「第三者」の思いがあふれてくる――ドラマ『パーフェクトワールド』第3話

(これまでのレビューはこちらから)

 恋愛ドラマにおいて、第何話あたりで主人公の恋が成就するかというのは、その先の展開を予想する中で重要な問題だ。

 最初から「付き合っている」という設定であれば、今後、ライバルが出現し、別れたりよりを戻したりという展開だろうし、中盤までいっても気持ちのすれ違いが続くようであれば、その「焦れる気持ち」を楽しむものだなと心構えができる。

 体感的なものではあるが、接近や誤解などを繰り返して、最後の最後に思いが通じるというのが多いパターンであり、王道といえるだろう。2人の恋が成就するのを見届けて、ハッピーエンドを迎えるのは、見ている方も気持ちよく物語を締めくくることができるというものだ。

 ドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)では、第2話の終わりで、主人公の2人は気持ちを確かめ合い、“恋人”になってしまった。この展開は実に早い。この流れから、二つの意味合いを読み取ることができる。

 一つは、先に挙げた、“2人の気持ちのすれ違いによるエピソードを描く”といった波乱の展開である。それぞれに想いを寄せる人物の存在もあり、どんな関係性になっていくかは、興味深いところだ。

 もう一つは、“恋人となった2人が、文字通りの「障害」をどう乗り越えていくかを描いていくか”という点だ。恋人として、そして結婚した場合は夫婦として、その障害とどう向き合っていくのか、さらには、それぞれの家族の問題、職場の問題など、普通に生活していたら気づかないことを広く世の中に知らしめるという意味で、意義のあるドラマになっていくことだろう。

 

“恋人”となった2人だが……

 前回のラストでお互いの気持ちを確かめ合い、晴れて“恋人”となったつぐみ(山本美月)と樹(松坂桃李)。2人の交際は、職場でも知られるところとなり、周囲も温かく見守ってくれていた。

 休みの日、2人は江ノ島にデートへ出かける。つぐみは樹のために手作りのお弁当を用意し、樹はつぐみのためにプレゼントを用意する。お互いの相手を思いやる気持ちが見ていて微笑ましい。

 プレゼントのネックレスを受け取ったつぐみは言う。「大事にするね」。そして樹もつぐみに言うのだ、「大事にする」。もちろん、これはつぐみ自身のことを大事にするという意味だ。

 その頃、つぐみの妹・しおり(岡崎紗絵)は、レンタル彼女のアルバイトをしていた。そして、彼女を指名したのが、樹の同僚でもある晴人(松村北斗/ジャニーズJr.・SixTONES)だった。仕事とはいえ、デートを楽しんだ2人だったが、ふとしたことから、晴人が義足であることを知り、しおりはあからさまに嫌悪感を示す。

 もちろん、ドラマであるから、障害に理解のある人とそうでない人を極端に描いているという前提はあるだろう。ただ、障害や、病気の人を見た場合、心の中でいくばくかの異質感を感じる人は多いのではないだろうか。偏見をなくすというのは、一朝一夕にできるものではない。まずは、“障害に対し差別的な認識をする人がいる”ということを考慮した上で、考えをめぐらし、世の中での感じ方を変えていくしかないのだ。しおりの存在は、私達の心にある、“差別心”を表したものだと言える。

 ゴールデンウィークになり、つぐみと樹、そしてしおりは、実家のある松本に帰省することになる。つぐみのことを過保護なくらいに溺愛している父・元久(松重豊)には、まだ付き合っていることを話さない予定であったが、樹が家まで送ってきたところを見られてしまい、本当のことを話す。

 それを知った元久は、交際に反対する。母親の咲子(堀内敬子)からも、「子供は作れるのか」と問われ、つぐみは言い返せない。理解のない父親に業を煮やしたつぐみは、「実家には帰らない。このまま東京で暮らす」と話し、東京へと戻るのだった。

 樹の家に戻った2人だったが、そこではヘルパーの長沢(中村ゆり)が待っていた。

「彼が苦しみもがいてきた姿を私は見てきた」という長沢と、「長沢さんは俺にとって特別な人」という樹の関係に、つぐみは複雑な思いを抱く。

 事故に遭って入院していた時、看護師だった長沢は樹のそばにいて、励まし続けた。そして長沢もまた、樹に“特別な”感情を持っていたのだ。

 一方、つぐみの方にも昔から想いを寄せている人がいた。幼馴染みで高校時代の同級生・是枝(瀬戸康史)だ。毎日のようにつぐみとしおりの住む家に行き、つぐみの頼みごとはなんでも聞いてきた是枝だが、樹への想いを語るつぐみを見て、思わず抱きしめてしまう。

 長沢と是枝、2人は、樹とつぐみの恋愛にとっては、あくまでも「第三者」である。ただ、私は性格上、どうしてもこの2人の心情に共感してしまう。自分が想いを寄せている人が、別の誰かを愛してしまう。その切なくもやるせない気持ちは、想いの通じ合った恋人同士ではわからないような、つらいものではないだろうか。そして、この2人には、もう一つ、「相手の障害をどう捉えるか」という問題もつきまとう。

「障害を持っているから恋愛できない」とは思いたくないだろう。ただ、結婚は? 子供は? と考えたときに、好きな相手にとって、どうするのが最善なのか、考えあぐねることは間違いない。

 そして、今回衝撃的だったのは、樹とつぐみが「性的な結びつきが持てるのか」という点だ。つぐみの母親も心配したとおり、樹はそのようなことができるのかどうか、視聴者には提示されていなかった。これまでも、ドキュメンタリーなどで障害者の性を取り上げたことはあるだろうが、ドラマで語られるのは珍しいだろう。

 結論から言えば、樹に関しては「性的な関係は持てない」だった。もちろん、障害の状況はさまざまだから、車椅子の人が全てそうであるわけではない。ただ、このドラマで「性的な関係を持たない恋人同士」が描かれた意味は大きい。

 ドラマの中でどこまで語られるのかはわからないが、性的な関係を持てなくても、例えば、人工授精を試みるとか、養子を迎えるとか、そういった話も出てくるかもしれない。

 そして、ドラマを見て最終的に考えたのは、何か一つを取り上げて、それが全てであるように思い込むのは危険だということだ。樹は、脚が動かないと知った時、自ら命を絶とうとした。つぐみの母は、子供が作れないならば結婚すべきではないと心配した。しおりは、障害を持った人を見て「無理」と言い切った。

 これらの全ては、思い込みに縛られた、狭い考え方なのだ。

 脚を動かさずに生きたっていい。子供を作らずに結婚したっていい。障害を抱えたまま誰かと付き合ったっていい。まずは「思い込み」を外して、世の中を見てみるといい。きっと世界はもう少し生きやすくなっているはずだ。

 恋愛の問題に限らない。生きていく上で何か問題にぶつかった時、思い込みを外して、見てみる。このドラマが、そんな思いに気づかせてくれるきっかけになってくれればいいと思っている。

(文=プレヤード)

「第三者」の思いがあふれてくる――ドラマ『パーフェクトワールド』第3話

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 恋愛ドラマにおいて、第何話あたりで主人公の恋が成就するかというのは、その先の展開を予想する中で重要な問題だ。

 最初から「付き合っている」という設定であれば、今後、ライバルが出現し、別れたりよりを戻したりという展開だろうし、中盤までいっても気持ちのすれ違いが続くようであれば、その「焦れる気持ち」を楽しむものだなと心構えができる。

 体感的なものではあるが、接近や誤解などを繰り返して、最後の最後に思いが通じるというのが多いパターンであり、王道といえるだろう。2人の恋が成就するのを見届けて、ハッピーエンドを迎えるのは、見ている方も気持ちよく物語を締めくくることができるというものだ。

 ドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)では、第2話の終わりで、主人公の2人は気持ちを確かめ合い、“恋人”になってしまった。この展開は実に早い。この流れから、二つの意味合いを読み取ることができる。

 一つは、先に挙げた、“2人の気持ちのすれ違いによるエピソードを描く”といった波乱の展開である。それぞれに想いを寄せる人物の存在もあり、どんな関係性になっていくかは、興味深いところだ。

