大炎上「アンドロメダ瞬女性化問題」に北朝鮮の聖闘士星矢ヲタが物申す!

 2019年にNetflixで配信される『聖闘士星矢』最新シリーズ『聖闘士星矢 Knights of the Zodiac』にて、主要キャラクターであるアンドロメダ瞬の性別が女性に変更され、古参のファンを中心に動揺が広がっています。

 そこで、本連載でも数回にわたり登場していただいた北朝鮮人民の聖闘士星矢オタク・趙さん(職務で第三国在住)に急きょ連絡を取り、見解を伺いました。

***

――アンドロメダ座の瞬の性別が女性に変更されたことが日本で大きな話題となっていますが、趙さんはこの件についてどう思いますか?

趙さん 私も幼い頃にアニメブックを見て、瞬はひょっとして女なのではないかと思ったことがありました。性格も外見も、女っぽいですよね。なので、いっそ女性として描いたほうが的確なのでは、と思うところもありました。

――それが今回、ついに本物の女性キャラに作り変えられることになりました。

趙さん 確かに、女性を英雄的に描く今の世界の趨勢とは、ちょっと違う筋のものであると感じます。わざわざそうする必要はないのではないかと……。

――日本の多くのファンも、そのように感じています。

趙さん ただ、女性化することで、悪いことよりも良いことのほうが増える気もします。

――というと?

趙さん まずは、ジェンダーの多様性において女性たちの役割を肯定的に描けるとともに、(瞬の持つ)女性的な柔らかさをクローズアップすることができるでしょう。

――瞬が、男性としては不完全だという認識でしょうか?

趙さん 不完全というよりも、さらに何かを加えてイメージを膨らませる余地を持っているということです。そして、女体化してラブストーリーの要素を追加することは、作品を小説のように豊かにすることができます。

――ラブストーリーというのは?

趙さん 単純に男女のカップルといえば、主人公のペガサス星矢にはアテナがいるし、ドラゴン紫龍にも恋人がいるでしょう。瞬は、キグナス氷河とくっつくことができるのではないでしょうか。

――氷河×瞬ですか……。

趙さん 瞬が、全身凍傷になった氷河を命懸けで救う場面があるじゃないですか。ラブストーリーがあれば、作品がさらに現実味を帯びると思います。僕は以前から、作品そのものよりも登場人物の出生地や年齢などプロフィールに興味を持っています。彼らがどこかに実在しているかのように思っていますし、実際そうであればいい。だから、恋愛もしてほしいと思うんです。

――しかし、従来の作品の設定や世界観を壊す、と懸念されています。

趙さん 作品が、さらに豊かになるという見方もあるのではないでしょうか。僕も、わざわざ女体化させることには反対です。今のままの瞬でいいです。

――私も、ファンとしてはそう思います。

趙さん しかし、瞬本人が望んで性別を変えるのであれば賛成です。

――えっ!? それは一体どういうことですか?

趙さん まったく新しいストーリーの中で、瞬が自分の意思で女性であることを選択したという説明があればいいです。

――それは、余計に複雑な話になりますね……。

趙さん 原作とは関係ない、異世界であれば全然問題ありません。

――というか趙さん、今回は原作のリメイクで、女性化はもう決定してしまったんですよ……。

趙さん え?

――公式発表されてます。フェニックス一輝とは兄妹になるんです。

趙さん それはおかしいですね。同意できませんよ!

――それで日本のファンが怒っているんです。

趙さん それは(作品の)思い出を壊すことになります。作者はどう考えてらっしゃるのですか?

――作者の車田正美先生は、「原作者の手を離れてどんどん遠いところへ行ってしまっても、ファンがいろいろなテイストの作品を楽しんでくれればそれでよい」という趣旨の発言をされています。

趙さん そうであれば、僕も何も言えません(笑)。

――これが女性化した瞬の画像です(画像を見せる)。

趙さん (笑)。なんだか不思議ですね。ショックでないといえば、うそになりますけど。まあ、でも期待はしています。僕は星矢の関連作品であれば全部観たいので。出来が良くても悪くても構いません。ずっと応援していますよ。

***

 途中まで、ややかみ合っていませんでしたが、趙さんもつまりは女性化に反対とのこと。過去、独自の個性的な解釈を展開することもあった趙さんですが、これについては日本の大多数のファンと同意見のようです。

 まだ登場していない黄金聖闘士も含めて、一体どうなってしまうのでしょうか……。私もファンの一人として、推移を見守りたいと思います。

●やす・やどろく
ライター、編集者。都内大学院の心理学部在籍中。元朝鮮青年同盟中央委員。 政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

大炎上「アンドロメダ瞬女性化問題」に北朝鮮の聖闘士星矢ヲタが物申す!

 2019年にNetflixで配信される『聖闘士星矢』最新シリーズ『聖闘士星矢 Knights of the Zodiac』にて、主要キャラクターであるアンドロメダ瞬の性別が女性に変更され、古参のファンを中心に動揺が広がっています。

 そこで、本連載でも数回にわたり登場していただいた北朝鮮人民の聖闘士星矢オタク・趙さん(職務で第三国在住)に急きょ連絡を取り、見解を伺いました。

***

――アンドロメダ座の瞬の性別が女性に変更されたことが日本で大きな話題となっていますが、趙さんはこの件についてどう思いますか?

趙さん 私も幼い頃にアニメブックを見て、瞬はひょっとして女なのではないかと思ったことがありました。性格も外見も、女っぽいですよね。なので、いっそ女性として描いたほうが的確なのでは、と思うところもありました。

――それが今回、ついに本物の女性キャラに作り変えられることになりました。

趙さん 確かに、女性を英雄的に描く今の世界の趨勢とは、ちょっと違う筋のものであると感じます。わざわざそうする必要はないのではないかと……。

――日本の多くのファンも、そのように感じています。

趙さん ただ、女性化することで、悪いことよりも良いことのほうが増える気もします。

――というと?

