防犯カメラの「万引き犯」画像公開、店側が脅迫罪に問われる可能性も

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回のテーマ>
眼鏡店、万引き疑い男性の画像公開(各局ニュース番組等

■名誉毀損罪に当たる可能性がある

 東京都内の眼鏡店が、万引きをしたとして、防犯カメラに映った男性客とみられる人物の画像をホームページ上に公開し、問題になっている。画像は顔の一部にモザイク処理が施されているが、店は3月1日までに返却か弁償をしない場合、モザイクを外して画像を公開するとしている。こうした画像をネットで公開することは、違法性に、違法性はないのだろうか? アディーレ法律事務所の日田諭弁護士に聞いた。

 まず、「犯罪歴を公開する行為は、名誉毀損罪に当たる可能性がある」と日田弁護士は話す。

「そもそも名誉毀損罪の『名誉』とは、人に対する積極的な社会的評価のことを言います。当然このような犯罪歴が知られてしまうと、本人の社会的評価は下がります。やはり、犯罪歴や前科というものは、他人に一番知られたくない情報の一つでしょうし、これを公開されると日常生活が崩れてしまいますから。

 ただ、今回の事案は、まだ前科にもなっていないし、そもそも犯罪と言い切れるかも明確には決まっていない段階です。そのような不確定な状況で、店側が万引きだと思う画像を公開することも、前科の公開と同様に、名誉毀損罪に当たる可能性があります」

 公開された画像は顔の一部にモザイクをかけられていた。個人を特定されない形で公開するのであれば、問題はないのだろうか?

「個人を特定されないくらいにモザイクをかけて公開するのならば、それは、『このような形の万引きが、うちの店でありました』ということを示しているだけなので、問題ないと思います。実際、テレビ番組でも、『こんな犯罪がありました』というような映像を流したりしています。ただ、モザイクを外すソフトウェアが使われるなどの可能性が残る以上、全く問題がないとまでは言い切れません」

■盗品を自力で回収する行為は法的には許されていない

 しかし、刑法の規定からすると、本件については、人の犯罪行為に関する事実と言える可能性が高いので、公益目的であったと言える場合は、処罰されない可能性があるという。この眼鏡店の社長はテレビ朝日の取材に対し、画像を公開した理由を、「ちゃんと解決しないと、今後にも尾を引くかなと思ったから」と述べている。したがって、このケースも最終的には処罰されない可能性はある。

 また、店は、画像と共に「商品を返却または弁償しないと、モザイクを外す」という内容の文章を掲載しているが、「この行為は、『害悪の告知』に当たるので、脅迫罪ともなりえますし、また、返却行為を強要している部分も含めると、強要罪となりえます」と日田弁護士は話す。

「そもそも、もともとの所有者であろうと、すでにその所有者の元から離れてしまった盗品を、法的手続きを経ないで自力で回収する行為は、法的には許されていませんので、警察を通して事件を処理するしかありません」

 では、もし、この店にこの男性客が商品を返却に来たら、窃盗罪に問われないのだろうか?

「刑法上の窃盗罪(刑法235条)は、物を取って、事実上の自分の支配の下に入れてしまえば、例えば、ポケットやカバンに入れて、店から出るような行為があった場合、その時点で犯罪が成立しますので、後で返却しても、刑法上は一度、成立した罪が消えることはありません。ただ、返却したことによって、被害届が取り下げられて、店側も処罰を望まないという気持ちを警察や検察に伝えることで、不起訴となり、最終的に処罰されない可能性はあります」

 万引きの被害を受けて困っている、犯罪を見過ごせない、という店側の心理は理解できないものではないが、今回の行動は、法の下では逆に店側が罪に問われる可能性もある。とにかく、この画像の人物が速やかに商品を返却さえすれば、おそらく事は丸く収まるのではないだろうか。

アディーレ法律事務所

子どもの頃の「いじめ加害者」に損害賠償請求は可能か?

