岩田剛典主演『崖っぷちホテル!』最終回は7.9%!“続編”への期待も?

 日曜ドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も17日放送の第10話で最終回。視聴率は7.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)に終わりました。初回10.6%から第2話で6.1%と急落。その後、第4話で7.0%に戻してからは、ずっと7%台をキープ。特に気に入った人も少なかったけど、離脱した人もあんまりいなかったようです。

 岩田剛典くんのアイドルスマイルが存分に振りまかれた同作。最終回を中心に振り返ってみます。

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■「なんか素敵」だけでいいのか。別にいいか。

 3カ月前、どいつもこいつも、まったくやる気のない老舗ホテル「グランデ・インヴルサ」に突然やってきた“ホテル界の革命児”宇海くん(岩田)。従業員たちに無理難題を押し付けつつ、その思慮の深さと、徹底した「お客様ファースト」によって意識改革をもたらし、ホテルは大逆転に成功。そしていよいよ、インヴルサと宇海との、お別れのときが訪れました。

 宇海はこの日、とある地方のホテル「スイーブル」の従業員たちを、インヴルサに招待していました。その数、11人。インヴルサの従業員数と同じです。

 彼らは、まるで3カ月前、宇海がインヴルサを訪れる以前の従業員たちと瓜二つです。料理よりギャンブルにしか興味がないシェフ、無関心な客室係、備品をくすねる清掃係……その姿を見て、インヴルサの清掃係・裕子ちゃん(川栄李奈)は、宇海がインヴルサを辞めてスイーブルに行くつもりなのではないかと予感します。ちなみにこのドラマの裕子ちゃんは「いつも予感が当たる」という設定なので、この時点で宇海がインヴルサを辞めることは確定です。

 宇海は、慰留しようとする支配人の佐那ちゃん(戸田恵梨香)に、辞める理由を述べます。

「怖くなってしまったんです、この場所にいるのが」

 いわく、宇海は子どものころに一度ここを訪れてからというもの、インヴルサで働くのが夢だったそうです。そして夢を叶えた今、「どんなことにワクワクしていけばいいのかわからない」「夢が現実になってしまった怖さ」「だから私は、この場所を夢のままにしたい」のだそうです。

 正直、ちょっと何言ってるのかわからないんですが、基本ニコニコだった岩ちゃんが真剣な表情で語る姿は、いかにも最終回っぽいです。

 その後、送別会が開かれますが、宇海はなかなか顔を出しません。これに、宇海がもう次の職場に旅立ってしまったと勘違いした従業員たちが、順繰りに宇海への感謝のスピーチを行います。みんな泣いてます。宇海もドア越しに泣いてます。そのスピーチの内容は特に展開があるわけではなく、単なるセリフによるダイジェストでしかないので、まったく面白くありませんし感動もしませんが、とにかく基本ニコニコだった岩ちゃんがポロポロと涙を流す姿は、いかにも最終回っぽいです。

 そして、ひとしきりスピーチを味わってから顔を出した宇海は、なぜここでワクワクできないと思ったかを、全員に告げます。

「私はホテルマンです。お客様が第一です。なのに私、みなさんのことが、お客様より、大好きになっちゃったんです」

 えーと、マジで何言ってるかわからない。ここで言うセリフが宇海という人物の総決算なのに、雰囲気しかない。要するに、面白くない。「なんか素敵」という印象しか残らない。

 でも、このドラマの「なんか素敵」なだけの感じは、そんなに嫌じゃなかったんですよねえ。

■良心的であろうとした姿勢がよかった

『崖っぷちホテル!』は、最初から最後まで上品で楽しく、良心的なドラマであろうとしていたと感じます。

 特に、第1話で明確に物語の目標を提示してから、インヴルサの従業員たちの意識改革が完遂する第6話までは、やりたいことができている感じがしました。岩ちゃんのためのアイドルドラマであるにもかかわらず、脇役たちに丁寧にエピソードを振りながら、少しずつホテルがよくなっていく。それにしたがって、従業員たちの宇海に対する評価も変化し、結果、宇海の好感度も上がっていく。とりわけディテールが優れているわけでも、展開にダイナミズムがあるわけでもないけど、安定して楽しめる作品になっていました。

 その反面、全員が一人前のホテルマンに成長してからの7~9話は蛇足感がありました。このドラマは「誰かが成長する」ことを感動の主軸に置いてきたので、立派な人しかいなくなったインヴルサにドラマは起こり得なくなっていたのです。最終回でみんなが語ったダイジェストが、すべて6話までに起こった出来事だったことからも、7~9話の空っぽさがよくわかります。

 最終回となった第10話は「岩ちゃんが泣く」というシーンを撮るためだけの作業みたいな脚本になっていましたが、そもそもの「アイドル岩ちゃん初主演ドラマ」という企画主旨を考えれば、許容範囲かなと感じました。

 好みを言ってしまえば、7~9話はそれまでのユルさから一歩進んで、大切な思い出の客室が不始末で燃えちゃったりとか、従業員の中でも信頼の厚かった人がやむにやまれぬ理由から悪事に手を染めていて悲しい別れが訪れたりとか、「みんなが一つになったと思ったのに!」みたいな、もうちょいシビアで刺激的なお話があってもよかったかなと思いますが、それはまあ、また別の話で。ニコニコだけど正装したら吐いちゃうという宇海くんが「ついにタキシードを着る」「マジでガチなお話をする」「泣いちゃう」というそれぞれの山場についても、もうちょい独自のエピソードを練って盛り上げられたんじゃないの? と思うけど、それもまあ、別の話ですね。

 ちなみに、宇海の転職先であるホテル・スイーブル、フランス語の「suivre」は、英語なら「To be continued」的な意味でしょうか。「宇海の夢は続いていく」と「続編に期待してね」のダブルミーニングで、なんか素敵なエンディングでした。続編があるならホラーがいいなあ。数年後、朽ち果てたインヴルサを訪れた宇海の目の前に、佐那ちゃんの○○が……! それを目の当たりにした宇海、なぜかニコニコ……! みたいな。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

今夜最終回! 岩田剛典主演『崖っぷちホテル!』残念すぎるクライマックスに絶望中……

 日本テレビ系の日曜ドラマ『崖っぷちホテル!』も、今夜いよいよ最終回。直前となった第9話の視聴率は7.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、前回の第8話より0.8ポイント下げました。第8話、つまんなかったもんなー。

 さて、このドラマは基本的に岩田剛典くんのためのアイドルドラマです。機知に富んだカリスマホテルマンでありながら、「正装すると吐いちゃう」という明確な欠点を持つ愛すべき副支配人・宇海くん(岩田)が、やる気のなかった従業員一人ひとりに意識改革をもたらしていく。そうして、やる気と生きがいを取り戻した従業員たちによって、ホテル・グランデ・インヴルサ(ポルトガル語で「大逆転」の意)が、文字通り大逆転を果たしていく。そういう物語です。

 第6話までで概ね大逆転は完了し、今回はいよいよ宇海くん個人についてのお話が、ラスト2話で語られることになります。アイドル岩ちゃんがもっとも輝くべきは、まさにこの残り2話となります。

 そんなわけでクライマックス直前となった第9話、ついにあの宇海くんが吐き気を克服し、タキシードに身を包むまでが描かれました。振り返りましょう。

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■輝かなかった!

