岩田剛典『崖っぷちホテル!』視聴率ほぼ半減ショック! 「フツーに面白いドラマ」は、もういらない!?

「岩ちゃん」こと岩田剛典がブリブリな笑顔を振りまきつつ、老舗ホテルの再建を目指すドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)。第2話の視聴率は、なんと初回からほぼ半減となる6.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)まで下げました。近年、稀にみる垂直落下ぶりですが、そんなに悪かったかなぁ。悪くないと思うんだけどなぁ。というわけで、今回も振り返ってみます。

(前回までのレビューはこちらから)

 

 新米支配人の佐那(戸田恵梨香)にお願いされ、ホテル・グランデ・インヴルサを再建するために名門バリストンホテルから衝撃の転職を果たした宇海くん(岩田)。前回までに、このホテルの問題点はだいたい洗い出せていたようで、さっそく大ナタを振るいます。

 まずは、やる気がないくせにプライドだけは高い副支配人・時貞(渡辺いっけい)と料理長・江口(中村倫也)を降格処分に。時貞は「宿泊部の主任」という新たな肩書を気に入るわけもなく、ブーブー言ってます。新人パティシエ・ハルちゃん(浜辺美波)に料理長の座を奪われた江口もイジケまくっていますが、宇海くんは相変わらずニコニコで気にも留めません。

 自ら副支配人となった宇海くんは、従業員一同に「ホテルの宝物である顧客名簿を読め」と命令。10年ほど前に、たくさんの客が「ケーキ美味い」と感想を寄せていたことが明らかになると、「このケーキを再現してケーキフェアをやろう」という企画を打ち出しました。

 で、ケーキフェアは概ね大成功。両親を事故で亡くした女子高生を盛大なおもてなしで感動させました。宇海くんの鮮やかな仕事ぶりに、最初は苦々しく思っていたバーマスター・梢さん(りょう)や元料理長・江口も、少しずつ心を許してきたようです。

 

■今回は「チャド・マレーン回」でした

 

 今回、大きくフィーチャーされたのは、見た目が完全に外国人なのに英語がしゃべれないベルボーイのピエール田中(チャド・マレーン)。

 ホテル上層部の人事をバッサバサに斬りまくる宇海の姿を見て、仕事に自信のないピエールは「ぼくはクビになる」とガクブル状態。そんなこんなで大事なケーキを踏んづけてしまうなどミスを重ね、宇海くんに呼び出しを食らいます。

 クビになる覚悟を決めたピエールでしたが、宇海くんは「一緒に、いい方法を考えましょう」と、優しく語りかけます。そしてもう一度、顧客名簿を総ざらい。さらに、バーマスター梢さんの助言で、佐那の父が大事にしていた顧客からのお礼状もすべてひっくり返して読み返すことに。

 そんなこんなで、踏んづけたケーキをご所望だった女子高生が何者だったかを探し当て、無事にご満足をいただくことができました。

 やる気のない従業員に、さらなるミスを重ねさせてドン底にまで追い込み、宇海くんの器量の良さと本人の努力によって回復する。ピエールは宇海くんを信頼することになり、やる気を取り戻す。このドラマのフォーマットになるのは、こうして1人ひとりを回復させる流れなのでしょう。全員が宇海くんを中心にひとつになったとき、ホテルも復活を果たす、というクライマックスが見えてきます。

 

■浜辺美波のコメディエンヌぶりがまぶしいよ

 

 今回は、若き天才パティシエ・ハルちゃんを演じる浜辺美波が気を吐きました。イジけ腐った(元)上司の江口を「ツンデレなのね」と気にも介せず、自分のやるべきことを天真爛漫な笑顔でこなす姿は、実に健気で愛さずにはいられません。それにしても、17歳。永野芽郁もそうですが、新しい世代の女優さんがどんどん育ってる感じがして素敵です。

 また、ここまでスーパーポジティブなハルちゃんにも今後、波乱が訪れるとすれば、それは物語の大きな振り幅になると思います。中盤の盛り上がりを支えるのは、もしかしたらハルちゃんかもしれません。

■エピソードは弱い、弱いけど優しい

 