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回のテーマ>
いじめ後遺症(『あさイチ』NHK/2月6日月曜日午前8時15分~)

■いじめは民法上の不法行為に当たる

 2月6日の『あさイチ』(NHK)で取り上げられていた「いじめ後遺症」が話題になっている。子どもの頃にいじめを受けた人が大人になっても、その後遺症に苦しむというものだ。同番組では、治療のひとつとして「いじめ模擬裁判」があり、自分をいじめた相手の非を洗いざらい吐きだし、相手に求刑するところまで行うことが紹介されていたが、現実に、子どもの頃のいじめ被害について、大人になってから加害者を訴えることは可能なのか? アディーレ法律事務所の吉岡一誠弁護士に聞いた。

 まず、何をもって「いじめ」とするかについて、吉岡弁護士は、「いじめ防止対策推進法」において定義されると説明する。

「『心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの』が、いじめと定義されています」

 これに該当する行為は、民法上の不法行為に当たる可能性があるという。

「権利、または法律上保護される利益を侵害された場合、被害者は加害者に対して損害賠償請求をすることができます」

 とはいえ、実際に訴えるのは容易ではなさそうだ。吉岡弁護士によると、不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害と加害者を知った日から3年で時効により消滅するとされているため、原則として大人になってから請求をすることはできないのだという。

「大人になってから後遺症が発症した場合には、発症時に『損害を知った』ということになるので、理論上はその時点から3年間は、後遺症についての損害賠償請求が可能ということになりますが、いじめ行為があったことや、いじめと症状の因果関係を立証することが困難であり、現実には請求は難しいことが多いかと思われます」

 また、暴行を受けてけがをした場合や、心理的ないじめにより精神疾患を負った場合、傷害罪の成立の可能性があるというが、傷害罪の公訴時効が10年とされていることや、時間の経過により証拠の収集が困難になることから、刑事責任を問うことも難しいという。

 つまり、被害者にとっては厳しい現実だが、子どもの頃にいじめ被害を受けた加害者を訴えるのは、事実上、困難ということのようだ。

アディーレ法律事務所

子どもの頃の「いじめ加害者」に損害賠償請求は可能か?

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いじめ後遺症(『あさイチ』NHK/2月6日月曜日午前8時15分~)

■いじめは民法上の不法行為に当たる

 2月6日の『あさイチ』(NHK)で取り上げられていた「いじめ後遺症」が話題になっている。子どもの頃にいじめを受けた人が大人になっても、その後遺症に苦しむというものだ。同番組では、治療のひとつとして「いじめ模擬裁判」があり、自分をいじめた相手の非を洗いざらい吐きだし、相手に求刑するところまで行うことが紹介されていたが、現実に、子どもの頃のいじめ被害について、大人になってから加害者を訴えることは可能なのか? アディーレ法律事務所の吉岡一誠弁護士に聞いた。

 まず、何をもって「いじめ」とするかについて、吉岡弁護士は、「いじめ防止対策推進法」において定義されると説明する。

「『心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの』が、いじめと定義されています」

 これに該当する行為は、民法上の不法行為に当たる可能性があるという。

「権利、または法律上保護される利益を侵害された場合、被害者は加害者に対して損害賠償請求をすることができます」

 とはいえ、実際に訴えるのは容易ではなさそうだ。吉岡弁護士によると、不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が損害と加害者を知った日から3年で時効により消滅するとされているため、原則として大人になってから請求をすることはできないのだという。

「大人になってから後遺症が発症した場合には、発症時に『損害を知った』ということになるので、理論上はその時点から3年間は、後遺症についての損害賠償請求が可能ということになりますが、いじめ行為があったことや、いじめと症状の因果関係を立証することが困難であり、現実には請求は難しいことが多いかと思われます」

 また、暴行を受けてけがをした場合や、心理的ないじめにより精神疾患を負った場合、傷害罪の成立の可能性があるというが、傷害罪の公訴時効が10年とされていることや、時間の経過により証拠の収集が困難になることから、刑事責任を問うことも難しいという。

 つまり、被害者にとっては厳しい現実だが、子どもの頃にいじめ被害を受けた加害者を訴えるのは、事実上、困難ということのようだ。

アディーレ法律事務所

畠田理恵さんは、山田美保子とやくみつるを20年前の名誉毀損で訴えられるのか?