趙さん まずは、ジェンダーの多様性において女性たちの役割を肯定的に描けるとともに、(瞬の持つ)女性的な柔らかさをクローズアップすることができるでしょう。

――瞬が、男性としては不完全だという認識でしょうか?

趙さん 不完全というよりも、さらに何かを加えてイメージを膨らませる余地を持っているということです。そして、女体化してラブストーリーの要素を追加することは、作品を小説のように豊かにすることができます。

――ラブストーリーというのは?

趙さん 単純に男女のカップルといえば、主人公のペガサス星矢にはアテナがいるし、ドラゴン紫龍にも恋人がいるでしょう。瞬は、キグナス氷河とくっつくことができるのではないでしょうか。

――氷河×瞬ですか……。

趙さん 瞬が、全身凍傷になった氷河を命懸けで救う場面があるじゃないですか。ラブストーリーがあれば、作品がさらに現実味を帯びると思います。僕は以前から、作品そのものよりも登場人物の出生地や年齢などプロフィールに興味を持っています。彼らがどこかに実在しているかのように思っていますし、実際そうであればいい。だから、恋愛もしてほしいと思うんです。

――しかし、従来の作品の設定や世界観を壊す、と懸念されています。

趙さん 作品が、さらに豊かになるという見方もあるのではないでしょうか。僕も、わざわざ女体化させることには反対です。今のままの瞬でいいです。

――私も、ファンとしてはそう思います。

趙さん しかし、瞬本人が望んで性別を変えるのであれば賛成です。

――えっ!? それは一体どういうことですか?

趙さん まったく新しいストーリーの中で、瞬が自分の意思で女性であることを選択したという説明があればいいです。

――それは、余計に複雑な話になりますね……。

趙さん 原作とは関係ない、異世界であれば全然問題ありません。

――というか趙さん、今回は原作のリメイクで、女性化はもう決定してしまったんですよ……。

趙さん え?

――公式発表されてます。フェニックス一輝とは兄妹になるんです。

趙さん それはおかしいですね。同意できませんよ!

――それで日本のファンが怒っているんです。

趙さん それは(作品の)思い出を壊すことになります。作者はどう考えてらっしゃるのですか?

――作者の車田正美先生は、「原作者の手を離れてどんどん遠いところへ行ってしまっても、ファンがいろいろなテイストの作品を楽しんでくれればそれでよい」という趣旨の発言をされています。

趙さん そうであれば、僕も何も言えません(笑)。

――これが女性化した瞬の画像です(画像を見せる)。

趙さん (笑)。なんだか不思議ですね。ショックでないといえば、うそになりますけど。まあ、でも期待はしています。僕は星矢の関連作品であれば全部観たいので。出来が良くても悪くても構いません。ずっと応援していますよ。

***

 途中まで、ややかみ合っていませんでしたが、趙さんもつまりは女性化に反対とのこと。過去、独自の個性的な解釈を展開することもあった趙さんですが、これについては日本の大多数のファンと同意見のようです。

 まだ登場していない黄金聖闘士も含めて、一体どうなってしまうのでしょうか……。私もファンの一人として、推移を見守りたいと思います。

●やす・やどろく
ライター、編集者。都内大学院の心理学部在籍中。元朝鮮青年同盟中央委員。 政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

【米朝会談】両首脳の“ホンネ”を表情から分析「初対面はトランプ氏に軍配、共同声明では正恩氏の勝利」

 こんにちは。安宿緑です。

 ご存じの通り、6月12日、歴史的な米朝首脳会談が行われました。

 世界中がかたずをのんで見守ったであろう本会談。昨夏から米朝関係が過去最高に険悪となるにつれ、事あるごとに舌戦を繰り広げてきたトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長。しまいには「老いぼれ」「チビでデブ」などという小学生レベルの罵り合いにまで発展しますが、そこから一転、あれよあれよと会談にこぎ着けるなど、近年なかった神展開であります。平たく言えば「お互い、一体どんな顔して会うつもりなんだろう」というのが、多くの視聴者の関心事であったと思います。

 そこで、日本国内に数人しかいないとされる認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人で、微表情研究者の清水建二氏に両首脳の表情を分析してもらい、2人がどのような心理状態にあったのかを推測していただきました。

 分析に用いた動画は次の3つです。

【1】President Trump, Kim Jong Un meet in Singapore(CNN より)

https://www.youtube.com/watch?v=5LqVBkYZhYI&t=1s

【2】Trump shows Kim Jong Un presidential limousine(CNN より)

https://www.youtube.com/watch?v=-Ha-v4cMKP4&t=44s

【3】Trump and Kim hold surprise document signing during summit(Fox News より)

https://www.youtube.com/watch?v=DCWdTT1GZKY&t=598s

 まずは、世紀の初対面の場面から。

「心理的やりとりの構図をわかりやすく、勝ち負けで例えますと、個人戦に関しては、2人のファーストコンタクトで、ほぼ勝敗の行方は方向付けられたように思いました。【1】の00:00:11あたりからの映像を見てください。握手をするため、2人はお互いの距離を縮めます。この状況で、正恩氏がトランプ氏から視線をそらします。握手中、会話を交わしながらも、時折視線をそらします。一方のトランプ氏は、正恩氏から視線をそらしません」

 ここで、トランプ氏が最初のジャブを繰り出しています。

「トランプ氏は眉間にしわの寄った表情をして、正恩氏に視線を送っています。これは、怒り・熟考・決意を意味します。交渉の場ということを考えると、決意という意味を読み取るのが妥当だと思います。『俺はタフな交渉相手だぞ』『俺の決意は固いぞ』ということを伝えるための視線でしょうか。そしてこれは、怒りと認識されることも相まって心理的圧迫や脅威を与える表情ですので、笑顔で握手が交わされることが想定される場面でこうした表情を見せられ、正恩氏は一種の戸惑いを感じ、視線をそらしたのではないかと考えられます」

 初対面の相手にナメられないための「ぶちかまし」においては、育ちの良い正恩氏よりも、ビジネスの場でタフな交渉を勝ち抜いてきたトランプ氏に分があったのかもしれません。

