処女喪失をめぐる「抜け駆け禁止」――『蝶々の纏足』が描く、女子の複雑な人間関係

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『蝶々の纏足・風葬の教室』(新潮社)

■今回の官能小説
『蝶々の纏足』(山田詠美、新潮社)

 セックスに対して性欲が先行しがちの男と違って、女は好奇心が先行する場合が多い。その違いは、思春期の頃に顕著に出る。エロ本やAVで女の裸を見てストレートに欲情する少年たちとは異なり、少女たちはコミュニティ内で性への関心を育てるのだ。クラスのあの子が初体験をしたとか、夏休みにあの子に彼氏ができたというように、女同士の関係性の中で、性の情報を得て、同時にどちらが先に性体験をし、大人になるかを窺い合っている。そこには、友情の裏返しとして、「抜け駆けしてはいけない」という思春期の女同士の束縛がある。

 思春期の少女たちを瑞々しく描いた『蝶々の纏足』(新潮社)は、美しい少女・えり子に縛られ続ける地味な少女・瞳の物語だ。幼馴染みの瞳とえり子は、周囲からは仲の良い親友同士に思われているが、実は瞳は、どこへ逃げようとしても行く手を塞ぐえり子のことを疎ましく感じていた。

山田詠美のエッセイが売れない! 出版社たらい回しの“ポンちゃん問題”の実態

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『熱血ポンちゃんから騒ぎ』(新潮社)

 1985年、26歳の時に『ベッドタイムアイズ』(河出書房新社)で作家デビューし、その2年後には『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』(角川書店)で直木賞を受賞した山田詠美。奔放な発言や派手な容姿で話題になりながら、『放課後の音符』『ぼくは勉強ができない』(ともに新潮社)などの人気作を生み、今では芥川賞の選考委員にも名を連ねている。

 自らのニックネーム「ポン」をタイトルにとったエッセイ『熱血ポンちゃん』シリーズは、28歳当時から現在まで続いており、作家としてのポジションは安定しているように見える。しかし、文芸編集者の間では、ここ数年“ポンちゃん問題”と呼ばれるやっかいな案件が持ち上がっているという。