「触られるのは嫌だ」と言う権利はある! “痴漢抑止バッジ”の効果と、その後

 「痴漢は犯罪です」「私たちは泣き寝入りしません」そんなフレーズが書かれたバッジ「痴漢抑止バッジ」。女子高生が考案した「痴漢抑止カード」をもとに、「かわいくてつけやすいものを」とデザインを公募し、2016年に誕生した。その後、多くのメディアで取り上げられた痴漢抑止バッジだが、現在はどれぐらい広まっているのか? なにより効果はあるのか? 性犯罪防止・抑止のためにバッジの制作や普及を進める「一般社団法人 痴漢抑止活動センター」代表理事の松永弥生さんに話を聞いた。

■共感が広がる一方で、課題も

 松永さんはバッジを普及させるために、防犯キャンペーンなどの無料配布ではなく、流通に乗せたいと考えている。「キャンペーンでは、その時その場にいた人しか入手できません。防犯ブザーのように必要とする人が、いつでも手に入れられるようにしたい」というのが理由だ。営業は未経験だったが、商談会にも参加し、販路を求めた。

 初めての商談会で、イトーヨーカドー津久野店と商談が成立。16年10月に販売がスタートした。バイヤーは、新聞記事で痴漢抑止バッジを知っていたそうだ。17年2月には、別の大手スーパーでも期間限定で関西の10店舗、3月に南海電鉄が運営するコンビニ「アンスリー」20店舗で販売。夏には首都圏にも進出。小田急電鉄と相模鉄道の売店、原宿竹下通りの雑貨店「ハッピーワン」で取り扱いが始まった。18年3月からは東急ハンズあべのキューズモール店で、防犯ブザーと同じ棚で販売されている。

「かつて自分も痴漢被害に遭い、悔しい思いをしたという女性バイヤーさんや、この活動に意義を感じた男性のバイヤーさんが、積極的に上司に掛け合ってくださり、実現しました。駅構内や駅の近くのお店は、特に売れ行きがいいです」

 現在、痴漢抑止バッジは約6000個普及しているそうだ。引き続き、駅ナカ・駅チカ店舗に向けて営業活動を続けているが、バッジを扱ってもらうには大きく分けると2つの課題があるという。

「バッジは利益が出にくい商品なのです。食べ物や消耗品ではないので、次々売れることはありません。また、このバッジは利幅が少ないので、売れたとしても大きな利益にならないのです。特に駅のコンビニは商品がよく売れる立地で、かつ坪数が狭い『激戦区』。坪数に応じて売り上げを上げないといけないので、簡単には置いてもらえません」

 さらに利益の面だけではなく、鉄道系列ならではの事情もあるらしい。

 バッジを紹介したバイヤーさんが関心を持ち、上司に話を上げてくれても、「このバッジを売店で売っていたら、痴漢が多い鉄道だと思われる」と却下されたことがあったという。「三大首都圏は、どの路線も痴漢が多いんですけどね」と松永さんは苦笑する。

「『ほかの鉄道会社と足並みをそろえ、一斉に販売できるなら扱う』という会社もあります。痴漢が減るのは鉄道会社にとっても大きなメリットだと思いますが、ブランディングイメージも大切なのでしょう」

 なかなか順調に進まないバッジの普及。しかし、松永さんは手ごたえを感じているという。

「取扱店舗は増えていますし、警察からの共感も得られ、防犯キャンペーンにバッジを使っていただくこともありました。社会が少しずつ、痴漢抑止バッジを活用する方向に動いていると感じます」

 痴漢抑止活動を立ち上げた15年当初、「やってもいないことで罪に問われる男の方が大変」という否定的な意見もあったという。しかし、バッジを製作する資金調達のために行ったクラウドファンディングでは、協力者の4割が男性、バッジのデザインコンテストの応募者、バッジ購入者も4割が男性。男性支援者から、「被害者も加害者も出したくない」「性犯罪に苦しむ人がいなくなることを願っております」といったメッセージもあったという。

 また、一部のフェミニストから「被害に遭う女の子は悪くないのに、バッジで被害を防止させようとするのは、セカンドレイプにつながる」という指摘もあった。松永さんは一定の理解を示しつつも反論する。

「これまで痴漢やレイプ被害に遭った女性は、警察をはじめ周りの大人や友人から、『暗い道を歩いていたから』『あなたにも隙があった』などと言われてきた。だから、それを思わせるような言動はいけないということなのでしょう。ですが、これから初めて通勤ラッシュの電車に乗って学校に行く女子高生に、電車の中に痴漢がいることや、身の守り方を教えずに送り出すのは危険です」

■9割以上が効果に肯定的な評価

 批判を受けたり、販路拡大に苦戦したりしながらも、痴漢抑止バッジは個人や企業、警察の理解や共感により、徐々に広がりつつある。だが、本当に痴漢を抑止する効果はあるのだろうか?

 松永さんは16年に埼玉県の浦和麗明高校に100個寄贈した際、バッジについての感想をはがきで募り、女子生徒からの回答を集計した。回答した70名の生徒のうち「効果があった」(バッジをつけるまでは痴漢被害に遭っていたが、つけたら被害がなくなった等)と答えた生徒は61.4%、「効果を感じた」(痴漢被害に遭ったことはあるが、最近は被害に遭っておらず、バッジをつけてからもない。バッジをつけると、より安心。電車に乗ると、周りにほかの女性客が立ってくれるといった配慮があった等)と答えた生徒は32.9%と、90%以上の生徒が肯定的な評価をしている。「変化なし」(これまで痴漢に遭ったことがない)は4.3%、「効果がないと思う」(友達がそう言っていた)は1.4%だったそうだ。

 松永さんは、「『バッジをつけていたのに痴漢に遭った』というコメントは、今までのところ届いていません。痴漢抑止バッジには効果があります」と断言する。

■コンテストで痴漢問題を共有

 バッジのデザインは、毎年コンテストを実施し、選ばれた5種類を商品化している。2回目の16年度からは、将来デザイナーを目指す学生を対象とした。これは、「コンテストに参加することで、同世代が痴漢被害に遭っていると知り、自分のデザインで解決する方法を考えてほしい」という狙いがある。自分は男だから関係ない、私は痴漢に遭ったことがないから関係ない――などと他人事として捉えるのではなく、社会の課題として、皆で解決法を考える機会が「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」だ。

「私は、『このバッジをつけて、自分を守りなさい』と被害者を突き放すつもりはありません。活動を通じて、10年後の社会を変えていきたいのです。世の中の表現には、すべてデザインの要素があります。ジェンダー意識の高いデザイナーが増えれば、社会に発信される情報の質も変わるでしょう」

 17年度のコンテストには、全国43都道府県とニューヨーク、ソウルから1338作品の応募があった。デザインと共に、活動へのメッセージも寄せられている。「今後は学校との連携も強化して、参加者を増やしていきたい」と松永さんは話す。今年も、8月にコンテストを実施するそうだ。

 松永さんは今後、バッジの普及に加えて、中学生・高校生に対して痴漢から自分の身を守るための教育をしたいとも考えている。

「バッジをつけていても、痴漢に遭う可能性はゼロではありません。バッジが見えないかもしれないし、加害者の視力によっては『私たちは泣き寝入りしません 痴漢は犯罪です』の文字が見えにくい場合もあります。だから、バッジでの痴漢の抑止と、痴漢に遭ってしまった時の対処方法の両方が必要だと考えています」

 そして、バッジの有無にかかわらず、痴漢抑止のために伝えていきたいことがあるという。

「もし電車内で触れるなど、痴漢に遭ったのでは――と感じたら『当たっています。どけてください』と言うように伝えたい。警察から『痴漢です』と大きな声を出すように指導されることがありますが、加害者と周りの2〜3人に聞こえる程度の声で十分です。また、『痴漢です』と言うことは『あなたは犯罪者です』と言うことで、決めつけになってしまうし、『冤罪だ』と主張されると、周りの人も助けづらくなります。でも『当たっている手をどけてほしい』のは事実。これなら『痴漢!』よりは言いやすいですよね」