 ただ、正恩氏はトランプ氏のジャブを食らいつつも、とある「対抗技」を繰り出しているとか。

「軽く口角を引き上げた笑顔をトランプ氏に向けています。これは初対面の相手に対する礼儀としての笑顔とも考えられますが、トランプ氏の圧迫的な表情をなだめ、中和するためになされた表情とも考えられます」

 この状況を儀礼的な場としてとらえているならば笑顔は続くと考えられますが、トランプ氏と握手を終え、正面を向いた瞬間に笑顔が消えるため、トランプ氏の攻撃を「無効化」するためのテクニカルな笑顔である可能性が高いと清水氏は言います。

 正恩氏も、なかなかのコミュニケーション上手であることがうかがえますね……。

 そして2人の“表情戦”は、共同声明のサインの場で、意外な局面を迎えることとなります。

■共同声明においては一転、正恩氏が「勝利のほほえみ」

  会談を終えた2人は、ホテルの中庭をプレスがいる方向に歩いていきます(【2】の00:00:43)。そこでトランプ氏はいい会談ができたと話し、「我々はこれからサインする」と発言していますが……。

「このときトランプ氏の上唇が引き上げられ、ホウレイ線が釣り鐘型となる表情が一瞬浮かびます。これは嫌悪の微表情。嫌悪は不快な言動・人・モノを遠ざける、拒否する、除去する機能を持つ感情です。サインという言葉と嫌悪の微表情とが同時に生じたため、この嫌悪はサインに関連付けられた感情だと考えられます」

 トランプ氏の本心は、共同声明にサインしたくなかったということでしょうか? 

「いいえ、北朝鮮との持続的な対話の可能性を開く機会である会談と共同声明を歓迎していないことは考えにくい。そうではなく、この場合の嫌悪は、共同声明の内容が自身の期待した水準を満たしていないため、消極的で不快感の伴うサインであるという感情の表れだと推測できます」

 つまり、アメリカ側としては不本意な内容の可能性があるとのこと。一方、正恩氏の表情は、これとは対照的でありました。

「【3】の00:04:54で正恩氏が4冊目の共同声明文にサインをし終える瞬間、右側の口角が引き上げられます。これは軽蔑表情を意味します。軽蔑というと敵対的なイメージが生じてしまいますが、必ずしもそうではなく、軽蔑は優越感と置き換えることができます。優越感とは、他者と比べて自分のほうが勝っているという感情です。正恩氏は、共同声明文を作成および締結する過程で、米国よりも北朝鮮寄りの内容にすることができ、その内容に満足している可能性が高いと考えられるのです」

 よって、表情分析からは「共同声明文の内容は、北朝鮮のほうが満足する形で締結できたことが推測される。一見すると、米国優位な雰囲気を漂わせていた首脳会談だが、本質的には北朝鮮優位に終わった可能性が見て取れる」のだといいます。

 トランプ氏の威嚇を愛想笑いで右から左に受け流す正恩氏、そしてシナリオ通り自国に有利な共同声明文を持ち帰った北朝鮮政府。きっとホテルに帰って、一同ガッツポーズだったことでしょう。

 ただし、米国側も、これで終わらせるつもりはない様子。

「サインし終えてもなお、眉間にしわを寄せた表情を崩さなかったトランプ氏の様子から、『今後のステージは米国主導の流れに』という心の声が聞こえてきそうではあります」

 次回は、互いの国を訪問する計画も持ち上がっているといいますが、そこではどんな顔を見せるのでしょうか? 引き続き、2人の表情には注目していきたいと思います。

●しみず・けんじ

株式会社「空気を読むを科学する研究所」代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持。ニュースやバラエティー番組での政治家や芸能人の心理分析、刑事ドラマ『科捜研の女 シーズン16』(テレビ朝日系)の監修、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)。

●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。 政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

「おもしろ人間図鑑」か「先にやってきた未来」か──“脱北YouTuber”が語る北朝鮮のリアル

 こんにちは。安宿緑です。「脱北YouTuber」をご存じでしょうか?

 文字通り、脱北者がYouTuberとして番組を配信しているのです。正確には、「アフリカTV」というチャット機能付きの動画配信サイトからYouTubeにも転載をしている形です。韓国では脱北BJ(配信者)と呼ばれています。

 彼ら脱北YouTuberが台頭してきたのは2016年頃からで、現在多くのチャンネルがあるのを確認できます。とはいえ元庶民ですから政情には詳しくないようで、もっぱら恋愛や食べ物などの生活ネタ、北朝鮮に対する質問に答えるのを主なコンテンツとしているようです。

 その中から、特徴的なYouTuberをピックアップしてみました。

「脱北ブローカーが『国境を越えたら、北斗七星の方向を目指していけ』と言った。内モンゴルの砂漠をひたすら走り、国境警備隊を避けるために、夜の砂漠の真ん中で息を潜めた時は、心臓が凍りつくように寒かった」

 BJイピョンさん(23歳)が語る脱北時の様子は、映画のワンシーンのようです。

●BJイピョン
https://www.youtube.com/channel/UCBiFOp2g0ER25Tb5OA0G0kg

 アフリカTVの累積視聴者数は3カ月で28万人超、YouTubeに上げた脱北経緯についての動画は120万アクセスを記録。端正な容姿にピアスに刺青という、韓流アイドルのような容姿も人気の理由のようです。

 彼が放送を始めたきっかけは、「脱北者が“アカ”呼ばわりされたり、貧しい人間扱いされるのが嫌だったから」とのこと。

「北朝鮮の人は本当に人肉を食べるのか」「全員が暗殺術を習うのか」などの質問を受けることもあり、自身の放送を通じて、こうした偏見を取り除き、北朝鮮へのイメージを正したいと話しています。

 脱北したとはいえ、好き放題言われるのは我慢ならんということでしょうか。

 続いて、容姿端麗といえばイ・ソユルさん(30歳)。30歳とは思えぬ美貌とスタイルが人気で、自らフィッティングモデルを務める洋服の通販サイトを運営しています。しかしこんな美人でありながら、放送内容がえぐいのが彼女の特徴であります。

