さんとか、みなさん、政治家に会いに行っている。パーティに行ってるじゃないですか。それは、やっぱりお得なことがあるからですよ。税金を下げてもらったりとか。
みなさんも逆をすればいいんです。政治は、必ず敵対している勢力があるから、そちらを応援すればいい。パーティ券を買わなくても、ネットでちょっと応援するぐらいならできるわけですよ。そうしないことには、世の中は変わらないです。
■応援するところは応援し、おかしいと思うところは「おかしい」と言う
――最後に、小池都知事が誕生して、都庁の雰囲気はどうなりましたか?
塩村 職員のモチベーションが下がっているのは、すごく感じます。今までは、知事が与党に数の力でコントロールされていることが多かったのですが、今はいい意味合いも大きいですが、よくも悪くもコントロールできないと聞いています。
言い方は難しいんですけれど、小池さんのやり方は、良い部分もすごくある。けれど、マイナス面もあって、職員はいいと思っていない人も多いという気がします。今日も都職員がメイン読者の都政新報を読んでみたら、世論とは逆で(笑)、職員のモチベーションが下がってきていることがわかります。小池さんは、一気に変えてしまう。例えば、予算原案にない事業などを都議会の要望を受けて復活させる「政党復活予算」。やめるのはよいのですが、各会派に一度意見を聞くということは一切しない。たとえ、全員が「あったほうがいい」と言ったとしても、最終的に知事判断で決定すればいいのに、それをせずに何の打診もなくやってしまう。
――そのやり方だと、相手を怒らせてしまいそうですね。
塩村 問題点をあぶり出す、と言えば聞こえはいいけれど、そうはなっていない部分もある。「丁寧にやってほしい」という意見も届いていて、私もそう思う面はすごくある。改革の面では、すごく応援しているし、足を引っ張りたくはない。今の体制を変えなきゃいけないことは事実なんです。ただ、もろ手を挙げて賛成はできない。小池さんのことを非難すれば、選挙で損する。今は小池さんについているほうが、世論を得られますから。でも、それは有権者に対してフェアじゃないと思うし、応援するところは応援するし、おかしいと思うところは「おかしい」と言っていきたい。
それにしても、今、都議会は「政策よりも政局」ですね。来年7月の選挙に向けて、本質論じゃないところで、話し合いが行われています。
――もう、選挙モードなんですね。
塩村 次回の都議選は難しいですよ。「今のおかしな都議会の制度を変えたい」と思うのであれば、小池さん率いるグループを応援するのはいいと思います。一方で丁寧な都政や公平で平等な都政を目指すのであれば、それは違うかもしれない。幸い都議選は、候補も政党もたくさんありますから、それぞれの候補や政党の特徴をよく考えてから投票をしてみてはいかがでしょうか。
女性は、なぜか女性「目線」の議員を選ばない傾向があるんです。例えば、「女性の活躍だ」と言いながら、男性目線で物事を進め、男性に気に入られて要職に就いていく、ということは、そのおじさんたちの意向をくみ取っていくわけですから、ダメなんですよね。
逆に、男性であっても、女性目線であればいいんですけれど、とても少ない。それから、“おじさん”議員の話をたくさんしましたが、若いからいいというわけでもありません。若くても変な議員はいっぱいいます。特に、“ノイジー・マイノリティ”(声高の少数派)といわれる、ネットを駆使して意見を強く反映させようとする議員が多いと思っています。そこにイデオロギーが介在する議員も多く、政治が「福祉」を行っている意味を理解していない若手議員が多いと感じています。SNSなどで主張していることを、しっかり見極めてください。
最後にもうひとつ。みなさんが、候補者をしっかりと見ることが大切です。選挙公約に書いてあることも大事ですけれど、本当に実行してくれるのか。書いているけれど、やっていない人に投票することが、一番マズイです。実現に向けて、きちんと動いてくれる議員を選ばなきゃダメだと思います。それにしても、次回の選挙で誰を選ぶかは難しいですね。劇場型になるかもしれません。
(上浦未来)