 確かに相手に面と向かって「痴漢」だと言うのは、冤罪を引き起こすかもしれないと思い、声を上げるのをためらうケースもあるだろう。

「『これは痴漢かな? 偶然、手が当たっただけかな?』と考える必要はありません。加害者はその迷いにつけ込み、どちらとも取れるような触り方をします。それを繰り返しても何も言ってこないとわかったら、下着の中に手を入れてくるなど、エスカレートすることも。その状態になると、怖くて声が出せなくなります。だから、早く声を上げる必要があるのです」

 「どけてください」の一言が言えない理由を、松永さんは教育の不足だと考えている。

「私たちには、嫌な触られ方をしたら『嫌だ』という権利があります。けれど、これまで大人は子どもに、そのルールを伝えてきませんでした。教えなければ、子どもは被害に遭っても『嫌だ』と言えません。特に、子どもが知らない大人に対して言うのは難しいです。将来的には、子どもたちへ『NOを言う権利』を伝えるワークショップを行いたいですね」

 15年に、ひとりの女子高生と彼女を支援する数人の人たちから始まった痴漢抑止活動。バッジで痴漢から被害者を守り、デザインコンテストで問題をシェアする。「性暴力に対してNOと言う」ことに対する理解と共感の輪が、世代や性別、立場を超えて、少しずつ広がっているのが感じられた。
(谷町邦子)

一般社団法人痴漢抑止活動センター

「触られるのは嫌だ」と言う権利はある! “痴漢抑止バッジ”の効果と、その後

 「痴漢は犯罪です」「私たちは泣き寝入りしません」そんなフレーズが書かれたバッジ「痴漢抑止バッジ」。女子高生が考案した「痴漢抑止カード」をもとに、「かわいくてつけやすいものを」とデザインを公募し、2016年に誕生した。その後、多くのメディアで取り上げられた痴漢抑止バッジだが、現在はどれぐらい広まっているのか? なにより効果はあるのか? 性犯罪防止・抑止のためにバッジの制作や普及を進める「一般社団法人 痴漢抑止活動センター」代表理事の松永弥生さんに話を聞いた。

■共感が広がる一方で、課題も

 松永さんはバッジを普及させるために、防犯キャンペーンなどの無料配布ではなく、流通に乗せたいと考えている。「キャンペーンでは、その時その場にいた人しか入手できません。防犯ブザーのように必要とする人が、いつでも手に入れられるようにしたい」というのが理由だ。営業は未経験だったが、商談会にも参加し、販路を求めた。

 初めての商談会で、イトーヨーカドー津久野店と商談が成立。16年10月に販売がスタートした。バイヤーは、新聞記事で痴漢抑止バッジを知っていたそうだ。17年2月には、別の大手スーパーでも期間限定で関西の10店舗、3月に南海電鉄が運営するコンビニ「アンスリー」20店舗で販売。夏には首都圏にも進出。小田急電鉄と相模鉄道の売店、原宿竹下通りの雑貨店「ハッピーワン」で取り扱いが始まった。18年3月からは東急ハンズあべのキューズモール店で、防犯ブザーと同じ棚で販売されている。

「かつて自分も痴漢被害に遭い、悔しい思いをしたという女性バイヤーさんや、この活動に意義を感じた男性のバイヤーさんが、積極的に上司に掛け合ってくださり、実現しました。駅構内や駅の近くのお店は、特に売れ行きがいいです」

 現在、痴漢抑止バッジは約6000個普及しているそうだ。引き続き、駅ナカ・駅チカ店舗に向けて営業活動を続けているが、バッジを扱ってもらうには大きく分けると2つの課題があるという。

「バッジは利益が出にくい商品なのです。食べ物や消耗品ではないので、次々売れることはありません。また、このバッジは利幅が少ないので、売れたとしても大きな利益にならないのです。特に駅のコンビニは商品がよく売れる立地で、かつ坪数が狭い『激戦区』。坪数に応じて売り上げを上げないといけないので、簡単には置いてもらえません」

 さらに利益の面だけではなく、鉄道系列ならではの事情もあるらしい。

 バッジを紹介したバイヤーさんが関心を持ち、上司に話を上げてくれても、「このバッジを売店で売っていたら、痴漢が多い鉄道だと思われる」と却下されたことがあったという。「三大首都圏は、どの路線も痴漢が多いんですけどね」と松永さんは苦笑する。

「『ほかの鉄道会社と足並みをそろえ、一斉に販売できるなら扱う』という会社もあります。痴漢が減るのは鉄道会社にとっても大きなメリットだと思いますが、ブランディングイメージも大切なのでしょう」

 なかなか順調に進まないバッジの普及。しかし、松永さんは手ごたえを感じているという。

「取扱店舗は増えていますし、警察からの共感も得られ、防犯キャンペーンにバッジを使っていただくこともありました。社会が少しずつ、痴漢抑止バッジを活用する方向に動いていると感じます」

 痴漢抑止活動を立ち上げた15年当初、「やってもいないことで罪に問われる男の方が大変」という否定的な意見もあったという。しかし、バッジを製作する資金調達のために行ったクラウドファンディングでは、協力者の4割が男性、バッジのデザインコンテストの応募者、バッジ購入者も4割が男性。男性支援者から、「被害者も加害者も出したくない」「性犯罪に苦しむ人がいなくなることを願っております」といったメッセージもあったという。

 また、一部のフェミニストから「被害に遭う女の子は悪くないのに、バッジで被害を防止させようとするのは、セカンドレイプにつながる」という指摘もあった。松永さんは一定の理解を示しつつも反論する。

「これまで痴漢やレイプ被害に遭った女性は、警察をはじめ周りの大人や友人から、『暗い道を歩いていたから』『あなたにも隙があった』などと言われてきた。だから、それを思わせるような言動はいけないということなのでしょう。ですが、これから初めて通勤ラッシュの電車に乗って学校に行く女子高生に、電車の中に痴漢がいることや、身の守り方を教えずに送り出すのは危険です」

■9割以上が効果に肯定的な評価

 批判を受けたり、販路拡大に苦戦したりしながらも、痴漢抑止バッジは個人や企業、警察の理解や共感により、徐々に広がりつつある。だが、本当に痴漢を抑止する効果はあるのだろうか?

 松永さんは16年に埼玉県の浦和麗明高校に100個寄贈した際、バッジについての感想をはがきで募り、女子生徒からの回答を集計した。回答した70名の生徒のうち「効果があった」(バッジをつけるまでは痴漢被害に遭っていたが、つけたら被害がなくなった等)と答えた生徒は61.4%、「効果を感じた」(痴漢被害に遭ったことはあるが、最近は被害に遭っておらず、バッジをつけてからもない。バッジをつけると、より安心。電車に乗ると、周りにほかの女性客が立ってくれるといった配慮があった等)と答えた生徒は32.9%と、90%以上の生徒が肯定的な評価をしている。「変化なし」(これまで痴漢に遭ったことがない)は4.3%、「効果がないと思う」(友達がそう言っていた)は1.4%だったそうだ。

 松永さんは、「『バッジをつけていたのに痴漢に遭った』というコメントは、今までのところ届いていません。痴漢抑止バッジには効果があります」と断言する。

■コンテストで痴漢問題を共有

 バッジのデザインは、毎年コンテストを実施し、選ばれた5種類を商品化している。2回目の16年度からは、将来デザイナーを目指す学生を対象とした。これは、「コンテストに参加することで、同世代が痴漢被害に遭っていると知り、自分のデザインで解決する方法を考えてほしい」という狙いがある。自分は男だから関係ない、私は痴漢に遭ったことがないから関係ない――などと他人事として捉えるのではなく、社会の課題として、皆で解決法を考える機会が「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」だ。