 結論から言って、ここまでの9話の中で、もっとも魅力のない宇海くんが描かれました。身勝手で思慮が浅く、客の都合なんてまるで考えず、エゴイスティックに自己陶酔に浸る、ただ顔面がかわいいだけの青年がそこにいました。

 ここまで、大雑把にいって「客の夢」と「従業員の夢」を同時に叶えることでホテルをどんどんよくしてきた宇海くんだったわけですが、なんだろう、今回「俺の夢」のために動き出した途端に、そのカリスマ性が霧散していったように見えたんです。

 その宇海くんの夢というのは「大花火大会をしたい」というものでした。ホテルの創立50周年記念日に大花火大会をしたい。天気予報ではたぶん暴風雨だけど、この日にやりたい。

 このホテルで花火大会を行うとすれば、それは20年ぶりだそうです。20年前の30周年でも、花火をやってる。そういう説明とともに、楽しそうに花火を見上げる少年少女がセピア色で映し出されます。要するに宇海くんとこのホテルには昔から縁があって、20年前にここで花火を見上げたことがあるという事実が示唆されるのです。少年は宇海くんで、少女は現・総支配人の佐那ちゃん(戸田恵梨香)でしょう。そういう思い出もあって、ここで花火がしたい。ここまでは、わからんでもない。

 ここから、物事が説明されるたびに謎が積み重なっていきます。

 宇海くんは前職である巨大ホテルチェーン「バリストン」でも花火大会を企画していたそうです。それは「夢」だったから。夢のために、花火師の免許も取っているのだそうです。

 わからないのは、何が宇海の「夢」なのか。ただ「花火を上げたい」ならホテルじゃなく花火屋さんになればいいし、「ホテルで花火を上げたい」のなら、悪天候が予想される50周年記念じゃなくても、免許持ってんだから週1とか月2とかで上げればいいし、景気がいいならTDRみたいに毎日上げたっていいでしょう。で、「佐那ちゃんとのセピア色の思い出があるから、どうしても50周年に上げたい」というなら、今度はバリストンで上げようとした意味がわからない。「あの日の思い出よ、もう一度」というのが夢だとしたら、バリストンで上げても意味がないでしょう。

 ここまで誰かのために頑張ってきて、その姿が実に魅力的で、誰からも慕われるようになった主人公が、いよいよ自分の夢を語る。夢を実現する。もう周囲は、協力する気満々です。そしてテレビの前のわたしたちは、感動する気満々です。それなのに、この「主人公の夢」のフンワリ具合は、いったいなんなのか。隠してきた夢とは、そのキャラクターそのものであるはずです。

 宇海くん、あんたは誰だ。

 さらにわからないのが、このときに語られたバリストンでの花火企画の顛末と、転職理由です。

 いわく、バリストンで花火大会を企画したものの、誰かが嫌がらせで業者に当日キャンセルの連絡をしてしまい、客をガッカリさせたとのこと。これで、なんか辞めたくなっちゃったときにインヴルサに誘われたから、すっぱり転職したのだそうです。いわく、そういうタイミングだったと。

 もともと、フラっと現れて、佐那ちゃんが「一緒に働いて!」とお願いしたら、即答で「面白そうだからいいよ!」と応じるブッ飛んだ職業意識が魅力として打ち出されていたわけですが、前職を辞めたいタイミングだったとなると話が違ってきます。「バリストンという一流よりも、インヴルサでの逆転に魅力を感じた」のならホテルマンとして超絶カッコいいですが、辞めたいときにオファーをもらっただけなら、普通の転職だもん。さんざんカットインしてきた「少年少女のインヴルサでのセピアな過去」による“運命”っぽい演出の意味が、宇海くんが事実関係を説明すればするほどほど意味不明になっていくんです。インヴルサに戻りたかったのか、いつか戻る気だったのか、そもそもなんでバリストンに就職して、若くして副支配人にまで出世することができたのか。花火大会での嫌がらせがなかったら、インヴルサに戻ることはなかったのか。だったら“運命”っぽいアレはなんなんだ。

 宇海くん、あんたいったい、誰なんだ。

■最重要だったタキシードも、ぬるっと。

 さらに、タキシードについてもそうです。今回、なんだかんだで悪天候のために一度、宇海くんは花火の打ち上げをあきらめます。その際、客に謝るためにタキシードを着用します。バリストンでは、客に謝るためにタキシードを着ようとしたら、失神したそうです。でも、インヴルサでは着られた。

 これでは、宇海くんの根っこの部分に、差別があることになってしまう。バリストンの客に謝ることより、インヴルサの客に謝ることのほうが大切・重要・価値があることになってしまう。あのときのバリストンの客が大切じゃない・重要じゃない・価値がないことになってしまう。

 宇海くんにとって「タキシードが着られない」というのは、ホテルマンとして唯一の欠点だったはずです。この欠点の克服こそがドラマのクライマックスであり、主人公である宇海という人物がいったい誰で、どう生きてきて、今後どう生きていくかのすべてを象徴するはずだったんです。ドラマが全部「そう」あるべき、という話ではなく、『崖っぷちホテル!』が9話かけて「そうですよ」と言い続けてきたことなんです。

 だから宇海がタキシードを着るくだりは、全話中テンション最高潮でなければならなかった。アイドルである岩ちゃんが主人公なんだから、タキシード姿の岩ちゃんが超最高に光輝く段取りを踏まなければならなかった。

 それが、なんかもう、ぬるっと処理されてしまいました。いつの間にか着てるし、なんかよくわかんない“着られた理由”らしきことも、セリフでちょっと言うだけだし。

 まあ白状してしまえば、わたしはこのドラマ、好きだったんですよねえ。品があって楽しくて、なんだったら各話のエピソードが平易で“ガツンとこない”ところも好きだったんですよ。平和で、丁寧で、フツーに面白い。マジメに作っていると感じていたし、何より岩ちゃんが演じる宇海という人物が好きだったんです。

 わたしの好きだった宇海くんはね、例えば宇海くん以外の誰かが「俺の夢だから暴風雨でも花火やるから!」とか言い出しても、「もっと客の喜ぶことを考えろ」と言う人ですよ。「本当に今、この客は花火を望んでいるか?」と、考える人です。あの宇海は、どこへ行ったのか。

■悪い予感はしていたみたい

 そういうわけで、今夜が最終回です。7話以降、絶望的につまらなくなった『崖っぷちホテル!』ですが、思い起こせば第1話のレビューでは、基本的に「面白い面白い」と絶賛しつつ、こんなことを書いてました。

「このドラマは面白くなりそうというか、たぶんなると思う、なればいいかな、まあコケる覚悟はしておきますけど」

 まあ実際、脚本は見事にコケたなーという感じですし、もはや宇海という人物に明確な過去や未来が設定されているかどうかも疑わしいところですが、最終回も見るのは見ますよ。そんで、感想を書くのは書きますよ。はい、残念でした。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

岩田剛典『崖っぷちホテル!』視聴率は7.8%安定も「崖っぷちにいるんじゃなく、すでに……」

 日本テレビ系の日曜ドラマ『崖っぷちホテル!』も第8話。視聴率は7.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、だいたいこのへんで安定です。

 このドラマについては、ちょっと甘いし、ゆるいところもあるけど、基本的には「気持ちのいいコメディですね」といった感じで紹介してきました。岩田剛典演じる主人公のニコニコワクワクホテルマンは愛嬌があってかわいいですし、彼が起こした奇跡の数々も、脚本家の性根のよさが表れていて好印象ですし、戸田恵梨香、渡辺いっけいほかキャスト陣も安定したお芝居で楽しませてくれるし、野性爆弾・くっきー、チャド・マレーン、宮川大輔の吉本芸人3人も、嫌味なく物語世界に溶け込みつつ、しっかり面白い。軽妙な中にも、それぞれのキャラクターに苦悩があって、克己がある。“崖っぷち”からの復活を目指すホテルそのものも、その存在としての魅力を振りまいている。

 なので、まあぶっちゃけ第7話からアレだなとは思っていたのですが、この第8話には驚きました。振り返りましょう。

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■うんこ!