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

<今回のテーマ>
畠田理恵さんの過去の報道被害に関するツイート

■損害賠償請求をすることは可能だが……

 棋士の羽生善治の妻、元女優の畠田(現・羽生)理恵さんが約20年前の報道被害についてツイートを連投して波紋を呼んでいる。

 特に攻撃がひどかった放送作家・山田美保子と漫画家・やくみつるの名を挙げ、2人が「金持ち玉の輿狙いの上昇志向の強い女」などと週刊誌に書いたり、テレビのワイドショーなどで発言したりしたため、そのイメージが世間に定着したと訴えている。さらに結婚当時、「玉の輿狙い成功!計算高い女!等々の報道に苦しめられ、総合失調症(編集部注・統合失調症)に悩まされ、結婚式の日までに体重は34キロまで減少していました」などとも綴っている。

 こうした過去の報道被害について、山田とやく、週刊誌等を訴え、慰謝料を請求することは可能なのだろうか? アディーレ法律事務所の吉岡一誠弁護士に聞いた。

 吉岡弁護士によると、不特定または多数の人が認識できる状況下において、人の社会的評価の低下をもたらしうる具体的事実を示した場合は名誉毀損罪(刑法230条1項)に該当し、事実を示さずに単に侮辱した場合は侮辱罪(刑法231条)に該当するという。

「名誉毀損行為や侮辱行為は、民法上の不法行為(民法709条)にも該当しうるものであり、このような行為により精神的苦痛を被った場合、被害者は加害者に対して損害賠償請求をすることが可能です」

 つまり、山田の「畠田理恵は金持ち玉の輿狙いの上昇志向の強い女」との発言、やくの「金持ちを横取りする玉の輿狙いの女」との発言、報道機関の「玉の輿狙い成功!計算高い女!」といった報道は、いずれも具体的事実を示すことなく、理恵さんの社会的評価を下げる発言・報道をしたもので、侮辱行為に該当する。したがって、理恵さんは、精神的苦痛を被ったとして、山田らに対して損害賠償請求をすることが可能なのだ。

 しかしながら、今回の場合は訴えを起こすのが難しいようだ。

「不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が加害者と損害を知った時から3年が経過することで、時効により消滅するとされています(民法724条)。したがって、被害者である畠田氏が裁判を起こして損害賠償を求めても、時効により請求権が消滅したと反論されれば、請求は棄却されることとなるでしょう」

 さすがに20年も前の被害を今になって訴えても、その賠償は認められないということのようだ。理恵さんの苦痛が、ツイートに吐き出した言葉で少しでも解消されていればよいのだが……。

アディーレ法律事務所

キュレーションサイトによる著作権侵害 個人ブログやSNS投稿は問題ないのか?

 DeNAの運営する医療情報メディア「ウェルク」に端を発したキュレーションサイト問題は、他社の記事を無断転用して記事を作成し、著作権侵害の可能性があるとして、リクルートホールディングスやサイバーエージェント、ヤフーなど大手各社にも記事削除の動きが広がっている。今回問題になっている著作権侵害について、また、個人がブログやSNSなどに文章や画像を載せる際の注意点について、ベリーベスト法律事務所の甘利禎康弁護士に聞いた。

■キュレーションサイトやライターは、元記事の作者の複製権や公衆送信権を侵害

 今回の事件では、各サイトがライターに大量の記事を書かせていた。ライターは、一から取材して記事を書いていたのでは間に合わないので、他のウェブサイトなどから文章や画像を無断でコピーしながら記事を仕上げ、各サイトはその記事をアップしていたとみられる。甘利弁護士によると、それは著作権の侵害行為になるという。