「私は、『このバッジをつけて、自分を守りなさい』と被害者を突き放すつもりはありません。活動を通じて、10年後の社会を変えていきたいのです。世の中の表現には、すべてデザインの要素があります。ジェンダー意識の高いデザイナーが増えれば、社会に発信される情報の質も変わるでしょう」

 17年度のコンテストには、全国43都道府県とニューヨーク、ソウルから1338作品の応募があった。デザインと共に、活動へのメッセージも寄せられている。「今後は学校との連携も強化して、参加者を増やしていきたい」と松永さんは話す。今年も、8月にコンテストを実施するそうだ。

 松永さんは今後、バッジの普及に加えて、中学生・高校生に対して痴漢から自分の身を守るための教育をしたいとも考えている。

「バッジをつけていても、痴漢に遭う可能性はゼロではありません。バッジが見えないかもしれないし、加害者の視力によっては『私たちは泣き寝入りしません 痴漢は犯罪です』の文字が見えにくい場合もあります。だから、バッジでの痴漢の抑止と、痴漢に遭ってしまった時の対処方法の両方が必要だと考えています」

 そして、バッジの有無にかかわらず、痴漢抑止のために伝えていきたいことがあるという。

「もし電車内で触れるなど、痴漢に遭ったのでは――と感じたら『当たっています。どけてください』と言うように伝えたい。警察から『痴漢です』と大きな声を出すように指導されることがありますが、加害者と周りの2〜3人に聞こえる程度の声で十分です。また、『痴漢です』と言うことは『あなたは犯罪者です』と言うことで、決めつけになってしまうし、『冤罪だ』と主張されると、周りの人も助けづらくなります。でも『当たっている手をどけてほしい』のは事実。これなら『痴漢!』よりは言いやすいですよね」

 確かに相手に面と向かって「痴漢」だと言うのは、冤罪を引き起こすかもしれないと思い、声を上げるのをためらうケースもあるだろう。

「『これは痴漢かな? 偶然、手が当たっただけかな?』と考える必要はありません。加害者はその迷いにつけ込み、どちらとも取れるような触り方をします。それを繰り返しても何も言ってこないとわかったら、下着の中に手を入れてくるなど、エスカレートすることも。その状態になると、怖くて声が出せなくなります。だから、早く声を上げる必要があるのです」

 「どけてください」の一言が言えない理由を、松永さんは教育の不足だと考えている。

「私たちには、嫌な触られ方をしたら『嫌だ』という権利があります。けれど、これまで大人は子どもに、そのルールを伝えてきませんでした。教えなければ、子どもは被害に遭っても『嫌だ』と言えません。特に、子どもが知らない大人に対して言うのは難しいです。将来的には、子どもたちへ『NOを言う権利』を伝えるワークショップを行いたいですね」

 15年に、ひとりの女子高生と彼女を支援する数人の人たちから始まった痴漢抑止活動。バッジで痴漢から被害者を守り、デザインコンテストで問題をシェアする。「性暴力に対してNOと言う」ことに対する理解と共感の輪が、世代や性別、立場を超えて、少しずつ広がっているのが感じられた。
(谷町邦子)

一般社団法人痴漢抑止活動センター

レイプ被害者を描いた衝撃の映画『私は絶対許さない』主演、女優・平塚千瑛の素顔に迫る――

 昨年10月、ハリウッドの映画プロデューサー・ハーヴェイ・ワインスタイン氏の性的スキャンダルが明らかになったことで、「#MeToo」という言葉をキーワードにSNS上でセクハラやパワハラ被害を告発する動きが、世界的な広がりをみせている。

 そんな中、残虐な性犯罪が多発しているインドで開催された「ノイダ国際映画祭」で、審査員特別賞を受賞した話題の日本映画『私は絶対許さない』が4月7日に公開される。

“15歳でレイプ被害に遭い、男性への復讐を誓う”という、実在の女性の手記を原作に、精神科医でもある和田秀樹監督がメガホンを取ったこの作品。主演に選ばれた女優は、この役とどのように出会い、向き合い、そして闘ったのか。公開を前に、彼女の魅力に迫った。

* * *

――本作に主演することになった経緯を教えてください。

平塚千瑛(以下、平塚) 2016年の9月に初めての写真集『Birth』(双葉社)を出させていただいて、その写真集を新聞や週刊誌に載せていただく機会が増えました。その記事を見た映画のスタッフの方から、「オーディションを受けてみないか?」とお誘いを受けたのがきっかけです。

――最初に原作(『私は絶対許さない。15歳で集団レイプされた少女が風俗嬢になり、さらに看護師になった理由』著:雪村葉子/ブックマン社)を読んだ時は、どのように感じましたか?

平塚 この本を読んでいて、心が痛くなり、「これは本当に起こったことなのだろうか?」と初めは信じられませんでした。でも、同じ女性という立場から「女性がこういった性犯罪に遭っているということを、もっと世の中に知ってもらわなければいけない」と感じ、ぜひとも主演をやらせていただきたいと思いましたね。

■「運命を感じた主人公との出会い」

 

――オーディションで平塚さんが選ばれたのは、どのような点を評価されたのだと思いますか?

平塚 原作者の雪村葉子さんにお会いしたんですが、雰囲気や話している感じ、顔まで私によく似ていたんです。雪村さんご自身も「平塚さんて私に似てますよね」と言ってくださいました。

 それと、不思議なことなんですが、作中で主人公「ようこ」が源氏名を次々変えていくんですね。最初に「かおり」と名乗り、次が「ちあき」なんです。実は私の母が「ようこ」で、姉が「かおり」、それで私は「ちあき」じゃないですか。もう運命しか感じなかったです。

――まさに、“出会うべくして出会った役”という感じですね。

平塚 はい。雪村さんにもそのお話をして、打ち解けることができました。

――映画は「主観撮影」(主人公の目線で映像が撮られている)を用いられていますが、具体的にはどのように撮影していたのでしょう?

平塚 撮影監督の高間(賢治)さんが私のすぐ横にいて、相手の俳優さんがカメラ目線で演技をするという手法です。カメラを固定する棒のようなものを高間さんが私の隣で持ち、カメラ本体は私の顔の前に来るようにして撮影しました。全ての動きを高間さんと二人三脚で行うので大変な撮影でした。そして主観撮影のためカメラに私は映っておらず、声だけの演技も多くて、大変難しかったですが本当に勉強させていただきました。

――「特にこんなシーンを注目して欲しい」というところはありますか?

平塚 女性と男性で別々にあるんです。女性の方には、初めは彼の葉子に対する思いが愛情だと信じて受け入れるのですが徐々にその思いが歪んだ愛情だという事に気づき、この人といたら駄目だと気付く瞬間。男性には、エンディングのシーンを見て、“女性の強さ”、“怖さ”を感じて欲しいです。

 このエンディングは、見る人によって、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか分かれると思うんです。ただ、実際に演じた私は「葉子は幸せな道を歩んでいる」と感じました。

 雪村さんとお会いしてみると、あのような痛ましい被害に遭っているとは思えないほど、周囲を和やかにしてくれる女性なんです。もう、「ここまで自分の心を殺して頑張って強く生きてきた葉子さんが幸せにならないんだったら、誰が幸せになるんだ」って思いました。

 実は、映画出演にあたり、同じように性被害に遭ってトラウマを抱えている方から、「映画を見に行こうと思います」という話を聞いたりしました。もしかしたら、映画を見ることで過去の傷をえぐってしまうかもしれないという思いもあるんです。でも、最後まで見てもらいたいです。どんな境遇にも負けず、常に世の中の理不尽や非常識と闘いながら生きてきた雪村さんから勇気をもらえると信じています。

 それは「性被害」ということだけにとどまらず、すべての人に「生きていく強さ」を教えてくれていると思うんです。

――体を張ったハードなシーンが多かったと思います。やはり、辛いこともありました?

平塚 最初に風俗でのシーンを撮影したんですが、なかなかメンタルが追いついていかなくて……カットがかかった瞬間は涙が止まらなくなりました。緊張なのか不安なのか恐怖なのかわからない、そんな感情でした。でも、その分得るものは大きくて、今回の演技を通して、自分の中で一皮も二皮もむけたと思っています。

――佐野史郎さんと一緒のシーンが多いですが、どのような方でしたか?