●ソユル 脱北女子 イ
https://www.youtube.com/channel/UC9jMdW7ZEnPBYhQ-sIksoDw

 先日、軍事境界線を乗り越えてきた脱北兵士の体内から回虫が発見された件についても、彼女はこのようにコメントしました。

「回虫くらい当然のこと。驚きませんでした」

 そういって、寄生虫エピソードを次々と披露します。

・北朝鮮では年に1回、駆虫剤を飲む
・回虫は最大でボールペンくらいの太さ
・シラミもわくので洗濯用洗剤で全身を洗っていた
・一度、洗濯用洗剤で洗ったら余計シラミがわいて「この洗剤は安企部(安全企画部=現:韓国国家情報院)が流布したものだ」という噂が出回った
・脇毛にシラミがわいた人がいた

 さらには「私は女性なので話すのは迷ったのですが……話しちゃいます!」と照れながら、喉に違和感を覚え、引っ張り出したら回虫だったという話まで披露。満面のスマイルで「もう10年前の話なんで、汚く思わないでくださいね★ ウフフッ★」と締めます。

 いや、全然笑えないんだが……という感じですが、壮絶な体験をサラリと話してしまうのも脱北YouTuberの魅力といえましょう。

 笑えないはずだが、一周回って笑える動画といえば、「脱北女子ソニー」。

●NorthKorean Sunny
https://www.youtube.com/channel/UCiIBRxfi5PspgJSTcvi-pHg

「私たちはお金がなかったので」と生々しい前置きをし、北朝鮮で自作していた化粧品の作り方という、ある意味「誰得」な動画をアップしています。ラインナップは、どれもDIY精神を感じさせるものになっております。

 赤いクレヨンを油で溶きながら「北にいる時は、ごま油でやってて臭かった」と言ったり、「描けない!」「痛い!」などと言いながら木串のアイラインを解説する姿は、笑っていいのかダメなのか微妙なところです。そうやってさんざん詳細に語っておきながら、最後は「体に悪いからやめたほうがいいです」と視聴者にアドバイス。いや、作らないから安心してほしい。

 そして真打ちとも言える存在が彼女、ソン・ポムヒャンさん(31歳)です。YouTube登録者数は約14万人と、桁違い。

●ソン・ポムヒャンTV
https://www.youtube.com/channel/UCuUPV5b6jt3d4B4u8a_8XNg

 彼女が他のYouTuberと違うのは、積極的に「炎上スタイル」を取っていく点です。よどみないマシンガントークと、ディスられたら「お前、バカだろ?」と2倍、3倍にしてディスり返す姿勢は意図せずして朝鮮中央通信、北朝鮮スタイルそのものです。

 アフリカTVのチャットでは、彼女に対し「アカ女」「北朝鮮に帰れ」など挑発的なコメントをするユーザーも多く、そのたびに直接対決を繰り広げております。中には、不埒なコメントをしたユーザーに18分間キレ続けるという動画もあります。

 彼女の名を知らしめたのは、2012年に出演した、脱北者を紹介する番組『今、会いにゆきます』(チャンネルA)でした。彼女が半生を語った回は大きな反響を呼び、一部では「神回」として語り継がれているようです。

 北朝鮮の最北端、咸鏡北道穩城郡の貧村に生まれたソン・ポムヒャンさん。

 当時は「苦難の行軍」と呼ばれる大飢饉が起きた時代。村では食料そのものが存在せず、常に飢えていたといいます。そんな中、ポムヒャンさんは、病弱な姉が意識混濁状態で壁の土を食べている姿を発見してしまいます。その2日後に、姉は16歳で死亡しました。

 父親はアルコール中毒で頼れず、母親はこれ以上、子どもたちを死なせないためにと、出稼ぎに中国へ渡ります。しかし待てど暮らせど、母親からの知らせはなく、母を追う決心をしたポムヒャンさんは妹を連れて、一週間かけて中朝国境まで歩き、国境線となる川・豆満江にたどり着きました。

 しかし、いざ川を渡る段階になると妹がぐずり出してしまいます。ポムヒャンさんは泣く泣く妹を川辺の林に隠し、一人で川を渡りました。

 中国で最初に頼った民家では、生まれて初めてのご馳走を振る舞ってくれましたが、そこは人身売買の拠点で、ポムヒャンさんは、そのまま中国人夫婦の養子として売られてしまったのでした。

 そして5年がたつ頃にはすっかり朝鮮語を忘れ、中国人として生きていましたが、ある日、夢の中に亡くなった姉が出てきて、このように言いました。

「お母さんとお姉ちゃんが待ってるから、北朝鮮に帰りなさい」

 夢に従い、ポムヒャンさんは養父母に置き手紙をして出奔。警察に「私を北朝鮮に帰してください」と直談判をしにいきました。そして3カ月の調査を受け、身元が確認されると、延辺の刑務所に移送されることになりました。

「なぜ、罪を犯したわけでもないのに、刑務所に行かなくてはならないの」

 ポムヒャンさんが泣きながら女子房に入ると、そこにいた脱北女性たちの中に一人だけ、中国語を理解する人がいました。ポムヒャンさんが身の上を話すと、その中で一人の女性が自分をじっと見つめていることに気づきました。女性はポムヒャンさんに近づき、言いました。

「ポムヒャンなの?」

 そう、なんとポムヒャンさんは亡き姉が夢で導いたとおり、刑務所で10年ぶりに母親と再会したのでした。朝鮮語も、自分の本名すら忘れていたポムヒャンさんは、その時、初めて自分の名前を知ることになったといいます。

 その後、北朝鮮に戻るも、母親とともに再脱北し延辺に行きますが、母親に「ここではもう暮らせない。韓国に行きなさい」と促され、偽造旅券を持って飛行機で韓国へ。韓国の存在も、それまで知らなかったとか。