「文章には、書いた作者の個性が何かしら表れるものです。その文章に作者の個性が表れている限りにおいて、それは『著作物』となります。著作物である文章は著作権法によって保護されます。著作権法では、他人が著作物を複製することを禁じる『複製権』という権利や、他人が著作物をインターネット上にアップすることを禁じる『公衆送信権』という権利を、著作者が有するということが規定されています。ほかにも、他人が著作物を改変することを禁じる『翻案権』など、これらの権利を総称して、『著作権』と呼んでいます。ですから、他人の書いた記事を無断で転載し、自身のウェブサイトに載せたサイトやライターは、元記事の作者の複製権や公衆送信権を侵害していたということになります」

■個人の場合、10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金

 著作権を侵害する行為には刑事上の罰則があり、個人であれば、10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金、またはその両方を科せられ、法人の従業員が業務上、著作権侵害をした場合であれば、法人に対して3億円以下の罰金が科されるという。

「ただし、著作権侵害罪は親告罪といって、被害者の告訴がないと処罰することができません(TPPが発効すると、告訴が不要になります)。また、著作権を侵害した場合、民事上の責任も問われます。著作権を侵害され、財産的損害が生じた場合、侵害された者は、侵害した者に対して、損害の賠償を求めることができるのです」

 今回問題になっているのは、企業が運営するサイトであるが、個人のブログやSNSなどに他サイトの画像や文章を引用・転載しても著作権侵害になるのだろうか?

「個人のブログ・SNSであっても、先に述べたことと同じで、『複製権』や『公衆送信権』の侵害になります。文章だけでなく、写真・イラスト等の画像も著作物ですから、画像を転載しても著作権侵害です。なお、著作権法は、私的複製を許容しているのですが、ブログやSNSなど、他人に見てもらうことを前提とした利用の場合には、『私的』複製の範囲を超えていると考えられているのです。営利の目的があるかないかはここでは関係ありません。

 ただし、著作権法は、『引用』による著作物の利用を許容しています。『引用』に当たるためには、自身の著作物と引用された他人の著作物を明瞭に区別した上で、あくまで自身の著作物を『主』、引用される著作物を『従』という主従関係の下での利用でないとなりません。また、それが批評・報道などの引用の目的上正当な範囲内であることや、引用元などの出所を明示することが求められます。ルールを知って適切な方法で引用していれば、著作権侵害にはなりません」

■他人の文章や画像を安易にコピーしないこと

 つまり、単純なコピペはダメだが、たとえば、引用元を明示した上で、小説やニュース記事の一部を引用して、それに対する批評や感想をブログで書いたり、SNSでつぶやいたりすることは問題ないということだ。さらに、甘利弁護士は、他人の文章をどの程度利用すると著作権侵害に当たるのか、次のように説明する。

「コピーペーストのような、いわゆるデッドコピー(そのままコピーすること)は当然に『複製』になりますし、語尾を『ですます調』から『である調』に変えていても、『複製』になるでしょう。また、文章の表現を変えたとしても、元の文章に表れていた作者の個性が維持されている限り、それは『翻案』であり、これも著作権の侵害行為になります」

 甘利弁護士によると、コピーではなくても、模倣も「翻案」になる場合があるという。このへんの境界線は、過去の裁判例によっても異なり、なかなか素人には判別が難しいものだ。いまや一般人がブログやSNSで発信することは日常茶飯事だが、法を犯さず楽しく利用するためには、「当たり前のことですが、他人の文章や画像を安易にコピーしないことです」という甘利弁護士の忠告を覚えておくのがよいだろう。

甘利禎康(あまり・さだやす)
ベリーベスト法律事務所弁護士。早稲田大学社会科学部卒業、信濃毎日新聞社勤務を経て、東北大学法科大学院修了。企業法務エンタメチームリーダーを務め、様々な企業内トラブル案件を取り扱うほか、交通事故専門部にも所属し幅広い領域と数多くの案件に携わっている。著書に『交通事故に遭ったら読む本』『自己破産と借金整理を考えたら読む本』(ともに日本実業出版社)がある。プロフィール