平塚 私があまりに緊張しっぱなしだったので、「そんなに緊張しなくていいんだよ」と言っていただいて。もうすべて身を任せる感じで演じていました。佐野さんの役柄もとにかくドラマ『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)の冬彦さんと重なり、現場にいてもゾクゾクするような演技を目の当たりにして、とてもいい経験をさせていただきました。

――他の共演者の方はいかがでした?

平塚 隆大介さんと東てる美さんのサービスエリアでの喧嘩のシーンを撮影している時に、一般のお客さんが止めに入るぐらいの迫真の演技をされていたんです。その演技力に圧倒されて、「これが演じるっていうことか」と硬直するくらい感動しました。

 他にもとにかく個性の強い役者さんばかりでしたので、みなさんと一緒にこの作品に携われたことはこれから女優業を歩んでいく私にとって財産になりました。

――作品では前半の舞台が東北ですよね。平塚さんご自身も山形の出身ということで、何か通じるものはありましたか?

平塚 現場の和室のシーン、親戚が集まっている様子などは実家を思い出しましたね。噂がすぐに広まってしまうところとかも「分かるなぁ」と思って(苦笑)。

――映画で、葉子は過去を捨てて上京するわけですが、平塚さんが上京した時は、どのような気持ちでしたか?

平塚 私は24歳の時に地元でスカウトされて上京したので、「人生一回だし、東京に行ってみよう」というような感じでした。その時はそんなに強い思いや意気込みのようなものはありませんでした(笑)。

――主人公・葉子にとって「男性」とはどういう存在だと思われますか?

平塚 自分を傷つけた男性のことは、今でも殺したいと思っていると思います。ただ、その思いを前に進むパワーとエネルギーに変えるのもまた、男性相手の性風俗の仕事だったりするんですよね。生きていくための手段として必要な存在だったと思います。

――インドの「ノイダ国際映画祭」では、審査員特別賞を受賞しましたね。

平塚 インドは性犯罪がとても多いと聞いています。特に幼児の強姦とか輪姦が日常茶飯事に行われていると聞きました。その国で賞をとれたのは大変意味のあることだと思います。インドの性犯罪を減らすことに役立てればなと思います。また、日本でも、子どもたちを守っていく立場の家族や公的な機関、NPO団体の方などに見ていただきたいです。

――今回の役柄もそうですが、平塚さんは、外見でクールに見られがちですよね。

平塚 そうなんです。もう、それで損しかしていない(笑)。怒ってるわけでもないのに、「怖そう」とか「近寄りがたい」と思われて。「話してみたら全然違う」ってなるんですけどね。

 一時はだいぶ試行錯誤していて。ボケてみたり、最初からヘラヘラしてたりもしたんです。でも、「逆に怖い」「変!」って言われてしまって(笑)。最近はインタビューなどでお話をする機会が増えたので、以前ほどは冷たく見られなくなりました。

■「ファンの方がお父さんよりも好き」

 

――グラビアや舞台でも活躍されていますが、それぞれ意識することに違いはありますか?

平塚 全然違いますね。グラビアは、カメラマンさんと一対一で作り上げるものですが、映像のように、そこに演技が入ってくると全くの別物になります。

 舞台は、お客さんの反応も含めて一番演技の勉強になります。舞台で得たことがギュッと詰まったものがドラマとか映画に反映されるのかなと思っています。

 今、肩書としては「グラビア女優」としているんですが、需要がある限りグラビア活動も続けていきたいです。あとは、「これ」と決めてしまわずに、いろんなことに挑戦したいですね。

――今後、女優として演じてみたい役はありますか?

平塚 今まで演じてきたのが、激しい女性の役が多かったので、今回のようにトラウマを抱えている女性など、これまで経験したことがない役を演じてみたいです。コメディも大好きなので、そんな演技もしてみたい。韓国のアイドルグループ・2PMのチャンソンさんの映画『忘れ雪』(2015)では掃除のおばさんの役をやりました(笑)。とにかくたくさんの役を演じて、一人前の女優になっていきたいです。

――撮影会などでファンの方と触れ合うことも多いと思いますが、平塚さんにとってファンはどのような存在ですか?

平塚 私のファンは、どんなお仕事をしても「やったね!よかったね!」と肉親のように喜んでくれるんです。ずっと昔からファンでいてくれる方もいて「まだファンでいてくれるんだ」と感動するほどです。私、ファザコンなんですけど、お父さんよりも大好きです(笑)。

 今回の映画を見てファンになってくれる方がいらっしゃれば嬉しいです。全国いろいろなところに舞台挨拶で伺いたいですね。

――平塚さんの意外な一面として、アイドルユニット「A応P」のファンだと伺ったのですが。

平塚 はい。アニメの『おそ松さん』(テレビ東京系)を見ていたら、彼女たちのPVが流れて、それを見て一目惚れしました。残念ながら推しの子は卒業してしまったのですが、今は研究生で新たな推しを見つけたので、そちらを応援しています。もう親心みたいな感じです(笑)。前回のツアーが舞台と重なって行けなかったので、次のツアーは東名阪を追いかけようかと思っています。本当にミーハーなんですよ、私……(爆笑)。

――最後に、これから映画を見る方にメッセージがあればお願いします。

平塚 この映画が実話であるということ、そして性犯罪に遭われて苦しんでいる方がたくさんいるということを知っていただきたいです。そして、被害者の方々が声を上げられる世の中になって欲しい。もし、同じように辛い思いをしている人がこの作品を見て、「自分も強く生きよう」と思い、そして幸せな人生を生きてくだされば本望です。

 男性の方には、これから伴侶になる方が同じような苦しみを抱えていたら、守ってあげてほしい。女性に優しく接してあげてほしいなと思います。

* * *

 170cmの身長と、抜群のスタイル、そしてクールなルックス。ハードな役柄を演じきった彼女の素顔は、驚くほどしなやかで正義感にあふれるものだった。

 自分に壁を作らず、どんなジャンルにでも挑戦していく強さ。映画主演というハードルを越え、新たな世界に踏み出した彼女のこれからの活躍が期待される。
(取材・文=プレヤード)

●平塚千瑛(ひらつか・ちあき)
1986年生まれ。山形県米沢市出身。24歳の時に地元でスカウトされ上京。2011年ミス・アース・ジャパン ファイナリスト、2012年ミス・ユニバース・ジャパン セミファイナリストなどを経て、グラビア、女優、バラエティとマルチに活動する。『私は絶対許さない』では、映画初主演となる。 写真集『Birth』(双葉社)発売中。

オフィシャルブログ『今日もありがとう』
https://ameblo.jp/chiaki-143x

Twitter:@chiaki_Hira2ka

 

 

 ■映画『私は絶対許さない』(監督:和田秀樹)
 4月7日から、テアトル新宿ほか全国公開

レイプ被害者を描いた衝撃の映画『私は絶対許さない』主演、女優・平塚千瑛の素顔に迫る――

 昨年10月、ハリウッドの映画プロデューサー・ハーヴェイ・ワインスタイン氏の性的スキャンダルが明らかになったことで、「#MeToo」という言葉をキーワードにSNS上でセクハラやパワハラ被害を告発する動きが、世界的な広がりをみせている。

 そんな中、残虐な性犯罪が多発しているインドで開催された「ノイダ国際映画祭」で、審査員特別賞を受賞した話題の日本映画『私は絶対許さない』が4月7日に公開される。

“15歳でレイプ被害に遭い、男性への復讐を誓う”という、実在の女性の手記を原作に、精神科医でもある和田秀樹監督がメガホンを取ったこの作品。主演に選ばれた女優は、この役とどのように出会い、向き合い、そして闘ったのか。公開を前に、彼女の魅力に迫った。

* * *

――本作に主演することになった経緯を教えてください。

平塚千瑛(以下、平塚) 2016年の9月に初めての写真集『Birth』(双葉社)を出させていただいて、その写真集を新聞や週刊誌に載せていただく機会が増えました。その記事を見た映画のスタッフの方から、「オーディションを受けてみないか?」とお誘いを受けたのがきっかけです。

――最初に原作(『私は絶対許さない。15歳で集団レイプされた少女が風俗嬢になり、さらに看護師になった理由』著:雪村葉子/ブックマン社)を読んだ時は、どのように感じましたか?