 見ていて気になるのは、各エピソードの弱さです。ピエールが「クビになる~」と恐れ慄く原因になったのも、「外国人客から逃げたのを宇海に見られた」「ケーキ踏んじゃった」だけなので、少し不自然に感じます。その宇海くんには「ネクタイ締められない」「20分締めたら3日も寝込んだ」という設定が与えられていますが、これもバリストンホテルとやらの副支配人にまでのし上がった人物としては、いかにも不自然。後半でバリッとスーツで決めるシーンがあって、それに対するギャップなのでしょうけど、ちょっと納得しかねる部分でもあります。

 また、ハルちゃんが食べたこともない「幻のケーキ」を完全に再現できちゃったのも安易だと思いますし、そのケーキを求めてやってきた女子高生の動機が、第1話と同じ「死んだ家族との思い出を求めて」というパターンだったことも、物足りないっちゃ物足りない部分です。

 ただ、こうした弱さもひっくるめて、優しい出来になっていると思うんですよねえ。第1話のレビューにも書きましたが、基本的には岩ちゃんファン向けのアイドルドラマなので、そもそもの岩ちゃんのパブリックイメージに、よく似合う作風だと思う。で、弱いといっても、退屈なわけではない。フツーに面白い、といえるくらいにはまとまってる。

 そういう、それなりによくできたドラマがここまで数字を下げるというのは、第2話を見終えた後でも、ちょっと不思議だなぁという印象が残ります。岩ちゃんの求心力が、まあこんなもんなのもあるけど、なんかフツーに面白いドラマって、もうあんまり視聴者に求められてないのかもしれませんね。ホント、悪くないし、マジメに作ってると思うんだけど。うーむむ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

『崖っぷちホテル!』アイドル・岩田剛典の“愛らしさ”暴発中! 「三谷幸喜っぽさ」から脱却できるか

 岩田剛典の民放連ドラ初主演作『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も15日にスタート。第1話の視聴率は10.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、まずまずの好発進です。

 さてこのドラマ、がっつり岩田ファンに向けてターゲットを絞ってきたように見えます。とにかく、岩田くんの“愛らしさアピール”がすごい。終始アヒル口でニコニコニコニコしながら「ワクワク♪」とか言ってダブルピースをクニクニさせる様など、とても『HiGH&LOW』シリーズで生コン飲んでた人とは思えません。「琥珀さんヨォオ……!」なんて叫び出しそうな気配が、まるでありません(といっても、こっちが本来のパブリックイメージでしょうけど)。

 人物の配置も、基本的には「岩田くん vs その他大勢」という設計になっているので、『崖っぷちホテル!』のコンセプトは、岩田くんによる岩田くんのためのアイドルドラマと見て間違いなさそうです。何しろ、その狙いがミエミエにもかかわらず、岩田くんがずっと愛らしいんだもの。

 そういうわけですので、この岩田くんの愛らしさが受け入れられれば最後まで楽しく完走できそうですし、逆に「うざい」「あざとい」「そもそもイケメンではない」「幼稚」「バカ」などと感じてしまうと、早々に離脱せざるを得ない感じです。

 

■「何が始まるか」は、すごくよく理解できる

 

 物語は、岩田くん演じる青年・宇海直哉が、倒産寸前の老舗ホテルを訪れる場面から始まります。汚ったないコート姿でロビーのイスに座り込んで眠りこけていたかと思ったら、目覚めるやいなや1泊22万円もするスイートを所望するなど、なかなかに怪しい人物です。

 部屋に大量のハガキを持ちこんだり、20誌にも及ぶマイナーな雑誌を買って来いと客室係に言いつけたり、革靴(かかとが潰れている)を廊下に出して「磨いといて」と無言のメッセージを発したり、あげくの果てに「水遊びするからプールの水を入れ替えろ」と命じたり、愛らしい笑顔で無理難題を次々に突きつける宇海。シナリオは、その端々に「なんか宇海は、ホテルのことをわかってるっぽい」というニュアンスを挟みつつ、「基本的には怪しいヤツ」というラインを、絶妙のバランス感覚で綱渡りさせてみせます。

 そんな宇海の理不尽な要求を、一手に引き受けるのが新米支配人の桜井佐那(戸田恵梨香)です。なぜ佐那が一手に引き受けるかといえば、従業員は誰も言うことを聞いてくれないし、そもそもやる気が全然ないからです。

 つまり、このホテルが倒産寸前である所以は、支配人に威厳がなくて、従業員にやる気がないからなのです。一連の怪しい行動で、宇海はそのすべてを見抜いていました。

 ドラマ後半、ニコニコ宇海が、実は有名ホテルチェーン「バリストンホテル」の副支配人だったことが明らかになります。「少し思い入れがあるから」このホテルを訪れたという宇海は、「嫌がらせをされたような気分」「がっかりした」と言って、ホテルを去ろうとします。