 もう一つは、“恋人となった2人が、文字通りの「障害」をどう乗り越えていくかを描いていくか”という点だ。恋人として、そして結婚した場合は夫婦として、その障害とどう向き合っていくのか、さらには、それぞれの家族の問題、職場の問題など、普通に生活していたら気づかないことを広く世の中に知らしめるという意味で、意義のあるドラマになっていくことだろう。

 

“恋人”となった2人だが……

 前回のラストでお互いの気持ちを確かめ合い、晴れて“恋人”となったつぐみ(山本美月)と樹(松坂桃李)。2人の交際は、職場でも知られるところとなり、周囲も温かく見守ってくれていた。

 休みの日、2人は江ノ島にデートへ出かける。つぐみは樹のために手作りのお弁当を用意し、樹はつぐみのためにプレゼントを用意する。お互いの相手を思いやる気持ちが見ていて微笑ましい。

 プレゼントのネックレスを受け取ったつぐみは言う。「大事にするね」。そして樹もつぐみに言うのだ、「大事にする」。もちろん、これはつぐみ自身のことを大事にするという意味だ。

 その頃、つぐみの妹・しおり(岡崎紗絵)は、レンタル彼女のアルバイトをしていた。そして、彼女を指名したのが、樹の同僚でもある晴人(松村北斗/ジャニーズJr.・SixTONES)だった。仕事とはいえ、デートを楽しんだ2人だったが、ふとしたことから、晴人が義足であることを知り、しおりはあからさまに嫌悪感を示す。

 もちろん、ドラマであるから、障害に理解のある人とそうでない人を極端に描いているという前提はあるだろう。ただ、障害や、病気の人を見た場合、心の中でいくばくかの異質感を感じる人は多いのではないだろうか。偏見をなくすというのは、一朝一夕にできるものではない。まずは、“障害に対し差別的な認識をする人がいる”ということを考慮した上で、考えをめぐらし、世の中での感じ方を変えていくしかないのだ。しおりの存在は、私達の心にある、“差別心”を表したものだと言える。

 ゴールデンウィークになり、つぐみと樹、そしてしおりは、実家のある松本に帰省することになる。つぐみのことを過保護なくらいに溺愛している父・元久(松重豊)には、まだ付き合っていることを話さない予定であったが、樹が家まで送ってきたところを見られてしまい、本当のことを話す。

 それを知った元久は、交際に反対する。母親の咲子(堀内敬子)からも、「子供は作れるのか」と問われ、つぐみは言い返せない。理解のない父親に業を煮やしたつぐみは、「実家には帰らない。このまま東京で暮らす」と話し、東京へと戻るのだった。

 樹の家に戻った2人だったが、そこではヘルパーの長沢(中村ゆり)が待っていた。

「彼が苦しみもがいてきた姿を私は見てきた」という長沢と、「長沢さんは俺にとって特別な人」という樹の関係に、つぐみは複雑な思いを抱く。

 事故に遭って入院していた時、看護師だった長沢は樹のそばにいて、励まし続けた。そして長沢もまた、樹に“特別な”感情を持っていたのだ。

 一方、つぐみの方にも昔から想いを寄せている人がいた。幼馴染みで高校時代の同級生・是枝(瀬戸康史)だ。毎日のようにつぐみとしおりの住む家に行き、つぐみの頼みごとはなんでも聞いてきた是枝だが、樹への想いを語るつぐみを見て、思わず抱きしめてしまう。

 長沢と是枝、2人は、樹とつぐみの恋愛にとっては、あくまでも「第三者」である。ただ、私は性格上、どうしてもこの2人の心情に共感してしまう。自分が想いを寄せている人が、別の誰かを愛してしまう。その切なくもやるせない気持ちは、想いの通じ合った恋人同士ではわからないような、つらいものではないだろうか。そして、この2人には、もう一つ、「相手の障害をどう捉えるか」という問題もつきまとう。

「障害を持っているから恋愛できない」とは思いたくないだろう。ただ、結婚は? 子供は? と考えたときに、好きな相手にとって、どうするのが最善なのか、考えあぐねることは間違いない。

 そして、今回衝撃的だったのは、樹とつぐみが「性的な結びつきが持てるのか」という点だ。つぐみの母親も心配したとおり、樹はそのようなことができるのかどうか、視聴者には提示されていなかった。これまでも、ドキュメンタリーなどで障害者の性を取り上げたことはあるだろうが、ドラマで語られるのは珍しいだろう。

 結論から言えば、樹に関しては「性的な関係は持てない」だった。もちろん、障害の状況はさまざまだから、車椅子の人が全てそうであるわけではない。ただ、このドラマで「性的な関係を持たない恋人同士」が描かれた意味は大きい。

 ドラマの中でどこまで語られるのかはわからないが、性的な関係を持てなくても、例えば、人工授精を試みるとか、養子を迎えるとか、そういった話も出てくるかもしれない。

 そして、ドラマを見て最終的に考えたのは、何か一つを取り上げて、それが全てであるように思い込むのは危険だということだ。樹は、脚が動かないと知った時、自ら命を絶とうとした。つぐみの母は、子供が作れないならば結婚すべきではないと心配した。しおりは、障害を持った人を見て「無理」と言い切った。

 これらの全ては、思い込みに縛られた、狭い考え方なのだ。

 脚を動かさずに生きたっていい。子供を作らずに結婚したっていい。障害を抱えたまま誰かと付き合ったっていい。まずは「思い込み」を外して、世の中を見てみるといい。きっと世界はもう少し生きやすくなっているはずだ。

 恋愛の問題に限らない。生きていく上で何か問題にぶつかった時、思い込みを外して、見てみる。このドラマが、そんな思いに気づかせてくれるきっかけになってくれればいいと思っている。

(文=プレヤード)

「無力」であることを知って人はまた少し強くなる――ドラマ『パーフェクトワールド』第2話

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 山本美月は不思議な女優だ。

 元々モデル出身だけあって、実に美しい整った顔立ちをしている。ともすれば、冷たくも感じられるその崇高さは、演じている時の表情の豊かさで、ぐっと親近感に変わっていく。この“振り幅”こそが、彼女の一番の魅力だと思っている。

 私が彼女の存在を強く認識したのは、2016年、本田翼とともに主演した映画『少女』だった。

 当時彼女は25歳、演じていたのは17歳の女子高生役。それでも、全く違和感なく女子高生になりきっていた。そして、作品のテーマである「生と死」を、その演技と表情で見事に描き出していた。彼女は、女優として、作品に込められたメッセージを余すところなく表現できる存在なのだ。

 車いすの障害者を描いたドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)第2話。今回も、そんな山本の存在感が際立っていた。

 樹(松坂桃李)を見舞った病室で、つぐみ(山本美月)は、樹のヘルパーをしている長沢(中村ゆり)の存在を知る。長沢と樹の親密な様子に、居づらくなったつぐみは、病室を後にする。

 病院のロビーで、樹の会社の後輩・渡辺晴人(松村北斗/ジャニーズJr.・SixTONES)と会い、彼もまた左足が義足であることを知る。前回同様、“障害”を目の当たりにした時の、戸惑いの様子を山本はうまく演じている。

 一方、長沢とともに自宅に帰った樹は、家の前に捨てられていた子犬を拾う。長沢の許可を得て飼うことにした子犬に、樹とつぐみは「チャコ」という名前をつける。

 そんなある日、つぐみは、樹をある場所へ連れて行く。「美術展」と偽って連れて行ったのは、車椅子バスケの練習場だった。高校時代、バスケ部のキャプテンであった樹は、事故の後、頑なにバスケから距離を置いていたのだ。そこで車椅子バスケをやっていた晴人に説得され、気後れしながらもボールを持った樹。コートの中で、彼は昔の感覚を思い出す。

 好きだったものが、何かの理由でできなくなった時、それを見るのも嫌にやる感覚は私にもわかる。レベルは違うかもしれないが、受験で志望校に落ちた後、合格してそこに通いだした友人が妬ましくてたまらなかった。「もしかしたら自分がそうなっていたかもしれない」そんな悔しさが、湧き上がってくるのだ。