平塚 この本を読んでいて、心が痛くなり、「これは本当に起こったことなのだろうか?」と初めは信じられませんでした。でも、同じ女性という立場から「女性がこういった性犯罪に遭っているということを、もっと世の中に知ってもらわなければいけない」と感じ、ぜひとも主演をやらせていただきたいと思いましたね。

■「運命を感じた主人公との出会い」

 

――オーディションで平塚さんが選ばれたのは、どのような点を評価されたのだと思いますか?

平塚 原作者の雪村葉子さんにお会いしたんですが、雰囲気や話している感じ、顔まで私によく似ていたんです。雪村さんご自身も「平塚さんて私に似てますよね」と言ってくださいました。

 それと、不思議なことなんですが、作中で主人公「ようこ」が源氏名を次々変えていくんですね。最初に「かおり」と名乗り、次が「ちあき」なんです。実は私の母が「ようこ」で、姉が「かおり」、それで私は「ちあき」じゃないですか。もう運命しか感じなかったです。

――まさに、“出会うべくして出会った役”という感じですね。

平塚 はい。雪村さんにもそのお話をして、打ち解けることができました。

――映画は「主観撮影」(主人公の目線で映像が撮られている)を用いられていますが、具体的にはどのように撮影していたのでしょう?

平塚 撮影監督の高間(賢治)さんが私のすぐ横にいて、相手の俳優さんがカメラ目線で演技をするという手法です。カメラを固定する棒のようなものを高間さんが私の隣で持ち、カメラ本体は私の顔の前に来るようにして撮影しました。全ての動きを高間さんと二人三脚で行うので大変な撮影でした。そして主観撮影のためカメラに私は映っておらず、声だけの演技も多くて、大変難しかったですが本当に勉強させていただきました。

――「特にこんなシーンを注目して欲しい」というところはありますか?

平塚 女性と男性で別々にあるんです。女性の方には、初めは彼の葉子に対する思いが愛情だと信じて受け入れるのですが徐々にその思いが歪んだ愛情だという事に気づき、この人といたら駄目だと気付く瞬間。男性には、エンディングのシーンを見て、“女性の強さ”、“怖さ”を感じて欲しいです。

 このエンディングは、見る人によって、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか分かれると思うんです。ただ、実際に演じた私は「葉子は幸せな道を歩んでいる」と感じました。

 雪村さんとお会いしてみると、あのような痛ましい被害に遭っているとは思えないほど、周囲を和やかにしてくれる女性なんです。もう、「ここまで自分の心を殺して頑張って強く生きてきた葉子さんが幸せにならないんだったら、誰が幸せになるんだ」って思いました。

 実は、映画出演にあたり、同じように性被害に遭ってトラウマを抱えている方から、「映画を見に行こうと思います」という話を聞いたりしました。もしかしたら、映画を見ることで過去の傷をえぐってしまうかもしれないという思いもあるんです。でも、最後まで見てもらいたいです。どんな境遇にも負けず、常に世の中の理不尽や非常識と闘いながら生きてきた雪村さんから勇気をもらえると信じています。

 それは「性被害」ということだけにとどまらず、すべての人に「生きていく強さ」を教えてくれていると思うんです。

――体を張ったハードなシーンが多かったと思います。やはり、辛いこともありました?

平塚 最初に風俗でのシーンを撮影したんですが、なかなかメンタルが追いついていかなくて……カットがかかった瞬間は涙が止まらなくなりました。緊張なのか不安なのか恐怖なのかわからない、そんな感情でした。でも、その分得るものは大きくて、今回の演技を通して、自分の中で一皮も二皮もむけたと思っています。

――佐野史郎さんと一緒のシーンが多いですが、どのような方でしたか?

平塚 私があまりに緊張しっぱなしだったので、「そんなに緊張しなくていいんだよ」と言っていただいて。もうすべて身を任せる感じで演じていました。佐野さんの役柄もとにかくドラマ『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)の冬彦さんと重なり、現場にいてもゾクゾクするような演技を目の当たりにして、とてもいい経験をさせていただきました。

――他の共演者の方はいかがでした?

平塚 隆大介さんと東てる美さんのサービスエリアでの喧嘩のシーンを撮影している時に、一般のお客さんが止めに入るぐらいの迫真の演技をされていたんです。その演技力に圧倒されて、「これが演じるっていうことか」と硬直するくらい感動しました。

 他にもとにかく個性の強い役者さんばかりでしたので、みなさんと一緒にこの作品に携われたことはこれから女優業を歩んでいく私にとって財産になりました。

――作品では前半の舞台が東北ですよね。平塚さんご自身も山形の出身ということで、何か通じるものはありましたか?

平塚 現場の和室のシーン、親戚が集まっている様子などは実家を思い出しましたね。噂がすぐに広まってしまうところとかも「分かるなぁ」と思って(苦笑)。

――映画で、葉子は過去を捨てて上京するわけですが、平塚さんが上京した時は、どのような気持ちでしたか?

平塚 私は24歳の時に地元でスカウトされて上京したので、「人生一回だし、東京に行ってみよう」というような感じでした。その時はそんなに強い思いや意気込みのようなものはありませんでした(笑)。

――主人公・葉子にとって「男性」とはどういう存在だと思われますか?

平塚 自分を傷つけた男性のことは、今でも殺したいと思っていると思います。ただ、その思いを前に進むパワーとエネルギーに変えるのもまた、男性相手の性風俗の仕事だったりするんですよね。生きていくための手段として必要な存在だったと思います。

――インドの「ノイダ国際映画祭」では、審査員特別賞を受賞しましたね。

平塚 インドは性犯罪がとても多いと聞いています。特に幼児の強姦とか輪姦が日常茶飯事に行われていると聞きました。その国で賞をとれたのは大変意味のあることだと思います。インドの性犯罪を減らすことに役立てればなと思います。また、日本でも、子どもたちを守っていく立場の家族や公的な機関、NPO団体の方などに見ていただきたいです。

――今回の役柄もそうですが、平塚さんは、外見でクールに見られがちですよね。

平塚 そうなんです。もう、それで損しかしていない(笑)。怒ってるわけでもないのに、「怖そう」とか「近寄りがたい」と思われて。「話してみたら全然違う」ってなるんですけどね。

 一時はだいぶ試行錯誤していて。ボケてみたり、最初からヘラヘラしてたりもしたんです。でも、「逆に怖い」「変!」って言われてしまって(笑)。最近はインタビューなどでお話をする機会が増えたので、以前ほどは冷たく見られなくなりました。

■「ファンの方がお父さんよりも好き」

 

――グラビアや舞台でも活躍されていますが、それぞれ意識することに違いはありますか?

平塚 全然違いますね。グラビアは、カメラマンさんと一対一で作り上げるものですが、映像のように、そこに演技が入ってくると全くの別物になります。

 舞台は、お客さんの反応も含めて一番演技の勉強になります。舞台で得たことがギュッと詰まったものがドラマとか映画に反映されるのかなと思っています。

 今、肩書としては「グラビア女優」としているんですが、需要がある限りグラビア活動も続けていきたいです。あとは、「これ」と決めてしまわずに、いろんなことに挑戦したいですね。

――今後、女優として演じてみたい役はありますか?