 ほどなくして母親も韓国に到着し、紆余曲折を経て妹も召喚することに成功。晴れて、自由社会での生活をスタートさせようとした矢先に、さらなる悲劇が襲います。

 妹が、渡韓してたった2カ月後に交通事故に遭ってしまうのです。音楽プレイヤーを拾おうと車から頭を出したところを、後続車に轢かれてしまうという痛ましい事故でした。

 意識不明となった妹は幸い8カ月後に目を覚ましましたが、神経を破壊され片目が開かない状態の上、母やポムヒャンさんを識別できなくなっていました。唯一残っていたのは、北朝鮮で苦労した記憶だけだったといいます。

 10歳で脱北して朝鮮語と自分の名前を忘れることがあるのか、また妹は豆満江からどうやって自宅まで戻ったのかなど、いろいろとツッコミどころはあるのですが、ストーリーの出来としては100点満点でございましょう。

 ポムヒャンさんは当初は警察官を目指していましたが、妹の事故をきっかけに看護助手となります。しかし幼い頃の栄養失調がたたり、虚弱体質で、持病の貧血で突然倒れることがしばしばあり、そのせいで仕事をクビになることが相次ぎました。そんな中、自宅で暇つぶしに始めたのがアフリカTVの配信だったといいます。

 韓国では、脱北者を「先にやってきた未来」と呼ぶ場合もあります。南北統一し、両国の住民が忌憚なく交流する未来を先取りした存在という意味です。

 これまで脱北者は韓国人が持つ北朝鮮へのマイナスイメージを一身に受け、差別の対象になったり不可侵民の扱いを受けることがしばしばありましたが、脱北YouTuberの登場は、そうした偏見を取り払う一定の役割があると期待されています。

 確かに、脱北YouTuberは朝鮮人民同様、人間として興味を惹かれる存在であることは間違いありません。死線をくぐってきた経験談はどの映画、小説よりも訴求性があります。

 一方で、彼らを材料に北朝鮮の全てを論じるのは早計であるといえます。彼らが話す北朝鮮の現状はおよそ10~20年前のものであるため、鵜呑みにすることはできません。むしろ、彼らが韓国に順応し生活が長くなるとともにその希少性と情報は色あせていくでしょう。個人的には、あくまで「おもしろ人間図鑑」としてウォッチしていきたいと思っています。

●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。 政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

「おもしろ人間図鑑」か「先にやってきた未来」か──“脱北YouTuber”が語る北朝鮮のリアル

 こんにちは。安宿緑です。「脱北YouTuber」をご存じでしょうか?

 文字通り、脱北者がYouTuberとして番組を配信しているのです。正確には、「アフリカTV」というチャット機能付きの動画配信サイトからYouTubeにも転載をしている形です。韓国では脱北BJ(配信者)と呼ばれています。

 彼ら脱北YouTuberが台頭してきたのは2016年頃からで、現在多くのチャンネルがあるのを確認できます。とはいえ元庶民ですから政情には詳しくないようで、もっぱら恋愛や食べ物などの生活ネタ、北朝鮮に対する質問に答えるのを主なコンテンツとしているようです。

 その中から、特徴的なYouTuberをピックアップしてみました。

「脱北ブローカーが『国境を越えたら、北斗七星の方向を目指していけ』と言った。内モンゴルの砂漠をひたすら走り、国境警備隊を避けるために、夜の砂漠の真ん中で息を潜めた時は、心臓が凍りつくように寒かった」

 BJイピョンさん(23歳)が語る脱北時の様子は、映画のワンシーンのようです。

●BJイピョン
https://www.youtube.com/channel/UCBiFOp2g0ER25Tb5OA0G0kg

 アフリカTVの累積視聴者数は3カ月で28万人超、YouTubeに上げた脱北経緯についての動画は120万アクセスを記録。端正な容姿にピアスに刺青という、韓流アイドルのような容姿も人気の理由のようです。

 彼が放送を始めたきっかけは、「脱北者が“アカ”呼ばわりされたり、貧しい人間扱いされるのが嫌だったから」とのこと。

「北朝鮮の人は本当に人肉を食べるのか」「全員が暗殺術を習うのか」などの質問を受けることもあり、自身の放送を通じて、こうした偏見を取り除き、北朝鮮へのイメージを正したいと話しています。

 脱北したとはいえ、好き放題言われるのは我慢ならんということでしょうか。

 続いて、容姿端麗といえばイ・ソユルさん(30歳)。30歳とは思えぬ美貌とスタイルが人気で、自らフィッティングモデルを務める洋服の通販サイトを運営しています。しかしこんな美人でありながら、放送内容がえぐいのが彼女の特徴であります。

●ソユル 脱北女子 イ
https://www.youtube.com/channel/UC9jMdW7ZEnPBYhQ-sIksoDw

 先日、軍事境界線を乗り越えてきた脱北兵士の体内から回虫が発見された件についても、彼女はこのようにコメントしました。

「回虫くらい当然のこと。驚きませんでした」

 そういって、寄生虫エピソードを次々と披露します。

・北朝鮮では年に1回、駆虫剤を飲む
・回虫は最大でボールペンくらいの太さ
・シラミもわくので洗濯用洗剤で全身を洗っていた
・一度、洗濯用洗剤で洗ったら余計シラミがわいて「この洗剤は安企部(安全企画部=現:韓国国家情報院)が流布したものだ」という噂が出回った
・脇毛にシラミがわいた人がいた

 さらには「私は女性なので話すのは迷ったのですが……話しちゃいます!」と照れながら、喉に違和感を覚え、引っ張り出したら回虫だったという話まで披露。満面のスマイルで「もう10年前の話なんで、汚く思わないでくださいね★ ウフフッ★」と締めます。

 いや、全然笑えないんだが……という感じですが、壮絶な体験をサラリと話してしまうのも脱北YouTuberの魅力といえましょう。

 笑えないはずだが、一周回って笑える動画といえば、「脱北女子ソニー」。

●NorthKorean Sunny
https://www.youtube.com/channel/UCiIBRxfi5PspgJSTcvi-pHg

「私たちはお金がなかったので」と生々しい前置きをし、北朝鮮で自作していた化粧品の作り方という、ある意味「誰得」な動画をアップしています。ラインナップは、どれもDIY精神を感じさせるものになっております。

