
1位はまさかの指原莉乃。
6月8日に日産スタジアムで最終結果が発表された『AKB48 32ndシングル選抜総選挙~夢は一人じゃ見られない~』。
「指原速報1位は、再チャレンジ可能社会の象徴」と書いた記事通りにHKT48・指原莉乃の1位という形で幕を閉じた。今回は、総選挙で選ばれた選抜(1~16位)、アンダーガールズ(17~32位)、ネクストガールズ(33~48位)、フューチャーガールズ(49~64位)のセンターを軸に、総選挙を検証する。
●指原莉乃1位獲得で、AKB48グループに“サシノミクス”を起こす
過去総選挙で、27位、19位、9位、4位を経て、ついに1位に輝いた“総選挙の風雲昇り竜”にして“総選挙のスベリ知らず”の指原莉乃。全メンバー唯一の5年連続上昇であり、当然、史上初の姉妹グループ所属メンバーでの1位である。

HKT48に移籍した指原は、自ら後進の指導にあたり、それを自らの役目とした。「財を残すは下、仕事を残すは中、人を残すを上とする」と語る名監督・野村克也氏ばりのプレイングマネジャーとして活躍。HKT48メンバーを大島優子らAKB48メンバーに紹介して交流させたほか、「スキ!スキ!スキップ!」の表題曲選抜に入れなかったチームH最年少12歳の田中菜津美の“ボスキャラ”を発見して世に広め、SKE48終身名誉研究生・松村香織のソロデビューのプロデュースを行うなど、「指原再生工場」とでも呼ぶべき後輩の人材育成にもまい進してきた。移籍という“椿事”すらも笑いに変えて、タモリ、明石家さんま、ビートたけしのお笑いBIG3からもそれぞれ大いにイジられるという、めげない姿勢も、支持率上昇の要因だろう。

自分の役目を見つけ、周囲に貢献することで認められていったその姿勢はまさに「再チャレンジ可能社会の希望の象徴」。「再チャレンジ」と言えば、安倍晋三首相であり、同首相のアベノミクスにちなみ、指原も“サシノミクス”と呼ぶべき、3本の矢が今回の総選挙に垣間見られた。「地方分権」「規制緩和」「世代交代」が挙げられるが、それらを力に変えたのも指原だ。
今回発表された上位64人の内訳ではAKB48が30人、SKE48が17人、NMB48が8人、HKT48が6人、海外組が2人、OGが1人(※兼任メンバーは最初の所属先)で、5回目にして初めてAKB48の議席が過半数を割り、AKB48は前回から13人減少。地方の力の増大はまさに「地方分権」だ。
今回の総選挙の最大の「規制緩和」と呼べるのが、初のシングル劇場盤への投票権(投票シリアルナンバーカード)封入。AKB48のシングルには通常盤と劇場盤があり、劇場盤はAKB48グループメンバーほぼ全員が参加する個別握手会参加券封入で、通販サイト・キャラアニ限定で予約販売。握手したいメンバーを事前に指定して購入できる。劇場盤にも投票権が入ったことで、今回は特に、SKE48、NMB48、HKT48の姉妹グループ所属で握手会人気が高いメンバーがより投票してもらえる可能性が高くなっていた。
「世代交代」の兆しも見える中、島崎遥香は一時、彼女が悩んでいた時期に相談に乗っていたのが指原であり、島崎は「恩人」と語っている。また、足が臭い川栄李奈に脱臭クリームをプレゼントしたのも指原であり、平田梨奈も指原を大いに慕い、茂木忍もデビュー公演直前に、指原からエールをもらうなど、メンバーが指原の気遣いに励まされたエピソードは多い。