平塚 今まで演じてきたのが、激しい女性の役が多かったので、今回のようにトラウマを抱えている女性など、これまで経験したことがない役を演じてみたいです。コメディも大好きなので、そんな演技もしてみたい。韓国のアイドルグループ・2PMのチャンソンさんの映画『忘れ雪』(2015)では掃除のおばさんの役をやりました(笑)。とにかくたくさんの役を演じて、一人前の女優になっていきたいです。

――撮影会などでファンの方と触れ合うことも多いと思いますが、平塚さんにとってファンはどのような存在ですか?

平塚 私のファンは、どんなお仕事をしても「やったね!よかったね!」と肉親のように喜んでくれるんです。ずっと昔からファンでいてくれる方もいて「まだファンでいてくれるんだ」と感動するほどです。私、ファザコンなんですけど、お父さんよりも大好きです(笑)。

 今回の映画を見てファンになってくれる方がいらっしゃれば嬉しいです。全国いろいろなところに舞台挨拶で伺いたいですね。

――平塚さんの意外な一面として、アイドルユニット「A応P」のファンだと伺ったのですが。

平塚 はい。アニメの『おそ松さん』(テレビ東京系)を見ていたら、彼女たちのPVが流れて、それを見て一目惚れしました。残念ながら推しの子は卒業してしまったのですが、今は研究生で新たな推しを見つけたので、そちらを応援しています。もう親心みたいな感じです(笑)。前回のツアーが舞台と重なって行けなかったので、次のツアーは東名阪を追いかけようかと思っています。本当にミーハーなんですよ、私……(爆笑)。

――最後に、これから映画を見る方にメッセージがあればお願いします。

平塚 この映画が実話であるということ、そして性犯罪に遭われて苦しんでいる方がたくさんいるということを知っていただきたいです。そして、被害者の方々が声を上げられる世の中になって欲しい。もし、同じように辛い思いをしている人がこの作品を見て、「自分も強く生きよう」と思い、そして幸せな人生を生きてくだされば本望です。

 男性の方には、これから伴侶になる方が同じような苦しみを抱えていたら、守ってあげてほしい。女性に優しく接してあげてほしいなと思います。

* * *

 170cmの身長と、抜群のスタイル、そしてクールなルックス。ハードな役柄を演じきった彼女の素顔は、驚くほどしなやかで正義感にあふれるものだった。

 自分に壁を作らず、どんなジャンルにでも挑戦していく強さ。映画主演というハードルを越え、新たな世界に踏み出した彼女のこれからの活躍が期待される。
(取材・文=プレヤード)

●平塚千瑛(ひらつか・ちあき)
1986年生まれ。山形県米沢市出身。24歳の時に地元でスカウトされ上京。2011年ミス・アース・ジャパン ファイナリスト、2012年ミス・ユニバース・ジャパン セミファイナリストなどを経て、グラビア、女優、バラエティとマルチに活動する。『私は絶対許さない』では、映画初主演となる。 写真集『Birth』(双葉社)発売中。

オフィシャルブログ『今日もありがとう』
https://ameblo.jp/chiaki-143x

Twitter:@chiaki_Hira2ka

 

 

 ■映画『私は絶対許さない』(監督:和田秀樹)
 4月7日から、テアトル新宿ほか全国公開

妊娠8カ月になるまで被害を告白できず……6人の男に輪姦された11歳少女が、加害者の子どもを出産

 女性に対する性犯罪が深刻な社会問題となっているインドで、なんともやりきれない事件が発生した。

 印ニュースサイト「NDTV」が3月17日に配信した記事によると、インド西部グジャラート州のラージコートで、11歳の少女が妊娠8カ月の時点で帝王切開され、女児を出産した。彼女の年齢もさることながら、問題なのは新生児の父親だ。彼女は昨年、17歳から67歳までの6人の男からレイプ被害を受けており、そのいずれかが新生児の父親だというのだ。

 犯人らは、いずれも少女の近所に住んでいた男たちだ。彼らは少女に「家事を手伝ってほしい」と仕事を口実に自宅へおびき寄せ、そこで代わる代わる彼女をレイプしたという。

 被害者の少女は貧困家庭の出身で、父親は病気のために無職、母親が家政婦をして家計を支えていたという。そんな事情もあって、少女は男たちの誘いを断ることなく、ついていってしまったようだ。

 当初、彼女は被害について家族にも秘密にしており、大きくなる腹を隠しきれなくなってから、初めて母親に打ち明けたようだ。その後、家族は警察に通報すると同時に、彼女を産婦人科へと連れていったが、その時すでに妊娠8カ月。もはや中絶することもできなかったうえ、未熟な母体では満期での自然分娩も危険と判断され、直ちに帝王切開による分娩が行われた。

 産後の少女の容体は安定しているというが、早産で生まれた新生児は、現在も入院中とのことだ。

 同国北部の都市チャンディーガルでは昨年8月、おじ2人からレイプ被害を受けていた少女が出産するという事件が起きたばかりだ。レイプ犯の子どもを出産せざるを得なかった少女に、何の罪もないことは言うまでもない。少女と新生児に明るい未来が待っていると信じたい。

韓国で悪魔的“親族間の性暴力”が止まらない! 「人面獣心」たちの非道ぶり

 韓国で、親族間の性暴力が多発している。しかも、その内容も悪魔的だ。

 例えば、50代の男性A氏は、実の娘にわいせつ行為を働き、わいせつ動画をネット配信させたとして逮捕された。

 仁川桂陽(インチョン・ケヤン)警察署によれば、A氏は娘が高校2年生だった2012年から今年1月まで、約6年間に渡って娘にわいせつ行為を働いた。A氏は、障害を持つ妻が寝ている隙を見計らって犯行を重ねていたため、妻は娘が受けた被害に、まったく気づいていなかったという。

 さらに昨年7月からは、2カ月間に渡って成人向けライブチャットへの出演も強要。視聴者の要求通りに服を脱がせて荒稼ぎし、無職のA氏はそのお金を生活費に充てていたらしい。

 A氏は容疑を否認しているが、警察関係者は、娘が父に厳罰を科すことを強く求めていると伝えている。

 また、最近はこんな事件も起こった。

 30代の男性B氏は16年11月にフィリピン出身の妻と婚約し、その連れ子と3人で生活を開始。同年末からは、妻の父と兄、妹もフィリピンから呼び寄せ、自宅で共同生活を送るようになった。

 事件は結婚式を4日後に控えた2月14日に起こった。

 B氏は妻をフィリピン国籍の同僚とともにホテルに泊め、明け方に一人で帰宅。妻の連れ子と一緒に寝ていた義理の妹にわいせつ行為を働いた。B氏は義理の妹が動揺する姿を見ると、自分の部屋に連れていき、力ずくで押さえつけて強姦したのだった。

 B氏は「抵抗しなかったので合意があったと思った」と供述。一審では、B氏が161.8cm、67kgの小柄な体格であるため抵抗できた可能性があったことや、事件の翌日にB氏と義理の妹が2人っきりで外出していたことなどを理由に、無罪が言い渡された。

 しかし2審では、「親族間の性暴力事件では、被害を明かさず普段通りに生活することは珍しいことではない」として、結婚式を控えた姉と姪のために自身を犠牲にしたという義理の妹の供述に信ぴょう性があると認められ、B氏に懲役7年と120時間の性暴力治療プログラムが課せられた。

 このほかにも、実の娘2人が寝ている隙に父がわいせつ行為を働いた事件や、3年間にわたって実の妹2人に兄が性暴力を加えた事件など、韓国では親族による性犯罪が絶えない。

 実際、韓国大検察庁が発表した統計によれば、同犯罪の数は14年637件、15年688件、16年730件と年々増加している。しかも、それはごく一部にすぎず、性犯罪全体の被害親告率が10%未満と言われる中でも、親族による被害の親告率は特に低いという。

 それでも最近は、韓国で#MeToo運動が盛り上がる中、声を上げる被害者も増えているが、韓国で親族間の性暴力が絶えないのはなぜなのか。

 韓国の専門家たちは、その一因に、大人たちに対する性教育が不足していることがあると指摘する。性暴力サポートセンターなどを運営する社会団体「タックティーンネイル」のイ・ヒョンスク常任代表も、こう話している。