 実際にコートに出た樹は、そのこだわりを乗り越え、楽しさを見出す。

 バスケを楽しんで、家に帰った樹を待っていたのは母・文乃(麻生祐未)だった。つぐみと会った文乃は、「感じのいい子」と喜びを隠せない。しかし、そんな文乃に樹は、「恋愛は一生しない。そのことは諦めてほしい」と告げるのだった。

 昨年、『黄昏流星群』(フジテレビ系)で、息子を溺愛する母親を演じたのが印象強い麻生だが、今回は明るく、理解のある母親役だ。樹とつぐみの関係にも味方になってくれることだろう。

 一方、つぐみの自宅には、父親の元久(松重豊)が突然訪ねてきていた。対応した妹のしおり(岡崎紗絵)と幼馴染みの是枝(瀬戸康史)だったが、つぐみを心配する元久に気圧されっぱなしであった。

 そんなある日、車椅子バスケの後、食事をしていたメンバーに、「邪魔だ」と言いがかりをつけてきた人たちがいた。怒った晴人と小競り合いとなり、止めに入ったつぐみを、樹は守ることができなかった。

 無力感に苛まれる樹。「自分には何もできない」――そんな無力感は、誰しも感じたことがあるだろう。

 つぐみにしても、樹が受け入れてくれなければ、自分が力になることができないことに、無力感を感じていると思う。この「無力感との戦い」こそが、この物語の一つのテーマであるように思う。

 実際、今の世の中には「無力感」が溢れている。

 逆境に置かれた女性アイドルが運営と戦っていても、ファンは直接何かをすることはできない。選挙の投票率が過去最低と言われても、自分の一票で何かを動かせる気持ちになれない。「政治」とか「組織」とか「運命」に対して、確かに人は無力だ。それは、「障害」に対しても同じだろう。「一人でも声を上げれば何かが変わる」などと綺麗事を言うつもりはない。でも、「自分が無力である」と感じることは決して無駄ではないはずだ。

 無力だからどうするのか、力をつけるために努力することもできるだろう。その分人に優しくしようという気持ちにだってなれる。いずれにせよ、無力さを認識することで、人は少し強くなれるような気がする。

 何もできなかったことにもどかしさを感じ、つぐみの気持ちには応えられないと告げる樹。ショックを受けたつぐみに、樹の母・文乃から「会えないか」との連絡がくる。

 文乃から、事故に遭ってからの樹の苦労、そして母としての思いを聞いたつぐみは自分の思いを伝える決心をする。

 気持ちを伝えるために、樹のマンションを訪ねたつぐみ。そこで、チャコがいなくなったことを知らされ、一緒に探す。そこで自分の気持ちを告白するのだった。

 結局、チャコは逃げておらず、樹の部屋にいた。ほっとした二人は、気持ちを確かめあうかのように、そっとキスをする。

 ラストシーン、二人の傍らで丸くなって眠る子犬が可愛らしい。チャコの存在は、「弱い者」「誰かの助けを必要とするもの」を暗喩しているように思う。他人の世話にならなければ生活できない樹も、捨てられた子犬の世話をして、力になることができているのである。世話や迷惑はどちらか一方がかけるものではない。お互いが相互に影響し合って生きるのが、あるべき姿なのだ。

 世話をされているだけのように見えるチャコだって、樹とつぐみに多くの癒やしを与えていることだろう。

 さて、来週は「平成の大晦日」の特別番組のため放送はお休み。次回は2週間後となる。次の時代が過ぎていって、障害者の暮らしやすい社会になった頃、時代が変わる節目に、こんなドラマがあったことを、思い出すことがあればいいと思う。

(文=プレヤード)

 

松坂桃李&山本美月『パーフェクトワールド』壮絶爆死発進! 今期の民放連ドラで早くも“ビリ”確定?

 松坂桃李が主演、山本美月がヒロインを務めるフジテレビ系連続ドラマ『パーフェクトワールド』(火曜午後9時~)初回が16日に放送され、視聴率は6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と壮絶爆死を遂げた。

 V6・井ノ原快彦主演『特捜9 season2』、天海祐希主演『緊急取調室 3rd SEASON』(ともにテレビ朝日系)が共に15.2%で好発進し、窪田正孝主演『ラジエーションハウス』(フジテレビ系)、山下智久主演『インハンド』(TBS系)、中条あやみ&水川あさみ主演『白衣の戦士!』(日本テレビ系)も2ケタでスタートする中、『パーフェクトワールド』は6%台の大爆死。同じく、低調での発進となった『ストロベリーナイト・サーガ』(KAT-TUN・亀梨和也、二階堂ふみ主演/フジ系)の7.8%を下回り、今期のプライム帯の民放連ドラ(テレビ東京系は除く)で初回視聴率はビリとなる可能性が高くなった。

『パーフェクトワールド』は大学時代に事故で脊髄を損傷して下半身不随となり、車イス生活となりながらも、一級建築士になった主人公・鮎川樹(松坂)が、高校時代に樹に思いを寄せていた同級生・川奈つぐみ(山本)と再会し、障害を乗り越えて恋愛に発展していくラブストーリーだ。

 初回では、樹に排泄障害があることに触れ、松坂と山本がゴールデン帯で、よりによって「ウ○コ」発言を連発する場面もあり、視聴者をドッキリさせたりもしたが、そんな二人の必死の演技も実らず、視聴率は爆死してしまった。

 そもそも、同ドラマの原作は有賀リエ氏の同名漫画で、昨年10月には岩田剛典(三代目J SOUL BROTHERS、EXILE)と杉咲花のダブル主演により、『パーフェクトワールド 君といる奇跡』のタイトルで映画化されたが、まるで振るわなかった経緯がある。

 また、松坂はこれまで主演したプライム帯の連ドラが、いずれも1ケタ台。山本がヒロインに起用されたプライム帯の連ドラはすべて低視聴率とあって、正直下馬評は高くなかったが、初回は、予想通りの結果になってしまった。

 ネット上では「映画版は原作とだいぶ違っていたけど、ドラマ版は原作に沿っている。主人公は岩田より、松坂の方が断然いい」「松坂は車イスの操作など、難しい演技をよくこなしていると思う」「松坂は演技がうまいと思ったけど、ヒロインは山本じゃなくて、もう少し演技力のある女優にしてほしかった」といった声が出ており、おおむね松坂の演技は好評だ。

 しかし、いくら演技力があっても、数字に結びつかなければ民放ドラマとしては意味がない。初回6%台から巻き返すのは、かなり困難な道のりになるだろうが、今期の民放連ドラの“ビリ”候補から抜け出すことができるだろうか?
(文=田中七男)

ドラマ大爆死! 松坂桃李&山本美月に「新井浩文の呪い」

 4月16日にスタートした松坂桃李主演のドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)第1話が平均視聴率6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と大爆死したことがわかった。

 同ドラマは、累計部数170万部を突破した有賀リエ氏による同名人気マンガが原作。不慮の事故により突然車いす生活を送ることになり、生涯一人で生きていくと決めていた建築士・鮎川樹(松坂)が、高校の同級生・川奈つぐみ(山本美月)と再会し、心を通わせていくラブストーリーだが、初回の数字は過去の同枠と比べてもかなり悪いという。

「前期の木村佳乃主演『後妻業』は初回8.7%、全話平均6.2%。10月期の高橋一生主演『僕らは奇跡でできている』は初回7.6%、全話平均6.5%。壮絶な爆死ぶりが話題となった吉岡里帆主演『健康で文化的な最低限度の生活』ですら初回7.6%、全話平均5.8%でしたから、今作は打ち切りが検討されるところまで落ちる可能性が高そう。また、『パーフェクトワールド』は昨年10月に映画化も岩田剛典&杉咲花のW主演で映画化されており、初週末の観客動員数は実写邦画1位を記録しています。となると、やはり松坂と山本の“あの件”に視聴者が拒否反応を示しているとしか……」(芸能記者)

 ネット掲示板を見てみると、低視聴率を受けてさっそく松坂に対して、「出張エステ嬢に対するセクハラ常習野郎」、山本には「レイプ犯とコカイン中毒者の大親友」といった辛辣なコメントが飛び交っている。