島崎遥香は12位。
HKT48はもちろん、AKB48の後輩にも貢献してきた指原。後輩の成長を促しながら、人に教えることで自分も学び、成長するのが“サシノミクス”成長戦略だ。そんな指原の試金石となるのが松村のソロデビュー作のプロデュース。この成功いかんでは、あくまで憶測だが、指原のAKB48・2代目総合プロデューサー就任の可能性もゼロでないはずだ。
●史上最高のジャンプアップ! SKE48・柴田阿弥の「千載一遇 チャンスだ」
前回より3人多い18人(兼任含む)が64位内に名を刻んだSKE48。6位の松井珠理奈、7位の松井玲奈は、初めて姉妹グループから神7という“神々の領域”に踏み込んだ。さらに須田亜香里は、昨年から13ランクアップの16位で選抜メンバーに選ばれた。
17位でアンダーガールズのセンターになったのは、柴田阿弥。第2回総選挙以降、その前回圏外から入賞した順位では過去最高であり、“ジャンプアップ賞”を獲得した。握手会人気は高いものの、SKE48のシングル選抜にも選ばれたことがなかった柴田。4月の生誕祭では、そんな状況に卒業を悩んだことを明かし、それでもファンの支えによって「私にはSKE48しかない。それが人生の生きがい」と思い直した。そんな彼女の熱意に魅かれ、ファンとの“あうんの呼吸”で総選挙にミラクルを起こした。彼女が現在、公演で歌う「わがままな流れ星」の「千載一遇 チャンスだ」の歌詞のように、かつてないチャンスが巡ってきた!

右が17位の柴田。左は18位の峯岸みなみ。
SKE48から過去総選挙圏外から初めて壇上に立ったのは、柴田を含め7人。5月に髪を切ってセミロングに変えたチアリーダー・梅本まどか(39位)、ふんわりモードだが「片想いFinally」で名演技を見せた松本梨奈(41位)、1年9カ月の研究生を経て昇格し、SKE48のダンスをリードする斉藤真木子(42位)、“なんでも知ってる”キャラで武道館では31曲を暗誦した小林亜実(47位)、研究生時代には自らポジションを覚えて公演に貢献し、昨年8月に25cm髪を切り、セクシー担当を自称する磯原杏華(58位)、ギリギリアウトなド天然の金子栞(63位)が入賞。松本以外の6人は、組閣前のチームEであり、同チーム唯一のオリジナル曲は「みつばちガール」だけに、6人で蜂の巣の六角形のハニカム構造のように固い結束を見せた。
10人の卒業や4月以降は、東海地方でのレギュラーはあるものの、AKB48グループで唯一関東でのレギュラー番組がない(NMB48には日本テレビ系『げいにん!!2』、HKT48にはTBS系『HKT48のおでかけ!』がある)というアウェーな状況から快進撃を果たしたSKE48。多くの卒業していった仲間の涙の数だけ、残ったメンバーが成長し、彼女たちを熱心に支えたファンとの結束が感動を巻き起こした総選挙だった。


SKE48の松井玲奈(上)は7位、松井珠理奈は6位に。
過去、SKE48は総選挙後のシングルは総選挙に入賞したメンバーを軸に、選抜に選んできた。7月17日発売の12thシングル「美しい稲妻」には柴田らの名前はないが、気が早い話だが、その次の13thシングルの選抜メンバーの布陣に今から注目だ。
●佐藤亜美菜&片山陽加、AKB48の実力派を擁するネクストガールズ
ネクストガールズのセンターとなったのは、速報圏外から33位となった佐藤亜美菜。速報発表後、髪型をバッサリ切り、ショートカットに。ファン目線を持った安定のトーク力で、ラジオ冠番組を2番組持ち、後輩メンバーにも優しく相談に乗ってきた。壇上では、初の自身がセンターとなる楽曲ができることに「初めて真ん中に立って、こんなにうれしい気持ちは初めてです。真ん中の景色ってこんなにキレイなんだなって初めて思いました」と感激した。