「オランダでは成人を迎えると、成人として守るべき義務について教わります。韓国では父母に対する教育を学校で行っていますが、忙しさなどを理由に出席率が低い。父母教育を受けなければペナルティーを受けるなど、システムを強化する必要があります」

 韓国で増え続ける親族間の性暴力。早急に対策が打たれ、“人面獣心”による事件が根絶されることを願うばかりだ。
(文=S-KOREA)

●参考記事
・いま韓国で盛り上がっている「MeToo運動」。芸能人・著名人らが告発された理由は?
http://s-korea.jp/archives/30329?zo=1
・女性被害者に対して嫌悪感丸出し!? 韓国警察の暴言が酷すぎる…!!
http://s-korea.jp/archives/24341?zo=1

韓国で悪魔的“親族間の性暴力”が止まらない! 「人面獣心」たちの非道ぶり

 韓国で、親族間の性暴力が多発している。しかも、その内容も悪魔的だ。

 例えば、50代の男性A氏は、実の娘にわいせつ行為を働き、わいせつ動画をネット配信させたとして逮捕された。

 仁川桂陽(インチョン・ケヤン)警察署によれば、A氏は娘が高校2年生だった2012年から今年1月まで、約6年間に渡って娘にわいせつ行為を働いた。A氏は、障害を持つ妻が寝ている隙を見計らって犯行を重ねていたため、妻は娘が受けた被害に、まったく気づいていなかったという。

 さらに昨年7月からは、2カ月間に渡って成人向けライブチャットへの出演も強要。視聴者の要求通りに服を脱がせて荒稼ぎし、無職のA氏はそのお金を生活費に充てていたらしい。

 A氏は容疑を否認しているが、警察関係者は、娘が父に厳罰を科すことを強く求めていると伝えている。

 また、最近はこんな事件も起こった。

 30代の男性B氏は16年11月にフィリピン出身の妻と婚約し、その連れ子と3人で生活を開始。同年末からは、妻の父と兄、妹もフィリピンから呼び寄せ、自宅で共同生活を送るようになった。

 事件は結婚式を4日後に控えた2月14日に起こった。

 B氏は妻をフィリピン国籍の同僚とともにホテルに泊め、明け方に一人で帰宅。妻の連れ子と一緒に寝ていた義理の妹にわいせつ行為を働いた。B氏は義理の妹が動揺する姿を見ると、自分の部屋に連れていき、力ずくで押さえつけて強姦したのだった。

 B氏は「抵抗しなかったので合意があったと思った」と供述。一審では、B氏が161.8cm、67kgの小柄な体格であるため抵抗できた可能性があったことや、事件の翌日にB氏と義理の妹が2人っきりで外出していたことなどを理由に、無罪が言い渡された。

 しかし2審では、「親族間の性暴力事件では、被害を明かさず普段通りに生活することは珍しいことではない」として、結婚式を控えた姉と姪のために自身を犠牲にしたという義理の妹の供述に信ぴょう性があると認められ、B氏に懲役7年と120時間の性暴力治療プログラムが課せられた。

 このほかにも、実の娘2人が寝ている隙に父がわいせつ行為を働いた事件や、3年間にわたって実の妹2人に兄が性暴力を加えた事件など、韓国では親族による性犯罪が絶えない。

 実際、韓国大検察庁が発表した統計によれば、同犯罪の数は14年637件、15年688件、16年730件と年々増加している。しかも、それはごく一部にすぎず、性犯罪全体の被害親告率が10%未満と言われる中でも、親族による被害の親告率は特に低いという。

 それでも最近は、韓国で#MeToo運動が盛り上がる中、声を上げる被害者も増えているが、韓国で親族間の性暴力が絶えないのはなぜなのか。

 韓国の専門家たちは、その一因に、大人たちに対する性教育が不足していることがあると指摘する。性暴力サポートセンターなどを運営する社会団体「タックティーンネイル」のイ・ヒョンスク常任代表も、こう話している。

「オランダでは成人を迎えると、成人として守るべき義務について教わります。韓国では父母に対する教育を学校で行っていますが、忙しさなどを理由に出席率が低い。父母教育を受けなければペナルティーを受けるなど、システムを強化する必要があります」

 韓国で増え続ける親族間の性暴力。早急に対策が打たれ、“人面獣心”による事件が根絶されることを願うばかりだ。
(文=S-KOREA)

●参考記事
・いま韓国で盛り上がっている「MeToo運動」。芸能人・著名人らが告発された理由は?
http://s-korea.jp/archives/30329?zo=1
・女性被害者に対して嫌悪感丸出し!? 韓国警察の暴言が酷すぎる…!!
http://s-korea.jp/archives/24341?zo=1

ついに自殺者も……韓国芸能界“#MeToo”運動、盛り上がりの裏にある「性上納」「セクハラ」の横行

 セクハラや性的暴行被害を告発する「#MeToo」運動が激化している韓国で、ついに自殺者まで出た。

 3月9日、俳優チョ・ミンギ(52)がソウル市内で首を吊った遺体で見つかったのだ。彼は生前、俳優業に加えて清州大学演劇学科の教授を務めていたが、学生らにセクハラ行為をしていたとの暴露が相次ぎ、被疑者として警察の取り調べを受ける予定だった。

 初めてセクハラ疑惑が持ち上がった2月20日頃、チョ氏は疑惑をかたくなに否定していた。

 しかし、大学の卒業生と名乗る男性による「女子はもちろん、男子にもセクハラや暴力行為をして、それが原因で休学した学生もいる。学校内の絶対権力者だった彼に目をつけられると、将来が見通せない状況に追い込まれると言われたほどだ」との追加暴露に加え、すでに学生らの通報によって大学側から停職処分を受けていたことが明らかに。

 さらには、チョ氏からわいせつな言葉や身体部位の写真をメールで送られた被害者が、そのやり取りを公開。所属事務所も「スムーズなコミュニケーションが取れないため」チョ氏との契約を解除すると公表した。

 彼は結局、謝罪文を発表して一連の疑惑を認めたのだが、最初に疑惑を否定していたことや、わいせつな言動が度を越していたことなどで、世間の怒りを買ってしまった。

 チョ氏に対する厳しい反応は、自殺が報道されてからも続いている。

 ネット民からは「#MeTooが人を殺したのではない。明かされたら死ぬほど恥ずかしいのが性的暴行だと気づけよ」「被害者に謝罪もせず死ぬなんて、あまりにも無責任ではないか」「それでも#MeTooは続けなければならない。この世には死にたいほどつらい思いをしている女性のほうが多いことをお忘れなく」という意見が多く寄せられている状況だ。

 そういった世間の反応を意識したのか、葬儀場には弔問客もほとんど訪れていなかったという。そんな中、葬儀に出席した俳優チョ・ソンギュは、こうコメントしていた。

「1日目には3人、2日目は5人ほどの芸能人を見かけた。28年目のベテラン俳優の葬儀に同僚芸能人が5人しか弔問に来なかったことは切ない」

 それにしても現在、韓国の#MeToo運動の盛り上がりはすさまじい。1月29日に現職女性検事だったソ・ジヒョンがニュース番組でセクハラ被害の経験を暴露したことを皮切りに、政治家の安熙正(アン・ヒジョン)や“韓国映画界の鬼才”キム・ギドク監督、ノーベル文学賞候補といわれていた詩人コ・ウン、同国を代表する舞台演出家のイ・ユンテクなど、各界の有名人らにセクハラや性的暴行の疑惑が浮上した。

 特に芸能界における#MeToo運動の波風は荒く、疑惑が持ち上がったタレントだけでも15人以上。昔、女優の故チャン・ジャヨンが20人以上に“性上納”と呼ばれる性接待を強要され、自ら命を絶った事件があったが、セクハラや性的暴行が相変わらず芸能界に蔓延していることは確かなようだ。