 はい、うんこ。全然面白くない。気持ちもよくない。驚くほどに。

 前回のレビューで「物語の底が抜けた」と書きましたが、底が抜けたまま『崖っぷちホテル!』は最終回に向けて走り出したようです。例えるなら、映画『バトル・ロワイアル』からの『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌』のようなものです。もう物語は終わっているのに、登場人物たちが無理やりカメラの前に引きずり出されているような感触。ホテル・グランデ・インヴルサの再生をわりと本気で願ってきた私のような良心的な視聴者には、全然関係がない、意味がない、リアリティもない、誰の魂も乗っていない、まるでホテルの抜け殻の中で人間の抜け殻たちが蠢いているような、薄気味の悪い1時間となりました。

 これまでは作劇のパターンとして、ある問題が勃発すると、宇海くんがその解決に当たるべき担当者を指名し、その担当者の「本音」と「本気」を引き出すことで問題を解決するとともに、意識を改革するというものでした。

 この「本音」と「本気」を引き出す宇海くんの“導き”の見事さと、それに伴って語られるホテルマンとしての理念と誇り、そして従業員それぞれに対する優しさと思いやりが、『崖っぷちホテル!』の感動ポイントだったのです。「能力があるけど、やる気がない」彼らが、ひとりずつ、生き生きと働くようになっていく。誰もが、人として再生していく。そうしてホテルがひとつになっていく。なぜなら、ホテルは人だから……みたいな、そういうとこが気持ちよかったんです。

 しかし、従業員全員がホテルを愛し、ホテルをよりよくするために全力を尽くすと決心してしまったドラマには、もう課題がありません。宇海くんが意識改革を完遂してしまったのが、第6話まで。第7話で“最大の敵”として登場した前支配人(佐藤隆太)も、みんなで力を合わせてやっつけました。もうグランデ・インヴルサに、心配事は何もないのです。崖っぷちにいるんじゃなく、すでに崖を登りきっているのです。

 で、今後何をするんだろうと思って待っていたのが第8話。

 なんか突飛な設定の外国人が登場し、適当に課題が建て増しされ、適当に解決されました。宇海くんの“導き”も、もうその心に寄り添うべき従業員はいないので、単なるノウハウの伝授にすぎません。答えを直接教えちゃったらドラマにならないから、なんとなくヒントっぽいものを与えて、よく訓練された従業員が正解を出す。しかも、ヒントと正解も、全然ピンとこない。

 外国人の客が「ベッドメイクができてない!」と不満を述べ、宇海くんが「ワクワク働こ!」と言い、フロントマンがベッドにハスの葉をばら撒く。客、満足。

 何それ。

 客が「部屋に大きいテレビを持ってきて」と注文し、なぜか客室係がなかなか持っていかず、宇海くんが「ワクワク働こ!」と言い、頼まれてもない母国の衛星放送(?)の契約をする。客、満足。

 何それ。

 ちゃんと具体的な希望を述べない客のコミュニケーション不全にも共感できないし、従業員たちの異常な察知能力(もはやテレパシー)にも共感できない。出来の悪いクイズ番組で、八百長で答えを知っている回答者を見ているみたい。

 最後は停電になって、寄せ鍋を食わせて、客満足。何それ。しらねーし。全部おめーらの都合だし。

■唯一、残っていた財産も雑に処理されました。

 第2話のレビューで、こんなことを書きました。

「また、ここまでスーパーポジティブなハルちゃんにも今後、波乱が訪れるとすれば、それは物語の大きな振り幅になると思います。中盤の盛り上がりを支えるのは、もしかしたらハルちゃんかもしれません。」

 ホテルが再生を目指す中で、唯一、宇海の薫陶を必要としなかったのが、若き天才シェフのハルちゃん(浜辺美波)でした。最初から才能にあふれ、やる気にあふれていたハルちゃんは、ともすれば宇海とともに“導き”を与える側ですらあったわけです。

 だからこそ、ハルちゃんの内面(あるいは暗黒面)が描かれることがあるとするなら、それはドラマにとって大きな展開を生む要素になり得ると感じていたのです。それは、『崖っぷちホテル!』に残された、数少ない財産だったと思うんです。

 それも今回、いかにも雑に処理されました。「元気印だって、落ち込むことはあるのよね」みたいな2~3のセリフ、数分のシーンでパパッと描かれ、ドラマそのものの都合に飲み込まれていく。展開の「役割」に埋没していく。ハルちゃんという一人の人物が「殺された」とさえ感じられる、残酷な処理。

 こっちもすごく雑な言い方をさせてもらえば、三谷幸喜はこんなことしないんですよ。物語上の役割が終わったキャラクターにも、最後まで寄り添おうとするんです。そういうとこだと思いますよ。次回もきつそうだけど、最後まで頑張ります。頑張りましょう。はい。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

岩田剛典『崖っぷちホテル!』コメディが“茶番”になる瞬間……前回までで終わっておけばよかったのに!?

 岩田剛典主演の日曜ドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も第7話。視聴率は7.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、第4話あたりから視聴者は増えもせず、減りもせず。気に入らなかった人は早々に離れ、気に入った人は離脱することなく見続けているようです。

 とはいえ、物語的には前回の第6話で、ひと段落。今回から新しいことが始まります。いったい何が始まったのか。そして、大丈夫なのか。振り返りましょう。

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■急に降って湧いた売却話。

 そもそもこのドラマは、ダメダメなホテルに革命児である宇海くん(岩田)がやってきて、従業員の意識を改革し、「いいホテルにする」ことを目標に始まりました。

 そして、一人ひとりに丁寧なエピソードが割り振りながら、「ホテルにとって何より大切なのは、お客様の笑顔です」という哲学が繰り返し語られました。ベルボーイ、清掃係、厨房、バー、事務方、そして支配人である佐那(戸田恵梨香)……全従業員がその哲学を理解することで、とりあえず「いいホテル」になった、というのが前回まででした。

 そして今回、そんな「いいホテル」になった「グランデ・インヴルサ」に存続の危機が訪れます。

 もともと若い娘っこである佐那が総支配人になったのは、亡き父の跡を継いだ兄・誠一(佐藤隆太)が借金を残してトンズラしたことがきっかけでした。その消息不明だった誠一が、急にホテルに舞い戻ってきたのです。

 誠一は、久しぶりに顔を見せたかと思いきや、いきなりホテルの乗っ取りを宣言。すでに取得している45%の株に加え、取引銀行の担当者・横山さんのお父さんが持っている6%も譲ってもらう算段が付いていて、合計で持ち株比率が51%になるとのこと。これを根拠に誠一は、まずは35%しか持っていない佐那から「総支配人」の立場を奪い取ります。肝心の宇海くんは「従うしかない」とニコニコ。

 新支配人となった誠一は、なぜか従業員たちのポジションの大シャッフルを提案。テキトーな感じで、シェフをベルマンに、フロントを清掃係に……などなど仕事を振り分けます。肝心の宇海くんは「おもしろいじゃないですか」とニコニコ。一流ホテルでも、ジェネラリストを育成するために、さまざまな仕事を体験させるという教育があるんだそうです。

 振り分けられたみんなは懸命に自分の仕事をこなしつつ、講習会を開いてお互いに仕事を教え合うなど、これはこれで和気あいあい、かつ充実した雰囲気。しかし、誠一の目的はホテルの再建ではなく、売却なのでした。

 銀行と勝手に話を進めた上、すでに看板工事まで発注していた誠一でしたが、ここでヒーロー宇海くんがヒーローパワーを発揮。6%を持っていた横山さんのお父さんから株を買い取り、さらに宇海くんに指図された古参従業員・時貞さん(渡辺いっけい)が全国各地を回ってかき集めた10%も加えて、佐那の持ち株比率は51%に。ホテルは売却のピンチを免れるのでした。