 しかし、そんな宇海を呼び止めたのが佐那でした。本気でこのホテルを立て直すことを決意した佐那は、的確な指摘をしてくれた宇海に「ここで私たちと、一緒に働いてください」などと無茶なことを言い出し、宇海がそれに「いいですよ、今すぐ電話してバリストンを辞めます」などと無茶な返答をしたところで、第1話はここまで。

 このホテルの名前は「ホテル・グランデ・インヴルサ」。ポルトガル語で「大逆転」という意味だそうです。果たして宇海と佐那は「大逆転」できるのか……というお話が展開されますよ、という作品の目的地が、すごくよく理解できるスタートだったと思います。

 

■「三谷幸喜っぽさ」の中に立ち上がった個性

 

 脚本は土田英生さん。今作は、演劇畑出身らしい「ホテル固定」の舞台設定で、原作なしの書き下ろしオリジナルになります。

 とはいえ、一見した印象は「書き下ろしのオリジナル」っぽくないなーという感じ。どこかで見た設定、どこかで見たお話、どこかで……というか、言ってしまえば、風景は映画『THE 有頂天ホテル』(2006)を、筋立てはドラマ『王様のレストラン』(フジテレビ系)を想起させます。また三谷幸喜です。この国でシチュエーションコメディを作ろうと思ったら、もう三谷幸喜の呪縛からは逃れられないのかもしれません。

 土田さんだって、この『崖っぷちホテル!』を指して「三谷幸喜っぽい」という感想が出ることは想定内でしょう。むしろ、それをまったく恐れてないと感じました。「三谷幸喜っぽい」だけでは終わらない個性とクオリティを出せるという確信のもとに書いているはずですし、とりあえず第1話が終わったところでも、岩田くん演じる宇海の愛らしさと弾ける笑顔は、このドラマの個性・魅力として立ち上がっていたように感じます。

■手堅い伏線と「再建すべき」という思いに共感させる仕掛け

 

 今後、宇海がさまざまな手を使って、やる気のない従業員たちの意識改革をしていくのだろうな、という予想が立ちます。

 この従業員たちは、その多くが「今は腐ってるけど、やればできる子」として紹介されました。

 シェフの江口(中村倫也)は確かな経験と技術を持っているものの、客の質が落ちてやる気がなくなり、競艇に没頭するばかり。

 副支配人の時貞(渡辺いっけい)とバーマスターの梢(りょう)は、かつてのホテルの価値を理解しているけれど、先々代支配人(佐那の父)に心酔していたこともあって、佐那を認めることができない。

 パティシエのハル(浜辺美波)は、やる気もあるしデザート作りの天才だけど、空気が読めない。

 特にエピソードは紹介されませんでしたが、掃除をさぼってトイレットペーパーを持ち帰ってばかりの清掃員・尚美(西尾まり)も、公式サイトでは「元腕利き清掃員」と紹介されています。

 つまり、宇海と佐那が彼らの意識を改革して、彼らが本来の働きを取り戻しさえすれば、ホテルは必ず再建できると、第1話にして約束されているわけです。1人ひとり、彼らにきっかけを与えて意識改革のエピソードを構築しつつ、宮川大輔、くっきー、チャド・マレーンの吉本芸人3人衆が面白おかしく立ち回る……なんだかこの『崖っぷちホテル!』には、失敗しなそうな雰囲気が漂っています。

 こうして、「どうすればホテルが再建できるか」については手堅く伏線が張られました。もうひとつ「そもそも、なぜこのホテルを再建すべきか」にも、ドラマは説得力を与えています。

 もとより主人公が「思い入れ」があって、ヒロインが「やりたい」と言っているだけでも物語は成立するわけですが、ドラマはこの「ホテル・グランデ・インヴルサ」が再建されるべきホテルであることについても、語ることを怠りません。「別に潰せばいいじゃん」と、視聴者に思わせません。

 宇海が佐那にプールの水の入れ替えを命じたのは、水遊びをするためではありませんでした。この季節、この時間になると、ちょうど夕陽が水面に反射して、ホテル全体の天井を、ゆらめく黄金に染めるのでした。それはまるで、オーロラのような、5年に一度訪れる常連客に言わせれば「夢の国」のような光景。この映像で「これはすごいホテルだな」と視聴者が感じれば、おのずと宇海と佐那の行動に共感できるという仕掛けです。最初に意識改革された「やればできる子」は、従業員ではなくホテルそのものだったというわけです。

