浜辺美波は、圧が強い。
例えば現在、日曜夜10時30分から放送されている『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)。本作は、ホテル総支配人だった父親の後を継いだ桜井佐耶(戸田恵梨香)が、経営が悪化している高級ホテル「グランデ・インヴルサ」を、副支配人・宇海直哉(岩田剛典)と共に立て直していく物語だ。
浜辺が演じるのは、新人パティシエの鳳来ハル。マイペースで空気が読めず、自分勝手。しかし、デザートの腕は一流で、その実力を買われて料理長に抜擢される。ハルは飄々としていてつかみどころがない。ほかの従業員たちが突然現れた宇海に対して警戒する中、いつも楽しそうに、ニコニコしながらデザートを作っている。
従業員の一人なのでそんなに大きな役ではないのだが、ついつい目が行ってしまうのは、浜辺のしゃべり方や行動がいちいち芝居がかっていて引っかかるからだろう。これは、いい意味でも、悪い意味でもだ。
浜辺は今、演じることが楽しくて仕方がないといった感じだ。その気持ちが強すぎて、「私は演技をしてます」という感じが前面に出すぎていて、それがいつも、ちょっとだけ鼻につく。
ただ、この“ちょっとだけ”のさじ加減が絶妙なのだ。
これ以上、押し付けがましいとイライラさせられるだろうが、いつもその一歩手前で止め、過剰な何かが悪い印象になる前に散っていくので、逆にこれはなんなんだ? と気になってしまう。
これは、彼女の出世作となった映画『君の膵臓をたべたい』の構造そのものである。本作で彼女は、ヒロインの山内桜良を演じた。
人と関わるのが苦手な主人公の「ぼく」に突然話しかけてきた同級生の桜良は、実は膵臓の病気を抱えた余命1年の命。友達には同情されたくないからと、病気のことを秘密にして、「ぼく」にだけは自分の気持ちを話す桜良に、「ぼく」は翻弄される。
「なんなんだ? このわけのわからない女は」と最初は思うのだが、だんだん彼女の抱えている不器用さや優しさがいとおしいものに、主人公の目線を通して感じるようになっていく。
難病モノというイメージが強いが、基本的にはちょっと変わった女の子に強引に引っ張り回される楽しさを描いた作品だ。芝居がかった浜辺の振る舞いが桜良の心情とリンクしたことで、本作は青春映画の傑作に仕上がった。
浜辺は現在17歳。
2011年に、長澤まさみを輩出した東宝シンデレラオーディションに応募してニュージェネレーション賞を受賞。東宝芸能のシンデレラルーム所属となり、同年公開のショートムービー『アリと恋文』で女優デビューした。
人気アニメを実写ドラマ化した『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』(フジテレビ系、以下『あの花』)では、主人公のひきこもりの青年の前に現れる、幼少期に命を落とした幽霊の少女(ただし、なぜか年齢は成長している)・めんまを演じた。
このドラマは、画面のレイアウトがほとんどアニメと同じという完コピドラマだったのだが、中でも浜辺の演技はすごくて、絵と生身の人間の等身や骨格の違いはあるものの、そこにめんまがいると言っても過言ではない存在感を見せていた。
『あの花』のめんまのような漫画やアニメのキャラクターを演じると、浜辺はハマる。中でも圧巻だったのが、前クールに放送されていた深夜ドラマ『賭ケグルイ』(TBS系)だ。本作はギャンブルが公認されている私立高校を舞台としたドラマで、生徒たちはギャンブルの勝敗によって出来上がった階級制度に苦しめられていた。
そこに、浜辺が演じる謎の転校生・蛇喰(じゃばみ)夢子がやってくる。彼女はギャンブルの天才で、相手のイカサマを見抜くと同時に、自分の快楽のために全財産を賭けるような危険な勝負を次々と仕掛けていく。
トランプ等のカードゲームを見せるギャンブルモノの映像作品は、画面の動きが少ないため、淡白なものとなってしまう。『賭ケグルイ』は、その欠点を役者の芝居で補っていて、過剰なセリフ回しや心理描写がとにかく派手な作品となっていた。そんな中、夢子のライバル役を演じた森川葵は、水を得た魚のように過剰な内面をさらけ出す芝居をしていた。飛び道具的な過剰な芝居をやらせたら今の森川は若手女優ではダントツだが、そんな森川と拮抗するくらい、浜辺はヤバイ演技をしていた。
極限状態で借金を何億円も背負いながら、ギャンブルに没頭していく夢子の表情は、性的興奮を覚えているようなエロティックなもので、10代の若手女優にこんないやらしい表情をさせていいのか? とドキドキした。
一見、清純派美少女に見えるが、こちらの想像を超えた表情を次々と見せてくれる浜辺。「私すごいでしょ」というドヤ顔感が透けて見えて、イラつかされるところもあるのだが、それも含めて目が離せない。もはや、浜辺は、その「圧の強さ」を、演技のスタイルとして完全に自分のものにしたといえるだろう。今後どうなるのか、末恐ろしい存在である。
(文=成馬零一)
●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
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