 こうして、誠一の登場によって降って湧いた売却話は一件落着。何事もなかったように、次回へ。

■あー、ドラマの腰が折れた。物語の底が抜けた。

 これまで“いい話”を積み重ねてきていたので、たいへん好印象だった『崖っぷちホテル!』でしたが、今回は実のないエピソードだったと感じます。

 兄妹の持ち株比率の数字についても、唐突に現れた横山パパの「6%」をめぐるやり取りも、まったく必然性がありません。兄・誠一の登場から乗っ取り、宇海にしてやられるまでの展開も、佐藤隆太の突飛なキャラクターに頼るばかりで行動原理が見えないので、まったく共感できない。ただ場を荒らすために出てきた野蛮人でしかないし、“基本いい奴”しかいなかったのが特徴の同ドラマでは、完全に浮いてしまっている。

 そして今回、ドラマの腰が折れた、と感じたのが、誠一が提案した「お仕事シャッフル」に嬉々として乗っかった宇海&従業員の面々の姿です。

 結果的に、それぞれが仕事を教え合う、それぞれの仕事への理解が進む、それぞれの仕事への帰属意識が再確認されるなどの効果が生まれ、「厄介な奴による厄介な企画だったが、思わぬ副産物もあったね」みたいな感じで処理されていますが、これはダメでしょう。割烹でバイト歴があって、たまたま調理師免許を持っていたからって、厨房を清掃係に任せちゃダメでしょう。フレンチ食いに来た客に、したり顔で肉じゃが出しちゃダメでしょう。

 第1話からここまで、従業員全員に(視聴者にも)丁寧に敷衍してきた「ホテルにとって何より大切なのは、お客様の笑顔です」という哲学を、完全に破棄してるんです。「客の都合を考えて動け」と言い続けてきたドラマが、ここにきていきなり客の都合を無視して、「従業員の結束が固くなったからいいじゃん」と言ってしまった。

 この物語に通底していたのは「このホテルには伝統と格式がある」という前提条件でした。第1話より以前、従業員たちは、その伝統と格式にあぐらをかいてダメダメになったり、伝統と格式があったはずのホテルが変わってしまったからこそダメダメになったりしていたわけです。そういう連中が宇海によって意識を改革され、プロフェッショナルなホテルマンとして本来の「伝統と格式」を取り戻そうと立ち上がるにいたったのが、前回までだったのです。

 今回、その物語の、底が抜けてしまった。プロフェッショナルでない人間の料理を、客に食わせてしまった。ベッドメイクも、ベルボーイも、事務経理でさえも「がんばれば誰にでもできる程度の仕事」と作品の中で定義づけてしまった。これにより、ホテル・インヴルサも「がんばれば誰にでも再生できる程度のホテル」に成り下がるし、宇海の起こしてきた数々のミラクルも価値を失うことになります。脚本家は「たった数日だし、清掃係も料理上手だから、別にいいじゃん」とでも考えたんでしょうか。宇海も、そう考えたんでしょうか。だとしたら、今まで見てきたものは、なんだったというのか……。

 あー、もったいない。ここまでいい感じで上品なコメディを紡いできただけに、本当にもったいない。格式を失ったコメディを、人は「茶番」と呼ぶのです。

 来週はフロントマンの大田原さん(野性爆弾・くっきー)が客に一目ぼれして云々だそうですよ。第1話のネタ振りを回収した第6話までで終わっときゃよかったのに、とならないことを祈りたいです。ここまで見てきて、今さらガッカリしたくなーい。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

岩田剛典『崖っぷちホテル!』“いい話ドラマ”に生じた綻びと「メタ視点」の功罪

 岩ちゃんこと岩田剛典主演の毎度ほっこりなシチュエーションコメディ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も第6話。視聴率は7.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、それなりです。もっとも、2015年4月から始まった日曜22時30分の「日曜ドラマ」枠で全話平均2ケタに届いたのは、同7月期で放送された『デスノート』だけなので、この『崖っぷちホテル!』も、特別にコケてるというわけではありません。でもまあ、低空飛行ではあるよね。寂しいね。

 さて、このドラマの特徴は、とにかく「いい話」であること。平和で健全で、性根の腐った奴が一人も出てこない、気持ちのいい作品です。そういうところが安心ですし、また物足りないところでもあります。

 そんな安心ドラマに、ちょっとだけ綻びが生じ始めた今回。振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

■今回はいよいよ時貞さんを洗脳します

 経営が傾いたホテル「グランデ・インヴルサ」の副支配人に就任し、総支配人の佐那(戸田恵梨香)とともに再生を目指している宇海くん(岩田)。これまで、従業員1人ひとりに対して丁寧にエピソードを重ねながら意識改革を促し、ホテルを「いい方向」に導いてきました。

 そんなこんなで、いまだに問題分子っぽい雰囲気を出しているのは元副支配人で、宇海くんによって宿泊部主任に降格させられた時貞さん(渡辺いっけい)だけに。この時貞さんさえ“転んで”しまえば、宇海くんの洗脳計画……もとい、意識改革計画は完了となります。

 今回は、そんな時貞さんが「暴力事件を起こしていた」という告発状がホテルに届くところから。

 この告発状と時を同じくして、なんだか言葉使いの荒い中年男性・後藤さん(でんでん)が、娘を連れてホテルにやってきます。

「だから時貞だよ時貞! 時貞を出せ!」
「いるじゃねえか、約束通り来てやったぞ!」

 ロビーで大声を出す後藤さんのおでこには、大きな絆創膏。この告発状と絆創膏により、「どうやら時貞さんは後藤さんに暴力を振るったようだ」「告発状は後藤さんが送ったもののようだ」という空気がホテルに広がります。総支配人・佐那が直接、時貞さんを問いただすと否定こそするものの、どこか煮え切らない様子です。

 聞けば後藤さんは地元の自治会長で、かつてはこのホテルの常連だったそうです。久しぶりに来て、「泊めろ」と言っている。ガラも悪いし、ランチには文句ばっかり言ってたそうですし、従業員一同は「断ろう」と提案します。しかしニコニコ宇海くんは、いつものニコニコ顔で泊めちゃうことにしました。佐那も「お客様なので、お断りするのは違うかと」と殊勝なお返事。後藤さんと、後藤さん以上に不機嫌な娘を泊めることにしました。

 宇海くんによって、後藤さんの担当を任された時貞さんは、ずっと奥歯にものが詰まったような顔をしています。

■美しい“中締め”はメタ的な視点で

 結論から言って、告発状は後藤さんによるものではありませんでした。絆創膏は自分で転んでケガをしただけでしたし、時貞さんの献身的な接客により、後藤さんは大いに満足して帰っていきました。

 今回は、このドラマの、とりあえず総決算となりました。第1回に提示された「みんなの心が変わればホテルが変わる」というテーマに沿って1人ひとり改心させてきた宇海くんのプロジェクトが、最後のひとりである時貞さんを丸め込んだことで、完遂となったのです。

 いわゆる中盤のクライマックスを迎え、面白かったシークエンスがあります。

 後藤さんの曖昧な要求を測りきれない時貞さんが、宇海くんに土下座をして、こう頼むのです。

「お願いです! 教えてください! ほんとはわかってるんですよね、後藤さんが何を求めてるのか……」

 そして宇海くんが「わかりません」とあっさり返すと、

「だっておまえ、のらりくらりしながら、全部お見通しみたいな感じでやってきたじゃねえかよ!」

 と怒鳴りつけるのです。

 この時貞さんの視点は、そのまま視聴者の視点です。このドラマは宇海くんの巧みな策略によって、誰も彼もが「改心」に導かれてきました。まさに時貞さんのおっしゃる通り、宇海くんは「全部お見通しみたいな感じでやってきた」のです。

 そういうパターンに満ちた脚本が安心感につながってきたし、物足りなさにもなっていた。ここで宇海くんがラスボスである時貞さんを攻略するに当たり、今までのパターンの種明かしというか、メタ的なセリフを採用することで、「とりあえず、パターンはこれで使えないよ(使わないよ)」というドラマとしての宣言を行ったわけです。