続く、34位となった片山陽加とはそれぞれ、2010年から13年3月まで同じ事務所にいて、4月からAKS移籍となった。片山は5月には研究生公演に3日間計5公演出演し、初代チームBの実力を発揮。「純情主義」で高速ターンを見せ、5月5日の「命の使い道」のセリフ部分では圧巻の演技力を見せた。そんな佐藤と片山がダブルキャストとして、吉川晃司主演のミュージカル『SEMPO―日本のシンドラー 杉原千畝物語―』(9月10日~29日)に出演することも決定。史実を基にした舞台でAKB48きっての実力派の二人が新たな魅力を見せてくれるはずだ。彼女たちのようにAKB48劇場で必死に汗を流してきたメンバーたちの“底力くん”も垣間見られた総選挙だった。
●49位・NMB48薮下柊がチームBIIを熱烈アピール
49位となったのは、NMB48チームBIIのエース・薮下柊。壇上では「NMB48はチームNさんやチームMさんだけじゃなくて、チームBIIもめちゃくちゃいいチームなんで、ぜひ公演に足を運んでください!」と自分こと以上にチームのことをアピール。昨年10月結成のチームBIIは「思い出せる君たちへ」コンサートで唯一東京ドームシティーのチケットが予約時に売れ残ったが、「騙されたと思って食べてみて計画」として、メンバー自ら同会場や秋葉原でビラを配布し、ファンにPR。見事完売に成功して、フルハウスにし、渾身のパフォーマンスを見せた。
NMB48は、今回総選挙で「10人ランクイン」を目標と公言。結果8人だったが、先日まで兼任だった横山由依、現在兼任の市川美織を含めれば事実上10人となった。「東日本ツアー」も6月11日からスタート。「野獣のように選抜の皆さんに食らいついてこれからの48グループを私がかき乱していきたい」とぶち上げたキャプテン・山本彩を中心に、年末の『NHK紅白歌合戦』出場を目指して、フルパワーで活動する。
●現世代と次世代がぶつかる爆発的エネルギー 須田亜香里がアピールした“当事者意識”
「世代交代」がテーマとされた今回の総選挙だが、次世代の台頭もありつつ、現世代の強さも改めて垣間見えるがっぷり四つの結果となった。この1年、メディア露出も増えた次世代の一人・入山杏奈は30位で初のランクインとなるも「悔しいです。でも、悔しいなと思える自分でよかったなと思います」と歯がゆさをにじませ、来年への飛躍を誓った。
同じく決意を新たにしたのは37位でHKT48・AKB48兼任の兒玉遥は「今年は去年の篠田(麻里子)さんの言葉を胸に先輩方を潰しに行くぐらいの気持ちで頑張りたいと思います!」と宣言。「ちゅぶしに行く」と聞こえる彼女らしい発音だったが、その熱い思いは全国のファンに届いたはずだ。

決意表明した宮澤佐江
一方、「SNH48一本で行く」と宣言した宮澤佐江は、「48グループに一番必要な一生懸命になること、そして、パフォーマンスすることは後輩にはまだ負けていないと思っています」と先輩としての矜持を見せた。16位に名を刻んだ須田亜香里は「次世代が無理なら今を引っ張れる人になればいいんじゃないですか!」と、現世代として今やるべきことをするという意識の高さを熱弁。握手会、軟体芸はもちろん、笑顔を見せる曲では、圧倒的なまでの笑顔で踊り続ける須田の姿勢はAKB48グループが目指す表現のひとつの到達地点。メンバーと振り付けをシンクロさせながらも、一際目を魅くそのパフォーマンスは、レッスン場でストイックに汗を流してきたことの成果だ。彼女の発言のように、誰かに任すのではなくメンバー全員が主体性と、“当事者意識”を持てば、AKB48グループはさらに成長できるだろう。
●ファンが思いを込めた「1票の重さ」
劇場盤への投票権封入により、票数が伸びた今回の総選挙。投票方法は、各モバイルサイト、あるいは『LIVE!! ON DEMAND』月額会員も可能で、方法はさまざまだが、「1票の重さ」は変わらず、むしろ、重くなっていると表現して過言ではない。20位・高城亜樹と21位・北原里英の8票差など、まさに1票が大きな意味を持つ世界だ。推しメンを少しでも目立たせ、「夢へと近づいてほしい」と票を投じたファン、一人ひとりの思いに報い、そして、「1票」に込められた願い、感謝、決意、あるいは葛藤、苦しみを学びつつ、AKB48グループはこれからも活動にまい進していくだろう。

今年も多くの名言が生まれ、胸に去来した思いを自分の言葉で表現したメンバーたち。彼女たちが涙を流すのは、その獲得した順位が、“誰かの涙のしみた順位”だからだ。普段は仲間であるメンバーが立ちたかったその位置を奪い合う、その覚悟もまた芸能界という世界の本質なのだ。正々堂々戦ったメンバー、そして彼女を見守るファン、すべてに感謝しよう。「アリガトウ」。

(文=本城零次/撮影=岡崎隆生)