3月末、45~64歳のひきこもりが61.3万人いるという推計を内閣府が発表し、世間に衝撃を与えたが、このニュースにまつわるある番組が物議を醸している。
3月29日に放送されたNHKの報道番組『ニュース7』では、この内閣府の発表を受けたニュースの中で、10年以上引きこもりをしているという53歳の男性を取材。この男性について、同番組では「大学を中退し、就職しても2~3年しか続かず、引きこもっていた期間は合わせて10年以上にもなります」と紹介。発達障害があるために、食事や洗濯などは87歳の母親に頼っているなどとした。さらに生活費を母親の不動産の収入や貯えなどに頼っており、現在は障害のある人の就労支援を行う事業所に通ってサポートを受けているものの、見通しは立っていないと実情を明かしている。
しかし、ネット上ではこの男性への疑念が続出。ニュースで紹介された男性の名前を検索してみると、とある会社の執行役員・最高執行責任者(COO)という肩書でインタビューを受けている記事が見つかったという報告や、個人のFacebookなどが見つかり、ヤラセではないかという意見が噴出する炎上状態となったのだ。
このことについてネット上では「何を目的としてそんなヤラセ番組作るの?」「よりによって会社役員」「受信料返還して停波しろ」など、NHKへの批判が圧倒的多数となっている。さらには「相当ギャラ良かったのかな」「NHKと仕事で関係があり頼まれてヤラセ出演なんだろうね」と、男性がヤラセを引き受けた経緯についても考察をするものまで現れるような状況だった。
しかし、31日、出演した男性本人がネットメディアでこれらの疑惑について言及する記事を発表。2018年の6月に退職して今実際に無職である事や、NHKから取材の話があったのは、以前働いていた会社での関係がきっかけで、退職していることをNHKは知っていたことを明かし、炎上状態はおさまった。
とはいえ、今も「随分アクティブな引きこもりだな」「本能の貧困層やひきこもりを取材するのはなぜ」と、いまだに批判は続いている。
「NHKは16年にも同じ『ニュース7』で、貧困状態にある女子高生の生活を取材し、同じような炎上状態になったことがあります。この時、女子高生は家にパソコンがないことからキーボードだけを買い与えられてブラインドタッチの練習をしたとする他、進学を希望しているものの、経済的な壁に直面しているとしていましたが、アニメグッズや高価なペンセットなどが部屋にあることを指摘され、批判が集まったんです。その後、本人と思われるSNSのアカウントが発覚し、そこでの生活ぶりが番組のそれとかけ離れているとして、女子高生の自宅の住所まで特定されるような事態になりました。この件があったからこそ、今回も炎上に至ったのではないでしょうか」(週刊誌記者)
こうした炎上は、NHKの製作班の不手際ではないかという声も、メディア関係者の中には多いようだ。
「まあ、今回の男性の件では実際に男性が無職で引きこもっていたことが分かっていますし、女子高生の件もNHKが取材内容は全部事実だと発表している上、多くの擁護記事が書かれるなど、完全に嘘ではないんですよ。でも、多くの人は貧困や引きこもりという言葉から、昨年まで会社の役員をしていた男性や、アニメグッズや高価なペンセットを部屋に持っている女子高生を想像しない。もし、一般的なイメージが間違いや時代遅れで、これこそがリアルな貧困や引きこもりの姿だというなら、そういう説明が必要だと思うんです。わざわざ顔や名前を出して出てくれる人に対して、こういう仕打ちをしてしまうのはよくないんじゃないかと」(同)
こうしたヤラセと誤認されるような報道がアウトかセーフか……。少なくとも、一般的な感覚とそれが乖離し、違和感を覚えることはこれらの炎上を見ても明らかだと言えるだろう。国営放送であるNHKが、勇気をもって名乗り出てくれた取材対象に不快な思いを感じさせたり、あるいは危険が迫る状況に陥らせたりことが無いよう切に願うばかりである。