「松坂は昨年10月発売の『週刊新潮』(新潮社)によって高級エステで『下半身を露出する』といった禁止行為に及んだことが報じられ、複数の女性セラピストから被害報告があったといいます。そこにきて、俳優の新井浩文が出張マッサージ店の女性従業員に対して強制性交罪で逮捕・起訴されるという事件が発生したことで、“同類”と見られてしまった。一方の山本も、新井被告とコカイン使用の容疑で逮捕されたピエール瀧容疑者に挟まれた3ショット画像が拡散し、イメージダウン。ネット上では、今でも新井被告のSNSのフォローを外していないことに苦言を呈す人もいるようです」(週刊誌記者)

 そんなダークなイメージがつきまとう2人のラブストーリー。「新井浩文の呪い」は今後も重くのしかかりそうだ。

障害者ドラマに託されたメッセージが聞こえる――ドラマ『パーフェクトワールド』第1話

 テレビなどのメディアで身体障害者を取り上げる場合、かなりデリケートな問題が起こりがちだ。

 2016年に放送された、『24時間テレビ 愛は地球を救う』(日本テレビ系)で、障害者のチャレンジ企画が実施された際、裏番組の『バリバラ~障害者情報バラエティー~』(NHK Eテレ)が、「障害者の取り上げ方が“感動ポルノ”になっているのではないか」という内容の放送をし、物議を醸したこともある。

 一方で、障害を持った人を描いたドラマは、これまでも数多くあり、ヒット作も多い。

 豊川悦司が聴覚障害のある画家を演じ話題となった、1995年の『愛していると言ってくれ』(TBS系)、同じく聴覚障害者をテーマにし、シリーズ化もされた酒井法子主演の『星の金貨』(日本テレビ系)、和久井映見が知的障害のある女性を演じた『ピュア』(フジテレビ系)など、いずれも、障害を持って生きることの難しさや葛藤などを描き、多くの視聴者の共感を得た。

 4月16日に第1話が放送された、『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)も、その系譜の上にあるといっていいだろう。

 インテリア会社に勤める川奈つぐみ(山本美月)は、ある日、仕事の飲み会の席で、高校の同級生で初恋の相手でもある鮎川樹(松坂桃李)と再会する。

 高校卒業以来、11年ぶりの再会を喜び、昔の思い出話を口にするつぐみだったが、そこで樹が大学時代に事故に遭い、現在は車椅子での生活を送っていることを知らされる。

 つぐみの心には複雑な思いがうず巻く。懐かしさ、恋愛感情、そして「かわいそう」という気持ち。

 障害を持った人を見た時、安易な同情をするのは、相手に失礼なのではないかという思いが浮かんでくる。実際、「同情なんてしてほしくない」という人も多いだろう。ただ、湧き上がってくる感情をコントロールするのは簡単ではない。つぐみはそんな中で、どんな思いで樹と相対したらよいのか、迷っていたのだと思う。

 翌日、つぐみは樹に会いに行き、二人で街を見下ろせる高台に行く。そこで、学生時代の思い出話に花を咲かせ、一緒に美術展を観に行く約束をする。

 二人で出かけた美術展だったが、会場にはエレベーターが無く、展示室となっている2階に上がることができなかった。納得のいかないつぐみは、担当者に苦情を言う。しかし、樹は慣れた様子であきらめるのだった。

 足が不自由な人でも、一人で暮らしていけること、手だけを使って車を運転できること、排泄障害があること、死にたくなるほどの苦悩など、見ている人に、障害を持った人がどんなことで困り、生活をしているかを知ってもらう意味でも有意義な作品だと思う。どんなにバリアフリーの社会になっても、当事者でなければ気づかないことは、案外多いものだ。

 そんな時、東京で高校時代の同窓会が開かれる。一緒に行くことになったつぐみに、樹はあるお願いをする。それは、「恋人のふりをしてほしい」ということ。実は、樹には、高校時代から付き合っていた雪村美姫(水沢エレナ)という恋人がいた。しかし、樹が事故に遭った後、別れていたのだ。

 美姫を安心して結婚させるため、自分が幸せだということを見せたくて、つぐみに恋人のふりを頼んだ樹。その気持ちは、美姫に伝わったのだろうか?

 偶然トイレで遭遇したつぐみに、美姫は言う。「樹はパーフェクトだった。全てにおいて完璧な人だった」。

 ここで、タイトルにもなっている「パーフェクト」という言葉が出てくる。

 パーフェクトな人間、パーフェクトな世界。一体それはどんなものなのだろう。全てが思い通りになり、欠けたものや、悲しいことが何もない状態。そんなことを思いがちだ。でも、それはなんだか違う気がする。何かが欠けていても、悲しくても、それを受け入れ、優しさをもって生きていける世界。もしかしたら、それで十分「パーフェクト」と呼べるのではないだろうか。

 つぐみとともに美姫の結婚式を見に行った樹は、そこで過去を振り切り、前へと進む力を得るのだった。

 仕事にも熱心に取り組み、任されたコンペに向け、追い込みをかける中、樹は褥瘡により高熱を出して病院に運ばれてしまう。入院先のベッドでも仕事をしようとする樹を見かね、つぐみは作画を手伝うことになる。そのおかげもあって、コンペに通過し、二人は喜び合う。

 そこに、樹のヘルパーである長沢葵(中村ゆり)が入ってくる――。

 この作品は、昨年、杉咲花と岩田剛典の主演で映画化もされている。こちらは、設定された年齢が若いこともあり、ドラマよりも恋愛要素が強いものとなっていた。ただ、映画の内容の半分以上が、今回の第1話で描かれているため、ドラマの方は、より丁寧にこれからの展開を追っていくことができるだろう。

 公式ホームページには、「いつかこのドラマが、ただのありふれたラブストーリーになりますように」とある。車椅子を使っている、という障害が、生きていく上でのマイナスになるのではなく、社会に受け入れられるように、というメッセージだ。

 確かに、障害のことを除けば、ありふれた恋愛ドラマだ。松坂桃李と山本美月、美男美女のカップルが、困難を乗り越えて心を通じあわせていく。普通だったら、“遠距離”とか“すれ違い”とか“ライバルの妨害”などの形で描かれる困難が、“障害”というものに変わっているだけだ。

 この作品に限らず、障害者を描いたドラマが支持されるのは、決して「かわいそう」といって同情しているだけではないだろう。足が動かない、目が見えない、耳が聞こえない。でも、人が抱えてる“痛み”というのはそれだけではない。

 人とうまく接することができない、自分の能力や容姿にコンプレックスがある、貧困によって生活が苦しい。そんな多くの人が抱えている問題全てが、幸せに生きようとするための“障害”なのだ。障害に向き合い、乗り越えなければならないのは、体が不自由な人ばかりではない。そんな、作り手のメッセージが伝わってくるような話だった。

 今回ラストに登場した、ヘルパーの長沢に加え、つぐみに思いを寄せる元同級生・是枝(瀬戸康史)、同居する妹のしおり(岡崎紗絵)、そして故郷に住む父親(松重豊)などの感情が、次回以降、複雑に交錯していきそうだ。

 もちろん、恋愛ドラマとして普通に楽しめるものだと思うが、一歩踏み込んで、障害というものを知るための作品として見てみてはどうだろうか。きっとそこには、新しい発見があり、人に寄り添う気持ちを持つことができるようになる気がする。

(文=プレヤード)

松坂桃李、主演ドラマ『パーフェクトワールド』でヒット狙うも、ヒロインは“疫病神”山本美月で大丈夫?