 赤いクレヨンを油で溶きながら「北にいる時は、ごま油でやってて臭かった」と言ったり、「描けない!」「痛い!」などと言いながら木串のアイラインを解説する姿は、笑っていいのかダメなのか微妙なところです。そうやってさんざん詳細に語っておきながら、最後は「体に悪いからやめたほうがいいです」と視聴者にアドバイス。いや、作らないから安心してほしい。

 そして真打ちとも言える存在が彼女、ソン・ポムヒャンさん(31歳)です。YouTube登録者数は約14万人と、桁違い。

●ソン・ポムヒャンTV
https://www.youtube.com/channel/UCuUPV5b6jt3d4B4u8a_8XNg

 彼女が他のYouTuberと違うのは、積極的に「炎上スタイル」を取っていく点です。よどみないマシンガントークと、ディスられたら「お前、バカだろ?」と2倍、3倍にしてディスり返す姿勢は意図せずして朝鮮中央通信、北朝鮮スタイルそのものです。

 アフリカTVのチャットでは、彼女に対し「アカ女」「北朝鮮に帰れ」など挑発的なコメントをするユーザーも多く、そのたびに直接対決を繰り広げております。中には、不埒なコメントをしたユーザーに18分間キレ続けるという動画もあります。

 彼女の名を知らしめたのは、2012年に出演した、脱北者を紹介する番組『今、会いにゆきます』(チャンネルA)でした。彼女が半生を語った回は大きな反響を呼び、一部では「神回」として語り継がれているようです。

 北朝鮮の最北端、咸鏡北道穩城郡の貧村に生まれたソン・ポムヒャンさん。

 当時は「苦難の行軍」と呼ばれる大飢饉が起きた時代。村では食料そのものが存在せず、常に飢えていたといいます。そんな中、ポムヒャンさんは、病弱な姉が意識混濁状態で壁の土を食べている姿を発見してしまいます。その2日後に、姉は16歳で死亡しました。

 父親はアルコール中毒で頼れず、母親はこれ以上、子どもたちを死なせないためにと、出稼ぎに中国へ渡ります。しかし待てど暮らせど、母親からの知らせはなく、母を追う決心をしたポムヒャンさんは妹を連れて、一週間かけて中朝国境まで歩き、国境線となる川・豆満江にたどり着きました。

 しかし、いざ川を渡る段階になると妹がぐずり出してしまいます。ポムヒャンさんは泣く泣く妹を川辺の林に隠し、一人で川を渡りました。

 中国で最初に頼った民家では、生まれて初めてのご馳走を振る舞ってくれましたが、そこは人身売買の拠点で、ポムヒャンさんは、そのまま中国人夫婦の養子として売られてしまったのでした。

 そして5年がたつ頃にはすっかり朝鮮語を忘れ、中国人として生きていましたが、ある日、夢の中に亡くなった姉が出てきて、このように言いました。

「お母さんとお姉ちゃんが待ってるから、北朝鮮に帰りなさい」

 夢に従い、ポムヒャンさんは養父母に置き手紙をして出奔。警察に「私を北朝鮮に帰してください」と直談判をしにいきました。そして3カ月の調査を受け、身元が確認されると、延辺の刑務所に移送されることになりました。

「なぜ、罪を犯したわけでもないのに、刑務所に行かなくてはならないの」

 ポムヒャンさんが泣きながら女子房に入ると、そこにいた脱北女性たちの中に一人だけ、中国語を理解する人がいました。ポムヒャンさんが身の上を話すと、その中で一人の女性が自分をじっと見つめていることに気づきました。女性はポムヒャンさんに近づき、言いました。

「ポムヒャンなの?」

 そう、なんとポムヒャンさんは亡き姉が夢で導いたとおり、刑務所で10年ぶりに母親と再会したのでした。朝鮮語も、自分の本名すら忘れていたポムヒャンさんは、その時、初めて自分の名前を知ることになったといいます。

 その後、北朝鮮に戻るも、母親とともに再脱北し延辺に行きますが、母親に「ここではもう暮らせない。韓国に行きなさい」と促され、偽造旅券を持って飛行機で韓国へ。韓国の存在も、それまで知らなかったとか。

 ほどなくして母親も韓国に到着し、紆余曲折を経て妹も召喚することに成功。晴れて、自由社会での生活をスタートさせようとした矢先に、さらなる悲劇が襲います。

 妹が、渡韓してたった2カ月後に交通事故に遭ってしまうのです。音楽プレイヤーを拾おうと車から頭を出したところを、後続車に轢かれてしまうという痛ましい事故でした。

 意識不明となった妹は幸い8カ月後に目を覚ましましたが、神経を破壊され片目が開かない状態の上、母やポムヒャンさんを識別できなくなっていました。唯一残っていたのは、北朝鮮で苦労した記憶だけだったといいます。

 10歳で脱北して朝鮮語と自分の名前を忘れることがあるのか、また妹は豆満江からどうやって自宅まで戻ったのかなど、いろいろとツッコミどころはあるのですが、ストーリーの出来としては100点満点でございましょう。

 ポムヒャンさんは当初は警察官を目指していましたが、妹の事故をきっかけに看護助手となります。しかし幼い頃の栄養失調がたたり、虚弱体質で、持病の貧血で突然倒れることがしばしばあり、そのせいで仕事をクビになることが相次ぎました。そんな中、自宅で暇つぶしに始めたのがアフリカTVの配信だったといいます。

 韓国では、脱北者を「先にやってきた未来」と呼ぶ場合もあります。南北統一し、両国の住民が忌憚なく交流する未来を先取りした存在という意味です。

 これまで脱北者は韓国人が持つ北朝鮮へのマイナスイメージを一身に受け、差別の対象になったり不可侵民の扱いを受けることがしばしばありましたが、脱北YouTuberの登場は、そうした偏見を取り払う一定の役割があると期待されています。

 確かに、脱北YouTuberは朝鮮人民同様、人間として興味を惹かれる存在であることは間違いありません。死線をくぐってきた経験談はどの映画、小説よりも訴求性があります。

 一方で、彼らを材料に北朝鮮の全てを論じるのは早計であるといえます。彼らが話す北朝鮮の現状はおよそ10~20年前のものであるため、鵜呑みにすることはできません。むしろ、彼らが韓国に順応し生活が長くなるとともにその希少性と情報は色あせていくでしょう。個人的には、あくまで「おもしろ人間図鑑」としてウォッチしていきたいと思っています。

●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。 政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

脱北者たちの間で「北への送金に便利」とウワサの“都内某郵便局”を直撃した!