 英国のメディア「デイリー・テレグラフ」は、チョ・ミンギの自殺によって、韓国内で#MeToo運動に対する反発も出てきたと報じているが、はたしてそれはどうか。もう少し動向を見守る必要がありそうだ。
(文=S-KOREA)

●参考記事
・「もう演技力は問わない」MeToo運動がもたらす韓国芸能界の変化とは?
http://s-korea.jp/archives/30725?zo=1
・「事務所トラブル」から“性上納”まで…なぜ韓国芸能界にはこんなにも自殺が多いのか
http://s-korea.jp/archives/30849?zo=1

性犯罪被害に遭っても証拠が残りにくい? 卑劣な「デートレイプドラッグ」の実態

 昨年、ジャーナリストの女性が過去に元TBSワシントン支局長の男性からデートレイプドラッグの被害を受けたと告発する本が出版されて、大きな話題になった。日本では、まだあまり一般に知られていない「デートレイプドラッグ」。しかし、アメリカでは、国や州単位で対策を進めているというほど深刻な問題となっているようだ。その被害の実態や対処法などを、性暴力救援センター・SARC東京の平川和子理事長に聞いた。

■「デートレイプドラッグ」は、誰でも容易に入手可能

 デートレイプドラッグとは、特定の薬品名を指すわけではなく、相手を性的搾取するために意識や抵抗力を奪い、昏睡状態にさせる薬物のこと。一般的に手に入れることが難しい違法なドラッグとは限らず、市販薬や病院で処方される睡眠薬など、比較的身近な薬もデートレイプドラッグに含まれる。市販されている薬物でも、アルコール飲料に混入するなど悪用のされかた次第で、コップ1杯程度で記憶や意識が飛んでしまうほどの作用があり、危険性は高い。

 警察が昨年度に初めてデートレイプドラッグの被害数を公表したが、その数は年間30件程度。当然ながら、実際には発覚していない事件がたくさんあるのが実情だろう。

 日本でデートレイプドラッグという言葉をよく耳にするようになったのはごく最近だが、手口としては昔からよく知られている話だと、平川氏は指摘する。

「睡眠薬やアルコール度数の高いお酒を飲まされて、記憶を失った隙に強姦被害に遭うというケースは以前からありました。最近になって、ようやくメディアでデートレイプドラッグ被害が大きく報道されるにつれて、その実態が多くの人に知られるようになったのが現状です」

■いつ、どこで、何に薬物が仕込まれるかが、あまりに巧妙

 平川氏が理事長を務めるSARC東京では、性暴力や性被害の相談を、24時間365日受け付けている。同センターのホームページ上でデートレイプドラッグ被害に関する啓発運動を始めてから約半年間で、すでに10数件の相談があり、その多くは20代の若い女性だという。彼女たちは実際、どのようなシチュエーションで、デートレイプドラッグ被害に遭ってしまったのだろうか?

「基本的には、お酒の場です。よくあるのは、大勢で飲んだ後に『2人で飲まない?』と誘われ、その次の場所でお酒に睡眠薬を仕込まれ、知らずに飲んでしまうケース。被害者側の女性も、まさか薬物が入っているとは思いませんから、なかなか気づきにくく、当然こうした薬物の不適切な使用だけでも犯罪です」

 酒以外にも、ソフトドリンクや健康ドリンク、コーヒー牛乳にまで薬物を入れられたり、食べ物に錠剤を砕いたものを振りかけられていたケースもあるという。また、加害者側が2人組もしくはそれ以上の集団で、綿密な計画を立てて実行することもあるそうだ。

「たとえば、バーのマスターと手を組んで、飲み物に睡眠薬を入れるという例もありますし、とにかく巧妙。加害者は、お酒を飲みに行ける関係でありつつ、被害者側の女性よりも上の立場であることが多く、その関係性を利用して卑劣な犯罪行為に及ぶケースが少なくないのです」

 デートレイプドラッグ犯罪は、初対面ではなく、ある程度の顔見知りによる犯行が多く、未然に防ぐことは難しいという。それでも何かできる対策はないのだろうか?

「第一に、怪しいものは飲まない、食べないようにすること。また、トイレから戻ってきたとき、飲み残したものは飲まないことが被害の予防になります。さらに、もしもトイレで被害に遭われたと思われる女性に出会った場合、救急車を呼ぶか、記憶がなくてもレイプ被害の支援を求めることができると伝えてあげてください」

 ただ、いくら気を使っていても、被害に遭ってしまうことはある。さらに、自分では予防したつもりでも、それが防げなかった場合、女性側に落ち度がまったくないにもかかわらず、自分を責める要因にさえなってしまうと、平川氏は指摘する。

 また、もしデートレイプドラッグ被害に遭ったと気づいたら、すぐに対応することが何より重要だという。

「ある時点からの意識がなくなっていて、身に覚えのない性行為による違和感が残っていたりするなど、デートレイプドラッグ被害に遭ったと感じたら、すぐに警察に通報し、採尿や採血を受けるようにしてください。尿や血液から薬物反応が出れば、特定の人物を容疑者とすることができ、性被害の事件化も可能になるかもしれません」

 一方、睡眠薬の場合は、体内から早く排泄され、証拠として残りづらいため、時間がたってしまってからでは、立件が難しくなるケースが多いといわれている。

 もし警察に抵抗があるなら、SARC東京のような民間のサポートセンターに連絡すれば、被害の確認や相談ができる。また、内閣府によれば、2018年2月現在、41都道府県に性被害ワンストップセンターが設置されており、20年までには全都道府県に整備される予定となっているので、以前よりは被害者支援の輪も広がりつつある。

 デートレイプドラッグが現実に存在する。そして、もし被害に遭ったとしても相談できる場所がある。これらを知っておけば、いざというとき、泣き寝入りせずにしっかりと自分の身を守ることにつながっていくだろう。
(福田晃広/清談社)

性暴力救援センターSARC東京

3年間にわたって凌辱され、すでに妊娠5カ月……中国で、またもや警備員による女児強姦事件が発生

 本来なら児童を守るべき学校警備員が双子の女子児童に性的暴行を加えたという事件を先日、お伝えしたばかりだが(参照記事)、またも中国で警備員による女児をターゲットとした性的虐待事件が明るみに出た。

「未来網」(1月24日付)などによると、河南省泌陽県馬谷田鎮の小学校に勤める50代の職員、劉容疑者が長期にわたり、同校の児童・楽楽ちゃん(12歳)に性的虐待を行っていたことが明らかになった。叔父の話によると、1月16日、楽楽ちゃんは警察に伴われて病院に行き、羊水の検査をしたが、楽楽ちゃんは泣きじゃくった後、ふさぎこんで話をしたがらない。同24日に改めて検査をすると、妊娠5カ月であることが判明。楽楽ちゃんは近々、堕胎手術を受けるという。

 楽楽ちゃんが初めて性的虐待を受けたのは4年生。まだ9歳だった。それから2年間、劉容疑者からたびたび行為を迫られたという。9歳の楽楽ちゃんに性の知識があるはずもなく、最初は何をされたのかがわからなかった。後に本などから知るようになるが、恐怖から誰にも事実を打ち明けることができなかった。学校側も、このことをまったく知らなかったと主張しているが、楽楽ちゃんのお腹がここまで大きくなっているのに、不自然に思わなかったのだろうか。

 報道を受け、ネットでは犯人への非難が殺到し、中には、「中国の法律は十分ではない」「中国の法律は、犯罪率の増加に一役買っている」と、一向に減らない中国国内の児童虐待の現状から、司法を批判する声も少なくなかった。

 中国少年児童文化芸術基金会が発表した「女児保護2016年児童性的虐待事件統計及び児童性的虐待防止教育調査報告」によると、16年に中国全土で報道された児童の性的虐待事件は433件で、被害者の数は778人だった。しかし、楽楽ちゃんのように誰にも打ち明けられない女児も少なくないはずで、この数字は氷山の一角にすぎないのは間違いない。
(文=中山介石)