 松坂桃李が来る4月期、フジテレビ系の「火9」枠で放送される連続ドラマ『パーフェクトワールド』で主演することが分かったが、早くも“爆死”が不安視されている。

 ゴールデン・プライム帯に限定すると、松坂は2015年10月期の『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(フジテレビ系)で初主演するも、全話平均視聴率は9.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)に終わった。続いて、17年1月期の『視覚探偵 日暮旅人』(日本テレビ系)で、2度目の主演を務めたが、平均視聴率は9.3%で、これまた2ケタ到達はならず。それだけに、3度目の主演となる『パーフェクトワールド』では、なんとか2ケタという“結果”がほしいところ。

『パーフェクトワールド』の原作は、有賀リエ氏の同名少女漫画で、昨年10月には、EXILE・三代目J SOUL BROTHERSの岩田剛典、杉咲花のダブル主演で映画化されたが、ヒットには至らなかった。

 今回のドラマ版の脚本は、『WATER BOYS』シリーズ、『ラスト・シンデレラ』、『ディア・シスター』、『隣の家族は青く見える』(いずれもフジテレビ系)、『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)などを手掛けた中谷まゆみ氏が担当する。

 物語は、事故がきっかけで車イス生活となった主人公・鮎川樹(松坂)が、高校時代の同級生・川奈つぐみ(山本美月)と再会し、お互いに心通わせていくラブストーリーだ。

 ここで、非常に気になるのが、ヒロインである山本の存在だ。これまで、山本はゴールデン・プライム帯の連ドラでは、Hey!Say!JUMP・中島裕翔主演『HOPE~期待ゼロの新入写真~』、浅野忠信主演『刑事ゆがみ』、ディーン・フジオカ主演『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』(いずれもフジテレビ系)と3度ヒロインを務めた。しかし、その平均視聴率は、『HOPE』が6.1%、『刑事ゆがみ』が6.5%、『モンテ・クリスト伯』が6.2%と、すべて6%台で壮絶爆死を遂げており、“数字を持っていない女優”とのイメージがすっかり定着してしまったのだ。

「山本は確かに美人ですし、好感度も悪くはありません。ただ決して演技がうまいとはいえませんし、ドラマに出演しても、存在感が薄くて、インパクトが残せていません。視聴率的には、“疫病神”ともいえる山本がヒロインで、『パーフェクトワールド』が、高い数字を取れるのか疑問符がつきますね」(テレビ誌関係者)

 フジの火曜ドラマといえば、17年7月期以降、6クール連続で1ケタ台。今期の木村佳乃主演『後妻業』も第2話で6%台を記録するなど苦戦している枠だ。正直、この悪条件下で『パーフェクトワールド』が2ケタをマークすることができれば、松坂も山本も評価がグッと上がるのだが、果たしてどうなることやら……。
(文=田中七男)

新しいドラマの扉開けた翻訳ドラマ『モンテ・クリスト伯』次回はシェークスピアかドストエフスキーで?

 いよいよ最終回を迎えた『モンテ・クリスト伯 ─華麗なる復讐─』(フジテレビ系)。2時間スペシャルで描かれたその結末は、原作を踏まえながらもオリジナルな展開も多かった。

 視聴率は6.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、激増した先週の7.4%より落ちてしまったものの、あまりないタイプのドラマだっただけに最後まで強い印象を残した。

(前回までのレビューはこちらから)

■汚れなき信一朗

 前回、薬を飲ませた直後に未蘭(岸井ゆきの)が倒れたため、その薬を渡した真海を責め立てにやって来た信一朗(高杉真宙)。キレる信一朗に真海(ディーン・フジオカ)は言う。

「あなたの気持ちは良くわかります。私にも殺したいほど憎い男たちがいます。彼らに苦痛を与えることを夢見て生きながらえてきた」

「どうかあなただけは、このむごい世界に足を踏み入れないでください」

 真海にとって、この罪人だらけの世界で、信一朗だけは唯一、紫門暖であった頃から変わらぬ最後の希望なのだろう。

 結局ラスト間際、真海が渡したのは本当に解毒剤で、そのおかげで未蘭が助かっていたことがわかる(前回、未蘭が倒れたのは瑛理奈の飲ませた薬のせいで、そのまま未蘭が死んだことにしたのは公平を苦しめるため)。

 彼をとことん守ることで真海は、自分のしているひどい復讐とのバランスを取っているのかもしれない。

 

■殺人鬼・瑛理奈の壮絶な最後

 夫の公平(高橋克典)が警察官僚であるのをいいことに、やりたい放題の殺人を繰り返す本物の「モンスターペアレンツ」瑛理奈(山口紗弥加)。

 今回も未蘭が死んだ(助かったことはまだ知らない)罪を義父の貞吉(伊武雅人)に被せるため、さらなる殺害を試みる。途中で公平が来たため、それは未遂に終わったが、体が麻痺して動けない貞吉に普通に話しかけながら、口を濡れ布巾で押さえつけるその形相は鬼畜そのもの。

 甲高い声で良妻を演じつつ、その裏で……というより、自分の血のつながった息子・瑛人に遺産を残すという大義をもった「良妻」そのものとして、なんの疑問もなく殺人を繰り返しているのが恐ろしい。

 結局、公平はとっくに瑛里奈の行いに気づいていたのだが、その毒牙が愛娘・未蘭に向かったことで我慢できなくなり、ついに瑛理奈を問い詰める。

 

■原作以上にボコボコにされる神楽

 監禁された神楽(新井浩文)は、袋を被せられ、顔に水をかけられる拷問地獄。真海がラデル共和国の監獄で受けた一番きつい拷問だ。空腹にさせられ、わずかな食事を死ぬほど高い値段で買わされるのは原作と同じだが、水責めなどの前のめりな拷問はドラマオリジナル。『スターウォーズ』の新作でもそうだが、近年の映像作品は人質の顔に袋を被せるのが流行りで、やはりこれは、現実世界でのテロ組織の動画の影響があるのでしょう。

 ちなみに、この日の神楽のお食事代は、わずかなパンとスープで1,000万円。原作では1億円くらいだったので、ややリーズナブル。

 真海は、自分の手を汚さない分、神楽は余計に罪が重いと言っており、南條や入間公平が自ら死を選んだり(助かったが)、勝手に狂ってしまったのに比べ、神楽には手下を介してるとはいえ、かなり直接的な暴力を振るっている。

 自分の罪に自覚がないことを罪だとされた神楽だが、やはりというか真海(暖)へのかつての仕打ちも忘れてしまっていたほど自覚がない。どこか憎めないくらい新井の演技が飄々としており、他の2人の悪党とはまた違う味があった。

 ずっとリアルタイムでTwitter実況をしていたサービス精神あふれる新井だが、最終回は地方で実況叶わず。しかし、このシリアスな最終回にあのひょうきん実況はそぐわない気もするので、それはそれでよかったのかもしれない。

■留美が母親だと知り嘔吐する安藤

 不倫の末に産んですぐ一度は捨てた息子・安藤(葉山奨之)との日々を刹那的に楽しむ神楽の妻・留美(稲森いずみ)。真海は公平を苦しめるために留美を安藤に出会わせたのだが、もはや彼女の生きる糧となっている。

 だが、留美が母親だと知り、いきなり嘔吐。しかも父親である警察官僚の公平は自分の保身のことしか考えてないから、どんなことしても助けてくれるはずだと留美に言われ「お前ら(留美と公平)、最高やべーわ!」と吐き捨てて笑う。確かに笑うしかないくらいクソな状況。

 公平は過去を詫びて、外国へ逃がし助けるフリをして2人きりの時に安藤を撲殺、またしても赤子の時のように生き埋めにする。高橋の腐りきった極悪な演技が光る。

 しかし、こちらも赤子の時以来、またしても埋めた直後に真海の執事・土屋(三浦誠己)が助け出し、一命をとり留める。もはや、ある種の父性が土屋の中に生まれていたように感じる。今回は描かれていないが、きっと土屋は安藤の面倒を見る気がしてならない。

 公平を許せない留美は、安藤が殺人犯だと公表する記者会見の場に乗り込み、公平の悪事を全て暴露。公平は取り乱し帰宅、逃げようと妻・瑛理奈に弱音を吐く。

「どこで間違えた……俺はただ立派な人間になりたかっただけだ」

「家族っていうのはなんだ、そう思ってきた、だが、それすらも自分のためだったのかもしれん」

 だが必死に慰めてくれる瑛理奈に感謝し抱きしめた瞬間、瑛理奈は口から血を吐いて壮絶に死ぬ。公平に過去の殺人を咎められたことで毒を飲んでいたのだ。息子の瑛人も死んだと真海に言われた公平は、全てを失い気が狂ってしまう。