 ご無沙汰してます。安宿緑です。

 最近、日本政府の某関係者から、こんな話を耳にしました。

「東京の繁華街“S”にある郵便局が、脱北者の間で、北朝鮮の家族宛ての送金に、よく使われている」

 脱北者と頻繁に面会を行っている日本政府関係者は、次のように話します。

「8月にも、送金のため韓国から来日した脱北者と会いました。S郵便局は脱北者の間では有名で、よく使われています。S郵便局が送金を支援しているとか、特別に使い勝手が良いというわけではなく、多くの量を受け付けているうちに手続きがスムーズになっていった だけのようですが。利用者のほとんどは、親族訪問の名目で来日してきた元在日朝鮮人の脱北者とみられます 」

 そのウワサを検証すべく、S郵便局に赴き、窓口に直行しました。

 

筆者「北朝鮮に送金したいんですけど」

 すると職員は「少々お待ちください」と言って奥に入っていきました。予想に反し、意外と慣れていない様子。

 しばらくして戻ってきた職員は、慣れない手つきで書類をめくりながら「禁止リストに載っている住所には送れませんが、大丈夫ですか?」と聞いてきました。

 禁止リストとは、国連安保理決議による「北朝鮮のミサイル又は大量破壊兵器計画に関連する者」(16の団体・個人)、「北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議に基づく資産凍結等の措置の対象となる者(116団体と個人、うち10団体は国連安保理決議1695号、29個人・ 団体は国際協調に基づいて措置済み)、ほか日本政府が定めた「 国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するために講ずる資産凍結等の措置の対象となる北朝鮮の核その他の大量破壊兵器 及び弾道ミサイル関連計画その他の北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議により禁止された活動等に関与する者」(64団体と個人)。

 このほか、人道支援目的を除き、指定された禁制品の送付や、支払い目的での送金などは禁止。

 これが壁にもズラーっと張り出されているわけですが、誰が熟読するんじゃと。というか、 この宛先に送ろうとした時点で、公安に後ろから肩を叩かれる案件じゃないですか。

 当然ながら口座間送金はできず、「保険付き郵便物」として現金を封入して送ることになります。万国郵便条約に基づくため、いちおう法的には問題なく、現在は人道支援目的で10万円以下に限り受け付け可能とのこと。ちまたでは、パチンコの売り上げ金がこの郵便局から北に送られているというウワサもありますが、何回小分けにすりゃいいんだよ!というわけで、もはや現実味がないことがわかります。

 ちなみに北朝鮮は1974年に万国郵便協定に加盟しています。

筆者「受取人はミサイル関係じゃないので大丈夫かと」

職員「いくら送りたいの?」

筆者「試しに1万円くらいですかね」

職員「1万円!?」

「そんなはした金でいいのかよ」と言わんばかりの職員の視線をよそに、私は、この局が本当に“ ホット送金スポット”になっているのか探りを入れました。すると職員はあっさり肯定し、こう続けました。

職員「多いのは、ウチと、同じく都内のT局。毎月1人か2人は来ていたけど、やはりこういう情勢だからか、今月はゼロ。あと、きちんと届いてるかどうかは当然、こちらでは把握できない。届いても、おそらく何割かは抜かれるのではないかと思います」

 しかしそれ以前に、脱北者からの送金を受け取った家族は、罰せられはしないのでしょうか? 筆者が訪朝した際、北に残された脱北者の家族はどうなるのか聞いたところ「しかるべき場所に連れて行かれると思う」という回答を得たことがありますが……。前出の政府関係者は、このように話しました。

「脱北当初は家族に監視や調査が入ったといいますが、基本的に家族にはおとがめがなく、まだ平壌に住んでいるようです。脱北者からの送金だからといって没収されることもなく、手数料だけをを引いた額が受取人にしっかり届けられるとのこと。北の郵便局に対し、仮に圧力があったとしても、万国郵便条約と、郵便局員としての矜持もあり、越権行為を許すことはないそうです」

 この脱北者が脱北した時期は5~6年前といい、金正恩第一書記の就任時期と重なっています。 韓国統一部の調査によると、金正恩氏就任当初の2012年から16年までは1, 000人単位だった脱北者数が、今年は8月時点で780人にとどまっており、 統一部はその原因を国内の規制が厳しくなったためと分析しています。

 そんな中、脱北者家族への罰則がないのは予想外であります。しかも、平壌は選ばれた人間しか住めない場所。家族の受け取ったお金が、別の形で没収されることはないのでしょうか?

 しかし、政府関係者はこのように私見を述べます。

「それもないようです。世間の脱北者へのイメージは、大飢饉が起きた1990年代後半頃で固まっているようですが、最近は家族を収容所に入れたり処刑することも、ほぼない。ひとつ確かなのは、着の身着のまま逃げていく地方の人とは違い、平壌の人間は準備や根回しを相当うまくやって、後腐れなく脱北する点。その際に払いきれなかった裏金を、家族を通じて分割払いしているケースもあるのでは? これはあくまで仮説ですが」

 つまりは、カネ次第ということでしょうか……?