 このシークエンスによって『崖っぷちホテル!』は美しい“中締め”を迎え、次回以降の新たな展開を期待させることに成功しています。

■テクニックに溺れ、魂が抜けた……

 ただし、展開や論法として美しかった一方で、肝心のエピソードは驚くほど面白くなかった。20歳の誕生日を迎えた不機嫌な娘が、天窓から注ぐ月明かりに感動し、素朴な鯖の塩焼きに感動し、父親と2人で初めて日本酒を酌み交わすという、そこには笑顔しかないという、なんのヒネリもない“感動してしてシーン”が横たわっていたのです。展開上のクライマックスですから、エピソードについてもこれまでで最高の盛り上がりを見せてほしいという期待を持っていたのですが、逆にこれまででもっとも安直で手垢にまみれた、魂の抜けたものを見せられました。

 宇海くんの存在については客観的に、かつテクニカルに落とし込んで見せた作品が、そのテクニカルに自惚れるあまり登場人物の心理描写において手を抜いたと、そう見えたのです。それくらい、あの不機嫌だった娘が父親と楽しそうに酒を飲んでいるシーンにリアリティを感じなかった。父親にとって理想の(そして父親の想像の範疇でしかない)展開に、「これ、娘が実は死んでるんじゃ?」と思えるほど、空々しく感じたのです。パッと見は今までと同様の「いい話」だけど、「客」を安く描くとホテルのドラマは急に色褪せますね。そういうことを感じました。

 次回は、佐那のお兄ちゃん(佐藤隆太)が登場。「時貞が暴行事件を起こした」という告発状の真の差出人であり、このホテルを借金まみれにして逃げた張本人です。

 このドラマが次回以降、何をしようとしているのか、まったくわかりません。そこは、ホントに楽しみ。こういう楽しみって、原作なしのオリジナル脚本ならではで、とてもよいですね。はい。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

 

岩田剛典『崖っぷちホテル!』視聴率“微増”中……脇役ばかりがハッピーになるハッピーエンドに需要はあるか

 日曜夜のゆるふわほっこりドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も第5話。視聴率は7.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今回も微増です。2話目で崖の下に落ちてから、ずっと微増。じりじりと這い上がっています。

 このドラマは、毎回とっても“いい話”なんですが、今回もまた例にもれず。実に平和です。平和が何より。振り返りましょう。

(前回までのレビューはこちらから)

■今回は、りょうさん。

 なんだかんだで崖っぷちなホテル「グランデ・インヴルサ」の副支配人になった“ホテル業界の貴公子”こと宇海くん(岩田剛典)。ダメダメな従業員をひとりずつターゲットにし、意識改革を促すことでホテルの再生を目指しています。

 これまでシェフ・江口(中村倫也)、ベルボーイ・ピエール(チャド・マレーン)、事務方の丹沢さん(鈴木浩介)と、立て続けに覚醒させて、見事にやる気満々ホテルマンに変貌させてしまった宇海くん。今回は、バーマスターの梢さん(りょう)がやり玉に挙げられました。

 亡くなった元総支配人の桜井さんに心酔していた梢さんは、その娘である現支配人・佐那(戸田恵梨香)が嫌いです。当然、佐那に協力する気もないし、宇海くんによる改革にも乗り気ではありません。

 しかし今回、ブライダル事業の立ち上げを決めた宇海くんが、最初の結婚式のプランナーに梢さんを指名すると、「やります」と引き受けることに。たった一晩で、それなりのプランを作ってきます。

 そんな梢さんをあざ笑うかのように、宇海くんは次々に客の追加注文を告げてきます。

「高さ3メートル45センチの巨大ウェディングケーキを作ってほしい」
「ピアノの生演奏を入れてほしい」
「バージンロードを歩くとき、プロレス風の実況をしてほしい」

 どれもこれも無理難題です。性格的に、他人に“お願い事”をするのが苦手な梢さんなので、なおさらです。

「ごめんねー、ギブアップ。全部の要望に応えることはできない」

 ついに音を上げた梢さん、素直にプランナーの仕事を受けた理由を宇海くんに告白します。いわく、ブライダル事業は亡くなった元支配人の夢だったそうです。

「大人が夢を叶えるには、どうしたらいいんでしょうかね」
「私の思う秘訣はこうです。他人を信じて、頭を下げて、笑顔でいること」

 それは、ニコニコ宇海くんがいつもやっていること、そのままでした。

 

■ああ、なんて平和で健全な……

 宇海くんに諭されて、もう一度プランの実現に向けてほかの従業員にお願いに行く梢さん。すると、そこにはいくつもの小さな奇跡が待っていました。ケーキはパティシエ・ハルちゃん(浜辺美波)の専門学校時代の同期生たちが協力してくれることに。ピアノはフロントマンの大田原(野性爆弾・くっきー)が弾けることが明らかになり、進行役の丹沢さんはひとり、実況の特訓をしています。

 この結婚式は、もともと宇海くんの知り合いが「親族を呼ばず、2人だけの式を」と依頼してきたもので、両名とも多忙なため当日合わせのぶっつけ本番となる予定でした。式前日、新郎新婦に動画に撮って見せるために、リハーサルが行われることになりました。

 新婦役は、梢さん。新郎役には、先週出てきた“元支配人にそっくりなおじさん”こと小山内さんが呼ばれています。

 若いころには忙しく働きすぎて、自分の結婚式も挙げられなかったという小山内さん。梢さんに「これもいい思い出」と言ってくれます。そして「夢を叶えてくれて、ありがとうございます」と。元支配人の夢だったブライダル企画が形になった瞬間、梢さんは、元支配人にそっくりな小山内さんから、その言葉を贈られるのです。

 まあ、なんといい話なのか。もうね、ホントに健全。平和。

 結局、結婚式そのものは新郎新婦から連絡があって、中止になりました。それでも、とりあえずブライダル事業の広告用ビデオも撮れたし、梢さんと佐那支配人も仲良くなったし、非の打ちどころのないハッピーエンドです。おそらくは最初から新郎新婦なんてものはいなくて、すべて宇海くんのハッタリなのでしょう。

■物語の始まりと終わりで、顔が全然違う

 今回は、いわゆる「りょう回」でした。不機嫌なりょう、落ち込むりょう、素直に頭を下げるりょう、感涙するりょう、つきものの落ちたようなさっぱりした表情で戸田恵梨香と笑い合うりょう。りょうのころころと変わる表情を追いかけているうちに、あっという間に1時間が過ぎてしまう。そんな回です。物語の始まりと終わりで、りょうの顔がまったく変わっている。それは、一人の人の人生に訪れた、あるひとつの“変化の瞬間”を、物語が語り切っている証拠でもあります。

 泣くほどじゃなく、刺さるほどじゃなく、適度に笑えるいい話も、実に爽やかな余韻を残しました。今回は「他人を信じて笑顔で過ごしましょう」、前回なら「ちゃんと『いつもありがとう』と言葉で伝えましょう」と、ストーリーの根っこにあるテーマも明確に語ってくれるし、「ミスオマールエビ」とかハルちゃんの同期生が全員ハルちゃんっぽいキャラだったりする小ネタも、ドラマを邪魔しない程度に微笑ましくてよいです。

 かように、『崖っぷちホテル!』は日曜の夜を平和に過不足なく過ごすには最適なドラマになっていると思います。安心で、安全です。

 主人公でなく、脇役がハッピーになるハッピーエンドばかりが続きますが、実に丁寧かつポップでかわいい作品です。

 ドラマって本来、こういうのでいいんだよ……とまでは言わないし、物足りなさも正直すごくあるんですけど、どらまっ子的には、なるべくこういう作品の味方でありたいと思う所存です。はい。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

 

 

 

日テレ『崖っぷちホテル!』浜辺美波の”ドヤ顔感”がクセになる!?