 というわけで、実に用意周到にスタートしたように思われる『崖っぷちホテル!』。映画『約三十の嘘』(04)でも見られましたが、限られたスペースと人数の中でキャラクターの心を開かせ、その性根の良さを丁寧に引き出していくのは、土田さんのもっとも得意とする作劇だと思われます。このドラマは面白くなりそうというか、たぶんなると思う、なればいいかな、まあコケる覚悟はしておきますけど。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

『崖っぷちホテル!』アイドル・岩田剛典の“愛らしさ”暴発中! 「三谷幸喜っぽさ」から脱却できるか

 岩田剛典の民放連ドラ初主演作『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も15日にスタート。第1話の視聴率は10.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、まずまずの好発進です。

 さてこのドラマ、がっつり岩田ファンに向けてターゲットを絞ってきたように見えます。とにかく、岩田くんの“愛らしさアピール”がすごい。終始アヒル口でニコニコニコニコしながら「ワクワク♪」とか言ってダブルピースをクニクニさせる様など、とても『HiGH&LOW』シリーズで生コン飲んでた人とは思えません。「琥珀さんヨォオ……!」なんて叫び出しそうな気配が、まるでありません(といっても、こっちが本来のパブリックイメージでしょうけど)。

 人物の配置も、基本的には「岩田くん vs その他大勢」という設計になっているので、『崖っぷちホテル!』のコンセプトは、岩田くんによる岩田くんのためのアイドルドラマと見て間違いなさそうです。何しろ、その狙いがミエミエにもかかわらず、岩田くんがずっと愛らしいんだもの。

 そういうわけですので、この岩田くんの愛らしさが受け入れられれば最後まで楽しく完走できそうですし、逆に「うざい」「あざとい」「そもそもイケメンではない」「幼稚」「バカ」などと感じてしまうと、早々に離脱せざるを得ない感じです。

 

■「何が始まるか」は、すごくよく理解できる

 

 物語は、岩田くん演じる青年・宇海直哉が、倒産寸前の老舗ホテルを訪れる場面から始まります。汚ったないコート姿でロビーのイスに座り込んで眠りこけていたかと思ったら、目覚めるやいなや1泊22万円もするスイートを所望するなど、なかなかに怪しい人物です。

 部屋に大量のハガキを持ちこんだり、20誌にも及ぶマイナーな雑誌を買って来いと客室係に言いつけたり、革靴(かかとが潰れている)を廊下に出して「磨いといて」と無言のメッセージを発したり、あげくの果てに「水遊びするからプールの水を入れ替えろ」と命じたり、愛らしい笑顔で無理難題を次々に突きつける宇海。シナリオは、その端々に「なんか宇海は、ホテルのことをわかってるっぽい」というニュアンスを挟みつつ、「基本的には怪しいヤツ」というラインを、絶妙のバランス感覚で綱渡りさせてみせます。

 そんな宇海の理不尽な要求を、一手に引き受けるのが新米支配人の桜井佐那(戸田恵梨香)です。なぜ佐那が一手に引き受けるかといえば、従業員は誰も言うことを聞いてくれないし、そもそもやる気が全然ないからです。

 つまり、このホテルが倒産寸前である所以は、支配人に威厳がなくて、従業員にやる気がないからなのです。一連の怪しい行動で、宇海はそのすべてを見抜いていました。

 ドラマ後半、ニコニコ宇海が、実は有名ホテルチェーン「バリストンホテル」の副支配人だったことが明らかになります。「少し思い入れがあるから」このホテルを訪れたという宇海は、「嫌がらせをされたような気分」「がっかりした」と言って、ホテルを去ろうとします。

 しかし、そんな宇海を呼び止めたのが佐那でした。本気でこのホテルを立て直すことを決意した佐那は、的確な指摘をしてくれた宇海に「ここで私たちと、一緒に働いてください」などと無茶なことを言い出し、宇海がそれに「いいですよ、今すぐ電話してバリストンを辞めます」などと無茶な返答をしたところで、第1話はここまで。

 このホテルの名前は「ホテル・グランデ・インヴルサ」。ポルトガル語で「大逆転」という意味だそうです。果たして宇海と佐那は「大逆転」できるのか……というお話が展開されますよ、という作品の目的地が、すごくよく理解できるスタートだったと思います。