 だが瑛人は生きており(原作では母子ともに死亡)、死んだ母が倒れている現場で真海を睨みつける。復讐の芽を感じさせる終わり方だ。

■焼身自殺を図る真海

 真海は最後に神楽、南條、すみれというかつての仲間を集めて晩餐会を開く。

 家中に灯油をまき、神楽と南條を椅子に縛り付けた狂った部屋に招かれたすみれ。

「もうやめて、こんなの馬鹿げてる」

 おかまいなしに「余興」として、第1話で流されたすみれにプロポーズした時のサプライズ動画を流す真海。画面内、「愛は勝つ」に合わせ踊る神楽に、はしゃぐ南條。

 真海は若い自分を指差し「誰です、この頭の悪そうな男は?」「人に騙されるのが目に見えている」と皮肉を言いつつ「でも本当に幸せそうだ」とこぼす。

 真海に誘導され、当時の気持ちを正直に語る2人。

神楽「お前が街にきた時からずっと目障りだったし、お前が船長に決まった時すげーむかついたよ」

南條「(暖が警察に連行されて)焦ったけど、正直ほっとしたよ。これですみれを取られないで済むって」

 初めて当人が認めた本音。真海はこれを聞きたかっただけなのかもしれない。

 そして少し前に、「全てを捨てて自分と結婚するなら、もう復讐はやめる」とすみれに「踏み絵」を迫っていた真海は、15年前と同じように改めてすみれにプロポーズする。

「はい、私は『真海さんと』結婚します」涙を流しながら答えたすみれの言葉を聞き、「やっぱり最後に『愛は勝つ』んだ」とつぶやき全員を解放、退去させる真海。

 すみれは暖とは呼ばなかった。抜け殻のように「楽しかった」とつぶやき、火に包まれる真海。

 信一朗が未蘭の件で激怒して訪ねて来た時「いずれ私は罰を受けるでしょう」と真海は言っていた。「絶対に許さない」と言った信一朗に対し「許しなど求めていない」とも。この時から真海は死ぬことを決意していたのでしょう。

■強い原作リスペクト

 すべてが明るみに出たため、公平、南條、神楽はそれぞれ逮捕されたが、真海の遺体は見つからなかった。南條は飛び込んで助けに入り、大やけどを負ったが、実際は土屋やエデルヴァが助けたのかもしれない。

 真海が残した「希望」である信一朗へあてた手紙には「待て、しかして希望せよ」とあった。このへんは原作と同じだが、これは最初に日本語訳した岩波版(山内義雄)の言葉で、脚本家の黒岩勉の原作へのリスペクトを感じた。

 最後、海辺を歩く紫門暖とエデルヴァっぽい人影。原作ではエデ(エデルヴァ)の愛によりエドモン(紫門)は救われ、結ばれるのだが、それを示唆するエンディング。しかしあえて多くを語らず、原作を読ませ補完させようとする意図を感じた。

 ドラマとして完結しているかは別として、やはり原作へのリスペクトなのだろう。

 2時間、詰め込みに詰め込んだ濃い内容をうまくまとめ上げた最終回。しかし気になる点もあった。

 殺人を犯すなど、その罪の重さはもちろんあるものの、真海的に恨みがあるわけでもない瑛理奈があそこまで壮絶に死に絶えながら、結局メインの復讐相手のうち2人が「救われたような」形となったエンディングには、やや疑問が残る。「小物」の寺角(渋川清彦)を目の前で生き埋めにしたほどの真海なのに、やはりすみれに正体がばれていたのが効いているのか。

 原作では、瑛理香が瑛人とともに心中したことを公平(ヴィルフォール)から聞かされ、その意図しなかった「巻き込み」具合にショックを受け、真海(モンテ・クリスト伯)が罪の意識に苛まれるシーンがある。

 しかし、このドラマでは瑛理香の死は真海も想定済みといった感じで、その死に対して罪悪感を感じている様子もなかった。それだけに、なぜ原作に背き南條を殺さなかったのかが気になる。

 最後、真海を助けようと火の海に飛び込んで全身大やけどを負ったのも、少し「改心」したことによる中途半端な「罰」に見えてしまった(幼い瑛人を殺さなかったのはテレビ的にわかるが)。

 今作は母親が特に「強く」描かれていた。

 第6話で、留美が実の子(安藤)と近親相姦をしていることを知っても、ショックを受けるよりも安藤が生きていた喜びが上回る様子を見て「母親というのは偉大だな」と真海は言っている。

 息子のために殺人を繰り返す瑛理奈。息子の嫁を守るため餓死を選んだ恵(風吹ジュン)。そして、安藤が殺した死体(寺角)を埋めてやった留美。もっと丁寧に掘り下げてほしかった部分だ。

 まじめに原作を追ったため1クールでは内容を詰め込みすぎで、もったいなくも駆け足で描ききれていない部分が多かった。だが珍しい手法の意欲作で、この手の翻訳ものとして、ある種の扉を開いた気がする。

 ぜひ黒岩勉はシェークスピアやドストエフスキーなどで再挑戦していただきたい。
(文=どらまっ子HARUちゃん)

『モンテ・クリスト伯』9週目で打ち切り? 口から液体を吐きながら白目で倒れる様子は「まるでエクソシスト」

 海外の古典の名作を現代の日本を舞台に焼き直した『モンテ・クリスト伯 ─華麗なる復讐─』(フジテレビ系)も次週が最終回。9話での最終回に「打ち切りか?」と思われたが、次回は2時間スペシャルとのことで、ほぼ同じボリューム。視聴率も今回7.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)とアップしているので、次週、有終の美を飾ってほしいところ。

 無実の罪で投獄され、後に脱獄、手に入れた巨額の富と知識を武器に、自分をハメた友人らへの復讐に燃える主人公のモンテ・クリスト・真海を演じるディーン・フジオカは、世間から浮いた雰囲気が見事にハマり、現実感のない胡散臭さがよく似合う。褒めてます。

(前回までのレビューはこちらから)

■死んでいなかった南條

 かつて、嘘の通報で真海が投獄されるきっかけを作った南条幸男(大倉忠義・関ジャニ∞)は、その真海から奪った最愛の妻・すみれ(山本美月)に嘘がバレたあげく、香港での修行時代に殺人事件に関与していることもバラされ、首を吊った。これが前回まで。

 しかし今回、その事件の被害者の娘・エデルヴァ(南条幸男のマネジャー江田愛梨/桜井ユキ)が直後に縄を切り、助けていたことが判明。原作では南条に当たるフェルナンは、真実をバラされ、妻と息子(ドラマでは娘だが)に出て行かれ自害、という展開なのだが、ここまで原作に基本忠実なだけに、当然今回も展開を予想してくるであろう原作ファンを裏切り、ほくそ笑む脚本家の顔が目に浮かぶ。果たしてこの「裏切り」は「裏切り」のままなのか?

 南条を助けたことを復讐仲間(仲間というより上司に近い)の真海に激怒されるエデルヴァ。窓ガラスを割るほど激昂する真海。

「この瞬間のために生き永らえてきたのではなかったのか!?」

 助けてしまった理由は、南条の娘・明日花からの電話で情が湧いたからということらしく、かつて親を殺された自分に置き換えてしまったのだろう。

 手切れ金として100億円(!)の小切手を渡されたエデルヴァが、真海に問う。

「真海さんは復讐が終わったらどうするつもりなんですか?」

「幸せにはなれないんだと思います、人を不幸にしても!」

 真海に想いを寄せるエデルヴァは、真海の行く末を本気で心配しているようだ。

 しかし、同じ「傷」を持つエデルヴァに裏切られた(と感じた)真海は、昏睡する南条の病室に忍び込み、薬殺しかける。

 それに気づいたすみれは必死に真海を止めつつ「どうしても殺したいなら私がやる」と言い切る。

 かつて真海を待てず南条の元へ行ってしまったという大きな罪悪感が、彼女をそうさせるのだろう。

 真海は、すみれだけは復讐に巻き込まないようにしていたはずだが、嫉妬の炎に火がついたようで、「そんなに幸男が大切か?」「だったらお前がやれ」と注射器を手渡し立ち去る。