 が、地方でも北と外界を行ったり来たりする人がいたり、「脱北がバレても土下座して許してもらえることもある」(中朝国境関係者)という話もあり、世界で報じられているほど北朝鮮社会は無秩序で非人道的ではない点もうかがえます。

 以前、ブログでも「脱北者ユーチューバー」の発言の真偽やマインドについて考察しましたが、ニュースだけでは決してわかりえない北朝鮮の人間模様、ますます興味が尽きないところであります。

●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。 政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

脱北者たちの間で「北への送金に便利」とウワサの“都内某郵便局”を直撃した!

 ご無沙汰してます。安宿緑です。

 最近、日本政府の某関係者から、こんな話を耳にしました。

「東京の繁華街“S”にある郵便局が、脱北者の間で、北朝鮮の家族宛ての送金に、よく使われている」

 脱北者と頻繁に面会を行っている日本政府関係者は、次のように話します。

「8月にも、送金のため韓国から来日した脱北者と会いました。S郵便局は脱北者の間では有名で、よく使われています。S郵便局が送金を支援しているとか、特別に使い勝手が良いというわけではなく、多くの量を受け付けているうちに手続きがスムーズになっていった だけのようですが。利用者のほとんどは、親族訪問の名目で来日してきた元在日朝鮮人の脱北者とみられます 」

 そのウワサを検証すべく、S郵便局に赴き、窓口に直行しました。

 

筆者「北朝鮮に送金したいんですけど」

 すると職員は「少々お待ちください」と言って奥に入っていきました。予想に反し、意外と慣れていない様子。

 しばらくして戻ってきた職員は、慣れない手つきで書類をめくりながら「禁止リストに載っている住所には送れませんが、大丈夫ですか?」と聞いてきました。

 禁止リストとは、国連安保理決議による「北朝鮮のミサイル又は大量破壊兵器計画に関連する者」(16の団体・個人)、「北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議に基づく資産凍結等の措置の対象となる者(116団体と個人、うち10団体は国連安保理決議1695号、29個人・ 団体は国際協調に基づいて措置済み)、ほか日本政府が定めた「 国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するために講ずる資産凍結等の措置の対象となる北朝鮮の核その他の大量破壊兵器 及び弾道ミサイル関連計画その他の北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議により禁止された活動等に関与する者」(64団体と個人)。

 このほか、人道支援目的を除き、指定された禁制品の送付や、支払い目的での送金などは禁止。

 これが壁にもズラーっと張り出されているわけですが、誰が熟読するんじゃと。というか、 この宛先に送ろうとした時点で、公安に後ろから肩を叩かれる案件じゃないですか。

 当然ながら口座間送金はできず、「保険付き郵便物」として現金を封入して送ることになります。万国郵便条約に基づくため、いちおう法的には問題なく、現在は人道支援目的で10万円以下に限り受け付け可能とのこと。ちまたでは、パチンコの売り上げ金がこの郵便局から北に送られているというウワサもありますが、何回小分けにすりゃいいんだよ!というわけで、もはや現実味がないことがわかります。

 ちなみに北朝鮮は1974年に万国郵便協定に加盟しています。

筆者「受取人はミサイル関係じゃないので大丈夫かと」

職員「いくら送りたいの?」

筆者「試しに1万円くらいですかね」

職員「1万円!?」

「そんなはした金でいいのかよ」と言わんばかりの職員の視線をよそに、私は、この局が本当に“ ホット送金スポット”になっているのか探りを入れました。すると職員はあっさり肯定し、こう続けました。

職員「多いのは、ウチと、同じく都内のT局。毎月1人か2人は来ていたけど、やはりこういう情勢だからか、今月はゼロ。あと、きちんと届いてるかどうかは当然、こちらでは把握できない。届いても、おそらく何割かは抜かれるのではないかと思います」

 しかしそれ以前に、脱北者からの送金を受け取った家族は、罰せられはしないのでしょうか? 筆者が訪朝した際、北に残された脱北者の家族はどうなるのか聞いたところ「しかるべき場所に連れて行かれると思う」という回答を得たことがありますが……。前出の政府関係者は、このように話しました。

「脱北当初は家族に監視や調査が入ったといいますが、基本的に家族にはおとがめがなく、まだ平壌に住んでいるようです。脱北者からの送金だからといって没収されることもなく、手数料だけをを引いた額が受取人にしっかり届けられるとのこと。北の郵便局に対し、仮に圧力があったとしても、万国郵便条約と、郵便局員としての矜持もあり、越権行為を許すことはないそうです」

 この脱北者が脱北した時期は5~6年前といい、金正恩第一書記の就任時期と重なっています。 韓国統一部の調査によると、金正恩氏就任当初の2012年から16年までは1, 000人単位だった脱北者数が、今年は8月時点で780人にとどまっており、 統一部はその原因を国内の規制が厳しくなったためと分析しています。

 そんな中、脱北者家族への罰則がないのは予想外であります。しかも、平壌は選ばれた人間しか住めない場所。家族の受け取ったお金が、別の形で没収されることはないのでしょうか?

 しかし、政府関係者はこのように私見を述べます。

「それもないようです。世間の脱北者へのイメージは、大飢饉が起きた1990年代後半頃で固まっているようですが、最近は家族を収容所に入れたり処刑することも、ほぼない。ひとつ確かなのは、着の身着のまま逃げていく地方の人とは違い、平壌の人間は準備や根回しを相当うまくやって、後腐れなく脱北する点。その際に払いきれなかった裏金を、家族を通じて分割払いしているケースもあるのでは? これはあくまで仮説ですが」

 つまりは、カネ次第ということでしょうか……?

 が、地方でも北と外界を行ったり来たりする人がいたり、「脱北がバレても土下座して許してもらえることもある」(中朝国境関係者)という話もあり、世界で報じられているほど北朝鮮社会は無秩序で非人道的ではない点もうかがえます。

 以前、ブログでも「脱北者ユーチューバー」の発言の真偽やマインドについて考察しましたが、ニュースだけでは決してわかりえない北朝鮮の人間模様、ますます興味が尽きないところであります。

●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。 政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>