 

■「三谷幸喜っぽさ」の中に立ち上がった個性

 

 脚本は土田英生さん。今作は、演劇畑出身らしい「ホテル固定」の舞台設定で、原作なしの書き下ろしオリジナルになります。

 とはいえ、一見した印象は「書き下ろしのオリジナル」っぽくないなーという感じ。どこかで見た設定、どこかで見たお話、どこかで……というか、言ってしまえば、風景は映画『THE 有頂天ホテル』(2006)を、筋立てはドラマ『王様のレストラン』(フジテレビ系)を想起させます。また三谷幸喜です。この国でシチュエーションコメディを作ろうと思ったら、もう三谷幸喜の呪縛からは逃れられないのかもしれません。

 土田さんだって、この『崖っぷちホテル!』を指して「三谷幸喜っぽい」という感想が出ることは想定内でしょう。むしろ、それをまったく恐れてないと感じました。「三谷幸喜っぽい」だけでは終わらない個性とクオリティを出せるという確信のもとに書いているはずですし、とりあえず第1話が終わったところでも、岩田くん演じる宇海の愛らしさと弾ける笑顔は、このドラマの個性・魅力として立ち上がっていたように感じます。

■手堅い伏線と「再建すべき」という思いに共感させる仕掛け

 

 今後、宇海がさまざまな手を使って、やる気のない従業員たちの意識改革をしていくのだろうな、という予想が立ちます。

 この従業員たちは、その多くが「今は腐ってるけど、やればできる子」として紹介されました。

 シェフの江口(中村倫也)は確かな経験と技術を持っているものの、客の質が落ちてやる気がなくなり、競艇に没頭するばかり。

 副支配人の時貞(渡辺いっけい)とバーマスターの梢(りょう)は、かつてのホテルの価値を理解しているけれど、先々代支配人(佐那の父)に心酔していたこともあって、佐那を認めることができない。

 パティシエのハル(浜辺美波)は、やる気もあるしデザート作りの天才だけど、空気が読めない。

 特にエピソードは紹介されませんでしたが、掃除をさぼってトイレットペーパーを持ち帰ってばかりの清掃員・尚美(西尾まり)も、公式サイトでは「元腕利き清掃員」と紹介されています。

 つまり、宇海と佐那が彼らの意識を改革して、彼らが本来の働きを取り戻しさえすれば、ホテルは必ず再建できると、第1話にして約束されているわけです。1人ひとり、彼らにきっかけを与えて意識改革のエピソードを構築しつつ、宮川大輔、くっきー、チャド・マレーンの吉本芸人3人衆が面白おかしく立ち回る……なんだかこの『崖っぷちホテル!』には、失敗しなそうな雰囲気が漂っています。

 こうして、「どうすればホテルが再建できるか」については手堅く伏線が張られました。もうひとつ「そもそも、なぜこのホテルを再建すべきか」にも、ドラマは説得力を与えています。

 もとより主人公が「思い入れ」があって、ヒロインが「やりたい」と言っているだけでも物語は成立するわけですが、ドラマはこの「ホテル・グランデ・インヴルサ」が再建されるべきホテルであることについても、語ることを怠りません。「別に潰せばいいじゃん」と、視聴者に思わせません。

 宇海が佐那にプールの水の入れ替えを命じたのは、水遊びをするためではありませんでした。この季節、この時間になると、ちょうど夕陽が水面に反射して、ホテル全体の天井を、ゆらめく黄金に染めるのでした。それはまるで、オーロラのような、5年に一度訪れる常連客に言わせれば「夢の国」のような光景。この映像で「これはすごいホテルだな」と視聴者が感じれば、おのずと宇海と佐那の行動に共感できるという仕掛けです。最初に意識改革された「やればできる子」は、従業員ではなくホテルそのものだったというわけです。

 というわけで、実に用意周到にスタートしたように思われる『崖っぷちホテル!』。映画『約三十の嘘』(04)でも見られましたが、限られたスペースと人数の中でキャラクターの心を開かせ、その性根の良さを丁寧に引き出していくのは、土田さんのもっとも得意とする作劇だと思われます。このドラマは面白くなりそうというか、たぶんなると思う、なればいいかな、まあコケる覚悟はしておきますけど。
(文=どらまっ子AKIちゃん)