 すみれは「暖にそんなことさせたくないから」と、かつての夫「暖」として接しているが、真海は以前なら絶対言わなかったであろう「お前」呼びのままで、かなり距離がある。

 結局、すみれはその薬を使って幸男を殺しかけるのだが、目覚めた幸男はすみれを羽交い締めにして「俺を殺したいんだな?」とブチ切れ。

 すみれも「明日花がいなければね」と本音をぶつけ合う。このまま南条が真海の元に乗り込んでくるようだが、目覚めた幸男は前より悪人度が増しているようで、この辺の展開は完全にドラマオリジナル。いまいち悪人度が低かった幸男がレベルアップしたことで、次週どうなるのかが楽しみだ。

 

■真海の正体を知って反撃に出る極悪・入間

 残りの復讐相手である警察官僚の入間公平(高橋克典)と不動産屋の神楽清(新井浩文)も、かつて自分たちがハメて投獄した紫門暖が真海であることに確信を持ったようで、潰そうと動き出す。原作では、勘づくくだりは一切ないので、ここもオリジナルな展開。

 公平はすぐさま指紋から真海が紫門暖であることを特定、ラデル共和国からの脱獄犯として警察の管理下に身柄を置くと宣言。

「復讐ごっこは終わりだよ、お前の負けだ、紫門暖」

 100パーセント確信犯で真海をハメた極悪人なのに、警察官僚という立場にいるからか、まったく罪の意識なく上から目線で脅してくる公平。

 圧倒的優位から顔をくしゃくしゃにして、真海を見下しながら笑う公平の様子は、相当なクズっぷりが滴り出ており、最高。

 しかし、過去に公平が不義の子を庭に埋めた際の目撃者(秘書の土屋/三浦誠己)がいると告げられると、あっさり形勢逆転、指紋の照合結果をもみ消すことに。

 しかも、その子がまだ生きており、その子の母である神楽留美(稲森いずみ)が現在入れ込んでいる安藤完治(葉山奨之)だと知って驚く公平。留美に安藤は危険だから離れるようにと忠告するが、寺角(渋川清彦)を埋めてから頭のネジが飛んでしまったような留美は、むしろ及び腰な安藤をぐいぐい引っ張るほど頼もしく、「第2の人生」を謳歌しているかのよう。

■真海が渡したのは毒なのか?

 唯一、真海が心を許しているのは、恩人・守尾英一朗(木下ほうか)の息子・真一朗(高杉真宙)だけなのだが、真一朗が公平の娘・美蘭(岸井ゆきの)と付き合っていることを知った真海は悩んだ末、美蘭を助けようと動く。

 公平の妻・瑛理奈(山口紗弥加)は血のつながっていない美蘭を毒殺し、血のつながっている長男・瑛人(宇都宮太良)に遺産が回るよう狙っている。それを知っている真海は、解毒剤らしきものを真一朗に渡し、何かあったら美蘭に飲ませるように伝える。

 案の定、瑛理奈の毒入りレモネード(原作と同じ飲み物)を飲まされた美蘭は倒れ、真一朗はさっそく真海に渡された解毒剤を飲ませる。これで一安心かと思いきや、静かに鼻血を垂らしながら、口から液体を吐き、白目を剥きながら倒れる美蘭。これがなかなか踏み込んだ描写で、エクソシスト並み。

 慌てて病院へ駆けつけ、脳に後遺症が残ると医師に告げられた失意の公平に、自分が毒を飲ませたからだと土下座する真一朗。激怒した公平は屋上から真一朗を突き落とそうとするが、医師が止めていなかったら本当に突き落としていただろう。美蘭の実の母や婚約者(出口)が死んだ時と同じ毒だと言われてるのに、自身の出世のため、またしても公にしようとしない公平。しかし、その医師は真海とアイコンタクトらしきことをしており、どこかから寄贈された古い時計も意味ありげにアップになるなど、またしても真海の手の内では……? な展開。

 

■都合良すぎだと感じてしまう展開

 一方、留美に金を使い込まれ、金に困った神楽はヤミ金っぽい組織(F&Dファイナンス)から金を借りるが、その直後、秘書の牛山(久保田悠来)に頭突きをされ、ヤミ金社員にも殴られ、気を失い牢獄のような場所に監禁される。

 どうやらこの牛山もただの秘書ではなさそう。牛山はドラマオリジナルだが、それぞれの復讐相手が勝手に自滅ぎみの過去を抱えているというのは原作通りで、読んでいて多少「都合よすぎでは?」と感じてしまうのだが、これは根底にキリスト教の原罪に通じる考え方(己の罪に気づく)に沿う部分があるからだろう。

 なので、復讐相手に限らず登場人物はそれぞれに「罪」を抱えており、ドラマでは宗教観に頼らずどう「落とす」かが最終回の鍵となるだろう。

 ドラマのラスト、真海の元に戻ってきたエデルヴァは、手切れ金として渡された小切手を破き、飲み込もうと口に入れるが、飲み込めない。

「ずいぶん贅沢な朝食だな?」と皮肉を言いつつ、「スープ飲むか? 一緒に」と振り返り微笑む真海。最高のツンデレ。口から紙切れをはみ出させ、無様に涙しながら笑うエデルヴァ。エデルヴァを許した真海の心理が、次週どう影響するのか?

 今回、公平の父・貞吉(伊武雅人)と真海が五十音表を使って会話していた内容も明かされるであろう2時間スペシャル、是非お見逃しなく。
(文=どらまっ子HARUちゃん)

『モンテ・クリスト伯』大倉忠義の純愛すぎる想いが人を殺す……ついに山本美月が“おディーン様”にあの告白

『岩窟王』の名で知られる名作を現代の日本を舞台に焼き直したドラマ『モンテ・クリスト伯 ─華麗なる復讐─』(フジテレビ系)。無実の罪で収監されたのち脱獄、巨額の富と知性を手に舞い戻ったモンテ・クリスト・真海(ディーン・フジオカ)が仕掛ける復讐はいよいよ本格化。

 第7話は、真海の復讐相手の一人である南條幸男(大倉忠義・関ジャニ∞)に重い鉄槌が下される他、大きな展開が。視聴率は5.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、ほぼ横ばい。放送時ネットでもずいぶん話題にはなってるようだが、登場人物の関係性が複雑なため、なかなか途中から新規参入しにくいのかもしれない。

(前回までのレビューはこちらから)

■真海=暖だと気付いていたすみれ

 13年前のショーン・リー(南條の恩人で香港の有名俳優)殺害の情報を売ったと思われ、香港マフィア「ヴァンパ」に自宅に押し入られた南條。妻・すみれ(山本美月)と娘・明日花を人質に取られ、追い込まれた南條は自分が裏切っていないことを証明するため奔走。情報を売った「真犯人」が真海であると突き止め、ヴァンパ側に伝える。

 ヴァンパ一味が去った自宅で、すみれが南條から聞かされたのは、香港時代に借金を返すためヴァンパと共にショーンの自宅に忍び込み、そこで予定外に帰宅したショーン夫妻を殺してしまったという過去。南條が手を下したわけではないが、見殺しにしたような格好だと告げる。

 そしてこの情報を元に南條を潰そうとしているのが真海だと聞かされ、絶句するすみれ。

「一緒に乗り切ろう、今度は私が幸男を助ける番だよ。幸男がやったこと、私も抱えて生きていく。一生償っていこう」

 当時の夫・暖(真海)が突然逮捕、のちに獄中死したと伝えられ、失意の底にいたすみれを支えたのは南條(幸男)だ。その南條を今度は自分が支えようと励ますすみれだが、南條こそが「暖がテロ組織とつながっている」と嘘の通報をした「犯人」であることをまだ知らない。

 南條を心配するあまり、すみれは真海の元を訪れ、そしてついに本当のこと口にする。

「主人は悪くないんです。悪いのは貴方のことを待っていることができなかった私だよ……暖」

「暖なんでしょ? 死んだって聞いてたから信じられなかったから、わかったよ、最初に会った時から」

 真海=暖だとわかっていたことを、ようやく打ち明ける。さらに、暖の母・恵(風吹ジュン)は孤独死しているのだが、それも、すみれが「テロリストの妻」だと責められないように、恵がわざと距離を取り会わなくなった末に起きた事件だという「真相」も明かされた。