  浜辺美波は、圧が強い。

 例えば現在、日曜夜10時30分から放送されている『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)。本作は、ホテル総支配人だった父親の後を継いだ桜井佐耶(戸田恵梨香)が、経営が悪化している高級ホテル「グランデ・インヴルサ」を、副支配人・宇海直哉(岩田剛典)と共に立て直していく物語だ。

 浜辺が演じるのは、新人パティシエの鳳来ハル。マイペースで空気が読めず、自分勝手。しかし、デザートの腕は一流で、その実力を買われて料理長に抜擢される。ハルは飄々としていてつかみどころがない。ほかの従業員たちが突然現れた宇海に対して警戒する中、いつも楽しそうに、ニコニコしながらデザートを作っている。

 従業員の一人なのでそんなに大きな役ではないのだが、ついつい目が行ってしまうのは、浜辺のしゃべり方や行動がいちいち芝居がかっていて引っかかるからだろう。これは、いい意味でも、悪い意味でもだ。

 浜辺は今、演じることが楽しくて仕方がないといった感じだ。その気持ちが強すぎて、「私は演技をしてます」という感じが前面に出すぎていて、それがいつも、ちょっとだけ鼻につく。

 ただ、この“ちょっとだけ”のさじ加減が絶妙なのだ。

 これ以上、押し付けがましいとイライラさせられるだろうが、いつもその一歩手前で止め、過剰な何かが悪い印象になる前に散っていくので、逆にこれはなんなんだ? と気になってしまう。

 これは、彼女の出世作となった映画『君の膵臓をたべたい』の構造そのものである。本作で彼女は、ヒロインの山内桜良を演じた。

 人と関わるのが苦手な主人公の「ぼく」に突然話しかけてきた同級生の桜良は、実は膵臓の病気を抱えた余命1年の命。友達には同情されたくないからと、病気のことを秘密にして、「ぼく」にだけは自分の気持ちを話す桜良に、「ぼく」は翻弄される。

「なんなんだ? このわけのわからない女は」と最初は思うのだが、だんだん彼女の抱えている不器用さや優しさがいとおしいものに、主人公の目線を通して感じるようになっていく。

 難病モノというイメージが強いが、基本的にはちょっと変わった女の子に強引に引っ張り回される楽しさを描いた作品だ。芝居がかった浜辺の振る舞いが桜良の心情とリンクしたことで、本作は青春映画の傑作に仕上がった。

  浜辺は現在17歳。

 2011年に、長澤まさみを輩出した東宝シンデレラオーディションに応募してニュージェネレーション賞を受賞。東宝芸能のシンデレラルーム所属となり、同年公開のショートムービー『アリと恋文』で女優デビューした。

 人気アニメを実写ドラマ化した『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』(フジテレビ系、以下『あの花』)では、主人公のひきこもりの青年の前に現れる、幼少期に命を落とした幽霊の少女(ただし、なぜか年齢は成長している)・めんまを演じた。

 このドラマは、画面のレイアウトがほとんどアニメと同じという完コピドラマだったのだが、中でも浜辺の演技はすごくて、絵と生身の人間の等身や骨格の違いはあるものの、そこにめんまがいると言っても過言ではない存在感を見せていた。

『あの花』のめんまのような漫画やアニメのキャラクターを演じると、浜辺はハマる。中でも圧巻だったのが、前クールに放送されていた深夜ドラマ『賭ケグルイ』(TBS系)だ。本作はギャンブルが公認されている私立高校を舞台としたドラマで、生徒たちはギャンブルの勝敗によって出来上がった階級制度に苦しめられていた。

 そこに、浜辺が演じる謎の転校生・蛇喰(じゃばみ)夢子がやってくる。彼女はギャンブルの天才で、相手のイカサマを見抜くと同時に、自分の快楽のために全財産を賭けるような危険な勝負を次々と仕掛けていく。

 トランプ等のカードゲームを見せるギャンブルモノの映像作品は、画面の動きが少ないため、淡白なものとなってしまう。『賭ケグルイ』は、その欠点を役者の芝居で補っていて、過剰なセリフ回しや心理描写がとにかく派手な作品となっていた。そんな中、夢子のライバル役を演じた森川葵は、水を得た魚のように過剰な内面をさらけ出す芝居をしていた。飛び道具的な過剰な芝居をやらせたら今の森川は若手女優ではダントツだが、そんな森川と拮抗するくらい、浜辺はヤバイ演技をしていた。

 極限状態で借金を何億円も背負いながら、ギャンブルに没頭していく夢子の表情は、性的興奮を覚えているようなエロティックなもので、10代の若手女優にこんないやらしい表情をさせていいのか? とドキドキした。

 一見、清純派美少女に見えるが、こちらの想像を超えた表情を次々と見せてくれる浜辺。「私すごいでしょ」というドヤ顔感が透けて見えて、イラつかされるところもあるのだが、それも含めて目が離せない。もはや、浜辺は、その「圧の強さ」を、演技のスタイルとして完全に自分のものにしたといえるだろう。今後どうなるのか、末恐ろしい存在である。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

視聴率ゆるやかに上昇中の岩田剛典『崖っぷちホテル!』に見る“2種類のアイドルドラマ”

 毎回、日曜の夜にほっこりとした“いい話”をお届けしてくれるドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も第4話。視聴率は7.0%(ビデオリサーチ調べ、ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、第2話でがっつり落として以降、ゆるやかに上げ続けているようです。

 というわけで、今回もいい話だった同作を振り返ります。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■相変わらずニコニコで押し切る岩ちゃんの不気味さ

 

 経営的に“崖っぷち”な老舗ホテル『グランデ・インヴルサ』を復活させるために奮闘する若き総支配人・桜井佐那(戸田恵梨香)と、なんだかんだでいきなり副支配人になっちゃった宇海くん(岩田剛典)。この宇海くんの加入でホテルは「いい方向に向かい始めた」(佐那ちゃん談)ようですが、今回は事務・経理をひとりで切り盛りしていた丹沢さん(鈴木浩介)が、いきなり「辞める」と言い出しました。

 もともと景気が悪いことはわかっていたはずの丹沢さん、なんでこのタイミングで? と思ったら、近くにビジネスホテルが建つ計画があって、そちらにヘッドハンティングされたのだとか。いわく、インヴルサは「もう、つぶれますから」とのことです。

 さらに、芋づる式に清掃員の尚美さん(西尾まり)と、フロントマン・大田原(野性爆弾・くっきー)まで、丹沢さんと一緒にビジネスホテルに移ると言います。

 困り果てた佐那支配人が宇海くんに相談すると、いつもの爽やかな笑顔で、「よし! 面接をしましょう!」と超ドライ対応。辞意表明の3人に対しては、盛大に送別パーティを開いて、気持よく送り出すつもりのようです。なんか不可解を通り越して、もはやこの明るさは不気味です。引き留めたい佐那さんはどうにも納得できませんが、まあ例によって宇海くんのニコニコに押し切られてしまいました。

 とはいえ倒産寸前のホテルですので、採用面接にも使えそうな人材は集まりません。最後に登場した、宇海くんの知り合いだというロマンスグレーな紳士・小山内さん(長谷川初範)だけが採用となりました。

 

■設定と印象づけが人物に説得力を生んでいる

 

 この小山内さんだけ取ってみても、このドラマのシナリオは「やることをちゃんとやってる」感があります。いかにも軽いコメディに見せて、人物の見せ方を丁寧に作っている。

 例えば「小山内」という姓から、見ている人のほとんどはピンときたはずです。前回、ホテルの企画でベッドメーク体験に来た女の子・裕子ちゃん(川栄李奈)も「小山内」さんでした。ドラマの中で無意味に同じ姓の人物を登場させるわけがありませんので、少なくとも、この小山内紳士は「普通に面接に来た人じゃない」というか「先週出てきた女の子のお父さんだな」とわかるわけです。