 ずっと無言で背を向け聞いていた真海(暖)だが、「幸男は悪くない、恨むなら私を恨んで」と必死に南條をかばうすみれの言葉に耐え切れず、反論する。

「何もわかってない、悪いのは幸男なんだよ!」

「紫門暖が警察に捕まるよう嘘の通報をしたのは南條幸男です。南條幸男が紫門暖を『殺し』たんです」

 一瞬、「暖」としてのパーソナリティも垣間見えたが、現在「真海」である彼は、あくまで「暖」は牢獄で死んでいる、というスタンスですみれに接している。頑なにすみれに会おうとしなかったのは、自分の復讐の気持ちが揺らぐのを防ぐためだったのだろう。

 真実を知ったまま、すみれは南條と合流し、夫妻で受賞したベストパートナー授賞式へ。

 しかし壇上での南條の挨拶の最中、「ショーン・リー殺害に南條が関わっている」との速報が駆け巡り、授賞式は一転、追及の場に。壇上でずっとこれまで黙っていたすみれは、このタイミングでいきなり南條と報道陣を前に離婚する旨を告げる。舞台裏で、すみれに一番知られたくなかった秘密(暖をハメたこと)を知っていることを告げられた南條は呆然。南條はドラマも降板、CM違約金も発生と、全てを失った。

 

■首を吊る南條幸男

 南條のマネジャー・江田愛梨(桜井ユキ)は、その日で退職することを告げつつ、自分が両親殺害の一部始終をを見ていた、当時幼かったショーンの娘・エデルヴァであると正体を明かす。

「ショーン・リー一家を殺したのが自分だと書いて責任を取らないと、奥さんと娘さんがヴァンパに狙われますよ?」

「あの後、知らない街の汚い部屋に閉じ込められて、汚い男たちの相手を毎日毎日させられた」

 自分の壮絶な過去を語りつつ、南條に真相を交えた遺書を書くように言い残し出て行く。

 ずっと落ち着いた口調だが、正直、かなり憎んでいる前振りもあったし、実際、親を殺され、その後売り飛ばされ男の相手をさせられたという事実も踏まえると、もっと憎しみを爆発させるものかと思いきや、唯一広東語で「人生の全てに懺悔しろ」と言った時以外、ずいぶんあっさりとした印象。

 この後、南條は首を吊って自殺するのだが、江田が何も知らない南條の娘・明日花からの電話に、なんとも言えない表情を浮かべていたのは、かつての親を亡くした幼い自分と重ねていたからなのだろうか。

 原作でも、南條(フェルナン)は妻と子に出て行かれ自殺するのだが、ドラマで一番違うのは、江田(エデ)が南條のマネジャーとして随時行動を共にしていたこと。そして最後、南條が首を吊った直後に、慌てて江田が戻ってきたのは何を意味しているのか? もしかしたら助けているのか?

 長く接していただけに(特に娘に)情がわいた可能性はありそうだが、どうなったのか気になる。

 南條が書き残した内容は、遺書というよりすみれへの想いを綴った純粋すぎるラブレター。

「僕はずっと君のことが好きでした」

「君を守ること、君を幸せにすること、それだけが僕の夢でした。それだけが僕の人生でした」

「君を守れなくてごめんなさい」

 回想での、暖がいなくなり落ち込むすみれに南條が想いを告げるシーンでも、

「これから一生暖ちゃんのこと思い続けてていいから、俺はずっと都合のいい『お兄ちゃん』でいい。俺はただ、すみれに生きてて欲しいだけなんだよ」

 おそらく、すみれを想いすぎるあまり、南條の中では暖を裏切った事実は、都合よく、なかったことになっていたのかもしれない。

 南條の殺害関与報道を受け、暖を陥れた「共犯」である神楽清(新井浩文)は「あいつ生きてる」、入間公平(高橋克典)は「やっぱりそういうことか」と、共に紫門暖のことを思い浮かべるのだが、南條は最後まで、真海が暖だとは疑いもしなかった。純粋すぎる想いが彼の中で、暖を本当に「殺し」ていたからだろう。

 ちなにみヴァンパが真海邸に襲ってきたものの、すでにヴァンパ内部とつながっていた真海は、仲間割れを起こさせ、事なきを得る。

 原作でも、盗賊の親玉ルイジ・ヴァンパ(こちらは個人名)とモンテ・クリスト伯(真海)はつながっており、捕らえられたフェルナン(南條)の息子(ドラマでは娘)を助けたりしている。

 

■今回も瑛里奈の悪魔ぶりが

 祖父である貞吉(伊武雅人)が怪しんでいるのを知り、貞吉のお手伝いの女性も(おそらく)殺害、これを機に自分の殺人鬼である一面を貞吉にだけさらけ出しはじめた入間瑛里奈(山口紗弥加)。美蘭(岸井ゆきの)を貞吉が殺したように見せかけて毒殺し、さらにその貞吉も自殺に見せかけて殺すと、貞吉に予告する。全ては血の繋がっている息子(瑛人)にだけに遺産を残すための歪んだ愛情からきており、病気で全身が麻痺し動けない貞吉の耳元でそれを語って聞かせる瑛里奈の様子は、ヒッチコックやスティーブン・キングの作品のような恐ろしさ。伊武雅人の目の芝居だけの芝居が今回も冴えていた。

 瑛里奈は夫の公平が警察幹部であるため、自宅での事件が公にされることはないとたかをくくっているため、やりたい放題になってきている。

 一方、その入間公平は、前回殺害された寺角類(渋川清彦)が紫門暖と同じ浜浦町出身だと知り、怪しんでいる様子。暖の死亡報告書はラデル共和国から届けられていたのだが、その資料の中に「ファリア真海」(暖に知識や資産を与えた恩人)の名を発見し、何かピンときたようだ。

 今回は、真海が寺角殺害の件で警察に連行されるところで終了となった。神楽も「元・漁師の勘」だと真海を疑いだしているし、果たして双方どこまで掴んでいるのか?

 原作では、入間(ヴィルフォール)にしろ神楽(ダングラール)にしろ、途中で真海=暖(モンテ・クリスト伯=エドモン・ダンテス)であると見破る展開はなく、どちらも本人に種明かしをされて「えーーー!」となるお約束であるだけに、ドラマならではの展開だとしたら、この先をどう描くのか楽しみだ。

 

■東京-鎌倉間の移動が早すぎないか?

 細かい点だが気になった点をいくつか。

 エデルヴァはなぜ「江田」という近い偽名を使ったのか? 原作では、ドラマでのマネジャー設定がないためフェルナン(南條)とエデ(江田)が、最後フェルナンが告発される法廷まで接触することはなく、そのため偽名自体出てこないのだが、ドラマでは少なくともバレる可能性は排除したいはずなのに「エデルヴァ」に近い名前を使っている。絶対にバレないという自信がそうさせているのか、はたまたバレてほしい気持が根底にあるからなのか、謎だ。

 そしてもう一点。南條やすみれが、東京-鎌倉間を行き来するのだが、その移動時間がやけに短いのだ。南條は、ヴァンパに3時までに情報を掴んで自宅に戻らないと妻子を殺すと脅されてるのに、鎌倉の真海邸を出たのは2時だし(ギリギリ間に合っている)、すみれも、ベストパートナー賞の楽屋にもう南條は入っているのに、単身真海邸に赴き、込み入った話をして、こちらも本番までにギリギリ戻れている。

 どちらも車で移動のはずだが、大事な授賞式や、ましてや妻子の命がかかっているのにそんなギリギリで行動するだろうか?

 ちなみに鎌倉と東京(港区だとして)はグーグル検索で1時間15分(車使用)はかかる距離だ。

 真海がシンガポールまで密航した際などもそうだが、このドラマは移動の描き方だけは随分雑な気がする。

 次回予告。入間が「復讐ごっこは終わりだよ、お前の負けだ、紫門暖」と笑うシーン。原作にはなさそうな展開が楽しみだ。
(文=どらまっ子HARUちゃん)