 ここで小山内さんにある程度の情報を与えて視聴者の興味を引いた上で「なんでお父さんが?」という疑問を残している。

 設定としてはここまでで理解できても、じゃあ小山内さんがどんな人なのかはわかりません。簡単にいえば、怪しい人かどうか、悪い人かどうかという印象の話です。

 ホテル中の誰彼が「辞める辞める」と言い出している状況で、宇海くんが勝手に連れてきた人物。ただでさえ疑心暗鬼になっている従業員たちが、小山内さんに「怪しい」という印象を持つ条件はそろっています。でも、ここで誰かが「小山内というジジイは怪しい」と言い出すと、話が散らかってしまう。小山内さんが仕事のできる人間であることから、さらに怪しさに拍車がかかっても不思議じゃない。

 そこで『崖っぷちホテル!』は、小山内さんについての印象操作を行います。説得力を持って、「小山内さんは怪しくない」「従業員の誰もが、小山内さんを無条件に受け入れる」という土壌が必要になるわけです。

 そこで、小山内さんについて、誰もが敬愛してやまない故・佐那ちゃんパパ(元総支配人)に「雰囲気が似ている」と従業員全員に口々に語らせました。この効果は抜群で、特に、ひねくれ者のバーマスター・梢さん(りょう)が小山内さんを認めることで、彼の言動に強い説得力が生まれています。

 この場合、小山内さん自身が何を言っても、何をしても、視聴者の信頼を得ることはできません。誰が何を言えば視聴者が小山内さんを受け入れるのか、それがちゃんと考えられている。細かいことですが、キャラクターに命を吹き込むのはこうした細部だと思うのです。

■宇海を動かさず、宇海を描く

 

 そうして画面の中で存在感と信頼感を確立した小山内さんの正体は、実はビジネスホテル側からのスパイでした。宇海くんは、従業員に隠して、スパイを呼んでいたのです。

 ただしこのスパイは、もとより「インヴルサをつぶしてやろう」とは考えていませんでした。さまざまな職歴を経て、「本当に人のためになる仕事をしたい」と考えていて、さらに「ウワサの敏腕ホテルマン・宇海と仕事をしてみたい」とも感じていた。

 宇海くんは、密かに賭けをしていたのです。小山内さんを呼んで、もしこのホテルを小山内さんが「つぶすべき」と判断していたら、ビジネスホテル建設は予定通り進み、インヴルサは消滅することになる。

 そんなスパイに宇海くんは、“スパイ向け”でない通常営業の姿だけでなく、経理状況から何から、内部資料を全部見せちゃっていました。なぜなら「このホテルのことを小山内に知ってもらえれば、気が変わってビジネスホテルの建設を中止するはずだ」と確信していたからです。

 ここには「小山内さんがフェアな判断をするはず」と「インヴルサの通常営業は小山内さんを魅了するはず」という、宇海くんの2つの信頼が働いています。

 その思惑の通り、小山内さんはフェアな男だったので「ここ(インヴルサ)は化けますよ」「大逆転した姿を見てみたい」と言って、ビジネスホテル建設を中止しました。おのずと、丹沢さんほか3名もインヴルサに残ることになって、ハッピーエンド。小山内さんが前回のベッドメーク女子の父親だった伏線も、ここで機能しました。

 周囲のリアクションによって小山内さんのキャラを確立させ、小山内さんを含む人物を宇海くんの思い通り動かすことで、宇海くんのホテルマンとしての能力を際だたせる。キャラクターというのは、「どう動くか」で生きるのではなく「周囲をどう動かすか」で浮き立たせるもののようです。

 

■アイドルドラマというパッケージには2種類ある

 

 今回、仕掛けとして丹沢さんたちの「辞意」と「復職」に必然性があるし、その中で語られた彼らの心の動きにも、丁寧にエピソードがあてがわれて説得力がある。ほっこり感動できる。このドラマには衝撃的な展開はありませんが、足りないものもないように感じます。

 前回、単なる賑やかしに見えた川栄を本編に引き込む段取りも鮮やかでした。恐らくは多忙を極める川栄を初回から登場させることができなかったというスケジュールの都合でしょうが、上手くやったと思います。

 そして、今回もっとも感じたのが、アイドルドラマというものの在り方でした。

 あくまで「ファン向け」というパッケージの中でも、アイドルドラマには2種類あると思ったんです。

 ひとつは、最近でいえば山田涼介『カインとアベル』(フジテレビ系)や、木村拓哉『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)のような、従来のファンに目いっぱいのサービスをして、喜んでもらうためのもの。

 もうひとつは、主人公を張るアイドルの魅力を引き出して、ファン層の拡大を図ろうとするもの。『崖っぷちホテル!』は、間違いなく後者だと思うし、すでに私はちょっと岩ちゃんのファンになりかけていることを白状しておきます。

 そんなわけで、では、また次回~。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

岩田剛典『崖っぷちホテル!』人の性根に根差した“いい話”連発も、低空飛行は続く……

 日曜夜のほっこり低視聴率ドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)も第3話。視聴率は6.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、やや戻しましたが低空飛行が続きます。とはいえ、今回もフツーに面白いです。

 というか、過去2回は「ユルいし雑だけど、優しい出来で、まあいいじゃない」という印象でしたが、今回はちょっとピリッとした緊張感もありましたし、主人公の宇海くん(岩田剛典)の可愛げの中に不気味さが見え始めたりしてて、回を重ねるごとに、ちょい深みが増してよい感じになってきてると思いました。

 そんなわけで振り返りです。

(前回までのレビューはこちらから)

■基本、みんな性根がいい。

 老舗ホテルの再建を目指す総支配人・桜井佐那(戸田恵梨香)と、いろいろあって副支配人になった宇海くん。前回までに、元副支配人の時貞(渡辺いっけい)と元総料理長・江口(中村倫也)を、それぞれ降格させたことから、ホテル内には不穏な空気が満ち始めています。

 ガマンならない時貞&江口の降格コンビに対し、宇海くんは「新規顧客獲得のための企画勝負」を提案。勝った方を、改めて役職に戻す約束をします。勝ち負けの基準は「お客様に喜んでいただけたかどうか」、そして、最終審判は支配人である佐那に委ねられました。

 このように、何もかもを勝手に進めつつ、最後には佐那に「あなたが総支配人じゃないですか!」と厳しい判断をほっぽり投げてくる宇海くんですが、その自信満々でマイペースなニッコリ笑顔にはなぜか説得力があるようで、従業員たちも、ついつい言うことを聞いてしまいます。

 今回も、

「そんなことやってられるか!」

「誰がおまえの指図に乗って企画なんて考えると思ってるんだ!」

 などと、駄々をこねるかと思いきや、意外にもすんなり新企画を考えてきた時貞&江口。

 元副支配人の時貞は、これぞ老舗ホテルのサービス! という究極のセレブ体験をしていただくという、なかなかの名案。1泊20万円だか30万円だかの最高級スイートにお泊まりいただき、超一流のおもてなしでお客様を迎えるというものでした。

 一方の元料理長・江口は、一流フレンチの調理体験という提案。ホテルと提携している地元の「高橋ファーム」なる畑(たぶん一流なのでしょう)での収穫から、お客様と一緒に行い、採れた野菜で「俺と一緒にフレンチを」と、これまた、至極まともな企画です。

 さらに、客室係の長吉(宮川大輔)が、「そういうことなら、やってみたい企画が!」と、プロのベッドメイクを体験してもらう企画を提案しました。特にきっかけとかなくて、やる気のない人として登場した長吉でしたが、なんだか、急にモチベーションがグングン上昇したみたい。

 このあたり、みんなゴネつつ実に性根がいいというか、都合よく宇海くんの話にノリすぎというか、要するにご都合主義満載なんですが、脚本家自身の「だって、いい人なんだからしょうがないじゃん」といった心持ちが伝わってくるので、これはこれで気持ちのいいご都合主義だなあなどと感じ入ります。なんだかあんまり、文句を言う気にならないんです。

■渡辺いっけいのサンドバッグぶり

 対決企画とはいえ同じホテルの中ですから、お互い邪魔をしないという約束事はあります。ところが、どうしても副支配人に返り咲きたい時貞は、江口のお客さんである小汚い親子によからぬ態度を取ります。

 この、いかにも良心的なドラマの“よごれ”を一手に背負うのが、時貞を演じる渡辺いっけい。同じ降格組でも、江口は「新人のハル(浜辺美波)にはまだ知識が不足している」「食材の見極めもできない」という、まっとうな理由で人事を戻すよう要求しますが、時貞のほうは、メインバンクから不正に金を引っ張っているのがバレたらヤバいという、身勝手を通り越して犯罪の隠ぺいのためという極悪人です。

 しかし、渡辺いっけいが演じると、極悪人に見えない。自分の客が蔑ろにされた江口と取っ組み合いのケンカになっても、なんか弱いし、「年の差考えろ」とか子どもじみたことしか言わない。対決はなんだかんだとてもいい話があって時貞が負けるわけですが、まあ見事に短絡的で惨めな負けっぷりを見せてくれます。引き立て役、脇役という仕事の重要性というものを感じさせるお芝居でした。今回、みんながみんな時貞の振る舞いにカウンターを当てることで株を上げてる。サンドバッグとして、打たれ強くて丈夫なキャラクターを成立させているのは渡辺いっけいの嫌みのない悪役ぶりのおかげです。

 今夜放送の第4話では、事務責任者の丹沢(鈴木浩介)が辞めると言い出すようです。こちらも、時貞と同様“反・宇海くん”側の人間ですので、どう丸め込まれるのか、楽しみに待ちたいと思います。このまま、フツーにいい話ばかりで終わってほしいと思うし、そういうドラマがあってもいいと思うんですが、まあ数字が、ねえ。どうなるんでしょう。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

岩田剛典『崖っぷちホテル!』視聴率ほぼ半減ショック! 「フツーに面白いドラマ」は、もういらない!?

「岩ちゃん」こと岩田剛典がブリブリな笑顔を振りまきつつ、老舗ホテルの再建を目指すドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)。第2話の視聴率は、なんと初回からほぼ半減となる6.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)まで下げました。近年、稀にみる垂直落下ぶりですが、そんなに悪かったかなぁ。悪くないと思うんだけどなぁ。というわけで、今回も振り返ってみます。

(前回までのレビューはこちらから)

 

 新米支配人の佐那(戸田恵梨香)にお願いされ、ホテル・グランデ・インヴルサを再建するために名門バリストンホテルから衝撃の転職を果たした宇海くん(岩田)。前回までに、このホテルの問題点はだいたい洗い出せていたようで、さっそく大ナタを振るいます。

 まずは、やる気がないくせにプライドだけは高い副支配人・時貞(渡辺いっけい)と料理長・江口(中村倫也)を降格処分に。時貞は「宿泊部の主任」という新たな肩書を気に入るわけもなく、ブーブー言ってます。新人パティシエ・ハルちゃん(浜辺美波)に料理長の座を奪われた江口もイジケまくっていますが、宇海くんは相変わらずニコニコで気にも留めません。

 自ら副支配人となった宇海くんは、従業員一同に「ホテルの宝物である顧客名簿を読め」と命令。10年ほど前に、たくさんの客が「ケーキ美味い」と感想を寄せていたことが明らかになると、「このケーキを再現してケーキフェアをやろう」という企画を打ち出しました。

 で、ケーキフェアは概ね大成功。両親を事故で亡くした女子高生を盛大なおもてなしで感動させました。宇海くんの鮮やかな仕事ぶりに、最初は苦々しく思っていたバーマスター・梢さん(りょう)や元料理長・江口も、少しずつ心を許してきたようです。

 

■今回は「チャド・マレーン回」でした

 

 今回、大きくフィーチャーされたのは、見た目が完全に外国人なのに英語がしゃべれないベルボーイのピエール田中(チャド・マレーン)。

 ホテル上層部の人事をバッサバサに斬りまくる宇海の姿を見て、仕事に自信のないピエールは「ぼくはクビになる」とガクブル状態。そんなこんなで大事なケーキを踏んづけてしまうなどミスを重ね、宇海くんに呼び出しを食らいます。

 クビになる覚悟を決めたピエールでしたが、宇海くんは「一緒に、いい方法を考えましょう」と、優しく語りかけます。そしてもう一度、顧客名簿を総ざらい。さらに、バーマスター梢さんの助言で、佐那の父が大事にしていた顧客からのお礼状もすべてひっくり返して読み返すことに。

 そんなこんなで、踏んづけたケーキをご所望だった女子高生が何者だったかを探し当て、無事にご満足をいただくことができました。

 やる気のない従業員に、さらなるミスを重ねさせてドン底にまで追い込み、宇海くんの器量の良さと本人の努力によって回復する。ピエールは宇海くんを信頼することになり、やる気を取り戻す。このドラマのフォーマットになるのは、こうして1人ひとりを回復させる流れなのでしょう。全員が宇海くんを中心にひとつになったとき、ホテルも復活を果たす、というクライマックスが見えてきます。

 

■浜辺美波のコメディエンヌぶりがまぶしいよ

 

 今回は、若き天才パティシエ・ハルちゃんを演じる浜辺美波が気を吐きました。イジけ腐った(元)上司の江口を「ツンデレなのね」と気にも介せず、自分のやるべきことを天真爛漫な笑顔でこなす姿は、実に健気で愛さずにはいられません。それにしても、17歳。永野芽郁もそうですが、新しい世代の女優さんがどんどん育ってる感じがして素敵です。

 また、ここまでスーパーポジティブなハルちゃんにも今後、波乱が訪れるとすれば、それは物語の大きな振り幅になると思います。中盤の盛り上がりを支えるのは、もしかしたらハルちゃんかもしれません。

■エピソードは弱い、弱いけど優しい

 

 見ていて気になるのは、各エピソードの弱さです。ピエールが「クビになる~」と恐れ慄く原因になったのも、「外国人客から逃げたのを宇海に見られた」「ケーキ踏んじゃった」だけなので、少し不自然に感じます。その宇海くんには「ネクタイ締められない」「20分締めたら3日も寝込んだ」という設定が与えられていますが、これもバリストンホテルとやらの副支配人にまでのし上がった人物としては、いかにも不自然。後半でバリッとスーツで決めるシーンがあって、それに対するギャップなのでしょうけど、ちょっと納得しかねる部分でもあります。

 また、ハルちゃんが食べたこともない「幻のケーキ」を完全に再現できちゃったのも安易だと思いますし、そのケーキを求めてやってきた女子高生の動機が、第1話と同じ「死んだ家族との思い出を求めて」というパターンだったことも、物足りないっちゃ物足りない部分です。

 ただ、こうした弱さもひっくるめて、優しい出来になっていると思うんですよねえ。第1話のレビューにも書きましたが、基本的には岩ちゃんファン向けのアイドルドラマなので、そもそもの岩ちゃんのパブリックイメージに、よく似合う作風だと思う。で、弱いといっても、退屈なわけではない。フツーに面白い、といえるくらいにはまとまってる。

 そういう、それなりによくできたドラマがここまで数字を下げるというのは、第2話を見終えた後でも、ちょっと不思議だなぁという印象が残ります。岩ちゃんの求心力が、まあこんなもんなのもあるけど、なんかフツーに面白いドラマって、もうあんまり視聴者に求められてないのかもしれませんね。ホント、悪くないし、マジメに作ってると思うんだけど。うーむむ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)